説明

ラジエータ

【課題】ノートPCのような小型薄型の機器に搭載することができる小型薄型で、放熱性がよいラジエータを得る。
【解決手段】平面状に展開された冷却液流路と、該冷却液流路の展開平面と平行な上下の放熱面と、上記冷却液流路を避け上記上下の放熱面に貫通させて形成した貫通空気孔とを有する流路ブロック;流路ブロックの上下の放熱面の一方の上に位置し、該一方の放熱面に対して傾斜した第一の設置基準面を有する、楔状をなす第一のスペーサ部;及び流路ブロックの上下の放熱面の他方の上に位置し、該他方の放熱面に対して上記第一の設置基準面とは反対方向に傾斜した第二の設置基準面を有する、第一のスペーサ部とは逆方向の楔状をなす第二のスペーサ部;を備え、該第一、第二のスペーサ部により、第一、第二の設置基準面を空間形成面に当接させた状態において流路ブロックの貫通空気孔に対する空気流を確保したラジエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過する液体を冷却するラジエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発熱するCPU(熱源)の冷却システムは、CPUに当接して熱を奪うヒートシンクと、ラジエータと、このヒートシンクとラジエータの間で冷却液を循環させる液体ポンプとを基本構成要素としており、各要素について、ノートPCのような小型な機器に搭載可能なように、小型化と高信頼性が図られている。
【特許文献1】特開平11-307703号公報
【特許文献2】特開2005-38112号公報
【特許文献3】特許第3727647号公報
【特許文献4】特開2006-32629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来知られているラジエータは、ノートPCのような小型薄型の機器に搭載することが困難であり、あるいは十分な放熱性を期待することができなかった。
【0004】
本発明は、狭い平行空間に収納可能な小型薄型で、放熱性がよいラジエータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のラジエータは、平面状に展開された冷却液流路と、該冷却液流路の展開平面と平行な上下の放熱面と、上記冷却液流路を避け上記上下の放熱面に貫通させて形成した貫通空気孔とを有する流路ブロック;流路ブロックの上下の放熱面の一方の上に位置し、該一方の放熱面に対して傾斜した(との距離を徐々に変化させる)第一の設置基準面を有する、楔状をなす第一のスペーサ部;及び流路ブロックの上下の放熱面の他方の上に位置し、該他方の放熱面に対して上記第一の設置基準面とは反対方向に傾斜した第二の設置基準面を有する、第一のスペーサ部とは逆方向の楔状をなす第二のスペーサ部;を備え、該第一、第二のスペーサ部は、第一、第二の設置基準面を空間形成面に当接させた状態において流路ブロックの貫通空気孔に対する空気流を確保することを特徴としている。
【0006】
第一、第二のスペーサ部の楔状形状は、本ラジエータの設置空間の形状に応じて変化させることができる。最も一般的には、設置空間を平行空間とし、第一、第二の設置基準面とを互いに平行に形成する。
【0007】
第一、第二のスペーサ部は一定間隔で設置した放熱フィンから構成することが好ましい。
【0008】
流路ブロックと第一、第二のスペーサ部とは別の部材から構成しても、同一の部材から構成することもできる。
【0009】
流路ブロックは、その好ましい一態様によれば、互いに対向する面に連続した流路凹溝を有する第一、第二の凹溝板と、この第一、第二の凹溝板の間にあって、各流路凹溝に隙間を持って嵌まり、冷却液流路を形成する凸条を有する中間板とによって構成することができる。この態様では、第一、第二の凹溝板と一体に第一、第二のスペーサ部を形成することで、部品点数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のラジエータは、第一、第二のスペーサ部の設置基準面を設置空間の空間形成面に当接させることで、必ず、流路ブロックの貫通空気孔を通り、一対の放熱面に沿って流れる冷却空気流を形成することができる。従って、狭い設置空間に設置しても放熱性に優れたラジエータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図8は、発熱源として例示するCPU10の水冷システムの概念図である。CPU10は、伝熱性ヒートシンク11に接触しており、液体ポンプ12から伝熱性ヒートシンク11に供給される冷却液は、伝熱性ヒートシンク11内の流路を流れてCPU10から熱を奪う。伝熱性ヒートシンク11で昇温した冷却液は、ラジエータ20内の冷却液流路21を流れて冷却され、再び液体ポンプ12に戻り、以下この循環を繰り返す。
