説明

ラインヘッドおよび画像形成装置

【課題】小型化を図りつつ、高精度な露光処理を実現することができるラインヘッドを提供すること、また、高品位な画像を得ることができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】ラインヘッド13は、第1の基板71と、第1の基板71上に配設された複数の発光素子72を含む回路部とを備える発光基板ユニット7と、第1の基板71から引き出されるように設けられ、前記回路部に接続された配線を備えるフレキシブルプリント基板である配線ユニット9と、配線ユニット9上に設けられ、各発光素子72を駆動する駆動回路の少なくとも一部が形成された半導体素子であるドライバIC85とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインヘッドおよびそれを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる複写機、プリンター等の画像形成装置には、感光体の外表面を露光処理して静電潜像を形成する露光手段が備えられている。かかる露光手段としては、複数の発光素子を主走査方向に配列した構造を有するラインヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、特許文献1に開示されたラインヘッドでは、発光素子としてLED(発光ダイオード)を用いており、配線ボード(基板)上に、複数のLEDを含む複数のLEDアレイと、各LEDアレイを駆動する複数のICドライバとが設けられている。複数のLEDアレイは、LEDが主走査方向(感光体ドラムの軸線方向)に配列されるように当該軸線方向に並設されている。また、複数のICドライバは、複数のLEDアレイに対応して主走査方向に互いに間隔を隔てて並設されている。
【0003】
このように構成されたラインヘッドでは、LEDおよびICドライバが同一基板上に設置されているため、基板が大型化し、その結果、ラインヘッドの大型化を招いてしまう(特に幅や長さが大きくなる)。
また、仮にICドライバを単にLEDとは別の基板上に設けた場合、LEDとICドライバとの間の配線の長さが長くなり、当該配線からノイズが混入するおそれがある。その結果、ラインヘッドの露光特性の低下を招いてしまう。特に、LEDアレイに並列して両側にドライバICが配置されたり、LEDアレイの走査線方向の両端部にドライバICが配置されると、LEDとICドライバとの間の配線の数が多いほど、混入するノイズが多くなり、ラインヘッドの露光特性の低下が顕著となる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−229440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、小型化を図りつつ、高精度な露光処理を実現することができるラインヘッドを提供すること、また、高品位な画像を得ることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のラインヘッドは、基板、及び該基板に配設された発光素子を含む回路部を備える発光基板ユニットと、
前記基板から引き出されるように設けられ、前記回路部に電気的に接続された配線を備えるフレキシブルプリント基板と、
前記フレキシブルプリント基板に設けられ、前記発光素子を駆動する駆動回路の少なくとも一部が形成された半導体素子と、
を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のラインヘッドでは、前記発光素子を選択するように切り換える切換部を有し、前記駆動回路は、該切換部の切り換えにより選択された前記発光素子を駆動するように構成されることが好ましい。
本発明のラインヘッドでは、本発明の前記半導体素子は、ラッチ回路を備え、該ラッチ回路の機能により、前記切換部の切り換えにより選択された複数の発光素子を同時に駆動することが好ましい。
【0008】
本発明のラインヘッドでは、前記発光素子は、第1の方向に配設され、前記フレキシブルプリント基板は、前記基板から前記第1の方向と直交もしくは略直交する第2の方向に引き出されるように設けられていることが好ましい。
本発明のラインヘッドでは、前記フレキシブルプリント基板は、前記第1の方向に複数配設されることが好ましい。
本発明のラインヘッドでは、前記回路部は、前記フレキシブルプリント基板と接続される接続部を備え、該接続部は、前記第1の方向に配設された接続端子を含むことが好ましい。
【0009】
本発明の画像形成装置は、潜像担持体と、
前記潜像担持体を露光するラインヘッドと、を有し、
前記ラインヘッドは、
基板、及び該基板に配設された発光素子を含む回路部とを備える発光基板ユニットと、
前記基板から引き出されるように設けられ、前記回路部に電気的に接続された配線を備えるフレキシブルプリント基板と、
前記フレキシブルプリント基板に設けられ、前記発光素子を駆動する駆動回路の少なくとも一部が形成された半導体素子と、を有することを特徴とする。
【0010】
以上のような構成を有する本発明のラインヘッドによれば、半導体素子をフレキシブルプリント基板上に設けることで、発光素子が設けられた基板の小型化を図ることができる。また、半導体素子と発光素子との間の配線の長さを比較的短く抑えることができるので、当該配線へのノイズの混入を防止または抑制することができる。
このようなことから、本発明のラインヘッドは、小型化を図りつつ、高精度な露光処理を実現することができる。
また、本発明の画像形成装置によれば、前述したような高精度な露光処理を実現することができるラインヘッドを備えることで、高品位な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のラインヘッドおよび画像形成装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる画像形成装置の全体構成を示す概略図、図2は、図1に示す画像形成装置に備えられたラインヘッドの横断面図、図3は、図2に示すラインヘッドに備えられた発光基板ユニットおよびフレキシブルプリント基板(配線ユニット)を説明するための展開図、図4は、図2に示すラインヘッドに備えられた発光素子の概略構成を示す断面図、図5は、図2に示すラインヘッドの制御系の構成を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1〜図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0012】
