説明

ラインセンサ、品質管理装置および枚葉印刷機

【課題】コンパクトな構成としつつ、枚葉紙の印刷状態を好適に検出できるラインセンサ等を提供する。
【解決手段】複数のLED73が所定の間隔を空けて枚葉紙の幅方向に並べて配置されるLED光源部61と、幅方向に亘って設けられ、照射光を幅方向と直交する枚葉紙の搬送方向へのみ集光する集光レンズ62と、複数のLED73よりも多い複数の受光素子75が幅方向に並べて配置され、枚葉紙の照射面から反射した反射光を受光する受光部64と、を備え、LED光源部61は、受光部64に比してブランケット胴33側に設けられ、照射面に対する照射角度が垂直となるように照射光を一方向に照射しており、受光部64は、LED光源部61を挟んでブランケット胴33の反対側に設けられ、LED光源部61から一方向に照射された照射光を、照射面を介して反射光として受光し、LED光源部61と照射面との距離は、照射面と受光部64との距離に比して短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷シートの印刷状態を検出可能なラインセンサ、品質管理装置および枚葉印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状の印刷用紙の幅方向に配置されたラインセンサが知られている。このラインセンサは、複数のLEDを有する光源部と複数の受光センサを有する受光部とを備えている。受光部は、印刷用紙の印刷面に対し、複数の受光センサが幅方向に亘って1列となるように配置されている。光源部は、印刷用紙の印刷面に対し、複数のLEDが1列の受光センサを挟んで2列となるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−62392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の構成によれば、光源部から照射された照射光は、印刷用紙の印刷面に対し傾斜して入射する。印刷面に照射された照射光は、印刷面に反射して、受光部に入射する。このとき、受光部は、印刷面に対して垂直に反射した反射光を入射する。このため、光源部から照射面に至る距離は、照射面から受光部に至る距離に比して長くなってしまう。光源部から照射面に至る距離が長くなってしまうと、LEDから照射された照射光が拡散しやすくなる。このため、印刷面に対する照射光の光量を所定の光量とすべく、LEDの光量を大きくしたり、LEDを2列にして数を増やしたりする必要がある。
【0005】
ここで、枚葉紙を印刷する枚葉印刷機にラインセンサを設けたいという要望がある。この場合、一対の印刷胴から順次送り出される枚葉紙は、一対の印刷胴から離れると、紙尻側がばたつくため、ラインセンサを一対の印刷胴の近傍に設けることが好ましい。しかしながら、従来の構成では、複数のLEDが1列の受光センサを挟んで2列となるように配置されていることから、装置構成が大きなものとなるため、ラインセンサを一対の印刷胴の近傍に設けることが難しい。また、複数のLEDを一列とし、受光センサを一列とした場合、光源部から照射面に至る距離が、照射面から受光部に至る距離に比して長くなっていることから、印刷面に照射される照射光の光量が小さくなり、ラインセンサによる枚葉紙の印刷状態の検出精度が低下する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、コンパクトな構成としつつ、印刷シートの印刷状態を好適に検出することができるラインセンサ、品質管理装置および枚葉印刷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラインセンサは、圧胴の周面に位置する爪部によって咥えられながら、圧胴と圧胴に対向する印刷胴との間から順次送り出される印刷シートの印刷状態を検出する、印刷シートの幅方向に亘って設けられた枚葉印刷機のラインセンサであって、少なくともR色、G色およびB色の発光色を含む複数のLEDが所定の間隔を空けて幅方向に並べて配置されるLED光源部と、複数のLEDに対向するように幅方向に亘って設けられ、LED光源部から照射された照射光が幅方向へ拡散することを許容しつつ、照射光を幅方向と直交する印刷シートの搬送方向へ集光する集光レンズと、複数のLEDよりも多い複数の受光素子が幅方向に並べて配置され、集光レンズで集光された照射光が照射される印刷シートの照射面から反射した反射光を受光する受光部と、を備え、LED光源部は、受光部に比して印刷胴側に設けられ、照射面に対する照射角度が垂直となるように照射光を一方向に照射しており、受光部は、LED光源部を挟んで印刷胴の反対側に設けられ、LED光源部から一方向に照射された照射光を、照射面を介して反射光として受光し、LED光源部と照射面との距離は、照射面と受光部との距離に比して短いことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、LED光源部は、照射面に対する照射角度を垂直にすることができ、また、LED光源部と照射面との距離を、照射面と受光部との距離に比して短くすることができる。これにより、LED光源部から照射面までの距離を短くできるため、距離が短くできる分、LED光源部からの照射光の拡散を抑制するため、照射面におけるLED光源部からの光量を大きくすることができる。また、集光レンズは、照射光を直交方向へ集光することができることから、照射面におけるLED光源部からの光量をさらに大きくすることができる。一方で、集光レンズは、照射光の幅方向への拡散を許容することから、幅方向に所定の間隔を空けて並べられた各LEDから照射される各照射光の一部は、幅方向において互いに重なり合うため、照射光を幅方向に亘って補完することができる。このため、使用するLEDの個数を抑制することができる。このとき、LED光源部は、照射光を一方向に照射しており、受光部は、LED光源部から一方向に照射された照射光を反射光として受光していることから、LED光源部から受光部までの光路を一方向とすることができ、装置構成をコンパクトにすることができる。