説明

ラパマイシン類似体及びパクリタキセルを含む組成物及び薬物送達システム

本発明は、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む薬物送達システム及び組成物、並びにこのようなシステム及び組成物を使用した治療法を提供し、この薬物は、効果及び/又は作用を互いに補完する。少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む支持構造を含む医療装置が開示されており、この担体又は賦形剤は、1種又は複数の治療剤又は治療物質を含むことが可能であり、この担体は、その表面上に少なくとも1つのコーティングを含み、このコーティングは、例えば薬物などの治療物質と結合する。本発明における使用に適切な医療装置のための支持構造には、それだけに限らないが、血管系において使用される冠動脈ステント、末梢ステント、カテーテル、動静脈移植片、バイパス移植片、及び薬物送達バルーンが挙げられる。これらの組成物及び薬物送達システムは、抗増殖剤、抗血小板薬、抗炎症剤、抗血栓剤、細胞毒性薬、サイトカイン又はケモカイン結合を阻害する薬剤、細胞脱分化阻害剤、抗脂血症薬、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、細胞増殖抑制薬、又はこれら及び他の薬物の組合せを含めた他の薬物と組み合わせて使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[01]本発明の実施形態は、免疫調節作用及び/又は抗再狭窄作用を有する新規な化合物、並びにその新規な化合物の調製に有用な合成中間体、並びに特にマクロライド免疫調節剤に関する。より詳細には、本発明は、ラパマイシンの半合成類似体、それらの調製手段、このような化合物を含む医薬組成物及び薬物送達システム、並びにこのような化合物を用いた治療法に関する。
【0002】
[背景技術]
概論
[02]化合物シクロスポリン(シクロスポリンA)は、臓器移植及び免疫調節の分野への導入以来広く使用されるようになり、移植処置の成功率の有意な増加をもたらしてきた。最近、強力な免疫調節作用を有するいくつかのクラスの大環状化合物が、発見された。Okuharaらは、S.ツクバエンシスの系統から単離された23員大環状ラクトンである免疫抑制剤FK−506を含めた、ストレプトミセス属から単離されたいくつかの大環状化合物を開示している(Okuharaら、1986)。
【0003】
[03]C−21位のアルキル置換基がFK−506とは異なるFR−900520及びFR−900523を含めた他の関連する天然物は、S.ヒグロスコピクス・ヤクシムナエンシスから単離されている。S.ツクバエンシスから産生される他の類似体であるFR−900525は、ピペコリン酸部分がプロリン基で置換されている点がFK−506とは異なる。腎毒性を含めた、シクロスポリン及びFK−506と関連する望ましくない副作用によって、局所的に有効であるが全身的には無効な免疫抑制剤を含めた、改善された有効性及び安全性を有する免疫抑制性化合物の探索が続けられてきた(Luly、1995)。
【0004】
ラパマイシン
[04]ラパマイシンは、ストレプトミセス・ヒグロスコピクスによって産生される大環状トリエン抗生物質であり、in vitro及びin vivoの両方で、特にカンジダ・アルビカンスに対して抗真菌作用を有することが見出された(Bakerら、1978;Sehgal、1975;Sehgal、1976;Sehgalら、1975;Vezinaら、1975)。
【化1】

【0005】
[05]ラパマイシン単独(Surendra、1989)又はピシバニールと組み合わせたラパマイシン(Eng、1983)は、抗腫瘍作用を有することが示されている。1977年に、ラパマイシンはまた、多発性硬化症についてのモデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎モデル、関節リウマチについてのモデルであるアジュバンド関節炎モデルにおいて免疫抑制剤として効果的であることも示され、IgE様抗体の形成を効果的に阻害することが示された(Martelら、1977)。
【0006】
[06]ラパマイシンの免疫抑制効果はまた、EASEB、1989,3,3411において、組織不適合性げっ歯類における臓器移植片の生存時間を延長させる能力を有することが開示されている(Morris及びMeiser、1989)。T細胞の活性化を阻害するラパマイシンの能力は、M.Strauchによって開示されている(FASEB、1989,3,3411)。ラパマイシンのこれら及び他の生物学的作用は、以前概説されている(Morris、1992)。
【0007】
[07]ラパマイシンは、動物モデルにおいて新生内膜増殖を低減し、ヒトにおいて再狭窄率を減少させることが示された。ラパマイシンはまた、関節リウマチの治療のための薬剤としてのその選択を支持する特性である抗炎症効果も示すことを明らかにした証拠が公表されている。細胞増殖及び炎症の両方が、バルーン血管形成及びステント留置後の再狭窄病変の形成における原因因子であると考えられるので、再狭窄の防止のためにラパマイシン及びその類似体が提案された。
【0008】
[08]ラパマイシンのモノエステル及びジエステル誘導体(31位及び42位でのエステル化)は、抗真菌剤(Rakhit、1982)として、及びラパマイシンの水溶性プロドラッグ(Stella、1987)として有用であることが示されている。
【0009】
[09]ラパマイシン及び30−脱メトキシラパマイシンの発酵及び精製は、文献(Paivaら、1991;Sehgalら、1983;Sehgalら、1975;Vezinaら、1975)に記載されている。
【0010】
[010]ラパマイシンの多くの化学修飾が試みられてきた。これらには、ラパマイシンのモノエステル及びジエステル誘導体(Caufield、1992)、ラパマイシンの27−オキシム(Failli、1992a)、ラパマイシンの42−オキソ類似体(Caufield、1991)、二環式ラパマイシン(Kao、1992a)、ラパマイシン二量体(Kao、1992b)、ラパマイシンのシリルエーテル(Failli、1992b)、及びアリールスルホネート及びスルファメート(Failli、1993)の調製が挙げられる。ラパマイシンは、その天然のエナンチオマー形態で最近合成された(Haywardら、1993;Nicolaouら、1993;Romoら、1993)。
【0011】
[011]ラパマイシンは、FK−506と同様に、FKBP−12に結合することが知られている(Biererら、1991;Dumontら、1990;Fretzら、1991;Hardingら、1989;Siekierkaら、1989)。ラパマイシン/FKBP−12複合体は、FK−506/FKBP−12複合体が阻害するタンパク質であるカルシニューリンとは異なる、さらに他のタンパク質に結合することが最近発見された(Brownら、1994;Sabatiniら、1994)。
【0012】
[012]他の薬物が、望ましくない細胞増殖に対処するために使用されてきた。これらの例はパクリタキセルである。タイヘイヨウイチイ(セイヨウイチイ)から抽出された複合アルカロイドであるパクリタキセルは、細胞分裂に重要な細胞骨格の成分(チューブリン、微小管の構成単位)を安定化し、それによって細胞増殖を妨げる(Miller及びOjima、2001)。
【0013】
ステント
[013]経皮的冠動脈形成術(PTCA)は、1970年代にAndreas Gruentzigによって開発された。最初のイヌの冠動脈拡張は、1975年9月24日に実施された。PTCAの使用を示す試験は、翌年米国心臓協会の年次会合で発表された。その後まもなく、スイスのチューリヒで初めてのヒト患者が試験され、続いてサンフランシスコ及びニューヨークで最初のアメリカ人の患者が試験された。この処置は閉塞性冠動脈疾患を有する患者の治療に関する心臓インターベンション治療を変化させたが、それは長期間な解決法を実現しなかった。患者は、血管閉塞に関連する胸痛の一時的軽減を得たに過ぎず、繰り返しの処置が必要であることが多かった。再狭窄病変の存在がこの新しい処置の有用性を大幅に制限していると判断された。1980年代後半に、血管形成術後の管の開存性を維持するためにステントが導入された。ステント術は今日行われる血管形成術の90%に関与している。ステント導入以前は、再狭窄率はバルーン血管形成術で治療される患者の30%〜50%の範囲であった。ステント内再狭窄の拡張後の再発率は、選択された患者のサブセットにおいて70%の高さに上ることがあるが、新たなステント留置の場合の血管造影での再狭窄率は約20%である。ステント留置は、再狭窄率を15%〜20%に減少させた。この割合は、純粋に機械的なステント術によって得られる最良の結果を表すと思われる。再狭窄病変は主として新生内膜過形成によって引き起こされ、この新生内膜過形成は、時間経過及び組織病理学的出現の両方においてアテローム性動脈硬化症とは明瞭に異なる。再狭窄は、新生内膜組織が血管内腔上を著しく侵す、障害を受けた冠動脈壁の治癒過程である。血管近接照射療法は、ステント内再狭窄病変に対して効果的であると思われる。しかし、照射には、実用性及び費用についての制限があり、安全性及び耐久性について長期間に亘る疑問がある。
【0014】
ステント及び併用療法
[014]インターベンション装置の社会によって取り組まれてきた薬物送達ステントを作製し評価する主要な努力は、再狭窄を少なくとも50%減少させることによって当初の目標を達成した。しかし、再狭窄を防止し及び治療するための安全で効果的な手段を提供する、改善された局所薬物送達装置、例えば、薬物が含浸されたポリマーコーティングのステントに対する必要性が依然として存在する。例えば、単一の薬物を送達する2種の市販のステントは、再狭窄を減少させて患者転帰を改善するが、再狭窄を解消せず、有害な安全性の問題が皆無ではない。患者、特に糖尿病患者、小血管を有する患者、及び急性冠動脈症候群を有する患者を含めた特にリスクの高い患者は、改善した性能を有するステントを含めた局所薬物送達装置から恩恵を受けることができた。薬物の組合せを含む薬物送達装置は公知である。しかし、局所的に投与される、例えばステントから送達される、特に効果的な薬物の組合せについて、当技術分野では教示されていないように思われる。例えば、及び下記でさらに論じるように、Faloticoは、ラパマイシン単独又はデキサメタゾン単独のいずれかを送達するステントよりも新生内膜面積、面積狭窄率、及び炎症スコアを減少させるのに「はるかに非効果的」であったラパマイシン/デキサメタゾンの組合せを含めたEVA−PBMAポリマーコーティングされたステントを教示する(Falotico、2003)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】[015]サルに投与したテトラゾール含有ラパマイシン類似体の血中濃度±SEM(n=3)を示す。
【図2】[016]本発明における使用に適切なステントを示す立面図である。
【図3A】[017]中にポリマーのみをコーティングしたステントが配置された管セグメントの横断面図である。
【図3B】[018]中にポリマープラス薬物でコーティングしたステントが配置された管セグメントの横断面図である。
【図4】[019]ヒトにおけるゾタロリムス(ABT−578とも称される)の単回漸増静脈内用量の線形目盛平均血中濃度−時間プロットを示す。
【図5】[020]ヒトにおけるゾタロリムスの単回漸増静脈内用量の後の対数線形目盛平均血中濃度−時間プロットを示す。
【図6】[021]ヒトにおける単回漸増静脈内用量の後のゾタロリムスのCmax及びAUCパラメーターの用量比例を示す。
【図7】[022]ヒトにおける複数回静脈内投与の後のゾタロリムスの平均血中濃度−時間プロットを示す。
【図8a−c】[023]200μg、400μg及び800μgQD(毎日)用量群について、1日目(図8a)、14日目(図8b)、及び1〜14日目(図8c)の、ゾタロリムスの平均血中濃度−時間プロファイルを示す。
【図9】[024]800μgQD用量群の1日目から14日目までの観察したゾタロリムス濃度−時間データを示す。
【図10A】[025]タクロリムスが、平滑筋細胞中でゾタロリムスの増殖抑制作用をin vitroで遮断することを示す(図10A)。
【図10B−C】平滑筋細胞(図10B)及び内皮細胞(図10C)中のゾタロリムス、パクリタキセル(P)及びこれらの組合せのin vitro増殖抑制作用もまた示されている。血清及び増殖因子によって刺激された細胞の新たに合成されたDNAへのH−チミジンの組込みを測定することによって、増殖が決定された。データは、記載されている場合を除き3つの試験の平均±SEMである。
【図10D−G】図10D−Gは、平滑筋細胞中のゾタロリムス及びパクリタキセルの組合せの増殖抑制作用のアイソボログラム分析を示す。特定のレベルの増殖抑制作用を生じさせる濃度を、平均データの非線形曲線の当てはめから作成された用量反応曲線から決定した。
【図10H−K】図10H−Kは、内皮細胞中のゾタロリムス及びパクリタキセルの組合せの増殖抑制作用のアイソボログラム分析を示す。特定のレベルの活性を生じさせる化合物の濃度を、平均データから決定した。
【図10L−M】図10L−Mは、hCaSMC及びhCaEC中の(ゾタロリムスとも称される)ABT−578及びパクリタキセルの組合せの増殖抑制作用の併用指数(CI)分析を示す。CIレベルは、Chou及びTalalayの方法(Chou及びTalalay、1984)を使用して平均データから決定した。
【図11】[026]パクリタキセル(7μg/mm)単独、パクリタキセル(7μg/mm)及びゾタロリムス(10μg/mm)、パクリタキセル(3.5μg/mm)及びゾタロリムス(5μg/mm)、又はパクリタキセル(1μg/mm)及びゾタロリムス(10μg/mm)を添加したステントからのパクリタキセル放出を示す。
【図12】[027]パクリタキセル(7μg/mm)単独、パクリタキセル(7μg/mm)及びゾタロリムス(10μg/mm)、パクリタキセル(3.5μg/mm)及びゾタロリムス(5μg/mm)、又はパクリタキセル(1μg/mm)及びゾタロリムス(10μg/mm)を添加したステントからのパクリタキセル放出割合を示す。
【図13】[028]ゾタロリムス(10μg/mm)単独、パクリタキセル(7μg/mm)及びゾタロリムス(10μg/mm)、パクリタキセル(3.5μg/mm)及びゾタロリムス(5μg/mm)、又はパクリタキセル(1μg/mm)及びゾタロリムス(10μg/mm)を添加したステントからのゾタロリムス放出を示す。
【図14】[029]ブタ血管内への薬物送達(単回及び複数回)ステント及び非薬物送達ステントの移植28日後の新生内膜面積を示す(30%過伸張)。四角の中の数字は、群毎のステントの数を示す。
【図15】[030]ブタ血管内への薬物送達(単回及び複数回)ステント及び非薬物送達ステントの移植28日後の新生内膜の厚さ(30%過伸張)を示す。四角の中の数字は、群毎のステントの数を示す。
【図16】[031]ブタ血管内への薬物送達(単回及び複数回)ステント及び非薬物送達ステントの移植28日後の面積狭窄率(30%過伸張)を示す。四角の中の数字は、群毎のステントの数を示す。
【図17】[032]28日間のブタ試験からの組合せステントについての新生内膜面積測定(30%過伸張)の比較を示す。
【図18】[033]28日間のブタ試験からの組合せステントについての面積狭窄率測定(30%過伸張)の比較を示す。
【図19a−e】[034]各群の平均新生内膜面積を表すブタ試験からの代表的血管の断面の顕微鏡写真を示す。図19a:TriMaxx(商標)ステント;図19b:ZoMaxx(商標)ステント;図19c:Cypher(登録商標)ステント;図19d:Taxus(登録商標)ステント;図19e:ゾタロリムス及びパクリタキセル各々を10μg/mm対1μg/mmの比で含有するステント。
【0016】
[発明の概要]
[035]本発明のいくつかの実施形態は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤と、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含有する治療組成物とを含有する支持構造を含む薬物送達システムを対象とし、このシステムが対象の体内の管(例えば、血管)中に移植された時、対照システムと比較した場合、新生内膜過形成が減少、阻害又は妨げられる。対象は哺乳動物(例えば、ヒト、ブタなど)でよい。支持構造は、医療装置(例えば、ステント)又はその部分でよい。少なくとも1つのコーティングが、医療装置上に配置され、治療組成物を含有することができる。ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは、10:7≦γ≦10:0.01である。一実施形態では、γ=10:1である。他の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmである。薬物送達システムは、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質を含むことができる。
【0017】
[036]本発明の他の実施形態は、体内の管(例えば、血管)中の新生内膜過形成を減少、阻害又は防止するための、薬物の制御放出送達を提供するシステムに関する。このシステムは、ゾタロリムス又はその塩、プロドラッグ若しくは誘導体、及びパクリタキセル又はその塩、プロドラッグ若しくは誘導体を含む複数の治療物質/薬剤を含み、治療物質/薬剤の活性は補完的である。このシステムは、医療装置(例えば、ステント)を含むことができ、少なくとも1つのコーティングは、装置の上に配置することができ、治療物質を含有することができる。ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは、10:7≦γ≦10:0.01である。一実施形態では、γ=10:1である。他の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmである。このシステムは、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質を含むことができる。
【0018】
[037]本発明のさらに他の実施形態は、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む医薬組成物を対象とし、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは、10:7≦γ≦10:0.01であり、対象への局所送達のために組成物を製剤することができ、組成物が対象の体内の管に(例えば、医療装置を介して)投与された場合、体内の管(例えば、血管)中の新生内膜過形成は、減少、阻害又は防止される。医薬組成物は、医療装置(例えば、ステント)と結合することができる。少なくとも1つのコーティングを、医療装置の上に配置することができ、医薬組成物を含有することができる。対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、ブタなど)でよい。一実施形態では、γ=10:1である。他の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmである。医薬組成物は、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質を含むことができる。
【0019】
[038]本発明のさらなる実施形態は、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む組成物に関し、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは、10:7≦γ≦10:0.01であり、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、効果及び/又は作用を互いに補完する。組成物は、医療装置(例えば、ステント)と結合することができ、この装置を介して局所投与することができる。少なくとも1つのコーティングは、医療装置の上に配置されることができ、組成物を含有することができる。対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、ブタなど)でよい。一実施形態では、γ=10:1である。他の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmである。組成物は、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質を含むことができる。
【0020】
[039]本発明の他の実施形態は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞症、尿管閉塞症並びに腫瘍閉鎖から選択される障害を治療又は予防する方法を対象とし、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比(γ)は、10:7≦γ≦10:0.01である)を含有する本明細書に記載する薬物送達システム又は組成物のいずれかを対象に移植又は投与するステップを含む。一実施形態では、γ=10:1である。
【0021】
[040]本発明のさらなる他の実施形態は、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含有する、本明細書に記載する薬物送達システム又は組成物のいずれかを含むキットに関し、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは、10:7≦γ≦10:0.01である。一実施形態では、γ=10:1である。
【0022】
[041]本発明のさらなる実施形態は、医療装置(例えば、ステント)を含む薬物送達システムを対象とし、この装置の上にゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含有する少なくとも1種の治療組成物と結合する少なくとも1つのコーティングが配置され、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは10:7≦γ≦10:0.01であり、このシステムが対象の体内の管中に移植された場合、対照システムと比較した場合、体内の管(例えば、血管)中の新生内膜過形成が、減少、阻害又は防止され、新生内膜過形成が、対照システムと比較した場合、≧10%減少又は阻害される。一実施形態では、γ=10:1である。他の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmである。薬物送達システムは、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質を含むことができる。
【0023】
[042]本発明のまたさらなる実施形態は、体内の管(例えば、血管)中の新生内膜過形成を治療、減少、阻害又は防止するための薬物の制御放出送達を提供するシステムに関し、このシステムは、医療装置(例えば、ステント)を含み、この装置の上にゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む少なくとも1つのコーティングが配置され、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは、10:7≦γ≦10:0.01であり、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、効果及び/又は作用を互いに補完する。一実施形態では、γ=10:1である。他の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmである。このシステムは、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質を含むことができる。
【0024】
[発明の詳細な説明]
定義
[043]用語「プロドラッグ」とは、代謝され、又はin vivoで加水分解を受け、薬物若しくはその活性成分が形成される、化学的部分又は生物学的部分によってより活性が低くなっている薬剤を意味する。用語「プロドラッグ」は、「プロ薬剤」、「潜伏化薬物」、「生体可逆性誘導体」、及び「同族体」などの用語と互換的に使用することができる。N.J.Harper、Drug latentiation、Prog.Drug Res.、4:221〜294(1962);E.B.Roche、Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs、Washington,DC:American Pharmaceutical Association(1977);A.A.Sinkula及びS.H.Yalkowsky、Rationale for design of biologically reversible drug derivatives:prodrugs、J.Pharm.Sci.、64:181〜210(1975)。用語「プロドラッグ」の使用は、薬物と化学部分との間の共有結合を通常意味するが、何名かの著者はまた、活性薬物分子の塩のいくつかの形態を記述するためにそれを使用する。プロドラッグ自体の厳密な普遍的定義はなく、その定義も著者によって変わる場合があるが、プロドラッグは一般に、in vivoの酵素的若しくは非酵素的効果、治療効果、予防的効果又は診断効果を発揮する活性若しくはより活性の薬物分子に変換することができる薬理学的により活性でない化学的誘導体として定義することができる。Sinkula及びYalkowsky、上記;V.J.Stellaら、Prodrugs:Do they have advantages in clinical practice?、Drugs、29: 455〜473(1985)。プロドラッグの徹底的な議論はまた、Higuchi及びV.Stella(Higuchi及びStella、1987)及びRoche(Roche、1987)により提供されている。
【0025】
[044]用語「薬学的に許容されるプロドラッグ」とは、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、及びアレルギー反応を伴わずにヒト及び下等哺乳動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合っており、それらの使用目的のために効果的である、本発明の実施形態における化合物のプロドラッグと、可能であれば本発明の化合物の双性イオン形態とを意味する。本発明の他の薬学的に許容されるプロドラッグは、本発明の化合物のC−31ヒドロキシル基のプロドラッグエステルである。
【0026】
[045]さらに他の実施形態では、ゾタロリムスプロドラッグには、
【化2】


