説明

ラップフィルムケース

【課題】切断のためのラツプフィルムの引き出し量を抑え、また片手がふさがった状態でも引き出し作業、切断作業が比較的容易であり、切断不良を起こしにくいラツプフィルムケースを提供する。
【解決手段】フィルムシートを収容して上方に開口した本体下部と、本体下部の前記開口を開閉可能に覆う本体上部2と、本体上部2内の収容位置と、本体上部2の下縁からそれ自身の刃部が突出した突出位置との間を移動可能に収容支持された切断上刃20と、フィルムシートのロール両端に挿入されたままフィルムシートと共に収容部に収容される軸受けを具備する。前記収容部の開口下部に、弾性ゴムからなる上端面を有した受け座11が形成され、収容部から引き出したフィルムシートが受け座11に一時的に張り付いて固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のラップフィルムまたはアルミホイルや台所用の紙シートなど、ロール状に巻かれた各種シートを詰め替え可能に収容し、前記各種シートを引き出して切断することのできる詰め替え用のラップフィルムケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラップカッターとして、押しボタンに当接して取り付けられた切断刃を防護カバーで覆った蓋体と板バネを内蔵したフィルム案内板係止部を有する本体を、丁番を介して接続し、粘着部を設けた曲面を有するフィルム案内板を中蓋として本体に収容されたフィルムロールの円周面の約4分の1を覆い、その前後にフィルム引き出し口と切断刃貫入孔を設けたものが開示される(特許文献1参照)。これは硬軟いずれのフィルムでも確実に切れる安定した性能と耐久性を備え、安全で使いやすく、コンパクトでデザイン性に優れたラップカッターを得、ひいては使い捨ての紙容器を廃した安価な詰め替え用ロールの供給を促し、資源の節約とゴミの減量と消費者の利益に寄与する、とされる。
【0003】
また従来、ラップフィルムの箱として、合成樹脂製の収納部、側蓋、嵌合壁、鋸刃部を備えた上蓋及びラップフィルム固定用円筒よりなる組立可能な構造であり、前記ラップフィルム固定用円筒にラップフィルム巻取り治具により巻取り径を拡大し紙管の無いラップフィルムの筒を差し込んだラップフィルム箱が開示される(特許文献2参照)。これは全体が合成樹脂製で、ラップフィルムを詰め替え繰返し使用できるので資源、費用の削減が可能であり、紙管の無いラップフィルムを使用することにより資源・費用の削減が可能であるのみならず、折り畳むことによって輸送・保管の費用削減が可能となる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−117880号公報
【特許文献2】特開平8−104337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来のラップフィルムケースは、切断のためにラップフィルムをある程度の長さまで引き出す必要があり、また引き出したラップフィルムの切断作業が容易とはいえず、切断不良によって不経済を生ずる可能性があった。特に片手がふさがった状態での使用に困難性を有していた。
【0006】
そこで本発明は、切断のためのラップフィルムの引き出し量を抑え、また引き出したラップフィルムの切断作業が比較的容易であり、また場合によって不要に張り付きにくく、さらに切断不良を起こしにくいラップフィルムケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明では下記(1)〜(5)の手段を講じている。
(1)本発明のラップフィルムケースは、
ロール状に巻回されたフィルムシートfを収容する収容部を有し、上方に開口した本体下部1と、
本体下部1の前記開口を上覆するように配置され、前記フィルムシートfの軸と並行軸のまま移動することで開閉可能に覆う本体上部2と、
本体上部2内の収容位置と、本体上部2の下縁からそれ自身の刃部が突出した突出位置との間を移動可能に収容支持された切断上刃20と、
