説明

ラバーブッシュの動特性測定用具および動特性測定方法

【課題】捩り試験機等の試験装置を使用せずに、簡便にラバーブッシュの動特性を測定できるようにすることである。
【解決手段】ラバーブッシュ1の内筒41に挿入固定される棒状の内筒支持部材10と、ラバーブッシュ1の外筒42の外径側に固定される外筒支持部材20と、内筒支持部材10に取り付けられるアーム部材30とを備えたラバーブッシュ1の動特性測定用具2であって、外筒支持部材20を動かないように固定し、アーム部材30に振動検出器32を取り付け、アーム部材30を加振することにより、ラバーブッシュ1に捩り方向又は抉り方向の振動を加え、ラバーブッシュ1の動特性を捩り試験機等の試験装置を使用せずに簡便に測定できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラバーブッシュの捩り方向や抉り方向の動特性を測定するための動特性測定用具および動特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラバーブッシュ1は、図8(a)、(b)に示すように、内筒41と外筒42をゴムなどの弾性部材43で同心状に連結したものであり、自動車のサスペンション等に使用され、道路等から伝わる振動を防振する役割を果たしている。ラバーブッシュには様々な負荷がかかるため、事前に静特性や動特性の性能を把握する必要がある。静特性の評価方法としては、ある方向に力を加えたときの静ばね定数を測定する方法が採用され、動特性の評価方法としては、捩り(ねじり)方向や抉り(こじり)方向に加振したときの動ばね定数や損失係数を測定する方法が採用されている。
【0003】
捩り方向のラバーブッシュの動ばね定数や損失係数などの動特性を評価する場合には、図8(a)の矢印P1方向に示すように、ラバーブッシュ1の軸心まわりに加振する捩り方向の動特性を測定する。一方、抉り方向の動特性を評価する場合には、図8(b)の矢印P2方向に示すように、ラバーブッシュ1の軸心rに直交する方向に加振したときの動特性を測定する。そして、ラバーブッシュ1に加える振動を変えることによって、様々な振動周波数でのラバーブッシュの捩り方向や抉り方向の動特性を測定している。
【0004】
従来より、ラバーブッシュの捩り方向や抉り方向の動特性を評価する装置としては、加振試験機や捩り試験機が用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された捩り動特性試験機は、試験体に捩り動荷重を発生する捩りアクチュエータと、その動荷重によるトルクを検出するためのトルク検出器を備え、求めた捩り角度や捩り速度より、試験体の動ばね定数、損失係数などの動特性を求めるようにしている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたものでは、ラバーブッシュを捩り試験機に接続するための取付治具を工夫することにより、捩り試験機で捩り方向に加えて抉り方向の動特性を試験できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−304331号公報
【特許文献2】特開2008−286625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたラバーブッシュの動特性試験方法は、動荷重を付与するアクチュエータを備えた捩り試験機などの大型の試験機を必要とするので、試験装置が高価で、大がかりなものとなる問題がある。
【0008】
また、ラバーブッシュを捩り試験機などの試験装置に取り付けたり、取り外たりする作業が煩雑であり、作業時間が長くなる問題もある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、捩り試験機等の試験装置を使用せずに、簡便にラバーブッシュの動特性を測定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のラバーブッシュの動特性測定用具は、内筒と外筒を弾性部材で同心状に連結したラバーブッシュの動特性を測定するラバーブッシュの動特性測定用具であって、前記ラバーブッシュの内筒に挿入固定され、少なくともその軸方向一方に延出される棒状の内筒支持部材と、前記ラバーブッシュの外筒の外径側に固定される外筒支持部材と、前記内筒支持部材または前記外筒支持部材に、前記ラバーブッシュの軸方向と直交方向に向けて取り付けられるアーム部材とを備え、前記内筒支持部材および前記外筒支持部材のうち、前記アーム部材を取り付けない方を動かないように固定し、前記アーム部材に振動検出器を取り付け、前記アーム部材を加振することにより、前記ラバーブッシュに捩り方向又は抉り方向の振動を加え、前記ラバーブッシュの動特性を測定するようにした構成を採用した。
【0011】
この構成によれば、ラバーブッシュに振動を加えるためのアクチュエータやトルクを検出するためのトルク検出器を備えた、捩り試験機などの試験装置が不要となり、かつ、ラバーブッシュの取り付けや取り外しの作業も容易となり、ラバーブッシュの動特性を低コストかつ簡便に測定することができる。
【0012】
なお、ラバーブッシュの動特性、つまり、動ばね定数と損失係数は、回転方向の減衰のある1自由度系の自由振動を考えることで計算することができる。回転方向の減衰のある1自由度系の自由振動を考えると、運動方程式は(1)式で表される。
【数1】