(画像形成装置)
図1に示す画像形成装置1は、帯電工程・露光工程・現像工程・転写工程・定着工程を含む一連の画像形成プロセスによって画像を記録媒体Pに記録する電子写真方式のプリンターである。本実施形態では、画像形成装置1は、いわゆるタンデム方式を採用するカラープリンタである。
【0013】
このような画像形成装置1は、図1に示すように、帯電工程・露光工程・現像工程のための画像形成ユニット10と、転写工程のための転写ユニット20と、定着工程のための定着ユニット30と、紙などの記録媒体Pを搬送するための搬送機構40と、この搬送機構40に記録媒体Pを供給する給紙ユニット50とを有している。
画像形成ユニット10は、イエローのトナー像を形成する画像形成ステーション10Yと、マゼンタのトナー像を形成する画像形成ステーション10Mと、シアンのトナー像を形成する画像形成ステーション10Cと、ブラックのトナー像を形成する画像形成ステーション10Kとの4つの画像形成ステーションを備えている。
【0014】
各画像形成ステーション10Y、10C、10M、10Kは、静電的な潜像を担持する感光ドラム(感光体)11を有し、その周囲(外周側)には、帯電ユニット12、ラインヘッド(露光ユニット)13、現像装置14、クリーニングユニット15が配設されている。ここで、各画像形成ステーション10Y、10C、10M、10Kは、用いるトナーの色が異なる以外は、ほぼ同じ構成である。
【0015】
感光ドラム11は、全体形状が円筒状をなし、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。そして、感光ドラム11の外周面(円筒面)付近には、感光層(図示せず)が設けられている。このような感光ドラム11の外周面は、ラインヘッド13からの光L(出射光)を受光する受光面111を有している(図2参照)。
帯電ユニット12は、コロナ帯電などにより感光ドラム11の受光面111を一様に帯電させるものである。
【0016】
ラインヘッド13は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受け、これに応じて、感光ドラム11の受光面111に向けて光Lを照射するものである。一様に帯電された感光ドラム11の受光面111に光Lが照射されると、その光Lの照射パターンに対応した潜像(静電潜像)が受光面111上に形成される。なお、ラインヘッド13の構成については、後に詳述する。
【0017】
現像装置14は、トナーを貯留する貯留部(図示せず)を有しており、当該貯留部から、感光ドラム11の受光面111にトナーを供給し、付与する。静電的な潜像が形成された受光面111にトナーが付与されると、当該潜像がトナー像として可視化(現像)される。
クリーニングユニット15は、感光ドラム11の受光面111に当接するゴム製のクリーニングブレード151を有し、後述する一次転写後の感光ドラム11上に残存するトナーをクリーニングブレード151により掻き落として除去するようになっている。
【0018】
転写ユニット20は、前述したような各画像形成ステーション10Y、10M、10C、10Kの感光ドラム11上に形成された各色のトナー像を一括して記録媒体Pに転写するようになっている。
各画像形成ステーション10Y、10C、10M、10Kでは、感光ドラム11が1回転する間に、帯電ユニット12による感光ドラム11の受光面111の帯電と、ラインヘッド13による受光面111の露光と、現像装置14による受光面111へのトナーの供給と、後述する一次転写ローラ22による中間転写ベルト21へのトナー像の一次転写と、クリーニングユニット15による受光面111のクリーニングとが順次行なわれる。
【0019】
転写ユニット20は、エンドレスベルト状の中間転写ベルト21を有し、この中間転写ベルト21は、複数(図1に示す構成では4つ)の一次転写ローラ22と駆動ローラ23と従動ローラ24とで張架されており、駆動ローラ23の回転により、図1に示す矢印方向に、感光ドラム11の周速度とほぼ同じ周速度で回転駆動される。
各一次転写ローラ22は、対応する感光ドラム11に中間転写ベルト21を介して対向配設されており、感光ドラム11上の単色のトナー像を中間転写ベルト21に転写(一次転写)するようになっている。この一次転写ローラ22は、一次転写時に、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。
【0020】
中間転写ベルト21上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうちの少なくとも1色のトナー像が担持される。例えば、フルカラー画像の形成時には、中間転写ベルト21上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が中間転写像として形成される。
また、転写ユニット20は、中間転写ベルト21を介して駆動ローラ23に対向配設される二次転写ローラ25と、中間転写ベルト21を介して従動ローラ24に対向配設されるクリーニングユニット26とを有している。
【0021】
二次転写ローラ25は、中間転写ベルト21上に形成された単色あるいはフルカラーなどのトナー像(中間転写像)を、給紙ユニット50から供給される紙、フィルム、布等の記録媒体Pに転写(二次転写)するようになっている。二次転写ローラ25は、二次転写時に、中間転写ベルト21に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。このような二次転写時には、駆動ローラ23は、二次転写ローラ25のバックアップローラとしても機能する。
クリーニングユニット26は、中間転写ベルト21の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード261を有し、二次転写後の中間転写ベルト21上に残存するトナーをクリーニングブレード261により掻き落として除去するようになっている。
【0022】
定着ユニット30は、定着ローラ301と、定着ローラ301に圧接される加圧ローラ302とを有しており、定着ローラ301と加圧ローラ302との間を記録媒体Pが通過するよう構成されている。また、定着ローラ301の内側には、当該定着ローラ301の外周面を加熱するヒータが内蔵されている。このような構成の定着ユニット30では、トナー像の二次転写を受けた記録媒体Pが定着ローラ301と加圧ローラ302との間を通過しながら加熱および加圧されることにより、トナー像を記録媒体Pに融着させて永久像として定着させる。
【0023】
