説明

ラップフィルム用容器

【課題】ラップフィルムにおける解放端の支持を確実とし、ラップフィルムの取り扱いを容易とする。
【解決手段】蓋体12の前蓋部122は、容器本体11の上面に形成された開口部を上蓋部121によって閉じた状態において、容器本体11の前面を少なくとも部分的に覆う。刃部14は、前蓋部122の他端側に取り付けられている。第1保持部131の一端側は、容器本体の開口部の他端側に接続され、かつ、ほぼ下向きに延出されている。第2保持部132の一端側は、第1保持部131の他端側に接続され、かつ、ほぼ上向きに延出されている。スリット133は、第1保持部131と第2保持部132との接続部分に形成されている。さらに、スリット133は、容器本体11の内部に収納されたラップフィルム筒状体2から引き出されたラップフィルム21が内部を通過できる形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムを収納するための容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆるラップフィルムを収納するための容器が使用されている(下記特許文献1〜4参照)。ラップフィルムとは、たとえば薄いシート状ないしフィルム状の樹脂であり、食品の包装などの各種用途に広く使用されている。このようなラップフィルムは、通常、筒状に周回されて、容器内に収納される。そして、使用時には、ラップフィルムの解放端を引き出し、容器に取り付けられた刃でフィルムを切断する。再び使用するときは、切断によって形成された新たな解放端を指で引き出し、必要な長さだけ引き出して再び切断する。
【0003】
ところで、ラップフィルムは柔軟性が高いため、変形しやすい。また、接着性が高いフィルムも多く、この場合には、フィルムどうしが接着することがある。刃で切断されたフィルムの解放端が、過剰に変形し、あるいは互いに接着している場合には、フィルム解放端を正しく把持する作業が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−341666号公報
【特許文献2】特開平5−246429号公報
【特許文献3】特開昭63−64622号公報
【特許文献4】実開平4−89734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した各文献には、フィルム解放端をある程度支持できる技術が記載されている。しかしながら、これらの技術では、フィルム解放端を十分確実に支持することは難しい。すなわち、この点において、従来の技術には改良の余地があった。
【0006】
本発明は、前記した状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、ラップフィルムにおける解放端の支持を確実とし、ラップフィルムの取り扱いを容易とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の項目に記載の内容としてそれぞれ表現できる。
【0008】
(項目1)
容器本体と、蓋体と、保持体と、刃部とを備えており、
前記容器本体は、上面に開口部を有する略箱体状に構成されており、
前記蓋体は、上蓋部と前蓋部とを備えており、
前記上蓋部の一端側は、前記開口部の一端側に、前記開口部を開閉できるように接続されており、
前記前蓋部の一端側は、前記上蓋部の他端側に接続されており、
かつ、前記前蓋部は、前記上蓋部によって前記開口部を閉じた状態において、前記容器本体の前面を少なくとも部分的に覆う構成とされており、
前記刃部は、前記前蓋部の他端側に取り付けられており、
前記保持体は、第1保持部と、第2保持部と、スリットとを備えており、
前記第1保持部の一端側は、前記開口部の他端側に接続されており、
かつ、前記第1保持部は、ほぼ下向きに延出されており、
前記第2保持部の一端側は、前記第1保持部の他端側に接続されており、
かつ、前記第2保持部は、ほぼ上向きに延出されており、
前記スリットは、前記第1保持部と前記第2保持部との接続部分に形成されており、
かつ、前記スリットは、前記容器本体の内部に収納されたラップフィルム筒状体から引き出されたラップフィルムが内部を通過できる形状とされている、
ことを特徴とするラップフィルム用容器。
【0009】
スリット内にラップフィルムの解放端を通すことによって、ラップフィルムの解放端を保持体によって保持することができる。これにより、ラップフィルムの解放端が過剰に変形することを防ぐことができる。なお、本発明において「上」及び「下」は、通常の使用状態における上下を意味している。
【0010】
(項目2)
前記第1保持部及び第2保持部は、前記容器本体から離間する方向に、弾性的に付勢されている
