説明

ラジカル重合性樹脂、ラジカル重合性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】硬化物の柔軟性に優れ、接着剤として用いる際、加熱又は冷却時に接着剤と被接着体間で生じる熱膨張率差に起因する応力を緩和でき、接着界面での剥離や被接着体の破損等を防止できるラジカル重合性樹脂を提供する。
【解決手段】下記式(1a)〜(1b)


で表される化合物と、エポキシ基又はオキセタニル基を有する特定の(メタ)アクリル酸エステルとをカチオン重合して得られる樹脂であって、0℃において液体であり、且つ重量平均分子量が500以上であるラジカル重合性樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力緩和型接着剤、導波路(光導波路、混載基板など)、光ファイバー、封止剤、アンダーフィル、インクジェット用インク、カラーフィルター、ナノインプリント、フレキシブル基板などの分野、特に応力緩和型接着剤として有用なラジカル重合性樹脂、ラジカル重合性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤と被接着体の材料間で熱膨張率が互いに異なる場合には、加熱または冷却により材料間に熱膨張差が生じ、その結果生じる応力により接着界面で剥離が生じるという問題が発生する場合がある。例えば、近年、複数の半導体素子やウェハ等を基板面に対して垂直方向に積み上げる技術が検討されている。この技術は、半導体素子やウェハ等を貼り合わせたものに貫通孔を設け、貫通電極を作成して垂直方向に電極同士を接合することで垂直方向に集積度を向上させるものである。しかし、半導体素子、ウェハ、貫通電極等に使用する素材と熱膨張率が異なる材料を接着剤に使用する場合、加熱または冷却により材料に熱膨張差が生じ、その結果生じる応力により接着界面で剥離が生じる場合がある。さらに、半導体素子、ウェハ、貫通電極等は肉薄で脆く、このため加熱または冷却によって外力が加わると破損しやすい。
【0003】
従来、このような熱膨張率の違いに起因する接着界面の剥離を抑制するため、接着剤として、被接着体の材料と熱膨張率差が小さいものを選んで使用していた。しかし、この方法では、被接着体の材質ごとに接着剤を変える必要があり、多種類の接着剤が必要となる。
【0004】
これに対し、接着剤に十分な柔軟性を持たせることで、加熱または冷却時に接着剤と被接着体間に生じる熱膨張差に起因する応力を緩和することができれば、被着体の材料毎に接着剤を変える必要がない。特許文献1には、分子中に脂環式エポキシ基及び/又はオキセタン基を有する不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなる重合性樹脂とラジカル重合性単量体とを含む重合性樹脂組成物が開示されている。しかし、この重合性樹脂組成物の硬化物は柔軟性が十分ではなく、材料間の熱膨張率差に起因する応力を十分に緩和することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−81182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、硬化物の柔軟性に優れ、接着剤として用いる際、加熱又は冷却時に接着剤と被接着体間で生じる熱膨張率差に起因する応力を緩和でき、接着界面での剥離や被接着体の破損等を防止できるラジカル重合性樹脂及びラジカル重合性樹脂組成物、並びにその硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、柔軟性、耐熱性、及び接着性に優れた硬化物を得ることができるラジカル重合性樹脂及びラジカル重合性樹脂組成物、並びにその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定構造のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物と、特定構造のエポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとをカチオン重合して得られる樹脂であって、0℃で液状であり、且つ重量平均分子量が500以上であるラジカル重合性樹脂を硬化させると、硬化後も柔軟性に優れ、接着剤として使用する際、加熱又は冷却時に接着剤と被接着体間で生じる熱膨張率差に起因する応力を緩和でき、接着界面での剥離や被接着体の破損等を顕著に防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1a)〜(1b)
【化1】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基を示す。但し、Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも1つ、及びRe、Rfのうち少なくとも1つは、炭素数4〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基である。Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも2つが互いに結合して、隣接する1又は2個の炭素原子とともに環を形成していてもよい。また、Re、Rfは互いに結合して、隣接する炭素原子とともに環を形成していてもよい)
で表される化合物から選択された少なくとも1種の化合物と、下記式(2a)〜(2f)
【化2】

(式中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。A1は、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のアルキレンオキシアルキレン基又は炭素数1〜5のアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の酸素原子は式中の環に結合している)を示し、A2は炭素数1〜3のアルキレン基を示す)
で表わされる化合物から選択された少なくとも1種の化合物とをカチオン重合して得られる樹脂であって、0℃において液体であり、且つ重量平均分子量が500以上であるラジカル重合性樹脂を提供する。
【0009】
本発明は、また、前記ラジカル重合性樹脂を含むラジカル重合性樹脂組成物を提供する。
【0010】
上記ラジカル重合性樹脂組成物は、さらに、熱又はエネルギー線ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。熱ラジカル重合開始剤としては有機過酸化物が好ましい。
【0011】
上記ラジカル重合性樹脂組成物は、さらに、下記式(3)
【化3】

(式中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、A3は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rg、Rh、Riは、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。但し、Rg、Rh、Riのうち少なくとも1つは炭素数1〜3のアルコキシ基である)
で表されるシランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤を添加することにより、接着剤として用いたときの無機系材料への接着強度を大幅に向上させることができる。