R=−RC(O)R又は−RC(S)R
(式中、R=O又はSであり、
=存在しない、O、N、S、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリールであり、
=存在しない、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリールであり、
アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい)が含まれる。
【0027】
[046]用語「プロドラッグエステル」とは、生理的条件下で加水分解されるエステル形成基を意味する。プロドラッグエステル基の非限定的例には、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、メトキシメチル、インダニルなど、並びに本発明の化合物のC−31ヒドロキシル基への天然又は非天然アミノ酸のカップリングから誘導されるエステル基が挙げられる。
【0028】
[047]本明細書で使用する場合、「コドラッグ」は、特定の薬理効果を達成するために他の薬物と共に同時又は順次に投与される薬物である。効果は、一般又は特異的な場合がある。コドラッグは、他の薬物の効果とは異なる効果を発揮する場合があり、又は他の薬物の効果を促進、亢進又は増強する場合がある。
【0029】
[048]血液と接触する医療装置との関連において、「治癒促進」薬物又は薬剤は、動脈内腔の再内皮化を促進又は向上させ血管組織の治癒を促進する特性を有する薬物又は薬剤を意味する。
【0030】
[049]「生理的条件」とは、基材(例えば、物質、組成物、医療装置、薬物送達システムなど)が、動物(例えば、ヒト)の体内で曝されている条件を意味する。生理的条件には、それだけに限らないが、動物のその種の「正常」体温(ヒトでは約37℃)並びに生理的イオン強度、pH及び酵素の水性環境が挙げられる。生理的条件はまた、動物のその種にとって「正常」であると見なされない身体的条件(例えば、体温)を含むことができる。
【0031】
[050]本明細書で使用する場合、「医療装置」は、ヒト又はヒトではない動物に移植することができ、医療機能を果たすことができる任意の適切な基材でよい。医療装置の例には、それだけに限らないが、自動拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、冠動脈ステント、末梢ステント、ステント移植片、カテーテル、様々な体内の管腔又は開口部のための他の拡張型管状装置、移植片、血管移植片、動静脈移植片、バイパス移植片、ペースメーカー及び除細動器、前述のためのリード及び電極、人工心臓弁、吻合クリップ、動脈閉鎖装置、卵円孔開存閉鎖装置、脳脊髄液シャント、並びに粒子(例えば、薬物送達粒子、微粒子及びナノ粒子)が挙げられる。ステントは、神経、頸動脈、静脈移植片、冠状動脈、大動脈、腎臓、腸骨、大腿骨、膝窩の血管系、及び尿道を含めた体内の任意の管を対象とすることができる。
【0032】
[051]医療装置は、1種又は複数の治療剤の局所送達のために設計することができる。薬剤添加医療装置は、例えば、装置を1種又は複数の治療剤を含有するコーティング材料でコーティングすることによって部分的に作製することができる。装置の本体もまた、1種又は複数の治療剤を含有することができる。
【0033】
[052]医療装置は、部分的又は完全に生分解性/生体侵食性/生体吸収性/生体再吸収性ポリマー(複数可)、非分解性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せを含有する1種又は複数のコーティングで作製することができる。医療装置それ自体はまた、生分解性/生体侵食性/生体吸収性/生体再吸収性のポリマー(複数可)、非分解性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せから部分的又は完全に作製することができる。
【0034】
[053]ポリマー又はポリマー材料(例えば、ポリマーコーティング)の「完全な」分解は、ポリマー又はポリマー材料が、ある期間に亘ってその質量の少なくとも約95%を失うことを意味する。
【0035】
[054]ポリマー又はポリマー材料(例えば、ポリマーコーティング)の「実質的に完全な」分解とは、ポリマー又はポリマー材料が、ある期間に亘ってその質量の少なくとも約75%を失うことを意味する。特定の実施形態では、ポリマー又はポリマー材料の「実質的に完全な」分解は、ポリマー又はポリマー材料が、ある期間に亘ってその質量の少なくとも約80%、又はその質量の少なくとも約85%、又はその質量の少なくとも約90%、又はその質量の少なくとも約95%を失うことを意味する場合がある。
【0036】
[055]本明細書で使用する場合、医療装置の「部分」は、装置の任意の部分でよい。例えば、部分は、装置の本体の部分でよい。他の例として、部分は、装置の表面の部分、又は装置の全表面でよい。さらなる例として、部分は、本体中の材料又は装置の表面上の領域、例えば、装置の上に配置されている層、フィルム又はコーティングを意味する場合がある。
【0037】
[056]示した基材(例えば、医療装置)の「上に配置された」層又はフィルム(例えば、コーティング)として説明されている材料は、例えば、基材の表面の少なくとも一部分の上に直接的又は間接的に配置されている材料のコーティングを意味する。直接的配置とは、コーティングが基材の露出した表面に直接付着していることを意味する。間接的配置とは、コーティングが、基材の上に直接的又は間接的に配置されている介在層に付着していることを意味する。
【0038】
[057]用語「支持構造」とは、治療剤(複数可)又は薬学的に許容される担体(複数可)又は賦形剤(複数可)、又はその組合せを含むことができる又は支持することができるフレーム構造を意味する。担体(複数可)又は賦形剤(複数可)はまた、治療剤(複数可)を含んでもよい。支持構造は、金属、合金、ポリマー材料、又はこれらの組合せで形成することができる。生分解性ポリマー、生体安定性ポリマー、又はこれらの組合せを含むポリマー材料で形成され、治療剤を含むことのできる適切な支持構造には、これらだけに限定されないが、両方とも本明細書において参照により組み込まれている米国特許第6,413,272号明細書及び同第5,527,337号明細書(Igaki、2002;Stackら、1996)において開示されているものが挙げられる。
【0039】
[058]いくつかの実施形態では、支持構造は医療装置でよい。他の実施形態では、支持構造は、医療装置の部分でよい。例えば、支持構造は、医療装置の上に配置されたコーティングでよい。
【0040】
[059]「治療物質/剤」は、適切な用量で適切に対象に投与された場合、対象に対して有益な効果を有する任意の物質又は薬剤を意味する。
【0041】
[060]「補完的」とは、薬剤の全体的な医薬効果及び/又は作用が組合せによる利益を得る、組み合わされた少なくとも2種の治療剤によって示される挙動を意味する。いくつかの実施形態では、このような組合せは、相加効果及び/又は作用を有することができる。他の実施形態では、組合せは、相乗効果及び/又は作用を有することができる。さらに他の実施形態では、組合せは、別々であるが有益な効果及び/又は作用を有することが可能であり、各薬剤が対象において全体的に所望の薬理効果及び/又は作用の一因となり、他の薬剤の効果及び/又は作用を減少させない。
【0042】
[061]「対象」とは、脊椎動物を意味する。脊椎動物の非限定的例には、これらだけに限らないがヒト、類人猿、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ラット、マウス、及びモルモットを含めた哺乳動物が挙げられる。
【0043】
[062]用語「アルキル」は、O、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有してもよい、任意選択で置換された直鎖又は分岐状、飽和又は不飽和炭化水素基を意味する。不飽和である場合、アルキル基は、1つ若しくは複数の二重結合及び/又は1つ若しくは複数の三重結合を含有してもよい。アルキル基の例には、それだけに限らないが、メチル、エチル、エチレニル、エチニル、n−プロピル、イソプロピル、プロペニル、プロピニル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、第三級ブチル、ブテニル、ブチニル、n−ペンチル、イソペンチル、ペンテニル、及びペンチニルが挙げられる。
【0044】
[063]用語「シクロアルキル」は、O、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有してもよい、任意選択で置換された飽和又は不飽和、単環式又は多環式炭化水素部分を意味する。不飽和である場合、シクロアルキル基は、環状部分の1つ又は複数の環中及び/又は環外に、1つ若しくは複数の二重結合及び/又は1つ若しくは複数の三重結合を含有してもよい。シクロアルキル基の例には、それだけに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、デカヒドロナフチル、及びオクタヒドロインデニルが挙げられる。
【0045】
[064]用語「ヘテロシクロアルキル」は、環状部分中の少なくとも1つの環がO、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有するシクロアルキル基を意味する。ヘテロシクロアルキル基の例には、それだけに限らないが、アジリジニル、オキシラニル、オキソラニル、チオラニル、ピロリジニル、3−ピロリニル、ジオキサラニル、1,3−ジチオラニル、オキサゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサニル、ピペリジニル、ピペラジニル、1,3−ジオキサニル、1,4−ジオキサニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロベンゾチオフェン、オクタヒドロクロメニル、及びデカヒドロキノリニルが挙げられる。
【0046】
[065]用語「アリール」は、部分中の少なくとも1つの環が芳香族である、任意選択で置換された単環式又は多環式芳香族部分を意味する。部分中の環(複数可)は、炭素環でよく、又はO、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有してもよい。部分中の環(複数可)は、芳香族又は非芳香族(飽和又は不飽和)でよいが、部分中の少なくとも1つの環は芳香族である。アリール基の例には、それだけに限らないが、フェニル、インドリニル、イソインドリニル、2,3−ジヒドロベンゾフリル、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、クロマニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、ナフチル、インデニル、及びインダニルが挙げられる。
【0047】
[066]用語「ヘテロアリール」は、芳香族部分中の少なくとも1つの環(芳香族又は非芳香族)がO、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有するアリール基を意味する。ヘテロアリール基の例には、それだけに限らないが、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、[1,7]ナフチリジニル、クロメニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、プリニル、ピリダジニル、キノリニル、イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、ピリド[2,3−d]ピリミジニル、ピリミド[3,2−c]ピリミジニル、及びピロロ[2,3−d]ピリミジニルが挙げられる。
【0048】
[067]いくつかの実施形態では、用語「複素環」は、ヘテロシクロアルキル基を意味することが可能である。他の実施形態では、「複素環」は、ヘテロアリール基を意味することが可能である。
【0049】
[068]アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、複素環、アリール、及びヘテロアリール基は、置換又は非置換でよい。置換されている場合、それらは1〜5つの置換基を含有してもよい。置換基には、それだけに限らないが、任意選択で置換されている炭素含有基、例えば、アルキル、シクロアルキル及びアリール(例えば、ベンジル);ハロゲン原子(すなわち、F、Cl、Br及びI)及び任意選択で置換されているハロゲン含有基、例えば、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル);任意選択で置換されている酸素含有基、例えば、オキソ、アルコール(例えば、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アリール(ヒドロキシル)アルキル)、及びエーテル(例えば、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル);任意選択で置換されているカルボニル含有基、例えば、アルデヒド(例えば、カルボキサルデヒド)、ケトン(例えば、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールカルボニルアルキル)、カルボキシ酸(例えば、カルボキシ、カルボキシアルキル)、エステル(例えば、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルカルボニルオキシアルキル)、カルボネート、チオエステル、アミド(例えば、アミノカルボニル、モノ又はジアルキルアミノカルボニル、アミノカルボニルアルキル、モノ又はジアルキルアミノカルボニルアルキル、アリールアミノカルボニル、アルキルアリールアミノカルボニル)、カルバメート(例えば、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、モノ又はジアルキルアミノカルボニルオキシ、アリールアミノカルボニルオキシ、アルキルアリールアミノカルボニルオキシ)、及び尿素(例えば、モノ又はジアルキルアミノカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニルアミノ、アルキルアリールアミノカルボニルアミノ);カルボニル誘導体を含有する任意選択で置換されている基、例えば、イミン、オキシム、及びチオ尿素;任意選択で置換されている窒素含有基、例えば、アミン(例えば、アミノ、モノ又はジアルキルアミノ、モノ又はジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アミノアルキル、モノ又はジアルキルアミノアルキル)、アジド、ニトリル(例えば、シアノ、シアノアルキル)及びニトロ;任意選択で置換されている硫黄含有基、例えば、チオール、スルフィド、チオエーテル、スルホキシド、スルホン及びスルホンアミド(例えば、スルフヒドリル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオアルキル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアルキル);及びO、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含有する任意選択で置換されている芳香族又は非芳香族複素環基(例えば、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピロニル、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピペリジル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、モルホリニル、チアナフチル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、オキシインドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリニル、7−アザインドリル、ベンゾピラニル、クマリニル、イソクマリニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、キナゾリニル、ピリドピリジル、ベンゾオキサジニル、キノキサリニル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、フタラジニル、カルボリニル)が挙げられる。
【0050】
[本発明の実施形態]
化合物
[069]本発明の化合物は、式
【化3】