項目1に記載のラップフィルム用容器。
【0011】
第1保持部及び第2保持部を、前記容器本体から離間する方向に、弾性的に付勢することにより、ラップフィルムを引き出す作業が容易となる。
【0012】
(項目3)
前記スリットは、ラップフィルムの切断時において、前記刃部よりも高い位置に配置されている
項目1又は2に記載のラップフィルム用容器。
【0013】
スリットを、ラップフィルムの切断時において、刃部よりも高い位置に配置することにより、刃部によるラップフィルムの切断作業を効率的に行うことができる。
【0014】
(項目4)
前記第1保持部又は前記第2保持部における、前記ラップフィルムとの接触面は、前記ラップフィルムに対して、剥離可能なように接着する材質が用いられている
項目1〜3のいずれか1項に記載のラップフィルム用容器。
【0015】
第1保持部又は第2保持部における、ラップフィルムとの接触面を、ラップフィルムに対して、剥離可能なように接着する材質とすることにより、保持体によるラップフィルムの保持作用を一層確実とすることができる。
【0016】
(項目5)
前記容器本体と、前記蓋体と、前記保持体とは、一枚の厚紙を打ち抜き加工し、その後、打ち抜かれた前記厚紙を折り曲げることによって形成されている
項目1〜4のいずれか1項に記載のラップフィルム用容器。
【0017】
このように構成すれば、ラップフィルム用容器を簡便な方法で製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラップフィルムにおける解放端の支持を確実とし、ラップフィルムの取り扱いを容易とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るラップフィルム用容器の展開図である。
【図2】図1のラップフィルム用容器を組み立てた状態における概略的な横断面図である。
【図3】図2における要部の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るラップフィルム用容器の使用方法を説明するための説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るラップフィルム用容器の使用方法を説明するための説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るラップフィルム用容器の使用方法を説明するための説明図である。
【図7】図6における要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るラップフィルム用容器1を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態のラップフィルム用容器(以下、単に「容器」と略称することがある)1は、図1及び図2に示されるように、容器本体11と、蓋体12と、保持体13と、刃部14とを備えている。
【0022】
(容器本体)
容器本体11は、上面に開口部を有する略箱体状に構成されている(図2参照)。より詳しくは、容器本体11は、図1に示されるように、底面部111と、後面部112と、前面部113と、右側面部114と、左側面部115とを備えている。また、本実施形態では、適宜な厚さ及び強度を持つ厚紙(例えば秤量270〜600g/mのコートボール紙)を打ち抜き加工することによって、図1に示す状態の容器本体11を構成することができる。また、図1に示す状態の容器本体11を適宜な箇所で折り曲げることによって、図2に示す立体形状を構成することができる。
【0023】
底面部111は、略長方形状とされている。後面部112は、底面部111の幅方向における一端側(図2において左側の側縁)から上方に延長されている。なお、この明細書における上下とは、通常の使用状態における上下を意味する。
【0024】
前面部113は、底面部111の幅方向における他端側(図2において右側の側縁)から上方に延長されており、かつ、後面部112と対向している。
【0025】
右側面部114は、この実施形態では、右側面片114a〜cから構成されている。右側面片114a〜cは、底面部111と後面部112と前面部113との長手方向における一端側(図1において右端側の側縁)から外側方向に延長されている。右側面部114は、右側面片114a〜cを適宜に谷折りして積層させることによって構成されている。
【0026】
左側面部115は、この実施形態では、左側面片115a〜cから構成されている。左側面片115a〜cは、底面部111と後面部112と前面部113との長手方向における他端側(図1において左端側の側縁)から外側方向に延長されている。左側面部115は、右側面部114と同様に、左側面片115a〜cを適宜に谷折りすることによって構成されている。