また、装置構成がコンパクトになると、圧胴と印刷胴との間に近づけて配設することが可能となる。つまり、圧胴および印刷胴の間と照射面との距離を短くできるため、LED光源部は、圧胴と印刷胴との間に挟まれた状態の印刷シートに対し、照射光を印刷シートの印刷胴側(紙尻側)の端部まで照射することができる。これにより、印刷シートが圧胴と印刷胴との間から離れて、印刷シートの端部が浮き上がったとしても、圧胴および印刷胴の間と照射面との距離が短いことから、印刷シートにおける印刷状態の検出精度の低下を抑制することができる。さらに、LED光源部は、照射面に対する照射角度が垂直であるため、照射光が散乱しても、散乱した照射光が爪部に入射し難い。このため、受光部には、照射光が散乱した散乱光が入射し難いことから、散乱光が受光部に入射することを抑制できるため、散乱光の影響による検出精度の低下を抑制でき、印刷シートの印刷状態を好適に検出することができる。
【0009】
この場合、LED光源部は、印刷シートの幅方向の中央部における光量に比して、印刷シートの幅方向の両端部における光量が多いことが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、LED光源部の幅方向が印刷シートの幅方向とほぼ同じ長さである場合、印刷シートの幅方向の外側にLED光源部がなくても、印刷シートの幅方向における両端部の光量を多くすることで、印刷シートの幅方向における両端部の光量の低下を補うことができる。このため、光量低下による検出精度の低下を抑制することができる。
【0011】
この場合、LED光源部、集光レンズおよび受光部を覆うケースを更に備え、ケースは、照射面と対向する対向面を有し、対向面は、圧胴と印刷胴との間から送り出される印刷シートの搬送方向の下流側において、対向面と照射面との間が広がるように傾斜する傾斜面となっており、受光部は、ケースの内部において、傾斜面の内側に設けられ、LED光源部は、ケースの内部において、印刷胴と受光部との間に設けられていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、印刷シートのばたつきを抑制するために、圧胴と印刷胴との間へ向けてエアーを吹きつける場合、印刷シートと傾斜面とが広がっているため、吹きつけられたエアーがケースによって妨げられることなく、圧胴と印刷胴との間に好適にエアーを流入させることができる。
【0013】
この場合、照射光を照射面に照射する照射位置と、保守を行うための保守位置との間でケースを回動自在に支持する回動軸を更に備えたことが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、回動軸を中心に、ケースを照射位置と保守位置との間で回動させることができるため、保守作業を好適に行うことが可能となる。
【0015】
この場合、幅方向に亘って設けられ、反射光を集光して受光部へ入射させる受光側集光レンズを更に備えたことが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、受光部に入射する反射光の光量を多くすることができるため、光量の低下による検出精度の低下を抑制することができる。
【0017】
本発明の品質管理装置は、上記のラインセンサと、ラインセンサにより検出された印刷シートの印刷状態に基づいて、印刷シートに対する印刷処理を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、印刷シートの印刷状態を好適に検出する、コンパクトなラインセンサを用いることができる。このため、枚葉印刷機に適したラインセンサを用いて、印刷シートの印刷状態が良好となるように、制御装置により印刷処理を制御することができる。これにより、印刷シートの印刷品質を好適に保つことができる。
【0019】
本発明の枚葉印刷機は、印刷シートを供給可能な給紙装置と、給紙装置から供給された印刷シートに印刷処理を行う印刷装置と、印刷後の印刷シートの印刷状態を検出する上記のラインセンサと、印刷シートを排紙する排紙装置と、ラインセンサにより検出された印刷シートの印刷状態に基づいて、印刷シートに対する印刷処理を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、印刷シートの印刷状態を好適に検出する、コンパクトなラインセンサを用いることができるため、ラインセンサを圧胴と印刷胴との間に近づけて配設することが可能となる。つまり、圧胴および印刷胴の間と照射面との距離を短くできるため、ラインセンサは、圧胴と印刷胴との間に挟まれた状態の印刷シートに対し、照射光を印刷シートの印刷胴側の端部まで照射することができる。これにより、印刷シートが圧胴と印刷胴との間から離れて、印刷シートの端部が浮き上がったとしても、圧胴および印刷胴の間と照射面との距離が短いことから、ラインセンサは、印刷シートの浮き上がりによる検出精度の低下を抑制することができる。よって、制御装置は、ラインセンサにより好適に検出された印刷シートの印刷状態に基づいて、印刷処理を制御することができるため、印刷シートの印刷品質を適切に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のラインセンサ、品質管理装置および枚葉印刷機によれば、コンパクトな構成としつつ、印刷シートの印刷状態を好適に検出することができ、これにより、印刷シートの印刷品質を適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本実施例に係る枚葉印刷機を表した概略構成図である。
【図2】図2は、ラインセンサ周りの構成を表した概略構成図である。
【図3】図3は、ラインセンサの一部を破断して表した部分断面図である。
【図4】図4は、複数のLEDと複数の受光素子とを表した説明図である。
【図5】図5は、複数のLEDから集光レンズを介して照射された照射光を表した説明図である。
