説明

ラパマイシン多形体II型およびその使用

本発明は、ラパマイシン多形体II型を提供する。本発明は、ラパマイシン多形体II型を調製するためのプロセスおよびラパマイシン多形体II型を含む薬学的組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、ラパマイシン多形体II型に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)により生産される大環状トリエン抗生物質であり、これは、当初、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対して、インビボでもインビトロでも抗真菌活性を有するものとして同定された(C. Vezina et al, J. Antibiot. 28, 721 (1975); S.N. Sehgal et al, J. Antibiot. 28, 727 (1975); H. A. Baker et al, J. Antibiot. 31, 539 (1978);米国特許第3,929,992号および同第3,993,749号)。ラパマイシンは、Sirolimusとして市販されている(Wyeth)。
ラパマイシンは、被臓器移植者における免疫抑制剤として幅広く使用されており、シクロスポリンまたはコルチコステロイドのような他の免疫抑制剤との併用スケジュールの場合でさえ限られた毒性しか示さなかった。細胞内ラパマイシン受容体は、FKBP12(FK506結合蛋白質)と呼ばれる小蛋白質である。FKBP−ラパマイシン複合体は、セリン/トレオニンキナーゼ、mTOR(哺乳類のラパマイシン標的)の機能を阻害し、それによってリボソームs6キナーゼ p70s6キナーゼ(p70s6k)の刺激を遮断する。そしてまた、p70s6kは、40sリボソーム蛋白質S6をリン酸化し、このことは、リボソーム蛋白質および延長因子をコードするmRNAの翻訳に好適である。mTORのもう1つの標的は、インスリンにより調節されるリン酸化熱および酸安定性蛋白質(phosphorylated heat- and acid-stable protein)(PHAS−I)と呼ばれる翻訳開始の低分子量抑制因子である。PHAS−Iのリン酸化の結果、真核細胞開始因子(eIF)−4EからPHAS−Iが解離し、eIF−4E依存性翻訳開始が増加する。
【0003】
ラパマイシンは、ヒトT細胞およびB細胞をはじめとする様々な細胞タイプにおいて細胞周期進行を阻害することが報告されている。加えて、ラパマイシンは、広範なヒト腫瘍細胞株に対してインビトロ活性およびインビボ活性を有し、細胞増殖抑制性抗癌剤の将来有望な新規クラスを代表するものであると考えられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
1つの態様において、本発明は、ラパマイシン多形体II型を提供する。有利なことに、この多形体は、I型と比較して圧縮中に成形用具にあまり粘着しない傾向があり、これは、調合および他の加工にとっての機械的利点となる。
【0005】
もう1つの態様において、本発明は、ラパマイシン多形体II型を調製するためのプロセスを提供する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、ラパマイシン多形体II型を含有する薬学的組成物を提供する。
【0007】
さらにもう1つの態様において、本発明は、ラパマイシン多形体II型を含むキットを提供する。
【0008】
なお、さらなる態様において、本発明は、ラパマイシン多形体II型を含有する薬学的組成物を調製する方法を提供する。
【0009】
本発明の他の態様および利点は、本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明においてさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ラパマイシン多形体II型を提供し、そしてその溶媒和物を除去することによりII型からI型を製造する新規プロセスを提供する。ラパマイシン多形体II型を単離し、X線回折(XRD)、示差走査熱分析(DSC)および熱重量分析(TGA)により特性付けした。ラパマイシン多形体II型は、ラパマイシンより低い融点を有し、I型より成形用具への粘着性が低く、圧縮すると平滑な面を形成する。この新規プロセスからのI型の区別可能な特性は、t−ブチルメチルエーテル蒸気の環境下ですべてII型に転化させることができることである。
以下は、ラパマイシン多形体II型のさらなる利点、それを得る方法、およびその使用方法を提供するものである。
(I.定義)
【0011】
本明細書で用いる場合、用語「ラパマイシン」は、特徴的かつ容易に入手できるか、または得ることができる高速液体クロマトグラフィーの保持時間、X線結晶構造、粉末XRDパターンおよびDSCサーモグラムによって同定される、当該分野において現在入手できるラパマイシン形を指す。ラパマイシンの粉末XRDパターンは、当業者には容易に入手でき、2θで約7.2°、9.9°、10.2°、11.1°、12.5°、14.5°、15.3°、15.5°、16.2°、20.0°、20.4°および21.8°の幾つかの可変強度ピークを含む。図1におけるラパマイシンについての一番下のXRDパターンを参照のこと。ラパマイシンのX線結晶構造は、a=34.85(2)Å、b=13.08(1)Å、c=12.25(1)Åでの斜方晶系空間群P2111を有する(D.C. Neil Swindwells et al Can. J. Chem. 56, 2491, 1978;これは、本明細書において参考として援用される)。ラパマイシンのDSCサーモグラムは、約194℃でのシャープな融解吸熱を特徴とする。
【0012】
本明細書で用いる場合、用語「多形体」は、固体として存在するときに異なる形態として存在する化合物(例えば、ラパマイシン)を指す。望ましいことに、ラパマイシン多形体は、化合物の固体形態、例えば、数ある中でも結晶、微結晶、泡沫および粉末を含む。好ましくは、本発明のラパマイシン多形体は、結晶質である。多形体の格子内の分子の配列のため、多形体は、それらの物理的特性の点で概して異なる。加えて、溶媒和物の存在または多形体の格子に組み込まれている他の分子の存在のために多形体の物理的特性が異なることがある。概して、多形体は、融点法、溶解速度法、赤外線およびラマン分光分析法、ならびにX線回折法(例えば、結晶X線回折法および粉末X線回折法)などの技法を用いて容易に区別される。
【0013】
本明細書で用いる場合、用語「非晶質」は、一定の結晶構造または結晶形を持たない化合物を指す。本明細書において、用語非晶質は、固体としてまたは溶液中で、非晶質形で存在することができる非晶質ラパマイシンを指す。
【0014】
用語「沈殿」または「沈殿すること」は、溶解した化合物を含有する溶液から固体形態の化合物を沈殿させるプロセスを説明することを意味する。本明細書で用いる場合、沈殿は、ラパマイシンの溶液から、好ましくはt−ブチルメチルエーテル中のラパマイシンの溶液から、ラパマイシン多形体II型を沈殿させることを説明することを意味する。
用語「室温」は、約23℃から約25℃の温度を記述するためのものである。しかし、具体的な室温が、ラパマイシン多形体II型の形成中に利用される条件および環境条件に依存して変わることがあることは、当業者には容易に理解される。
(II.ラパマイシン多形体II型の調製方法)
【0015】
1つの態様において、本発明は、ラパマイシン多形体II型を調製するための方法を提供する。好ましくは、ラパマイシン多形体II型は、非晶質ラパマイシンから調製する。しかし、ラパマイシンから非晶質ラパマイシンを製造するために利用する特定のプロセスは、本発明を限定するものではない。
【0016】