【0027】
容器本体11の内部には、ラップフィルムを筒状に周回して構成されたラップフィルム筒状体2が収納される。ラップフィルム筒状体2としては、従来と同様のものを使用することができる。
【0028】
(蓋体)
蓋体12は、上蓋部121と前蓋部122とを備えている(図1参照)。
【0029】
上蓋部121の一端側(図2において左端側)は、容器本体11の後面部112の上端に接続されており、容器本体11の上面に形成された開口部を覆うことができるようになっている。すなわち、上蓋部121の一端側は、容器本体11における開口部の一端側に、この開口部を開閉できるように接続されている。
【0030】
前蓋部122の一端側(図2において上端側)は、上蓋部121の他端側(図2において右端側)に接続されている。前蓋部122は、上蓋部121によって容器本体11の開口部を閉じた状態において、容器本体11の前面(図2において左側の面)を少なくとも部分的に覆う構成とされている。
【0031】
上蓋体121は、耳部121a・121bを備えている。同様に、前蓋部122は、耳部122a・122bを備えている。これらの耳部は、適宜に折りたたまれて、左右の側面部114・115にそれぞれ取り付けられている。
【0032】
(刃部)
刃部14は、前蓋部122の他端側(図2において下端側)に取り付けられている。刃部14は、例えば厚紙や硬質樹脂や金属などの適宜の材質によって構成されており、ラップフィルムを切断することができるものである。刃部14の構成としては、従来と同様とすることができるので、これ以上詳しい説明は省略する。
【0033】
(保持体)
保持体13は、第1保持部131と、第2保持部132と、スリット133と、耳部134・135とを備えている(図1参照)。
【0034】
第1保持部131の一端側(図2及び図3において上端側)は、容器本体11の上面に形成された開口部の他端側(図2において右端側)に接続されている。より詳しくは、第1保持部131の上端は、容器本体11の前面部113の上端に接続されている。また、第1保持部131は、下方(図2及び図3において右斜め下)に延びるように接続されている。
【0035】
第2保持部132の一端側(図2及び図3において下端側)は、第1保持部131の他端側(図2及び図3において下端側)に接続されている。また、第2保持部132は、ほぼ上向きに延出されている。
【0036】
スリット133は、第1保持部131と第2保持部132との接続部分に形成されている(図1参照)。また、スリット133は、容器本体11の内部に収納されたラップフィルム筒状体2から引き出されたラップフィルム21が内部を通過できる形状とされている(図2及び図3参照)。
【0037】
本実施形態のスリット133は、ラップフィルム21の切断時において、刃部14よりも高い位置に配置されている(図5参照)。
【0038】
耳部134・135は、適宜に織り込まれて、左右の側面部114・115に取り付けられている。
【0039】
(本実施形態の動作)
次に、本実施形態に係る容器1の使用方法を、図4〜図7を主に参照しながら説明する。
【0040】
初期状態では、ラップフィルム21の解放端を、保持体13のスリット133に通しておく(図4参照)ものとする。
【0041】
ラップフィルム21を切断する場合は、蓋体12を上方に少しだけ持ち上げ(図4参照)、ラップフィルム21の解放端を指で摘み、手前側に引き出す。ラップフィルム21を必要量だけ引き出した後、蓋体12を押し下げ、刃部14を再び下方に配置する(図5参照)。ついで、ラップフィルム21を、刃部14に接触させる。これによってラップフィルム21を切断することができる。ここで、本実施形態では、スリット133を、刃部14よりも高い位置に配置しているので、簡単にラップフィルム21を切断することができる。すなわち、本実施形態においては、刃部14によるラップフィルム21の切断作業を効率的に行うことができるという利点がある。また、ラップフィルム21の切断によって形成された解放端は、図5に示されるように、保持体13の下方に延長された状態となるので、次に解放端を引き出す作業が容易となる。
【0042】
図5の状態では、保持体13の第1保持部131及び第2保持部132は、折りたたまれた状態(すなわち接近した状態)となる。折りたたまれた第1保持部131及び第2保持部132により、ラップフィルム21を、挟み込むように保持することができる。このため、ラップフィルム21の開口端が不意に移動ないし変形する可能性を減らすことができる。また、ラップフィルム21自体が互いに接着する可能性も減らすことができる。
【0043】