フィルムシートのロール両端に挿入されたままフィルムシートfと共に収容部に収容される軸受け8と、を具備してなり、
本体上部2が回転移動して前記開口を閉じた第二閉口状態s2において、切断上刃20が前記収容位置から突出位置へ移動することで、収容部から引き出されたフィルムシートを切断するものであり、
前記収容部の開口下部に、弾性ゴムからなる上端面を有した受け座11が形成され、収容部から引き出したフィルムシートが受け座11に一時的に張り付いて固定されることを特徴とする。
【0008】
(2)受け座11は、切断上刃20の刃先の入り込む隙間を設けて離間配置し、離間した各内面に外刃10Aと内刃10Bを対向配置し、
外刃10Aと内刃10Bが受け座11によって外方から弾性支持されることで、
切断上刃20が前記収容位置から突出位置へ移動することで、外刃10Aと内刃10Bそれぞれと切断上刃20のせん断力によって、受け座11上に引き出したフィルムシートを切断することが好ましい。
【0009】
(3)本体上部2の上部に、切断上刃20と上部連接したスイッチ部23が露出し、
切断上刃20は、両端が本体上部2内に軸支された支持アーム25の他端にて回動可能に支持され、また本体上部2内の側方から張設された側方弾性材によって弾性支持されてなり、スイッチ部23を下方へ押すことで切断上刃20が前記収容位置から突出位置へ正面視斜め下方に回動し、弾性反力によって突出位置から再び収容位置へ正面視斜め上方に自動収容されることが好ましい。
【0010】
(4)前記軸受け8は、ロール状のフィルムシートの両端に挿入される挿入軸83と、挿入軸83の周囲の複数位置に張り付けられた固定板81と、挿入軸83の先端にて拡径したフランジ板82とを具備し、フィルムシートが収容部内から引き出され、ロール状部が回転するのに伴って、この固定板81がフィルムシートのロール内面に所定の回転抵抗を与え、フランジ板82が収容部内面に所定の回転抵抗を与えることが好ましい。
【0011】
(5)本体下部1の前部には、引き出し口7の下縁を構成する前板14が配され、この前板14の外面には、弾性材からなる張り出し片6が、前板14の上部から下方へ張り出して設けられることが好ましい。張り出し片6はその先端が引き出し口7から側方〜斜め下方へ張り出して構成される。この張り出し片6によって、引き出したフィルムシートfは、前板14の外面よりも上方へ持ち上げられ、前板14へのフィルムシートfの貼りつきが防止される(図7b、c)。
【0012】
特に上記軸受け8が所定以上の回転抵抗を持ってフィルムロールFの不要な過度の回転や逆方向への回転を防止するため、フィルムロールFが引き出し口7内へ巻き戻るのを回避することができる。また上記貼りつき防止機能により、引き出したフィルムシートfが、前板14下方の下刃収容部13内に不要に巻きこまれるのを回避することができる。次回切断時のフィルムシートfの片先を張り出し片6上に置くことで、フィルムシートfの片先のつまみだしが容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記手段を講じることで、切断のためのラップフィルムの引き出し量を抑え、また引き出したラップフィルムの切断作業が比較的容易であり、また場合によって不要に張り付きにくく、さらに切断不良を起こしにくいラップフィルムケースを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1のラップフィルムケースの上方斜視図。
【図2】図1に示す実施例1のラップフィルムケースの断面説明図。
【図3】実施例1のラップフィルムケースの切断上刃20の正面説明図。
【図4】実施例1の切断上刃20における刃部の正面拡大図(a)、並びにそのA−A端面図(b)、B−B端面図(c)、及びC−C断面図。
【図5】実施例2の切断上刃20における刃部の正面拡大図。
【図6】実施例1の片側の軸受け8の組み立て及び分解斜視図。
【図7】実施例1のラップフィルムケースの使用時の各状態を示す断面説明図。