ラパマイシンを溶解することができる初期溶媒とラパマイシンを併せる。典型的には、この初期溶媒は、アセトンである。その後、典型的には回転蒸発(rotavap)の使用により、約1気圧(atm)より低い減圧を利用して、約40℃から50℃の高温でその初期溶媒を除去する。初期溶媒除去後、固体ラパマイシンを、好ましくは非晶質形態に再形成する。より低い温度またはより高い温度を利用して初期溶媒を除去することはできるが、それらの使用を本発明を限定するものとみなすべきではない。典型的には、初期溶媒除去後に形成される固体ラパマイシンは、泡沫である。しかし、初期溶媒除去後に得られるラパマイシンが粉末または油状物である場合もある。
【0017】
初期溶媒除去後、その非晶質ラパマイシンを第二の溶解溶媒に溶解する。1つの実施形態において、この第二の溶解溶媒は、エーテル、好ましくはt−ブチルメチルエーテル(TBME)である。このエーテルは、無水であってもよいし、水を含有していてもよい。好ましくは、ラパマイシンは、約45℃の高温で第二の溶解溶媒に溶解する。しかし、ラパマイシンを第二の溶解溶媒に溶解するために45℃より低い温度または45℃より高い温度を利用することができることは、当業者には容易に理解される。
【0018】
第二の溶解溶媒にラパマイシンを追加した後、その溶液を少なくとも約1分間は混合する。典型的には、ラパマイシンは、最初に、上述の高温で第二の溶解溶媒と併せる。しかし、ラパマイシン多形体II型の形成を促進するために、より低い温度を利用することができ、当業者はその温度を容易に選択することができる。典型的には、温度をほぼ室温に低下させ、その温度で維持する。一般には、その溶液を約6時間から約12時間、ほぼ室温で維持する。当業者は、非晶質ラパマイシンを溶解溶媒に溶解するために利用する混合のタイプ、必要とする期間および温度を容易に決定することができる。好ましくは、ラパマイシンは、約45℃でTBMEに溶解し、その後、室温で約6時間から約8時間維持する。
【0019】
第二の溶解溶媒にラパマイシンを溶解し、その溶媒中で維持すると、ラパマイシン多形体II型の固体サンプルが沈殿によりその溶液中で形成される。典型的には、ラパマイシン多形体II型は、白色結晶として沈殿される。しかし、ラパマイシン多形体II型は、細かい粉末または粗い粉末として沈殿する場合もある。ラパマイシン多形体II型は、当業者には公知の技法を用いて単離することができ、それらの技法としては、数ある中でも、濾過、デカンテーション、遠心分離およびクロマトグラフィーが挙げられる。典型的には、沈殿したラパマイシン多形体II型のサンプルの単離には濾過が利用される。濾過後に得られた残留溶解溶媒を場合によっては濃縮し、そして/またはほぼ室温より低い温度に冷却して、追加のラパマイシン多形体II型の沈殿を促進してもよい。
【0020】
一旦単離したときは、空気乾燥によるか、または窒素などの不活性雰囲気下で、残留溶媒を除去することができる。典型的には、少なくとも0.5時間、好ましくは約0.5時間から3時間の時間をかけて一切の残留溶媒を除去する。
【0021】
1つの実施形態において、本発明は、アセトンにラパマイシンを溶解すること、そのアセトンを除去して泡沫を形成すること、その泡沫をt−ブチルメチルエーテルに溶解すること、およびラパマイシン多形体II型を回収することを含む、ラパマイシン多形体II型を調製するためのプロセスを提供する。
(III.ラパマイシン多形体II型の特性付け)
【0022】
ラパマイシン多形体II型の特性付けおよびラパマイシン多形体II型とラパマイシンとの区別は、当業者に公知の技法を用いて遂行する。具体的には、沈殿後にラパマイシン多形体II型が存在することの検証は、融点、赤外線分光分析(IR)、核磁気共鳴分光分析(NMR)、質量スペクトル分析(MS)、燃焼分析、ラマン分光分析、元素分析およびクロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィーを含む)をはじめとする技法を用いて行うことができる。示差走査熱分析(DSC)およびX線回折(XRD)をはじめとする他の技法も、多形体の区別、特にラパマイシンとラパマイシン多形体II型との区別に有用である。
((A)分光分析を用いる同定)
【0023】
HPLCを利用して、上述したように得られた生成物がラパマイシン多形体II型であることを検証することができる。好ましくは、ラパマイシン多形体は、HPLC−紫外線(UV)またはHPLC−質量スペクトル(MS)分光分析を用い、French et al, Clinical Chemistry, 47(7): 1316 (2001) および Holt et al, Clinical Chemistry, 46(8): 1179 (2000)(これらは、本明細書において参考として援用される)に記載されている技法を用いて分析する。
【0024】
望ましいことに、ラパマイシン多形体II型のHPLCクロマトグラフは、上述のFrenchおよびHoltに記載されている条件を用いるラパマイシンのHPLCクロマトグラフと同一である。ラパマイシン多形体II型のHPLCクロマトグラフは、当業者が容易に同定することができる不純物に対応する追加のピークを含むことがある。しかし、この不純物の存在がラパマイシン多形体II型の同定および特性付けに干渉しないことは、当業者には容易に理解される。
【0025】
HPLCクロマトグラフを得るために有用な様々なHPLC条件を当業者は容易に決定することができるが、それらを本発明を限定するものとみなすべきではない。これらのHPLC条件としては、数ある中でも、カラム温度、流速、検出波長、カラムのタイプ、カラムのサイズ、および移動相が挙げられる。1つの実施形態において、HPLC−MS条件は、上述のHoltに示されている条件を含む。例えば、この条件は、5マイクロメートル(μ)ODS粒子を収容している15センチメートル(cm)x4.6mm SupelcosilTMLC−18−DBカラム、約50℃の温度、および約1.0ミリリットル(mL)/分の流速を含む。ラパマイシン多形体II型のHPLC−UVクロマトグラフを得るために、様々な移動相を利用することができる。1つの実施形態において、移動相は、酢酸アンモニウム溶液または他の溶媒(例えば、数ある中でも、アセトニトリルおよび/もしくはジオキサン)を場合によっては補足した、メタノール:水(例えば、容積で80:20)溶液である。
【0026】
上述したようなHPLC−MS条件を用いることにより、ラパマイシン多形体II型について、約6分の保持時間を有するHPLCクロマトグラフが得られるはずである。その後、そのラパマイシン多形体II型のHPLC−MSクロマトグラフを、同じHPLC−MS条件を用いるラパマイシンのHPLC−MSと比較することができる。本発明において、ラパマイシン多形体II型についての保持時間は、ラパマイシンについての約6分の保持時間と同一であるはずである。
【0027】
典型的には、ラパマイシン多形体II型が存在することを検証するために、さらなる確認として、XRD法およびDSC法を利用する。
((B)X線回折を用いる同定)
【0028】
XRD法を利用して、ラパマイシン多形体II型とラパマイシンを区別する。当業者は、ラパマイシン多形体II型のXRDパターンを得るために必要な条件を容易に決定することができる。様々なXRD装置を利用でき、それらには、数ある中でも、Diffraction Management Software NTプログラムを使用するScintagTMX-2 Advanced Diffraction System装置が挙げられる。
【0029】
従って、本明細書に記載するラパマイシン多形体II型の粉末XRDパターンは、当業者には公知のX線結晶解析法を用いて得た。1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型のXRDパターンは、ラパマイシンについて得られるXRDピークとは異なる多数のピークを含む。もう1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型のXRDパターンは、1つの大きなピークと幾つかの小さなピークを含む。さらなる実施形態において、ラパマイシン多形体II型のXRDパターンは、2θで約7.0°、9.7°、10.1°、11.0°、12.4°、13.1°、14.1°、14.6°、15.0°、15.2°、15.8°、16.3°、16.6°、17.6°、18.1°、18.3°、19.7°、20.2°および21.2°のピークを含む。
