説明

ラジアントチューブ式加熱装置のレキュペレータ保護方法

【課題】レキュペレータに対するラジアントチューブからの輻射熱の影響を小さくして、該レキュペレータの熱による損傷を可及的に防止することができる、簡単且つ安価なレキュペレータ保護方法を得る。
【解決手段】ラジアントチューブ式加熱装置1において、レキュペレータ5を、ラジアントチューブ3内において該レキュペレータ5の先端部5aが炉壁2の炉内側の面2aから突出しない位置まで該ラジアントチューブ3に挿入すると共に、ラジアントチューブ3内おけるレキュペレータ5の先端部5aよりも炉内側に、ラジアントチューブ3からの輻射熱を遮る遮断部14とバーナー4の排ガスを流通させる流通部15とを有する耐火部材13を、該レキュペレータ5の先端部5aに接触しない程度に近接させて配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理用のラジアントチューブ式の加熱装置において、ラジアントチューブバーナーに送られる燃焼用空気を予熱するレキュペレータを輻射熱から保護するレキュペレータ保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば金属鋼帯の加熱等に使用する熱処理炉のラジアントチューブ式加熱装置としては、特許文献1に示すように、略W字状に屈曲させたラジアントチューブの一端にバーナーを、他端側に、ラジアントチューブ内の排ガスの顕熱を熱交換して該バーナーに送る燃焼用空気を加熱するレキュペレータをそれぞれ挿入して取付け、該レキュペレータによって加熱された燃焼用空気を炉壁外に設けられたダクトを通してバーナーに供給する構成のものが広く知られている。上記レキュペレータは、耐熱鋼からなる外筒の内部に、空気源から燃焼用空気を流入させる内筒が配設された全体として二重の筒状のもので、燃焼用空気は外筒を介してラジアントチューブ内を流れる排ガスの顕熱と熱交換される。
【0003】
この種の加熱装置においては、上記レキュペレータは、ラジアントチューブ内に晒されているため、バーナーの排ガスの熱、さらにはラジアントチューブからの輻射熱の影響を直接的に受けることになる。特に、ラジアントチューブからの輻射熱は、排ガスに近い温度に達していて、全体として大きな熱量を有していることから、レキュペレータにおけるラジアントチューブ内に晒される部分、即ち外筒には、排ガスの熱に伴う熱量に加えて輻射熱に伴う熱量も負荷されることになる。通常、レキュペレータの外筒の耐熱性は、バーナーの排ガスの温度や熱量のみを考慮して設定されることから、レキュペレータの内部を流れる低温の燃焼用空気との間で熱交換が行われたとしても、レキュペレータの外筒は依然として輻射熱の膨大な熱量が負荷され、予想外に高い温度となっている場合が多い。
この結果、上記レキュペレータは、排ガスの熱及びラジアントチューブからの輻射熱の影響による熱応力、酸化減肉、ヒートショック等によって亀裂が生じ、損傷する場合があり、レキュペレータの先端部はこの傾向が顕著であった。しかも、その亀裂が生じた部分から燃焼用空気が吹き出して異常燃焼を起こしてしまうため、排気煙道での赤熱や燃料使用量の増加、加熱装置の加熱能力の低下などの問題を引き起こし、修繕等にも多大な時間と費用を要していた。
【0004】
上述のようなレキュペレータの熱による損傷を防ぐため、従来ではレキュペレータの外筒を耐熱性の高いものに交換することが行われていたが、より高温に耐えられるものを選択するほどNiやCr等の高価な材料の含有量が上昇するため、交換に多くの費用が必要となっていた。また、外筒を、例えば特許文献2に示すような耐熱性の高いセラミックス管とすることも考えられるが、非常に高価であるため、やはり費用面で問題があった。
しかも、レキュペレータの外筒の交換は、費用だけでなく交換のための時間も多く必要であるため、操業を長期にわたり停止しなければならないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−59629号公報
