説明

ラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法

【課題】永久磁石式の発電機ロータに許容トルク以上の負荷をかけず、かつタービン翼車にエロージョンを引き起こさない安定した起動を確保できるラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法を提供する。
【解決手段】ラジアル蒸気タービンシステムの起動運転を制御するラジアル蒸気タービンシステムの制御装置10,200であって、前記制御装置10,200は、前記ラジアル蒸気タービンシステムの起動において、前記双方向電力変換器10によって前記タービンロータの回転数を昇速制御する回転数制御手段と、各回転数における発電機出力が略零となるように、前記蒸気流量調整弁14の開度を制御して前記タービン翼車2,4に前記蒸気を供給する蒸気供給流量制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー消費効率の向上の観点から未利用排熱の利用を促進する一手段として半径流形の翼を用いるラジアル式の蒸気タービンで発電機を駆動する小型蒸気タービンシステムの有効性が認められている。
【0003】
蒸気供給設備と、翼車と永久磁石式発電機ロータとを一体化したタービンロータと、系統電源と、双方向電力変換器とを備え、起動時は系統側から電力を引き込み双方向電力変換器によって、系統電力を発電機ロータの回転周波数に変換して発電機に供給することで発電機ロータを駆動し、蒸気供給により発生するタービン仕事が軸受損失、風損等のロータ損失を上回れば、発生電力を双方向電力変換器で商用周波数の電力に変換して系統側に送る2.4MWクラスのガスエンジンの排熱蒸気を利用して150kWを発電する復水2段ラジアル蒸気タービンを用いた発電設備がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】中野、他5名、「150kW級ラジアル蒸気タービンの開発」、日本機械学会 第15回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集、2010年6月、pp189−190
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した永久磁石式発電機ロータを有する蒸気タービンシステムは、双方向電力変換器により系統から発電機ロータの回転に合わせた周波数に変換した電力を発電機に供給することで、タービンロータを回転させて昇速させることができる。
【0006】
しかし、永久磁石式発電機ロータはロータ内に磁石が保持される構造であることから、磁石の強度によりロータに掛かるトルクに制限を設ける必要がある。このため、ロータの回転数に対して取れる負荷(発電機の出力)に制限が生じる。ロータの回転数に対して取れる発電機の最大出力Lmaxは、以下の式のとおりその機械の固有値である永久磁石式発電機ロータのトルク制限値Tとロータの回転数(角速度)ωの積によって算出される。
Lmax=T・ω
したがって、運転中の発電機の出力Lをロータの回転数(角速度)ωで徐算して算出された値が、トルク制限値Tを超えると、ロータを破損する可能性が生じる。上述の式から明らかなように、ロータの回転数(角速度)ωが低い領域では、発電機の出力Lを低く抑える必要が生じる。
【0007】
例えば、双方向電力変換器により一定の低回転数制御状態のときに、蒸気供給を開始すると、蒸気の供給によりタービン回転数は上昇方向に働く。この結果、発電機に対する双方向電力変換器からの電力供給が、力行方向から回生方向に変わり、ロータの一定回転数が保たれることになる。この場合において、発電機に供給される電力が上述の制限値を超えないようにする必要がある。つまり、そのロータ回転数を保持する必要量より過大な蒸気量が供給されると、ロータの回転数を保持するために、回生電力量である発電機の出力Lが上昇する。ロータの回転数(角速度)ωが低い場合には、トルク制限値Tを超えやすくなる。
【0008】
また、上述した永久磁石式の発電機ロータを有する蒸気タービンシステムをDSS(Daily Start and Stop)運転に適用すると、タービンシステムに供給される蒸気配管にドレンセパレータが取り付けてあったとしても、蒸気供給開始時には、蒸気配管及びタービン本体が十分に昇温されていないため、供給された蒸気は、ドレンセパレータ下流の蒸気配管及びタービン本体通過中に、配管及びタービンケーシング等に熱を奪われ、温度の低下により一部が液化してしまう。
【0009】
このことにより発生した水滴は、タービン翼車の入口で、タービン翼車の周速と逆向きの速度でタービン翼に衝突し、タービン翼のエロージョンを引き起こす。水滴径が大きいほどエロージョンによるダメージは大きくなる。
【0010】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、永久磁石式の発電機ロータを有するラジアル蒸気タービンシステムにおいて、発電機ロータに許容トルク以上の負荷をかけず、かつタービン翼車にエロージョンを引き起こさない安定した起動を確保できるラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、永久磁石を内部に保持する発電機ロータと、前記発電機ロータと一体に組み立てられたタービン翼車の回転軸とから成るタービンロータと、前記発電機ロータ外周を取り囲むように設置された発電機ステータと、前記発電機ステータに系統から電流を流すかまたは前記発電機ステータから発生する電流を前記系統に流すかを制御する双方向電力変換器と、前記タービン翼車に蒸気源からの蒸気を供給する蒸気配管と、前記蒸気配管に設けられ前記タービン翼車への供給蒸気量を制御する蒸気流量調整弁とを備えたラジアル蒸気タービンシステムと、前記ラジアル蒸気タービンシステムの起動運転を制御するラジアル蒸気タービンシステムの制御装置であって、前記制御装置は、前記ラジアル蒸気タービンシステムの起動において、前記双方向電力変換器によって前記タービンロータの回転数を昇速制御する回転数制御手段と、各回転数における発電機出力が略零となるように、前記蒸気流量調整弁の開度を制御して前記タービン翼車に前記蒸気を供給する蒸気供給流量制御手段とを備えたものとする。