【0030】
ラパマイシン多形体II型のXRDパターンには他のピークも存在し得、それらはそのサンプル中の不純物に対応し得る。前記他のピークは、典型的には、微量のラパマイシンに対応する。
【0031】
ラパマイシン多形体II型の特性付けに加えて、XRDは、ラパマイシン多形体II型の形成をモニターするために用いることができる。
((C)示差走査熱分析を用いる同定)
【0032】
示差走査熱分析(DSC)法を利用して、ラパマイシン多形体II型とラパマイシンを区別することもできる。当業者は、ラパマイシン多形体II型のDSCサーモグラムを得るために必要な条件を容易に決定することができる。当業者は、様々な示差走査熱分析装置を利用することができ、そうした装置としては、他の装置および条件の中でも、約25℃から約220℃の温度ならびに5℃/分、10℃/分および30℃/分をはじめとする様々な速度での温度上昇を用いる、PyrisTM1 DSC装置が挙げられる。
【0033】
本発明に従って調製されるラパマイシン多形体II型のDSCサーモグラムは、ラパマイシンのXRDパターンに存在する約194℃の吸熱ピークを欠く。前記DSCサーモグラムは、その代わりに約188°の吸熱ピークを含む。図2を参照のこと。ラパマイシン多形体II型のDSCサーモグラムは、分解吸熱を含むこともある。理論による拘束を望まないが、残留t−ブチルメチルエーテルに対応する吸熱も存在することがある。
【0034】
従って、1つの実施形態において、約188℃での吸熱ピークを含み、約194℃の吸熱ピークを欠くDSCサーモグラムを有するラパマイシン多形体II型を調製することができる。
((D)熱重量分析(TGA)を用いる同定)
【0035】
TGAを利用して、ラパマイシン多形体II型のサンプル中の溶媒和分子、例えばTBME分子の存在を判定することもできる。本発明において、ラパマイシン分子のラパマイシン多形体II型中に捕捉された溶媒分子に対する比率は、約2:1であり、従って、溶媒分子は、固体サンプルの約4%を含む。当業者は、TGA中に利用する装置および条件を容易に決定することができる。
(IV.ラパマイシン多形体II型の他のラパマイシン形への転化)
【0036】
ラパマイシン多形体II型は、当業者には公知の技法を用いて、対応するエステル、カルバメート、スルフェート、エーテル、オキシム、カーボネートなどに転化させることができる。例えば、ラパマイシン多形体II型は、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)に転化させることができる。
【0037】
ラパマイシン多形体II型を脱溶媒和して(desolvate)、特殊なラパマイシンI型またはラパマイシンI型とラパマイシン多形体II型との混合物を形成することもできる。典型的には、II型は、約60℃より高い温度で固体のII型を加熱することにより、I型またはI型とII型との混合物に転化させる。あるいは、真空の利用により、II型をI型またはI型とII型との混合物に転化させることができる。本発明では約1気圧(atm)より低い圧力を有する真空を利用して、ラパマイシン多形体II型を脱溶媒和することができる。好ましくは、スピードバック(speedvac)の使用により得られる真空が望ましい。こうした真空は、短期間または長期間にわたって維持することができる。当業者は、ラパマイシン多形体II型を脱溶媒するために必要な時間量を容易に決定することができる。1つの実施形態において、真空は、少なくとも約8時間維持される。もう1つの実施形態において、真空は、少なくとも約2日間維持される。さらなる実施形態において、真空は、約2日から約7日間維持される。
【0038】
理論による拘束を望まないが、本発明者らは、ラパマイシン多形体II型が、約4%溶媒を含有する溶媒和物であることを見出している。この溶媒を除去して、以下に詳述するようにラパマイシンI型と同一のX線回折パターンを有するが、極僅かに異なる物理的特性を有する、特殊なラパマイシン多形体I型を製造することができる。それ故、本発明は、ラパマイシン多形体II型を脱溶媒和することにより調製されるラパマイシン多形体I型を提供する。本発明者らは、この特殊なI型をt−ブチルエーテル蒸気の環境下ですべてII型に転化させることができることも見出した。これは、溶媒に暴露されたときに完全にはラパマイシン多形体II型を形成しない先行技術により製造された通例のラパマイシンI型とは対照的である。
【0039】
望ましくは、ラパマイシン多形体II型は、減圧下、約100℃より高い温度にII型を加熱することにより、ラパマイシンI型に転化させる。本発明者らは、ラパマイシンI型を溶解溶媒の蒸気、好ましくはTBME蒸気中で分解して、ラパマイシン多形体II型を形成することができることも見出している。
(V.ラパマイシン多形体II型を含有する組成物)
【0040】
ラパマイシン多形体II型を含有する組成物も本発明に従って調製することができる。こうした組成物は、ラパマイシン多形体II型と薬学的に許容される担体を併せることによって調製する。
【0041】
1つの実施形態において、本発明は、ラパマイシン多形体II型および/または特殊なラパマイシン多形体I型と1つまたはそれ以上の他の結晶質、多形、溶媒和物、非晶質または他の形態のラパマイシンとの組成物または混合物を提供する。例えば、そうした組成物は、ラパマイシン多形体II型とともに1つまたはそれ以上の他の形態のラパマイシン、(例えば、ラパマイシンおよび/またはラパマイシン多形体I型)を含み得る。もう1つの例において、そうした組成物は、ラパマイシン多形体I型とともに1つまたはそれ以上の他の形態のラパマイシン(例えば、ラパマイシンおよび/またはラパマイシン多形体II型)を含み得る。より具体的には、前記組成物は、0.5重量%から100重量%またはこの間の任意の量のラパマイシン多形体II型またはラパマイシン多形体I型を含むことができる。例えば、前記組成物は、その組成物の全量を基準にして、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%もしくは50重量%未満のラパマイシン多形体II型またはラパマイシン多形体I型を含むことができる。あるいは、前記組成物は、その組成物中のラパマイシンの全量を基準にして、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.5重量%もしくは99.9重量%のラパマイシン多形体II型および/またはラパマイシン多形体I型を含むことができる。
【0042】
さらなる実施形態において、投与に先立ち、ラパマイシン多形体II型またはラパマイシン多形体I型は、有効投薬量のラパマイシン多形体II型および/またはI型を1つ(またはそれ以上)の薬学的に許容される担体と併せて含有する薬学的組成物として、調合することができる。
【0043】
さらにもう1つの実施形態において、前記薬学的組成物は、(その組成物中に存在するラパマイシンの全量(すなわち、ラパマイシン形の全量が100%である)を基準にして)少なくとも一定の割合のラパマイシン多形体II型またはラパマイシン多形体I型を含むラパマイシン組成物の有効投薬量を含む。言い換えると、前記薬学的組成物の中に存在するラパマイシンの少なくとも一定の割合は、ラパマイシン多形体II型またはラパマイシン多形体I型であり、残りのラパマイシンは、ラパマイシン、ラパマイシン多形体II型、ラパマイシン多形体I型または任意の他の結晶形、多形、溶媒和形もしくは非晶質形をはじめとする(しかし、これらに限定されない)別の形態で存在する。
【0044】