【図8】図7の(d)(e)(f)の各状態における要部拡大図。
【図9】実施例1のラップフィルムケースの使用方法例を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、実施例として示す各図と共に説明する。図1、図2及び図7〜図9は実施例1のラップフィルムケースを、図3及び図4はこれに含まれる実施例1の切断上刃20の構成を、図6はこれに含まれる実施例1の片側の軸受け8の構成を、それぞれ示す。また図5は実施例2の切断上刃20の構成を示す。なお各図において括弧書き内の符号OないしO1は、本体上部2の開口状態ないし第一開口状態を、符号O2は本体上部の第二開口状態を、それぞれ示す。また符号s1は、引き出し口7の閉口状態で本体上部2が下部収容部13に押し込まれずにいる第一閉口状態を、符号s2は、引き出し口7の閉口状態で本体上部2が下部収容部13に押し込まれた第二閉口状態を、それぞれ示す。符号S1は、切断上刃20が本体上部2内の収容位置にある状態を、符号S1は、切断上刃20が本体上部2内から下方へ突出した位置にある状態を、それぞれ示す。
【0016】
いずれの実施例においても、本発明のラップフィルムケースは、フィルムシートfをロール軸回りに巻回したフィルムロールFを収容する収容部を有して上方に開口した本体下部1と、
本体下部1の前記開口を覆い、本体下部1の開口前縁との間に、収容したフィルムロールFからフィルムシートfを引き出す引き出し口7を開閉可能に形成する本体上部2と、
本体上部2内に収容され、それ自身の刃部が収容された収容位置(S1)と、本体上部2の下縁からそれ自身の刃部が突出した突出位置(S2)との間を移動可能に支持された切断上刃20と、
フィルムシートのロール両端に挿入され、フィルムシートfと共に本体下部1の収容部に収容される軸受け8と、を具備してなる。
【0017】
本体上部2は本体下部1に対してロール軸と並行または同一軸をもって回転移動して、本体下部1の前曲板14との間にフィルムシートfの引き出し口7を有した開口状態(o1、o2)と、前曲板14との間の引き出し口7が閉じられた閉口状態(s1、s2)とに状態変化する。
【0018】
このうち開口状態は、本体上部2がロール軸よりも前方上部にある第一開口状態(o1)と、ロール軸よりも後方上部第二開口状態(o2)に分けられ、閉口状態は、本体上部2が本体下部1の下部前方に設けられた下刃収容部13内に押し込まれずに口を閉じた第一閉口状態(s1)と、下刃収容部13内に押し込まれて第一閉口状態からさらにロール軸下方寄りに移動した第二閉口状態(s2)に分けられる。
【0019】
そして本体上部2が回転移動して前記引き出し口7を閉じた閉口状態、さらにいえば前記第二閉口状態(s2)において、切断上刃20が前記収容位置(S1)から突出位置(S2)へ移動することで、収容部から引き出されたフィルムシートfを切断する。以下、各構成につき詳述する。
【0020】
(フィルムロールF)
フィルムロールFは、長尺のフィルムシートfが中空のロール軸回りに巻回されてなる。例えばPP,PEを主成分とする食品保存用の樹脂製ラップフィルムシートを使用することができるが、これに限定されず紙シート、アルミニウムシート、不織布シートを使用しても良い。実施例では幅30cm、長さ100m、ロール外径5cm弱、ロール軸の内径2.7cmのものを使用した。
【0021】
(本体下部1)
本体下部1は、ロール状に巻回されたフィルムシートを収容しうる収容部を有する。
【0022】
本体下部1の開口からその下部は部分円柱板で構成されると共に、部分円柱板の先側から下方へ張り出した弾性材からなる張り出し片6を有する。
【0023】
本体下部1の前部には、部分円柱板面を有して引き出し口7の下縁を構成する前板14が配される。前板14は、本体下部1の両側板間であって本体下部1の前部に配置される。図1,2に示すように、フィルムロールFのロール形状に沿う円柱側面を所定中心角で切断した部分円柱面を外面に有する。また本体下部の両側板の中央にはそれぞれ連結ピン5が外面から内面側へ貫通して取り付けられる。この連結ピン5は連結バネ4を連結しており、本体上部2の回転軸となる。