【特許文献2】特開2003−287395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、ラジアントチューブ式加熱装置において、レキュペレータに対するラジアントチューブからの輻射熱の影響を小さくして、該レキュペレータの熱による損傷を可及的に防止することができる、簡単且つ安価なレキュペレータ保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のラジアントチューブ式加熱装置のレキュペレータ保護方法は、両端部が熱処理炉の炉壁外方に導出されたラジアントチューブと、該ラジアントチューブの一端側に上記炉壁の炉外側から挿入されたバーナーと、上記ラジアントチューブの他端側に上記炉壁の炉外側から挿入されて、該バーナーに送られる燃焼用空気を予熱するレキュペレータとを備えたラジアントチューブ式加熱装置におけるレキュペレータの保護方法であって、上記レキュペレータを、上記ラジアントチューブ内において該レキュペレータの先端部が炉壁の炉内側の面から突出しない位置まで該ラジアントチューブに挿入すると共に、ラジアントチューブ内におけるレキュペレータの先端部よりも炉内側に、ラジアントチューブからの輻射熱を遮る遮断部とバーナーの排ガスを流通させる流通部とを有する耐火部材を、該レキュペレータの先端部に接触しない程度に近接させて配設することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、上記ラジアントチューブ内に配設する耐火部材の数を増加させることにより、これら耐火部材の遮断部全体がなす該耐火部材の軸線方向の投影面積を増大させることができる。
また、本発明においては、上記耐火部材の遮断部を、ラジアントチューブの軸線方向に沿う方向に延びる軸部と、該軸部に沿って放射状に立ち上がる複数の突部とを有する構成とすることができる。この場合においては、上記ラジアントチューブ内に、複数の耐火部材を該ラジアントチューブの軸線方向に直列状に並べ、且つこれら耐火部材を、軸線周りに角度を相互にずらすことにより各耐火部材の突部の位置が相互にずれた状態で配置することができる。
【0009】
本発明によれば、ラジアントチューブ内におけるレキュペレータの先端部よりも炉内側に、ラジアントチューブからの輻射熱を遮る遮断部とバーナーの排ガスを流通させる流通部とを有する耐火部材を、該レキュペレータの先端部に接触しない程度に近接させて配設することにより、熱交換に必要な熱を有する排ガスは流通部から流通させる一方で、ラジアントチューブからの輻射熱は遮断部で大幅に遮られる。
この結果、ラジアントチューブからの輻射熱のレキュペレータへの伝熱を直接的且つ確実に減少させることができ、これにより熱の影響によるレキュペレータの損傷を抑制防止し、長寿命化を図ることができる。
さらに、上記レキュペレータを、上記ラジアントチューブ内において該レキュペレータの先端部が炉壁の炉内側に突出しない位置まで該ラジアントチューブに挿入したことにより、炉内側にあるラジアントチューブからの輻射熱がレキュペレータに伝わる範囲をできる限り小さくしたため、レキュペレータがラジアントチューブ内において炉壁の炉内側に突出した場合に比べて、ラジアントチューブからの輻射熱の影響を小さくすることができる。
【0010】
また、レキュペレータの位置を調整すると共に、ラジアントチューブ内に耐火部材を配設することによって比較的に簡単且つ短時間の作業でレキュペレータを確実に保護することができる上、レキュペレータの保護・長寿命化を図るに際して、レキュペレータに高耐熱性を有する高価な材質のものを使用する場合に比べ、非常に安価であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のレキュペレータ保護方法が実施されるラジアントチューブ式加熱装置を模式的に示す一部破断側面図である
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】本発明に係る耐火部材の斜視図である。
【図4】耐火部材をラジアントチューブ内に配設した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るラジアントチューブ式加熱装置のレキュペレータ保護方法を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明のレキュペレータ保護方法の実施に使用されるラジアントチューブ式加熱装置を示すもので、この加熱装置1は、両端部が熱処理炉の共通の炉壁2外方側に気密に導出されたラジアントチューブ3と、該ラジアントチューブ3の一端側に上記炉壁2の炉外側から挿入されたバーナー4と、上記ラジアントチューブ3の他端側に上記炉壁2の炉外側から挿入されて、該バーナー4に送られる燃焼用空気を予熱するレキュペレータ5とを備えている。
【0013】
