説明

ラックアンドピニオン式線形駆動装置

特に、ラックアンドピニオン式の線形駆動装置は、支持部材(1.1、1.2)上又は支持部材内に取付けられた少なくとも1つの駆動素子(2)を含んで構成されている。駆動素子(2)は、場合によっては伝動装置(3)を介して、線形案内部材(5)と共動するピニオン(4)を直接か又は間接的に駆動し、支持部材(1.1、1.2)は少なくとも1つのアクチュエータ(12.1〜12.3)を介して、受容素子(6)に対して可動に構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接か又は間接に、場合によっては組込まれた伝動装置を介して、線形案内部材と共動するピニオンを駆動させる、少なくとも1つの駆動素子を有する支持部材上又は支持部材内に取付けられたラックアンドピニオン式線形駆動装置並びに線形駆動装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な形式で多様な動作をする線形駆動装置又はラックアンドピニオン式駆動装置が上市され、実施されている。これらの駆動装置では、伝動装置の遊びを調整するために、駆動素子、場合によっては組込まれた伝動装置を用いて共通の駆動索を介して線形案内部材と共動するピニオンが駆動される。通常はピニオンと線形案内部材の間に、僅かな遊び、特に歯面の遊びがあるので、ピニオン及び線形案内部材の歯面に影響される。
【0003】
従来の線形駆動装置又はピニオン及びラックを有するラックアンドピニオン式駆動装置では、例えば伝動装置の剛性が不安定であるので、装置の正確性及び機動性が著しく阻害されるとの問題があった。更に、ピニオン及び線形案内部材の歯面は、時には遊びの原因となる磨耗に左右される。伝動装置の大きなプレストレスにより、磨耗並びに不正確さが増大し、極めて大きな伝動装置を組込む必要が生じる。
【0004】
その上、線形案内部材における荷重、速度及び加速度並びに不正確さに応じて異なった磨耗が生じるか又は生産の精度により最初から磨耗を伴っているので、ピニオンへの押圧力は一定ではない。
【0005】
更に、熱膨張による線形案内部材の不正確さは調整されず、線形案内部材及びピニオンにそれぞれ磨耗が生じる。しかし、今日では、線形案内部材に対して可動な線形駆動装置又は固定した線形駆動装置に対して可動な線形駆動装置により正確さが要求されるようになった。この要求は、従来の線形駆動装置では確実には満たすことができない。
【0006】
このような線形駆動装置は、例えば、全ての工作機械、レーザ加工機、フライス盤、木材加工レーザなどに使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来の技術による線形駆動装置における問題を解決するために考えられたものであり、簡単、効果的且つ経済的な方法で、作動中の線形案内部材に対するピニオンのプレストレスが選択可能で、荷重及び加速度が変更可能である線形駆動装置を提供することにある。更に、駆動電流消費量を減らし、ピニオン及び線形案内部材並びに伝動素子の全体の剛性を高めて、磨耗を減らすことが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項1及び以下の請求項に記載した特徴により解決される。
【0009】
本発明では、アクチュエータにより、ピニオンを連結する駆動素子及び/又は伝動素子を受容する支持部材が、固定した受容素子に対して可動に設定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による駆動装置は、好ましくは板バネ素子、円筒状などに形成した線形案内部材を備え、所定のプレストレス又は選択可能なプレストレスが確実に得られるように構成している。選択されたプレストレスは動作中には常に一定に保たれ、ピニオンへ作用する力を力−及び/又は移動センサにより常に測定し、アクチェータにより制御される。このように、プレストレスは作動中には常に一定に保たれる。予圧及び/又は押圧力用の力センサを装置に組込むと、アクチュエータを介して、押圧力が調節可能になる。これにより、ピニオンは、常に一定の選択可能なプレストレスにより線形案内部材に作用し、荷重及び/又は加速度及び/又は速度に対応する押圧力を動作に適合させるか又は変化させる。これにより、機械の正確性且つ機動性が高まり、確実に遊びの無いように構成され、例えばレーザ切断、レーザ打抜き機など高速の補助装置を有する例えば金型加工機において高い性能が確実に実現される。更に、適応範囲が広いので、極めて限られた施工方式に対しても、作動中に最小限の磨耗で且つ僅かな保守経費の迅速な組立て法を適応できる。
【0011】