搬送機構40は、前述した二次転写ローラ25と中間転写ベルト21との間の二次転写部へ給紙タイミングを計りつつ記録媒体Pを搬送するレジストローラ対41と、定着ユニット30での定着処理済みの記録媒体Pを挟持搬送する搬送ローラ対42、43、44とを有している。
このような搬送機構40は、記録媒体Pの一方の面のみに画像形成を行う場合には、定着ユニット30によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを搬送ローラ対42により挟持搬送して、画像形成装置1の外部へ排出する。また、記録媒体Pの両面に画像形成する場合には、定着ユニット30によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦搬送ローラ対42により挟持した後に、搬送ローラ対42を反転駆動するとともに、搬送ローラ対43、44を駆動して、当該記録媒体Pを表裏反転してレジストローラ対41へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
給紙ユニット50は、未使用の記録媒体Pを収容する給紙カセット51と、給紙カセット51から記録媒体Pを1枚ずつレジストローラ対41へ向け給送するピックアップローラ52とを備えている。
【0024】
(ラインヘッド)
次に、ラインヘッド13について説明する。
ラインヘッド13は、感光ドラム11の外周面(すなわち受光面111)に対向して配設されている(図1および図2参照)。
そして、ラインヘッド13は、図2に示すように、支持部材6と、発光基板ユニット7と、回路基板ユニット8と、配線ユニット9と、レンズアレイ16と、スペーサ17と、遮光部材19と、放熱部材60とを有している。
【0025】
このようなラインヘッド13では、発光基板ユニット7から出射した光Lがスペーサ17およびレンズアレイ16を透過して、感光ドラム11の受光面111に照射される。
以下、ラインヘッド13を構成する各部を順次詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、発光基板ユニット7の第1の基板71の長手方向(第1の方向)を「主走査方向」、幅方向(第2の方向)を「副走査方向」と言う。
支持部材6は、長尺状(長手形状)をなし、感光ドラム11の軸線方向(主走査方向)に沿うように設置されている。
この支持部材6は、例えば金属板を折り曲げ加工することで形成され、基板搭載部61と、1対の脚部62とを有し、支持部材6の横断面形状は、略U字状をなしている。このような支持部材6の基板搭載部61と各脚部62との間には、折り曲げ部64が形成されている。
【0026】
基板搭載部61は、図2に示す横断面(後述する第1の基板71の長手方向に垂直な断面)にて、第1の基板71の板面に沿って設けられている。
基板搭載部61は、長尺板状をなし、その一方の面側(図2にて上側)には、後述する発光基板ユニット7の第1の基板71が搭載されている。これにより、基板搭載部61は、第1の基板71を支持している。
【0027】
1対の脚部62は、基板搭載部61の幅方向(副走査方向)での両端部から下方に延びている。すなわち、1対の脚部62は、基板搭載部61の幅方向での両端部(すなわち長手方向での両側部)から第1の基板71とは反対側へ延びている。これにより、支持部材6の外側に、発光基板ユニット7が設けられている。
このような支持部材6は、その横断面が前述したように略U字状をなすように構成することで、比較的簡単な構成で、支持部材6の剛性を優れたものとすることができる。さらに、基板搭載部61で第1の基板71を支持することで、第1の基板71を安定的に支持し、安定した露光処理を行うことができる。なお、支持部材6は、後述する第2の基板81をも支持(固定)してもよい。
【0028】
このような支持部材6は、金属板を折り曲げ加工したものであると、比較的簡単かつ安価に得ることができる。
また、第1の基板71が支持部材6の外側に設置されているため、第1の基板71を支持部材6の内側に設置するよりも組み立てが容易である。その結果、ラインヘッド13を安価なものとすることができる。
【0029】
また、第1の基板71が支持部材6の外側に設置されているため、支持部材6の幅を第1の基板71の幅よりも小さくすることができる。そのため、ラインヘッド13は、その幅を狭くすることができる。
支持部材6の構成材料としては、特に限定されず、各種金属材料(特に軟磁性材料)を用いることができるが、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金等が好適に用いられる。なお、支持部材6を樹脂材料やセラッミクス材料等で構成してもよい。
【0030】
発光基板ユニット7は、長尺状をなす第1の基板71と、第1の基板71の一方の面側にその長手方向(主走査方向)に沿って配列された複数の発光素子72と、複数の発光素子72を覆う封止部材(カバー部材)73とを備えている。
第1の基板71は、各発光素子72を支持するもの(基板)であり、外形が長尺状をなす板状体で構成されている。
【0031】
この第1の基板71は、例えばガラス基板である。ガラス基板は、絶縁性および光透過性を有する。そのため、第1の基板71がガラス基板であると、比較的簡単かつ安価に、第1の基板71上に発光素子72として有機エレクトロルミネッセンス素子を形成することができる。また、後述するようにボトムエミッション構造の各発光素子72からの光Lを第1の基板71を介して出射することができる。また、ガラス基板はその平面度が比較的高いため、第1の基板71にガラス基板を用いることにより、発光素子72とレンズアレイ16との間の距離のバラツキを低減し、レンズアレイ16が感光体11の受光面111に対し高精度に光Lを結像することができる。
【0032】
また、第1の基板71をガラス材料で構成することにより、各発光素子72の発光により生じる熱を第1の基板71を介して支持部材6等へ効率良く放熱することができる。
このような第1の基板71には、一方の面(図2にて下側の面)に、複数の発光素子72および封止部材73が接合されている。
複数の発光素子72は、第1の基板71上にその長手方向(主走査方向)に沿って配列されている。また、各発光素子72は、その光軸が第1の基板71の板面に略直交するように設置されている。
【0033】
このような複数の発光素子72は、後に詳述するが、図3に示すように、所定数ごとにグループ化されていて、所定数の発光素子72からなる発光素子群(グループ)G1〜G8ごとに順次発光される。
各発光素子72は、有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)で構成されている。