【図6】図6は、枚葉紙の搬送方向における照射光の光量を表したグラフである。
【図7】図7は、枚葉紙の幅方向における照射光の光量を表したグラフである。
【図8】図8は、本実施例に係る枚葉印刷機の制御系を機能的に表したブロック図である。
【図9】図9は、本実施例の光路と逆方向になるラインセンサを表した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係るラインセンサおよび枚葉印刷機について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0024】
図1は、本実施例に係る枚葉印刷機を表した概略構成図である。図2は、ラインセンサ周りの構成を表した概略構成図である。図1に示すように、本実施例の枚葉印刷機1は、印刷シートとしての枚葉紙Sに対して、片面印刷を実施可能なオフセット枚葉印刷機である。なお、本実施例では、片面印刷を行う枚葉印刷機1に適用して説明するが、両面印刷を行う枚葉印刷機に適用してもよい。
【0025】
枚葉印刷機1は、給紙部11と印刷部12と排紙部13とからなる印刷機本体5と、制御装置6とから構成されている。なお、枚葉紙Sとは、印刷シートであればいずれであってもよく、例えば、印刷用紙や印刷用フィルム等を含む意である。印刷機本体5において、給紙部11、印刷部12および排紙部13は、枚葉紙Sの搬送方向に直列に配置されている。
【0026】
給紙部11は、給紙台21と給紙機構(セパレータ装置)22とを有している。給紙台21は、枚葉紙Sを積み重ねて載置するものであり、また、給紙機構22は、給紙台21上に積み重ねられた多数の枚葉紙Sを上から順に1枚ずつ取り上げて送り出すものである。この場合、給紙台21は、給紙機構22が枚葉紙Sと略一定の高さ位置関係を維持できるように、枚葉紙Sの供給に対応して上下に移動可能となっている。
【0027】
給紙部11と印刷部12との間には、搬送機構23が配置されている。この搬送機構23は、給紙部11から送り出された枚葉紙Sを搬送して、図示しない前当てにより、所定の位置に位置決めし、位置決めされた枚葉紙Sを印刷部12に供給するものである。
【0028】
印刷部12は、カラー印刷を実現できるように、黒(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)及び黄(Yellow)の4色に対応して4台の印刷ユニット12a,12b,12c,12dを有している。各印刷ユニット12a,12b,12c,12dは、ほぼ同様の構成をなし、インキ装置36と、版胴32と、ブランケット胴33と、圧胴34と、中間胴35とを備えている。なお、インキ装置36から版胴32との間には、インキの供給経路となる複数のインキローラが配設されている。
【0029】
図2に示すように、インキ装置36は、版胴32へ向けてインキを供給するものであり、インキを貯留可能なインキ壷37と、インキ元ローラ38と、インキキー39と、インキキー開度調整部40とを有している。インキ元ローラ38は、回転することによりインキ壷37に貯留したインキを引き出している。インキキー39は、インキキー開度調整部40によりその開度が調整されることで、インキ元ローラ38によって引き出されるインキ量を調整可能となっている。このとき、インキキー開度調整部40は、制御装置6に接続されており、制御装置6によりインキキー39の開度が制御可能となっている。
【0030】
版胴32とブランケット胴33と圧胴34とは、鉛直方向上側から下側にこの順で相互に接するように配置されている。各印刷ユニット12a,12b,12c,12dの各圧胴34の間には、中間胴35が接するように配置されている。そして、インキ装置36は、版胴32を介してブランケット胴33にインキを供給し、ブランケット胴33と圧胴34との間に枚葉紙Sを通過させると、ブランケット胴33から枚葉紙Sにインキ(絵柄)が転写される。
【0031】
排紙部13は、印刷部12で印刷された枚葉紙Sを搬送し、整列した状態で積み重ねるものである。この排紙部13は、枚葉紙Sを搬送するチェーングリッパ機構41と、印刷された枚葉紙Sが積層される排紙台42と、排紙台25にて枚葉紙Sの進行方向における下流側位置を規制する紙当て43とを有している。チェーングリッパ機構41は、枚葉紙Sの進行方向に対して最下流側に配置される印刷ユニット12dから枚葉紙Sを受け取って排紙台42の上方位置の所定位置まで搬送する。チェーングリッパ機構41は、一対のスプロケット45,46と、無端のチェーン47と、チェーン48に等間隔で設けられた複数の爪49を有している。排紙台42は、枚葉紙Sが積層されるにしたがって最上段の上面部高さが上昇した場合に、枚葉紙Sの落下距離が略一定となるように連続的、あるいは、段階的に昇降可能となっている。
【0032】
また、最下流側に配置される印刷ユニット12dには、印刷後の枚葉紙Sの品質を検査するために用いられるラインセンサ50が配設されている。このラインセンサ50は、枚葉紙Sの全幅に亘って配設されており、枚葉紙Sが搬送されることにより、枚葉紙Sの印刷面の印刷状態を検出することができる。なお、ラインセンサ50を用いた品質検査については、後述する。
【0033】
従って、上述した実施例1の枚葉印刷機1の印刷機本体5では、カラー印刷を行う場合、給紙部11の給紙台21に積載された枚葉紙Sは、給紙機構22により最上部から1枚ずつ取り出されて搬送機構23に送り出され、この搬送機構23は、枚葉紙Sを所定の位置に位置決めした後、順次、印刷部12に供給する。この印刷部12では、印刷ユニット12a,12b,12c,12dにより枚葉紙Sの印刷面に対して、4色の印刷絵柄が印刷される。4色の印刷絵柄が印刷された枚葉紙Sは、印刷部12から排紙部13のチェーングリッパ機構41の爪49に咥えられながら搬送され、排紙台42上に積み上げられる。
【0034】