ラパマイシン多形体II型を含有する本明細書に記載の組成物は、薬学的に有効な量のラパマイシン多形体II型を使用して、所望の送達経路に適する任意の形態に調合することができる。例えば、本発明の組成物は、経口経路、皮膚経路、経皮経路、気管支内経路、鼻腔内経路、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、非経口経路、腹腔内経路、経鼻経路、経膣経路、直腸内経路、舌下経路、頭蓋内経路、硬膜外経路、気管内経路などの経路により、または持続放出により送達することができる。好ましくは、送達は、経口送達である。
【0045】
本発明の経口投薬錠剤の組成物を使用して、当業者には公知であるラパマイシン多形体II型の誘導体(エステル、カルバメート、スルフェート、エーテル、オキシム、カーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない)を含有する経口投薬錠剤を製造することもできる。
【0046】
II型と比較して、II型の加工用具への粘着特性が低いことは、錠剤を形成するためおよび平滑な表面積をもたらすのに、特に有利であると予想される。
【0047】
ラパマイシン多形体II型の薬学的有効量は、具体的な化合物、送達方式、処置する状態の重症度、およびその組成物に使用する任意の他の活性成分に依存して変わり得る。最適な治療応答を生じさせるように、その投与レジメンを調整することもできる。1日に幾つかの分割量を、例えば1日2回から4回の分割量で送達してもよいし、1回量を送達してもよい。しかし、その用量は、その治療状態の緊急性による必要に応じて、比例して減少または増加させることができる。1つの実施形態において、送達は、1日単位、週単位、または月単位である。もう1つの実施形態において、送達は、1日1回の送達である。しかし、定期的な送達に基づき、日用量を低下または上昇させることができる。
【0048】
ラパマイシン多形体II型は、本発明の組成物と相溶性である固体および液体の担体をはじめとする(これらに限定されない)、1つ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤と併用することができる。こうした担体としては、数ある中でも、アジュバント、シロップ、エリキシル、希釈剤、結合剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、滑沢剤、界面活性剤、造粒剤、崩壊剤(disintegrating agent)、皮膚軟化薬、金属キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤(disintegrant)、懸濁化剤および安定剤ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型は、金属キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤および結合剤と併用される。
【0049】
アジュバントとしては、着香剤、着色剤、保存薬および補助抗酸化物質が挙げられるが、これらに限定されず、前記補助抗酸化物質としては、ビタミンE、クエン酸、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、d,l−α−トコフェロール、モノチオグリセロールおよび没食子酸プロピルを挙げることができる。本発明において使用される経口調合物に利用される、抗酸化物質の典型的な濃度は、0.0005% w/v〜0.5% w/vの濃度範囲で用いられる。
【0050】
滑沢剤としては、数ある中でも、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムを挙げることができる。1つの実施形態において、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはフマル酸ステアリルナトリウムである。もう1つの実施形態において、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0051】
造粒剤としては、数ある中でも、二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、ペクチン、クロスポビドン(crospovidone)およびポリプラスドン(polyplasdone)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0052】
結合剤、充填剤および崩壊剤としては、デンプン、マンニトール、リン酸カルシウム、糖類(例えば、スクロース、カオリン、ラクトースおよびデキストロース)、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、アカシアゴムおよびアラビアゴム、コレステロール、トラガカントゴム、ステアリン酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、微結晶性セルロース、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、デキストレート、デキストリン、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、置換重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、α−デンプン、クロスポビドン、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)、コレステロール、ステアリン酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、ならびに経口調合物に配合することができるこれらに類するものを挙げることができる。
【0053】
皮膚軟化薬としては、ステアリルアルコール、ミンクオイル、セチルアルコール、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、オリーブオイル、ワセリン、パルミチン酸、オレイン酸およびミリスチン酸ミリスチルを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0054】
界面活性剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20および80)、ソルビタンエステル、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、塩化ベンズアルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミンをはじめとする非イオン性およびアニオン性の物質;またはレシチンと併せることができる胆汁酸の塩(タウロコール酸塩、グリココール酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩など)を挙げることができる。界面活性剤としては、エトキシル化植物油、例えばCremophor ELまたはPEG化ヒマシ油[例えば、固体であるPEG−35ヒマシ油(例えば、BASFの商品名Cremophor EL)など]、ビタミンE トコフェロールプロピレングリコールスクシネート(Vitamin E TGPS)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、およびポロキサマーも挙げることができる。界面活性剤は、その組成物の0.5% w/v〜100% w/v、0.5% w/v〜10% w/v、5% w/v〜80% w/v、10% w/v〜75% w/v、15% w/v〜60% w/v、好ましくは組成物の少なくとも5% w/vまたは少なくとも10% w/vで含み得ると予想される。
【0055】
金属キレート剤としては、エデト酸、リンゴ酸、フマル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはラパマイシン多形体II型の安定性を向上させることができるグリシンなどのアミノ酸をはじめとする、生理学的に許容されるキレート剤を挙げることができる。1つの実施形態において、金属キレート剤は、エデト酸である。