上記ラジアントチューブ3は、バーナーの燃焼により発生した熱を金属管を介して間接的に炉内に熱を供給する役割を持ち、これにより金属材料を酸化させずに高品位に熱処理を行うことを可能としたものである。具体的に、このラジアントチューブ3は、全体として略W字状に屈曲されていると共に、両端部が共通の炉壁2の外方側の面上に開口した状態で該炉壁2に固定されていて、バーナー4の燃焼に伴う排ガスがバーナー側の端部からレキュペレータ側の端部に向けて流される構成となっている。なお、図1のラジアントチューブは、屈曲された部分以外はほぼ直線状に形成されている例を示している。
上記バーナー4は、メインガス供給管7により供給されたメインガスに着火して、上記レキュペレータ5から送られてきた燃焼用空気と共に燃焼させる構成となっている。なお、上記バーナー4の基端側の下部には、レキュペレータ5から送られてくる予熱された燃焼用空気を流入させる筒状のダクト8の上端部が取付けられている。
【0014】
上記レキュペレータ5は、先端側が半球面状に閉塞された外筒9と、該外筒9の内部に外筒9の基端側から挿通されて、空気源から燃焼用空気を外筒9内に流入させる内筒10とを備えている。そして、外筒9内に流入した燃焼用空気を、該外筒9の筒壁9aを介してラジアントチューブ3内の排ガス顕熱と熱交換させる構成となっている。
上記外筒9の基端側の上部には、上記バーナー4に予熱した燃焼用空気を送る上記ダクト8の下端部が取付けられ、また、炉壁2の外方側において外筒9を覆うカバー11の下部には排ガスを外部に排出する排気煙道12が取付けられている。
また、上記レキュペレータ5は、外筒9の軸線がラジアントチューブ3の軸線上に位置するように、つまりラジアントチューブ3の径の中心に位置するように、該ラジアントチューブ3内に挿入されている。
【0015】
上記構成のラジアントチューブ式加熱装置1において上記レキュペレータの保護を図るに際して、本発明の保護方法においては、まずラジアントチューブ3に対するレキュペレータ5の位置を調整する。
即ち、上記レキュペレータ5を、上記ラジアントチューブ3内において該レキュペレータ5の先端部5aが炉壁2の炉内側の面2aから突出しない位置まで該ラジアントチューブ3に挿入し、位置を固定する。
この実施の形態では、上記レキュペレータ5の先端部5aが、ラジアントチューブ3内において上記炉壁2の炉内側の面2aと同じ面上に位置するように、レキュペレータ5全体を炉壁2の外方側に移動させた状態(即ち、レキュペレータ5の外筒9を、ラジアントチューブ3に対して浅めに挿し込んだ状態)としている。
【0016】
このように、上記レキュペレータ5を、ラジアントチューブ3内において炉壁2の炉内側から完全に引っ込めることにより、温度の高い炉内側のラジアントチューブ3からの輻射熱がレキュペレータ5に伝熱する範囲が狭まるため、レキュペレータ5がラジアントチューブ3内において炉壁2の炉内側に突出している場合に比べて、炉内側に位置するラジアントチューブ3からの輻射熱の影響を小さくすることができる。
【0017】
その一方で、ラジアントチューブ3内におけるレキュペレータ5の先端部5aよりも炉内側に、ラジアントチューブ3からの輻射熱を遮って、該輻射熱のレキュペレータ5への伝熱量を大幅に減少させる耐火部材13を、該レキュペレータ5の先端部5aに接触しない程度にできる限り近接させて配設する。これにより、レキュペレータ5の先端側に、ラジアントチューブ3からの輻射熱を直接的に遮る壁が形成されるため、レキュペレータ5に対する輻射熱による熱量を大幅に減少させることができる。
【0018】
ここで、上記耐火部材13は、ラジアントチューブ3からの輻射熱を遮る遮断部14と、上記バーナー4の排ガスを流通させる流通部15とを有するもので、一般の耐火ブロックや耐火レンガ等の汎用の耐火物と同等の素材により形成されている。
より具体的に、上記耐火部材13は、ラジアントチューブ3の軸線方向(直線部分の軸線方向)にある程度の厚みを有するブロック状のもので、図3に示すように、上記遮断部14を、ラジアントチューブ3の直線部分の軸線方向に沿う方向に延びる軸部14aと、該軸部14aに沿ってこの軸部14aから90度間隔で四方に放射状に立ち上がった、4つの同形板状の突部14bとを備えた断面略十字形状に形成されている。そして、この4つの突部14bの間の空間が上記流通部15となっている。
