説明

ラジオコントロールカーの駆動装置

【課題】 従来の駆動力伝達装置にあっては、モータの出力軸と車軸とが平行で、かつ、間隔が一定となるように取付けられているので、大小のギアを確実に噛合させるためにはギアの選択が必要となり多数のギアを用意しなければならないといった問題があり、また、長期間使用しているとギアどうしの摩擦によって磨耗しギアの噛合力が弱くなり交換するといった面倒な作業が必要になるといった問題があった。
【解決手段】 モータ6が収納される収納部7aと車軸5aが回転自在に支持される車軸支持部7bが1つのハウジング7内に形成された駆動装置において、前記モータを前記収納部に前記車軸と平行で、かつ、前記収納部内で回転可能に収納すると共にモータを回転すると前記収納部内においてモータの出力軸が偏心変位することで、モータの出力軸6aに取付けられた小ギア6bと車軸に取付けられた大ギア5bとの間隔が変化するようにしたラジオコントロールカーの駆動装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーシに対して回転自在に取付けられた後輪車軸のギアと、シャーシに取付けられたモータ等の駆動源の出力軸に取付けられたギアとの噛合度合いを調整可能としたラジオコントロールカーの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるラジオコントロールカーにおける駆動力伝達装置としては、例えば、特開2004−81689号公報の図20に開示されているようにシャーシに取付けられたハウジング内に駆動源であるモータを取付け、また、前記ハウジング内に後輪の車軸をモータの出力軸と平行で、かつ、間隔が一定となるように取付け、モータの出力軸に取付けられている小ギアと車軸に取付けられた大ギアとを噛合させ、モータの駆動力によって車軸を回転させ後輪を回転させるものであった。
【特許文献1】特開2004−81689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した駆動力伝達装置にあっては、モータの出力軸と車軸とが平行で、かつ、間隔が一定となるように取付けられているので、大小のギアを確実に噛合させるためにはギアの選択が必要となり多数のギアを用意しなければならないといった問題があり、また、長期間使用しているとギアどうしの摩擦によって磨耗しギアの噛合力が弱くなり交換するといった面倒な作業が必要になるといった問題があった。
【0004】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、モータの出力軸が車軸に対して平行で、かつ、偏心可能なようにハウジング内に収納すると共にハウジング内においてモータ本体を回転可能に取付けたことにより、モータ本体を回転することでモータ出力軸のギアと車軸のギアとの間隔を調整できるようにしたことを特徴とするラジオコントロールカーの駆動装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るラジオコントロールカーの駆動装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、モータが収納される収納部と車軸が回転自在に支持される車軸支持部が1つのハウジング内に形成された駆動装置において、前記モータを前記収納部に前記車軸と平行で、かつ、前記収納部内で回転可能に収納すると共にモータを回転すると前記収納部内においてモータの出力軸が偏心変位することで、モータの出力軸に取付けられた小ギアと車軸に取付けられた大ギアとの間隔が変化することを特徴とする。
【0006】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記モータをモータ支持体内に収納することによりモータの出力軸がモータ支持体内で偏心状態となり、これによりモータ支持体を収納部に収納し、該モータ支持体を収納部内で回転することでモータの出力軸は収納部の中心線に対して偏心変位することを特徴とする。
【0007】
請求項3の手段は、前記した請求項2において、前記モータ支持体におけるモータを固定するための端面に治具係合溝を形成し、該治具係合溝にドライバー等の治具先端を係合して回転することでモータ支持体が収納部に対して回転できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は前記したように、ハウジングに形成された収納部に車軸と平行で、かつ、収納部内で回転可能に収納にモータを収納し、該モータを回転することで収納部内においてモータが偏心回転してモータの出力軸に取付けられた小ギアと車軸に取付けられた大ギアとの間隔が変化するので、小ギアと大ギアとの噛合を最適な噛合度合いとすることができ、従って、モータに通電して小ギアを回転させると大ギアに対して動力の伝達がスムースに行われると共にギアどうしの回転摩擦抵抗も小さくなるのでギアの耐用年数が大きくなり、かつ、回転時の騒音も小さくできる。