ここで、Kは動ばね定数、Cは損失係数、Iは回転軸まわりの慣性モーメント、θはねじれ角を示す。ここで、定数λと時刻tを用いて、θを(2)式で表すと、
【数2】

ねじれ角の1回時間微分、2回時間微分はそれぞれ(3)式と(4)式で表される。
【数3】

【数4】

(2)〜(4)式を(1)式に代入すると、運動方程式は(5)式で表される。
【数5】

定数λを求めると、
【数6】

ルートの中が0である場合、C−4IK=0となり、C>0であるから、(7)式が求められる。
【数7】

(7)式の状態が振動するかしないかの境界となる。この時の損失係数Cを臨界損失係数Cとすると、損失係数Cと臨界損失係数Cの比、すなわち減衰比ζは(8)式で表される。
【数8】

また、角振動数ωは(9)で表される。
【数9】

よって、減衰比ζは(10)式で表される。
【数10】

(9)式と(10)式を用いて、動ばね定数Kと損失係数Cを求めることができる。
【0013】
前記アーム部材を、剛性が比較的低い、前記内筒支持部材に取り付けることにより、前記アーム部材に加えた振動を略減衰なくラバーブッシュに伝えることができる。
【0014】
また、前記内筒支持部材の延出部にねじ部を設け、前記アーム部材を前記内筒支持部材のねじ部に螺着していることにより、前記アーム部材の延出部への取り付けや取り外し、前記アーム部材の取り付け位置の変更を簡単に行うことができ、後述する慣性モーメントの調整が容易となる。
【0015】
また、前記内筒支持部材を前記ラバーブッシュの軸方向両側に延出し、この延出部それぞれにアーム部材が取り付けられていることにより、前記ラバーブッシュの軸方向両側で前記アーム部材が振動し、前記ラバーブッシュの両端部での振動の大きさが略等しくなり、抉り方向に振動を加えた場合には、精度の高い動特性の測定を行うことができる。
【0016】
また、前記延出部それぞれに取り付けた前記アーム部材の質量および寸法を等しくし、かつ、前記延出部への前記アーム部材の取り付け位置を前記ラバーブッシュの中心から等距離とすることにより、前記ラバーブッシュの軸方向両側の前記アーム部材の振動の大きさが一致し、前記ラバーブッシュの両端部での振動の大きさが等しくなり、抉り方向に振動を加えた場合に、さらに精度の高い動特性の測定を行うことができる。
【0017】
また、前記アーム部材を、前記ラバーブッシュの軸心まわりの慣性モーメントがこの軸心の両側で等しくなるようにすることにより、前記アーム部材を加振して前記ラバーブッシュに振動を加えた場合に、振動が均一となり、精度の高い動特性の測定を行うことができる。
【0018】
また、本発明のラバーブッシュの動特性測定方法は、内筒と外筒を弾性部材で同心状に連結したラバーブッシュの動特性を測定するラバーブッシュの動特性測定方法であって、上述したラバーブッシュの動特性測定用具のうちのいずれかの動特性測定用具を用い、前記アーム部材を加振して、前記ラバーブッシュに捩り方向又は抉り方向の振動を加え、前記加振により振動する部位の慣性モーメントと、前記振動検出器の出力から求められる振動周波数とから、前記ラバーブッシュの動ばね定数と損失係数を算出するようにした方法を採用した。
【0019】
この方法によれば、捩り試験機などの試験装置が不要な、シンプルな測定用具で、ラバーブッシュの動特性を低コストかつ簡便に測定することができる。
【0020】
また、前記加振により振動する部位の慣性モーメントを調整して、前記振動周波数を変えることにより、慣性モーメントを増減させるだけで、様々な振動周波数での前記ラバーブッシュの動特性を測定することができる。
【0021】
また、前記加振により振動する部位の慣性モーメントの調整手段を、前記アーム部材を質量又は寸法の少なくとも一方が異なるアーム部材に変更することにより、容易に慣性モーメントを調整することができる。
【0022】
また、前記加振により振動する部位の慣性モーメントの調整手段を、前記アーム部材に錘を取り付けるものとすることによっても、容易に慣性モーメントを調整することができる。
【0023】