【0024】
前板14の下方には前板14よりも前方にせりあがって、それ自体の上面の前後方向略中央位置に切断下刃10を収容した下刃収容部13が設けられる。、切断下刃10は、切断下口100を上部に露出させて下刃収容部13内に支持固定される。下刃収容部13は、弾性体からなる上端面を有した受け座11が上部に露出し、切断時に下降した本体上部2をこの受け座11の上端面で受け止める。この受け座11には、収容部から引き出したフィルムシートが一時的に張り付いて固定される。
【0025】
前板14の外面には、弾性材からなる張り出し片6が、前板14の上部から下方へ張り出して設けられる。張り出し片6は片幅方向が上面湾曲した板ばね形状の弾性板からなり、上部が湾曲状の折り返し部で折り返され、当該折り返された一端の板面が前板14の外面に貼り付け固定される。この貼り付け固定された一端から逆側の他端に向けて、前板14から湾曲して浮き上がり、斜め下方に向かって前板14から緩やかに離間するように張り出す。
【0026】
(本体上部2)
本体上部2は、収容ケース1の収容口を、前記フィルムロールのロール軸と並行軸回転することで開閉可能に覆う。本体上部2はまた、厚さ方向中央に切断上刃20を収容する収容空間が形成され、その下縁は切断上刃20の刃部が突出する突出口となっている。
【0027】
本体上部2の幅方向中央上部には切断刃20のスイッチ部23を露出させる上部窪み2Dが形成され、上部窪み2D内でスイッチ部23が正面視斜め上下方向にストローク可能となっている。スイッチ部23を本体上部2の下方へ押し下げることで、内部収容された切断上刃20の刃部が支持軸を中心に正面視円弧状に斜め下方へ回動して突出口から突出する。
【0028】
本体上部2の下縁は、断面両側が厚さ方向中央に向かう傾斜縁で先尖形状に形成された、表側及び裏側一対の押さえつけ部29となっている。押さえつけ部29の先部は切断上刃20の突出口の断面両縁にて丸まって形成され、切断時に押さえつけ部29先端が受け座11の上面から内部方向へ突入し、中実弾性体の受け座11を弾性圧縮することで、切断下口100にあるフィルムシートfを張り伸ばした状態とすることができる(図8e)。
【0029】
また図2にて、切断上刃20が突出した突出状態s2で本体上部2を下ろして閉口状態としたときは、切断上刃20の刃先は前方の受け座11或いはガイド板12に接触する状態となるように設定している。これにより、突出状態s2にて本体上部2は上方へ持ち上がることがなく、第一開口状態O1とならないように構成されている。
【0030】
(切断上刃20)
切断上刃20は、本体上部内の上部近傍にて、上端支承された幅方向両側の2つの可動アーム25によって、正面視側方から斜め下方まで円弧方向へ回転移動可能に連結支持される。またその中央上部には弾性支持アーム26の下端が回動可能にピン支承され、このピン支承部を介して切断上刃20自体が正面視一側方から弾性支持材27によって側方支持される。
【0031】
弾性支持材27は幅方向外側方の一端が本体上部2内に、他端が弾性支持アーム26の上端に支持され、本体上部2の収容部内にて切断上刃20を持ち上げた状態で弾性支持する。例えばゴム等の紐状弾性材のほか、図3のような引っ張りコイルばねを使用することができる。弾性支持アーム26は、切断上刃20の幅方向中央に設けた円弧孔24内にて本体上部2に下端支承され、弾性支持アーム26収容状態S1にて上端が弾性支持方向と逆方向側方へ僅かに傾斜した取り付け角度となっており、その傾斜角度が大きくなるように上端が回動可能となっている。
【0032】
切断上刃20にはまた複数の円弧孔24が正面視幅方向に等間隔に列設され、この中を誘導ピン24Pで本体上部2内に支承することで、切断上刃20の正面視円弧状の移動方向を誘導している。誘導ピン24Pはこの円弧孔24内を、前記可動アーム25の可動軌跡とほぼ同軌跡(すなわち正面視側方から当該側方の斜め下方までの移動軌跡)となるように移動する。また誘導ピン24Pは図2に示すように、外側及び内側の押さえつけ部29同士の厚さ方向の間隔を保持し、切断上刃20の突出口の大きさが容易に変わらないようにしている。