再び、ラップフィルム21を切断する場合は、蓋体12を上方に僅かに持ち上げ(図6参照)、ラップフィルム21の解放端を指で摘み、手前側に引き出す。ここで、蓋体12を持ち上げると、第1保持部131及び第2保持部132は、厚紙を折り畳んだことによるスプリングバックによって、容器本体11の前面部113から若干離間する(図7参照)。このため、本実施形態では、ラップフィルム21を引き出す方向を、スリット133の位置を始点として、適宜な方向とすることが可能である(図6及び図7参照)。このため、本実施形態では、ラップフィルム21を引き出す作業が容易となるという利点がある。ラップフィルム21を必要量だけ引き出した後、前記と同様に、ラップフィルム21を刃部14に接触させることによって切断することができる。
【0044】
また、本実施形態では、容器本体11と蓋体12と保持体13とを、一枚の厚紙を打ち抜き加工し、その後、打ち抜かれた厚紙を折り曲げることによって形成しているので、ラップフィルム用容器を簡便に製造することができるという利点もある。
【0045】
なお、本実施形態において、第1保持部131又は第2保持部132における、ラップフィルム21との接触面を、ラップフィルム21に対して、剥離可能なように接着する材質とすることも可能である。このようにすれば、ラップフィルム21に対する保持作用をより強化することができる。ただし、ラップフィルム21との接触面は、ラップフィルム21を引き出すときに、ラップフィルム21が容易に離脱できるものが好ましい。接触面の具体例としては、例えば、比較的滑らかな印刷面である。
【0046】
なお、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0047】
1 ラップフィルム用容器
11 容器本体
111 底面部
112 後面部
113 前面部
114 右側面部
114a〜c 右側面片
115 左側面部
115a〜c 左側面片
12 蓋体
121 上蓋部
122 前蓋部
13 保持体
131 第1保持部
132 第2保持部
133 スリット
14 刃部
2 ラップフィルム筒状体
21 ラップフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、蓋体と、保持体と、刃部とを備えており、
前記容器本体は、上面に開口部を有する略箱体状に構成されており、
前記蓋体は、上蓋部と前蓋部とを備えており、
前記上蓋部の一端側は、前記開口部の一端側に、前記開口部を開閉できるように接続されており、
前記前蓋部の一端側は、前記上蓋部の他端側に接続されており、
かつ、前記前蓋部は、前記上蓋部によって前記開口部を閉じた状態において、前記容器本体の前面を少なくとも部分的に覆う構成とされており、
前記刃部は、前記前蓋部の他端側に取り付けられており、
前記保持体は、第1保持部と、第2保持部と、スリットとを備えており、
前記第1保持部の一端側は、前記開口部の他端側に接続されており、
かつ、前記第1保持部は、ほぼ下向きに延出されており、
前記第2保持部の一端側は、前記第1保持部の他端側に接続されており、
かつ、前記第2保持部は、ほぼ上向きに延出されており、
前記スリットは、前記第1保持部と前記第2保持部との接続部分に形成されており、
かつ、前記スリットは、前記容器本体の内部に収納されたラップフィルム筒状体から引き出されたラップフィルムが内部を通過できる形状とされている、
ことを特徴とするラップフィルム用容器。
【請求項2】
前記第1保持部及び第2保持部は、前記容器本体から離間する方向に、弾性的に付勢されている
請求項1に記載のラップフィルム用容器。
【請求項3】
前記スリットは、ラップフィルムの切断時において、前記刃部よりも高い位置に配置されている
請求項1又は2に記載のラップフィルム用容器。
【請求項4】
前記第1保持部又は前記第2保持部における、前記ラップフィルムとの接触面は、前記ラップフィルムに対して、剥離可能なように接着する材質が用いられている
請求項1〜3のいずれか1項に記載のラップフィルム用容器。
【請求項5】
前記容器本体と、前記蓋体と、前記保持体とは、一枚の厚紙を打ち抜き加工し、その後、打ち抜かれた前記厚紙を折り曲げることによって形成されている
請求項1〜4のいずれか1項に記載のラップフィルム用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−143932(P2011−143932A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4704(P2010−4704)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(595102972)
【出願人】(509317221)
【Fターム(参考)】