続いて、図2を参照して、ラインセンサ50周りの構成について説明する。ラインセンサ50は、最終色となる印刷ユニット12dの圧胴34の上方側に設けられ、圧胴34に対向して設けられている。つまり、印刷ユニット12dにおいて、版胴32とブランケット胴33と圧胴34とが上下方向に沿って直列に対接して配置されており、ラインセンサ50は、ブランケット胴33および圧胴34よりも回転方向(枚葉紙Sの搬送方向)の下流側に位置すると共に、圧胴34に対向して設けられている。この場合、印刷ユニット12dの圧胴34は、印刷部12における最終圧胴として構成されていることから、ラインセンサ50は、印刷後の枚葉紙Sの印刷状態を検出することが可能となっている。なお、圧胴34は、版胴32およびブランケット胴33に対して2倍胴であり、圧胴34が1回転する間に版胴32およびブランケット胴33が同期して2回転する。
【0035】
圧胴34には、外周部に枚葉紙Sの前端部を保持可能な1つの保持爪34a,34bが周方向に等間隔で設けられている。また、ブランケット胴33の外周面には、中心側に窪むギャップ52が形成されている。このとき、ブランケット胴33は、外周面において圧胴34の保持爪34a,34bとの接触を回避するように、ギャップ52と保持爪34a,34bとを対向させて設けられている。このため、圧胴34とブランケット胴33が同期して回転するとき、保持爪34a,34bとギャップ52との回転位相が一致することで、両者の接触が回避される。
【0036】
ラインセンサ50は、制御装置6に接続されており、制御装置6は、ラインセンサ50によって検出された枚葉紙Sの印刷面の印刷状態に基づいて、印刷機本体5による印刷処理を制御することにより、枚葉紙Sの印刷品質を維持している。つまり、ラインセンサ50と制御装置6とは、品質管理装置として機能している。
【0037】
ラインセンサ50を挟んで、枚葉紙Sの搬送方向の両側には、一対のエアーノズル55が設けられている。一対のエアーノズル55は、図示しない空気供給装置へ接続されており、各エアーノズル55は、枚葉紙Sの幅方向に亘って設けられている。そして、一対のエアーノズル55は、空気供給装置から供給されたエアーをブランケット胴33と圧胴34との間へ向けて吹きつけている。
【0038】
次に、図3を参照して、ラインセンサ50について、具体的に説明する。図3は、ラインセンサの一部を破断して表した部分断面図である。このラインセンサ50は、圧胴34およびブランケット胴(印刷胴)33の間から送り出される枚葉紙Sに対し、照射光を照射し、枚葉紙Sから反射した反射光を受光して、枚葉紙Sの印刷状態を検出するものである。また、ラインセンサ50は、制御装置6に接続されており、枚葉紙Sの印刷状態を制御装置6へ向けて出力している。このラインセンサ50は、LED光源部61と、集光レンズ62と、集光レンズ(受光側集光レンズ)63と、受光部64と、これらを覆うカバーケース65とを有している。
【0039】
カバーケース65は、幅方向に長い長方体形状に形成されている。カバーケース65は、圧胴34を周回する枚葉紙Sの照射面と対向する対向面のうち、搬送方向の上流側の対向面が水平面65aとなる一方で、搬送方向の下流側の対向面が照射面から広がるように傾斜する傾斜面65bとなっている。この傾斜面65bは、水平面65aに対し45°傾斜している。このため、傾斜面側(搬送方向の下流側)にあるエアーノズル55から吹き付けられたエアーは、傾斜面65bと圧胴34との間に流入し易い。なお、本実施例では、傾斜面65bを45°としたが、この角度に限定されない。このとき、エアーノズル55から吹き付けられるエアーの吹付け角度は、傾斜面65bに合わせた角度となっているが、カバーケース65に吹き当たらないように、水平方向に近づけた吹付け角度としてもよい。また、カバーケース65の水平面65aには、照射光および反射光が通過する透過窓68が設けられており、透過窓68は、透明のアクリル板で構成されている。カバーケース65の傾斜面65bの内側には、受光部64が設けられている。
【0040】
このカバーケース65は、ラインセンサ50を回動自在に支持する回動軸70に取り付けられている。回動軸70は、照射光を照射する照射位置と、保守を行うための保守位置との間でカバーケース65を回動自在に支持している。照射位置は、カバーケース65の透過窓68が水平となる位置である。保守位置は、回動軸70を中心として、カバーケース65の透過窓68がブランケット胴33から離れる方向に回動した位置であり、メンテナンスの作業が可能な位置である。保守位置に移動したカバーケース65は、メンテナンスとして、例えば、透過窓68が拭き取られる。
【0041】
図4は、複数のLEDと複数の受光素子とを表した説明図である。図5は、複数のLEDから集光レンズを介して照射された照射光を表した説明図である。図4に示すように、LED光源部61は、幅方向に並べて設けられた複数のLED73を有している。複数のLED73は、赤色(R色)に発光するLED73aと、緑色(G色)に発光するLED73bと、青色(B色)に発光するLED73cと、赤外線(Ir)を発光するLED73dとを有している。なお、本実施例では、R、G、BおよびIrのLED73a、73b、73c、73dを用いたが、少なくともR、GおよびBのLED73a、73b、73cを用いればよい。
【0042】
複数のLED73は、所定の順序となった各LED73a、73b、73c、73dを1つのグループとし、このグループを幅方向に並べている。つまり、複数のLED73は、所定の順序が繰り返されるように各LED73a、73b、73c、73dを幅方向に並べている。また、複数のLED73は、隣接するLED73の間が所定の間隔となっている。このとき、図5に示すように、所定の間隔は、同じ種類のLED73a、73b、73c、73dから照射された照射光が、幅方向の端部から中央部にかけて、すなわち幅方向の一部において重複するような間隔となっている。これにより、例えば、R色のLED73aから照射された照射光の幅方向の一部が、幅方向の次のR色のLED73aから照射された照射光の幅方向の一部に重なり合うことで、複数のR色のLED73aの照射光は、幅方向に補完し合う。