【0034】
より具体的に説明すると、各発光素子72は、図4に示すように、陽極722と、陽極722上に設けられた有機半導体層723と、有機半導体層723上に設けられた陰極724とを備え、これらが第1の基板71上に設けられている。
また、本実施形態では、有機半導体層723は、陽極722側から、正孔輸送層726、発光層727および電子輸送層728の順で積層された複数の層で構成される積層体となっている。
【0035】
このような発光素子72では、陽極722と陰極724との間に直流電圧が印加されると、これにより、発光層727において、電子輸送層728を介して輸送された電子と、正孔輸送層726を介して輸送された正孔とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)が光Lとして放出される。これにより、発光素子72(発光層727)が発光する。
【0036】
本実施形態では、この発光素子72は、発光層727からの光Lを陽極722側に取り出して利用するボトムエミッション構造の素子となっている。
陽極722は、有機半導体層723(後述する正孔輸送層726)に正孔を注入する電極である。この陽極722の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0037】
陰極724は、有機半導体層723(後述する電子輸送層728)に電子を注入する電極である。また、この陰極724は、陰極724側に漏れた光Lを陽極722側に反射する反射膜としての機能も有している。これにより、レンズアレイ16側に向かう光Lの光量をより多く確保することができる。
陰極724の構成材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0038】
陽極722と陰極724との間には、有機半導体層723が設けられている。有機半導体層723は、前述したように、正孔輸送層726と、発光層727と、電子輸送層728とを備え、これらがこの順で陽極722上に積層されている。
正孔輸送層726は、陽極722から注入された正孔を発光層727まで輸送する機能を有するものである。
正孔輸送層726の構成材料(正孔輸送材料)は、正孔輸送能力を有するものであれば、いかなるものであってもよいが、共役系の化合物であるのが好ましい。共役系の化合物は、その特有な電子雲の広がりによる性質上、極めて円滑に正孔を輸送できるため、正孔輸送能力に特に優れる。
【0039】
このような正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミンのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミンのようなフェニレンジアミン系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、フタロシアニンのようなフタロシアニン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
電子輸送層728は、陰極724から注入された電子を発光層727まで輸送する機能を有するものである。
電子輸送層728の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)のようなベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレンのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセンのようなクリセン系化合物、ペリレンのようなペリレン系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、発光層727としては、電圧印加時に陽極722側から正孔を、また、陰極724側から電子を注入することができ、正孔と電子が再結合する場を提供できる構成材料により構成されるものであれば、いかなるものであってもよい。
【0041】
このような発光層727の構成材料(発光材料)としては、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))のような低分子系のものや、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子のような高分子系のものが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて、目的とする発光色を有する光Lを得ることができる。
【0042】
本実施形態では、各発光素子72がいずれも赤色光を発光するように構成されている。ここで、赤色光を発光する発光層727としては、例えば、(4−ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(パラジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)およびナイルレッド等が挙げられる。なお、各発光素子72は、赤色光を発光するよう構成されているのに限定されず、他の色の単色光や白色光を発光するよう構成されていてもよい。このように、有機EL素子では、発光層727の構成材料に応じて当該発光層727が発する光Lを任意の色の単色光に適宜設定することができる。
【0043】
ただし、一般に電子写真プロセスに用いられる感光ドラムの分光感度特性は、半導体レーザーの発光波長である赤色から近赤外の領域でピークを持つように設定されているので、上記のように赤色の発光材料を利用することが好ましい。
このような有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)で各発光素子72がそれぞれ構成されていると、発光素子72同士の間隔(ピッチ)を比較的小さく設定することができる。これにより、画像を記録媒体Pに記録した際、その記録媒体Pに対する記録密度が比較的高くなる。よって、より鮮明な画像が担持された記録媒体Pが得られる。
【0044】
また、有機EL素子で各発光素子72が構成されていると、第1の基板71の幅方向での発光素子72の数を抑えながら、第1の基板71の長手方向での発光素子72の配置密度を高めることができる。また、発光素子72を形成する際に、発光素子72と一括して、発光素子72を駆動するための駆動回路の一部を構成するTFTや配線等を第1の基板71上に形成することができる。その結果、第1の基板71の幅を抑えながら、ラインヘッド13をより安価なものとすることができる。
【0045】