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御装置は、前記タービンロータの回転数を検出する回転数検出手段と、前記発電機の出力を検出する発電機出力検出手段とを備え、前記蒸気供給流量制御手段は、前記発電機出力検出手段から取り込んだ発電機出力と前記回転数検出手段から取り込んだ回転数検出値とから、現在の前記発電機ロータにかかるトルク値を算出し、予め設定したトルク制限値との比較演算を行うトルク演算手段を備え、前記算出したトルク値が前記トルク制限値を超えないように前記蒸気流量調整弁の開度を制御することを特徴とする。
【0013】
更に、第3の発明は、第2の発明において、前記制御装置は、前記回転数制御手段により前記タービンロータの回転数を暖機回転数に保持する暖機制御手段と、前記蒸気配管及び/又は前記タービン翼車を流れる蒸気の温度を検出する温度検出手段とを備え、前記蒸気供給流量制御手段は、前記温度検出手段から取り込んだ前記蒸気配管及び/又は前記タービン翼車を流れる蒸気の温度と、予め定めてある設定値とを比較して、前記蒸気の温度が設定値を超えた場合に、前記暖機制御手段を完了させることを特徴とする。
【0014】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記蒸気タービンシステムは、前記タービン翼車出口側に排気蒸気を凝縮させる復水器と、前記タービン翼車入口側の前記蒸気配管に一端を連結し他端を前記復水器に連結した配管と、前記配管の前記タービン翼車入口と前記復水器との連通を遮断する第1遮断弁とを備え、前記制御装置は、前記暖機制御手段を実行している間、前記第1遮断弁を全開制御することを特徴とする。
【0015】
更に、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記蒸気タービンシステムは、前記タービン翼車の入口側と出口側とに第2遮断弁を介して大気圧に通じる配管を備え、前記制御装置は、前記タービンロータの異常時に、前記双方向電力変換器の回転数制御を停止するとともに、前記蒸気流量調整弁を全閉制御し、前記第2遮断弁を全開制御することを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するために、第6の発明は、永久磁石を内部に保持する発電機ロータと、前記発電機ロータと一体に組み立てられたタービン翼車の回転軸とから成るタービンロータと、前記発電機ロータ外周を取り囲むように設置された発電機ステータと、前記発電機ステータに系統から電流を流すかまたは前記発電機ステータから発生する電流を前記系統に流すかを制御する双方向電力変換器と、前記タービン翼車に蒸気源からの蒸気を供給する蒸気配管と、前記蒸気配管に設けられ前記タービン翼車への供給蒸気量を制御する蒸気流量調整弁とを備えたラジアル蒸気タービンシステムの運転方法であって、前記ラジアル蒸気タービンシステムの起動において、前記双方向電力変換器によって前記タービンロータの回転数を昇速制御する回転数制御ステップと、各回転数における発電機出力が略零となるように、前記蒸気流量調整弁の開度を制御して前記タービン翼車に前記蒸気を供給する蒸気供給流量制御ステップとを実行するものとする。
【0017】
また、第7の発明は、第6の発明において、前記双方向電力変換器によって、前記タービンロータの回転数を定格回転数の8%回転数まで昇速して、該回転数を保持するステップと、前記蒸気流量調整弁を開操作し、発電機出力が零または、その回転数での角速度と前記発電機ロータの許容トルクの積の値以下の出力になるように前記蒸気流量調整弁の開度を制御するステップと、前記蒸気配管及び/又は前記タービン翼車を流れる蒸気の温度が、予め定めてある設定値を超えるまで前記ステップの状態を保持して暖機運転をするステップと、前記ステップにおける蒸気の温度が、予め定めてある設定値を超えた後に、前記双方向電力変換器によって、前記タービンロータの回転数を定格回転数へ昇速させるとともに、各回転数での角速度と前記発電機ロータの許容トルクの積の値以下の出力になるように前記蒸気流量調整弁の開度を制御するステップとを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、永久磁石式の発電機ロータを有する蒸気タービンシステムにおいて発電機ロータに過大な負荷をかけずに安定した起動運転を実現でき、さらに、タービン翼車のエロージョンの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態を構成する双方向電力変換器とタービン制御装置の制御ブロック図である。
【図3】本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態における運転制御状態量を示す特性図である。
【図4】本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第2の実施の形態を示すシステム構成図である。