【0009】
また、モータを肉厚が徐々に変化するモータ支持体に収納し、該モータ支持体を収納部に対して回転することでモータの収納部に対して偏心回転するので、モータの偏心回転機構が簡単な構造で構成でき偏心回転が正確に行えると共にコストの低減を図ることができる。
【0010】
さらに、モータ支持体におけるモータを固定するための端面に治具係合溝を形成し、該治具係合溝に治具先端を係合して回転することでモータ支持体を収納部に対して回転できるようにしたので、治具として誰もが所有するドライバーを利用でき治具を特別に購入することも必要がなく、また、治具を紛失した場合でも他のドライバーを応用することができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、ハウジングに形成された収納部に車軸と平行で、かつ、収納部内で回転可能にモータを収納し、該モータを回転することで収納部内においてモータの出力軸が偏心変位するものである。
【実施例】
【0012】
以下、本発明に係るラジオコントロールカーの駆動装置の一実施例を図面と共に説明する。
1はシャーシにして、前方には操舵装置2を介して被駆動輪である前輪3が取付けられ、後方には走行時の振動を吸収する弾性を有する緩衝連結板4を介して駆動輪である後輪5および該後輪5を回転させるためのモータ6が取付けられた駆動装置Dが取付けられている。
【0013】
7はモータ6の収納部7aと後輪5の車軸5aを軸支する軸受け9が嵌合された車軸支持部7bを一体化したハウジング7にして、該ハウジング7には前記緩衝連結板4の一端がネジ止めされ、該緩衝連結板4の他端がシャーシ1の裏面側にネジ止め固定され、これによりハウジング7はシャーシ1に弾性的に取付けられている。
【0014】
そして、モータ6は半円筒状のモータ支持体8内に嵌合固定され、モータ6はモータ支持体8と共にハウジング7の収納部7a内に回転可能な状態で収納される。ここで、モータ支持体8の肉厚はモータを収納するための収納開口部8a側から徐々に肉厚に形成され収納開口部8aの反対面の肉厚が最も厚くなるように形成されている。従って、モータ6を収納部7aに収納した状態においてモータ6の出力軸6aは収納部7aの中心軸線に対して偏心した状態となる。
【0015】
また、モータ支持体8の両端は閉塞され、該閉塞された一方にはモータ6の出力軸6aを挿通するための切欠部8cが形成され、他方にはマイナスドライバー等の治具を係合してモータ支持体8を収納部7a内で回転させるための治具係合溝8dが形成されている。なお、収納部7aとモータ支持体8には放熱用の開口部7a1,8a1が形成されている。また、モータ6を偏心状態でモータ支持体8に収納する手段として前記した説明ではモータ支持体8に肉厚を変えた例を示したが、モータ支持体8の肉厚は一定としモータ6と接触する内周面に高さが徐々に変化するリブを前記開口部7a1の間に形成してもよい。
【0016】
前記モータ支持体8にモータ6を収納した状態でハウジング7の収納部7a内に挿入すると、該収納部7a内に形成されたリング状突条7a2にモータ支持体8における切欠部8c側の閉塞部が当接して所定の位置に停止される。この状態において収納部7aの反対側をネジ止めによって閉塞板8eで塞ぐことで、モータ6およびモータ支持体8がみだりに回転しないような状態で収納されることになる。
【0017】
そして、モータ支持体8の治具係合溝8dに治具の先端を係合して治具を回転することで、モータ支持体8は収納部7aに対して回転するので、モータ6は収納部7a内において偏心状態で回転することになる。なお、治具係合溝8dはプラス、マイナス等のドライバーの先端と係合される形状に限定されるものではなく、先端の形状(星形やD形等)が如何なる形状のものであっても係合可能な形状とすることで対応可能とする。
【0018】
一方、ハウジング7の車軸支持部7bの開口両端に車軸5aの軸受け9が嵌合されており、この軸受け9に車軸5aが軸支される。車軸5aの一端には前記モータ6の出力軸6aに取付けられた小ギア6bと噛合する大ギア5bが嵌着され、該大ギア5bには後輪5を取付けるための車輪取付部材5cがネジ止めされている。また、車軸5aの他端にも後輪5を取付けるための車輪取付部材5dが車軸5aに対してネジ止めされている。