なお、各発光素子72の外周側には、それぞれ、光Lの広がりを防止するためのリフレクタのような光路調整部材を設けてもよい。
また、発光素子72は、ボトムエミッション構造の素子に限定されず、発光層727からの光Lを陰極724側に取り出して利用するトップエミッション構造の素子であってもよい。
【0046】
また、以上に述べた有機EL素子の材料あるいは層構成は、代表的な例を示したものであり、他の材料、層構成であっても同様に本発明の作用・効果は得られる。
また、前述したような複数の発光素子72とともに第1の基板71の一方の面側に設けられた封止部材73は、図4に示すように、凹部731が形成され、その凹部731の周縁部が接着剤等により第1の基板71に接合されている。そして、凹部731内に複数の発光素子72が納められている。これにより、封止部材73は、複数の発光素子72を覆っている。
【0047】
封止部材73は、ガスバリア性を有し、封止部材73と第1の基板71とは気密的に接合されている。これにより、各発光素子72を構成する各部を水分や酸素などを含む雰囲気ガスから遮断し当該各部の酸化や劣化を防止することができる。また、各発光素子72等に異物が付着するのを防止することもできる。
封止部材73の凹部731内には、乾燥剤および/または脱酸素剤が設けられているのが好ましい。これにより、各発光素子72を構成する各部の酸化や劣化をより確実に防止することができる。
【0048】
乾燥剤としては、凹部731内で吸湿効果を発揮するものであれば、特に限定されることはなく種々のものが使用可能であり、例えば酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、硫酸リチウム(Li2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸ガリウム(Ga2(SO43)、硫酸チタン(Ti(SO42)、硫酸ニッケル(NiSO4)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、塩化イットリウム(YCl3)、塩化銅(CuCl2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF5)、フッ化ニオブ(NbF5)、臭化カルシウム(CaBr2)、臭化セリウム(CeBr3)、臭化セレン(SeBr4)、臭化バナジウム(VBr2)、臭化マグネシウム(MgBr2)、ヨウ化バリウム(BaI2)、ヨウ化マグネシウム(MgI2)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO42)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO42)等が挙げられる。
【0049】
また、脱酸素剤としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられる。
また、封止部材73は、凹部731とは反対側の面が平坦面となっている。これにより、ガバー部材73を介して第1の基板71と支持部材6とを簡単かつ安定的に接合することができる。
【0050】
この封止部材73の構成材料としては、特に限定されず、ステンレス、アルミニウムまたはその合金等の金属材料、ソーダ石灰ガラス、珪酸塩ガラス等のガラス材料、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の樹脂材料等を用いることができるが、ガラス材料が好適に用いられる。封止部材73と第1の基板71とをともにガラス材料で構成することで、これらの間の線膨張係数差による変形、損傷等の不具合を防止することができる。
【0051】
一方、第1の基板71の他方の面(図3にて上側の面)は、スペーサ17を介してレンズアレイ16が接合されている。
レンズアレイ16は、発光基板ユニット7の光Lの出射側に設けられている。このレンズアレイ16は、2列で主走査方向に俵積みするように多数配列された多数の屈折率分布型のロッドレンズ161を有している。
各ロッドレンズ161は、その光軸が基板71の厚さ方向となるように設置されている。また、各ロッドレンズ161は、例えば、樹脂材料および/またはガラス材料で構成されている。
【0052】
スペーサ17は、各発光素子72とレンズアレイ16との間の距離を規定するものである。このスペーサ17は、板状をなし、例えば、樹脂材料および/またはガラス材料で構成されている。このようなスペーサ17を設けることで、スペーサ17の厚さに応じて各発光素子72とレンズアレイ16との間の距離を調整することができる。その結果、比較的簡単な構成で、高精度な露光処理を実現することができる。
【0053】
特に、スペーサ17は、光透過性基板であり、レンズアレイ16がスペーサ17に接合・支持されている。これにより、各発光素子72とレンズアレイ16との間の距離を簡単かつ正確に規定することができる。また、レンズアレイ16を遮光部材19で支持する必要がないので、例えば遮光部材19の肉厚を薄くすることができ、その結果、ラインヘッド13の幅を小さくすることができる。
【0054】
また、スペーサ17は、板状をなすものであるため、各発光素子72とレンズアレイ16との間の距離、および、第1の基板71と支持部材6との間に距離を高精度でかつ安定的に規定することができる。
このようなスペーサ17の上面には、遮光部材19が接合・支持されている。遮光部材19は、各発光素子72から後述するレンズアレイ16へ入射しなかった光が外部に漏れるのを防止する機能を有する。
【0055】
このような遮光部材19は、複数の発光素子72の形成領域を覆うように形成されている。また、遮光部材19には、各発光素子72の光軸方向に貫通する開口191が形成されており、その開口191を介してレンズアレイ16が遮光部材19内外を貫通するように設けられている。
このような遮光部材19の構成材料は、遮光性を有するものであれば、特に限定されず、樹脂材料、金属材料などを用いることができる。
また、遮光部材19は、射出成型や、プレス成型などを用いて形成することができる。
以上述べたように発光基板ユニット7には、配線ユニット9を介して回路基板ユニット8が接続されている。
【0056】
回路基板ユニット8は、図2に示すように、第2の基板81を有している。
第2の基板81は、その板面が前述した各発光素子72の光軸に沿うように設置されている。すなわち、第2の基板81の板面は、前述した第1の基板71の板面に対し垂直となるように設置されている。