【図5】本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第3の実施の形態を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態を示すシステム構成図である。図1において、本実施の形態のラジアル蒸気タービンの発電設備41は、図示しない永久磁石を内側に保持する永久磁石式の発電機ロータ1と、図示しない蒸気発生源からの蒸気により駆動される高圧段タービン翼車2と高圧段タービン軸3と低圧段タービン翼車4と低圧段タービン軸5と、永久磁石式の発電機ロータ1の外周面に対向するように設けられた発電機ステータ6と、永久磁石式の発電機ロータ1の回転数を制御するとともにその発電出力を系統へ送電する双方向電力変換器10とを備えている。
【0022】
永久磁石式の発電機ロータ1の一方(図1中の左側)の同軸上には、高圧段タービン翼車2と高圧段タービン軸3とが、永久磁石式発電機ロータ1の他方(図1中の右側)の同軸上には、低圧段タービン翼車4と低圧段タービン軸5とがそれぞれ連結されタービンロータが一体に形成されている。
【0023】
高圧段タービン軸3の永久磁石式発電機ロータ1側の外周部にはスラストカラー7が設けられ、このスラストカラー7と永久磁石式の発電機ロータ1との間には、スラスト・ジャーナルコンバインド軸受8が設けられている。
【0024】
一方、低圧段タービン軸5側と永久磁石式の発電機ロータ1との間には、ジャーナル軸受9が設けられ、タービンロータはこれらスラスト・ジャーナルコンバインド軸受8とジャーナル軸受9とで支えられている。
【0025】
発電機ステータ6は、UVW相の3相の電気配線によって詳細後述する双方向電力変換器10の他端に接続されている。双方向電力変換器10の一端は、図示しない系統側にUVW相の3相の電気配線によって接続されている。
【0026】
高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4とは、ともに永久磁石式発電機ロータ1に近い側をタービン入口とし、永久磁石式の発電機ロータ1から遠い側をタービン出口としている。これら高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4は、タービン翼車の外径等の主要寸法が異なっていても良いし同じであっても良い。
【0027】
次に、タービンシステムの配管系統を供給蒸気の流れに従って説明する。供給蒸気は、図示しない蒸気発生源から蒸気供給配管11を通してドレンセパレータ12、蒸気遮断弁13、及び蒸気流量調整弁14を介して高圧段タービン翼車2の入口側に供給される。高圧段タービン翼車2で膨張した蒸気は、高圧段タービン翼車2の出口側から蒸気配管15を通り、ドレンセパレータ16を介して低圧段タービン翼車4の入口側に供給される。低圧段タービン翼車4で膨張した蒸気は、低圧段タービン翼車4の出口側から復水器17を通り復水し、この復水はホットウエル18に送られる。
【0028】
蒸気供給配管11と蒸気配管15には、流れる蒸気の温度を検出する温度検出手段51,52がそれぞれ設けられている。また、高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4には、流れる蒸気の温度を検出する温度検出手段53,54がそれぞれ設けられている。これらの温度検出手段51,52,53,54で検出された各信号は、後述するタービン制御装置200に入力される。
【0029】
復水器17は図示しない外部の冷却水源からの冷却水32が内部を通過する伝熱部と、この伝熱部の外側を低圧段タービン翼車4からの排気蒸気が通過する本体部とを備え、低圧段タービン翼車4からの排気蒸気を冷却して復水にしている。
【0030】
ホットウエル18は、内部圧力を低圧に保つための真空排気ポンプ19と、排水ポンプ20と、三方弁21とを備えている。ホットウエル内に溜まった復水は、三方弁21の切り換えと排水ポンプ20の運転により外部に排出される場合と、ホットウエル内に戻される場合とがある。
【0031】
ドレンセパレータ16で分離されたドレンは、配管33と配管27とを介してホットウエル18に排出される。
【0032】
高圧段タービン軸3には、高圧段タービン翼車2からの蒸気の漏れを防止するラビリンスシール22が設置されている。ラビリンスシール22には、漏れ蒸気排出口25が設けられていて、ラビリンスシール22内部のドレンは漏れ蒸気排出口25から配管26と配管27とを介してホットウエル18に排出される。
【0033】
低圧段タービン軸5には、低圧段タービン翼車4からの蒸気の漏れを防止するラビリンスシール28が設置されている。ラビリンスシール28には、漏れ蒸気排出口31が設けられていて、ラビリンスシール28内部のドレンは漏れ蒸気排出口31から配管26と配管27とを介してホットウエル18に排出される。
【0034】
また、スラスト・ジャーナルコンバインド軸受8の軸方向の両側には、軸受潤滑剤の飛散と漏れを防止するラビンリンスシール23,24が設置され、同様に、ジャーナル軸受9の軸方向の両側には、ラビンリンスシール29,30が設置されている。
【0035】
次に、本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態を構成する双方向電力変換器10とタービン制御装置200について図2を用いて説明する。図2は本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態を構成する双方向電力変換器とタービン制御装置の制御ブロック図である。図2において、図1に示す符号と同符号のものは同一部分又は相当する部分であるので、その部分の説明を省略する。
【0036】
