説明

ラジオシンセティックによる試料検査方法

本発明は、いわゆるラジオシンセティック検査による、非破壊で且つ連続的な試料検査方法に関するものであり、この試料のライフサイクルマネージメントプロセスに組み込むことができる。この方法は、少なくとも1つのX線源と、このX線源と一対をなす少なくとも1つのデジタルセンサとを用いて行われ、このX線源とセンサとは、各試料の少なくとも1つの断面をリアルタイムでそれぞれ生成するように、移動空間内部において、向かい合い且つ相似な軌道の上を移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるラジオシンセティック検査(radio-synthetic examination)による、非破壊で且つ連続的な試料検査方法に関するものであり、この試料のライフサイクルマネージメントプロセスに組み込むことができる。この方法は、少なくとも1つのX線源と、このX線源と対をなす少なくとも1つのデジタルセンサとを用いて行われ、各試料の少なくとも1つの断面画像(section)をリアルタイムで生成するために、このX線源とセンサとは、移動空間内部において、向かい合い且つ相似な軌道の上を移動する。
【0002】
「試料のライフサイクル」とは、その設計(CAD)からその工業的生産(MPM)までの一連を行うための方法及び技術的手段を意味する。
【背景技術】
【0003】
物体の非破壊検査の方法としては、トモグラフィーがすでに知られている。トモグラフィーの原理は、同じ軸の両サイドに配置されているX線源とX線センサとを用い、軸の周りに試料を回転させ、X線源からセンサまで試料を透過するX線を用いて、この回転の各角度領域(angular portion)において1つから数個の投影(projection)を得ることからなる。
【0004】
X線トモグラフィー法は、フィルター逆投影(filtered back projection)のアルゴリズム計算により事前に得られた投影から試料の空間画像(space image)(3D)を最終的に復元(restore)するものである。この方法によれば、物体のボリュームにおける3つのX、Y及びZ平面で、及び、様々な平面(level)で、被検査物体をバーチャルに分割することが可能である。
【0005】
このようなシステムの主な欠点は、画像を得るための時間が非常に長いことであり(各被検査物体に対して約1時間かかる)、これは、必要とされる写真もしくはそれと同等のものが非常に多く、もしくは、最終的な画像を構成するための時間が長いためである。
【0006】
周知のトモグラフィー法による物体の検査及び再構成の原理は以下のように構成される:
− 平坦状、直線状、円形状、又は、楕円状の撮影軌道(acquisition trajectory)に応じて物体の前方を移動するX線源と、このX線源に対応するものであり、X線源の軌道と同形(identical)で且つ平行な軌道の上であって、物体の後方を移動するデジタルセンサとを用い、
− 制限された角度領域(a restricted angular field)に割り振られた物体の二次元投影(2D)を数回行い、これらの投影は、デジタルセンサによりデジタルセンサ上に得られるものであり、さらに、
− わずかな二次元投影(2D)を用いて、被検査物体の中央であり且つ水平なバーチャルな断面(section)を再構築(rebuilding)する。
【0007】
このようなトモグラフィー法は、数個の投影から可能な限り良好な被検査物体の断面を再構築することが可能である。この技術は、特に平坦な物体(例えば電子カード)に最適である。一方、平坦ではない形状を有する物体に対しては、最適な断面以外の他の平面に材料が存在することによりノイズが発生することがある。
【0008】
従来技術としては、トモグラフィー装置と方法とが記載された多くの文献も含まれる。
【0009】
第1の文献(米国特許6,459,760)は、X線を用いた、非破壊で且つリアルタイムの被解析物体の検査を行うための方法と自動ロボット装置とに関するものであり、X線とセンサとは物体の周りを動くことができるヒンジで連結されたアームの上に配置されている。可動支持体(mobile support)は連結式のロボットアームと一体となっており、第1の部分と第2の部分とを備え、被検査物体を受け止めるための寸法を有するこれらの間の空間の輪郭を描くように、これらの2つの部分は互いに離隔されている。X線源は第1の部分と一体となっており、軸に沿ってビームが出るように調整されている。センサ、又は、検出パネルは、第2の部分と一体となっており、ビームの軸とほぼ垂直に位置している。方法に対応するロボット装置は、自動的に、被検査物体に対してX線源と検出パネルとを制御することにより、さらに、ロボット装置の画像システムに接続されたデータ処理システムに物体のリアルタイム画像が供給されることにより、被検査物体を検査することができる。