【0056】
pH調整剤を利用して、ラパマイシン含有溶液のpHを約4から約6に調整することもできる。1つの実施形態において、ラパマイシン含有溶液のpHは、約4.6のpHに調整される。pH調整剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸または希塩酸およびこれらの塩をはじめとする、生理学的に許容される物質を挙げることができる。1つの実施形態において、pH調整剤は、クエン酸である。
【0057】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)およびシクロデキストリンまたはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。水溶性ポリマーが、PVPであり、2.5キロダルトンと60キロダルトンの間の分子量を有することが好ましい。本発明において有用ないずれの所与の経口調合物も、各種類の成分の複数の構成要素を含有することがある。例えば、抗酸化物質を含有する経口調合物は、抗酸化物質成分として1つまたはそれ以上の抗酸化物質を含有することがある。
【0058】
懸濁化剤または安定剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、ケイ酸塩複合体、炭酸カルシウム、グリセリン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプンおよび粉糖を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0059】
希釈剤としては、水、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレン400、ポリエチレン600、ポリエチレン1000、またはこれらのポリエチレングリコールの1つもしくはそれ以上を含有するブレンド、プロピレングリコール、および溶液容量オスモル濃度を調整するための他の薬学的に許容される補助溶媒または物質、例えば、塩化ナトリウム、ラクトース、マンニトールまたは他の非経口的に許容される糖類、ポリオールおよび電解質を挙げることができる。
【0060】
1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型を含有する組成物は、錠剤、キャプレットまたはカプセル、マイクロカプセル、分散性粉末、顆粒、懸濁液、シロップ、エリキシルおよびエーロゾルにより、経口送達される。望ましくは、ラパマイシン多形体II型を含有する組成物を経口送達するとき、送達は、錠剤およびハードカプセルまたは液体充填カプセルによる。
【0061】
非アルコール性溶媒としては、数ある中でも、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0062】
アルコール性溶媒は、調合物のアルコール性溶媒成分として1つまたはそれ以上のアルコールを含むことがある。
【0063】
ラパマイシン多形体II型に特に適する経口調合物としては、CCI−779で利用され、そして米国特許公開第20040077677号および国際特許公開パンフレット第04/026280号(出願番号PCT/US03/29228)(これらは、本明細書において参考として援用される)に記載されているのと同じ調合物が挙げられる。こうした経口調合物は、湿式造粒プロセスを用いて調製される顆粒を含有する。この顆粒は、ラパマイシン多形体II型、水溶性ポリマー、pH修飾物質、界面活性剤および抗酸化物質を含有することができる。1つの実施形態において、前記調合物は、0.1%〜30%、0.5%〜25%、1%〜20%、5%〜15%または7%〜12%(wt/wt)のラパマイシン多形体II型;0.5%〜50%、1%〜40%、5%〜35%、10%〜25%、または15%〜20%(wt/wt)の水溶性ポリマー;0.5%〜10%、1%〜8%、または3%〜5%(wt/wt)の界面活性剤;および0.001%〜1%、0.01%〜1%、または0.1%〜0.5%(wt/wt)の抗酸化物質を含有する。しかし、他の実施形態は、これらの成分をより多く含有しても、より少なく含有してもよい。
【0064】
もう1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型を含有する組成物は、滅菌注射用溶液、懸濁液、分散液、および容易に注射できる程度に流動性である粉末の形態で、静脈内、筋肉内、皮下、非経口および腹腔内に送達することができる。こうした注射用組成物は、無菌であり、製造および保管の条件下で安定であり、そして細菌および真菌などの微生物の汚染作用が無い。通常の保管および使用の条件下では、これらの調合物は、微生物の成長を防止するために保存薬を含有する。
【0065】
本発明において有用な非経口調合物は、単独溶液として調製してもよいし、または好ましくは、ラパマイシン多形体II型、アルコール性溶媒および抗酸化物質を含有する補助溶媒濃縮物として調製してもよく、これを、その後、希釈溶媒および適する界面活性剤を含有する希釈剤と併せる。
【0066】
単独溶液または分散液として調製する場合、ラパマイシン多形体II型は、希釈剤と併せる。1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型は、水と合わせ、必要に応じてヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と併せる。分散液は、油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物の状態で調製することができる。
【0067】
ラパマイシン多形体II型に特に適する注射用調合物としては、米国特許公開第20040167152号A1(出願番号10/626,943);国際特許公開パンフレット第03/23267号(出願番号PCT/US03/223276);国際特許公開パンフレット第2004/011000号および米国特許公開第20040167152号1A(出願番号10/626,943)(これらは、本明細書において参考として援用される)においてCCI−779のために利用されている注射用調合物が挙げられる。本発明において有用ないずれの所与の調合物も、各種類の成分の複数の構成要素を含有することがある。1つの実施形態において、非経口的に許容される溶媒としては、非アルコール性溶媒、アルコール性溶媒、またはこれらの混合物を挙げることができる。本発明の調合物において有用な溶媒の例としては、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、またはこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。これらの溶媒は、酸化およびラクトン切断による分解がこれらの補助溶媒ではより低い程度にしか発生しないため、特に望ましい。さらに、エタノールとプロピレングリコールを併せて、可燃性が低い生成物を製造することができるが、その混合物中のエタノールの量が多いほど、一般に良好な化学的安定性が得られる。その混合物中、30% v/v〜100% v/vのエタノールの濃度が好ましい。
【0068】
非経口的に許容されるアルコール性補助溶媒中のラパマイシン多形体II型の安定性は、その調合物への抗酸化物質の添加によって向上させることができる。一般に、本発明のこの実施形態において有用な非経口調合物は、その補助溶媒濃縮物の0.001%〜1% w/v、または0.01%〜0.5% w/vの濃度範囲で抗酸化物質を含有するが、より低い濃度またはより高い濃度が望ましい場合もある。抗酸化物質については、d,l−α−トコフェロールが特に望ましく、その補助溶媒濃縮物の0.01%w/v〜0.1%w/vの濃度で使用され、好ましい濃度は、0.075% w/vである。