の化合物である。
【0051】
[070]本発明の他の化合物は、式
【化4】


の化合物である。
【0052】
薬物送達システム
[071]本発明のいくつかの実施形態は、治療有効量のゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及び治療有効量のパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含有する組成物を含む薬物送達システムを対象とし、このシステムを対象の体内の管中に移植した場合、体内の管中の新生内膜過形成が、減少、阻害又は防止される。一実施形態では、対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、ブタなど)である。特定の実施形態では、体内の管は血管である。
【0053】
[072]いくつかの実施形態では、薬物送達システムは、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩のために別々に、パルス放出、バースト放出、持続放出及び制御放出プロファイルの1つ又は組合せを含む薬物放出プロファイルを有する。一実施形態では、このシステムは、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の制御放出を実現する。
【0054】
[073]特定の実施形態では、薬物送達システムは、12カ月まで、又は6カ月まで、又は3カ月まで、又は2カ月まで、又は1カ月までの期間に亘る、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の持続放出を実現する。一実施形態では、このシステムは、2カ月までの期間に亘って、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の持続放出を実現する。他の実施形態では、このシステムは、1カ月までの期間に亘って、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の持続放出を実現する。
【0055】
[074]さらに別の実施形態では、薬物送達システムは、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の同時放出を実現する。
【0056】
[075]薬物送達システムの一実施形態では、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、局所に送達された場合、効果及び/又は作用を互いに補完する。他の実施形態では、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、相加効果を及ぼすゾタロリムスとパクリタキセル(又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩)との比(γ)で存在する。
【0057】
[076]薬物送達システムの特定の実施形態では、新生内膜過形成は、対照システムと比較した場合、≧10%、又は≧15%、又は≧20%減少又は阻害される。一実施形態では、新生内膜過形成の減少又は阻害は、新生内膜面積測定、新生内膜の厚さ測定及び面積狭窄率測定から選択される少なくとも1つの測定方法によって測定される。
【0058】
[077]薬物送達システムのいくつかの実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γは、10:7≦γ≦10:0.01である。他の実施形態では、γは、1:1≦γ≦5:1、又は5:1≦γ≦10:1、又は10:1≦γ≦20:1、又は20:1≦γ≦100:1、又は100:1≦γ≦1000:1の範囲である。特定の実施形態では、γ=10:1である。
【0059】
[078]薬物送達システムのいくつかの実施形態は、支持構造をさらに含む。一実施形態では、支持構造は、組成物と結合する。他の実施形態では、支持構造は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有する。特定の実施形態では、支持構造は、医療装置の少なくとも一部分の上に配置されたコーティングである。
【0060】
[079]他の実施形態では、支持構造は医療装置である。特定の実施形態では、医療装置は、ステント、移植片、ステント移植片、カテーテル、リード、電極、クリップ、シャント、閉鎖装置、弁、及び粒子から選択される。特定の実施形態では、医療装置はステントである。
【0061】
[080]医療装置(例えば、ステント)が支持構造であるいくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティングは、装置の少なくとも一部分の上に配置され、コーティングは組成物を含む。薬物コーティングされたステントの特定の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmステント長である。
【0062】
[081]特定の実施形態では、少なくとも1つのコーティングは、生分解性ポリマー(複数可)、非分解性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せを含む。一実施形態では、コーティングは、少なくとも1種の生分解性ポリマーを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのコーティングは、約24カ月、又は約12カ月、又は約6カ月、又は約3カ月、又は約2カ月、又は約1カ月以内に、完全又は実質的に完全に分解される。特定の実施形態では、コーティングは、約12カ月以内又は約6カ月以内に、完全又は実質的に完全に分解される。
【0063】
[082]コーティングされた医療装置(例えば、コーティングされたステント)のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティングは、≦約30ミクロン、又は≦約20ミクロン、又は≦約10ミクロンの厚さを有する。一実施形態では、コーティングは、≦約10ミクロンの厚さを有する。
【0064】
[083]薬物送達システムの他の実施形態は、少なくとも1種のさらなる治療物質を含む。特定の実施形態では、少なくとも1種のさらなる治療物質は、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される。一実施形態では、抗炎症性物質(複数可)は、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、クロベタゾール、アダリムマブ及びスリンダクを含めた、ステロイド性抗炎症剤及び非ステロイド性抗炎症剤及び生物学的製剤から選択される。
【0065】
[084]特定の実施形態では、少なくとも1種のさらなる治療物質は、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬物、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、及びこれらの組合せから選択される。
【0066】
[085]一実施形態では、少なくとも1種のさらなる治療物質は、抗体を含む。抗体は、全抗体又は抗体の部分(例えば、1つ又は複数の抗体フラグメント)でよい。抗体又はその部分は、任意の動物種(例えば、ヒト、マウス、ウサギなど)に由来することが可能であり、したがって異種又はヒトでよい。さらに、抗体又はその部分は、キメラ又はヒト化又は融合タンパク質でよい。さらに、抗体若しくはその部分は、さらなる治療物質でよく、又はさらなる治療物質に共役若しくは融合してもよい。
【0067】
[086]他の実施形態では、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、少なくとも1種のさらなる治療物質の効果及び/又は作用を補完する。
【0068】
[087]さらなる実施形態では、薬物送達システムは、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞症、尿管閉塞症並びに腫瘍閉鎖から選択される状態又は障害の治療又は予防のために使用される。一実施形態では、状態又は障害は、アテローム性動脈硬化、血栓形成、再狭窄及び不安定プラークから選択される。
【0069】
[088]他の実施形態は、本明細書に記載する薬物送達システムの実施形態の任意の1つ又は組合せを含むキットに関する。
【0070】
医薬組成物
[089]本発明の他の実施形態は、治療有効量のゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及び治療有効量のパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む医薬組成物に関し、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比(γ)は、10:7≦γ≦10:0.01であり、組成物が対象の体内の管に投与された場合、体内の管中の新生内膜過形成が、減少、阻害又は防止される。
【0071】
[090]一実施形態では、対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、ブタなど)である。特定の実施形態では、体内の管は血管である。さらなる実施形態では、組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有する。
【0072】
[091]特定の実施形態では、γは、1:1≦γ≦5:1、又は5:1≦γ≦10:1、又は10:1≦γ≦20:1、又は20:1≦γ≦100:1、又は100:1≦γ≦1000:1の範囲である。特定の実施形態では、γ=10:1である。
【0073】
[092]組成物の一実施形態では、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、効果及び/又は作用を互いに補完する。他の実施形態では、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、相加効果を及ぼすゾタロリムスとパクリタキセル(又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩)との比(γ)で存在する。
【0074】
[093]いくつかの実施形態では、組成物は、経口的に、直腸内に、非経口的に、大槽内に、腟内に、腹腔内に、局所的に、口腔内に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、関節内に、経皮的に、心嚢内に、又はこれらを組み合わせて対象に投与される。
【0075】
[094]一実施形態では、組成物は、対象への局所送達のために製剤される。いくつかの実施形態では、組成物は医療装置と結合し、装置を介して対象に投与される。特定の実施形態では、医療装置は、ステント、移植片、ステント移植片、カテーテル、リード、電極、クリップ、シャント、閉鎖装置、弁、及び粒子から選択される。特定の実施形態では、医療装置はステントである。
【0076】
[095]いくつかの実施形態では、少なくとも1つのコーティングは、医療装置(例えば、ステント)の少なくとも一部分の上に配置され、コーティングは組成物を含む。薬物コーティングされたステントを伴う特定の実施形態では、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度は、約1μg/mmステント長である。
【0077】
[096]特定の実施形態では、少なくとも1つのコーティングは、生分解性ポリマー(複数可)、非分解性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せを含む。一実施形態では、コーティングは、少なくとも1種の生分解性ポリマーを含む。さらなる実施形態では、少なくとも1つのコーティングは、≦約10ミクロンの厚さを有し、約12カ月以内に完全又は実質的に完全に分解される。
【0078】
[097]医薬組成物の他の実施形態は、少なくとも1種のさらなる治療物質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のさらなる治療物質は、本発明の薬物送達システムに関して本明細書に記載するような抗体を含む。組成物の特定の実施形態では、少なくとも1種のさらなる治療物質は、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される。一実施形態では、抗炎症性物質(複数可)は、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、クロベタゾール、アダリムマブ及びスリンダクを含めた、ステロイド性抗炎症剤及び非ステロイド性抗炎症剤及び生物学的製剤から選択される。
【0079】
[098]他の実施形態では、少なくとも1種のさらなる治療物質は、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬物、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、及びこれらの組合せから選択される。
【0080】
[099]他の実施形態では、ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、少なくとも1種のさらなる治療物質の効果及び/又は作用を補完する。
【0081】
[0100]さらなる実施形態では、医薬組成物は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞症、尿管閉塞症並びに腫瘍閉鎖から選択される状態又は障害の治療又は予防に使用される。一実施形態では、状態又は障害は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄及び不安定プラークから選択される。
【0082】
[0101]他の実施形態は、本明細書に記載する医薬組成物の実施形態の任意の1つ又は組合せを含むキットに関する。
【0083】
ゾタロリムス及びパクリタキセルの治療用途
[0102]本発明の他の実施形態は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞症、尿管閉塞症並びに腫瘍閉鎖から選択される状態又は障害の治療又は予防に使用される医薬又は薬物送達システムの製造における、ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の使用を対象とする。一実施形態では、状態又は障害は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄及び不安定プラークから選択される。医薬又は薬物送達システムは、本明細書に記載する医薬組成物又は薬物送達システムの実施形態の任意の1つ又は組合せでよい。
【0084】
本発明の化合物の調製
[0103]本発明の実施形態の化合物及び方法は、本発明の化合物を調製することができる方法を例示する下記の合成スキームを参照してよりよく理解されよう。
【0085】
[0104]本発明の化合物は、種々の合成経路によって調製することができる。代表的手順をスキーム1に示す。
【化5】

【0086】
[0105]スキーム1に示されるように、ラパマイシンのC−42ヒドロキシルの、トリフルオロメタンスルホネート又はフルオロスルホネート脱離基への変換によって、Aが生じた。2,6−ルチジン、ジイソプロピルエチルアミンを含めたヒンダード非求核性塩基の存在下で、テトラゾールによる脱離基の置換によって異性体B及びCがもたらされ、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーによって分離及び精製した。
【0087】
合成法
[0106]本発明の化合物を調製することができる方法を例示する下記の実施例を参照することによって、上記をより理解することができるが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0088】
実施例1 42−(2−テトラゾリル)−ラパマイシン(より極性の弱い異性体)
実施例1A 42−トリフレート−ラパマイシン
[0107]ラパマイシン(100mg、0.11mmol)のジクロロメタン(0.6mL)溶液を、−78℃で窒素雰囲気下、2,6−ルチジン(53μL、0.46mmol、4.3当量)及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物(37μL、0.22mmol)で順次処理し、その後15分間撹拌し、室温に温め、ジエチルエーテルと共にシリカゲル(6mL)のパッドを通して溶出した。トリフレートを含む画分をプールし、濃縮して、標記化合物をこはく色の泡として得た。
【0089】
実施例1B 42−(2−テトラゾリル)−ラパマイシン(より極性の弱い異性体)
[0108]実施例1Aの酢酸イソプロピル(0.3mL)溶液を、順次にジイソプロピルエチルアミン(87mL、0.5mmol)及び1H−テトラゾール(35mg、0.5mmol)で順次処理し、次いで18時間撹拌した。この混合物を水(10mL)及びエーテル(10mL)に分配した。有機物をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させた(NaSO)。有機物を濃縮することによって、粘着性の黄色の固体を得て、それをヘキサン(10mL)、ヘキサン:エーテル(4:1(10mL)、3:1(10mL)、2:1(10mL)、1:1(10mL))、エーテル(30mL)、ヘキサン:アセトン(1:1(30mL))で溶出するシリカゲル(3.5g、70〜230メッシュ)上でクロマトグラフィーによって精製した。異性体の1つを、エーテル画分中で回収した。MS(ESI)m/e966(M)
【0090】
実施例2 42−(1−テトラゾリル)−ラパマイシン(より極性の強い異性体)
[0109]実施例1Bにおいてヘキサン:アセトン(1:1)移動相を使用したクロマトグラフィーカラムからのより遅く移動するバンドを回収して、標記化合物を得た。MS(ESI)m/e966(M)
【0091】
生物活性のIn vitroアッセイ
[0110]本発明の実施形態の化合物の免疫抑制作用を、ラパマイシン並びに2種のラパマイシン類似体:40−epi−N−[2’−ピリドン]−ラパマイシン及び40−epi−N−[4’−ピリドン]−ラパマイシン(いずれも(Orら、1996)に開示されている)と比較した。記載されているヒト混合リンパ球反応(MLR)アッセイを使用して、作用を測定した(Kinoら、1987)。アッセイの結果は、表1に示すように、本発明の化合物がナノモル濃度で有効な免疫調節剤であることを示す。
【表1】