【0033】
切断上刃20の幅方向中央上縁には、切断上刃20の厚さ方向へ屈曲形成された指当てプレートからなるスイッチ部23が突出形成される。スイッチ部23の上縁は図7dに示す閉口状態s1にて蓋部16の上縁と同程度の高さに設定される。
【0034】
スイッチ部23を下方に押し下げると、図3破線に示すように、弾性支持材27が弾性伸長し、可動アーム25及び弾性支持アーム26が斜め方向に回動することで、蓋部2の内部の収容位置から正面視円弧方向に沿って斜め下方へ弾性可動し、突出口から刃部が突出した突出状態となる。この上下方向のストローク距離は、円弧孔24の上下端と誘導ピン24Pの位置調整によって、7mm〜8mm以下、好ましくは6mm以下の短い距離に留めている。
【0035】
(切断上刃20の刃部)
切断上刃20の刃部は、図4(a)に示すように切断上刃20の下縁に、正面視上方への連続切り込み30Dを形成し、各切り込み間の隣接境界に、鋭利な刃先を形成している。実施例1(図4a)では半円弧状の連続切り込み30Dが幅方向に隣接形成され、連続切り込み30Dの形成線が、刃部先端に向かって正面視傾きを二次曲線的に増加した湾曲線からなる。実施例2(図5)では側辺を傾斜直線とする倒立略コ字状の連続切り込み30Dが幅方向に隣接形成され、連続窪み30Dの形成線が、連続切り込み30D間の刃先に向かって正面視傾きを鉛直方向に対して15度以内の微傾斜のまま直線的に保持した湾曲線からなる。
【0036】
またこの連続切り込み30Dの切り込み縁に沿って、下縁を刃先として傾斜する第一刃部30が形成される。第一刃部30はその上縁が連続切り込み30Dの形状に添う形となっており、実施例1では倒立三日月状、実施例2では倒立コ字状の正面視形状からなる。第一刃部30は連続切り込み30Dの各切り込み幅の中央で最大高さ30DHとなる。フィルムシートfとして柔軟性及び伸縮性を有する樹脂製のラップフィルムを使用する場合には、この最大高さ30DHは、切断上刃20の上下移動距離の半分未満であることが好ましい。最大高さ30DHを最小限に抑えることで、切断時に必要とする切断上刃20の上下移動量を少なくすることが可能となる。
【0037】
また連続切り込み30Dの隣接境界の刃先には、第一刃部30と同程度以上の傾斜角度で傾斜する第二刃部31が形成される。なお、第二刃部31は断面先端角度Qが第一刃部30の断面先端角度Qとほぼ同一であり、第二刃部高さ31Hは第一刃部高さ30Hよりもわずかに小さい。
【0038】
例えば全幅312mm、上下方向移動量6mmの切断上刃20の場合、上下移動量の半分である深さ3mmの半円形の切り込みを50〜55個連続形成し、鉛直方向に対して約15〜30度のいずれかの角度で両側傾斜した第二刃部31の刃先を設け、第二刃部31と同じ角度(約15〜30度のいずれかの角度)で両側傾斜した第一刃部30を設けたものが好ましい。
【0039】
さらに第一刃部30の上部には正面視水平に延びる屈曲辺34Lを境にして、その下方を下縁側の第一刃部30方向に向かって傾斜させた第三刃部34が形成される(図4a、図5)。
【0040】
そして実施例1において、第三刃部34は平面ではなく、正面視鉛直方向に伸びる断面先尖形状の大突条32、小突条33が幅方向に連続して形成される(図4a、図4d)。特に図4dに示すように、断面先尖形状の大突条32は複数の小突条33の列毎に離間しながら配置される。実施例1(図4)では連続切り込み30Dの各切り込み幅の中央位置と、各切り込み間の隣接境界にある刃先の位置とに離散して等間隔に配置される(図4d)。大突条32、小突条33によってフィルムシートfの刃部への不要な張り付きを防止することができる。また実施例2の第三刃部34は、実施例1のような大突条32、小突条33の代わりに均等高さの突条が等間隔に列状形成される(図5)。
【0041】