比較的大きな調整手段により、製造による誤差、磨耗及び熱膨張が大きくても、遊びの無い状態が達成されるのみならず、駆動素子の位置並びに線形案内部材の整列及び直線性の調整を省略して、簡単に組立てられる。
【実施例】
【0012】
以下、図面を用いて、実施例に基づき本発明の利点、特徴及び詳細を説明する。
【0013】
図1に示すように、線形駆動装置Rは、場合によってはピニオン4を載置した伝動装置3と共に駆動素子2を受容する、ほぼ板状に形成された支持部材1.1を備えている。ピニオン4は線形案内部材5と共動するか又は嵌合している。ピニオン4を、例えば歯車として形成し、対応する線形案内部材5の歯面に嵌合させてもよい。
【0014】
本発明の範囲において、例えば、線形駆動装置Rを線形案内部材5に対して可動にして、ピニオン4が駆動されるようにするか、又は、線形駆動装置Rを土台又は基礎に固定して、線形案内部材5を駆動しても良い。線形案内部材5としては、ラック、直線の案内部材、曲線状のレール又は環状のレールを予定してもよい。本発明はこれに限定するものではない。例えば、摩擦による噛み合いによってピニオン4は線形案内部材5と簡単に共動し、線形駆動装置Rを移動させるか又は線形案内部材5が線形駆動装置Rに対して移動させることも考えられる。
【0015】
本実施例においては、駆動素子2及び/又はピニオン4を載置した伝動装置3は、受容素子6の開口部7を貫通している。受容素子6は固定的に形成するか又は配置することが好ましい。受容素子6は板状に形成され、支持部材1.1に密着するか、僅かに離して配置されている。
【0016】
上側8及び下側9において、支持部材1.1並びに受容素子6、好ましくはそれぞれの側面は、板バネ素子10として形成された案内素子11によって互いに連結されている。案内素子11又は板バネ素子10は、双方向矢印Xで示すように、線形案内部材5又は受容素子6に対して支持部材1.1を移動し易くしている。
【0017】
支持部材1.1を受容素子6に対して双方向矢印Xで示すように上下に移動させ、従って駆動素子2及び/又は伝動装置3又はそのピニオン4を線形案内部材5に対して双方向矢印Xで示すように上下に移動させるために、少なくとも1つのアクチュエータ12.1、12.2が、受容素子6に配置した連結部材13を介して、支持部材1.1と受容素子6の間に配置されている。連結部材13は、支持部1.1の凹部15に部分的に食い込んでいるフランジ14を備えている。このフランジ14と支持部材1.1の符号の付いていないフランジの間に、アクチュエータ12.1、12.2が、好ましくは圧電アクチェータとして挿入されている。これにより、例えば膨張に対しても、双方の歯面が遊び無く確実に接触できるように、ピニオン4が線形案内部材5に対して常に移動する。
【0018】
従って、ピニオン4と線形案内部材5の間の遊びを確実に無くすために、力−及び/又は移動センサ16が案内素子11又は板バネ素子10に配置され、押圧力として必要な力又はプレストレスが正確に決めている。また、力−及び/又は移動センサ16は連結部材13及び/又はアクチェータ12.1.12.2に配置してもよい。
【0019】
ピニオン4又は支持部材1.1への力を間接的に常に測定できるように、水平方向及び垂直方向の力を測定可能な力−及び/又は移動センサ16を駆動素子2及び/又は伝動装置3に配置することも本発明の範囲である。ピニオン4と線形案内部材5の間に遊びの無いこと及び/又は双方の歯面の接触を確実に適合、規制、調整又は変更できるように、送り又は加速度の変更に対応して押圧力又はプレストレスを常に制御可能にしている。
【0020】
このように、操作中の加速度又は負荷の変更、又は負荷の増減に応じてピニオン4と線形案内部材5の間の押圧力を制御し、ピニオン4と線形案内部材5の間は常に遊びが無いことが保証される。これにより、線形駆動装置Rを線形案内部材5に対してか又は線形案内部材5を固定した線形駆動装置Rに対して極めて正確且つ精密に移動させることができる。
【0021】
本発明による別の実施例として、上記とほぼ同様の部品を備えた別の線形駆動装置Rを図2の(a)、(b)に示す。
【0022】
両側に設置したアクチュエータ12.1、12.2の代わりに、上側8において支持部材1.2に固定したウォーム式駆動装置17としてのアクチュエータ12.3を備えている。
【0023】
支持部材1.2は受容素子6から僅かに隔たっている。支持部材1.2と受容素子6は板バネ素子10として形成された案内素子11を介して互いに連結されている。板バネ素子10は支持部材1.2又は受容素子6の不図示のフランジに配置され、それと連結している。板バネ素子10は線形案内部材を図の双方向矢印Xの方向に可動とし、好適な実施例では受容素子6は固定されている。案内素子11としての板バネ素子10の代わりに、線形案内部材5が燕尾状の線形案内部材を備えてもよい。本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