また、前記アーム部材を前記内筒支持部材の前記延出部に取り付ける場合には、前記加振により振動する部位の慣性モーメントの調整手段を、前記アーム部材の前記延出部への取り付け位置を変えるものとすることによっても、容易に慣性モーメントを調整することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ラバーブッシュに振動を加えるためのアクチュエータやトルクを検出するためのトルク検出器を備えた、捩り試験機などの試験装置が不要となり、かつ、ラバーブッシュの取り付けや取り外しの作業も容易となり、ラバーブッシュの動特性を低コストかつ簡便に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態の動特性測定用具をラバーブッシュに取り付けた状態を示す斜視図
【図2】図1の縦断正面図
【図3】図1の動特性測定用具を使用してラバーブッシュの動特性を測定するときの試験方法を示すフローチャート
【図4】図1のアーム部材を質量や寸法の異なるアーム部材に取り替えたときの一例を示す斜視図
【図5】図1のアーム部材に錘を取り付けたときの一例を示す斜視図
【図6】図1のアーム部材の取り付け位置を変えたときの一例を示す斜視図
【図7】第2の実施形態の動特性測定用具をラバーブッシュに取り付けた状態を示す斜視図
【図8】(a)はラバーブッシュの側面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
(動特性測定用具の構成)
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1乃至図6は、第1の実施形態を示す。このラバーブッシュの測定用具は、図1および図2に示すように、棒状の内筒支持部材10、外筒支持部材20、アーム部材30等から構成されている。
【0027】
内筒支持部材10は円柱状の部材であり、ラバーブッシュ1の内径よりも僅かに小さな外径を有し、ラバーブッシュ1の内筒41に挿入固定される。また、後述する外筒支持部材20及びアーム部材30が固定される固定部周辺には、ねじ部11が設けられている。なお、ねじ部11は外筒支持部材20及びアーム部材30の固定部周辺のみならず、内筒支持部材10全体に施されていてもよい。
【0028】
外筒支持部材20は直方体形状で、ラバーブッシュ1を外筒42の外径側から固定する役割を果たしている。図2に示すように、外筒支持部材20の中央部には、ラバーブッシュ1の外径より僅かに大きい貫通孔21を有しており、外筒支持部材20の各側面には、各側面の中央部から貫通孔21にかけてねじ穴22が各側面に1ヶ所ずつ計4ヶ所設けられている。また、外筒支持部材20は、図示は省略するがベースなどの固定部材と接続され、動特性測定装置1に振動が与えられた場合に動かないようになっている。なお、外筒支持部材20自体を十分大きくすることで動かないようになっていてもよい。
【0029】
アーム部材30は平板形状で、中央部には内筒支持部材10のねじ部11に螺合するねじ穴31が設けられている。また、アーム部材30の側面には振動検出器32が各側面に1ヶ所ずつ合計4ヶ所取り付けられている。振動検出器32は、パーソナルコンピュータなどの計算機(図示省略)に接続され、振動検出器32によって測定された振動値が表示される。振動検出器32としては、加速度計や速度計、変位計などが好適に用いられるが、振動値が測定できるものであればその他の検出器であってもよい。
【0030】
(動特性測定用具の取付)
以下に、上述した動特性測定用具2をラバーブッシュ1に取り付ける方法を説明する。まず、内筒支持部材10をラバーブッシュ1に挿入し、内筒支持部材10のねじ部11に螺着したナットで、ラバーブッシュ1の両端側からラバーブッシュ1を固定する。続いて、外筒支持部材20にラバーブッシュ1を固定する。具体的には、外筒支持部材20の貫通孔21にラバーブッシュ1を挿入し、外筒支持部材20の側面4ヶ所に設けられたねじ穴22にボルトを締め込むことで、ラバーブッシュ1の外筒42を押圧して、ラバーブッシュ1を固定する。最後に、アーム部材30を内筒支持部材10にラバーブッシュ1の軸方向と直交方向に向けて取り付ける。あらかじめナットを1つ螺着しておいた内筒支持部材10のねじ部11にアーム部材30のねじ穴31を螺合し、その後2つ目のナットを螺合し、最後にナットで、アーム部材30の両側面からアーム部材30を固定する。なお、取り付けの順序は上記に限られたものではなく、上記と同様の構成に組み立てられる範囲で順序を自在に入れ替えることができる。