図2において、双方向電力変換器10は、第1電力変換器101と第2電力変換器111とを備えている。第1電力変換器101の三相交流出力は、リアクトルACL及びコンデンサCfと連系用トランスTrを介して電力系統Nに接続されている。また、第1電力変換器101の直流部分のコンデンサCdには第2電力変換器111の直流部分が接続されていて、第2電力変換器111の交流出力は発電機ステータ6に接続されている。永久磁石式の発電機ロータ1は、高圧段タービン翼車2と高圧段タービン軸3と低圧段タービン翼車4と低圧段タービン軸5によりトルクを受け、入力されたトルクを発電機にて電力に変換し、その電力を第2電力変換器111及び第1電力変換器101を介して電力系統Nに出力する。
【0037】
第1電力変換器101には第1変換器制御手段102が接続され、さらに第1変換器制御手段102には直流電圧調整手段103が接続されている。直流電圧調整手段103は、後述する切替器SW2から出力される直流電圧指令値Vdc*とコンデンサCdの直流電圧Vdcとが一致するように指令値Id*を演算し、その指令値Id*を第1変換器制御手段102に出力する。第1変換器制御手段102は、指令値Id*に基づいてゲートパルスGp1を第1電力変換器101に出力する。
【0038】
第2電力変換器111には、図2に示すように第2変換器制御手段112が接続され、さらに第2変換器制御手段112には速度調整手段113が接続されている。また、第2電力変換器111の交流出力側には電圧検出器PT2が設けられている。電圧検出器PT2が発電機電圧(三相交流電圧)Vgは回転数検出手段121と第2変換器制御手段112とに入力され、回転数検出手段121は、その発電機電圧Vgから永久磁石式の発電機ロータ1の回転数を検出する。その検出結果である回転数検出値omgは速度調整手段113とタービン制御装置200とに入力される。また、速度調整手段113にはタービン制御装置200から発電機の速度指令値omg*が入力されている。速度調整手段113は、回転数検出値omgをフィードバックに用いて発電機の速度指令値omg*と一致するようにトルク指令値Igq*を演算する。演算したトルク指令値Igq*は第2変換器制御手段112に入力される。第2変換器制御手段112は、トルク指令値Igq*に基づいてゲートパルスGp2を第2電力変換器111に出力する。また、第2電力変換器111の交流出力側には、発電機から出力される三相電流Igを検出するための電流検出器CT2が設けられていて、電流検出器CT2が検出した発電機電流Igは第2変換器制御手段112に入力される。さらに、第2変換器制御手段112は、発電機電圧Vgと発電機電流Igとから発電機出力Lを演算する。演算した発電機出力Lはタービン制御装置200に入力される。
【0039】
図2に示したタービン制御装置200は、蒸気流量調整弁14の開度を制御することで、高圧段タービン翼車2の入口側に供給する蒸気供給量を制御する蒸気供給流量制御手段と、タービン運転に伴う真空排気ポンプ19や各種弁からなる補機類の起動停止や開閉操作等の操作を制御するシーケンス制御手段とを備えている。
【0040】
蒸気供給流量制御手段は、現在の蒸気供給流量から定まる出力可能な電力を演算し、その電力に合った発電機の回転数を予め決められた特性テーブル等から産出し、回転数指令値omg*をシステム制御手段120に出力する。また、蒸気供給流量制御手段は、入力信号である発電機出力Lと回転数検出値omgとから、現在の永久磁石式の発電機ロータ1にかかるトルクを算出し、トルク制限値Tとの比較演算を行うトルク演算手段を備え、算出した現在値トルクがトルク制限値Tを超えないように蒸気流量調整弁14の開度を制御する。また、温度検出手段51,52により検出された蒸気供給配管11と蒸気配管15とを流れる蒸気の温度信号と、温度検出手段53,54により検出された高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4とを流れる蒸気の温度信号とを入力し、予め定めてある設定値とこれらの温度信号とを比較演算することで、後述する暖気完了の判断を行っている。
【0041】
システム制御手段120は、図2に示すように、制御切替判定器122、切替スイッチSW1,SW2、速度調整器が設けられている。
【0042】
システム制御手段120には、タービン制御装置200からの回転数指令値omg*及び回転数検出手段121からの回転数検出値omgが入力される。回転数指令値omg*は速度調整器に入力され、この回転数指令値omg*は速度指令値として用いられる。また、回転数検出値omgは制御切替判定器122及び速度調整器に入力される。回転数検出値omgが入力された制御切替判定器122は、切替器SW1,SW2に対して切替信号SABを出力する。
【0043】
切替器SW1は、切替信号SABが“b”のとき、ゲートパルスを用いるPWM運転指令を信号SDとして第2変換器制御手段112に出力し、切替信号が“a”のとき、ゲートパルスを全てオフさせて第2電力変換器111にダイオード整流運転させるためのダイオード整流運転指令を信号SDとして第2変換器制御手段112に出力する。
【0044】
また、切替器SW2は、切替信号SABが“b”のとき、電圧指令値Vdc*として設定電圧値Vrefを直流電圧調整手段103に出力し、切替信号が“a”のときは、電圧指令値Vdc*として速度調整器の出力を用いる。
【0045】
制御切替判定器122は、所定の回転数以上で切替信号SABを“a”とし、それ以外では“b”を出力する。つまり所定の回転数以上においては、発電機の回転数に比例して上昇する誘起電圧を入力電圧として第2電力変換器111をダイオード整流運転して得られる直流電圧値が、系統に対して電力の制御が可能となる第1電力変換器101の入力直流電圧値以上となる。
【0046】