【0010】
他の文献(仏国特許出願2835949)は、X線源を用いた物体の多平面再合成(multiplane rebuilding synthesis)のための方法に関するものであり、このX線源は直線状の軌道に従って移動する。この方法は、物体のボリュームを独立したn個の扇型の二次元平面に分解するステップと、n個の平面ごとに異方性をもった正則化(anisotropic regularization)を行うステップと、n個の平面を通して正則化を行うステップと、代数法(algebraic method)を行うことができるアルゴリズムを用いて物体の三次元画像を再構築するステップとを含むものである。
【0011】
しかしながら、周知のトモグラフィー法は、例えば平面に位置するような平面的な軌道に従ってX線源が移動するものであり、その結果、二次元(2D)の断面から被再構成物体の良好な三次元画像(3D)の再構築に弊害となるような多くの現象が生じ、この現象は、再構築された物体の三次元画像(3D)に多くの欠陥を生じさせるものであり、この欠陥は、例えば、X線源の方向変位におけるぼんやりとした影響(hazy effect)、及び/又は、三次元に再構築された物体のバーチャルなひずみ、及び/又は、得られた二次元画像(2D)の選択が欠如したことによる、各X、Y、Z軸方向について得られたデータの「ノイズ」であり、この「ノイズ」は、物体を再構築する間にもまだ存在し、この再構築された物体の品質にもダメージを与えるものである。
【0012】
さらに、二次元(2D)投影の数とX線の照射方向の開口(aperture)とを制限することにより、二次元(2D)投影から三次元(3D)画像に物体を再構築する方法は、改善された再構築された物体の画像の獲得を可能にするための正則化の制御とともに用いることができる。
【0013】
最終的には、二次元投影を扱い、且つ、三次元(3D)画像に物体を再構築するために、2次元投影に対応する可動式検出器のデジタルデータを受信するデータ処理システムは、分析モード、又は、代数法モード(an algebraic mode)に応じて機能するアルゴリズムを行うことができ、これらの2つのモードは、例えば、あいまいで、及び/又は、バーチャルな変形現象(deformation phenomena)、及び/又は、「ノイズ」、及び/又は、顕著な欠陥を除去するために、物体の二次元投影に対応する集積データを十分に修正することができず、その結果、この物体の再構築作業(rebuilding operation)を妨げることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、すでに知られているような技術手段、及び/又は、新しい技術的手段を新しいやり方で組み合わせることであり、特に、再構築、及び/又は、分析、及び/又は、試料のラジオシンセティック試験(radio-synthetic testing)に弊害をもたらすような、技術における顕著な欠点を除去する。
【0015】
「試料」とは、様々な物体、又は、自然物の集合体、又は、合成物、又は、人体、動物、植物もしくは鉱物の全体もしくは一部である。
【0016】
以下のような記載により説明される本発明のすべての目的のうちのいくつかは、以下のように特に必要なものである:
− 適切な断面を用いたトモグラフィーにより得られた、試料の最良な二次元投影を選択し、
− 被検査試料に対して、X線源とそのセンサとの空間位置をサーチ又は生成し(X線源とそれに対応するセンサについて、平坦な軌道の基本(principle)を事前に獲得することにより)、場所ごとに、このX線源とこのセンサとの三次元の最適な軌道を決定し、正確な分析、及び/又は、試料の忠実な再生産による検査操作(testing operations)を与えるような最適なアルゴリズムにより行われる正しいデータに変換された試料の最良な投影を獲得し、
− PLMといった組織的サイクル(organization cycle)に組み込むことができるような、リアルタイムの三次元の試料の欠陥の検出方法を設計する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
従って、この発明は、リアルタイムのデジタル3DのX線撮影(radiography)により試料を連続的に検査する方法に関するものであり、この方法は、少なくとも1つのX線源と、X線源と対をなす少なくとも1つのデジタルセンサとを用い、これらは、向かい合い且つ相似な軌道に従って移動するものであり、以下のことを特徴とする。
I.第1の期間は、以下のステップを連続的に行うことにより、最良のものとして選択された、検査される標準試料のデジタルモデルと、X線画像(radiographic image)を撮るためのX線源の及びそれに対応するセンサの移動空間における最適な軌道のデジタルモデルと、を生成する:
A−「標準試料のデザイン、及び/又は、決定(definition)を行うステップ」である第1のステップでは:
−A1:試料の3Dパラメータを設定し;
−A2:試料を構成する様々な成分によるX線吸収則(laws/functions of the x-ray absorption)についての3D地図を作成し(cartography);
−A3:試料の3D断面の少なくとも1つを決定する。
B−「パラメータの伝達及び変換を行うステップ」である第2のステップでは:
−B1:ステップ(A)のパラメータを伝達及び変換し;
−B2:試料のボリュームに対して、様々な成分によるX線吸収則を配分(distribution)し;
−B3:ステップA3の少なくとも1つの3D断面の座標を計算する。
C−「シミュレーション及び最適化を行うステップ」である第3のステップでは、少なくとも1つの3D断面を再構築するために必要な最良の投影のシミュレーションとサーチとを行うステップであり、この第3のステップでは;
−C1:ステップ(B)から得られたデータから、この試料のX線投影(radiographic projections)をシミュレーションし;
−C2:最良の1つの断面画像もしくは複数の断面画像を選択する最適なアルゴリズムを用いて、投影のシミュレーションを制御する。
D−「軌道生成ステップ」である第4のステップでは、ステップC2の最後に得られた写真位置データの集合(set of the photograph positions)から、移動空間におけるX線源とセンサとの最適な軌道を生成する。
E−「撮影動作(the motion of acquisition)の統合ステップ」である第5のステップでは、あらかじめ選択されたX線画像を撮影する(acquisition)ために連続的な動作を行わせる機械的装置のための少なくとも1つのコマンドファイルを生成する。
II.第2の期間は、リアルタイムに且つ連続的に実際の試料を検査するために、あらかじめ伝達された、X線源及びそれに対応するセンサの最適な軌道を用いて、リアルタイムで且つ連続的に、実際の試料のX線画像を撮影する。
III.第3の期間は、期間IIにおいて撮られたX線画像により、実際に検査される試料の1つの3D断面もしくは複数の3D断面をリアルタイムに再構築するアルゴリズムのための入力パラメータを構成する。
IV.第4の期間は、画像分析ソフトウェアにより、及び/又は、自然人であるオペレータにより、1つの3D断面画像もしくは複数の3D断面画像を作成する。
【0018】
本発明の目的の説明においては、3Dという用語、三次元、「三次元での」との表現は、類義語としてみなされ、区別せずに用いることができる。
【0019】
本発明は、連続的で且つ非破壊な試料のラジオシンセティック検査の方法に関するものであり、この方法は、少なくとも1つのX線源と、X線源と対をなす少なくとも1つのX線センサとを用い、X線源とセンサとは、移動空間中において向かい合い且つ相似な軌道に従って移動するものであり、各試料の少なくとも1つ断面画像をそれぞれリアルタイムで生成する。
【0020】
本発明による方法は、4つの連続的な期間を備え、これらの期間は、それぞれの結果を得るための特徴的な手段を行うためにそれぞれ異なる機能で特定される(determine):
− 本発明による方法の第1の期間は、最初に、標準試料のデジタルモデルを生成することに関するものであり、標準試料のデジタルモデルとは、生物界といった生物医学分野において自然に多く存在するもの、又は、技術分野において工業的に製造されるもの、もしくは、CADタイプの論理モデルの使用のことである。このモデル生成は、以下に説明するような連続的なステップにより行われる。
【0021】
第1の期間においては、モデル化される試料は、その分析、検査のプロセスを形成し、次いで、検査される実際の試料の検査のために、標準試料として特定する必要性により決定された少なくとも1つの断面を通じてモデルが生成される。
【0022】
本発明による方法の第1の期間は、技術的に認識される欠陥が含まれていないモデル化される試料のX線画像を撮影するために、X線源とそれに対応するセンサとの移動空間に位置する最適な軌道の不可欠なデジタルモデルの生成に関連する。
【0023】
本発明による方法の第2の期間は、第1の期間においてモデル化されたデジタル試料と同じタイプに属する検査される実際の試料のX線画像の撮影に関連する。
【0024】
実際の試料の連続的且つリアルタイムな検査を行うために、第1の期間から得られたX線源とそれに対応するセンサとの移動空間における最適な軌道を用いて、この撮影はリアルタイムに且つ連続的に行われる。
【0025】