【0012】
上記ラジカル重合性樹脂組成物は、さらに、ラジカル重合性官能基数が2〜6のラジカル重合性モノマーを含んでいてもよい。このような多官能のラジカル重合性モノマーを添加することにより、接着剤として用いたときの接着強度をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明は、さらに、前記ラジカル重合性樹脂組成物をラジカル重合して得られる硬化物を提供する。
【0014】
この硬化物はフィルム状であってもよく、ファイバー状であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のラジカル重合性樹脂は、特定構造のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物と、特定構造のエポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとをカチオン重合して得られる樹脂であって、0℃で液状であり、且つ重量平均分子量が500以上であるため、これをラジカル重合に付すと、架橋点間距離が適度の長さに制御された硬化物が得られる。このため、硬化後も柔軟性に優れ、例えば接着剤として使用する際、加熱又は冷却時に接着剤と被接着体間で生じる熱膨張率差に起因する応力を緩和でき、接着界面での剥離や被接着体の破損等を顕著に防止できる。また、ラジカル重合により硬化させるため、重合開始剤として酸発生剤を使用する必要が無く、残存する酸による電子部品の回路や基板の腐食等の問題を回避できる。また、本発明のラジカル重合性樹脂を含むラジカル重合性樹脂組成物の硬化物は、耐熱性、柔軟性、接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のラジカル重合性樹脂は、前記式(1a)〜(1b)で表される化合物から選択された少なくとも1種のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物(A)と、前記式(2a)〜(2f)で表わされる化合物から選択された少なくとも1種のエポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)とをカチオン重合して得られる樹脂であって、0℃において液体であり、且つ重量平均分子量が500以上である。
【0017】
[エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物(A)]
エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物(A)は式(1a)〜(1b)で表される。式(1a)〜(1b)中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基を示す。但し、Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも1つ、及びRe、Rfのうち少なくとも1つは、炭素数4〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基である。炭素原子1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル基等の脂肪族炭化水素基(アルキル基等);シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル基等の脂環式炭化水素基;フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;これらが2以上結合した基などが挙げられる。これらの炭化水素基の炭素原子間に酸素原子(−O−)を有していてもよい。
【0018】
a、Rb、Rc、Rdの少なくとも2つが互いに結合して、隣接する1又は2個の炭素原子とともに環を形成していてもよい。また、Re、Rfは互いに結合して、隣接する炭素原子とともに環を形成していてもよい。このような環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、デカリン環、ノルボルナン環(=ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環)、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン環などの炭素数4〜20の単環又は多環の炭素環(酸素原子を含んでいてもよい)が挙げられる。
【0019】
a、Rb、Rc、Reとしては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。Rd、Rfとしては、炭素数4〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基であるのが好ましい。
【0020】
式(1a)で表されるエポキシ基を有する化合物のうち好ましい化合物としては、Ra、Rb、Rcがすべて水素原子であり、Rdが炭素数4〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基である化合物、Ra、Rdが水素原子又はメチル基であり、Rb、Rcが隣接する2個の炭素原子とともに炭素数4〜20の環を形成している化合物が挙げられる。
【0021】
式(1a)で表されるエポキシ基を有する化合物の代表的な例として、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、2,3−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘプタン、2,3−エポキシデカン、シクロヘキセンオキシドなどが挙げられる。
【0022】
式(1b)で表されるオキセタニル基を有する化合物のうち好ましい化合物としては、Reが水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基(例えば、エチル基)であり、Rfが炭素数4〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基(例えば、C3-19炭化水素基置換オキシメチル基など)である化合物が挙げられる。
【0023】
式(1b)で表されるオキセタニル基を有する化合物の代表的な例として、3−エチル−3−(プロポキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ブトキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ベンジルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。
【0024】
[エポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)]
エポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)は式(2a)〜(2f)で表わされる。式(2a)〜(2f)中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。A1は、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のアルキレンオキシアルキレン基又は炭素数1〜5のアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の酸素原子は式中の環に結合している)を示し、A2は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。