次に、上述した本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態の動作を図1乃至図3を用いて説明する。図3は本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第1の実施の形態における運転制御状態量を示す特性図である。図3において、横軸は時間軸を示し、上段の縦軸にはタービンロータの回転数を、中段の縦軸には蒸気流量調整弁14の開度を、下段の縦軸には発電機出力をそれぞれ示している。
【0047】
まずタービンシステムの起動は、タービン制御装置200のシーケンス制御手段により、図1に示すホットウエルに設置した真空排気ポンプ19を作動させて蒸気遮断弁13下流の蒸気配管15,26,27,33と、高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4と、ホットウエル18とを低圧にする。
【0048】
次に、タービン制御装置200から双方向電力変換器10のシステム制御手段120に暖機回転数相当の回転数指令値omg*が入力される。本実施の形態においては、定格回転数の8%相当を暖機回転数としている。双方向電力変換器10においては、系統Nからの電力を受ける双方向電力変換器10の第1電力変換器101は、直流出力電圧値をシステム制御手段120の設定電圧値Vrefとなるように制御し、第2電力変換器111はこの直流電圧を入力として、速度調整手段113によって演算された回転数検出値omgと回転数指令値omg*との偏差をなくすように発電機ステータ6に駆動電流を出力する。この結果、発電機ロータ1つまりタービンロータ全体の回転が開始される。
【0049】
図3の上段の特性図の時間T0から時間T1に示すように、タービンロータの回転数は双方向電力変換器10による一定昇速でのモータリングによって定格回転数の8%相当に到達し、その回転数で保持される。この段階では蒸気流量調整弁14の開度は零で、タービンには蒸気を供給していない。このため、発電機はモータとして作動しているため発電機出力としてはマイナス、つまりモータリング状態になっている。しかし、ここまでの回転では回転数が定格回転数の8%と低いため、あまり動力を要しない。
【0050】
次に、定格回転数の8%回転数の状態で、タービンの暖機を開始する。具体的には、タービン制御装置200のシーケンス制御手段により、蒸気遮断弁13を全開させ、蒸気供給流量制御手段によって、蒸気流量調整弁14の開度を僅かに開けてタービンへの蒸気の引き込みを開始する。図3の下段の特性図の時間T2から時間T3の前に示すように、この段階でも、蒸気量は少ないためタービンの仕事は十分でなく、発電機出力はマイナスのままである。
【0051】
タービンの暖機は、この暖機回転数において、少量の蒸気を供給して蒸気配管、タービン翼車及びタービンケーシングを昇温させることを目的としている。したがって、暖機完了の判断は、タービン制御装置200の蒸気供給流量制御手段において、温度検出手段51,52により検出された蒸気供給配管11と蒸気配管15とを流れる蒸気の温度信号と、温度検出手段53,54により検出された高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4とを流れる蒸気の温度信号と、予め定めてある設定値とを比較して、これらの検出温度信号が設定値以上であることで判断される。このような暖機完了判断手順を設けることで、蒸気供給時に発生する大径水滴によるタービン翼車のエロージョンの発生を防止できる。
【0052】
図3の特性図の時間T3から時間T4に示すように、タービン暖機が完了すると、タービンロータの回転数の上昇と、蒸気の供給量の増加を開始する。具体的には、タービン制御装置200の蒸気供給流量制御手段から、一定昇速率で上昇する回転数指令値omg*が双方向電力変換器10のシステム制御手段120に向けて出力される。一方、蒸気供給流量制御手段からは、蒸気流量調整弁14を徐々に開操作して蒸気流量を増加させる制御が行われる。
【0053】
高圧段タービン翼車2への蒸気の供給により、高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4とは徐々に仕事をする。これらタービン翼車2,4の仕事量の増加により、双方向電力変換器10によって系統Nからの電力を受けて発電機ステータ6に駆動電流を送ることでタービンロータをモータリングしていた動力は減少していく。供給蒸気による仕事が、タービンロータの風損、発電機ロータ1及び発電機ステータ6の電力損失、軸受損失等のタービンロータの駆動に生じる損失と釣り合うと発電機出力は零になる。タービン制御装置200の蒸気供給流量制御手段においては、入力信号である発電機出力Lと回転数検出値omgとから、現在の永久磁石式の発電機ロータ1にかかるトルクを算出し、トルク制限値Tとの比較演算を行い、現在値トルクがトルク制限値Tを超えないように蒸気流量調整弁14の開度を制御する。この結果、蒸気流量調整弁14の開度は、昇速の各回転数において、発電機出力が零もしくは若干プラスになるように制御され、発電機出力は各回転数での許容負荷(ωT)以下に制御される。
【0054】
次に、図3の特性図の時間T4に示すように、タービンロータの回転数が定格回転数に到達した後は、タービン制御装置200の蒸気供給流量制御手段によって、蒸気流量調整弁14の開度を増加させて発電機出力を図3の特性図の時間T5に示す定格出力に到達させている。なお、定格出力時の蒸気流量調整弁14の開度は100%以下の規定開度となるように設定されている。また、定格回転数状態で発電機出力の変動がある場合は、蒸気流量調整弁14の開度を調整することで供給蒸気圧を調整し、発電機出力が一定になるように制御する。
【0055】
次に、定格出力状態から停止状態への手順について説明する。
まず、図3の特性図の時間T6からT7に示すように、タービン制御装置200の蒸気供給流量制御手段によって、蒸気流量調整弁14の開度を減少させて発電機出力を図3の特性図の時間T7に示す出力に到達させる。