【0019】
このように構成した駆動装置Dにおいて、モータ6の出力軸6aに取付けられている小ギア6bと車軸5aに取付けられている大ギア5bとの噛合を行うには、先ず、車軸5aを車軸支持部7bに取付ける前に図5に示すように治具係合溝8dに治具の先端を係合してモータ6をモータの収納部7aに対して回転させるとモータ6は収納部7aに対して偏心回転するので、この回転によって小ギア6bが大ギア5bより離れる位置にセットしておく。
【0020】
そして、車軸5aを車軸支持部7bに取付けた状態において治具係合溝8dに治具先端を係合してモータ6をモータの収納部7aに対して小ギア6bが大ギア5bと最適な噛合度合いで噛合するように偏心回転させる(図6参照)。この偏心回転において小ギア6bと大ギア5bとの噛合を最適な噛合度合いとすることで、モータ6に通電して小ギア6bを回転させると大ギア5bに対して動力の伝達がスムースに行われると共にギアどうしの回転摩擦抵抗も小さくなるのでギアの耐用年数が大きくなり、かつ、回転時の騒音も小さくなるものである。
【0021】
なお、長時間の走行によって小ギア6bと大ギア5bとの間に磨耗等によって隙間ができて動力の伝達がスムースに行われなくなった場合には、治具を使用してモータ6を収納部7a内において偏心回転させて小ギア6bと大ギア5bとの噛合度合いを最適状態とすることで動力の伝達はスムースな状態とすることができる。
【0022】
前記した実施例にあっては、駆動装置Dをシャーシ1に対して水平状態で、かつ、前方に配置したものであるが、公知の駆動装置Dをシャーシ1に対して水平状態で、かつ、後方に配置した図7(a)に示すものや、シャーシ1に対して垂直方向に配置した図7(b)に示すものにも応用できることは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の駆動装置を搭載したラジオコントロールカーの前方上方から見た斜視図である。
【図2】同上の前方裏面から見た斜視図である。
【図3】本発明の駆動装置の分解斜視図である。
【図4】組み立て状態の斜視図である。
【図5】(a)は図4の上面図、(b)は小ギアと大ギアとの無噛合状態の側面図、(c)は小ギアと大ギアとの無噛合状態のA−A線断面図である。
【図6】(a)は図4の上面図、(b)は小ギアと大ギアとの噛合状態の側面図、(c)は小ギアと大ギアとの噛合状態のA−A線断面図である。
【図7】(a)は駆動装置をシャーシに対して水平状態で、かつ、後方に配置した他の実施例の側面図、(b)はシャーシに対して垂直方向に配置した他の実施例の側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 シャーシ
5 後輪
5a 車軸
5b 大ギア
6 モータ
6a 出力軸
6b 小ギア
7 ハウジング
7a 収納部
7b 車軸支持部
8 モータ支持体
8d 治具係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータが収納される収納部と車軸が回転自在に支持される車軸支持部が1つのハウジング内に形成された駆動装置において、
前記モータを前記収納部に前記車軸と平行で、かつ、前記収納部内で回転可能に収納すると共にモータを回転すると前記収納部内においてモータの信号軸が偏心変位することで、モータの出力軸に取付けられた小ギアと車軸に取付けられた大ギアとの間隔が変化することを特徴とするラジオコントロールカーの駆動装置。
【請求項2】
前記モータをモータ支持体内に収納することによりモータの出力軸がモータ支持体内で偏心状態となり、これによりモータ支持体を収納部に収納し、該モータ支持体を収納部内で回転することでモータの出力軸は収納部の中心線に対して偏心変位することを特徴とする請求項1記載のラジオコントロールカーの駆動装置。
【請求項3】
前記モータ支持体におけるモータを固定するための端面に治具係合溝を形成し、該治具係合溝にドライバー等の治具先端を係合して回転することでモータ支持体が収納部に対して回転できるようにしたことを特徴とする請求項2記載のラジオコントロールカーの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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