説明

ライナーレスラベルとその製造方法

【課題】製造直後のゴム製の車両用タイヤに貼付する規格表示用化粧ラベルとして好適に使用できる物理的特性を備えたライナーレスラベルとその製造方法を提供する。
【解決手段】表面にラベル印刷が施されると共に、単票ラベル1aに切り離し可能なミシン目3が形成されたラベル基材1の裏面側に粘着層4を、表面側に剥離層5を備えたライナーレスラベルにおいて、ラベル基材1の裏面に、切離後の単票1aの周縁に沿って額縁状の糊無し代4aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台紙(剥離紙)の無いラベル、所謂、ライナーレスラベルに関するものであり、とくに製造直後の車両用タイヤに貼付する規格表示用の化粧ラベルとして好適に使用できる特性を備えたライナーレスラベルとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、ラベルやシールはライナーと呼ばれる台紙に貼り付けられ、台紙から剥がされて使用される。一方、台紙を用いないラベルも存在する。このラベルは裏面側に糊を付け表面側全体に剥離材を塗布し、ラベルをロール状に巻回して容易に剥がせる構成になっていて、ライナーレスラベルと呼ばれ、ラベルから台紙を無くし、環境に配慮したラベルとして普及している(例えば、特許文献1参照。)。つまり、台紙付きのラベルに比べ、ユーザーにおいては台紙から剥がす手間を省くことができ、物品に貼付する作業効率が増し、台紙の厚み分の嵩が減ることで保管コストや輸送コストを削減でき、台紙の廃棄処分が不要となり環境負荷低減に貢献し、省エネルギー効果もある。
【0003】
一般的なライナーレスラベルは、紙やプラスチックフィルムの帯状基材の表面に、商品名、製造者、販売者、原材料名等の印刷が施され、裏面に粘着剤が全域に塗布されてロール状に巻き取られている。また、粘着剤が印刷面に付着しないように、ラベル表面側はシリコン樹脂等でコートされている。さらに、特許文献2に記載されているように、剥し用ミシン目に沿ってラベルの一部を引き剥がし、受け取り確認などの半券として使用できるようにしたものや、帯状の基材の表面に情報記入部と剥離剤処理部とを設け、かつ、基材の裏面に剥離剤処理部に対応する領域内で粘着剤塗布部を設けてロール状に形成し、情報記入部と前記剥離剤処理部との境界に沿って切り取り用ミシン目が施された貼付用シート(特許文献3参照。)等が提案されている。
【0004】
また、特許文献4に記載されているように、ラベル基材の裏面に熱活性化する乾燥糊層及びラベル基材の表面に感熱発色層を備えたものや、表面に印刷を施したラベル基材の裏面に、粘着剤を部分的に塗布することにより粘着剤のある部分と粘着剤のない糊無し部を交互にラベル長手方向に連続して形成した粘着剤部分塗布によるライナーレスラベル(特許文献5参照。)。ペンまたはフェルトペンで筆記可能な剥離コーティングを施したもの(特許文献6参照。)、また、ラベルを重ね貼りしても剥離し難く構成し、貼り替えによる悪用を防止するようにしたもの(特許文献7参照)。また、ロール状に巻いたラベルを1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベルを接着剤が塗布されたラベル保持体によって受取り、このラベルの裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段からラベルを受け取ってその表面側を保持し、容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラ(特許文献8参照。)等の関連技術も種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−84565号公報
【特許文献2】特開2004−333740号公報
【特許文献3】特許第3401093号公報
【特許文献4】特許第4346918号公報
【特許文献5】特開2007−171776号公報
【特許文献6】特表2001−511203号公報
【特許文献7】特開2003−186399号公報