【0031】
アーム部材30のねじ穴31はアーム部材30の中央部に設けられているので、アーム部材30のラバーブッシュ1の軸心まわりの慣性モーメントは、この軸心の両側で等しくなる。そのため、アーム部材30を加振してラバーブッシュ1に振動を加えた場合に、ラバーブッシュ1の振動が均一となり、精度の高い動特性の測定を行うことができる。なお、ねじ穴31を中央部以外に設けても良いが、その場合アーム部材30のラバーブッシュ1の軸心まわりの慣性モーメントが、この軸心の両側で異なってしまうため、アーム部材30を加振した場合に、偏心した振動が起こり、動特性の測定結果に多少の誤差が出る可能性がある。
【0032】
(動特性測定試験方法)
以下に、上記のように取り付けた動特性測定用具2を使用して、ラバーブッシュ1の動特性を測定する方法を図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0033】
まず、適当な質量及び寸法のアーム部材が取り付けられた動特性測定用具2のアーム部材30を一定の力で加振する(S101)。アーム部材30が加振されると、加振による振動がアーム部材30から内筒支持部材10を介してラバーブッシュ1に伝わり、ラバーブッシュ1が振動する。ここで、捩り方向にラバーブッシュ1を加振したい場合には、アーム部材30を図1の矢印A方向に加振し、抉り方向にラバーブッシュ1を加振したい場合には、アーム部材30を図1の矢印B方向又は矢印B’方向に加振する。
【0034】
上述の加振手段としては、例えばハンマ内部に加振力測定センサを備えたインパルスハンマ(図示省略)を用いると良い。インパルスハンマであれば、加振力測定センサの出力から求められる加振力とアーム部材30に取り付けた振動検出器32の出力から求められる振動値とから周波数応答関数が得られるので、動ばね定数や損失係数の算出が容易となる。なお、加振手段に、加振力測定センサを備えていない一般的なハンマを用いても良い。
【0035】
続いて、振動周波数fと角振動数ωを求める(S102)。アーム部材30に取り付けた振動検出器32の出力から、振動値を縦軸とし経過時間を横軸とした振動の時間軸波形が得られるので、周期Tがすぐに求まり、周期Tより振動周波数fや角振動数ωが計算される。
【0036】
続いて、加振により振動する部位の慣性モーメントIを計算する(S103)。慣性モーメントIは、ラバーブッシュ1に捩り方向の振動を加えた場合であれば、ラバーブッシュ1の軸心まわりの慣性モーメントを計算すれば良く、抉り方向に振動を加えた場合であれば、ラバーブッシュ1の中心を通り、ラバーブッシュ1の軸心に直交する軸線まわりの加振方向に対する慣性モーメントを計算すれば良い。ここで、加振により振動する部位は、内筒支持部材10、アーム部材30およびラバーブッシュ1の内筒41である。なお、慣性モーメントは、解析ソフトや手計算などによって求められる。
【0037】
そして、ラバーブッシュ1の動ばね定数Kと損失係数Cを求める(S104)。角振動数ωと慣性モーメントIが求められているので、動ばね定数Kは(9)式より求まる。一方、損失係数Cを求めるためには、まず(10)式内の減衰比ζを求める必要がある。
減衰比ζは、インパルスハンマを用いてアーム部材30を加振した場合には、インパルスハンマに備わっている加振力測定センサの出力から求められる加振力とアーム部材30に取り付けた振動検出器32の出力から求められた振動値とから得られた周波数応答関数より半値幅法を使用して計算される。周波数応答関数は振動値を加振力で除した数値の周波数応答をグラフ化したもので、半値幅法は、周波数応答関数のピーク周波数をF、ピーク周波数の山の高さから1/√2 の高さに引いた横軸と周波数応答関数とが交わったところの周波数 をF1、F2とした場合に、下記の(11)式で減衰比ζを推定する方法である。
【数11】