【0012】
図1ないし図7は、本発明によるラジエータ20の一実施形態を示している。ラジエータ20は、伝熱性に優れた金属材料(例えば銅)からなる流路ブロック22を有している。流路ブロック22は、積層結合される上側凹溝板(第一凹溝板)23、中間板24及び下側凹溝板(第二の凹溝板)25からなっている。上側凹溝板23と下側凹溝板25はそれぞれ、中間板24側の面に、連続折返凹溝21aを有し、中間板24の表裏には、これらの連続折返凹溝21a内に隙間を持って嵌まり、冷却液流路21を構成する連続折返凸条21bが構成されている。
【0013】
下側凹溝板25には、入口ポート26と出口ポート27が設けられており、入口ポート26は、下側凹溝板25に形成した迂回路26aと中間板24に穿設した迂回孔24a(図1、図4、図7)を介して、上側凹溝板23の連続折返凹溝21aと中間板24の上側連続折返凸条21bとで形成される上側冷却液流路21に入る。中間板24には、上側冷却液流路21(凹溝21a)の終点部に位置させて迂回孔24b(図1、図3、図7)が形成されており、上側冷却液流路21の終点部に至った冷却液は迂回孔24bを通って、下側凹溝板25の連続折返凹溝21aと中間板24の下側連続折返凸条21bとで形成される下側冷却液流路21に入る。下側冷却液流路21の終点は、迂回路27aを介して出口ポート27に連通している。
【0014】
中間板24の表裏の凸条21bの平面形状は同一であり、上下の凹溝板23と25の連続折返凹溝21aの平面形状は、入口ポート26と出口ポート27との接続部形状を除き同一である。
【0015】
このように、流路ブロック22には、平面状に二段に展開された冷却液流路21が形成されており、その上下面に、冷却液流路21の展開平面と平行な上側放熱面23aと下側放熱面25aが形成されている。また、流路ブロック22には、冷却液流路21の間に位置させて、上側放熱面23aと下側放熱面25aに貫通する貫通空気孔28が形成されている。
【0016】
流路ブロック22の上側放熱面23aと下側放熱面25a上にはそれぞれ、逆方向の楔状をなす上側スペーサ部(放熱フィン)23bと下側スペーサ部(放熱フィン)25bが形成されている。この実施形態では、上側スペーサ部23b、下側スペーサ部25bはそれぞれ、上側凹溝板23、下側凹溝板25と一体に形成されている。上側スペーサ部23bは、上側放熱面23aとの距離を徐々に変化させる(上側放熱面23aに対して傾斜した)上側設置基準面(第一の設置基準面)23cを有する楔状をなしており、適当な間隔をおいて複数が上側放熱面23a上に位置している。下側スペーサ部25bは、下側放熱面25aとの距離を徐々に変化させる(下側放熱面25aに対して傾斜した)下側設置基準面(第二の設置基準面)25cを有する楔状をなしており、適当な間隔をおいて複数が下側放熱面25a上に位置している。上側スペーサ部23bと下側スペーサ部25bの楔の形状は互いに反対方向を向いており、上側設置基準面23cと下側設置基準面25cは平行をなしている。
【0017】
以上の流路ブロック22は、図6に示すように、上側設置基準面23cと下側設置基準面25cを、平行な空気流路を構成する空間形成面(閉塞面)30、31に当接させると、必ず上側放熱面23aと下側放熱面25a(冷却液流路21の展開平面)が、空間形成面30、31に当接することなく該空気流路に対して傾斜した状態で位置し、貫通空気孔28を通る冷却空気流路を確保することができる。入口ポート26と出口ポート27は、図8のヒートシンク11と液体ポンプ12との間に接続される。
【0018】
いま、空間形成面30と31の間を通り図6の左方から流路ブロック22に対して進入する冷却風を想定すると、冷却風は流路ブロック22の下側放熱面25aに沿って流れた後、貫通空気孔28を通って流路ブロック22の上側に達し、次いで上側放熱面23aに沿って流れるため流路ブロック22内の冷却液流路21を流れる冷却液を効率的に冷却することができる。空気流路に対する上下の放熱面23a、25aと上下の設置基準面23c、25cの傾斜角度は、上下のスペーサ部23b、25bの楔角を変化させることで変化させることができる。