この第一刃部30、第二刃部31、第三刃部33によって、少ない力、かつ少ないストローク量でフィルムシートfを確実に切断することができる。特に実施例1の刃部は連続切り込み30Dの形成線が刃部先端に向かって二次曲線状に可変したものからなり、形成線に沿ってフィルムシートfの第一刃部30による切り裂き縁の追従によって真っ直ぐに切断しやすい形状となっている。また実施例2の刃部は、連続切り込み30Dの形成線が刃部先端に向かって傾きの小さい直線状のものからなり、フィルムシートfの切断のきっかけとなる切断開始孔を作りやすい形状となっている。各刃部(30〜32)を構成する刃面は図4(b)(c)に示すように、厚さ方向に対称な両刃面となっているが、他の形態として上記刃面を厚さ方向片側のみに形成しても良い。
【0042】
(切断下刃10、受け座11)
切断下刃10は外刃10Aと内刃10Bとを両端に有して断面略コ字状に折り曲げ形成され、外刃10Aと内刃10Bとの間に切断上刃20が突出して入り込むための下切断口100が形成される。切断下刃10の外刃10Aと内刃10Bは下方へ向かって下切断口100の幅が広くなるように、断面ハの字状に形成され、各下縁同士が下面板で繋がれる。外刃10A、内刃10Bそれぞれの外側面には、同一高さの上端面を有する中実体の弾性材からなる受け座11を貼り付け固定してなる。
【0043】
下切断口100は、切断上刃20が僅かな隙間を有して入り込む距離で厚さ方向に離間し、上向きに対向配置された外刃10Aと内刃10Bによって形成される。切断下刃10の外刃10A、内刃10Bの上端間距離である下切断口100の入り口幅は、広すぎると切断上刃20が突出したときに切れにくくなる一方、狭すぎて切断上刃20と外刃10A、内刃10Bのいずれかとが接触した場合にはさらに切れにくくなってしまう。また、切断下刃10の変形によって入り口幅が狭まる動きをすれば切断上刃20をつかむような形となり、連結ばねの弾性反力で切断上刃20が持ち上がらなくなってしまう。このような状態を避けるため、切断下刃10の上端に形成される下切断口100の入り口幅は、受け座11の弾性変形時にも変わることなく一定の幅を保ったまま、外刃10A、内刃10Bがともに前後に可動し得るようになっている。
【0044】
また受け座11は押さえつけ部29の沈み込みによって上面が断面円弧状に弾性変形する。これにより、受け座11の上面に張り付いたフィルムシートfを下切断口100の内外両外方向に引っ張ると共に、内外両側面の押さえつけ部29が互いに広がらずに下方移動するように導く。特にフィルムケースの長期使用によって切断下刃10や切断上刃20周りの形状のゆがみや可動軸5の遊びが生じた場合でも、受け座11が歪みやズレを修正しての正しい方向へ誘導することができる。
また受け座11は、切断下刃10の刃先に指先等が接触してしまうのを防いで厚さ方向両側から切断下刃10を支える役割を果たす。なお受け座11の弾性変形によって、切断下刃10の外刃10A、内刃10Bの刃先間の距離(下切断口100の幅)は変わらないが、外刃10A、内刃10Bの刃先は共に前後に可動する。このとき本体上部2の押さえつけ部29は切断上部10と側面接触する。この側面接触によって、切断時の感触を使用者に返すことができる。
【0045】
(軸受け8)
軸受け8は図6に示すように、フィルムロールFの左右からロール軸内に挿入される一対の構成からなる。左右それぞれの軸受け8は具体的には、弾性体からなる棒状の挿入軸83と、挿入軸83の先側にて挿入軸83よりも大径のものとして張出形成されたフランジ板82と、挿入軸83周囲の複数位置に貼り付け固定された固定板81とから構成される。挿入軸83は2〜5mm内径の異なるフィルムロールFのロール軸内に挿入可能な円筒棒体であり、筒孔が中心軸棒80に挿通して中心軸棒80回りに所定の摩擦抵抗を持って摺動回転する。