【0043】
このように構成されたLED光源部61は、カバーケース65の内部に配置され、受光部64と比較してブランケット胴33側に設けられている。また、LED光源部61は、透過窓68を介して、圧胴34を周回する枚葉紙Sの照射面に、照射光を受光部64へ向けて一方向に照射している。このとき、LED光源部61は、枚葉紙Sの照射面に対する照射角度が垂直、すなわち90°となるように照射光を照射している。
【0044】
また、LED光源部61は、枚葉紙Sの幅方向において、十分な光量を確保すべく、枚葉紙Sの幅方向の中央部における光量に比して、枚葉紙Sの幅方向の両端部における光量を多くしている。つまり、LED光源部61は、幅方向に並んだ複数のLED73のうち、幅方向両側のLED73の光量を多くしている。なお、本実施例において、LED光源部61は、枚葉紙Sの幅方向の両端部における光量を多くしたが、この構成に限定されない。LED光源部61は、枚葉紙Sの幅方向において、十分な光量を確保すべく、枚葉紙Sの幅よりも大きな幅となるように照射光を照射してもよい。つまり、LED光源部61は、枚葉紙Sよりも大きくなるように、複数のLED73が幅方向に並べられている。
【0045】
集光レンズ62は、LED光源部61と透過窓68との間に設けられ、カバーケース65の内側に支持された状態で、枚葉紙Sの幅方向に亘って設けられている。集光レンズ62は、例えば、断面円形状のロッドレンズで構成され、枚葉紙Sの幅方向における拡散を許容する一方で、枚葉紙Sの搬送方向において集光している。つまり、集光レンズ62は、異方向に屈折率が異なるレンズであり、具体的に、枚葉紙Sの幅方向における屈折率に比して、枚葉紙Sの搬送方向における屈折率の高いレンズである。また、集光レンズ62は、集光した照射光の焦点が枚葉紙Sの照射面に位置するように配置される。なお、本実施例では、集光レンズ62として、ロッドレンズを用いたが、これに限定されず、シリンドリカルレンズ、フレネルレンズ、球面レンズ、凸レンズ等の表面屈折を利用したレンズを用いてもよい。
【0046】
ここで、図6および図7を参照し、集光レンズ62を介してLED光源部61から照射された照射光の光量について説明する。図6は、枚葉紙の搬送方向における照射光の光量を表したグラフである。図7は、枚葉紙の幅方向における照射光の光量を表したグラフである。図6のグラフでは、その横軸が搬送方向であり、その縦軸が光量である。また、図7のグラフでは、その横軸が幅方向であり、その縦軸が光量である。
【0047】
図6に示すように、枚葉紙Sの搬送方向における光量は、搬送方向の中央における光量が最も高く、搬送方向の中央から両側へ向かうにつれて急減する。これは、LED光源部61からの照射光が、集光レンズ62によって搬送方向に集光されるからである。図7に示すように、枚葉紙Sの幅方向における光量は、各LED73から照射された照射光が幅方向に重なり合い、幅方向に補完し合っている。このとき、LED光源部61からの照射光は、集光レンズ62によって幅方向への拡散が許容されていることから、幅方向における照射光は、搬送方向における照射光に比して広がっている。
【0048】
図3に示すように、集光レンズ63は、枚葉紙Sの照射面から反射した反射光を集光し、集光した反射光を受光部64へ入射させている。また、集光レンズ63は、集光した反射光の焦点が受光部64に位置するように配置される。なお、本実施例では、集光レンズ63を用いたが、これに代えて、複数の集光レンズを受光部64の入射方向に積層した積層レンズを用いてもよい。
【0049】
図4に示すように、受光部64は、幅方向に隙間なく並べて設けられた複数の受光素子75を有している。このため、複数の受光素子75は、複数のLED73に比して多く設けられている。受光部64は、カバーケース65の内部に配置され、LED光源部61を挟んで、ブランケット胴33の反対側に設けられている。具体的に、受光部64は、カバーケース65の傾斜面65bの内側に設けられていることから、枚葉紙Sの照射面から45°の反射角度で反射した反射光を受光している。そして、受光部64は、LED光源部61から一方向に照射された照射光を、照射面を介して反射光として受光する。
【0050】
ここで、LED光源部61から枚葉紙Sの照射面に至る距離は、枚葉紙Sの照射面から受光部64に至る距離に比して短くなっている。つまり、LED光源部61から枚葉紙Sの照射面に至る距離を短くすることにより、LED光源部61から照射された照射光の拡散を抑制することができるため、枚葉紙Sの照射面に対する照射光の光量を確保することができる。
【0051】
従って、照射位置にあるラインセンサ50は、LED光源部61から枚葉紙Sの照射面へ向けて照射光を照射すると、集光レンズ62により集光される。集光レンズ62は、その焦点が枚葉紙Sの照射面に位置しているため、照射光は、枚葉紙Sの照射面において、枚葉紙Sの搬送方向に集光した状態で照射される。集光レンズ62により集光された照射光は、透過窓68を介して、枚葉紙Sの照射面に対し垂直に照射する。枚葉紙Sの照射面に照射された照射光は、枚葉紙Sの照射面に反射して反射光となる。集光レンズ63は、その焦点が受光部64に位置しているため、集光レンズ63を通過した反射光は、集光した状態で受光部64に入射する。そして、受光部64は、枚葉紙Sの照射面から45°の反射角度で反射した反射光を受光する。このとき、LED光源部61は、照射光を一方向に照射しており、受光部64は、LED光源部61から一方向に照射された照射光を反射光として受光していることから、ラインセンサ50は、LED光源部61から受光部64までの光路が一方向となる。
【0052】
次に、図8を参照して、制御装置6について説明する。図8は、本実施例に係る枚葉印刷機の制御系を機能的に表したブロック図である。枚葉印刷機1は、ラインセンサ50により検出された枚葉紙Sの印刷状態に基づいて、制御装置6により印刷機本体5を制御することで、枚葉紙Sの印刷品質を維持している。つまり、制御装置6は、枚葉紙Sの印刷状態の品質を管理する品質管理装置の一部として機能している。制御装置6は、処理部80と、記憶部81と、表示部82を有している。
