説明

ラッチ装置

【課題】蓋体の閉鎖動作により自動的に筐体との間が締結され、施錠なしでも両者間が不用意に開離ないラッチ装置を提供する。
【解決手段】ラッチ装置1の第1締結体2は、筐体のような第1部材41上に、第2締結体3は、蓋体のような第2部材51上に、それぞれ固着される。部材41,51が接合するときに、締結体2,3が自動的に係合して部材41,51を締結する。締結体2のラッチレバー5が取り付け面43側に倒伏した締結位置で、それの係合部15が、締結体3のラッチアーム21の係合部28と自動係合するから、部材41,51間の締結忘れが生じない。錠前6による施錠も可能である。操作部19を押圧してラッチレバー5を非締結位置へ起立回動させると、係合部15,28間の係合が解除されるから、蓋体を容易に開放できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筐体とそれの開口を開閉する蓋体のような2つの部材間を締結するラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなラッチ装置として、例えば特許文献1に記載されるキャッチロックと称される金具が知られている。キャッチロックは、一般に、蓋を閉じた後にキャッチレバーを相手方のキーパーに係合させる操作をしなければならない。その操作を忘れると、蓋は不用意に開くことがある。例えば、筐体が自転車やオートバイの荷台に搭載されたものである場合、ロック操作を忘れた蓋は、走行中に不用意に開き、収納物を紛失することになりかねない。そこで、特許文献1に記載されるキャッチロックは、蓋の閉鎖時にキャッチレバーをキーパーに自動的に係合させて仮ロックし、しかもその仮ロックを容易に解くことができ、かつ別途、本ロック操作を容易にできるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−144613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題を解決するための、この出願に係る発明のラッチ装置は、筐体とそれの蓋体のような2部材間を締結するラッチ装置であって、ロック操作をしなくても、蓋体の閉鎖動作により自動的に筐体との間が締結され、施錠なしでも両者間が不用意に開離することがないものを、上記キャッチロックとは異なった構成で提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明のラッチ装置1は、筐体と蓋体のような、互いに接合、開離する当接面42,52と、この当接面に直交する取り付け面43,53とをそれぞれ有する第1部材41と第2部材51とを締結するために、取り付け面43,53上に取り付けられる。このラッチ装置1は、第1部材41の取り付け面43上に取り付けられる第1の締結体2と、第2部材51の取り付け面53上に取り付けられ、第1の締結体2に対して結合、分離可能な第2の締結体3とを具備する。第1の締結体2は、支持部材4と、ラッチレバー5と、錠前ユニット6とを具備する。第1の締結体2の支持部材4は、第1部材41の取り付け面43上に固着される。ラッチレバー5は、取り付け面43に平行な枢軸7により支持部材4に枢支され、取り付け面43側に倒伏した締結位置と、そこから起立した非締結位置との間を回動自在で、常時締結位置に付勢される。ラッチレバー5は、枢軸7を挟んだ一端側に係合部15、他端側に操作部19を有する。係合部15は、ラッチレバー5の締結位置において第2の締結体3に係合し、非締結位置においてそれから離脱する。操作部19は、それの押圧操作により、ラッチレバー5を非締結位置へ回動させる。錠前ユニット6は、支持部材4上に固着され、キー操作により、締結位置にあるラッチレバー5を支持部材4に拘束、解放する。第2の締結体3は、第2部材51の取り付け面53上に固着される支持部材20と、この支持部材20上に支持されるラッチアーム21とを具備する。ラッチアーム21は、第2部材51が第1部材41に接合する動作時にラッチレバー5の係合部15に自動係合して第1部材41と第2部材51とを締結する。このラッチアーム21と第1締結体2のラッチレバー5との係合は、ラッチレバー5の起立動作時における取り付け面43に直交する方向の相対移動により解除可能である。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明のラッチ装置によれば、ロック操作をしなくても、蓋体の閉鎖動作により自動的に筐体との間が締結され、両者間が不用意に開離することがなく、しかも締結の解除操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るラッチ装置の断面図である。
【図2】図1のラッチ装置の締結状態の断面図である。
【図3】図1のラッチ装置の非締結状態の断面図である。
【図4】図1のラッチ装置の締結状態の側面図である。
【図5】図1のラッチ装置の締結状態の平面図である。
【図6】図1のラッチ装置の締結状態の底面図である。
【図7】図1のラッチ装置における第1締結体の側面図である。
【図8】図1のラッチ装置における第1締結体の平面図である。
【図9】図1のラッチ装置における第1締結体の底面図である。
【図10】図1のラッチ装置における第2締結体の側面図である。
【図11】図1のラッチ装置における第2締結体の平面図である。
【図12】図1のラッチ装置における第2締結体の底面図である。