ウォーム式駆動装置17は、軸及び双方向矢印Yの方向に可動の楔18と連結している。楔18は、上側8の近辺において受容素子6より垂直にやや突出し受容素子に固定されたフランジ19と連結している。
【0025】
楔18を双方向矢印Y方向に移動させることにより、支持部材1.2は受容素子6に対して双方向矢印Xの方向を上下に移動する。このようにして支持部材1.2、駆動素子2及び/又はピニオン4を連結した伝動装置3は線形案内部材5に対して双方向矢印Xの方向に移動し、遊びが無く且つ双方の歯面が正確に接触し、駆動及び制御が確実に行われる。
【0026】
ここでも、ピニオン4の駆動時に線形案内部材5への水平及び垂直な力を測定する力−及び/又は移動センサ16が駆動素子2及び/又は伝動装置3に配置されている。力を測定することにより、加速度、荷重などのパラメータが変化するとピニオン4又は支持部材1.2が受容素子6に対して移動しそれにより押圧力が変化するように、アクチュエータ12.3又はウォーム式駆動装置17を作動させる。
【0027】
更に、作動中の力又はプレストレスを測定し且つアクチュエータ12.3を作動させることにより押圧力を制御又は変化させるように、バネ板10に力−及び/又は移動センサ16を備えてもよい。
【0028】
圧電アクチェータ又は楔を有するウォーム式駆動装置の代わりに、カム式駆動装置、前クランク式駆動装置又はクランクを有するウォーム式駆動装置を用いてもよい。本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による線形駆動装置の一実施例の斜視図
【図2】本発明による線形駆動装置の別の実施例を示す図:(a)正面斜視図;(b)背面斜視図
【符号の説明】
【0030】
1 支持部材
2 駆動素子
3 伝動装置
4 ピニオン
5 線形案内部材
6 受容素子
7 開口部
8 上側
9 下側
10 板バネ素子
11 案内素子
12 アクチュエータ
13 連結部材
14 フランジ
15 凹部
16 力−及び/又は移動センサ
17 ウォーム式駆動装置
18 楔
19 フランジ
線形駆動装置
線形駆動装置
X 双方向矢印
Y 双方向矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接か又は間接に、場合によっては組込まれた伝動装置(3)を介して、線形案内部材(5)と共動するピニオン(4)を駆動させる、少なくとも1つの駆動素子(2)を有する支持部材(1.1、1.2)上又は該支持部材内に取付けられた、特にラックアンドピニオン式線形駆動装置であって、
支持部材(1.1、1.2)が少なくとも1つのアクチュエータ(12.1〜12.3)を介して受容素子(6)に対して可動に構成されていることを特徴とする線形駆動装置。
【請求項2】
直接か又は間接に、場合によっては組込まれた伝動装置(3)を介して、線形案内部材(5)と共動するピニオン(4)を駆動させる、少なくとも1つの駆動素子(2)を有する支持部材(1.1、1.2)上又は該支持部材内に取付けられた、特にラックアンドピニオン式線形駆動装置であって、
ピニオン(4)と線形案内部材(5)の間に常に遊びが無いか及び/又は歯面が常に接触することを確実にするため、ピニオン(4)の水平及び/又は垂直方向の力の測定値に応じて、支持部材(1.1、1.2)は少なくとも1つのアクチュエータ(12.1〜12.3)により、受容素子(6)に対して、規制可能か、可動か又はプレストレス負荷可能に制御されることを特徴とする線形駆動装置。
【請求項3】
支持部材(1.1、1.2)は、受容素子(6)に対して上下に直線的に可動なように、少なくとも1つの案内素子(11)に連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の線形駆動装置。
【請求項4】
板バネ素子(10)としての案内素子(11)は、線形案内部材、ニードルベアリングなどとして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の線形駆動装置。
【請求項5】
支持部材(1.1、1.2)は受容素子(6)からやや隔たって互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項6】
支持部材(1.1)及び受容素子(6)の上側(8)及び下側(9)の各側面において受容素子(6)及び支持部材(1)はフランジ部において各板バネ素子(10)により互いに連結されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の線形駆動装置。
【請求項7】