【0092】
[0111]実施例1及び実施例2の薬物動態挙動を、カニクイザル(1群毎にn=3)における2.5mg/kgの単回静脈内投与の後に特徴付けた。各化合物は、水ビヒクル中の20%エタノール:30%プロピレングリコール:2%クレモホールEL:48%デキストロース5%の2.5mg/ml溶液として調製した。1mL/kgの静脈内用量を緩徐ボーラス(約1〜2分)としてサルの伏在静脈に投与した。投与前、並びに投与後0.1時間(IVのみ)、0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、4時間、6時間、9時間、12時間、24時間、及び30時間目に、各動物の大腿骨動脈又は静脈から血液試料を採取した。EDTAで保存した試料を完全に混合し、その後の分析のために抽出した。
【0093】
[0112]内部標準を含んだ水(0.5ml)中の20%メタノールで、血液の一定分量(1.0mL)を溶血させた。溶血した試料を、酢酸エチル及びヘキサンの混合物(1:1(v/v)、6.0mL)で抽出した。有機層を、室温で窒素流下乾燥するまで蒸発させた。試料を、メタノール:水(1:1、150μL)中で再構成した。UV検出を伴う逆相HPLCを使用して、表題化合物(50μL注射)を夾雑物から分離した。試験期間を通じて試料を低温(4℃)に保持した。各試験からの全ての試料を、HPLCで単一バッチとして分析した。
【0094】
[0113]実施例1、実施例2及び内部標準の曲線下面積(AUC)測定は、Sciex MacQuan(商標)ソフトウェアを使用して決定した。較正曲線は、ピーク面積比(親薬物/内部標準)対理論濃度の最小二乗線形回帰を用いてスパイク血液標準のピーク面積比から導いた。この方法は、標準曲線の範囲に亘って両方の化合物について線形であり(相関関係>0.99)、推定定量化限界は0.1ng/mLであった。最大血中濃度(Cmax)及び最大血中濃度に達するまでの時間(Tmax)を、観察した血中濃度−時間データから直接読み取った。CSTRIPを使用して血中濃度データを多次指数関数的曲線の当てはめに供し、薬物動態パラメーターの推定値を得た。NONLIN84を使用して、推定パラメーターをさらに定義した。投与後0〜t時間目(血中濃度測定可能な最終時点)の血中濃度−時間曲線下面積(AUC0−t)を、血液−時間プロファイルに関する直線台形公式を使用して計算した。残余面積を無限に外挿して、最終排泄速度定数(β)を除した最終測定血中濃度(C)として決定し、AUC0−tに加え、総曲線下面積(AUC0−t)を求めた。
【0095】
[0114]図1及び表2に示すように、実施例1及び実施例2の両方は、ラパマイシンと比較した場合、意外にも実質的により短い最終排泄半減期(t1/2)を有していた。したがって、本発明の化合物のみが、十分な有効性(表1)及びより短い最終半減期(表2)の両方を実現する。
【表2】