【0025】
1〜R4における炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル基などの脂肪族炭化水素基(アルキル基等);シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル基などのシクロアルキル基などが挙げられる。R1〜R4としては、それぞれ、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0026】
1における炭素数1〜5のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のC1-5アルキレン基が挙げられる。炭素数1〜5のアルキレンオキシアルキレン基としては、エチレンオキシメチレン、エチレンオキシエチレン、エチレンオキシプロピレン、プロピレンオキシメチレン、プロピレンオキシエチレン基などが挙げられる。炭素数1〜5のアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の酸素原子は式中の環に結合している)としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、トリメチレンオキシ、テトラメチレンオキシ、ペンタメチレンオキシ基などが挙げられる。
【0027】
2における炭素数1〜3のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基などが挙げられる。
【0028】
式(2a)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。式(2b)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。式(2c)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、2,3−エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。式(2d)で表されるエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(又は、9−イル)(メタ)アクリレート、5−[3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(又は、9−イル)オキシ]ペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
式(2e)で表されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、3−エチル−3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート[=3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン]などが挙げられる。式(2f)で表されるオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、3−エチル−3−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル]オキセタンなどが挙げられる。
【0030】
本発明のラジカル重合性樹脂は、前記式(1a)〜(1b)で表されるエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物(A)と、前記式(2a)〜(2f)で表わされるエポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)とをカチオン重合することにより得られる。
【0031】
エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物(A)(総量)とエポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)(総量)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは20/80〜97/3、さらに好ましくは40/60〜95/5、特に好ましくは50/50〜95/5である。この割合が小さすぎると、ラジカル重合して得られる硬化物の柔軟性が不十分になりやすく、大きすぎると、ラジカル重合により硬化物が得られにくくなる。
【0032】
カチオン重合反応は溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0033】
カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、カチオン重合を起こし得るものであれば特に限定されることがなく、公知慣用のカチオン重合開始剤、酸発生剤等を使用することができる。重合開始剤としては、例えば、過塩素酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化水銀、塩化亜鉛等のルイス酸等を使用することができる。また、その他、ヨウ素、トリフェニルクロロメタン等を使用することもできる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、例えば、カチオン重合性化合物[エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物(A)とエポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)の総重量]に対して、例えば0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜20重量%程度である。
【0035】
カチオン重合反応はラジカル重合禁止剤の存在下で行ってもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、p−tert−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤等を挙げることができる。
【0036】
上記反応により、エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物(A)のエポキシ基又はオキセタニル基部位と、エポキシ基又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)のエポキシ基又はオキセタニル基部位において、開環を伴う重合反応が進行し、主鎖にエチレンオキシ単位及び/又はトリメチレンオキシ単位を有し、且つ末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性樹脂が生成する。
【0037】
本発明のラジカル重合性樹脂は0℃において液体である。すなわち、0℃において流動性を有する液状物である。0℃において固体である樹脂は、ラジカル重合して得られる硬化物の柔軟性が十分でないため好ましくない。本発明のラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、500以上(例えば、500〜50万程度)であり、好ましくは550〜20万、さらに好ましくは600〜10万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が500未満の場合は、ラジカル重合により硬化しない。