また、この耐火部材13は、相反する方向に立ち上がる2つの突部14b、14bの各先端間の距離が、上記ラジアントチューブ3の内径とほぼ同じか若干小さくなるように設定されていて、ラジアントチューブ3内に設置する際に各突部14bの先端部をラジアントチューブの内周壁に当接させることにより、上記軸部14aが突部14bによって、ラジアントチューブ3の直線部分の軸線上であってレキュペレータ5の先端部5aと対向する位置に安定的に支持されるようにしている。
【0019】
さらに、この実施の形態においては、レキュペレータ5の保護に際して、図2及び図4に示すように、上述の構成の耐火部材13が2個使用されていて、これらの耐火部材13,13は、ラジアントチューブ3内に、該ラジアントチューブ3の軸線方向に直列状に且つ相互に近接させた状態で配設されている。
また、これらの耐火部材13,13は、図2及び図4に示すように、軸線周りに角度(図2及び図4の場合は45度)を相互にずらした状態、即ち、各軸部14aが両耐火部材13,13ともラジアントチューブ3の直線部分の軸線上に位置した状態で、突部14bのみが相互にずれた状態で配置されている。つまり、レキュペレータ5が挿し込まれたラジアントチューブ3の開口側から見た場合には、レキュペレータ側に位置する手前側の耐火部材13の流通部15から、奥側に位置する耐火部材13の突部14bが見えるような状態となる(特に図4参照)。
【0020】
このように、2つの耐火部材13,13をラジアントチューブ3内に配設する一方、これらの耐火部材13,13を、軸線周りに角度を相互にずらして各耐火部材13,13の遮断部14の突部14bの位置が相互にずれた状態で配置することにより、これら耐火部材13,13の遮断部14全体がなす該耐火部材13の軸線方向の投影面積が、耐火部材単体の場合に比べて増大する。これにより、実質的に、ラジアントチューブ3からの輻射熱がレキュペレータ5に向けて透過する範囲が一層小さくなるため、レキュペレータ5に伝熱される輻射熱をより確実且つより大幅に遮ることが可能となる。
その一方で、2個の耐火部材13,13は軸線方向に直列状されているため、たとえ各耐火部材13,13の各突部14bの位置が相互にずれたことによって遮断部14全体がなす軸線方向の投影面積が増大しても、上記流通部15の空間は常に確保され、したがって、排ガスの流通が阻害されることはない。
【0021】
ところで、上記耐火部材全体をラジアントチューブの軸線方向から見た場合の該耐火部材の遮断部がなす見かけの面積、即ち、両耐火部材13,13の遮断部14全体がなす軸線方向の投影面積は、その面積が大きいほど輻射熱のレキュペレータへの伝熱を遮ることができる。したがって、耐火部材全体としての投影面積が大きいほど、即ち該投影面積がラジアントチューブ内の径方向の断面積に近づくほどレキュペレータの保護効果が向上することになる。
耐火部材の遮断部全体がなす軸線方向の投影面積については、レキュペレータの外筒の表面温度の減少具合と、耐火部材に対する排ガスの通風抵抗や、排ガスに含まれるカーボンや灰が耐火部材に付着することによる流通部の閉塞の可能性を考慮して最も適切な大きさに設定する必要があるが、基本的に、この投影面積は、ラジアントチューブ内周の径方向の断面積中において流通部に相当する面積よりも大きいこと、つまり遮断部全体の投影面積が、耐火部材の軸線方向から見た場合の流通部に相当する見かけの面積よりも大きいことが好ましい。
この場合において、遮断部全体の投影面積は、ラジアントチューブ内周の径方向の断面積の60%以上を占める(投影率)となる程度に設定することが望ましく、さらには80%以上を占める程度に設定することが望ましい。
【0022】
以上のように、上述のレキュペレータの保護方法によれば、上記レキュペレータ5を、先端部5aが炉壁2の炉内側に突出しない位置まで該ラジアントチューブ3に挿入させた上、ラジアントチューブ3内おけるレキュペレータ5の先端部5aよりも炉内側に、上記耐火部材13,13を該レキュペレータ5の先端部5aに接触しない程度に近接させたことにより、炉壁2と耐火部材13,13とが、ラジアントチューブ3からの輻射熱をレキュペレータ5に伝熱する範囲及び経路を大きく狭めることとなる。
これにより、上記輻射熱は、炉壁2及び耐火部材13,13によりレキュペレータ5に至る前に大幅に遮られるため、この輻射熱によるレキュペレータ5への伝熱量を確実に減少させて該レキュペレータ5の熱負荷を軽減することができ、したがって、従来過度に上昇していたレキュペレータ5(具体的には外筒9)の温度を下げることが可能となる。この結果、排ガスの熱と輻射熱とを含む熱の影響によるレキュペレータ5の損傷を防止し、長寿命化を図ることができる。