【図13】図1のラッチ装置における第2締結体の基板を外した底面図である。
【図14】図11におけるXIV−XIV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
ラッチ装置1を装着する部材は、筐体のような第1部材41と、筐体の上部開口を開閉するための蓋体のような第2部材51とを具備する。第1部材41と第2部材42は、互いに接合、開離する当接面42,52と、この当接面に直交する取り付け面43,53とをそれぞれ有する。ラッチ装置1は、第1部材41と第2部材51とを締結するために、取り付け面43,53上の、当接面42,52に接近した部位に取り付けられる。
【0009】
ラッチ装置1は、第1部材41の取り付け面43上に取り付けられる第1の締結体2と、第2部材51の取り付け面53上に取り付けられる第2の締結体3とを具備する。第1の締結体2と第2の締結体3は、互いに結合、分離可能に構成される。
第1の締結体2は、支持部材4と、ラッチレバー5と、錠前ユニット6とを具備する。支持部材4は、第1部材41の取り付け面43上に固着される。ラッチレバー5は、取り付け面43および当接面42に平行な枢軸7により、支持部材4に枢支される。錠前ユニット6は、支持部材4上に、ロータの回転軸線を取り付け面43に垂直に配置して固着される。
【0010】
支持部材4は、基板部8と、起立板部9と、ブラケット部10と、支持板部11とを具備し、板材を屈曲成形して一体に構成される。基板部8は、第1部材41の取り付け面43上に、図示しないボルトで固着される。起立板部9は、基板部8における、当接面43と反対側(後方)の端から直角に起立する。ブラケット部10は、起立板部9の対向する左右両縁から後方へ延出しており、枢軸7により、ラッチレバー5を枢支する。
【0011】
ラッチレバー5は、ほぼ矩形の天板部12と、天板部の左右両縁から垂下する対向一対の側板部13とを具備し、この側板部の後方部位において枢軸7で、ブラケット部10に枢支される。これにより、ラッチレバー5は、図1に示すように、取り付け面43側に倒伏した締結位置と、図2に示すように、取り付け面43から起立した非締結位置との間を回動自在であり、締結位置において前方端部が当接面42より前方へ延出する。枢軸7に巻かれたばね14の一端が起立板部9の後面に、他端がラッチレバー5の天板部12の後部下面にそれぞれ係止され、それによってラッチレバー5は、常時図1に示す締結位置に付勢される。
【0012】
ラッチレバー5における側板部13の前方端部には、係合部15が設けられる。係合部15は、一対の側板部13の内側に相対向して突出し、ラッチレバー5が締結位置にあるとき第2の締結体3に係合し、非締結位置にあるときそれから離脱する。一方の側板部13の中間位置には、ラッチレバー5が締結位置にあるときに、錠前ユニット6の掛金16が係脱する掛金係合部17が突設される。掛金16が掛金係合部17に係合すると、ラッチレバー5は非締結位置へ起立することができない。
【0013】
ラッチレバー5の天板部12には、キー挿入用の開口18と、ラッチレバー5の回転操作のための押圧操作部19が設けられる。操作部19は、天板部12における、枢軸7より後方位置に配置され、それを取り付け面43側(下方)へ押圧操作することにより、締結位置にあるラッチレバー5を、ばね14に抗して非締結位置へ回動させることができる。
【0014】
錠前ユニット6は、支持板部11に固着される。錠前ユニット6の上端面は、ラッチレバー5が締結位置にあるときに開口18を通してキー操作できるように、開口18から上方へ露出する。錠前ユニット6を図示しないキーで操作することにより、締結位置にあるラッチレバー5を支持部材4に錠止し、または解放する。
【0015】
第2の締結体3は、第2部材51の取り付け面53上に固着される支持部材20と、この支持部材20上に枢支されるラッチアーム21とを具備する。
【0016】
支持部材20は、基板22と、基板に固着される枠体23とを具備し、図示しないボルトで第2部材51の取り付け面53上に一体に固着される。枠体23は、接合面52に平行に並んで、取り付け面53に対して垂直の3つの軸部24,25,25(図13,14)と、取り付け面52との間に間隔を置いてこれと平行に、接合面52を超えて第1部材側へ延出する保護板部26とを具備する。3つの軸部のうち、中央の軸部24は、ラッチアーム21を付勢するばね27を受け、左右一対の軸部25は、ラッチアーム21の基端部を枢支する。
【0017】
一対のラッチアーム21は、基端部において支持部材の軸部25に枢支され、先端側が接合面52を超えて第1部材側41へ延出しており、先端部に左右方向外側へ突出する係合部28を有する。一対のラッチアーム21は、接合面52に対して直角方向に延びる係合位置と、両者の先端部が接近した非係合位置との間を取り付け面53と平行に回転自在で、ばね27により、常時係合位置に付勢される。しかして、第2部材51が第1部材41に対して、図1の矢線方向に接合する動作時における接合直前に、ラッチアーム21の係合部28がラッチレバー5の係合部15に摺接してラッチアーム21が非係合位置へ移動し、接合時に摺接を脱して係合位置に復帰することにより、係合部28が係合部15に自動係合して、第1部材41と第2部材51とを締結する。しかし、この状態で、ラッチアーム21は、非締結位置への起立動を制限されない。すなわち、ラッチアーム21の係合部28とラッチレバー5の係合部15との係合は、ラッチレバー5が非締結位置へ起立動作するときに、取り付け面42,52に直交する方向へ相対移動することにより解除可能である。