第3の期間は、アルゴリズムの再構築により期間IIの間の撮られた複数のX線画像から1つのもしくは複数の被検査試料の1つのもしくは複数の3D断面のリアルタイム再構築を行う期間である。
【0026】
第4の期間は、画像分析ソフトウェアにより、及び/又は、自然人であるオペレータにより、1つの3D断面もしくは複数の3D断面の複数の画像を検査する検査期間である。
【0027】
本発明による方法のモデル生成期間である第1の期間は、AからEの5つのステップを備え、以下に説明するように以下のような順に行われる。
【0028】
((ステップA)試料をデザインし、及び/又は、決定するステップ)
この第1のステップ(A)は、連続的に行われる3つの部分を備え、以下のように行われる:
A1.この試料の3Dモデルを得るために、適切なソフトウェアを用いて標準試料の3D地図のパラメータの設定を行い、
A2.標準試料を構成する様々な成分の空間における分布を考慮することにより、X線吸収則の3D地図を作製し、及び、
A3.標準試料のボリュームにおいてこの少なくとも1つの断面を対話式で(interactive)配置することができる三次元可視画像ソフトウェア(three-dimensional graphic visualization software)を用いて、標準試料の少なくとも1つの断面を決定する。
【0029】
(標準試料の形状及び特質(geometry)パラメータの設定)
試料の各成分及び互いに異なる成分の配置と同様に、パラメータが設定される試料の「形状及び特質」とは、この完全な試料の形状及び特質(dimension)を意味する。
【0030】
本発明の方法よりも前もしくは最中に与えられる決定に従って、標準試料は、自然物又は合成物からなる物体又は物体の集合体として説明されるものであることができ、その形状及び特質は、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアといった公知の適切なソフトウェアを用いて再作成又は生成される。
【0031】
(標準試料の様々な成分のX線吸則の計算)
X線は、吸収材料(absorbing material)の厚さdに応じた発光線の通常の吸収則と、X線ビームの照射強度Iと、X線の透過強度Iとに従うものであり、これらの尺度(criterion)は以下の式(1)に一体化される。
【数1】

この式中においては、μは、使用される波長と吸収する材料との吸収特性の係数である。この係数μはこの波長の立方とだいたい比例する。
【0032】
以下の詳細に示される不連続(discontinuity)は別として、X線吸収の係数であるμは、ブラッグ−ピアーズ則により与えられる:
【数2】

この式においては、Zは原子の数であり、λは入射線の波長であり、kは比例係数である。式I=I−μdは、吸収メカニズムが可視光と同一である場合にのみ変化する。しかしながら、これらの光子のエネルギーが高いことにより、X線は異なるメカニズムにより吸収されることができる:実際には、X線のエネルギーは、吸収する元素(absorbing element)の電子殻から電子が放出するのに十分なものであることができ、その結果、X線の吸収が急上昇することが観察され、標準試料とその周りとにある材料上のX線の挙動からもたらされる様々な影響もともに観察される。波長λに応じた吸収係数を示す曲線は、不連続な個所を有し、その箇所は、吸収材料の電子のエネルギーに対応するhνという値を持ち、この式においては、hはプランク定数(6.62×10−24)を示し、νは周波数c/λを示す。さらに、cは光の速度であり、λは先に説明した波長である(K殻、L殻、M殻等による不連続が観察される)。
【0033】
標準試料を構成する各成分によるX線吸収則は計算されるべきものであり:実際には、先に説明したような式(1)及び(2)を用いて、この吸収則は計算される。この吸収則は、標準試料とその周りとにある材料がX線に晒されることにより生じる影響による挙動と一体となる。
【0034】
X線吸収の密度分布は、例えば、試料を構成する各成分に対応する各局在領域(area of localization)といった、標準試料の各領域に対して与えられる。計算されたデータは、計算モジュールにより出力される(export)。
【0035】
「プラグ−イン」と呼ばれる、現存するCADソフトウェアに組み込むことができるソフトウェアモジュールによる支援や、もしくは、独立したアプリケーションソフトウェアツールの支援により、標準試料を構成する成分のX線吸収則により与えられたこれらのデータから、このX線吸収の3D地図は得られる。2番目の場合においては、出力は、例えばCADソフトウェアといった、形状及び特質を決定するために用いられるソフトウェアにより形成され、X線吸収則は、このアプリケーションソフトウェアツールにより決定される。
【0036】
(標準試料の少なくとも1つの断面を決定する)