フランジ板82はこの中心軸棒80の端部に垂直に固定されてフィルムロールFよりも大径状に張り出す。固定板81上部がフィルムロールFのロール軸内面に摺動し、フランジ板82が収容ケース1内で摺動する。このとき収容部内でのラップフィルムの回転に伴い、フランジ板82と収容部、或いは固定板81とフィルムシートfの内筒面とが所定の摩擦抵抗をもって相対移動する。またフランジ板82は、その周囲が収容ケース1の円柱状の収容部内に接しながら、所定の摩擦抵抗を持って本体下部1内で軸回転しうる。また軸受け8は、ロール内に挿入可能な軸本体の周囲の複数位置において、軸本体周面から上方に固定板81が並行して張設される。軸受け8は、固定板81とフィルムロールFのロール軸内部との回転抵抗で回る状態が好ましいが、内径の小さいフィルムロールFを使用する場合には、フランジ板82と収容ケース1との回転抵抗を利用するようにしたものである。
【0046】
(作動状態)
作動状態においては、支持軸から上方のスイッチ部側方へ弾性支持された切断上刃が支持軸を中心に円弧状に斜め下方へ回動することで突出状態となる。切断下刃20の対向する下刃10A,10Bの間に切断上刃20が入ることで切断を行う。
【0047】
フィルムシートfを引き出し口7から引き出したとき、本体下部1の引き出し口7下部の部分円柱板面を有する引き出し前板14に沿って斜め下方へ張り出した弾性材からなる張り出し片6によって持ち上げられ、前曲板14へのフィルムシートfの貼りつきが防止される(図7b、c)。この引き出した状態から各作動状態によってフィルムシートfを切断する。
【0048】
スイッチ部23を押し下げることで、本体上部2が押し下げられ、図7d、図8dに示す第一閉口状態(s1)となる。この第一閉口状態(s1)では、押さえつけ部29の先端が受け座11の表面に当接して、引き出したフィルムシートfは押さえつけ部29と受け座11にはさまれて、受け座11の上面に一時的に張り付いて固定される。またフィルムシートfの一時的に固定された部分の前後は、受け座11の厚さ方向前後にせり上がったガイド板12の側面にも部分的に張り付いて係止される(図7d、図8d)。
【0049】
この第一閉口状態(s1)から更にスイッチ部23を押し下げることで、押さえつけ部29の先端が受け座11内へ沈み込んだ第二閉口状態(s2)となる(図7e、図8e)。第二閉口状態(s2)では、切断下刃20の両外側に貼り付けられた受け座11の上面が押さえつけ部29の先端形状に沿って湾曲状に弾性変形し、受け座11の上面に貼り付けられたフィルムシートfを、下切断口100を境として厚さ方向両外方向へ引っ張った状態となる。また受け座11の弾性変形によって切断下刃10の外刃10Aと内刃10Bとの距離は略一定のまま前後方向へ僅かに動く。これにより切断上刃20は下切断口100内の厚さ方向中央位置へ導かれる。
【0050】
第二閉口状態(s2)においてスイッチ部23を更に押し下げることで、第二開口状態(s2)のまま、切断上刃20が下方へ弾性移動し、刃部が突出口から突出した突出状態(S2)となる(図7f、図8f)。押し下げた下端では、スイッチ部23の下面が本体上部2の上部窪み2Dと接し、切断上刃20に設けられた円弧孔24内の誘導ピン24Pが、円弧孔24の上端に位置することで、使用者に手ごたえを感じさせる。
【0051】
そして第二閉口状態(s2)かつ切断上刃20の突出状態(S2)となった直後には、弾性支持材27の弾性反力によって切断上刃20が収容状態(S1)に戻り、受け座11の弾性反力によって押さえつけ部29が押し返され、また連結ばね4のばね反力によって本体上部2が上方に押し返されて第一開口状態(O1)に戻る。
【0052】
(実施例の主な作用)
本発明の実施例のフィルムケースは、上記構成のうち手のひらなどがあたる蓋部16の外形を部分円柱としたことで手のひらにフィットし、下部窪み13D内に指を掛けることで、女性などの小さな手でも握りやすくなっている。
【0053】
また切断上刃20の刃部を、連続切り込み30Dによって鋭利に形成することで、少ない力で切断することができる。特に実施例1の刃部は、連続窪み30Dの形成線の傾きが刃部先端に向かって二次曲線的に増加した湾曲線状のものからなり、形成線に沿ってフィルムシートfの切断開始孔形成後の切り裂きによって真っ直ぐに切断しやすい形状となっている。また実施例2の刃部は、連続切り込み30Dの形成線が刃部先端に向かって傾きの小さい直線状のものからなり、フィルムシートfの切断のきっかけとなる切断開始孔を作りやすい形状となっている。