【0053】
記憶部81は、各種プログラム等を実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリ、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。そして、この記憶部81には、印刷絵柄データ記憶部85と、見本絵柄データ記憶部86とが設けられている。
【0054】
印刷絵柄データ記憶部85は、ラインセンサ50により読み取られた枚葉紙Sの印刷絵柄を、印刷絵柄データとして記憶する。この印刷絵柄データは、枚葉紙Sの印刷状態をデータ化ものであり、各色(C,M,Y,K)の網点面積率、濃度、または色座標値(L,a,b)に関するデータが含まれている。
【0055】
見本絵柄データ記憶部86は、印刷絵柄データと比較される見本絵柄データを記憶する。見本絵柄データは、枚葉紙Sに印刷される絵柄パターンをデータ化したものであり、版胴32に巻回される刷版を作製するために用いられる、いわゆる製版データである。つまり、制御装置6には、見本絵柄データに基づいて刷版を製造する製版システム100が接続されており、製版システム100は、見本絵柄データを制御装置6へ向けて出力する。そして、制御装置6は、製版システム100から入力された見本絵柄データを記憶する。見本絵柄データも、印刷絵柄データと同様に、各色(C,M,Y,K)の網点面積率、濃度、または色座標値(L,a,b)に関するデータが含まれている。なお、見本絵柄データは、枚葉紙Sの試し刷り時において、枚葉紙Sに印刷された絵柄が最適な印刷状態となったときに、ラインセンサ50から読み取ってもよい。そして、制御装置6は、枚葉紙Sの印刷時において、この見本絵柄データと、ラインセンサ50で読み取った印刷絵柄データとを比較して、濃度調整または品質検査等を行う。
【0056】
処理部80は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されており、記憶部81に記憶された各種プログラムや各種絵柄データに基づいて、各種制御処理を実行することが可能となる。ここで、処理部80は、版掛け誤り判別部92と、濃度比較部93と、インキキー開度制御部94と、印刷欠陥判別部96とを有している。
【0057】
版掛け誤り判別部92は、見本絵柄データと印刷絵柄データとを比較することにより、版胴32に巻回される刷版の掛け誤りを判別している。版掛け誤り判別部92は、このような比較を複数のエリアについて行い、その全体的な一致/不一致によって刷版の掛け誤りを判別している。版掛け誤り判別部92の判別結果は制御装置6の表示部82に出力され、刷版の掛け誤りがある場合には表示部82に警告が表示される。
【0058】
濃度比較部93は、印刷絵柄データ記憶部85に記憶された印刷絵柄データと、見本絵柄データ記憶部86に記憶された見本絵柄データとを比較し、濃度差を計算する。
【0059】
インキキー開度制御部94は、濃度比較部93で計算された濃度差に応じて、インキキー39の開度を調整するように、インキキー開度調整部40を制御する。インキキー開度制御部94は、インキキー開度調整部40により濃度差がなくなるようにインキキー39の開度を調整することで、インキ元ローラ38とインキキー39との間を変化させ、インキの供給量を変化させる。インキキー開度制御部94の制御結果は制御装置6の表示部82に出力され、インキキー39の現在のインキキー開度が表示部82に表示される。
【0060】
印刷欠陥判別部96は、濃度差または濃度差に関するパラメータを所定の閾値と比較する。ここでは、インキが付くべきところにインキが付いていない場合や、インキが付きすぎて絵柄が潰れてしまっている場合のように印刷濃度に異常が生じる欠陥を判別する。印刷欠陥判別部96の制御結果は制御装置6の表示部82に出力され、印刷欠陥がある場合には表示部82に警告が表示される。
【0061】
このように、本実施例の制御装置6は、ラインセンサ50で読み取られた印刷絵柄データを用いて、刷版の掛け誤りを判別し、インキキー開度を調整して濃度差をなくし、さらに印刷欠陥を判別することができる。
【0062】
なお、ラインセンサ50を用いた制御は、上記した制御に限らず、例えば、見当制御を行うことも可能である。見当制御は、枚葉紙Sに対する印刷絵柄のずれを補正する制御である。枚葉紙Sには、印刷絵柄とともに見当マークが印刷され、ラインセンサ50は、枚葉紙Sに印刷された見当マークを読み取っている。つまり、印刷絵柄データには、見当マークに関するデータを含み、見本絵柄データには、見本となる見当マークに関するデータを含んでいる。そして、制御装置6は、印刷絵柄データの見当マークと、見本絵柄データの見当マークとを比較することで、見当ズレの発生を判別する。制御装置6は、見当ズレが発生していると判別した場合、印刷部12の版胴32の位置を適宜調整することで見当ズレを補正する。もちろん、見当マークが絵柄にない場合、見当ズレを検出可能な絵柄部分に基づいて見当ズレを制御しても良い。
【0063】