このように設置された第2の基板81は、第2の基板81上に搭載される素子や回路の数の増加により第2の基板81の幅が広くなっても、ラインヘッド13の幅に影響を与えないように設置することができる。したがって、前述した各発光素子72を駆動するための素子や回路の一部を第2の基板81上に搭載することができる。これにより、第1の基板71上に搭載する素子や回路等の数を必要最小限とすることができ、その結果、前述した第1の基板71の幅を狭くすることができる。そのため、ラインヘッド13は、幅が狭く、画像形成装置1を小型で安価なものとすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、第2の基板81は、支持部材6の外側で、第1の基板71と配線ユニット9との接続部91側の脚部62近傍に設置されている。
このような第2の基板81の構成材料としては、前述した第1の基板71の構成材料と同様のものを用いることができるが、ガラス材料と樹脂材料との混合材料を用いるのが好ましい。すなわち、第2の基板81は、プリント基板であるのが好ましい。これにより、各発光素子72の駆動に必要な素子や回路を第2の基板81上に容易かつ安価に搭載することができる。
このような第2の基板81上には、後述する回路部82の制御回路822(第2の回路部)が設けられている。
ここで、ラインヘッド13の制御系を説明する。
【0058】
図5に示すように、ラインヘッド13は、前述した各発光素子72に電気的に接続された回路部82を有している。そして、回路部82は、各発光素子72を駆動するための駆動回路821と、この駆動回路821の作動を制御する制御回路822とを備える。なお、本実施形態では、前述したように、2つのドライバIC85のうち、一方のドライバIC85が発光素子群G1〜G4を駆動し、他方のドライバIC85が発光素素子群G5〜G8を駆動するように構成されているが(図3参照)、説明の便宜上、図5では、発光素子群G3、G4、G7、G8の図示を省略している。また、以下の説明では、上記一方のドライバIC85による発光素子群G1、G2の駆動を代表的に説明する。
【0059】
駆動回路821は、前述した各発光素子72を駆動するためのものである。
本実施形態では、駆動回路821は、ゲート電圧保持型の複数の定電流駆動回路83と、選択スイッチ84と、ドライバIC85とを備えている。
各定電流駆動回路83は、定電流トランジスタ831と、電圧保持コンデンサ832と、選択トランジスタ833とを有している。
【0060】
このような各定電流駆動回路83では、選択トランジスタ833がオンされると、後述するドライバIC85の出力電圧に応じた定電流が定電流トランジスタ831を通じて発光素子72に流れ、発光素子72が発光する。また、ドライバIC85の出力電圧が電圧保持コンデンサ832に所定時間保持されることで、その間、選択トランジスタ833がオフされても、発光素子72に電流が流れ続け、発光素子72の発光が維持される。
【0061】
選択スイッチ84は、制御回路822からのselect信号により切り替えられ、所定のブロックごとに、定電流駆動回路83を選択する。この選択スイッチ84を切り替えることで、所定ブロックごとに各発光素子72に通電する電圧を設定することができる。
このような選択スイッチ84は、複数の発光素子72を所定数のグループ毎に順次選択するように切り換える切換部を構成する。
ドライバIC85は、シフトレジスタ851と、ラッチ回路852と、DAC853(D/Aコンバータ)とを備えている。
【0062】
このようなドライバIC85では、制御回路822からシフトレジスタ851に、startパルス信号(start)をトリガにして、クロック信号(CLK)に同期したデータ信号(DATA)が送られる。一方、ラッチ回路852には制御回路822からLatch信号(Latch)が送られ、シフトレジスタ851でデータ信号が所定タイミングで揃うように、データ信号がラッチされる。そして、データ信号(デジタル信号)が所定タイミングで揃えられた状態でDAC853に送られ、DAC853は前述した定電流駆動回路83(選択トランジスタ833)に所定の電圧信号(アナログ信号)を出力する。
【0063】
このような駆動回路821は、選択スイッチ84の切り換えにより選択されたグループ(発光素子群G1、G2)に属する発光素子72をドライバIC85が駆動する。これにより、後述する配線ユニット9の配線や端子の数を減らすことができる。
特に、ドライバIC85は、ラッチ回路852を備えているので、ラッチ回路852の機能により、選択スイッチ84の切り換えにより選択されたグループ(発光素子群G1、G2)に属する発光素子72を同時に駆動することができる。これにより、上述したようにグループごとに発光素子72を駆動しても、ラインヘッド13の露光特性を優れたものとすることができる。
【0064】
ここで、複数の定電流駆動回路83および選択スイッチ84は、前述した第1の基板71上に設けられており、前述した複数の発光素子72と複数の定電流駆動回路83と選択スイッチ84とは、第1の回路部(回路部)を構成する。また、ドライバIC85は、後述する配線ユニット9上に設けられた半導体素子であり、上述したように駆動回路821の一部が形成されている。
以上説明したような駆動回路821は、制御回路822により制御される。
【0065】
制御回路822は、駆動回路821の作動を制御するものである。この制御回路822は、後述するプリンタコントローラ18からの信号に基づき、駆動回路821の作動を制御する。ここで、制御回路822は、前述した第2の基板81上に設けられており、第2の回路部(回路部)を構成する。
このような制御回路822は、インターフェース回路86と、複数(本実施形態では2つ)のデータ制御回路87と、補正値メモリ88とを備えている。
【0066】
インターフェース回路86は、画像形成装置1本体(ラインヘッド13の外部)に備えられたプリンタコントローラ18から信号を受け取るものである。本実施形態では、インターフェース回路86は、図5に示すように、LVDS(Low voltage differential signaling)を用いた受信回路で構成されており、プリンタコントローラ18から、タイミングクロックとともに、データ線に展開されたデータを受け取り、各データ制御回路87に分配する。
【0067】
データ制御回路87は、インターフェース回路86からのデータを補正値メモリ88の補正データに基づいて、各発光素子72の発光量が最適となるように補正し、補正後のデータを制御信号とともに前述したドライバIC85(シフトレジスタ851)に送る。