【0018】
図1において、筐体のような第1部材41と蓋体のような第2部材51とは、相互に接合面42,52間を開離させた位置にあり、第1締結体2のラッチレバー5は、ばね14により付勢されて締結位置にある。この状態から第2部材51を図1の矢線方向に移動させて、図2に示すように、接合面42,52を突き合わせると、ラッチアーム21の係合部28とラッチレバー5の係合部15とが自動的に係合する。この状態で、部材41,51間は締結され、そのままでは接合面42,52間を開離することができなくなる。すなわち、例えば、筐体の蓋を閉じれば、自動的に両者間が締結されるので、締結忘れを生じるおそれがない。さらにこの状態で、キー操作により、錠前ユニット6を施錠位置に持ち来すと、掛金16がラッチレバー5の掛金係合部17に係合して、ラッチレバー5が締結位置に錠止される。
【0019】
錠前ユニット6を解錠して、ラッチレバー5の操作部17を押圧操作すると、図3に示すように、ラッチレバー5は非締結位置へ立ち上がり、係合部17,28間の係合が解除されるから、この状態で第1,第2部材41,51間を開離することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ラッチ装置
2 第1締結体
3 第2締結体
4 支持部材
5 ラッチレバー
6 錠前ユニット
7 枢軸
8 基板部
9 起立板部
10 ブラケット部
11 支持板部
12 天板部
13 側板部
14 ばね
15 係合部
16 掛金
17 掛金係合部
18 開口
19 操作部
20 支持部材
21 ラッチアーム
22 基板
23 枠体
24 軸部
25 軸部
26 軸部
27 ばね
28 係合部
41 第1部材
42 接合面
43 取り付け面
51 第1部材
52 接合面
53 取り付け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合、開離する当接面と、この当接面に直交する取り付け面とをそれぞれ有する第1部材と第2部材とを締結するために、取り付け面上に取り付けられるラッチ装置であって;第1部材の取り付け面上に取り付けられる第1の締結体と;第2部材の取り付け面上に取り付けられ、第1の締結体に対して結合、分離可能な第2の締結体とを具備し、
前記第1の締結体は、第1部材の取り付け面上に固着される支持部材と;当該取り付け面に平行な枢軸により前記支持部材に枢支され、取り付け面側に倒伏した締結位置と取り付け面から起立した非締結位置との間を回動自在で、常時締結位置に付勢されるラッチレバーと;支持部材上に固着され、キー操作により、締結位置にあるラッチレバーを支持部材に拘束、解放する錠前ユニットとを具備し、
前記ラッチレバーは、締結位置において前記第2の締結体に係合し、非締結位置において前記第2の締結体から離脱する係合部を一端側に有し;前記枢軸を挟んだ
他端側に、押圧操作によりラッチレバーを非締結位置へ回動させる操作部を有し、
前記第2の締結体は、第2部材の取り付け面上に固着される支持部材と;この支持部材上に支持され、第2部材が第1部材に接合する動作時に前記ラッチレバーの係合部に自動係合して第1部材と第2部材とを締結するラッチアームとを具備し、
このラッチアームと前記ラッチレバーの係合部との係合は、ラッチレバーの起立動作時における取り付け面直交方向の相対移動により解除可能に構成されることを特徴とするラッチ装置。
【請求項2】
前記ラッチレバーは、締結位置において前記錠前ユニットの鍵穴を露出させるキー挿入用の開口を有することを特徴とする請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記ラッチアームは、係合位置と非係合位置との間を第2部材の取り付け面に平行に移動自在で、係合位置に付勢され、第1部材と第2部材の当接面同士が接合する直前に前記ラッチレバーの係合部に摺接して非係合位置へ移動し、接合時に摺接を脱して係合位置に復帰することにより、ラッチレバーの係合部に係合するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
前記ラッチアームは、一端側において第2部材の取り付け面直交方向の枢軸により前記支持部材上に枢支されることにより、係合位置と非係合位置との間を回動自在で、係合位置に付勢され、第2部材の接合面から第1部材側へ延出し、他端部に、取り付け面に平行な方向へ突出する係合部を具備し、
前記ラッチレバーの係合部は、第1部材と第2部材の当接面同士が接合する直前に前記ラッチレバーの係合部に摺接してラッチレバーを非係合位置へ退避させ、接合時に復帰させて前記ラッチアームの係合部に対し取り付け面に平行な方向に係合する対応突起を具備し、
それによって、前記ラッチアームと前記ラッチレバーとの係合が、ラッチレバーの起立動作時における取り付け面直交方向の相対移動により解除可能に構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−167444(P2012−167444A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27344(P2011−27344)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】