【0019】
以上の実施形態では、上側スペーサ部23bと下側スペーサ部25bを流路ブロック22の構成要素である上側凹溝板23と下側凹溝板25に一体に設けたが、これらを別部材として設け、後に結合してもよい。また、上側スペーサ部23bと下側スペーサ部25b(放熱フィン)の間隔は、放熱性を考慮して適当に定めることができる。
【0020】
また、図示実施形態の流路ブロック22の流路構造は、薄型でありながら長い流路を確保するために好ましい形態であるが、本発明はこの流路構造に限定されない。流路が二段に構成されているが、設置スペースによって一段でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のラジエータ一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図1のV-V線に沿う断面図である。
【図6】図1ないし図5のラジエータを空気流路に設置した状態を示す、図5と同様の断面図である。
【図7】本発明のラジエータ一実施形態を示す分解斜視図である。
【図8】ラジエータを含む冷却システムの概念図である。
【符号の説明】
【0022】
20 ラジエータ
21 冷却液流路
21a 連続折返凹溝
21b 連続折返凸条
22 流路ブロック
23 上側凹溝板(第一の凹溝板)
23a 上側放熱面(第一の放熱面)
23b 上側スペーサ部(第一のスペーサ部、放熱フィン)
23c 上側設置基準面(第一の設置基準面)
24 中間板
25 下側凹溝板(第二の凹溝板)
25a 下側放熱面(第二の放熱面)
25b 下側スペーサ部(第二のスペーサ部、放熱フィン)
25c 下側設置基準面(第二の設置基準面)
28 貫通空気孔
30 31 空間形成面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状に展開された冷却液流路と、該冷却液流路の展開平面と平行な上下の放熱面と、上記冷却液流路を避け上記上下の放熱面に貫通させて形成した貫通空気孔とを有する流路ブロック;
流路ブロックの上下の放熱面の一方の上に位置し、該一方の放熱面に対して傾斜した第一の設置基準面を有する、楔状をなす第一のスペーサ部;及び
流路ブロックの上下の放熱面の他方の上に位置し、該他方の放熱面に対して上記第一の設置基準面とは反対方向に傾斜した第二の設置基準面を有する、第一のスペーサ部とは逆方向の楔状をなす第二のスペーサ部;
を備え、
該第一、第二のスペーサ部は、第一、第二の設置基準面を空間形成面に当接させた状態において流路ブロックの貫通空気孔に対する空気流を確保することを特徴とするラジエータ。
【請求項2】
請求項1記載のラジエータにおいて、上記第一のスペーサ部の第一の設置基準面と、第二のスペーサ部の第二の設置基準面とは平行をなしているラジエータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のラジエータにおいて、上記第一、第二のスペーサ部は放熱フィンからなっているラジエータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のラジエータにおいて、上記流路ブロックと第一、第二のスペーサ部とは別の部材から構成されているラジエータ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載のラジエータにおいて、上記流路ブロックは、互いに対向する面に連続した流路凹溝を有する第一、第二の凹溝板と、この第一、第二の凹溝板の間にあって、各流路凹溝に隙間を持って嵌まり冷却液流路を形成する凸条を有する中間板とを備えているラジエータ。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のラジエータにおいて、上記第一、第二のスペーサ部は、第一、第二の凹溝板と一体に形成されているラジエータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−51401(P2008−51401A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227770(P2006−227770)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】