【0096】
治療法
[0115]それだけに限らないが実施例で特定したものが挙げられる本発明の化合物は、(ヒトを含めた)哺乳動物において免疫調節作用を有する。本発明の実施形態の化合物は、免疫抑制剤として、心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、肺、膵臓、小腸、四肢、筋肉、神経、十二指腸、小腸、膵島細胞などを含めた器官又は組織の移植による拒否反応;骨髄移植によって引き起こされる移植片対宿主病;関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎などを含めた自己免疫疾患を含めた、免疫介在性疾患の治療及び予防に有用である。さらなる使用には、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎及びさらなる湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、エリテマトーデス、ざ瘡及び円形脱毛症を含めた炎症性及び過剰増殖性皮膚疾患並びに免疫介在性疾患の皮膚症状;角膜結膜炎、春季結膜炎、ベーチェット病と関連するブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、及び眼天疱瘡を含めた様々な眼疾患(自己免疫性及びその他)の治療及び予防が含まれる。さらに、喘息(例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息及び塵埃喘息)、特に慢性又は難治性喘息(例えば、遅発型喘息及び気道過敏症)、気管支炎、アレルギー性鼻炎などを含めた状態を含む、可逆性閉塞性気道疾患は、本発明の化合物の標的となる。胃潰瘍、虚血性疾患によって引き起こされる血管障害、及び血栓症を含めた粘膜及び血管の炎症。さらに、特に生物学的又は機械的に媒介される血管障害後の、内膜平滑筋細胞過形成、再狭窄及び血管閉塞を含めた過剰増殖性血管疾患は、本発明の化合物によって治療又は予防することができる。
【0097】
[0116]他の治療可能な状態には、それだけに限らないが、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患、壊死性腸炎;セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥胖細胞症、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含めた腸の炎症/アレルギー;多発性筋炎、ギランバレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、多発性神経炎、単発神経炎及び神経根障害を含めた神経疾患;甲状腺機能亢進症及びバセドウ病を含めた内分泌疾患;赤芽球ろう、再生不良性貧血、低形成貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血及び赤血球形成不全を含めた血液疾患;骨粗鬆症を含めた骨疾患;サルコイドーシス、肺線維症及び特発性間質性肺炎を含めた呼吸器疾患;皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光アレルギー性過敏症及び皮膚T細胞リンパ腫を含めた皮膚疾患;動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎及び心筋症を含めた循環器系疾患;強皮症、ヴェグナー肉芽腫症及びシェーグレン症候群を含めた膠原病;脂肪過多症;好酸球性筋膜炎;歯肉、歯周組織、歯槽骨及び歯のセメント質の病変を含めた歯周病;糸球体腎炎を含めたネフローゼ症候群;脱毛を予防すること又は発毛をもたらすこと及び/又は毛髪発生及び毛髪成長を促進することによる男性型脱毛症又は老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症及びセザリー症候群;アジソン病;活性酸素介在性疾患、例えば、保存、移植又は虚血性疾患(例えば、血栓症及び心筋梗塞)の際に起こる(心臓、肝臓、腎臓及び消化管を含めた)器官の虚血再潅流傷害を含めた器官傷害など;内毒素ショック、偽膜性大腸炎、及び薬物又は放射線に起因する大腸炎を含めた腸疾患;虚血性急性腎不全及び慢性腎不全を含めた腎疾患;肺酸素又は薬物(例えば、パラコート及びブレオマイシン)によって引き起こされる中毒症、肺癌及び肺気腫を含めた肺疾患;白内障、鉄沈着症、網膜炎、色素性、老人性黄斑変性症、硝子体瘢痕形成及び角膜のアルカリによる火傷を含めた眼疾患;多形性紅斑、線状IgA水疱症及びセメント皮膚炎を含めた皮膚炎;歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵臓炎、環境汚染(例えば、大気汚染)に起因する疾患、加齢、発癌、癌腫の転移及び高山病を含めたその他の疾患;ヒスタミン又はロイコトリエン−C放出によって引き起こされる疾患;腸ベーチェット病、血管ベーチェット病又は神経ベーチェット病を含めたベーチェット病、また口腔、皮膚、目、外陰部、関節、精巣上体、肺、腎臓などに影響を与えるベーチェット病が挙げられる。さらに、本発明の化合物は、免疫原性疾患(例えば、自己免疫性肝炎、胆汁性肝硬変及び硬化性胆管炎を含めた慢性自己免疫性肝臓病)、部分肝臓切除、急性肝臓壊死(例えば、毒素、ウイルス性肝炎、ショック又は無酸素によって引き起こされる壊死)、B型肝炎、非A/非B型肝炎、(アルコール性肝硬変を含めた)肝硬変;並びに劇症肝炎、遅発性肝不全及び「慢性状態の中での急性」肝不全(慢性肝疾患がある状態での急性肝不全)を含めた肝不全を含めた肝臓疾患の治療及び予防に有用であり、患者がすでに摂取している場合がある薬物の主要な化学療法的、抗ウイルス性、抗炎症性、及び強心効果の増大において潜在的に有用な作用のために、さらに様々な疾患に有用である。
【0098】
[0117]さらに、本発明の化合物は、FK−506拮抗特性を有する。したがって、本発明の化合物の実施形態は、免疫抑制又は免疫抑制を伴う障害の治療に使用することができる。免疫抑制を伴う障害の例には、AIDS、癌、真菌感染、老人性認知症、(創傷治癒、手術及びショックを含めた)外傷、慢性細菌性感染、及び特定の中枢神経系障害が挙げられる。治療を受ける免疫抑制は、免疫抑制性大環状化合物、例えばFK−506又はラパマイシンを含めた12−(2−シクロヘキシル−1−メチルビニル)−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.0]オクタコス−18−エンの誘導体の過量に起因する場合がある。患者によるこのような薬剤の過度の使用は、処方された時間に薬剤を服用するのを忘れたことを気がついたときに極めて一般的であり、重篤な副作用をもたらす場合がある。
【0099】
[0118]本発明の化合物の増殖性疾患を治療する能力は、以前に記載された方法によって明らかにすることができる(Bunchman及びBrookshire、1991;Shichiriら、1991;Yamagishiら、1993)。増殖性疾患には、平滑筋増殖、全身性硬化症、肝硬変、成人呼吸促迫症候群、特発性心筋症、エリテマトーデス、糖尿病性網膜症若しくは他の網膜症、乾癬、強皮症、前立腺肥大症、心筋過形成、動脈損傷後の再狭窄、又は他の血管の病的狭窄が挙げられる。さらに、これらの化合物は、いくつかの増殖因子に対する細胞応答に拮抗し、したがって血管形成阻害特性を有し、そのためにそれらは、特定の腫瘍の増殖と、肺、肝臓、及び腎臓の線維性疾患とを制御又は逆転するために有用な薬剤となる。
【0100】
[0119]本発明の実施形態の水性液体組成物は、(例えば、円錐角膜、角膜炎、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、モーレン潰瘍、強膜炎及びグレーブス眼症を含めた)自己免疫疾患及び角膜移植拒絶を含めた目の様々な疾患の治療及び予防に特に有用である。
【0101】
[0120]上記又は他の治療において使用される場合、治療有効量の本発明の実施形態における化合物の1つは、純粋な形態で、又はそのような形態が存在する場合は、薬学的に許容される塩、エステル又はプロドラッグ形態で用いることができる。或いは、この化合物は、1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた対象化合物を含む医薬組成物として投与することができる。「治療有効量」の本発明の化合物という表現は、任意の医療に適用できる妥当な利益/リスク率で障害を治療するのに十分な量の化合物を意味する。しかし、本発明の実施形態の化合物及び組成物の総1日使用量は、正しい医療的判断の範囲内で主治医によって決定されるであろうことは理解されよう。任意の特定の患者についての特定の治療有効用量のレベルは、治療する障害及び障害の重篤度;使用する特定の化合物の作用;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別及び食事;使用する特定の化合物の投与時間、投与経路、及び排泄率;治療期間;使用する特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用する薬物;並びに医療の技術分野で周知の類似の要因を含めた種々の要因によるであろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要であるレベルより低いレベルの化合物用量で開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、十分に当分野の技術の範囲内である。
【0102】
[0121]本発明の実施形態においてヒト又は下等動物に投与される化合物の総1日用量は、約0.01〜約10mg/kg/日の範囲をとりうる。経口投与のためには、用量は、約0.001〜約3mg/kg/日の範囲をとりうる。ステントからの局所送達のためには、患者が摂取する1日用量は、ステントの長さに依存するであろう。例えば、15mmの冠動脈ステントは、約1〜約120マイクログラムの範囲の量の薬物を含む場合があり、数時間から数週間の期間に亘りその薬物を送達する場合がある。所望であれば、有効1日用量は、投与のために多回用量に分割してもよい。したがって、単回用量組成物は、1日用量を構成するためのこのような量又はその約量を含んでもよい。局所投与は、適用部位に応じて0.001〜3mg/kg/日の範囲の用量を含む場合がある。
【0103】
[0122]本明細書に記載する化合物又は薬物はまた、ポリマー材料でコーティングされた医療装置(例えば、ステント)と結合することができる。化合物又は薬物の、ステントのポリマーコーティングへの組込みは、ポリマーコーティングしたステントを化合物又は薬物を含む溶液中に十分な期間(例えば、5分間など)浸漬し、次いでコーティングしたステントを、例えば十分な期間(例えば、30分間など)空気乾燥などで乾燥させることによって実施することができる。噴霧を含めた治療物質を付着させる他の方法を使用することができる。次いで、化合物又は薬物を含むポリマーコーティングされたステントは、バルーンカテーテルからの導入によって血管内腔に送達することができる。ステントに加えて、本発明の薬物を血管系に導入するのに使用することができる他の装置には、それだけに限らないが、移植片、カテーテル、及びバルーンが挙げられる。さらに、本発明の薬物の代わりに使用することができる他の化合物又は薬物には、それだけに限らないが、A−94507及びSDZ RAD(a.k.a.エベロリムス)が挙げられる。
【0104】
薬物の組合せ
コーティングされた医療装置(例えば、ステント)中で使用される本明細書に記載する化合物は、他の薬理剤と組合せて使用することができる。本発明の化合物と組み合わせて、血管障害(例えば、再狭窄)又は関連する障害を治療又は予防するのに適切な薬理剤は、抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択することができる。これらの種類は、さらに細分することができる。例えば、抗増殖剤は、抗有糸分裂性でもよい。
【0105】
[0123]抗増殖剤は、細胞毒又は合成分子などの天然のタンパク質性薬剤でよい。抗増殖性物質の例には、それだけに限らないが、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類似体(Sigma−Aldrichが製造、又はMerckから入手可能なCOSMEGEN)(アクチノマイシンDの同義語は、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCを含む);タキソール、ドセタキセル、及びパクリタキセル及びその誘導体などの全てのタキソイド;全てのolimus薬(マクロライド抗生物質、ラパマイシン、エベロリムス、ラパマイシンの構造誘導体及び機能的類似体、エベロリムスの構造誘導体及び機能的類似体、FKBP−12媒介性mTOR阻害剤、バイオリムス、ピルフェニドン、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、並びにこれらの組合せなど)が挙げられる。ラパマイシン誘導体の例には、それだけに限らないが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(Novartisの商品名エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−epi−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス、製造元Abbott Labs.)、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0106】
[0124]有糸分裂阻害剤は、細胞分裂を阻害又は影響を与え、それによって細胞分裂に通常関与する過程が起こらなくなる。有糸分裂阻害剤の1つのサブクラスには、ビンカアルカロイドが挙げられる。ビンカアルカロイドの代表的例には、それだけに限らないが、ビンクリスチン、パクリタキセル、エトポシド、ノコダゾール、インジルビン、並びにアントラサイクリン誘導体(例えば、ダウノルビシン、ダウノマイシン及びプリカマイシンなど)が挙げられる。有糸分裂阻害剤の他のサブクラスには、抗有糸分裂性アルキル化剤(例えば、タウロムスチン、ボフムスチン、及びフォテムスチンなど)、及び抗有糸分裂性代謝物(例えば、メトトレキサート、フルオロウラシル、5−ブロモデオキシウリジン、6−アザシチジン、及びシタラビンなど)が挙げられる。抗有糸分裂性アルキル化剤は、DNA、RNA、又はタンパク質を共有結合的に修飾し、それによってDNA複製、RNA転写、RNA翻訳、タンパク質合成、又は上記の組合せを阻害することによって細胞分裂に影響を与える。
【0107】
[0125]有糸分裂阻害剤の一例には、これらだけに限らないが、パクリタキセルが含まれる。本明細書で使用する場合、パクリタキセルには、アルカロイド自体及び天然形態及びその誘導体、並びにその合成形態及び半合成形態が含まれる。
【0108】
[0126]抗悪性腫瘍薬及び/又は有糸分裂阻害剤の例には、それだけに限らないが、パクリタキセル(例えば、Bristol−Myers Squibbから入手可能であるTAXOL(登録商標))、ドセタキセル(例えば、AventisのTaxotere(登録商標))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、PfizerのAdriamycin(登録商標))、及びマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers SquibbのMutamycin(登録商標))が挙げられる。
【0109】
[0127]抗血小板薬は、(1)表面、典型的には血栓形成性表面への血小板の接着の阻害、(2)血小板の凝集の阻害、(3)血小板の活性化の阻害、又は(4)上記の組合せによって作用する治療実体である。血小板の活性化は、血小板が、無活動の静止状態から、血小板と血栓形成性表面との接触によって誘発されるいくつかの形態変化を受ける状態へと変換される過程である。これらの変化には、偽足の形成を伴う血小板の形状の変化、膜受容体への結合、及び例えばADP及び血小板第4因子などの小分子及びタンパク質の分泌が挙げられる。血小板接着の阻害剤として作用する抗血小板薬には、それだけに限らないが、エプチフィバチド、チロフィバン、gpIIbIIIa又はαvβ3への結合を阻害するRGD(Arg−Gly−Asp)をベースとするペプチド、gpIIaIIIb又はαvβ3への結合を阻害する抗体、抗P−セレクチン抗体、抗E−セレクチン抗体、P−セレクチン又はE−セレクチンの各々のリガンドへの結合を遮断する化合物、サラチン、及び抗フォンウィルブランド因子抗体が挙げられる。ADPを介した血小板凝集を阻害する薬剤には、それだけに限らないが、ジスアグレギン及びシロスタゾールが挙げられる。
【0110】
[0128]抗炎症剤もまた使用することができる。これらの例には、それだけに限らないが、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、トリアムシノロン、モメタゾン、フルチカゾン、クロベタゾール、並びに非ステロイド性消炎剤(例えば、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、アダリムマブ及びスリンダクなど)が挙げられる。アラキドン酸代謝物プロスタサイクリン又はプロスタサイクリン類似体は、血管作用性抗増殖剤の例である。これらの薬剤の他の例には、サイトカイン作用を遮断又はサイトカイン若しくはケモカインの同族受容体への結合を阻害し、サイトカイン又はケモカインによって伝達される炎症誘発性シグナルを阻害するものが挙げられる。これらの薬剤の代表的例には、それだけに限らないが、抗IL1、抗IL2、抗IL3、抗IL4、抗IL8、抗IL15、抗IL18、抗MCPl、抗CCR2、抗GM−CSF、及び抗TNF抗体が挙げられる。
【0111】
[0129]抗血栓剤には、凝固経路の任意の段階に介在することができる化学的及び生物学的実体が挙げられる。特定の実体の例には、それだけに限らないが、第Xa因子の作用を阻害する小分子が挙げられる。さらに例えば、ヘパリン、ヘパリン硫酸、低分子量ヘパリン(例えば、商標Clivarin(登録商標)を有する化合物など)、及び合成オリゴ糖(例えば、商標Arixtra(登録商標)を有する化合物など)などの、第Xa因子及びトロンビンの両方を直接的又は間接的に阻害することができるヘパリノイド型薬剤。例えば、メラガトラン、キシメラガトラン、アルガトロバン、イノガトラン、及びトロンビンについてのPhe−Pro−Argフィブリノゲン基質の結合部位のペプチド模倣体などの、直接トロンビン阻害剤がまた挙げられる。送達することができる抗血栓剤の他のクラスは、第VII/VIIa因子阻害剤(例えば、抗第VII/VIIa因子抗体、rNAPc2、及び組織因子経路阻害剤(TFPI)など)である。
【0112】
[0130]血栓(血餅)の分解を助長する薬剤と定義してもよい血栓溶解剤はまた、血餅を溶解するその作用が、血栓のフィブリンマトリックス内に捕捉された血小板を分散させるのを助長するので、補助薬としても使用することができる。血栓溶解剤の代表的例には、それだけに限らないが、ウロキナーゼ又は組換えウロキナーゼ、プロウロキナーゼ又は組換えプロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター又はその組換え形態、及びストレプトキナーゼが挙げられる。
【0113】
[0131]細胞増殖抑制性又は抗増殖性特性もまた有することができる抗血小板剤、抗凝血剤、抗ファブリン剤、及び抗トロンビン剤の例には、それだけに限らないが、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、ANGIOMAX(Biogenから)などのトロンビン阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、ニフェジピン)、コルヒチン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(例えば、オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼを阻害するコレステロール低下薬、Merckのブランド名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的な抗体)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、一酸化窒素又は一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、様々なビタミンなどの栄養補助食品、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0114】
[0132]抗アレルギー剤の例には、それだけに限らないが、ペルミロラストカリウムが挙げられる。抗酸化性物質の例には、それだけに限らないが、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)が挙げられる。
【0115】
[0133]本発明の化合物と組み合わせて使用することができる他の薬物は、例えば、TGFを含めたアポトーシス誘導物質;並びに10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、及びドキソルビシンを含めたトポイソメラーゼ阻害剤などの細胞毒性薬である。本発明の化合物と組み合わせて使用することができる他のクラスの薬物は、細胞脱分化を阻害する薬物及び細胞増殖抑制薬である。
【0116】
[0134]本発明の化合物と組み合わせて使用することができる他の薬剤には、フェノフィブラート、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えば、バチミスタットなど)、エンドセリン−A受容体のアンタゴニスト(例えば、ダルセンタンなど)、及びαvβ3インテグリン受容体のアンタゴニストを含めた抗脂血症薬が挙げられる。
【0117】
[0135]血液が接触する移植可能な装置との関連で、「治癒促進」薬物又は薬剤とは、動脈内腔の再内皮化を促進又は増進させ、血管組織の治癒を促進する特性を有する薬物又は薬剤を意味する。治癒促進薬物又は薬剤を含有する移植可能な装置(例えば、ステント)の部分(複数可)は、内皮細胞(例えば、内皮前駆細胞)を誘引、結合し、最終的には細胞に被包される場合がある。細胞の誘引、結合、及び封入は、ステントが不十分に被包された場合に起こる場合がある機械的性質を喪失させることによって、塞栓又は血栓の形成を減少又は防止するであろう。増強した再内皮化によって、ステントの機械的性質の喪失より速い速度で内皮化が促進されることが可能である。
【0118】
[0136]治癒促進薬物又は薬剤は、生体吸収性ポリマー基材又は足場の本体内に分散させることができる。治癒促進薬物又は薬剤はまた、移植可能な装置(例えば、ステント)の表面上の生体吸収性ポリマーコーティング内に分散させることもできる。
【0119】
[0137]「内皮前駆細胞」とは、血流に入り、血管傷害の領域に到達し、損傷の修復を助長することができる、骨髄内で作られる初期の細胞を意味する。内皮前駆細胞は、成人ヒト末梢血中を循環し、サイトカイン、増殖因子、及び虚血状態によって骨髄から動員される。血管障害は、血管新生及び血管形成の両方の機構によって修復される。循環している内皮前駆細胞は、主として血管形成機構を介して傷ついた血管の修復をもたらす。
【0120】