【0038】
[ラジカル重合性樹脂組成物]
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物として上記ラジカル重合性樹脂を含む。
【0039】
ラジカル重合性樹脂組成物中に占める上記ラジカル重合性樹脂の割合としては、例えば5重量%以上であり、実質的にラジカル重合性樹脂組成物が上記ラジカル重合性樹脂のみで構成されていてもよい。本発明においては、なかでも、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、ラジカル重合性樹脂組成物中に占める上記ラジカル重合性樹脂の割合が10重量%以上が好ましく、30重量%以上(例えば、30〜99.9重量%)がより好ましく、特に60重量%以上(例えば、60〜95重量%)が好ましい。ラジカル重合性樹脂組成物中に占める上記ラジカル重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、ラジカル重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0040】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物として前記ラジカル重合性樹脂のみを有していてもよいが、上記ラジカル重合性樹脂の他に、ラジカル重合性を有する化合物を含んでいてもよい。例えば、上記ラジカル重合性樹脂及び上記式(2a)〜(2f)で表される化合物とは異なるラジカル重合性化合物(以後、「他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある)を含有していてもよい。
【0041】
ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物の総量に対する前記ラジカル重合性樹脂の割合は、例えば20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上(例えば、60〜95重量%)である。
【0042】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0043】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0044】
また、上記(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物には、前記式(3)で表されるシランカップリング剤も含まれる。式(3)中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、A3は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rg、Rh、Riは、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。但し、Rg、Rh、Riのうち少なくとも1つは炭素数1〜3のアルコキシ基である。
【0045】
3における炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、テトラデカメチレン、ヘキサデカメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基;シクロペンチレン、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基等のアリレン(arylene)基;これらが2以上結合した2価の炭化水素基などが挙げられる。Rg、Rh、Riにおける炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ基が挙げられる。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基が挙げられる。
【0046】
式(3)で表されるシランカップリング剤の代表的な例として、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシランなどが挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリロイルアミノ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0048】
ビニルアリール基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、(4−ビニルフェニル)ボラン酸、(4−ビニルフェニル)ボロン酸、4−エテニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボラン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、p−ビニルフェニルホウ酸、p−ビニルフェニルボロン酸、N−(4−ビニルフェニル)マレインイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレインイミド等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0049】
ビニルエーテル基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0050】
ビニルオキシカルボニル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0051】
本発明における他のラジカル重合性化合物としては、なかでも、硬化物がより高い接着強度を示す点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性官能基数を2以上(例えば、2〜6)有するラジカル重合性モノマー(特に、多官能アクリル系モノマー)が好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
ラジカル重合性官能基数を2以上(例えば、2〜6)有するラジカル重合性モノマーの配合量は、ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物の総量に対して、例えば、1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは8〜30重量%である。
【0053】
また、本発明における他のラジカル重合性化合物として、前記式(3)で表されるシランカップリング剤も好ましい。該シランカップリング剤を添加することにより、硬化物の無機系材料への接着強度をさらに向上させることができる。
【0054】
式(3)で表されるシランカップリング剤の配合量は、ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物の総量に対して、例えば、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。