【0038】
また、一般的なハンマを使用してアーム部材30を加振した場合には、減衰比ζは、振動検出器32の出力から求められる振動の時間軸波形より対数減衰率δを求め、この対数減衰率δより計算される。なお、減衰比ζを求める方法はこれらに限られず、ビクトベルト変換により求めても良いし、その他計算方法であっても良い。減衰比ζが求まると、(10)式より、損失係数Cが求まり、ラバーブッシュ1の動特性、つまり、動ばね定数Kと損失係数Cの測定が完了する。
【0039】
(異なる振動周波数での動特性測定)
ところで、上記方法にて求めたラバーブッシュ1の動特性は、適当な質量及び寸法のアーム部材を使用して加振したときの動特性であるため、振動周波数もあるランダムな値となる。したがって、求めたい振動周波数が決まっている場合や、複数の振動周波数にて測定したい場合には、この振動周波数を変化させる必要がある。本発明の動特性測定用具2であれば、加振により振動する部位の慣性モーメントを調整することで(S105)、容易に振動周波数を変えることができる。慣性モーメントと角振動数が(9)式の関係にあることから、慣性モーメントと振動周波数との関係は下記式で表されるので、求めたい振動周波数の値に合わせて、慣性モーメントを調整することが可能となる。
【数12】