【特許文献8】特許第3067413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、成形直後のゴム製車両用タイヤの表面には、金型による加硫成型の際に用いられる離型剤としてのシリコンが残留している。また、タイヤ表面には、トレッドパターンといわれる溝があり、加硫成型時に発生する「スピュー」といわれる細かいひげ状の突起物が数多く存在する凹凸のある粗面である。したがって、従来はこれに貼付するラベルの糊にも高粘度で粘着性の高いゴム系のものが使用されており、一旦貼付したラベルは剥がし難いという特性がある。本発明もまた、従来のライナー付きラベルが擁する上記のような特性を備えることは無論のこと、とくに、成形直後のゴム製車両用タイヤに貼付する規格表示化粧ラベルとして好適に使用できる特性を備えたライナーレスラベルとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、表面にラベル印刷が施されると共に、単票に切り離し可能なラベル基材の裏面側に粘着層を、当該ラベル基材表面側に剥離層を備えたライナーレスラベルであって、前記ラベル基材裏面には、切離後の単票の周縁に沿って額縁状の糊無し部を設けたことを第1の特徴とする。また、ライナーレスラベルが、粘着層を内側にしてラベル基材をロール状に巻回されていることを第2の特徴とする。また、単票に切離されたラベルをファンホールド状に積層したことを第3の特徴とする。
【0008】
そして、本発明に係るライナーレスラベルの製造方法は、ラミネート基材の全面にシリコンを塗布し一旦巻き取る工程。所望サイズにスリットされたラベルベース基材の表面に化粧印刷すると同時に、前記ラミネートを張り合わせる工程。印刷機に搭載されているミシン刃により、ラベルを単票に切離するためのミシン加工を施し巻き取る工程。化粧印刷されミシン目が入ったラベルベース基材の裏面に額縁状の糊無し部を形成した粘着層を塗布する工程。を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下記の優れた効果が得られる。
(1)ユーザーにおいてはラベルを台紙から剥がす手間を省くことで物品に貼付する作業効率が増す。
(2)台紙の厚み分の嵩が減ることで保管コストや輸送コストを削減できる。
(3)成形直後のゴム製車両用タイヤの表面にもしっかり貼着し、且つ一旦貼付したラベルも額縁状の糊無し部が手掛りとなって剥がし易い。
(4)ゴミの減量化、資源保護と同時に廃棄処理・焼却の手間を省くことができ、自然環境保護に貢献する。
(5)製造工程においては、台紙が無いため、より多くのラベルを1ロールに巻くことができ作業効率が良い。
【0010】
本発明に係るライナーレスラベルは、主としてタイヤの規格表示ラベルとして採用されるが、その他、ステッカー(ウインド用、車両用等)冷凍食品用粘着ラベル・テープ、粗面に貼付される粘着剤層が厚い粘着ラベル・テープ(床面表示用)、グラフィックアーツ用粘着製品(ボトル用粘着ラベル、プライスラベル、計量ラベル、銘板用ラベル、バーコード用ラベル、電気配線用ラベル、コピー紙用ラベル、宅配用粘着ラベル、ビジネスフォーム用粘着ラベル、ショーウィンドー用粘着フィルム、看板用粘着フィルム、2輪・4輪用マーク・ストライプテープ、マーキングフィルム、標識用粘着シート、印刷物のラミネートフィルム、表面保護用、いたずら防止ラベル、クーポンラベル、ウェットティッシュ用ラベルが挙げられる。
【0011】
また、ラベル基材別として、金属箔様のネーマー(ポリエステルアルミ蒸着材)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、セロハンアセテート、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ユポ紙等の合成紙が挙げられる。
【0012】
ラベル基材の片面に粘着剤層を形成した場合は、ラベル基材の背面(つまり、粘着剤面の裏面)に、剥離剤を塗布して剥離層を形成する。この場合には、粘着面を内側にして基材をロール状に巻くことにより、粘着面と剥離層とが貼着されて粘着剤面が保護される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るライナーレスラベルの一実施例を示す(a)は斜視図、(b)は拡大断面図である。