本発明の方法に特有の3D可視画像ソフトウェアは、検査される標準試料のボリュームにおいて少なくとも1つの断面を対話式で配置することができる。
【0037】
このような3D可視画像ソフトウェアはすでに知られているが、本発明による方法においては、最良のものを実施するための十分な機能を有してはいない。
【0038】
従って、それを正確に配置することを保証するために、この試料の少なくとも1つの断面を対話式で配置するためのモジュールを開発することが特に必要である。さらに、標準的なファイルフォーマットとともに用いることも必要である。この3D可視画像ソフトウェア、又は、モジュールは、試料の形状及び特質パラメータの設定で用いられたソフトウェアからデータの生成を行う。
【0039】
この実施の際には、本発明による方法は、被検査試料のパラメータを決定することのみを目的にするものではなく、少なくとも1つの断面を用いて、詳細にはこの試料の内部にあるような、横すべり(drift)、欠陥、及び/又は、異常(anomalies)を評価することを目的とし、これらの存在が検出された場合には、例えば以下のような観察者に知らせるためにすぐに重大なアラームを出すことができる。
− 試作システムの場合には、解決するための方法を探すために、
− 実際の試料を扱う場合には、品質を制御するために、連続した製造ラインから欠陥を検出した試料を別にし、欠陥、又は、異常を繰り返すことのないようなこの一連の流れ(chain)から他の試料を取り出すことによりチェックする、
− 生物界の試料の場合には、この分野の専門家による注目を集める、又は、モデルシステムの基本を構成する。
【0040】
本発明の方法とこの方法とともに行われる検査のタイプとによれば、1つ以上の断面をパラメータ化する。
【0041】
この場合には、例えば、実際の試料の正確な領域が、既知の方法において、検出された欠陥、及び/又は、異常を含む傾向がある場合には、これらが局在する領域を容易に観察するために、この試料の少なくとも1つの断面が必要とされる。
【0042】
実例としては、液体と接する金属アセンブリ(metallurgical assembly)中において堅いものでなければならない接合部(weld)のチェック、又は、小さな空洞現象(a phenomenon of shrinkage cavitation)が生じることがある局部的な領域を有する熱可溶性高分子材料のモールド射出により得られた断片のチェック、又は、実施の間、深刻なストレスがつよくかかる機械的アセンブリの正確な領域の観察といったように、いくつかの場合を述べることができる。
【0043】
すべての実際の試料に、欠陥、及び/又は、異常が存在した場合には、試料の様々な断面が必要となり、従って、この欠陥、及び/又は、異常の検出及び位置のパラメータ化が行われる。
【0044】
(ステップ(B)パラメータの伝達及び変換を行うステップ)
パラメータを伝達及び変換を行うステップである第2のステップにおいて、統合ソフトウェア(merging software)は以下のように動作する:
B1.読み込み可能で、且つ、実施可能な標準試料の3Dモデルを標準フォーマットに伝達及び変換を行い、次いで、ステップCで行われる最適なアルゴリズムに必要なデータとして供給する。
B2.統合的動作(merging operation)は、標準試料のボリュームに対して、あらかじめパラメータ化されたこの試料の様々な成分のX線吸収則の決定と配分とを行う。
B3.ステップA3において決定された少なくとも1つの断面の座標を計算する。
【0045】
ステップ(B)は、ステップ(A)におけるすべてのパラメータをフォーマットし且つ解析するステップであり、ステップ(B)の最後において、フォーマットし且つ解析されたパラメータは、ステップ(C)へ伝達される。
【0046】
ステップ(B)で用いられる「統合」ソフトウェアの機能は、以下のステップ(C)におけるシミュレーション及び最適化における計算管理及びその実施に必要な他のパラメータを生成することにより、ステップ(A)のパラメータとの結合(リンク)を行う。
【0047】
(B1)による標準試料の3Dモデルの出力は、ステップ(C)で用いられる最適なアルゴリズムの統合を行うサーチソフトウェアにより、読み取り可能で、且つ、実施可能な標準フォーマットにおいて行われる。
【0048】
(B2)による統合制御は、標準試料のボリュームに対して、地図作成(cartography)の期間(A2)において述べられた様々な成分のX線吸収則の決定と配分とを行う。
【0049】