以上のように、本実施例の構成によれば、LED光源部61は、枚葉紙Sの照射面に対する照射角度を垂直にすることができ、また、LED光源部61と枚葉紙Sの照射面との距離を、枚葉紙Sの照射面と受光部64との距離に比して短くすることができる。これにより、LED光源部61から枚葉紙Sの照射面までの距離を短くできるため、距離が短くできる分、LED光源部61からの照射光の拡散を抑制でき、照射面におけるLED光源部61からの光量を大きくすることができる。また、集光レンズ62は、照射光を枚葉紙Sの搬送方向へ集光することができることから、照射面におけるLED光源部61からの光量をさらに大きくすることができる。一方で、集光レンズ62は、照射光の幅方向への拡散を許容することから、幅方向に所定の間隔を空けて並べられた各LED73a,73b,73c,73dのうち、同種の各LED73a,73b,73c,73dから照射される各照射光の両端部は、幅方向において互いに重なり合う。このため、同種の各LED73a,73b,73c,73dから照射される照射光は、幅方向に亘って補完される。このため、使用するLED73の個数を削減することができる。このとき、LED光源部61は、照射光を一方向に照射しており、受光部64は、LED光源部61から一方向に照射された照射光を反射光として受光していることから、LED光源部61から受光部64までの光路を一方向とすることができるため、ラインセンサ50の構成をコンパクトにすることができる。また、ラインセンサ50の構成がコンパクトになると、圧胴34とブランケット胴33との間に、ラインセンサ50を近づけて配設することが可能となる。つまり、圧胴34およびブランケット胴33の間と枚葉紙Sの照射面との距離を短くできるため、LED光源部61は、圧胴34とブランケット胴33との間に挟まれた状態の枚葉紙Sに対し、照射光を枚葉紙Sの紙尻端まで照射することができる。これにより、枚葉紙Sが圧胴34とブランケット胴33との間から離れて、枚葉紙Sの紙尻端が浮き上がったとしても、圧胴34およびブランケット胴33の間と照射面との距離が短いことから、枚葉紙Sの浮き上がりの影響を軽減でき、枚葉紙Sの印刷状態に係る検出精度の低下を抑制することができる。
【0064】
さらに、図3に示すように、LED光源部61は、枚葉紙Sの照射面に対する照射角度を垂直にすることができ、照射光の拡散を抑制できることから、拡散した照射光が爪部に照射されることを抑制でき、爪部での散乱光の発生を抑制することができる。ここで、図9を参照して、本実施例と異なる構成となるラインセンサ105について説明すると共に、図3に示すラインセンサの散乱光と、図9に示すラインセンサ105の散乱光とについて説明する。
【0065】
図9は、本実施例の光路と逆方向になるラインセンサを表した概略構成図である。このラインセンサ105は、本実施例のラインセンサ50のLED光源部61から受光部64へ至る光路が逆方向となっている。つまり、ラインセンサ105の光源部107は、枚葉紙Sの照射面に対する照射角度が45°となるように照射光を照射している。また、ラインセンサ105の受光部108は、枚葉紙Sの照射面から90°の反射角度で反射した反射光を受光している。
【0066】
従って、ラインセンサ105は、光源部107から枚葉紙Sの照射面へ向けて照射光を照射すると、照射光は、枚葉紙Sの照射面に対し、45°の照射角度で照射される。枚葉紙Sの照射面に照射された照射光は、枚葉紙Sの照射面に反射して反射光となる。受光部108は、枚葉紙Sの照射面から90°の反射角度で反射した反射光を受光する。このとき、光源部107は、照射光を一方向に照射しており、受光部108は、光源部107から一方向に照射された照射光を反射光として受光していることから、ラインセンサ105は、光源部107から受光部108までの光路が一方向となる。
【0067】
ここで、図9に示す光源部107は、枚葉紙Sの照射面に対する照射角度が45°となっている。このため、圧胴34の爪部34a,bが照射面よりも搬送方向の上流側にある場合、光源部107から発生した照射角度が45°以外の照射光は、その一部が圧胴34の爪部34a,bへ向かい易く、また、爪部34a,bに反射した反射光は受光部108に入射し易い。また、照射光の他の一部は、照射面に反射して受光部108に入射し易い。このため、受光部108には、照射光が散乱した散乱光が入射し易いことから、ラインセンサ105は、散乱光の影響による検出精度の低下を招く虞がある。
【0068】
一方で、図3に示すLED光源部61は、枚葉紙Sの照射面に対する照射角度が90°となっている。このため、圧胴34の爪部34a,bが照射面よりも搬送方向の上流側にある場合であっても、LED光源部61から発生した照射角度が90°以外の照射光は、圧胴34の爪部34a,bへ向かい難く、また、照射面に反射して受光部64に入射し難い。このため、受光部64には、照射光が散乱した散乱光が入射し難いことから、散乱光が受光部64に入射することを抑制できるため、ラインセンサ50は、散乱光の影響による検出精度の低下を抑制でき、枚葉紙Sの印刷状態を好適に検出することができる。さらに、LED光源部61をブランケット胴33側に位置させることができるため、爪部34a,34bが通過してから枚葉紙Sに照射光を照射することができ、照射光が爪部34a,34bに照射されて散乱することを抑制することができ、枚葉紙Sの印刷状態に係る検出精度の低下を抑制することができる。
【0069】
また、本実施例の構成によれば、LED光源部61は、枚葉紙Sの幅方向の中央部における光量に比して、枚葉紙Sの幅方向の両端部における光量を多くすることができる。これにより、LED光源部61の幅方向が枚葉紙Sの幅方向とほぼ同じ長さである場合、枚葉紙Sの幅方向の外側にLED光源部61がなくても、枚葉紙Sの幅方向における両端部の光量を多くすることで、枚葉紙Sの幅方向における両端部の光量の低下を補うことができる。このため、ラインセンサ50は、光量低下による検出精度の低下を抑制することができる。
【0070】
また、本実施例の構成によれば、枚葉紙Sの紙尻端のばたつきを抑制するために、圧胴34とブランケット胴33との間へ向けてエアーを吹きつける場合、圧胴34と傾斜面65bとが広がっているため、吹きつけられたエアーがカバーケース65によって妨げられることなく、圧胴34とブランケット胴33との間に好適にエアーを流入させることができる。
【0071】
また、本実施例の構成によれば、回動軸70を中心に、カバーケース65を照射位置と保守位置との間で回動させることができるため、保守作業を好適に行うことが可能となる。
【0072】
また、本実施例の構成によれば、集光レンズ63を設けることにより、受光部64に入射する反射光の光量を多くすることができるため、光量の低下による検出精度の低下を抑制することができる。
【0073】