【0023】
さらに、上記レキュペレータの保護方法によれば、レキュペレータ5の位置の調整、及びラジアントチューブ3内に耐火部材13を配設するという簡単且つ短時間の作業でレキュペレータの安定的且つ確実な保護を図ることができるという利点がある。しかも、レキュペレータの保護・長寿命化を図るに際して、レキュペレータに高耐熱性を有するセラミックス等の高価な材質のものを使用する場合に比べ、非常に安価である。
【0024】
上記実施の形態においては、レキュペレータ5を、該レキュペレータ5の先端部5aが、ラジアントチューブ3内において上記炉壁2の炉内側の面2aと同じ面上に位置するようにラジアントチューブに挿入、固定しているが、レキュペレータの位置は、先端部が上記ラジアントチューブ内において炉壁の炉内側の面から突出しない位置であればよく、例えば先端部が炉壁の炉内側の面と外方側の面(即ち炉壁の厚み内)に位置するようにレキュペレータの位置を調整してもよい。ただし、ラジアントチューブ内の排ガスの熱をレキュペレータによる熱交換に有効利用すべき点を考慮すると、該レキュペレータは、先端部が炉壁の炉内側の面から突出しない範囲で該炉内側の面に可能な限り近い位置となるように配設することが好ましい。
【0025】
また、上記耐火部材13の形状は、上述のような断面十字形状である必要はなく、突部の数を3個以下、または5個以上としたものであってもよい。これ以外にも、断面が略三角形、略四角形、あるいは星型等の多角形のものや、ブロック状や板状の各形状の基材に流通部として複数の穴を貫設したり螺旋状の溝を切設したりしたもの等、ラジアントチューブに対して遮断部と流通部とが形成されたものであれば各種形状のものを採用することができる。
【0026】
また、上記実施の形態においては、上記ラジアントチューブ内に配設する耐火部材の数を2個とした例について述べたが、耐火部材の数をより増加(例えば3個以上)させることにより、これら耐火部材の遮断部全体がなす該耐火部材の軸線方向の投影面積を増大させてもよい。また、この場合において、使用する耐火部材の形状はすべて同じである必要はなく、複数種の形状のものを併用することができる。
なお、耐火部材の数については、必要な投影面積を確保できるのであれば、1個であってもかまわないことはもちろんである。この場合において、その耐火部材単体は、遮断部がなす該耐火部材の軸線方向の投影面積が、ラジアントチューブ内周の径方向の断面積中において上記流通部に相当する面積よりも大きい形状とすることが望ましい。
【0027】
さらに、上記実施の形態では、耐火部材の遮断部全体がなす該耐火部材の軸線方向の投影面積を増大させる手段として、断面十字形状の2つの耐火部材13,13を軸線周りに45度相互にずらした状態でラジアントチューブ3内に配置しているが、耐火部材全体としての必要な投影面積に応じて、相互の角度を変えて投影面積を調整してもよい。
この点については、耐火部材を3個以上使用する場合も同様で、必要な投影面積に応じて、それらの耐火部材全体がなす投影面積の大きさを、各耐火部材の軸線周りの角度をそれぞれ調整することにより増減することができる。また、この場合においては、使用する耐火部材の遮断部全体がなす軸線方向の投影面積が、ラジアントチューブ内周の径方向の断面積中において上記流通部に相当する面積よりも大きくなるように、各耐火部材の軸線周りの角度を配置を相互にずらす等、適切な態様で配置することが好ましい。
【実施例】
【0028】
本発明のレキュペレータ保護方法の効果を調べるため、上記実施の形態の構成のラジアントチューブ式加熱装置において、上述したレキュペレータ保護方法を実施し、レキュペレータの外筒における先端部の表面温度を測定した。
上記レキュペレータ保護方法を実施するに際しては、バーナーの火力を一定にした状態した上で、耐火部材全体の投影面積が異なる耐火部材、具体的には、ラジアントチューブ内の径方向の断面積に対する耐火部材全体の投影面積(投影率)が40%,60%,80%,90%,94%のものをレキュペレータの先端側に配置し、各投影面積ごとにレキュペレータ先端部の表面温度をそれぞれ測定するようにした。一方で、耐火部材を配設しない場合、即ち本発明の保護方法を実施しない場合(投影率0%)についても、レキュペレータ先端部の表面温度を測定した。
なお、実験に際しての主な条件は次の通りである。
(1)ラジアントチューブの径方向の断面積: 24872mm
(2)レキュペレータの軸線方向の投影面積(外筒部分): 17663mm