[0138]いくつかの実施形態では、治癒促進薬物又は薬剤は、内皮細胞(EDC)結合剤でよい。特定の実施形態では、EDC結合剤は、タンパク質、ペプチド又は抗体でよく、これは例えば、1型コラーゲンの1種、単鎖Fvフラグメント(scFv A5)としても知られている23個のペプチドフラグメント、ジャンクション膜タンパク質血管内皮(VE)−カドヘリン、及びこれらの組合せでよい。1型コラーゲンは、オステオポンチンに結合した場合、内皮細胞の接着を促進し、アポトーシス経路のダウンレギュレーションによってそれらの生存率を調節することが示された。S.M.Martinら、J.Biomed.Mater.Res.、70A:10〜19(2004)。内皮細胞は、scFv A5を使用して(イムノリポソームの標的化送達のために)選択的に標的化することができる。T.Volkelら、Biocbimica et Biophysica Acta、1663:158〜166(2004)。ジャンクション膜タンパク質血管内皮(VE)−カドヘリンは、内皮細胞に接着し、内皮細胞のアポトーシスをダウンレギュレートすることが見出された。R.Spagnuoloら、Blood、103:3005〜3012(2004)。
【0121】
[0139]特定の実施形態では、EDC結合剤は、オステオポンチンの活性フラグメント(Asp−Val−Asp−Val−Pro−Asp−Gly−Asp−Ser−Leu−Ala−Try−Gly)でよい。他のEDC結合剤には、それだけに限らないが、EPC(上皮細胞)抗体、RGDペプチド配列、RGD模倣物、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0122】
[0140]さらなる実施形態では、治癒促進薬物又は薬剤は、内皮前駆細胞を誘引及び結合する物質又は薬剤でよい。内皮前駆細胞を誘引及び結合する代表的物質又は薬剤には、CD−34、CD−133及び2型vegf受容体などの抗体が挙げられる。内皮前駆細胞を誘引及び結合する薬剤は、一酸化窒素供与基を有するポリマーを含むことができる。
【0123】
[0141]特定の実施形態では、本発明の医薬組成物又は薬物送達システムは、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬物、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種のさらなる治療物質をさらに含む。
【0124】
[0142]いくつかの実施形態では、少なくとも1種のさらなる治療剤は、特に本明細書に記載する治療物質又は物質(例えば、薬物)のいずれかの1種又は複数であることはできない。
【0125】
医薬組成物
[0143]本発明の実施形態の医薬組成物は、経口的、直腸内、非経口的、大槽内、腟内、腹腔内、局所的(散剤、軟膏、ドロップ又は経皮パッチによるなど)、口腔内(経口又は経鼻スプレーなど)、又は局部的(血管系内に設置されたステント中、又は心膜腔への送達、又は心筋中若しくは心筋上への送達など)に投与することができる、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。「薬学的に許容される担体」という表現は、無毒性の固体、半固体若しくは液体充填剤、希釈剤、封入材料又は任意のタイプの製剤補助物質を意味する。用語「非経口」とは、本明細書で使用する場合、静脈内、動脈内、筋内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内注射、注入、経皮、及び例えば血管系内などへの配置を含めた、経口以外の全ての投与方法を意味する。
【0126】
[0144]非経口的注射のための本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される滅菌水溶液若しくは非水溶液、分散剤、懸濁剤、ナノ微粒子懸濁剤、又は乳剤、並びに使用直前に滅菌注射剤又は分散剤に再構成するための滅菌散剤を含む。適切な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例には、水、エタノール、(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどを含めた)ポリオール、カルボキシメチルセルロース及びその適切な混合物、(オリーブ油を含めた)植物油、並びにオレイン酸エチルを含めた注入可能な有機酸エステルが挙げられる。例えば、レシチンを含めたコーティング材料の使用によって、分散液の場合は必要とされる粒径を維持することによって、及び界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。
【0127】
[0145]これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤を含めた補助剤も含んでもよい。様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含むことによって、微生物の作用の防止を確保することができる。糖、塩化ナトリウムなどを含めた等張剤を含むこともまた望ましい場合がある。モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めた、吸収を遅延させる薬剤を含めることによって、注射用医薬形態の長期に亘る吸収をもたらすことができる。
【0128】
[0146]ある場合には、薬物の効果を延長するために、皮下注射又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは水溶性に乏しい結晶性又はアモルファス材料の液体懸濁剤を使用することによって実現することができる。その上薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度はまた結晶の大きさ及び結晶形態に依存する場合がある。或いは、非経口的に投与される薬物形態の遅延型吸収は、薬物を油ビヒクルに溶解又は懸濁することによって実現される。
【0129】
[0147]注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドを含む生分解性ポリマー中に、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することよって作製される。薬物放出速度は、薬物とポリマーとの比及び使用する特定のポリマーの性質によって制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。注射用デポー製剤はまた、身体組織と適合するリポソーム又はマイクロエマルジョン中に、薬物を封入することによっても調製される。
【0130】
[0148]注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、又は使用直前に滅菌水若しくは他の注射用滅菌媒体に溶解又は分散させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0131】
[0149]経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形において、活性化合物を、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムを含めた少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤又は担体、及び/又は(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸を含めた充填剤又は増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアラビアゴムなどの結合剤、(c)グリセロールを含めた湿潤剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムを含めた崩壊剤、(e)パラフィンを含めた溶解遅延剤、(f)第四級アンモニウム化合物を含めた吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(h)カオリン及びベントナイト粘土を含めた吸収剤、及び(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物を含めた滑沢剤と混合する。カプセル剤、錠剤及び丸剤である場合、剤形はまた緩衝剤を含んでもよい。
【0132】
[0150]同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟、半固形及び硬ゼラチンカプセル剤又は液体入りカプセル剤中の充填剤として用いることもできる。
【0133】
[0151]錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング及び医薬製剤技術分野において周知の他のコーティングを含めたコーティング及びシェルと共に調製することができる。それらは、乳白剤を任意選択で含んでもよく、任意選択で遅延的に、活性成分(複数可)を腸管の特定の部分においてのみ放出、又は腸管の特定の部分において放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例には、高分子物質及びワックスが挙げられる。薬物を含むそれらの包埋組成物は、それだけに限らないが、ステント、移植片、カテーテル、及びバルーンが挙げられる、医療装置上に配置することができる。
【0134】
[0152]活性化合物はまた適切であれば、上記の賦形剤の1種又は複数を有するマイクロカプセル化形態でもよい。
【0135】
[0153]経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形には、例えば、水又は他の溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物を含めた可溶化剤及び乳化剤などの当技術分野で通常使用される不活性希釈剤が挙げられる。
【0136】
[0154]不活性希釈剤以外に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、及び香料剤を含めた補助剤も含むことができる。
【0137】
[0155]懸濁剤には、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、並びにこれらの混合物などの懸濁化剤が挙げられる。
【0138】
[0156]局所投与には、肺及び目の表面を含めた皮膚又は粘膜への投与が挙げられる。吸入用のものを含めて局所投与のための組成物は、加圧されても又は加圧されなくてもよい乾燥粉末として調製してもよい。非加圧粉末組成物では、微粉化した形態の活性成分は、例えば直径100マイクロメートルまでのサイズを有する粒子を含むより大きなサイズの薬学的に許容される不活性担体と混合して使用することができる。適切な不活性担体には、ラクトースを含めた糖が挙げられる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%は、0.01〜10マイクロメートルの範囲の有効粒径を有する。皮膚上の局所使用のための組成物には、軟膏、クリーム剤、ローション剤、及びゲル剤もまた含まれる。
【0139】
[0157]或いは、組成物は加圧してもよく、窒素又は液化ガス噴射剤を含めた圧縮ガスを含んでもよい。本発明の実施形態では、液化噴射媒体及び実際には組成物全体は、その活性成分が実質的な度合いでその中に溶解しない。加圧組成物はまた表面活性剤を含んでもよい。表面活性剤は、液体若しくは固体の非イオン表面活性剤でよく、又は固体の陰イオン表面活性剤でよい。他の実施形態では、固体の陰イオン表面活性剤の使用は、ナトリウム塩の形態である。
【0140】
[0158]局所投与のさらなる形態は、自己免疫疾患、アレルギー状態又は炎症状態を含めた免疫介在性の眼の状態の治療、及び角膜移植のためなどの、眼に対する投与である。本発明の化合物は、この化合物が、角膜及び眼の内部領域、例えば、前眼房、後眼房、硝子体、眼房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜及び強膜に浸透するのに十分な時間、眼の表面と接触して保持されるように、薬学的に許容される眼科用ビヒクル中で送達される。薬学的に許容される眼科用ビヒクルは、例えば、軟膏、植物油又は被包材料でよい。
【0141】
[0159]実施形態では、直腸投与又は膣投与のための組成物には、本発明の化合物を、(室温で固体であるが体温で液体であり、したがって直腸又は膣腔内で溶け、活性化合物を放出する)カカオバター、ポリエチレングリコール又は坐薬ワックスを含めた適切な非刺激性の賦形剤又は担体と混合することによって調製することができる坐薬又は保持浣腸が挙げられる。
【0142】
[0160]本発明の実施形態の化合物はまた、リポソームの形態で投与することができる。当技術分野において公知であるように、リポソームは一般に、リン脂質又は他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体中に分散している単層状又は多層状の水和液晶から形成される。リポソームを形成することができる任意の無毒性で生理学的に許容でき代謝可能な脂質を使用することができる。本発明の実施形態中の組成物は、リポソーム形態であり、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存料、賦形剤などを含むことができる。本発明の実施形態における脂質は、天然及び合成両方のリン脂質並びにホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームの形成方法は、当技術分野において公知である。例えば、(Prescott、1976)を参照されたい。
【0143】
[0161]本発明の実施形態における化合物はまた、1種又は複数の免疫抑制剤と同時投与してもよい。本発明の範囲内の免疫抑制剤には、それだけに限らないが、IMURAN(登録商標)アザチオプリンナトリウム、ブレキナルナトリウム、SPANIDIN(登録商標)グスペリムス三塩酸塩(デオキシスペルグアリンとしても知られている)、ミゾリビン(ブレジニンとしても知られている)、CELLCEPT(登録商標)ミコフェノール酸モフェチル、NEORAL(登録商標)シクロスポリンA(SANDIMMUNE(登録商標)の商標でシクロスポリンAの様々な製剤としても販売されている)、PROGRAF(登録商標)タクロリムス(FK−506としても知られている)、シロリムス及びRAPAMUNE(登録商標)、エベロリムス、レフルノミド(HWA−486としても知られている)、(プレドニゾロン及びその誘導体を含めた)グルココルチコイド、(オルソクローン(OKT3)及びZenapax(登録商標)を含めた)抗体療法、及び(サイモグロブリンを含めた)抗胸腺細胞グロブリンが挙げられる。
【0144】
ポリマーコーティング
[0162]本発明の実施形態において使用する場合、医療装置(例えば、ステント)の上に配置された少なくとも1種のコーティングは、治療剤すなわち薬物が実質的にそれに可溶性である任意のポリマー材料を含むことができる。コーティングの目的は、治療剤のための制御放出ビヒクルとして、又は病変の部位に送達される治療剤のための貯留としての役割である。コーティングは、ポリマーでよく、さらに親水性、疎水性、生分解性、又は非生分解性でよい。ポリマーコーティングのための材料は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカルボン酸、セルロースポリマー、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートバレレート、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、並びに上記の混合物及びコポリマーからなる群から選択することができる。ポリウレタン分散液(BAYHYDROLなど)及びアクリル酸ラテックス分散液を含めたポリマー分散液から調製されるコーティングはまた、本発明の実施形態の治療剤と共に使用することができる。
【0145】
[0163]本発明において使用することができる生分解性ポリマーには、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリグリコリド、ポリ(ジアキサノン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリオルトエステルを含めたポリマー;ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリヒドロキシ(ブチレート−co−バレレート)、ポリグリコリド−co−炭酸トリメチレンを含めたコポリマー;ポリ無水物;ポリホスホエステル;ポリホスホエステル−ウレタン;ポリアミノ酸;ポリシアノアクリレート;フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸を含めた生体分子;及び上記の混合物を含めたポリマーが挙げられる。本発明において使用するのに適切な生体安定性材料には、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリアクリロニトリル、ビニルモノマーとオレフィンとのポリスチレンコポリマー(スチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメタクリル酸メチルコポリマー、エチレン酢酸ビニルを含めた)、ポリエーテル、レーヨン、セルロース誘導体(酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースなどを含めた)、パリレン及びその誘導体;並びに上記の混合物及びコポリマーを含めたポリマーが挙げられる。
【0146】
[0164]本発明の実施形態において使用することができる他のポリマーには、それだけに限らないが、ポリ(MPC:LAM:HPMA:TSMA)(式中、w、x、y、及びzは、ポリマーを調製するための供給材料中に使用されるモノマーのモル比を表し、MPCは、2−メタクリオイルオキシエチルホスホリルコリン単位を表し、LMAは、メタクリル酸ラウリル単位を表し、HPMAは、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル単位を表し、TSMAは、メタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピル単位を表す)を含むMPCサブユニットを有するものが挙げられる。血栓及び/又はアテローム動脈硬化性プラークによって前から閉塞している冠動脈の開存性を維持するために、薬物含浸ステントを使用することができる。抗増殖剤の送達は、ステント内再狭窄率を減少させる。
【0147】
コーティングの構造
[0165]本発明のいくつかの実施形態によると、医療装置(例えば、ステント)上に配置された少なくとも1つのコーティングは、下記の4つの層のいずれか又はこれらの組合せを含むことができる多層構造でよい。
(1)下塗層、
(2)薬物−ポリマー層(「貯留」若しくは「貯留層」とも称される)又はポリマー非含有薬物層、
(3)トップコート層、及び/又は
(4)仕上げコート層。
【0148】
[0166]ステントコーティングの各層は、ポリマー又はポリマーのブレンドを溶媒、又は溶媒の混合物に溶解し、このように得られたポリマー溶液を噴霧又はステントを溶液中に浸漬することによって、ステント上に配置することによって、ステントの上に配置することができる。溶液がステント上に配置された後、溶媒を蒸発させることによってコーティングを乾燥させる。温度を上げた状態で乾燥を行う場合、乾燥の過程を促進させることができる。コーティングの熱力学的安定性を向上させるために所望であれば、約40℃〜約150℃の温度で約5分〜約60分の期間、完全なステントコーティングを任意選択で焼き鈍しすることができる。
【0149】
[0167]1種又は複数の治療剤(例えば、1種又は複数の薬物)を貯留層に組み込むために、薬物(複数可)は、上記のようにステントの上に配置されるポリマー溶液と合わせることができる。或いは、速い薬物放出速度のステントコーティングを有することが望ましい場合、ポリマー非含有貯留層を作製することができる。ポリマー非含有貯留層を作製するために、薬物(複数可)を適切な溶媒又は溶媒の混合物に溶解することができ、このように得られた薬液を、噴霧又はステントを薬物含有溶液に浸漬することによってステント上に配置することができる。
【0150】
[0168]溶液を介して薬物(複数可)を導入する代わりに、薬物(複数可)は、適切な溶媒相中の懸濁液などのコロイド系として導入することができる。懸濁液を作製するために、薬物(複数可)を、コロイド化学で使用される従来の技術を使用して溶媒相中に分散させることができる。種々の要因、例えば、薬物(複数可)の性質に応じて、当業者であれば、懸濁液の溶媒相を形成するための溶媒、並びに溶媒相中に分散させる薬物(複数可)の量を選択することができる。任意選択で、界面活性剤を加えて、懸濁液を安定化することができる。懸濁液はポリマー溶液と混合することが可能であり、混合物を上記のようにステントの上に配置することができる。或いは、薬物懸濁液を、ポリマー溶液と混合せずにステントの上に配置することができる。
【0151】
[0169]薬物−ポリマー層をステント表面の少なくとも一部分上に直接的又は間接的に付着させ、貯留層に組み込まれる1種又は複数の薬物の貯留層として機能させることができる。任意選択の下塗層をステントと貯留層との間に付着させ、薬物−ポリマー層のステントへの接着を向上させることができる。任意選択のトップコート層を貯留層の少なくとも一部分の上に付着させ、薬物(複数可)の放出速度を制御するのに役立つ律速膜として機能させることができる。一実施形態では、トップコート層は、本質的に任意の薬物を含有しない場合がある。トップコート層が使用される場合、薬物放出速度をさらに制御するため、及びコーティングの生体適合性を向上させるために、任意選択の仕上げコート層をトップコート層の少なくとも一部分の上に付着させることができる。トップコート層なしで、仕上げコート層を貯留層の上に直接配置することができる。
【0152】
[0170]トップコート層及び仕上げコート層の両方を有するコーティングからの薬物の放出の過程には、少なくとも3つのステップが含まれる。第1に、薬物は、薬物−ポリマー層/トップコート層の境界面でトップコート層のポリマーに吸収される。次に、薬物は、トップコート層ポリマーの巨大分子間の空隙容量を移動するための通路として使用し、トップコート層を通って拡散する。次に、薬物は、トップコート層/仕上げ層の境界面に到達する。最後に、薬物は、同様の様式で仕上げコート層を通って拡散し、仕上げコート層の外側表面に到達し、外側表面から脱着する。この時点で、薬物は血管又は周辺組織に放出される。その結果として、トップコート及び仕上げコート層の組合せは、それらが使用された場合、律速バリアーとして機能することが可能である。コーティングを形成する層(複数可)の分解、溶解及び/若しくは侵食によって、又は非分解性ポリマー層(複数可)を通る血管又は組織への薬物の移動によって、薬物は放出されることが可能である。
【0153】
[0171]一実施形態では、ステントコーティングの層のいずれか又は全ては、生物学的分解性/侵食性/吸収性/再吸収性ポリマー(複数可)、非分解性/生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せでできていてもよい。他の実施形態では、コーティングの最外層は、生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せに限定することができる。
【0154】