【0069】
有利なことに、本発明において有用な非経口調合物の一定の実施形態において、水性注入溶液または血液で希釈したときのラパマイシン多形体II型の沈殿は、その希釈溶液に含める界面活性剤の使用により防止することができる。1つの特に望ましい界面活性剤は、下で述べるような、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。しかし、当業者は、他の適する界面活性剤を容易に選択することができる。
【0070】
使用前、前記補助溶媒濃縮物は、希釈溶媒を含む希釈剤および界面活性剤と混合する。ラパマイシン多形体II型を本発明に従って補助溶媒濃縮物として調製するとき、その濃縮物は、0.05mg/mL、2.5mg/mL、5mg/mL、10mg/mLまたは25mg/mLから、約50mg/mLまでの濃度のラパマイシン多形体II型を含有し得る。その濃縮物を、1部の希釈剤に対して約1部の濃縮物まで、希釈剤と混合して、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、20mg/mLから、約25mg/mLまでの濃度のラパマイシン多形体II型を有する非経口調合物を得ることができる。例えば、その非経口調合物中のラパマイシン多形体II型の濃度は、約2.5mg/mLから10mg/mLであり得る。本発明は、補助溶媒濃縮物中のより低い濃度のラパマイシン多形体II型を有する調合物、および1部の濃縮物が1部より多くの希釈剤と混合されている(例えば、約1:1.5、1:2、1:3、1:4、1:5または1:9 v/vなどの比率の濃縮物:希釈剤)調合物、そして最低検出レベルより低いラパマイシン多形体II型濃度を有するラパマイシン多形体II型の非経口調合物に至るまでの調合物の使用を包含する。
【0071】
本開示の目的のために、経皮投与は、上皮組織および粘膜組織をはじめとする体表および体通路の内層にわたるすべての投与を包含すると理解する。こうした投与は、ラパマイシン多形体II型またはその薬学的に許容される塩の使用をローション、クリーム、泡沫、パッチ、懸濁液、溶液および坐剤(肛門坐剤および膣坐剤)で実施することができる。
【0072】
経皮投与は、ラパマイシン多形体II型と、ラパマイシン多形体II型に対して不活性であり、皮膚に対して非毒性であり、皮膚経由で血流に全身吸収させる薬剤の送達を可能ならしめる担体とを含む経皮パッチの使用により、遂行することができる。前記担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲルおよび閉塞用具などの多くの形態をとることができる。クリームおよび軟膏は、粘稠液であってもよいし、水中油型または油中水型いずれかの半固体エマルジョンであってもよい。ラパマイシン多形体II型を含有する鉱油または水性鉱油に分散させた吸収性粉末から成るペーストが適することもある。ラパマイシン多形体II型が担体とともに、もしくは担体を伴わずに入っているレザバーを覆う半透性膜、またはラパマイシン多形体II型を含有するマトリックスなどの様々な閉塞用具を使用して、ラパマイシン多形体II型を血流に放出することができる。他の閉塞用具は、文献の中で知られている。
【0073】
さらなる実施形態において、ラパマイシン多形体II型を含有する組成物は、従来どおりの坐剤の形態で直腸に送達することができる。坐剤調合物は、カカオ脂(坐剤の融点を変えるための追加のワックスを伴うものまたは伴わないもの)およびグリセリンをはじめとする伝統的な材料から作ることができる。水溶性坐剤基剤(例えば、様々な分子量のポリエチレングリコール)を使用することもできる。
【0074】
もう1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型を含有する組成物は、従来どおりの坐剤、クリーム、ゲル、リング、または被覆子宮内避妊器具(IUD)の形態で経膣送達することができる。
【0075】
さらにもう1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型を含有する組成物は、エーロゾルの形態で鼻腔内または気管支内に送達することができる。
【0076】
ラパマイシン多形体II型を含有する本発明の組成物は、抗拒絶反応化学療法薬をはじめとする1つまたはそれ以上の他の薬剤と併用投与することができることもまた企図される。
【0077】
ラパマイシン多形体II型の投薬要件は、提示された症状の重症度、処置する個々の被験体、および投与経路に依存して変わり得る。当業者は、必要なラパマイシン多形体II型の量を容易に決定することができる。1つの実施形態において、約2mg/日〜約100mg/日のラパマイシン多形体II型が投与される。他の実施形態において、ラパマイシン多形体II型は、5mg/日〜75mg/日、10mg/日〜50mg/日、15mg/日〜35mg/日、または約20mg/日〜25mg/日で投与される。
【0078】
処置は、望ましい効果を生じるために必要とされる投薬量より少なく、一般にラパマイシン多形体II型の最適用量より低い投薬量のラパマイシン多形体II型で開始することができる。その後、その環境下で最適な効果が達成されるまで、投薬量を増加させることができる。正確な投薬量は、処置する個々の被験体での経験を基に、投与する医師によって決定される。一般に、本発明の組成物は、有害副作用または有毒副作用を一切伴わずに有効な結果を生じさせる濃度で、最も望ましく投与される。
(VI.ラパマイシン多形体II型を含有する投与可能な組成物を調製する方法)
【0079】
1つの態様において、本発明は、ラパマイシン多形体II型を含有する薬学的組成物の調製方法を包含する。本組成物は、上述したような幾つかの異なる経路により哺乳動物被験体に投与することができ、望ましくは固体または液体の形態で経口投与される。
【0080】
ラパマイシン多形体II型を含有する経口調合物は、錠剤、カプセル、バッカル剤形、トローチ、ロゼンジおよび経口用の液体、懸濁液または溶液をはじめとする、従来から使用されている任意の経口形態を含み得る。ラパマイシン多形体II型を含有するこうした経口調合物は、ラパマイシン多形体II型を1つまたはそれ以上の上記成分とブレンドすることにより形成することができる。1つの実施形態において、本組成物の成分は、乾式または湿式でブレンドされる。もう1つの実施形態において、前記成分は、乾式造粒される。さらなる実施形態において、前記成分は、液体に懸濁または溶解され、哺乳動物被験体への投与に適する形態に添加される。経口調合物は、ラパマイシン多形体II型の吸収を変化させるための標準的な遅延または徐放性調合物も包含し得る。経口調合物は、適切な可溶化剤または乳化剤を必要に応じて含有する、水またはフルーツジュース中のラパマイシン多形体II型の投与からも成り得る。
【0081】
カプセルは、ラパマイシン多形体II型と、上に記載した充填剤および/または希釈剤、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、馬鈴薯またはタピオカデンプン)、糖類、人工甘味料、粉末セルロース(例えば、結晶性および微結晶性のセルロース)、小麦粉、ゼラチン、ゴムなどとの混合物を含むことができる。
【0082】
有用な錠剤調合物は、従来どおりの圧縮、湿式造粒または乾式造粒法により製造することができ、薬学的に許容される希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改質物質(界面活性剤を含む)を利用する。水およびアルコールを含む水性アルコール溶媒(好ましいアルコール成分はエタノールである)を用いて行う湿式造粒が好ましい。
【0083】
ラパマイシン多形体II型を含有する液体形態は、哺乳動物被験体への投与に適する液体にラパマイシン多形体II型を溶解または懸濁させることにより形成することができる。
【0084】