【0040】
次に、慣性モーメントの調整方法(S105)の例を図4乃至図6を用いて説明する。図4は、アーム部材30を質量や寸法の異なるアーム部材30Aに取り替えて、慣性モーメントを調整する方法を示す。アーム部材30Aは、アーム部材30を長手方向に延出し、質量を増加させている。アーム部材30Aに取り替えることで慣性モーメントは増加し、ラバーブッシュ1の振動周波数を低下させることができる。また反対に、アーム部材30を長手方向の寸法が短く、質量の軽いアーム部材に取り替えると、今度は慣性モーメントが低下し、振動周波数は上昇する。加振により振動する部位の慣性モーメントはアーム部材の慣性モーメントが支配的になるので、質量や寸法の異なるアーム部材に取り替えるだけで、加振により振動する部位の慣性モーメントを大きく増減させることができる。また、内筒支持部材10とアーム部材は螺着した構成なので、ねじを回すだけで、簡単にアーム部材を取り替えることができる。
【0041】
図5は、アーム部材30に錘33を取り付けて、慣性モーメントを調整する方法を示す。錘33を取り付けて、アーム部材30の質量が増加させることで、慣性モーメントが増加させ、振動周波数を低下させることができる。錘を取り付けるだけなので、容易に慣性モーメントを調整することができる。
【0042】
図6は、アーム部材30の取り付け位置を変えて、慣性モーメントを調整する方法を示す。抉り方向に振動を加えた場合では、ラバーブッシュ1とアーム部材30との距離を変えることにより、慣性モーメントが増減する。アーム部材30の取り付け位置をラバーブッシュ1に近づけると、ラバーブッシュ1とアーム部材30との距離は短くなり慣性モーメントは低下し、振動周波数は上昇する。反対に、アーム部材30の取り付け位置をラバーブッシュ1から遠ざけた場合には、慣性モーメントが増加し、振動周波数は低下する。慣性モーメントはラバーブッシュ1とアーム部材30との距離の2乗に比例して増減するため、取り付け位置を変更するだけで、慣性モーメントを大きく増減させることができる。また、内筒支持部材10とアーム部材30は螺着した構成なので、ねじを回すだけで、簡単にアーム部材の取り付け位置を変更することができる。なお、加振により振動する部位の慣性モーメントの調整方法は上述の方法に限られるものではなく、慣性モーメントが増減する方法であれば、その他の方法であっても良い。
【0043】
慣性モーメントの調整(S105)が完了すると、再びステップ101(S101)〜ステップ104(S104)を行いラバーブッシュ1の動特性を測定する。このように、慣性モーメントの調整とラバーブッシュ1の動特性測定を繰り返すことで、求めたい振動周波数すべてでラバーブッシュ1の動特性を測定することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図7は、第2の実施形態を示す。この第2の実施形態の動特性測定用具3は、図7に示すように、棒状の内筒支持部材10’、外筒支持部材20’、アーム部材30’等から構成されている。なお、動特性測定用具2と、同じ構成の部分については記載を省略する。
【0045】
外筒支持部材20’は、図示は省略するがベースなどの固定部材と接続され、動特性測定装置1に振動が与えられた場合に動かないようになっている。なお、外筒支持部材20’自体を十分大きくすることで動かないようになっていてもよい。なお、外筒支持部材20’は実験台や地面等の床に直交方向に設置されるため、ラバーブッシュ1の筒軸や内筒支持部材10’は、実験台等の床と略平行に固定される。
【0046】
内筒支持部材10’は、ラバーブッシュ1の両側に延出し、この延出部それぞれにアーム部材30’が取り付けられている。アーム部材30’の実験台や地面等の床と直交する側面および実験台や地面等の床と平行な側面には、振動検出器32が取り付けられている。振動検出器32は、パーソナルコンピュータなどの計算機(図示省略)に接続され、振動検出器32によって測定された振動値が表示される。
【0047】
この第2の実施形態の動特性測定用具3は、ラバーブッシュ1の抉り方向の動特性を測定する場合に好適に用いられる。動特性測定用具3を使用して、ラバーブッシュ1の抉り方向の動特性を測定する場合には、図7の矢印B方向または矢印B’方向に加振する。その後は、第1実施形態と同様の手順でラバーブッシュ1の動特性を測定する。
【0048】
上述の内筒支持部材10’が、ラバーブッシュ1の両側に延出し、この延出部それぞれにアーム部材30’が取り付けられているので、ラバーブッシュ1の軸方向両側でアーム部材30’が振動し、ラバーブッシュ1の両端部での振動の大きさが略等しくなり、抉り方向に振動を加えた場合に、精度の高い動特性の測定を行うことができる。さらに、内筒支持部材10’の延出部の両側それぞれに取り付けたアーム部材30’は質量や寸法が等しく、かつ、アーム部材30’の取り付け位置もラバーブッシュ1とアーム部材30’との距離が等しいように取り付けているので、アーム部材30’の振動の大きさが一致し、ラバーブッシュ1の両端部での振動の大きさが等しくなり、抉り方向に振動を加えた場合には、さらに精度の高い動特性の測定を行うことができる。
【0049】