なお、本実施例では、片面印刷を行う枚葉印刷機1について説明したが、この構成に限らず、両面印刷を行う枚葉印刷機に適用してもよい。この場合、枚葉紙Sの一方の印刷面の印刷状態を検出するラインセンサと、枚葉紙Sの他方の印刷面の印刷状態を検出するラインセンサとを設けることが好ましい。この場合、ラインセンサを用いた制御として、上記と同様に、制御装置6は、刷版の掛け誤りを判別する制御、インキキー開度を調整して濃度差をなくす制御、さらに印刷欠陥を判別する制御、見当制御等を実行する。なお、見当制御については、枚葉紙Sの一方の印刷面(表面)における見当制御と、枚葉紙Sの他方の印刷面(裏面)における見当制御とを実行することにより、枚葉紙Sの表裏の印刷絵柄の位置合わせを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 枚葉印刷機
5 印刷機本体
6 制御装置
11 給紙部
12 印刷部
13 排紙部
32 版胴
33 ブランケット胴
34 圧胴
35 中間胴
36 インキ装置
39 インキキー
40 インキキー開度調整部
50 ラインセンサ
52 ギャップ
55 エアーノズル
61 LED光源部
62 集光レンズ
63 集光レンズ
64 受光部
65 カバーケース
65b 傾斜面
68 透過窓
70 回動軸
73 LED
75 受光素子
80 処理部
81 記憶部
85 印刷絵柄データ記憶部
86 見本絵柄データ記憶部
92 版掛け誤り判別部
93 濃度比較部
94 インキキー開度制御部
96 印刷欠陥判別部
S 枚葉紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧胴の周面に位置する爪部によって咥えられながら、前記圧胴と前記圧胴に対向する印刷胴との間から順次送り出される印刷シートの印刷状態を検出する、前記印刷シートの幅方向に亘って設けられた枚葉印刷機のラインセンサであって、
少なくともR色、G色およびB色の発光色を含む複数のLEDが所定の間隔を空けて前記幅方向に並べて配置されるLED光源部と、
前記複数のLEDに対向するように前記幅方向に亘って設けられ、前記LED光源部から照射された照射光が前記幅方向へ拡散することを許容しつつ、前記照射光を前記幅方向と直交する前記印刷シートの搬送方向へ集光する集光レンズと、
前記複数のLEDよりも多い複数の受光素子が前記幅方向に並べて配置され、前記集光レンズで集光された前記照射光が照射される前記印刷シートの照射面から反射した反射光を受光する受光部と、を備え、
前記LED光源部は、前記受光部に比して前記印刷胴側に設けられ、前記照射面に対する照射角度が垂直となるように前記照射光を一方向に照射しており、
前記受光部は、前記LED光源部を挟んで前記印刷胴の反対側に設けられ、前記LED光源部から一方向に照射された前記照射光を、前記照射面を介して前記反射光として受光し、
前記LED光源部と前記照射面との距離は、前記照射面と前記受光部との距離に比して短いことを特徴とするラインセンサ。
【請求項2】
前記LED光源部は、前記印刷シートの幅方向の中央部における光量に比して、前記印刷シートの幅方向の両端部における光量が多いことを特徴とする請求項1に記載のラインセンサ。
【請求項3】
前記LED光源部は、前記印刷シートよりも大きな幅となるように前記照射光を照射することを特徴とする請求項1に記載のラインセンサ。
【請求項4】
前記LED光源部、前記集光レンズおよび前記受光部を覆うケースを更に備え、
前記ケースは、前記照射面と対向する対向面を有し、
前記対向面は、前記圧胴と前記印刷胴との間から送り出される前記印刷シートの搬送方向の下流側において、前記対向面と前記照射面との間が広がるように傾斜する傾斜面となっており、
前記受光部は、前記ケースの内部において、前記傾斜面の内側に設けられ、
前記LED光源部は、前記ケースの内部において、前記印刷胴と前記受光部との間に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のラインセンサ。
【請求項5】
前記照射光を前記照射面に照射する照射位置と、保守を行うための保守位置との間で前記ケースを回動自在に支持する回動軸を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載のラインセンサ。
【請求項6】
前記幅方向に亘って設けられ、前記反射光を集光して前記受光部へ入射させる受光側集光レンズを更に備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のラインセンサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のラインセンサと、
前記ラインセンサにより検出された前記印刷シートの印刷状態に基づいて、前記印刷シートに対する印刷処理を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする品質管理装置。
【請求項8】
前記印刷シートを供給可能な給紙装置と、
前記給紙装置から供給された前記印刷シートに印刷処理を行う印刷装置と、
印刷後の前記印刷シートの印刷状態を検出する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のラインセンサと、
前記印刷シートを排紙する排紙装置と、
前記ラインセンサにより検出された前記印刷シートの印刷状態に基づいて、前記印刷シートに対する前記印刷処理を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする枚葉印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−107347(P2013−107347A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255559(P2011−255559)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】