【0056】
次に、図3の特性図の時間T7から時間T8に示すように、タービンロータの回転数を冷機回転数(定格回転数の70%回転数)まで、下降させるとともに蒸気の供給量を減少させる。具体的には、タービン制御装置200の蒸気供給流量制御手段から、一定昇速率で下降する回転数指令値omg*が双方向電力変換器10のシステム制御手段120に向けて出力される。一方、蒸気供給流量制御手段からは、蒸気流量調整弁14を徐々に閉操作して蒸気流量を減少させる制御が行われる。蒸気流量調整弁14の開度は、降速の各回転数において、発電機出力が零もしくは若干プラスになるように制御され、発電機出力は各回転数での許容負荷(ωT)以下に制御される。また、図3の特性図の時間T8に示す冷機回転数到達時で、発電機出力が僅かにプラスになるように制御される。
【0057】
次に、図3の特性図の時間T8から時間T9に示す間、冷機運転が行われ、その後停止操作が開始される。まず、タービン制御装置200の蒸気供給流量制御手段によって、蒸気流量調整弁14を全閉するとともに、シーケンス制御手段により、蒸気遮断弁13を全開させて蒸気の供給を遮断する。次に、発電機ロータ1の回転数制御を停止して、発電機ロータから負荷を解除する。具体的には、タービン制御装置200からシステム制御手段120に入力される回転数指令値omg*を0とすると共に、系統Nと双方向電力変換器10との接続を例えば、高電圧遮断器を開放することで遮断する。この結果、図3の特性図の時間T9以降に示すように、発電機出力は、蒸気流量調整弁14や蒸気遮断弁13のバルブ全閉時に一度マイナス出力になるが、回転数制御の停止により、発電機ロータ1はフリーラン状態となり発電機出力も零になる。発電機ロータ1はタービンの風損や軸受抵抗によって最終的に回転を停止する。
【0058】
上述した本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法の第1の実施の形態によれば、永久磁石式の発電機ロータ1を有する蒸気タービンシステムにおいて発電機ロータ1に過大な負荷をかけずに安定した起動運転を実現でき、さらに、蒸気供給時に発生する大径水滴によるタービン翼車のエロージョンの発生を防止することができる。
【実施例2】
【0059】
以下、本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第2の実施の形態を示すシステム構成図である。図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図4に示す本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様のラジアル蒸気タービン発電プラントで構成されるが、以下の構成が異なる。
【0060】
高圧段タービン翼車2の蒸気入口側と蒸気流量調整弁14とを連結する蒸気供給配管11に分岐部を設け、この分岐部に遮断弁34を設けた配管35の一端を連結し、配管35の他端をホットウエル18と連通する配管33と連結している。また、同様に、低圧段タービン翼車4の蒸気入口側と高圧段タービン翼車2の蒸気出口側とを連結する蒸気配管15に分岐部を設け、この分岐部に遮断弁36を設けた配管37の一端を連結し、配管37の他端をホットウエル18と連通する配管33と連結している。
【0061】
このような配管35,37を設けたことにより、暖機運転の蒸気供給開始時に配管で発生する水滴のタービン翼車への侵入を防止することができる。
【0062】
次に、上述した本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第2の実施の形態の動作を説明する。
まずタービンシステムの起動は、タービン制御装置200のシーケンス制御手段により、図4に示すホットウエルに設置した真空排気ポンプ19を作動させて蒸気遮断弁13下流の蒸気配管15,26,27,33と、高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4と、ホットウエル18とを低圧にする。このとき、上述した遮断弁34,36を全開作動させる。
【0063】
次に、第1の実施の形態における動作と同じ手順によりタービンロータの回転数を8%回転数で保持し、タービンの暖機を開始する。具体的には、タービン制御装置200のシーケンス制御手段により、蒸気遮断弁13を全開させ、蒸気供給流量制御手段によって、蒸気流量調整弁14の開度を僅かに開けてタービンへの蒸気の引き込みを開始する。この後、蒸気流量調整弁14の開度を徐々に開けることにより、蒸気が高圧段タービン翼車2側に供給される。
【0064】
蒸気供給配管11に設けられたドレンセパレータ12の下流において、蒸気供給配管11への放熱等で冷却し凝縮した蒸気の水分は、水滴となって蒸気供給配管11内を流れるが、ホットウエル18の真空排気圧に引かれて、全開した遮断弁34と配管35,33とを通ってホットウエル18に排出される。このことから、上述した水滴は高圧段タービン翼車2の入口側に流入しないので、水滴の高圧段タービン翼車2への衝突によるエロ−ジョンを防止できる。
【0065】
同様に、低圧段タービン翼車4の上流側の蒸気配管15における凝縮水滴をホットウエル18に排出することができ、低圧段タービン翼車4の水滴衝突によるエロージョンを防止できる。
【0066】
次に、第1の実施の形態における動作と同じ手順によりタービンの暖機完了を判断する。タービンの暖機完了が判断されると、タービン制御装置200のシーケンス制御手段により、上述した遮断弁34,36を全閉作動させて、ホットウエル18に配管35,37を介して直接排出される蒸気を遮断する。この後は、第1の実施の形態における動作と同じ手順によりタービンシステムを運転する。