[0172]より詳細に例示するために、上記の4つの層全て(すなわち、下塗層、貯留層、トップコート層及び仕上げコート層)を有するステントコーティングにおいて、最外層は、生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せから作製することができる仕上げコート層である。残りの層(すなわち、下塗層、貯留層及びトップコート層)はまた任意選択で、生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せで作製することができる。特定の層中のポリマー(複数可)は、他の層のいずれか中のポリマーと同一又は異なってもよい。
【0155】
[0173]仕上げコート層を使用しない場合、トップコート層が最外層でよく、生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せから作製することができる。この場合、残りの層(すなわち、下塗層及び貯留層)はまた任意選択で、生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せで作製することができる。特定の層中のポリマー(複数可)は、他の層のいずれか中のポリマーと同一又は異なってもよい。
【0156】
[0174]仕上げコート層もトップコート層も使用されていない場合、ステントコーティングは、2つの層のみ、すなわち下塗層及び貯留層を有することができる。このような場合、貯留層は、ステントコーティングの最外層であり、生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せから作製することができる。下塗層はまた任意選択で、生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)、又はこれらの組合せで作製することができる。2つの層は、同一又は異なるポリマーから作製することができる。
【0157】
[0175]生物学的分解性、侵食性、吸収性及び/又は再吸収性ポリマー(複数可)の分解、侵食、吸収及び/又は再吸収速度の増加は、貯留層、トップコート層、及び/又は仕上げコート層を形成するポリマー(複数可)の段階的な消失によって、薬物の放出速度の増加をもたらすことができる。生分解性ポリマー(複数可)、生体安定性ポリマー(複数可)又はこれらの組合せの適切な選択によって、ステントコーティングは、所望のように薬物の速い又は遅い放出を実現するように設計することができる。当業者であれば、特定の薬物のために遅い又は速い薬物放出速度のいずれかを有するステントコーティングが賢明であるかを決定できる。例えば、1〜2週間内に放出することが必要である場合が多い抗遊走性薬物を添加したステントコーティングのために、高速放出が所望である場合がある。抗増殖薬及び抗炎症薬では、より遅い放出、例えば、各々30日及び60日までの放出時間が所望である場合がある。
【0158】
[0176]ステントコーティングの任意の層は、生体吸収性ポリマー及び/又は生体適合性ポリマー、又は複数のこのようなポリマーのブレンドの任意の量を含有することができる。生体吸収性ポリマー及び生体適合性ポリマーの非限定的例には、ポリアクリレート、例えば、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸エチル−co−メタクリル酸ブチル)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(エチレン−co−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリロニトリル−co−スチレン)及びポリ(シアノアクリレート);フッ素化ポリマー及び/又はコポリマー、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン);ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(グリコール酸−co−炭酸トリメチレン);ポリホスホエステル;ポリホスホエステルウレタン;ポリ(アミノ酸);ポリ(炭酸トリメチレン);ポリ(イミノカルボネート);コポリ(エーテル−エステル);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;生体分子、例えば、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、セロハン、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びその誘導体(例えば、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロース);ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレン及びエチレン−αオレフィンコポリマー;ハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリビニルエーテル、例えば、ポリビニルメチルエーテル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族化合物、例えば、ポリスチレン;ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル;ビニルモノマー同士及びオレフィンのコポリマー、例えば、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL);ABS樹脂;ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル);ポリアミド、例えば、ナイロン66及びポリカプロラクタム;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル、エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;及びそのコポリマーが挙げられる。
【0159】
[0177]ステントコーティングの任意の層はまた、任意の量の非分解性ポリマー、又は複数のこのようなポリマーのブレンドを含有することができる。非分解性ポリマーの非限定的例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸ポリエチレングリコール(PEG)、メタクリル酸PEG、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn−ビニルピロリドン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、3−メタクリル酸トリメチルシリルプロピル、及びそのコポリマーが挙げられる。
【0160】
医療装置と結合するポリマー層及び治療物質
[0178]適切な薬物添加ポリマー層を提供する上で、大きな柔軟性がある。例えば、対象の薬物と関連した治療濃度域パラメーター内(一般に、治療的に有効なレベル及び毒性レベルの間)で、組合せ中に使用する薬物の比は、互いに対して変更することができる。例えば一実施形態では、90:10の総薬物:ポリマー比を有し、組合せ中の薬物の比は1:1でもよい。したがって、ゾタロリムス/パクリタキセルの組合せを送達するステントは、5μg/mmのPCトップコートを有するPCポリマー層中に10μg/mmのゾタロリムス及び10μg/mmのパクリタキセルを含むことができる。しかし、総薬物:ポリマー比は、より低く、例えば、40:60以下でもよい。薬物の全量の上限は、選択したポリマー中の選択した薬物の混合性、薬物/ポリマー混合物の安定性、例えば、滅菌との適合性、混合物の物理的物性、例えば、流動性/加工性、弾性、脆性、粘性(ステントストラット間でくもの巣状にならない、又は架橋しない)、コーティングの厚さ(ステントプロファイルに実質的に加わるか、又は層間剥離若しくは亀裂をもたらすか、又は圧着するのが困難である)を含めたいくつかの要因によるであろう。本発明の実施形態は、約60〜80ミクロンの間隔を置いたステントストラットを含み、これは薬物/ポリマー/ポリマーオーバーコートの厚さの上限は約30ミクロンであることを示唆するが、しかし、任意のステントの大きさ、ストラットの大きさ及び間隔、並びに/又はステント構造を、本明細書に記載するように薬物送達のために利用することができる。
【0161】
[0179](オーバーコートが使用されている場合)オーバーコートの厚さは、望ましくは薬物の放出動態を過度に妨げるべきではない。
【0162】
[0180]一般的に言えば、本発明の実施形態のための組合せにおいて有用な薬物は、組合せ中の他の薬物の所望の作用に悪影響を与えないであろう。したがって、計画された組合せにおける1つの薬物は、他の薬物の所望の作用、例えば、増殖抑制作用を阻害しないであろう。いずれの薬物も、他の薬物の分解をもたらさない、又は促進しないであろう。しかし、例えば滅菌の間に分解するため不適切であると思われる薬物は、他の薬物の相互作用によって安定化するため実は有用である場合がある。
【0163】
薬物放出プロファイル
[0181]いくつかの実施形態では、本発明の薬物送達システムは、1種又は複数の治療剤(例えば、薬物)について独立に、パルス放出、バースト放出、持続放出及び制御放出プロファイルの任意の1つ又は組合せを有することができる。例えば、このシステムは、薬物のパルス放出又はバースト放出、続いて同じ薬物が持続放出するように構成することができる。
【0164】
[0182]用語「パルス放出」は一般に、薬物の放出速度の急な増加を特徴とする薬物の放出プロファイルを意味する。次いで、薬物の放出速度の上昇は、一定の期間内に消えるであろう。この用語のより詳細な定義は、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery、Edith Mathiowitz(編)、Culinary and Hospitality Industry Publications Servicesに見出すことができる。
【0165】
[0183]特定の実施形態では、用語「高速放出」は、15日以下、例えば、7〜14日以内の薬物送達システム(例えば、このシステムの医療装置の上に配置されているコーティング)からの薬物の実質的に全量のin vivo放出を意味する。用語「高速放出」は、用語「バースト放出」と互換的に使用される。
【0166】
[0184]用語「持続放出」は、ある期間に亘って、例えば数日から数週間又は数年に亘って持ち越されるゼロ次放出、指数関数的減衰、ステップ関数放出又は他の放出プロファイルを含むことができる、薬物の放出プロファイルを一般に意味する。用語「ゼロ次放出」、「指数関数的減衰」及び「ステップ関数放出」並びに他の持続放出プロファイルは、当技術分野で周知である。例えば、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery、Edith Mathiowitz(編)、Culinary and Hospitality Industry Publications Servicesを参照されたい。
【0167】
[0185]一実施形態では、薬物送達システムは、持続放出プロファイルを有する。特定の実施形態では、このシステムは、24カ月まで、又は18カ月まで、又は12カ月まで、又は6カ月まで、又は3カ月まで、又は2カ月まで、又は1カ月までの期間に亘る1種又は複数の薬物の持続放出を提供する。より狭い実施形態では、このシステムは、6カ月まで、又は3カ月まで、又は2カ月まで、又は1カ月までの期間に亘る薬物(複数可)の持続放出を提供する。
【0168】
[0186]薬物の放出速度は、様々な手段で調整することができる。例えば、薬物の放出速度は、薬物のコーティング濃度及びバリアーの平衡吸水率(バリアーが疎水性の非吸収性ポリマーで形成されている場合)、又は吸収速度(バリアーが吸収性ポリマーで形成されている場合)によって調整することができる。
【0169】
[0187]薬物送達システムが2つ以上の薬物を含むいくつかの実施形態では、薬物の1つ又はそれらの複数は、パルス放出、バースト放出、持続放出又は制御放出プロファイルの任意の1つ又は組合せを有することができる。このシステム(例えば、このシステムの医療装置の上に配置されているコーティング)は、1種又は複数の薬物の持続放出と共に1種又は複数の薬物のバースト放出を特色とする放出プロファイルを有することができる。一実施形態では、このシステムは、第1の薬物のバースト放出並びに第1の薬物及び第2薬物の持続放出のプロファイルを有するように構成することができる。他の実施形態では、このシステムは、2種の薬物のバースト放出、続いて両方の薬物の持続放出を有するように設計することができる。さらに別の実施形態では、このシステムは、1種又は複数の薬物のパルス放出、及び任意選択で同一又は異なる薬物の持続放出を提供するように構成することができる。
【0170】
[0188]さらなる実施形態では、薬物送達システム(例えば、このシステムの医療装置の上に配置されているコーティング)は、2つ以上の薬物を同時に放出することができる。同時送達とは、薬物の放出に少なくともある程度の重複があることを意味する。この実施形態では、第2の薬物による放出と重複する限り、薬物の1つは、パルス放出、バースト放出、又は持続放出などによって最初に放出されることができる。
【0171】
[0189]2つ以上の薬物を同時に放出することができるコーティングは、種々の構成を有することができる。例えば、コーティングは、2種の薬物の混合物を含む層を有することができ、又は2つの層を有し、それらの各々が、他の層中のポリマーと同一若しくは異なってもよい特定の薬物及びポリマーを含むことができる。
【0172】
ステントを使用したパクリタキセル及びゾタロリムスの同時投与
[0190]管中に移植されたステントを使用して、パクリタキセルがゾタロリムスと同時投与された場合、ゾタロリムス:パクリタキセルの重量比(γ)は、1つの薬物の作用が他の薬物の作用を減弱(すなわち、干渉)せず、同時投与の全体的効果が付加的で、時には相乗的であるような比である。本発明の実施形態におけるゾタロリムス:パクリタキセルの有用な比の例は、約10:7超、約10:7≦γ≦10:0.01、約10:7≦γ≦10:0.1、及び約γ=10:1である。
【0173】
[0191]血管移植のためのステントを含めた移植可能な医療装置上に付着させる場合、治療物質の典型的な投与量は、0.01μg/mm〜100μg/mmである。典型的には、実際的最大量は、ポリマー、薬物、装置の作製方法によって決定される。ゾタロリムス又はパクリタキセルをステントに付着させる場合、他の投与量が効果的で有用であるが、本発明の実施形態における各成分の典型的な投与量には、それだけに限らないが、0.01μg/mm〜50μg/mm、0.1μg/mm〜30μg/mm、及び1μg/mm〜10μg/mmが挙げられる。しかし、ゾタロリムス:パクリタキセルの比が、約10:7≦γ≦10:0.01、約10:7≦γ≦10:0.1、及びγ=10:1内であり、生物学的安全性が有意に損なわれない限り、任意の投与計画を使用することができる。ゾタロリムス及びパクリタキセル比を使用する有用なステントの例には、10:7(ゾタロリムス:パクリタキセル)ステント(それだけに限らないが、10μg/mmのゾタロリムス及び7μg/mmのパクリタキセルが挙げられる)、並びに10:1ステント(10μg/mmのゾタロリムスを付着させ、1μg/mmのパクリタキセルを付着させる)が挙げられる。
【0174】
ステント移植後の安全性及び有効性に関する試験
[0192]このモデルは、ヒト血管系における再狭窄のための治療を予測するために使用することができる。この試験は、当技術分野で一般に認められたブタ冠動脈過伸張モデル(Schwartz、1992)を利用し、通常約2〜8週間行われる。典型的には、試験的構造には、治療物質又はポリマーを含めた単一の変動要素の変更を除いてあらゆる点で試験ステントと似ている少なくとも1つのステント対照が含まれる。
【0175】
[0193]一例では各ブタにおいて、2つの主要な冠動脈に各々1つの試験ステントを移植し、第3の主要な冠動脈に対照ステントを移植する。ステントは、同一の寸法であるか、又はできるだけ同一であるべきである。
【0176】
[0194]標準的な技術を使用してステントを移植する。試験の終わりに、動物を安楽死させ、心臓を取り出し、洗浄し、(ホルマリン、ホルムアルデヒドなどを含めた)標準的な組織保存技術を使用して固定する。ステントを留置した管を切除し、次いで切片作成のためにメタクリル酸メチル(MMA)、パラフィン、又は寒冷媒体を含んだ適切な媒体中に浸潤し包埋した。情報価値のあるセクションが得られるように、ステントを留置した管を含んだ全てのブロックを区分する。例えば、3つのステント内セクション及び2つの対照セクションである。連続的な薄いセクション(約5μm)を通常、各レベルで取り出し、細胞及び組織を可視化するために染色する(例えば、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)及びマッソンヴァーヘフエラスチン(MVE))。画像分析システム又は他の形態データ収集及び定量化の技術分野で受け入れられている方法を使用してセクションを評価し、スコア化する。新生内膜面積、新生内膜の厚さ、及び面積狭窄率についてデータをスコア化する。
【0177】
実施例3
[0195]この実施例の目的は、ステントを含むブタ冠動脈内の新生内膜形成へのラパマイシン類似体の効果を調べることであった。この実施例は、ラパマイシン類似体ゾタロリムスが、配合され、Biocompatibles BiodiviYsio PC冠動脈ステントから送達される場合、ブタ冠動脈における新生内膜過形成及び管腔の大きさに好ましい影響を与えることを例示する。この所見は、ゾタロリムスを含めた薬剤溶出ステントからの組合せは、ヒトにおいて適切に適用された場合、新生内膜過形成を制限することによって実質的に臨床的に有効であり得ることを示唆する。
【0178】
[0196]薬剤ゾタロリムスは、ラパマイシン類似体である。この実施例において説明する試験は、ラパマイシン類似体ゾタロリムスがブタ冠動脈ステントモデルにおいて新生内膜過形成を軽減する能力を評価するために設計された。このモデルにおけるゾタロリムスの有効性は、経皮的血行再建術後のステント内冠動脈再狭窄の制限及び治療のためのその臨床的可能性を示唆する。飼育ブタを使用したのは、このモデルが、ヒト対象において新生内膜過形成を抑えることを意図する他の調査と比較できる結果を得る可能性が高いためである。
【0179】
[0197]この実施例は、若年飼育ブタ中に配置した冠動脈ステントから溶出したゾタロリムスを試験し、これらの結果を対照ステントと比較した。対照ステントは、薬物を有さないポリマーコーティングが施されている。ポリマー自体は新生内膜過形成を実質的な程度まで刺激しないはずであるので、これは重要である。溶出した薬物が消失するにつれ、ポリマーに対する炎症反応は恐らく、再狭窄過程が停止はしないが遅くなる遅発型の「キャッチアップ現象」をもたらす場合があるであろう。この現象は、ヒト対象において遅れて再狭窄をもたらす場合がある。
【0180】
[0198]ステントを各ブタにおいて2つの血管内に移植した。このモデルにおいて使用したブタは、一般に2〜4カ月齢で体重30〜40Kgであった。2つの冠動脈ステントを、1.1〜1.2の正常なステント:動脈比を視覚的に評価することによってこのように各ブタに移植した。
【0181】
[0199]この処置の日から始めて、ブタに経口アスピリン(毎日325mg)を投与し、試験の残りの期間中継続した。筋肉内注射、次いでケタミン(30mg/kg)及びキシラジン(3mg/kg)の静脈内注射によって全身麻酔を実施した。導入時のさらなる投薬には、筋肉内投与したアトロピン(1mg)及びフロシリン(1g)が含まれた。ステント術処置の間、10,000ユニットのヘパリンの動脈内ボーラスを投与した。
【0182】
[0200]右外頸動脈の切開及び8Fシースの設置によって、動脈へのアクセスを得た。処置後、動物を、コレステロール又は他の特別な補助栄養を含まない通常食で飼育した。
【0183】
[0201]3.0mmの名目上の標的管サイズを有するBiodivYsioステントを使用した。図2を参照されたい。ブタ毎に2つの冠動脈を、ステント配置にランダムに割り当てた。ステントは、薬物溶出ステント(ポリマープラス薬物ステント)又はポリマーのみでコーティングしたステント(ポリマー単独ステント)であった。標準的ガイドカテーテル及びワイヤーによって、ステントを送達した。ステントバルーンを、30秒未満適切なサイズに膨張させた。
【0184】
[0202]各々のブタは、別々の冠動脈内にポリマー単独ステントを1つ及びポリマープラス薬物ステントを1つ有し、したがって各ブタは、薬物ステントを1つ及び対照ステントを1つ有することになった。
【0185】
[0203]標準偏差0.15mm、検出力0.95及びα0.05で、0.12mmの新生内膜の厚さの想定差を検出するために、合計20頭のブタの試料サイズを選択した。
【0186】
[0204]組織病理学検査及び定量化のために28日目に動物を安楽死させた。潅流ポンプ系から心臓を除去した後、近位冠動脈へのアクセスのために左心耳を取り出した。傷害を有する冠動脈セグメントを、心外膜を除いて切開した。病変を含んだセグメントを単離し、それによってどちらかの末端に無関係な血管を含む十分な組織を得た。長さが各々おおよそ2.5cmの上記のセグメントを、標準的合成樹脂包埋技術によって包埋し処理した。続いて組織をヘマトキシリン−エオシン及び弾性ワンギーソン技術で処理し、染色した。
【0187】
[0205]低倍率及び高倍率光学顕微鏡を使用して、較正分析ソフトウェアを用いるコンピュータに接続した較正レチクル及びデジタル顕微鏡システムによって、顕微鏡像の平面で長さの測定を行った。
【0188】
[0206]較正デジタル顕微鏡によって、血管傷害の重篤度及び新生内膜応答を測定した。内弾性板の完全性の重要性は、当業者には周知である。ステントを留置した血管における組織病理学的傷害スコアは、新生内膜の厚さに緊密に相関することが確認された。このスコアは傷害の深さと関連しており、下記の通りである。
傷害スコアの説明
0 内弾性板は無傷であり、内皮は典型的には露出しており、中膜は圧迫されているが断裂していない。
1 内弾性板は断裂しており、中膜は典型的には圧迫されているが断裂してない。
2 内弾性は断裂しており、中膜は視認可能なほど断裂しており、外弾性板は無傷であるが圧迫されている。
3 外弾性板は断裂しており、典型的には中膜の大きな断裂が外弾性板にまで達しており、時としてコイルワイヤーが外膜中に存在する。
【0189】
[0207]傷害のこの定量的測定を、各ステントセクションの全てのステントストラットについて評価した。較正デジタル画像もまた使用して、各ステントストラット部位で新生内膜の厚さを測定した。管腔面積、内弾性板の面積、及び外弾性板内の面積もまた測定した。
【0190】
[0208]所与のセクション中の各ストラットについて測定した新生内膜の厚さを、次いで平均化し、そのセクションの新生内膜の厚さを決定した。
【0191】
[0209]測定、分析、及び比較のために、中央ステントセグメントを使用した。近位及び遠位セグメントについてもデータを記録した(及びこの報告のデータの章に含めた)。
【0192】
[0210]この試験についてのデータ分析法は、軽度から中等度の傷害が処置の差を検出するのに十分な感受性があるため、処置群/対照群における動脈損傷変動を考慮する必要がなかった。ポリマー単独ステント(対照群)及びポリマープラス薬物ステント(処置群)の間の変数を比較するために、対応のあるt検定を実施した。この試験では予定の時点前に死亡した動物はなかった。
【0193】
[0211]表3は、使用したブタ及び動脈を示す。表3において、LCXは左冠動脈の回旋枝を意味し、LADは、冠動脈左前下行枝を意味し、RCAは右冠動脈を意味する。
【表3】