通常、X放射線は、試料の様々な成分を透過する際に、様々な吸収を受ける。天然ガスや高分子といったいくつかの成分は、それほどX線を吸収しない。最終的には、特に金属成分といった他の成分は、非常に大きなX放射線の吸収能力を持つ:成分によるX放射線の吸収は、成分の原子番号が大きいことが重要である。従って、試料及び特定の断面における、小さな原子番号を持つ成分(炭素、水素、酸素、場合により窒素からなるたんぱく質といった有機成分)と大きな原子番号を持つ成分(鉛、銅又は他の金属といった金属)とが一体となって同時に存在する場合における結果は、大きな原子番号を持つ成分がX線を吸収し、小さな原子番号を持つ他の成分をほとんど完全に隠してしまう。
【0050】
従って、同様に、各成分の原子番号がどんなものであろうと、成分の間に非常にはっきりとした境界を持つこの試料の様々な断面に現れた様々な成分と同様に、本発明による方法の本質的な特徴は、非常に明確で且つ同時に非常に正確であるような標準試料のモデルを得ることができることである。
【0051】
従って、本発明による3次元X線合成の方法は、速さ、統合性(synthetic)正確さという観点の下で、すでに、従来のトモグラフィーやトモシンセンス...といった従来からの撮影(acquisition)及び再構築の技術において通常生じていた欠陥が的確に除去された断面画像を得ることができる。
【0052】
ステップ(A)のうちの(A3)で決定された少なくとも1つの断面の座標の計算は、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアにより行われ、このソフトウェアは標準試料のボリュームを与えるものであり、このボリュームは、3つの軸に沿って回転させたり、及び/又は、移動させたりすることにより空間中のある向きにすることができ、その断面は、たった3つの点を用いてオペレータにより決定することができ、この3点の座標は、試料の座標と同じXYZ座標系(reference system)である。
【0053】
(ステップ(C):シミュレーション及び最適化を行うステップ)
シミュレーション及び最適化を行うステップである第3のステップは、シミュレーションを行い、サーチソフトウェアを用いて事前にパラメータ化された1つのもしくは複数の3D断面の再構築するために必要な最も良い投影をサーチする。
C1.ステップBにおいて行われた伝達の結果得られたデータを統合し、X線特有の光線追従(ray tracing)機能を用いて、伝達されたデータから決定されたこの試料のX線投影をシミュレーションする。
C2.最適なX線投影画像を与える複数の写真から選択することから構成される最適なアルゴリズムの制御を行う。
【0054】
このシミュレーション及び最適化を行うステップは、サーチソフトウェアに組み込まれた最適なアルゴリズムの使用に基づくものである。
【0055】
サーチソフトウェアは、シミュレーションの実施ができ、さらに、あらかじめ決定された1つのもしくは複数のこの3D断面の再構築のために必要な最良の投影を探し出すことができる。
【0056】
本発明による方法において実施されることができる最適化のアルゴリズムのうちの1つとしては、メタヒューリスティクス・アルゴリズム、モンテカルロ法アルゴリズム、最少化アルゴリズム(functional minimization algorithm)が挙げられる。
【0057】
「メタヒューリスティクス・アルゴリズム」とは、複雑な最適化(解決が難しい)の問題を幅広く解決することを目的としたアルゴリズムのことである。このメタヒューリスティクス・アルゴリズムは、エミレーション機能により支配された展開(evolution)を持つ反復確率アルゴリズム(iterative stochastic algorithm)である。
【0058】
さらに包括的ではないが、詳細には、本発明による方法は、粒子群最適化(particle swarm optimization)、コロニー最適化(colony optimization)といった、アニーリングシミュレーション(simulated annealing)、パス再結合(path relinking)、差別化戦略(differential strategy)、差分進化(differential evolution)、遺伝的アルゴリズム(genetic algorithms)、分散の試算(estimation of distribution)といった、メタヒューリスティクス・アルゴリズムを用いる。
【0059】
ステップ(B)において行われた伝達の結果得られたデータの統合は、ステップ(C)の第1の部分(C1)において実施される。
【0060】
これらのデータは、X線の軌道を追従する機能により、伝達されたデータから決定された標準試料のX線投影のシミュレーションを可能にする。
【0061】
(ステップ(D)軌道の生成を行うステップ)
軌道の生成を行うステップであるこの第4のステップでは、ステップ(C)の最後に把握された写真座標の集合から、連続的に写真撮影を行うために、X線源とそれに対応するデジタルセンサとの両方の移動について最適化された移動空間における軌道を生成する。
【0062】