(3)レキュペレータの外筒の材質: 耐熱鋼(SCH13(JIS G5122))
(4)熱交換前の燃焼用空気の温度: 35℃
【0029】
実験の結果、レキュペレータの外筒における先端部の表面温度は、耐火部材全体の投影率が40%の場合931℃、60%の場合903℃、80%の場合842℃、90%の場合772℃、94%の場合729℃であった。一方、耐火部材を配設しなかった場合の上記先端部の表面温度は956度であった。
また、耐火部材全体の投影率における排ガスの温度についても測定したところ、本発明によってラジアントチューブからレキュペレータへの輻射伝熱量が小さくなることにより、レキュペレータは排ガスの顕熱をより効率的に回収することができるようになったため、耐火部材を配設しなかった場合の排ガス温度720℃に比べて、投影率が60%の場合の排ガス温度は約10℃低下、投影率が94%の場合は約40℃低下しており、バーナーに使用する燃料の節約に繋がっていることがわかった。
【0030】
以上により、本発明のレキュペレータ保護方法を実施することにより、レキュペレータの外筒の表面温度を確実に下げることができることがわかった。
さらには、耐火部材の投影面積を大きくするほどレキュペレータの先端部の表面温度は下がることが実証された。特に、投影率が60%の場合は、耐火部材を配置しなかった場合よりも50℃以上、投影率80%の場合は100℃以上も表面温度を下げることができることから、耐火部材の投影面積を大きくすることによってレキュペレータの保護効果を向上させることができることがわかった。
以上のように、本発明のレキュペレータ保護方法によれば、該レキュペレータの表面温度を確実に抑制し、レキュペレータに対する熱の影響を抑えることが可能であることが実証された。
【符号の説明】
【0031】
1 ラジアントチューブ式加熱装置
2 炉壁
2a 炉壁の炉内側の面
3 ラジアントチューブ
4 バーナー
5 レキュペレータ
13 耐火部材
14 遮断部
14a 軸部
14b 突部
15 流通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が熱処理炉の炉壁外方に導出されたラジアントチューブと、該ラジアントチューブの一端側に上記炉壁の炉外側から挿入されたバーナーと、上記ラジアントチューブの他端側に上記炉壁の炉外側から挿入されて、該バーナーに送られる燃焼用空気を予熱するレキュペレータとを備えたラジアントチューブ式加熱装置におけるレキュペレータの保護方法であって、
上記レキュペレータを、上記ラジアントチューブ内において該レキュペレータの先端部が炉壁の炉内側の面から突出しない位置まで該ラジアントチューブに挿入すると共に、
ラジアントチューブ内におけるレキュペレータの先端部よりも炉内側に、ラジアントチューブからの輻射熱を遮る遮断部とバーナーの排ガスを流通させる流通部とを有する耐火部材を、該レキュペレータの先端部に接触しない程度に近接させて配設することを特徴とするラジアントチューブ式加熱装置のレキュペレータ保護方法。
【請求項2】
上記ラジアントチューブ内に配設する耐火部材の数を増加させることにより、これら耐火部材の遮断部全体がなす該耐火部材の軸線方向の投影面積を増大させることを特徴とする請求項1に記載のラジアントチューブ式加熱装置のレキュペレータ保護方法。
【請求項3】
上記耐火部材の遮断部を、ラジアントチューブの軸線方向に沿う方向に延びる軸部と、該軸部に沿って放射状に立ち上がる複数の突部とを有する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラジアントチューブ式加熱装置のレキュペレータ保護方法。
【請求項4】
上記ラジアントチューブ内に、複数の耐火部材を該ラジアントチューブの軸線方向に直列状に並べ、且つこれら耐火部材を、軸線周りに角度を相互にずらすことにより各耐火部材の突部の位置が相互にずれた状態で配置することを特徴とする請求項3に記載のラジアントチューブ式加熱装置のレキュペレータ保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94900(P2011−94900A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250362(P2009−250362)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】