また、上述の動特性測定用具3の慣性モーメントを調整する場合には、アーム部材30’の取り付け位置を変更する方法を用いると良い。慣性モーメントはラバーブッシュ1とアーム部材30’との距離の2乗に比例して増減するため、この方法であれば、容易に慣性モーメントを調整することができる。また、内筒支持部材10’とアーム部材30’は螺着した構成なので、ねじを回すだけで、簡単にアーム部材の取り付け位置を変更することができる。なお、慣性モーメントの調整手段は、第1実施形態と同じくアーム部材30’を質量又は寸法の少なくとも一方が異なるアーム部材に変更する方法を用いても良いし、アーム部材30’に錘を取り付ける方法を用いても良い。また、慣性モーメントが増減する方法であれば、その他の方法であっても良い。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0051】
上述した各実施形態では、アーム部材を内筒支持部材に取り付けたが、アーム部材を外筒支持部材に取り付け、内筒支持部材を動かないように固定した構成とすることもできる。この構成の場合、加振により振動する部位は、外筒支持部材、アーム部材およびラバーブッシュ1の外筒42となる。
【0052】
また、上述した各実施形態では、寸法精度が高く、強度が高く、重量密度が高いという利点から、動特性測定用具を金属で形成したが、これらの動特性測定用具は、樹脂によって形成したものであっても良い。
【0053】
また、上述した各実施形態では、これら動特性測定用具を構成する各部材にねじ部などの締結部を設け、各部材同士や各部材とラバーブッシュをボルトやナットを用いて固定したが、嵌入や溶接などその他の方法によって固定しても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 ラバーブッシュ
3 動特性測定用具
10 内筒支持部材
11 ねじ部
20 外筒支持部材
21 貫通孔
22 ねじ穴
30 アーム部材
31 ねじ穴
32 振動検出器
33 錘
41 内筒
42 外筒
43 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と外筒を弾性部材で同心状に連結したラバーブッシュの動特性を測定するラバーブッシュの動特性測定用具であって、
前記ラバーブッシュの内筒に挿入固定され、少なくともその軸方向一方に延出される棒状の内筒支持部材と、
前記ラバーブッシュの外筒の外径側に固定される外筒支持部材と、
前記内筒支持部材または前記外筒支持部材に、前記ラバーブッシュの軸方向と直交方向に向けて取り付けられるアーム部材と、
を備え、
前記内筒支持部材および前記外筒支持部材のうち、前記アーム部材を取り付けない方を動かないように固定し、前記アーム部材に振動検出器を取り付け、前記アーム部材を加振することにより、前記ラバーブッシュに捩り方向又は抉り方向の振動を加え、前記ラバーブッシュの動特性を測定するようにしたことを特徴とするラバーブッシュの動特性測定用具。
【請求項2】
前記アーム部材を、前記内筒支持部材に取り付けた、請求項1に記載のラバーブッシュの動特性測定用具。
【請求項3】
前記内筒支持部材の延出部にねじ部を設け、前記アーム部材を前記内筒支持部材のねじ部に螺着した、請求項2に記載のラバーブッシュの動特性測定用具。
【請求項4】
前記内筒支持部材を前記ラバーブッシュの軸方向両側に延出し、この延出部それぞれに前記アーム部材が取り付けられている、請求項2又は3に記載のラバーブッシュの動特性測定用具。
【請求項5】
前記延出部それぞれに取り付けた前記アーム部材の質量および寸法を等しくし、かつ、前記延出部への前記アーム部材の取り付け位置を前記ラバーブッシュの中心から等距離とした、請求項4に記載のラバーブッシュの動特性測定用具。
【請求項6】
前記アーム部材を、前記ラバーブッシュの軸心まわりの慣性モーメントがこの軸心の両側で等しくなるようにした、請求項1乃至5に記載のラバーブッシュの動特性測定用具。
【請求項7】
内筒と外筒を弾性部材で同心状に連結したラバーブッシュの動特性を測定するラバーブッシュの動特性測定方法であって、
請求項1乃至6のいずれかに記載のラバーブッシュの動特性測定用具を用い、前記アーム部材を加振して、前記ラバーブッシュに捩り方向又は抉り方向の振動を加え、前記加振により振動する部位の慣性モーメントと、前記振動検出器の出力から求められる振動周波数とから、前記ラバーブッシュの動ばね定数と損失係数を算出するようにしたことを特徴とするラバーブッシュの動特性測定方法。
【請求項8】
前記加振により振動する部位の慣性モーメントを調整して、前記振動周波数を変えるようにした、請求項7に記載のラバーブッシュの動特性測定方法。
【請求項9】
前記加振により振動する部位の慣性モーメントの調整手段を、前記アーム部材を質量又は寸法の少なくとも一方が異なるアーム部材に変更するものとした、請求項8に記載のラバーブッシュの動特性測定方法。
【請求項10】
前記加振により振動する部位の慣性モーメントの調整手段を、前記アーム部材に錘を取り付けるものとした、請求項8に記載のラバーブッシュの動特性測定方法。
【請求項11】
前記アーム部材を前記内筒支持部材に取り付け、前記加振により振動する部位の慣性モーメントの調整手段を、前記アーム部材の取り付け位置を変えるものとした、請求項8に記載のラバーブッシュの動特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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