従って、得られる軌道の決定は、1つのもしくは複数の断面の再構築(加算)を行うために選択された写真座標の最適なルートによる結合(linking)から構成される。
【0063】
本発明の枠組みにおいては、与えられた試料と決定された断面とを得るために、最適な軌道が進行時間と撮影時間とに関して存在する。
【0064】
同様に、X線源及びそれに対応するセンサとのために移動空間における最適な軌道を生成した際、この軌道は、標準試料の様々な断面の再構築のために有用な画像を得るために必要な動きを描き、この軌道は、実際の試料の検査を行うのに妥当なものである。
【0065】
「撮影動作の統合を行うステップ」である第5のステップにおいては、あらかじめ選択されたX線画像を撮影する連続した動作を行う物理的方法のための少なくとも1つのコマンドファイルが生成され、このファイルは、ステップDで決定された撮影軌道に対応する動作を行うシステムに伝達される。
【0066】
この動作制御プログラムを受けるシステムは、試料の製造のためのオンライン制御機械にインストールされる。
【0067】
第1の期間の(A)から(E)のすべてのステップを行った際には、本発明による方法は、以下に説明するような、第2の期間、第3の期間、第4の期間に入ることとなる。
【0068】
本発明による方法の第2の期間においては、実際の試料の連続したリアルタイム検査のためにあらかじめ伝達された最適な軌道を用いることにより、リアルタイムに且つ連続的に、実際の試料のX線画像が撮影される。
【0069】
本発明による第3の期間においては、期間IIで得られたX線画像は、検査される実際の試料の3D断面のためのリアルタイム再構築アルゴリズムの入力パラメータを構成する。
【0070】
第4の期間においては、例えば試験用機械を動かすような、画像分析ソフトウェアにより、及び/又は、自然人であるオペレータにより、1つの3D断面画像もしくは複数の3D断面画像を作成する。
【0071】
本発明による方法は、例えば製品設計期間から製品製造期間までの製品開発の段階(level)において、検査を行うために製品または実際の試料を製造する段階において、例えば、製品のライフサイクルマネージメント(PLM)の工程に組み込むことができる。
【0072】
製品ライフサイクルマネージメント(PLM)のプロセスは、製品の寿命についてのフィージビリティ・スタディから得られた、ライフサイクルにわたる工業製品の定義、製造、メンテナンス、リサイクルに関する情報群を生成し、管理し、共有することを目的とした企業戦略である。
【0073】
特に、PLMのアプローチは、コンピュータ支援設計、技術データ管理、デジタルシミュレーション、コンピュータ支援製造、知的情報管理を含む情報システムを統合したものである。
【0074】
本発明による方法によれば、工業研究、品質管理、医療、緊急医療、獣医学、応用医薬、応用生物学、マイクロ及びナノテクノロジー、港湾及び空港の安全、偽造防止といった様々な分野に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルリアルタイム3DX線撮影による連続的試料検査の方法であって、少なくとも1つのX線源と前記X線源と対をなす少なくとも1つのデジタルセンサとを用い、これらは、向かい合い且つ相似な軌道に従って移動するものであり、
I.第1の期間において、以下のステップを連続的に行うことにより、最良のものとして選択された、検査される標準試料のデジタルモデルと、X線画像を撮るための前記X線源の及びそれに対応する前記センサの移動空間における最適な軌道のデジタルモデルと、を生成し:
A−「前記標準試料のデザイン、及び/又は、決定を行うステップ」である第1のステップでは:
−A1:前記試料の3Dパラメータを設定し;
−A2:前記試料を構成する様々な成分によるX線吸収則についての3D地図を作成し;
−A3:前記試料の少なくとも1つの3D断面を決定し、
B−「パラメータの伝達及び変換を行うステップ」である第2のステップでは:
−B1:前記ステップ(A)の前記パラメータを伝達及び変換し;
−B2:前記試料のボリュームに対して、前記様々な成分によるX線吸収則を配分し;
−B3:前記ステップA3の少なくとも1つの3Dの断面の座標を計算し、
C−「シミュレーションと最適化とを行うステップ」である第3のステップでは、少なくとも1つの3Dの断面を再構築するために必要な最良の投影のシミュレーションとサーチとを行うステップであり、この第3のステップでは;
−C1:前記ステップ(B)から得られたデータから、前記試料のX線投影をシミュレーションし;
−C2:最良の1つもしくは複数の断面画像を選択する最適なアルゴリズムを用いて、前記投射のシミュレーションを制御し、
D−「軌跡生成を行うステップ」である第4のステップでは、前記ステップC2の最後に得られた写真位置データの集合から、前記X線源と前記センサとのそれらの移動空間における前記最適な軌道を生成し、