【0067】
上述した本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4の入口部のそれぞれに排気真空圧に繋がるラインを設けて、暖機運転の蒸気供給開始時に配管で発生する水滴を排気側に引き出したので、蒸気供給開始時に発生する大径水滴によるタービン翼車のエロージョンの発生を確実に防止することができる。
【実施例3】
【0069】
以下、本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第3の実施の形態を示すシステム構成図である。図5において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図5に示す本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第3の実施の形態は、大略第2の実施の形態と同様のラジアル蒸気タービン発電プラントで構成されるが、以下の構成が異なる。
【0070】
高圧段タービン翼車2の蒸気入口側と蒸気流量調整弁14とを連結する蒸気供給配管11に更なる分岐部を設け、この分岐部に遮断弁38を設けた配管39の一端を連結し、配管39の他端を大気に開放している。また、同様に、低圧段タービン翼車4の蒸気出口側と復水器17の蒸気入口側とを連結する蒸気配管に分岐部を設け、この分岐部に遮断弁40を設けた配管41の一端を連結し、配管41の他端を大気に開放している。
【0071】
このような配管39,41を設けたことにより、発電機ロータ1の回転異常時に緊急停止が可能となる。
【0072】
次に、上述した本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置の第3の実施の形態の動作を説明する。
まずタービンシステムの起動は、タービン制御装置200のシーケンス制御手段により、図5に示す遮断弁34,36を全開作動させるとともに、ホットウエルに設置した真空排気ポンプ19を作動させて蒸気遮断弁13下流の蒸気配管15,26,27,33,35,37と、高圧段タービン翼車2と低圧段タービン翼車4と、ホットウエル18とを低圧にする。このとき、上述した遮断弁38,40は全閉状態とする。
【0073】
以降は、第2の実施の形態における動作と同じ手順によりタービンシステムを起動し、運転状態にする。
【0074】
このようなタービンシステムの運転状態において、何らかの異常が発生し、緊急に発電機ロータ1を停止させる必要が生じた場合には、タービン制御装置200のシーケンス制御手段により、蒸気遮断弁13の急閉による蒸気の遮断と系統Nと双方向電力変換器10との電力の遮断とが行われるが、本実施の形態においては、さらに、シーケンス制御手段により、上述した遮断弁38,40を全開動作させる。この結果、高圧段タービン翼車2側は、高圧蒸気の大気放出を行い、また低圧段タービン翼車4側は、排気真空を破壊して大気圧を引き込む。これによって両タービン周りの状態を速やかに大気圧状態にして発電機ロータ1の回転を止めることができる。
【0075】
上述した本発明のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置及びその運転方法の第3の実施の形態によれば、上述した第2の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、発電機ロータ1の回転に異常が生じるなどの緊急停止が必要な場合でも、タービンロータを速やかに停止できる。
【0077】
なお、本発明の実施の形態においては、暖機完了を蒸気供給配管11や高圧段タービン翼車2等を流れる蒸気の温度条件で判断したが、これに限るものではない。例えば、使用蒸気条件が一定の場合に、事前に流量調整弁14開度と暖機完了時間との特性を計測しておけば、暖機用流量調整弁14開度における保持時間によって暖機完了とすることもできる。
【0078】
また、本実施の形態においては、タービンロータの回転数検出手段121を設けているが、これに限るものではない。回転数指令のみの制御構成であっても良い。
【0079】
さらに、本発明の実施の形態においては、タービンの暖機完了後、タービンロータを昇速し、定格回転数の到達後、蒸気流量調整弁14の開度をさらに増加させて発電機出力を定格出力に到達させる制御を行っているが、これに限るものではない。タービンの暖機完了後タービンロータを昇速していく過程において、蒸気流量調整弁14の開度制御により発電機出力が各回転数での許容負荷(ωT)以下に制御されるのであれば、例えば、タービンロータの定格回転数の到達時と発電機出力の定格出力到達時とが大略同じ時間になる制御を実施することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 発電機ロータ
2 高圧段タービン翼車
3 高圧段タービン軸
4 低圧段タービン翼車
5 低圧段タービン軸
6 発電機ステータ
7 スラストカラー
8 スラスト・ジャーナルコンバインド軸受
9 ジャーナルコンバインド軸受
10 双方向電力変換器
11 蒸気供給配管
12 ドレンセパレータ
13 蒸気遮断弁
14 蒸気流量調整弁
15 蒸気配管
17 復水器
18 ホットウエル
19 排気真空ポンプ
20 排水ポンプ
21 三方弁
41 ラジアル蒸気タービンの発電設備
101 第1電力変換器
102 第1変換器制御手段
103 直流電圧調整手段
111 第2電力変換器
112 第2変換器制御手段
113 速度調整手段
120 システム制御手段
121 回転数検出手段