【0055】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物には重合開始剤を添加してもよく、添加しなくともよい。重合開始剤としては、公知慣用の熱重合開始剤、エネルギー線重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができる。
【0056】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物(アゾ系ラジカル重合開始剤)などが挙げられる。有機過酸化物としては、ケトンパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類(過酸化ベンゾイルなど)、ハイドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類などが例示される。アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルなどが挙げられる。
【0057】
これらの中でも、有機過酸化物、特に、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキシド類などのパーオキシド系ラジカル重合開始剤が好ましい。パーオキシド系ラジカル重合開始剤を用いると、ラジカル重合性樹脂組成物を硬化させる際に気泡が発生しないため、被接着体をきれいに且つ強固に接着できる。なお、アゾ系ラジカル重合開始剤を用いると、ラジカル重合性樹脂組成物の硬化時に気泡が発生する場合がある。
【0058】
エネルギー線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0059】
重合開始剤には、吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を添加してもよい。相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトン等を挙げることができる。
【0060】
ラジカル重合性樹脂組成物に重合開始剤を添加する場合、その添加量としては、ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(ラジカル重合性樹脂と他のラジカル重合性化合物の総重量)に対して0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜20重量%程度である。
【0061】
さらに、本発明に係るラジカル重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0062】
本発明に係るラジカル重合性樹脂組成物は、加熱処理及び/又はエネルギー線照射を行うことによりラジカル重合反応を促進し、硬化物を形成することができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、例えば20〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。エネルギー線照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光、放射線、X線等を使用することができる。また、エネルギー線照射後、例えば50〜180℃程度の温度で加熱処理を施して硬化を進行させてもよい。
【0063】
ラジカル重合反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。
【0064】
本発明に係るラジカル重合性樹脂組成物をラジカル重合することによって得られる硬化物の形状としては特に制限されることがなく、例えばフィルム状、ファイバー状等を挙げることができる。フィルム状硬化物は、例えば、アプリケーター等を使用して上記ラジカル重合性樹脂組成物を均一の厚みとなるように基材等の上に塗布し、加熱処理及び/又はエネルギー線照射を行うことによりラジカル重合反応を促進して製造することができる。ファイバー状硬化物は、例えば、シリンジ等を使用して上記ラジカル重合性樹脂組成物を定量的に押出し、押出されたラジカル重合性樹脂組成物に加熱処理及び/又はエネルギー線照射を行うことによりラジカル重合反応を促進して製造することができる。
【0065】
こうして得られる硬化物は、接着性及び柔軟性に優れる。そのため、本発明に係るラジカル重合性樹脂組成物は応力緩和型接着剤として特に有用である。また、柔軟性、耐熱性に優れるため、導波路(光導波路、混載基板など)、光ファイバー、封止剤、アンダーフィル、インクジェット用インク、カラーフィルター、ナノインプリント、フレキシブル基板などの分野、特にフレキシブル光導波路、柔軟接着剤、アンダーフィルなどの分野で有用である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0067】
実施例1(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン9.28g、グリシジルアクリレート(GA)4.41g(34.4mmol)、1,2−エポキシヘキサン17.2g(172 mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gと三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF3OEt2)0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C1)を得た。
得られた樹脂(C1)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した分子量は、Mn(数平均分子量)が600、Mw(重量平均分子量)が900であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0068】
実施例2(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン10.3g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(商品名「サイクロマーM−100」、ダイセル化学工業社製)6.76g(34.4mmol)、1,2−エポキシヘキサン17.2g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C2)を得た。
得られた樹脂(C2)のGPCにより測定した分子量は、Mnが500、Mwが800であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0069】
実施例3(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン9.90g、3−エチル−3−オキセタニルメチルアクリレート(商品名「OXE−10」、大阪有機工業社製)5.86g(34.4mmol)、1,2−エポキシヘキサン17.2g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C3)を得た。
得られた樹脂(C3)のGPCにより測定した分子量は、Mnが5000、Mwが8500であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0070】