【0054】
その他本発明は上述した実施例に限定されず、各要素の抽出、要素間の組み合わせの変更、配置の変更、部材の一体化と別体化、あるいは公知形状への代替、置換が可能である。
【符号の説明】
【0055】
F フィルムロール
f フィルムシート
1 本体下部
10 切断下刃
11 受け座
12 ガイド板
13 下刃収容部
14 前板
16 蓋部
2 本体上部
20 切断上刃
24 円弧孔
24P 誘導ピン
25 可動アーム
26 弾性支持アーム
27 弾性支持材
29 押さえつけ部
30 第一刃部
31 第二刃部
32 大突条
33 大突条
34 第三刃部
4 連結ばね
5 連結ピン
6 張り出し片
7 引き出し口
8 軸受け
80 中心軸棒
81 固定板
82 フランジ板
83 挿入軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回されたフィルムシートを収容する収容部を有し、上方に開口した本体下部(1)と、
本体下部(1)の前記開口を上覆するように配置され、前記フィルムシートの軸と並行軸のまま移動することで開閉可能に覆う本体上部(2)と、
本体上部(2)内の収容位置と、本体上部(2)の下縁からそれ自身の刃部が突出した突出位置との間を移動可能に収容支持された切断上刃(20)と、
フィルムシートのロール両端に挿入されたままフィルムシートと共に収容部に収容される軸受け(8)と、を具備してなり、
本体上部(2)が回転移動して前記開口を閉じた閉口状態において、切断上刃(20)が前記収容位置から突出位置へ移動することで、収容部から引き出されたフィルムシートを切断するものであり、
前記収容部の開口下部に、弾性ゴムからなる上端面を有した受け座(11)が形成され、収容部から引き出したフィルムシートが受け座(11)に一時的に張り付いて固定されることを特徴とするラップフィルムケース。
【請求項2】
受け座(11)は、切断上刃(20)の刃先の入り込む隙間を設けて離間配置し、離間した各内面に外刃と内刃を対向配置し、
外刃と内刃が受け座(11)によって外方から弾性支持されることで、
切断上刃(20)が前記収容位置から突出位置へ移動することで、外刃と内刃それぞれと切断上刃(20)のせん断力によって、受け座(11)上に引き出したフィルムシートを切断する請求項1記載のラップフィルムケース。
【請求項3】
本体上部(2)の上部に、切断上刃(20)と上部連接した指当てプレート23が露出し、
切断上刃(20)は、一端が本体上部(2)内に軸支された支持アーム25の他端にて回動可能に支持され、また本体上部(2)内の側方から張設された弾性支持材によって弾性支持されてなり、指当てプレート23を下方へ押すことで切断上刃(20)が前記収容位置から突出位置へ回動し、弾性反力によって再び収容位置へ自動収容される請求項1又は2記載のラップフィルムケース。
【請求項4】
前記軸受け(8)は、ロール状のフィルムシートの両端に挿入される挿入軸(80)と、挿入軸(80)の周囲の複数位置に張り付けられた固定板(81)と、挿入軸(80)の先端にて拡径したフランジ板(82)とを具備し、フィルムシートが収容部内から引き出されて回転するのに伴って、この固定板(81)がフィルムシートのロール内面に所定の回転抵抗を与え、フランジ板(82)が収容部内面に所定の回転抵抗を与える請求項1又は2記載のラップフィルムケース。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173655(P2011−173655A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17341(P2011−17341)
【出願日】平成23年1月29日(2011.1.29)
【出願人】(510028110)
【Fターム(参考)】