プリンタコントローラ18は、各発光素子72の駆動制御のための信号を制御回路822に送信する機能を有するものである。本実施形態では、プリンタコントローラ18は、ラインヘッド13の駆動制御のためのヘッド制御部181と、このヘッド制御部181からの信号を前述したインターフェース回路86に送信するための送信回路182とを備えている。また、プリンタコントローラ18は、画像形成装置1の各部を制御する機能をも有する。
【0068】
このような制御回路822は、前述した第2の基板81上に設けられているため、前述した支持部材6および後述する放熱部材60により覆われるように設置されている。これにより、制御回路822への電磁気的悪影響を防止し、高精度な露光処理を安定的に行うことができる。
このような制御系(回路部82)により各発光素子72の駆動が制御される。なお、上述した制御系の構成は、一例であり、これに限定されるものではない。例えば、前述した駆動回路821は、アクティブ型の駆動回路であるが、この駆動回路821に代えて、パッシブ型の駆動回路を用いてもよい。また、ドライバIC85は、定電流駆動回路83および/または選択スイッチ84の機能を備えるように構成してもよい。
【0069】
このような回路部82は、各発光素子72に電気的に接続されている。
2つの配線ユニット9は、それぞれ、第1の基板71の幅方向での一端側から引き出されるように設けられている。なお、配線ユニット9の数は、前述したものに限定されない。
各配線ユニット9は、前述した発光基板ユニット7(第1の回路部)と回路基板ユニット8(第2の回路部)とを電気的に接続する配線を備えるものである。
【0070】
本実施形態では、各配線ユニット9は、フレキシブルプリント基板(FPC)で構成されている。これにより、第1の基板71に対する第2の基板81の設置の自由度を高めることができ、その結果、前述したように第2の基板81をその板面が第1の基板71の板面に対し垂直となるように設置することができる。
配線ユニット9(フレキシブルプリント基板)は、図2に示すように、第1の基板71および第2の基板81のそれぞれの幅方向での一端部に固定されている。すなわち、配線ユニット9(フレキシブルプリント基板)は、第1の基板71および第2の基板81の互いの幅方向での端部同士を接続するように設けられている。さらに言い換えると、配線ユニット9は、第1の基板71からその幅方向(第2の方向)に引き出されるように設けられている。これにより、ラインヘッド13の長手方向での寸法を短くする(長尺化を防止する)ことができる。このようなラインヘッド13を用いることで、画像形成装置1の小型化(主走査方向での寸法の小型化)を図ることができる。
【0071】
このような配線ユニット9の配線の一端は、第1の基板71上の配線に対し異方性導電接着剤(ACF)等を用いて接続されている。同様に、配線ユニット9の配線の他端は、第2の基板81上の配線に対し異方性導電接着剤(ACF)等を用いて接続されている。
ここで、図示しないが、第1の基板71(前述した第1の回路部)と配線ユニット9との接続部91、および、第2の基板81(前述した第2の回路部)と配線ユニット9との接続部92には、それぞれ、複数の接続端子が設けられている。特に、接続部91の複数の接続端子は、主走査方向に配列されているのが好ましい。これにより、第1の基板71上の接続端子の占める面積の割合を小さくし、第1の基板71の小型化(幅狭化)を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態では、配線ユニット9上の(配線の途中)には、前述した駆動回路821の一部を構成するドライバIC85が設けられている。例えば、ドライバIC85が半導体ベアチップであり、FPCである配線ユニット9にドライバIC85を実装する方法としては、COF(Chip on Film)実装技術や、TAB(Tape Automated Bonding)実装技術を用いることができる。
このように配線ユニット9上にドライバIC85を設けることで、発光素子72が設けられた第1の基板71を狭くし、その結果、ラインヘッド13全体の幅を狭くすることができる。
【0073】
また、ドライバIC85を配線ユニット9上に設けることで、ドライバIC85と各発光素子72との間の配線の長さを比較的短く抑えることができるので、当該配線へのノイズの混入を防止または抑制することができる。特に、本実施形態では、前述したように駆動回路821がマルチプレックス機能を有することで、発光基板ユニット7からの多くの配線を配線ユニット9上で集約することができ、その結果、配線ユニット9と回路基板ユニット8との接続に必要な端子数および配線数を減らすことができる。そのため、ドライバIC85と各発光素子72との間の配線へのノイズの混入をより効果的に防止または抑制することができる。その結果、ラインヘッド13の露光特性を向上させることができる。
【0074】
さらに、配線ユニット9は、主走査方向(第1の方向)に複数(2つ)並設されているので、第1の基板71上の配線の引き回しを簡単化するとともに、第1の基板71上の配線の占める面積の割合を小さくし、第1の基板71の小型化(幅狭化)を図ることができる。また、各配線ユニット9の幅を狭くすることができ、ノイズの影響をより受けにくくすることができる
また、ドライバIC85は、後述する放熱部材60に接するように配設されている。これにより、ドライバIC85で発生する熱を放熱部材60へ逃がす(放熱する)ことができる。その結果、ドライバIC85の熱による故障や誤作動等を防止し、ラインヘッド13の信頼性を向上させることができる。
【0075】
このようなドライバIC85と放熱部材60とは直接接していてもよいし、ドライバIC85と放熱部材60との間に放熱性を有するシート等が介在していてもよい。ドライバIC85と放熱部材60との間に放熱性を有するシート等を介在させると、放熱部材60との接触によるドライバIC85の損傷を防止することができる。
この放熱部材60は、ドライバIC85の放熱を行う機能を有する。
【0076】
このような放熱部材60の構成材料は、ドライバIC85の放熱を行うことができれば、特に限定されないが、銅、アルミニウムまたはその合金等が好適に用いられる。
本実施形態では、放熱部材60は、板状をなし、支持部材6の一方の脚部62に沿うように配設されている。また、放熱部材60は、図示しない部材を介して支持部材6に支持されている。なお、放熱部材60の形状は、前述したものに限定されないのは言うまでもない。また、放熱部材60は、支持部材6の一部、または、遮光部材19の一部で構成されていてもよい。
【0077】