【図2】本発明に係るライナーレスラベルの製造工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係るライナーレスラベルの裏面(粘着面)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係るライナーレスラベルの一実施形態を示すもので、長手方向に連続する紙、プラスチックフィルム等により形成されたラベル基材1の表面に、化粧ラベルとしての所要の印刷面が形成されており、裏面2には糊が塗布され、所定長さの帯状をなし、これに所定間隔でミシン目3を形成して、使用する際に切り離して単票ラベル1aとなるように構成されている。
【0015】
ラベル基材1の幅方向には矩形状の粘着層4が形成されている。図中4aは糊が塗布されていない糊無し代で、この糊無し代4aは、単票ラベル1aに切離した状態でラベル周縁に沿って矩形額縁状に形成されている。すなわち、糊の幾何的な塗布形状に関わらず、ロール状に巻回積層した際にラベル基材1端部から糊がはみ出すことを規制する糊の不塗布部分を設けることが肝要である。この糊無し代4aを設けたことにより、一旦貼着したラベルを剥がす際に手掛かりとなり剥離作業が容易になる。
【0016】
糊としては、一般的にはアクリル系粘着剤が使用される。また、その塗布方法は、一般的な粘着剤塗工専用機や噴射ノズルによる吹き付け塗布の他、フレキソ印刷機・スクリーン印刷機での印刷方式による塗布等適宜の方法が選択できるが、糊無代4aを形成するため、マスキングあるいは糊4を印刷するための印板(例えばゴム版)から非印刷面として予め削除しておく必要がある。
【0017】
ミシン目3の刻設は、ドラム式のマイクロミシン胴を用いた打刻式機構を採用することができ、連続するラベルの糊無し代4aの略中点でラベルの巾方向に打設し、このミシン目3に沿って切り離すことで1枚宛のラベル1aとなる。尚、ラベル1aを車両用タイヤに貼る場合、通常は手貼りであるが、別途貼付機器を使用するものでも良い。尚、本発明のラベルはロール紙ではなくファンホールド紙として構成することも可能である。その際、勿論ミシン目3は不要である。
【0018】
図3は本発明に係るライナーレスラベルの製造工程を示すフローチャートである。
【0019】
まず、ラミネート材(PP・PET)5にシリコンを全面塗布し、一旦巻き取る(ステップS1)。次いで、所望サイズにスリットされたベース基材1の表面に表示内容を化粧印刷する(ステップS2)と同時に、ステップS1で予めシリコンを塗布しておいたラミネート5を張り合わせる(ステップS3)。
【0020】
次いで、ラベルを単表に切り離すためのミシン加工を施し、巻き取る(ステップS4)。次いで、表面が印刷されミシン目3が入った巻き取り状態のラベル基材1の裏面にホットメルト塗工機で糊を額縁状に塗布し(ステップS5)、所望サイズにスリットしながら所定量を巻き取る(ステップS6)。
【0021】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が本実施に限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0022】
予めスリットされたロール状のラミネートフィルム(PP−20μm)の全面に紫外線硬化性の剥離用シリコン液を塗布した。この場合、光開始液を1対20の割合で混合させることでより優れた硬化性が得られる。同時にシリコン液塗布面にコロナ放電処理を施すことで、表面エネルギーを高め、より強度な密着性と剥離性が得られる。コロナ放電処理はレベル2程度で行った。
【0023】
次いで、所望サイズにスリットされたラベル基材1となる銀ネーマー(ポリエステルアルミ蒸着材:12μm・25μm)の表面に化粧印刷した後、上記工程でシリコン液を予め塗布しておいたラミネートフィルム5を張り合わせた。これにより、印刷面の保護と外観のクリア性を高めることができる。
【0024】
ロール状に巻回された帯状のラベルを1枚毎に切離可能とするために印刷機に搭載されているマグネットシリンダーのマイクロミシン刃(切歯の間隔:0.5mm)を使用し、ラベルの送り方向に対して垂直にミシン目3を入れた。
【0025】