1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型を含有する薬学的組成物の調製方法は、ラパマイシン多形体II型、金属キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、充填剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤を併せることを含む。
【0085】
もう1つの実施形態において、ラパマイシン多形体II型を含有する薬学的組成物の調製方法は、ラパマイシン多形体II型、金属キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、少なくとも1つの充填剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤を併せることを含む。
【0086】
本発明は、本発明において使用するために設計された薬学的組成物のキットまたはパッケージも提供する。本発明のキットは、ラパマイシン多形体II型と上で論じたような哺乳動物被験体への投与に適する担体とを含むことができる。従って、本発明は、哺乳動物の処置に使用するための、ラパマイシン多形体II型を含有する製品を包含する。本発明は、一個体の哺乳動物のための新生物の処置のクールを含む製剤パックも包含し、この場合、前記パックは、単位投薬形態のラパマイシン多形体II型を含む。
【0087】
このように、本発明のラパマイシン多形体II型は、哺乳動物の処置に使用するための薬学的組成物として調合することができ、場合によってはキットの形に組み立てることができる。
(VII.ラパマイシン多形体II型の使用方法)
【0088】
ラパマイシン多形体II型は、ラパマイシンにより処置または予防されることが知られている、当業者には公知の様々な状態の処置または予防に利用することができる。従って、ラパマイシン多形体II型は、免疫抑制活性、抗拒絶反応活性、抗真菌活性、抗炎症活性、抗腫瘍活性および抗増殖活性を有することができる。
【0089】
具体的には、単独でのまたは上述したとおり調製された組成物もしくはキットの状態でのラパマイシン多形体II型は、抗新生物薬として、特に、肉腫および癌腫をはじめとする充実性腫瘍の処置において、より詳細には、星状細胞種、前立腺癌、乳癌、結腸癌、小細胞肺癌および卵巣癌、ならびに成人T細胞白血病/リンパ腫に対して、使用することができる。ラパマイシン多形体II型含有組成物およびキットは、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、膵臓(島細胞)、角膜、小腸および皮膚同種移植片、ならびに心臓弁異種移植片などの移植拒絶反応の処置または抑制;移植片対宿主病の処置または抑制において;自己免疫疾患、例えば狼瘡(全身性エリテマトーデスを含む)、関節リウマチ、糖尿病、重症筋無力症および多発性硬化症;炎症性疾患、例えば、乾癬、皮膚炎、湿疹、脂漏、腸疾患(炎症性腸疾患を含む)、肺の炎症(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、急性呼吸不全症候群、気管支炎などを含む)、心臓炎症性疾患および眼の炎症(例えば、眼のブドウ膜炎);貧血;成人T細胞白血病/リンパ腫;真菌感染;悪性癌腫;高増殖性血管疾患、例えば再狭窄;移植片性血管アテローム硬化症;ならびに心血管疾患、脳血管疾患および末梢血管疾患、例えば、冠動脈疾患、脳血管疾患、動脈硬化症、アテローム硬化症、非アテローム性動脈硬化症、血管損傷後の免疫媒介血管損傷、平滑筋細胞増殖および血管内膜肥厚につながる細胞事象からの血管壁損傷の処置または抑制において;ならびに卒中または多発梗塞性痴呆の抑制にも有用である。
【0090】
適切な薬剤投与計画は、本明細書に提供する情報を基に容易に決定することができる。
以下の実施例は、本発明を例証するために提供するものであり、本発明の範囲を制限しない。たとえ具体的な試薬および条件が以下の実施例の中で略述されていたとしても、変更を行うことができ、それらが本発明の精神および範囲に包含される意味を持つことは、当業者には理解される。
(実施例)
【実施例1】
【0091】
(ラパマイシン多形体II型の調製)
ラパマイシン(3g)を20mLアセトンに溶解した。その後、約40℃から約50℃での回転蒸発装置の使用により減圧下で溶媒を除去して、泡沫を得た。この乾燥泡沫のラパマイシンを約45℃でt−ブチルメチルエーテル(10mL)に溶解し、その後、一晩、室温で保持した。沈殿した白色の結晶を濾過によって回収し、大気中または窒素ガス雰囲気下で約0.5時間から約3時間乾燥させた。合計2.5gのラパマイシン多形体II型を得た。
【実施例2】
【0092】
(ラパマイシン多形体II型のX線回折研究)
【0093】
ラパマイシン多形体II型の粉末XRD分析は、ScintagTMX-2 Advanced Diffraction System装置(米国、Scintag Inc.からのもの)で行った。1.8kWで3.00度から40.00度を1度/分で走査するノーマルフォーカス銅X線管を利用した。データは、コンピュータにより、Diffraction Managemenent SoftwareTMNT(DMSNT)プログラムを用いて収集した。誤差は、0.1°未満であった。
【0094】
サンプルを磨砕して微粉にし、ゼロバックグラウンドプレートを有するキャビティー型サンプルホルダーに詰めた。角度位置(2θ)の粉末X線回折パターンを特徴付けるピーク位置が報告され、比較された。
【0095】
ラパマイシン多形体II型の粉末XRDは、2θで7.0°、9.7°、10.1°、11.0°、12.4°、13.1°、14.1°、14.6°、15.0°、15.2°、15.8°、16.3°、16.6°、17.6°、18.1°、18.3°、19.7°、20.2°および21.2°におけるピークを含んでいた。図1を参照のこと。
【実施例3】
【0096】
(ラパマイシン多形体II型の示差走査熱分析研究)
【0097】
PyrisTMマネージャーソフトウェアで示差走査熱量分析装置(DSC)モデルPyrisTM1(Perkin Elmer)を使用して、ラパマイシン多形体II型を分析した。約4〜5mgのラパマイシン多形体II型をアルミニウム皿に入れ、封止した。そのサンプルを様々な速度(5℃/分、10℃/分および30℃/分)で25℃から220℃に加熱した。窒素ガスを50mL/分でパージした。
【0098】
約188°の吸熱ピークを有する示差走査熱分析サーモグラムを得た。図2を参照のこと。
【0099】
本明細書に引用されているすべての刊行物は、本明細書において参考として援用される。特に好ましい実施形態に言及して本発明を説明したが、本発明の精神を逸脱することなく変更を行うことができることは、理解される。そうした変更は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ると解釈する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、ラパマイシン多形体II型のX線回折(XRD)パターンである。ラパマイシン多形体II型のXRDパターンは、一番上の組のピークであり、標準物質を真ん中に提供し、ラパマイシンのXRDパターンは、一番下の組のピークである。
【図2】図2は、ラパマイシンおよびラパマイシン多形体II型についての示差走査熱分析(DSC)サーモグラムである。ラパマイシンのDSCサーモグラムは、ラパマイシン多形体II型のDSCサーモグラムの下に位置する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約194°の吸熱ピークを欠く示差走査熱分析サーモグラム、ならびに
(b)2θで7.2°、9.9°、10.2°、11.1°、12.5°、14.5°、15.3°、15.5°、16.2°、20.0°、20.4°および21.8°のピークを欠くX線回折ピークパターン
を有するラパマイシン多形体II型。
【請求項2】
次の特徴:
(a)2θで約7°、9.7°、10.1°、11.0°、12.4°、13.1°、14.1°、14.6°、15.0°、15.2°、15.8°、16.3°、16.6°、17.6°、18.1°、18.3°、19.7°、20.2°および21.2°のピークを含むX線回折ピークパターン、ならびに
(b)約188°の吸熱ピークを有する示差走査熱分析サーモグラム、
を有するラパマイシン多形体II型。
【請求項3】
前記サーモグラムが、約194°の吸熱ピークを欠く、請求項2または3に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項4】
t−ブチルメチルエーテル溶媒和分子を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項5】
前記溶媒和分子が、熱重量分析TGAによって判定して、前記II型の約4%を構成する、請求項4に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項6】
前記ラパマイシンの前記溶媒和物に対する分子比が、約2:1である、請求項4に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項7】
t−ブチルメチルエーテルからラパマイシンを再結晶させることによって得られる、ラパマイシン多形体II型。
【請求項8】
非晶質ラパマイシンを高温で前記t−ブチルメチルエーテルに溶解する、請求項7に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項9】
前記高温が、約45℃である、請求項8に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項10】
前記t−ブチルメチルエーテル溶液を約23から約25℃に冷却することをさらに含む、請求項8または請求項9に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項11】
前記ラパマイシン多形体II型が、前記冷却t−ブチルメチルエーテル溶液から沈殿する、請求項10に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項12】
約23℃より低い温度で乾燥させる、請求項7から11のいずれか一項に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項13】
非晶質ラパマイシンおよびt−ブチルメチルエーテルを含む溶液から沈殿させることによって得られるラパマイシン多形体II型。
【請求項14】
前記ラパマイシンを高温で前記t−ブチルメチルエーテルに溶解する、請求項13に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項15】
前記高温が、約45℃である、請求項14に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項16】
前記t−ブチルメチルエーテル溶液を23℃から約25℃に冷却することをさらに含む、請求項14または請求項15に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項17】
約23℃より低い温度で乾燥させる、請求項13から16のいずれか一項に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項18】
前記沈殿が、約45℃またはそれ未満の温度で行われる、請求項13から17のいずれか一項に記載のラパマイシン多形体II型。
【請求項19】
t−ブチルメチルエーテルおよび非晶質ラパマイシンを含む溶液からラパマイシン多形体II型を沈殿させることを含む、ラパマイシン多形体II型を調製するためのプロセス。
【請求項20】
前記非晶質ラパマイシンが、ラパマイシンをアセトンに溶解し、回転蒸発させて泡沫にすることにより調製される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記t−ブチルメチルエーテル溶液が、約40℃から約50℃の温度で維持される、請求項19または請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記t−ブチルメチルエーテル溶液が、約45℃の温度で維持される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記沈殿が、前記t−ブチルメチルエーテル溶液を冷却することによって行われる、請求項19から22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
沈殿したラパマイシン多形体II型を乾燥させることをさらに含む、請求項19から23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
ラパマイシン多形体II型を調製するためのプロセスであって、
(a)初期溶媒にラパマイシンを溶解する工程;
(b)工程(a)における初期溶媒を除去する工程;
(c)工程(b)の生成物をt−ブチルメチルエーテルに溶解する工程;および
(d)該ラパマイシン多形体II型を回収する工程
を含むプロセス。
【請求項26】
前記初期溶媒が、アセトンである、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
ラパマイシン多形体II型を脱溶媒和することを含む、ラパマイシン多形体I型を調製するためのプロセス。
【請求項28】
前記脱溶媒和が、真空を使用して行われる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記脱溶媒和が、高温で行われる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
(a)初期溶媒にラパマイシンを溶解する工程;
(b)工程(a)における該初期溶媒を除去する工程;
(c)工程(b)の生成物をt−ブチルメチルエーテルに溶解する工程;
(d)沈殿したラパマイシン多形体II型を回収する工程;および
(e)該ラパマイシン多形体II型を脱溶媒和する工程
を含むラパマイシン多形体I型を調製するためのプロセス。
【請求項31】
前記脱溶媒和が、真空を使用して行われる、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記脱溶媒和が、高温で行われる、請求項32に記載のプロセス。
【請求項33】
図1のX線回折パターンを有するラパマイシン多形体II型。
【請求項34】
図2の示差走査熱分析サーモグラムを有するラパマイシン多形体II型。
【請求項35】
ラパマイシン多形体II型および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項36】
(i)ラパマイシン多形体II型;および(ii)哺乳動物被験体への投与に適する担体を含むキット。
【請求項37】
(i)ラパマイシン多形体II型;
(ii)金属キレート剤;
(iii)pH調整剤;
(iv)界面活性剤;
(v)少なくとも1つの充填剤;
(vi)結合剤;
(vii)崩壊剤;および
(viii)滑沢剤
のうちの1つまたはそれ以上を併せることを含む、ラパマイシン多形体II型を含む薬学的組成物を調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−510710(P2008−510710A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528004(P2007−528004)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/029364
【国際公開番号】WO2006/023627
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】