以上説明したようなラインヘッド13によれば、ドライバIC85を配線ユニット9上に設けることで、複数の発光素子72が設けられた第1の基板71の小型化(幅狭化)を図ることができる。また、ドライバIC85と各発光素子72との間の配線の長さを比較的短く抑えることができるので、当該配線へのノイズの混入を防止または抑制することができる。
【0078】
このようなことから、本発明のラインヘッド13は、小型化を図りつつ、高精度な露光処理を実現することができる。
また、本発明の画像形成装置1によれば、前述したような高精度な露光処理を実現することができるラインヘッド13を備えることで、高品位な画像を得ることができる。
以上、本発明のラインヘッドおよび画像形成装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ラインヘッドおよび画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0079】
また、レンズアレイは、複数のレンズが2行n列の行列状に配置さているのに限定されず、例えば、3行n列、4行n列等の行列状に配置されていてもよい。
また、レンズアレイとして、マイクロレンズが多数配列されたマイクロレンズアレイを用いることもできる。この場合、マイクロレンズアレイの各マイクロレンズに対応して、発光素子または所定数ごとの発光素子群を形成する。
また、前述した実施形態では、説明の便宜上、発光素子が1行n列に配列したものを説明したが、これに限定されるものではなく、発光素子が2行n列、3行n列等の行列状に配列されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態にかかる画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す画像形成装置に備えられたラインヘッドの横断面図である。
【図3】図2に示すラインヘッドに備えられた発光基板ユニットおよびフレキシブルプリント基板(配線ユニット)を説明するための展開図である。
【図4】図2に示すラインヘッドに備えられた発光素子の概略構成を示す断面図である。
【図5】図2に示すラインヘッドの制御系の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1…画像形成装置 6…支持部材 60…放熱部材 61…基板搭載部 62…脚部 64…折り曲げ部 7…発光基板ユニット 71…第1の基板 72…発光素子 73…封止部材(カバー部材) 722…陽極 723…有機半導体層 724…陰極 726…正孔輸送層 727…発光層 728…電子輸送層 8…回路基板ユニット 81…第2の基板 82…回路部 821、821A…駆動回路 822…制御回路 83…定電流駆動回路 831…定電流トランジスタ 832…電圧保持コンデンサ 833…選択トランジスタ 84…選択スイッチ 85…ドライバIC 851…シフトレジスタ 852…ラッチ回路 853…DAC 86…インターフェース回路 87…データ制御回路 88…補正値メモリ 9…配線ユニット 91、92…接続部 10…画像形成ユニット 10C、10K、10M、10Y…画像形成ステーション 11…感光ドラム(感光体) 111…受光面 12…帯電ユニット 13、13A、13B、13C…ラインヘッド(露光ユニット) 14…現像装置 15…クリーニングユニット 151…クリーニングブレード 16…レンズアレイ 161…ロッドレンズ 17…スペーサ 181…ヘッド制御部 182…送信回路 20…転写ユニット 21…中間転写ベルト 22…一次転写ローラ 23…駆動ローラ 24…従動ローラ 25…二次転写ローラ 26…クリーニングユニット 261…クリーニングブレード 30…定着ユニット 301…定着ローラ 302…加圧ローラ 40…搬送機構 41…レジストローラ対 42、43、44…搬送ローラ対 50…給紙ユニット 51…給紙カセット 52…ピックアップローラ 18…プリンタコントローラ 19…遮光部材 191…開口部 731…凹部 G1〜G8…発光素子群 P…記録媒体 L…光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、及び該基板に配設された発光素子を含む回路部を備える発光基板ユニットと、
前記基板から引き出されるように設けられ、前記回路部に電気的に接続された配線を備えるフレキシブルプリント基板と、
前記フレキシブルプリント基板に設けられ、前記発光素子を駆動する駆動回路の少なくとも一部が形成された半導体素子と、
を有することを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記発光素子を選択するように切り換える切換部を有し、前記駆動回路は、該切換部の切り換えにより選択された前記発光素子を駆動するように構成される請求項1に記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記半導体素子は、ラッチ回路を備え、該ラッチ回路の機能により、前記切換部の切り換えにより選択された複数の発光素子を同時に駆動する請求項2に記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記発光素子は、第1の方向に配設され、前記フレキシブルプリント基板は、前記基板から前記第1の方向と直交もしくは略直交する第2の方向に引き出されるように設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記フレキシブルプリント基板は、前記第1の方向に複数配設される請求項4に記載のラインヘッド。
【請求項6】
前記回路部は、前記フレキシブルプリント基板と接続される接続部を備え、該接続部は、前記第1の方向に配設された接続端子を含む請求項4または5に記載のラインヘッド。
【請求項7】
潜像担持体と、
前記潜像担持体を露光するラインヘッドと、を有し、
前記ラインヘッドは、
基板、及び該基板に配設された発光素子を含む回路部とを備える発光基板ユニットと、
前記基板から引き出されるように設けられ、前記回路部に電気的に接続された配線を備えるフレキシブルプリント基板と、
前記フレキシブルプリント基板に設けられ、前記発光素子を駆動する駆動回路の少なくとも一部が形成された半導体素子と、を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−115910(P2010−115910A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292691(P2008−292691)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】