銀(白)ネーマー(厚さ12μm又は25μmの単体基材)とラミネートフィルム(PP−20μm)5を張り合わせて巻き取られたラベル基材1をホットメルト糊塗工機にセットし、ラベル裏面2にゴム系のホットメルト糊(タイヤ用HM:商品名 ノーテープ工業株式会社製)を加熱熔解して塗布した。ホットメルト糊はコントローラーにて糊タンク内を160℃に保温しながら使用するが、液状化した糊が流通するホース内も170℃に保つ必要がある。ラベル基材に塗布する吹き出し口となるヘッド部においては187℃まで上昇させる。187℃でヘッド部から放出される液状の糊を間欠的に吐出させることで、ラベル裏面における前後(単票状態では天地)の糊無し代4aを形成した。
【0026】
糊の塗布巾は、糊塗工機のコントローラーに数値入力することにより決定されるが、位置決めとして、予め印刷しておいた光電管マークをセンサーに読み取らせることで、糊を塗布する始端と終端を設定する。左右の糊巾設定についてはシム(アルミ材0.1mm厚)を糊吐出ヘッドの口部に嵌装し、糊の吐出幅を制限することにより行った。このシムを所望する糊巾に応じて設置することで、ラベル左右の糊無し代4aを形成した。以上の操作によりラベル裏面2に額縁状の糊無し代4aを形成した。
【0027】
糊無し代4aは、糊のはみ出防止策として有効である。また、糊の接着安定性とロール状に巻き取る際の負荷(ロールの中心に行くほど巻き圧が掛かる)のため、天地左右共に、1mm〜2mm程度に設定するのが好ましい。尚、糊加工上の留意点としては、糊切れをシャープにする必要があり、このため糊吐出ヘッドの位置決め(角度)が重要となる(ゴム系の接着剤は粘度が高いため)。粘着層4は層厚40μm〜70μm程度が好ましく、粘着力は凝集破壊13.8N/10mm〜12.0N/10mm(SUS板使用)、界面剥離2.80N/10mm〜2.90N/10mm(SBR板使用)、更にループタック(粘着層厚70μm)は界面剥離、40℃で2.80N/10mm、20℃で4.40N/10mm、0℃で1.80N/10mm(SBR)が好適である。粘着力は糊の塗布密度にもよるが、成形直後のゴム製車両用タイヤの表面に残留した離型剤としてのシリコン層にもしっかり粘着する必要がある。
【0028】
最後に、糊塗布された巻取りロールの左右を回転刃にて所望するサイズ幅にスリットしながら所定量を巻き取った。ここでは、ミシン目3への抵抗を落とすために巻き取りテンションの調整が重要となる。
【符号の説明】
【0029】
1 ラベル基材
1a 単票ラベル
2 ラベル裏面(背面)
3 ミシン目
4 粘着層
4a 糊無し代(糊無し部)
5 ラミネート材(剥離層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にラベル印刷が施されると共に、単票に切り離し可能なラベル基材の裏面側に粘着層を、当該ラベル基材表面側に剥離層を備えたライナーレスラベルであって、前記ラベル基材裏面には、切離後の単票の周縁に沿って額縁状の糊無し部を設けたことを特徴とするライナーレスラベル。
【請求項2】
ライナーレスラベルが、粘着層を内側にしてラベル基材をロール状に巻回されていることを特徴とする請求項1記載のライナーレスラベル。
【請求項3】
単票に切離されたラベルをファンホールド状に積層したことを特徴とする請求項1記載のライナーレスラベル。
【請求項4】
ラミネート基材の全面にシリコンを塗布し一旦巻き取る工程。所望サイズにスリットされたラベル基材の表面に化粧印刷すると同時に、前記ラミネートを張り合わせる工程。印刷機に搭載されているミシン刃により、ラベルを単票に切離するためのミシン加工を施し巻き取る工程。化粧印刷されミシン目が入ったラベルベース基材の裏面に額縁状の糊無し部を形成した粘着層を塗布する工程。を含むことを特徴とするライナーレスラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−186021(P2011−186021A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48743(P2010−48743)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(595026520)安井株式会社 (6)
【Fターム(参考)】