受容素子(6)の片側又は両側に、連結部材(13)が支持部材(1.1)の凹部(15)に少なくとも部分的に嵌合し、支持部材(1.1)のフランジと連結部材(13)の間に少なくとも1つのアクチュエータ(12.1、12.2)が組込まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項8】
アクチュエータ(12.1、12.2)は圧電アクチュエータ、形状記憶アクチュエータ、電気式アクチュエータ、機械式アクチュエータ又は油圧式アクチュエータとして形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項9】
少なくとも1つの力−及び/又は移動センサ(16)が少なくとも1つの案内素子(11)に配置されていることを特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項10】
少なくとも1つの力−及び/又は移動センサ(16)がアクチュエータ(12.1〜12.3)に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項11】
少なくとも1つの力−及び/又は移動センサ(16)が連結部材(13)、特にアクチュエータ(12.1、12.2)を受容する部分に配置されていることを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項12】
少なくとも1つの力−及び/又は移動センサ(16)が駆動素子(2)及び/又は伝動装置(3)に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項13】
楔(18)を直線状に移動させるウォーム式駆動装置(17)としてのアクチュエータ(12.3)が支持部材(1.2)の上側(8)に載置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の線形駆動装置。
【請求項14】
支持部材(1.2)のウォーム式駆動装置(17)の楔(18)と共動するフランジ(19)が受容素子(6)に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の線形駆動装置。
【請求項15】
場合によっては、組込まれた伝動装置(3)を介して、線形案内部材(5)と共動するピニオン(4)を駆動させる、少なくとも1つの駆動素子(2)を有する支持部材(1.1、1.2)上又は該支持部材内に取付けられた、特にラックアンドピニオン式の線形駆動装置(R、R)の駆動方法であって、
ピニオン(4)の線形案内部材(5)への水平方向及び/又は垂直方向の力を測定することにより、ピニオン(4)と線形案内部材(5)の間に常に遊びが無く及び/又は双方の歯面が常に接触を維持できるように、線形案内部材(5)への押圧力が規定され且つ/又は調整されることを特徴とする線形駆動装置の駆動方法。
【請求項16】
作動中に加速度及び/又は速度及び/又は荷重及び/又は自重が変化すると、常に水平方向及び/又は垂直方向の力を測定することにより、アクチュエータ(12.1、12.2)を制御するためにピニオン(4)と線形案内部材(5)の間の押圧力が規定され及び/又は変更され及び/又は規制されることを特徴とする請求項15に記載の線形駆動装置の駆動方法。
【請求項17】
ピニオン(4)と線形案内部材(5)の間に常に遊びが無く及び/又は双方の歯面が常に接触を維持できるように、ピニオン(4)と線形案内部材(5)の間の押圧力は、作動中の加速度に依存するように制御されることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の線形駆動装置の駆動方法。
【請求項18】
案内素子(11)、特に板バネ素子(10)を介して、アクチュエータ(12.1〜12.3)により押圧力が調整され且つ作動中に加速度及び/又は荷重及び/又は速度が変化すると押圧力は常に変更され且つ/又は適合されることを特徴とする請求項15ないし請求項17のいずれか1項に記載の線形駆動装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−522403(P2007−522403A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552468(P2006−552468)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013294
【国際公開番号】WO2005/083303
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(500542240)ヴィッテンシュタイン アーゲー (19)
【Fターム(参考)】