実施例4(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン10.5g、公知の方法で合成した3−エチル−3−(2−アクリロイルオキシエチルオキシメチル)オキセタン(「OXT−C2」)7.37g(34.4mmol)、1,2−エポキシヘキサン17.2g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C4)を得た。
得られた樹脂(C4)のGPCにより測定した分子量は、Mnが5600、Mwが9200であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0071】
実施例5(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン18.7g、GA 4.41g(34.4mmol)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(商品名「OXT−212」、東亞合成社製)39.3g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C5)を得た。
得られた樹脂(C5)のGPCにより測定した分子量は、Mnが4400、Mwが8500であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0072】
実施例6(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン19.7g、「サイクロマーM−100」6.76g(34.4mmol)、「OXT−212」39.3g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C6)を得た。
得られた樹脂(C6)のGPCにより測定した分子量は、Mnが3800、Mwが8300であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0073】
実施例7(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン19.3 g、「OXE−10」5.86g(34.4mmol)、「OXT−212」39.3g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C7)を得た。
得られた樹脂(C7)のGPCにより測定した分子量は、Mnが4500、Mwが7000であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0074】
実施例8(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン19.3g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート(商品名「OXE−30」、大阪有機工業社製)6.34g(34.4mmol)、「OXT−212」39.2g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385g、の混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C8)を得た。
得られた樹脂(C8)のGPCにより測定した分子量は、Mnが3600、Mwが5100であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0075】
実施例9(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン20.0g、「OXT−C2」7.37g(34.4mmol)、「OXT−212」39.3g(172mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C9)を得た。
得られた樹脂(C9)のGPCにより測定した分子量は、Mnが23300、Mwが40900であった。この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0076】
比較例1(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン1.89g、GA 4.41g(34.4mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C10)を得た。
得られた樹脂(C10)のGPCにより測定した分子量は、Mnが450、Mwが700であった。
【0077】
比較例2(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン2.90g、「サイクロマーM−100」6.76g(34.4mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C11)を得た。
得られた樹脂(C11)のGPCにより測定した分子量は、Mnが550、Mwが850であった。
【0078】
比較例3(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン2.51 g、「OXE−10」5.86g(34.4mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C12)を得た。
得られた樹脂(C12)のGPCにより測定した分子量は、Mnが4000、Mwが7500であった。
【0079】
比較例4(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン2.72g、「OXE−30」6.34g(34.4mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C13)を得た。
得られた樹脂(C13)のGPCにより測定した分子量は、Mnが3600、Mwが4000であった。
【0080】
比較例5(ラジカル重合性樹脂の製造)
開始剤滴下ライン、N2ライン、温度計を装着した3口フラスコに、トルエン3.16g、「OXT−C2」7.37g(34.4mmol)、p−メトキシフェノール0.0385gの混合液(モノマー混合液)を仕込み、25℃に調温した。次いで、トルエン5.60gとBF3OEt2 0.95g(6.60mmol)の混合液を送液ポンプで2時間かけて定量的に滴下した。滴下終了後、4時間保持して樹脂組成物を得た。これを5倍量のメタノール(p−メトキシフェノール0.1%含有)で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(C14)を得た。
得られた樹脂(C14)のGPCにより測定した分子量は、Mnが19000、Mwが39000であった。
【0081】
実施例10〜45、比較例6〜15(熱ラジカル重合性樹脂組成物の調製)
下記表1〜3に示す組成及び配合割合に従って、各成分を混合溶解し、熱ラジカル重合性樹脂組成物を調製した。尚、表中の数値は重量部を示す。表中のC1〜C14は実施例1〜9、比較例1〜5で得られたラジカル重合性樹脂を示す。表中の「デカンジアクリレート」は1,10−デカンジオールジアクリレート(2官能アクリレート;和光純薬工業社製)を意味する。シランカップリング剤は3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(=3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート)である。「BPO」は過酸化ベンゾイル(ラジカル重合開始剤)を示す。