200 タービン制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を内部に保持する発電機ロータと、前記発電機ロータと一体に組み立てられたタービン翼車の回転軸とから成るタービンロータと、前記発電機ロータ外周を取り囲むように設置された発電機ステータと、前記発電機ステータに系統から電流を流すかまたは前記発電機ステータから発生する電流を前記系統に流すかを制御する双方向電力変換器と、前記タービン翼車に蒸気源からの蒸気を供給する蒸気配管と、前記蒸気配管に設けられ前記タービン翼車への供給蒸気量を制御する蒸気流量調整弁とを備えたラジアル蒸気タービンシステムと、前記ラジアル蒸気タービンシステムの起動運転を制御するラジアル蒸気タービンシステムの制御装置であって、
前記制御装置は、前記ラジアル蒸気タービンシステムの起動において、前記双方向電力変換器によって前記タービンロータの回転数を昇速制御する回転数制御手段と、各回転数における発電機出力が略零となるように、前記蒸気流量調整弁の開度を制御して前記タービン翼車に前記蒸気を供給する蒸気供給流量制御手段とを備えた
ことを特徴とするラジアル蒸気タービンシステムの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置において、
前記制御装置は、前記タービンロータの回転数を検出する回転数検出手段と、前記発電機の出力を検出する発電機出力検出手段とを備え、
前記蒸気供給流量制御手段は、前記発電機出力検出手段から取り込んだ発電機出力と前記回転数検出手段から取り込んだ回転数検出値とから、現在の前記発電機ロータにかかるトルク値を算出し、予め設定したトルク制限値との比較演算を行うトルク演算手段を備え、
前記算出したトルク値が前記トルク制限値を超えないように前記蒸気流量調整弁の開度を制御する
ことを特徴とするラジアル蒸気タービンシステムの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置において、
前記制御装置は、前記回転数制御手段により前記タービンロータの回転数を暖機回転数に保持する暖機制御手段と、前記蒸気配管及び/又は前記タービン翼車を流れる蒸気の温度を検出する温度検出手段とを備え、
前記蒸気供給流量制御手段は、前記温度検出手段から取り込んだ前記蒸気配管及び/又は前記タービン翼車を流れる蒸気の温度と、予め定めてある設定値とを比較して、前記蒸気の温度が設定値を超えた場合に、前記暖機制御手段を完了させる
ことを特徴とするラジアル蒸気タービンシステムの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置において、
前記蒸気タービンシステムは、前記タービン翼車出口側に排気蒸気を凝縮させる復水器と、前記タービン翼車入口側の前記蒸気配管に一端を連結し他端を前記復水器に連結した配管と、前記配管の前記タービン翼車入口と前記復水器との連通を遮断する第1遮断弁とを備え、
前記制御装置は、前記暖機制御手段を実行している間、前記第1遮断弁を全開制御する
ことを特徴とするラジアル蒸気タービンシステムの制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のラジアル蒸気タービンシステムの制御装置において、
前記蒸気タービンシステムは、前記タービン翼車の入口側と出口側とに第2遮断弁を介して大気圧に通じる配管を備え、
前記制御装置は、前記タービンロータの異常時に、前記双方向電力変換器の回転数制御を停止するとともに、前記蒸気流量調整弁を全閉制御し、前記第2遮断弁を全開制御する
ことを特徴とするラジアル蒸気タービンシステムの制御装置。
【請求項6】
永久磁石を内部に保持する発電機ロータと、前記発電機ロータと一体に組み立てられたタービン翼車の回転軸とから成るタービンロータと、前記発電機ロータ外周を取り囲むように設置された発電機ステータと、前記発電機ステータに系統から電流を流すかまたは前記発電機ステータから発生する電流を前記系統に流すかを制御する双方向電力変換器と、前記タービン翼車に蒸気源からの蒸気を供給する蒸気配管と、前記蒸気配管に設けられ前記タービン翼車への供給蒸気量を制御する蒸気流量調整弁とを備えたラジアル蒸気タービンシステムの運転方法であって、
前記ラジアル蒸気タービンシステムの起動において、前記双方向電力変換器によって前記タービンロータの回転数を昇速制御する回転数制御ステップと、
各回転数における発電機出力が略零となるように、前記蒸気流量調整弁の開度を制御して前記タービン翼車に前記蒸気を供給する蒸気供給流量制御ステップとを実行する
ことを特徴とするラジアル蒸気タービンシステムの運転方法。
【請求項7】
請求項6に記載のラジアル蒸気タービンシステムの運転方法において、
前記双方向電力変換器によって、前記タービンロータの回転数を定格回転数の8%回転数まで昇速して、該回転数を保持するステップと、
前記蒸気流量調整弁を開操作し、発電機出力が零または、その回転数での角速度と前記発電機ロータの許容トルクの積の値以下の出力になるように前記蒸気流量調整弁の開度を制御するステップと、
前記蒸気配管及び/又は前記タービン翼車を流れる蒸気の温度が、予め定めてある設定値を超えるまで前記ステップの状態を保持して暖機運転をするステップと、
前記ステップにおける蒸気の温度が、予め定めてある設定値を超えた後に、前記双方向電力変換器によって、前記タービンロータの回転数を定格回転数へ昇速させるとともに、各回転数での角速度と前記発電機ロータの許容トルクの積の値以下の出力になるように前記蒸気流量調整弁の開度を制御するステップとを実行する
ことを特徴とするラジアル蒸気タービンシステムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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