E−「撮影動作の統合ステップ」である第5のステップは、あらかじめ選択されたX線画像を撮影するために連続した動作を行う機械的装置のための少なくとも1つのコマンドファイルを生成し、
II.第2の期間において、実際の試料を連続的にリアルタイムに検査するために、あらかじめ伝達された前記X線源とそれに対応する前記センサの前記最適な軌道を用いて、リアルタイムで且つ連続的に、実際の試料のX線画像を撮影し、
III.第3の期間において、前記第2の期間において撮影された前記X線画像は、検査される前記実際の試料の前記3Dの断面をリアルタイムに再構築するアルゴリズムのための入力パラメータを構成し、
IV.第4の期間において、画像分析ソフトウェアにより、及び/又は、自然人であるオペレータにより、前記3D断面画像を作成する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記標準試料の3Dモデルを得るために、前記試料の前記3D地図のパラメータの設定は、既知のCADソフトウェアを用いて行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記X線吸収則についての3D地図の作成は、前記標準試料を構成する様々な成分の空間分布を考慮することにより行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記標準試料の少なくとも1つの断面の決定は、3D可視画像ソフトウェアを用いて行われ、前記3D可視画像ソフトウェアは、前記標準試料のボリュームにおいて前記断面を対話式で配置することを許容する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記標準試料の3Dモデルのパラメータの伝達及び変換は、前記ステップCにおいて行われる最適なアルゴリズムに必要なデータを供給する統合ソフトウェアを用いて行われる、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
事前にパラメータ化された少なくとも1つ3D断面の再構築するために必要な最良の投影のシミュレーション及びサーチは、サーチソフトウェアを用いて行われる、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記ステップBにおいて行われた伝達の結果得られた前記試料のデータは、前記X線投影をシミュレーションするX線特有の光線追従機能を用いて、得られる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記断面の再構築に必要な最良の画像の選択は、メタヒューリスティクス・最適化アルゴリズムを用いて行われる、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
既知の写真座標の集合から、前記移動空間における軌跡は、連続的に写真撮影を行うために、前記X線源とそれに対応する前記デジタルセンサとの両方の移動について最適化されたものとして生成される、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記標準試料のボリューム及びX線吸収に関する情報と、分割が行われる位置の情報とを用いて、選択された1つ又は複数の前記断面の方向に撮影シミュレーションを行うことにより、すべての方向の空間X線画像が生成される、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
メタヒューリスティクス・アルゴリズムは、選択された1つ又は複数の断面の生成に必要な最良な写真を選択する、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
応用研究、品質管理、医療、緊急医療、獣医学、応用医薬、応用生物学、マイクロ及びナノテクノロジー、港湾及び空港の安全、偽造防止に対する、請求項1から11のいずれか1つに記載の方法の適用。

【公表番号】特表2013−506825(P2013−506825A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531467(P2012−531467)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001168
【国際公開番号】WO2011/039427
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512082679)スペクトロスカン、ソシエテ、ア、レスポンサビリテ、リミテ (1)
【氏名又は名称原語表記】SPECTROSCAN SARL
【Fターム(参考)】