【0082】
実施例46(光ラジカル重合性樹脂組成物の調製)
実施例7で得られたラジカル重合性樹脂(C7)16gと、1,10−デカンジオールジアクリレート(2官能アクリレート;和光純薬工業社製)2g、ベンゾフェノン(光ラジカル重合開始剤)0.2gを混合溶解して、光ラジカル重合性樹脂組成物を調製した。
【0083】
実施例47(フィルム状硬化物の製造)
実施例10〜45で得られた熱ラジカル重合性樹脂組成物を、テフロン(登録商標)製の型枠(20mm×50mm×1mm)に流し込み、真空乾燥機内で乾燥後(40℃、10分間、フルバキューム)、N2雰囲気下で加熱硬化(140℃、10分間)した結果、フィルム状硬化物が得られた。
【0084】
実施例48(フィルム状硬化物の製造)
実施例46で得られた光ラジカル重合性樹脂組成物を、テフロン(登録商標)製の型枠(20mm×50mm×1mm)に流し込み、真空乾燥機内で乾燥後(40℃、10分間、フルバキューム)、ベルトコンベアー式紫外線照射装置(ウシオ電機製、UVC−02516SAA02)を用いて紫外線を照射した結果、フィルム状硬化物が得られた。その際の照射エネルギーは約2J(波長:320−390nm)であった。紫外線照射後の硬化物は、大気中100℃で1時間加熱処理した。
【0085】
実施例49(ファイバー状硬化物の製造)
実施例46で得られた光ラジカル重合性樹脂組成物20gをシリンジで押出し、押し出された液に紫外線(波長:365nm)を照射した結果、直径が50〜2000μmであるファイバー状硬化物が得られた。
【0086】
[評価試験]
(1)Siウエハの接着プロセス
実施例10〜45、比較例6〜15で得られた熱ラジカル重合性樹脂組成物を、それぞれ、基材(Siウエハ、テンパックスガラス、アルミ板またはPETフィルム)にスピンコーターにより約1〜5μmの厚みになるよう塗布した。その後、真空乾燥機内で塗膜乾燥後(40℃、10分間、フルバキューム)、貼り合せ(140℃、10分間)を行った。得られた試料(接着サンプル)について、以下の評価を行った。結果を表1〜3に示す。表中の材質1〜5は下記のものを示す。
材質1:Siウエハどうしを貼り合わせたもの
材質2:テンパックスガラスどうしをを貼り合わせたもの
材質3:Siウエハとテンパックスガラスを貼り合わせたもの
材質4:アルミ板とテンパックスガラスを貼り合わせたもの
材質5:PETフィルムどうしを貼り合わせたもの
【0087】
(2)接着状況評価
Siウエハとテンパックスガラスを貼り合わせた接着サンプル(材質3)を顕微鏡により観測し、気泡やはがれの有無を調査し、下記基準で評価した。
評価基準:気泡やはがれが見られなかったときを「○」、見られたときを「×」とした。
【0088】
(3)接着強度
Siウエハどうしを貼り合わせた接着サンプル(材質1)について剥離試験を行い、接着しているが手で剥がれるものは△、手で剥がれないが4点曲げ試験において7J/m2以下の耐性のものは○、4点曲げ試験において7J/m2以上の曲げ応力に耐えるものは◎とした。
【0089】
(4)ヒートショック試験
各接着サンプルを150℃で30分間加熱後、直ちに液体窒素に浸漬する試験を5回繰り返し、はがれやクラック(ひび割れ)、試験前からの変化発生の有無を目視と顕微鏡により調査し、下記基準で評価した。
評価基準:はがれやクラック(ひび割れ)が見られなかったときを「○」、見られたときを「×」とした。なお、材質1については、剥がれクラックがない状態を「○」とした。また、材質5については、PETフィルムの耐熱性上、加熱を140℃までとした。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)〜(1b)
【化1】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基を示す。但し、Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも1つ、及びRe、Rfのうち少なくとも1つは、炭素数4〜20の酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基である。Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも2つが互いに結合して、隣接する1又は2個の炭素原子とともに環を形成していてもよい。また、Re、Rfは互いに結合して、隣接する炭素原子とともに環を形成していてもよい)
で表される化合物から選択された少なくとも1種の化合物と、下記式(2a)〜(2f)
【化2】

(式中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。A1は、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のアルキレンオキシアルキレン基又は炭素数1〜5のアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基の酸素原子は式中の環に結合している)を示し、A2は炭素数1〜3のアルキレン基を示す)
で表わされる化合物から選択された少なくとも1種の化合物とをカチオン重合して得られる樹脂であって、0℃において液体であり、且つ重量平均分子量が500以上であるラジカル重合性樹脂。
【請求項2】
請求項1記載のラジカル重合性樹脂を含むラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、熱又はエネルギー線ラジカル重合開始剤を含む請求項2記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項4】
熱ラジカル重合開始剤が有機過酸化物である請求項3記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、下記式(3)
【化3】

(式中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、A3は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Rg、Rh、Riは、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。但し、Rg、Rh、Riのうち少なくとも1つは炭素数1〜3のアルコキシ基である)
で表されるシランカップリング剤を含む請求項2〜4の何れかの項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、ラジカル重合性官能基数が2〜6のラジカル重合性モノマーを含む請求項2〜5の何れかの項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項2〜6の何れかの項に記載のラジカル重合性樹脂組成物をラジカル重合して得られる硬化物。
【請求項8】
硬化物がフィルム状またはファイバー状である請求項7に記載の硬化物。

【公開番号】特開2011−225720(P2011−225720A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96945(P2010−96945)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】