【0194】
[0212]表4は、近位、中位、及び遠位セグメントを含めた、各ステントについての平均傷害及び新生内膜の厚さに関する全てのデータについての要約結果を示す。表4はまた、内弾性板(IEL)及び外弾性板(EEL)によって測定した管腔の大きさ、狭窄率、及び動脈の大きさも示す。
【表4】

【0195】
[0213]試験群(ポリマープラス薬物ステント)又は対照群(ポリマー単独ステント)の間で近位、中位、又は遠位セグメントに亘って新生内膜面積又は厚さについて統計的有意差は存在しなかった。この観察は、従前の試験と極めて一致しており、したがって試験装置(ポリマープラス薬物ステント)に対する対照装置(ポリマー単独ステント)の統計的比較のために中位セグメントのみを使用することが可能である。
【0196】
[0214]表5は、試験群及び対照群の間の統計的t検定比較を示す。新生内膜の厚さ、新生内膜面積、管腔の大きさ、及び管腔狭窄率に統計的有意差が存在し、薬物溶出ステントが明らかに良好であった。反対に、平均傷害スコア、外弾性板又は内弾性板面積については試験群(ポリマープラス薬物ステント)と対照群(ポリマー単独ステント)との間に統計的有意差は存在しなかった。
【表5】

【0197】
[0215]ステントを留置したセグメントに対して近位及び遠位の参照動脈を観察し定量化した。これらの管は、全ての場合において正常であり、対照群(ポリマー単独ステント)及び試験群(ポリマープラス薬物ステント)の両方において傷害を受けていないようであった。図3A及び3Bを参照されたい。下記のデータは、対照群のステントと試験群のステントとの間でサイズに統計的有意差がなかったことを示す。
【表6】

【0198】
[0216]このデータは統計的有意差が存在すること、及びゾタロリムスを溶出するステントが優位であることを示す。本発明のステントは、より低い新生内膜面積、より低い新生内膜の厚さ、及びより大きな管腔面積をもたらす。炎症又は傷害のパラメーターに関して試験群(ポリマープラス薬物ステント)及び対照群(ポリマー単独ステント)の間で有意差は存在しなかった。試験群と比較して対照群に関して(ステントを含めた)動脈の大きさに有意差は存在しなかった。これらの後者の所見は、薬物を含むポリマーコーティングの動脈再構築特性において有意差がないことを示唆する。
【0199】
[0217]ポリマープラス薬物ステント及びポリマー単独ステントの両方に関して、最大限でも軽度の炎症が認められた。この所見は、ポリマーが薬物添加なしでさえも十分に生体適合性を示すことを示唆している。他の試験は、薬物がポリマーから完全に消失した場合、ポリマー自体が新生内膜を生じさせるのに十分な炎症を引き起こすことを示している。この現象は、臨床的遅発性再狭窄の遅発型キャッチアップ現象に関与する場合がある。この実施例におけるポリマーは、冠動脈内に炎症を引き起こさなかったので、薬物が枯渇した後のポリマーの関連する遅発型の問題は考えられない。
【0200】
[0218]要するに、ポリマーコーティングから化合物ゾタロリムスを溶出するステントは、ブタモデルにおいて冠動脈に配置した場合、新生内膜過形成の減少を示した。
【0201】
実施例4
[0219]この実施例の目的は、ホスホリルコリン側鎖基を含む生体適合性ポリマーでコーティングした316L電解研磨ステンレス鋼クーポンからのゾタロリムス薬物の放出速度を決定することである。
【0202】
[0220]HPLCバイアルのふたからのゴムセプタムをバイアルから取り出し、「Teflon」側が上になるようにガラスバイアル中に置いた。これらのセプタムは、試験試料のための支持体の役割を果たした。試験試料は、ホスホリルコリン側鎖基を含む生体適合性ポリマー(PCポリマー)で予めコーティングした316Lステンレス鋼クーポンであった。冠動脈ステントは一般に、316Lステンレス鋼で作られており、PCポリマーでコーティングし、薬物を添加するための貯蔵部位を提供することができる。ステントをシミュレートする役割を果たすコーティングされたクーポンをセプタム上に置いた。ガラス製ハミルトンシリンジを使用することによって、ゾタロリムス及びエタノールの溶液(10μl)を、各クーポンの表面に付着させた。この溶液は、100%エタノール(3.0ml)に溶解したゾタロリムス(30.6mg)を含んだ。各々を付着させる間にシリンジをエタノールで洗浄した。ガラスバイアルのふたをバイアル上に密着しないように置いて、それによって適切な通気を確保した。クーポンを最低1.5時間乾燥させた。12個の(12)クーポンをこのように添加した(装置に添加された薬物の平均量を決定するために6個を使用し、装置からの薬物の放出に必要な時間を測定するために6個を使用した)。
【0203】
[0221]クーポンに添加されたゾタロリムスの全量を決定するために、クーポンをバイアルから取り出し、50/50のアセトニトリル/0.01Mリン酸緩衝液(pH6.0、5.0ml)中に置いた。クーポンを5210Branson超音波処理器中に1時間置いた。次いで、クーポンを溶液から取り出し、溶液をHPLCによってアッセイにかけた。
【0204】
[0222]下記の時間間隔(5分、15分、30分及び60分)の各々でpH6.0にて、0.01Mのリン酸緩衝液の新鮮な一定分量(10.0ml)に個々のクーポンを浸け、取り出して、持続放出試験を実施した。残りの時点である120分、180分、240分、300分、360分については、5.0mlの容積の緩衝液を使用した。薬物放出段階における混合を容易にするために、試料を低速に設定したEberbach振盪機上に置いた。最後の試料の試験が完了した後、全ての溶液の一定分量を、HPLCによってアッセイした。
【0205】
[0223]下記のように設定したHewlett−Packardシリーズ1100機器でHPLC分析を実施した。
注入量=100μl
取得時間=40分
流速=1.0ml/分
カラム温度=40℃
波長=278nm
移動相=65%アセトニトリル/35%H
カラム=YMC ODS−A S5μm、4.6×250mm、部品番号A12052546WT
【0206】
[0224]上記の試験からの結果は、下記の放出データを示した(表6)。
【表7】

【0207】
実施例5
[0225]この実施例の目的は、15mmのBiodivYsio薬物送達ステントへのゾタロリムスの添加及びステントからの放出を決定することであった。
【0208】
[0226]ステントに薬物を添加するために、50mg/ml濃度のゾタロリムスのエタノール溶液を調製し、12個のバイアル中に分配した。12の個々のポリマーコーティングされたステントを、ステントを垂直位置に保持するように設計された固定具上に置き、ステントを薬液中に垂直に5分間浸けた。ステント及び固定具をバイアルから取り出し、ステントを吸収性材料と接触させることによって過剰な薬液を吸い取った。次いで、ステントを上下逆さの垂直位置で空気中にて30分間乾燥させた。
【0209】
[0227]ステントを固定具から取り出し、各ステントを、50/50アセトニトリル/リン酸緩衝液(pH5.1、2.0ml)中に置き、1時間超音波処理した。ステントを溶液から取り出し、溶液を薬物の濃度についてアッセイし、元々ステント上に存在した薬物の量の計算を可能とした。この方法は、ステントコーティングからの薬物の少なくとも95%が除去されることを別々に示した。平均すると、ステントは、120±9マイクログラムの薬物を含んだ。
【0210】
[0228]薬物添加ステントを固定具上に置き、個々のバイアル中の0.01Mのリン酸緩衝液(pH=6.0、1.9ml)中に入れた。これらの試料を、低速に設定したEberbach振盪機上に置き、前後の撹拌を行った。緩衝液中で薬物飽和に到達するのを防止するために、ステントを新鮮な緩衝液バイアルに下記の時点で周期的に移した(15分、30分、45分、60分、120分、135分、150分、165分、180分、240分、390分)。試験した薬物放出期間の終わりに、溶解緩衝液バイアルを、薬物濃度についてHPLCによってアッセイした。薬物の累積放出割合を時間の関数として表すデータを、下記の表形式に示す(表7)。
【表8】

【0211】
実施例6
[0229]ラパマイシンのテトラゾール類似体であるゾタロリムスは、ブタ冠動脈ステント誘発性傷害において抗再狭窄作用を有することが示された。Schwartz、R.S.Efficacy Evaluation of a Rapamycin Analog(A−179578)Delivered from the Biocompatibles BiodivYsio PC Coronary Stents in Porcine Coronary Arteries、Technical Report、Mayo Clinic and Foundation、Rochester、MN。この実施例の目的は、健康な男性におけるゾタロリムスの漸増単回静脈内(TV)投与の安全性及び薬物動態(PK)を評価することであった。
【0212】
[0230]現在のところ、ゾタロリムスのヒトへの最初の投与試験(安全性及び薬物動態)を、100〜900μg用量範囲に亘るゾタロリムスの静脈内ボーラス投与に続いて調査した。静脈内ボーラス用量の投与は、薬物コーティングされたステントからのゾタロリムスの最も急な予想外のin vivo放出を模倣するであろう。
【0213】
[0231]これは、第1相、単回漸増用量、二重盲検、無作為、プラセボ対照、単一施設試験であった。60人(60)の成人健康男性を、100μg、300μg、500μg、700μg、及び900μgの5つのIV処置群に分けた。対象についての人口統計学的情報を、表9に要約する。
【表9】

【0214】
[0232]表10に示される投与計画に示されるように、空腹条件下でゾタロリムスの単回静脈内用量又は対応する静脈内プラセボを投与されるように、対象を無作為に割り付けた。
【表10】

【0215】
[0233]先行するより低量の処置群からの安全性データを評価した後により高い用量を投与した。処置群は少なくとも7日間隔をあけた。安全性の理由のため、各処置群を、6人の対象の2つのコホートに分割し、1群の2つのコホートの投与は少なくとも1日の間隔をあけた。
【0216】
[0234]用量を8人の対象に3分に亘るIVボーラスとして投与した。各用量群において、4人の対象にゾタロリムスを投与し、4人の対象にプラセボを投与した。ゾタロリムスの血中濃度を、168時間採取し、0.20ng/mLのLOQを有するLC−MS/MSを使用して測定した。
【0217】
[0235]試験1日目の投与前(0時間)、並びに投与後0.083時間(5分)、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、16時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、及び168時間に、エデト酸(EDTA)を含む真空採取管中に、静脈穿刺によって7(7)mLの血液試料を回収した。
【0218】
[0236]有効な液体/液体抽出HPLCタンデム質量分析法(LC−MS/MS)を使用して、ゾタロリムスの血中濃度を決定した(Jiら、2004)。0.3mLの血液試料を使用して、ゾタロリムスの定量化の下限は、0.20ng/mLであった。全ての較正曲線は、0.9923以上の決定係数(x)値を有した。
【0219】
[0237]有害事象、理学的検査、生命徴候、ECG、注射部位及び臨床検査評価に基づいて安全性を評価した。
【0220】
[0238]ゾタロリムスの薬物動態パラメーター値を、ノンコンパートメント法を使用して推定した。これらのパラメーターには、ゾタロリムス投与5分後の濃度(C)、投与量で標準化したC、排泄速度定数(β)、半減期(t1/2)、0時間から最終濃度測定時間までの血中濃度−時間曲線下面積(AUC0−last)、投与量で標準化したAUC0−last、無限大時間まで外挿した血中濃度−時間曲線下面積(AUC0−inf)、投与量で標準化したAUC0−inf、全身クリアランス(CL)、及び分布容積(Vdβ)が含まれた。
【0221】
[0239]ゾタロリムスの静脈内用量後の平均血中濃度−時間プロットを、各々線形目盛及び対数線形目盛上で図4及び図5に示す。
【0222】
[0240]2つの投与計画の各々の投与後の、ゾタロリムスの平均±SD薬物動態パラメーターを、表11に示す。
【表11】

【0223】
[0241]用量比例性及び線形薬物動態の問題を調査するために、共分散分析(ANCOVA)を行った。対象を用量レベルによって分類し、体重は共変量であった。分析した変数には、β、Vdβ、投与量で標準化したC、並びに投与量で標準化したAUC0−last及び投与量で標準化したAUC0−infの対数が含まれた。用量に伴う不変性仮説の主要な試験は、用量の単調関数について良好な能力を有する用量レベル効果の試験であった。さらに、ANCOVAの枠組み内で最も高い用量レベル及び最も低い用量レベルを比較した。
【0224】
[0242]図6は、ゾタロリムスのCmax、AUC0−last及びAUC0−infの用量比例性を示す。この図に見られるように、投与量で標準化したCmax、及びAUC0−lastについて統計的に有意な単調傾向は観察されず、これらのパラメーターにおける用量比例増加を示唆した。用量に伴う統計的に有意な単調傾向は、ゾタロリムスの投与量で標準化したAUC0−infについて観察された(p=0.0152)。しかし、全ての群に亘る投与量で標準化したAUC0−infの相互比較は、100μgの場合の投与量で標準化したAUC0−infのみが900μg及び300μg(各々、p=0.0032及びp=0.0316)のものより統計的に有意に異なっていたことを示した。統計的に有意な単調傾向はまた、βについても観察された。この逸脱は、100μg用量群についてのβの僅かな過剰評価のためかもしれない。ゾタロリムスの平均C(5分での濃度)及びAUC0−infは、表12に示されているように、用量に比例して増加した。
【表12】

【0225】
[0243]試験した用量に亘って、平均半減期は26.0〜40.2時間の範囲であり、300〜900μgの用量範囲に亘っては有意差があるとはいえなかった。ゾタロリムスは全ての用量において耐容性良好であり、臨床的に有意差があるとはいえない理学的検査結果、生命徴候又は試験室での測定を観察した。
【0226】
安全性
[0244]ゾタロリムスと関連する(任意の1処置群において2つ以上の対象から報告された)最も一般的な治療中に発生した有害事象は、注射部位反応及び疼痛であった。
【0227】
[0245]有害事象の大半は、重篤度が軽度であり、自然に消散した。
【0228】
[0246]この試験において、重篤な有害事象は報告されなかった。
【0229】
[0247]試験の間の理学的検査の所見、生命徴候、臨床試験室又はECGパラメーターにおける臨床的に有意な変化はなかった。
【0230】
結論
[0248]IVゾタロリムスの薬物動態は、C及びAUC0−infに関して100〜900μgの用量範囲に亘って用量比例的である。全体的にゾタロリムスの薬物動態は、C、AUC0−last及びAUC0−infにおける用量比例増加によって例示されるように、100μg〜900μgの用量範囲に亘って本質的に線形であった。900μgまでの単一のIVボーラス用量を、安全性の懸念なしに投与した。
【0231】
[0249]ゾタロリムスの平均排泄半減期は、試験した用量範囲に亘って26.0〜40.2時間の範囲であった。平均クリアランス及び分布容積は、各々2.90〜3.55L/h及び113〜202Lの範囲であった。βについて、及び有意な程度までVdβについて、線形動態からの観察された逸脱は、100μg用量群についてのβの過剰評価のためであった。
【0232】
[0250]100〜900μgの単回用量のゾタロリムスについては一般に、対象は良好な耐容性を示す。
【0233】
実施例7
[0251]本試験は、複数回投与後のゾタロリムスの薬物動態を評価し、且つ健康な対象への全身的な曝露を最大化する間のその安全性を評価するために設計した。主要目的は、コーティングされたステントから溶出される薬物の予測されるレベルを有意に上回るゾタロリムスの総曝露を達成することであった。この試験は、健康な対象における14日間連続の毎日200μg、400μg及び800μg用量の複数回静脈内注入に続く、第1相、複数回用量漸増試験におけるゾタロリムスの薬物動態及び安全性を調査した。
【0234】
方法
[0252]第1相、複数回漸増用量、二重盲検、プラセボ対照、無作為試験。3種の1日1回の(QD)投与計画(200μg、400μg又は800μgQD、投与計画毎に16人の活性及び8人のプラセボ)に均等に分けられた72人の対象は、ゾタロリムスの60分QD静脈注入を14日連続で投与された。最初の投与後、10日目、11日、12日、13日の投与前に24時間に亘って、及び14日目の投与後168時間に亘って、血液試料を回収した。尿試料は、1日目、14日目、16日目、18日目及び20日目に24時間に亘って回収した。有効なLC/MS/MS方法を使用してゾタロリムスの血液及び尿濃度を決定した。コンパートメント分析によって薬物動態パラメーターを決定した。全日AUC0−∞(全ての14の用量を含めた0時間から無限大時間までの血中濃度−時間曲線下面積)を計算した。用量及び時間直線性及び定常状態の達成を評価した。尿中に排泄された薬物の画分を決定した。
【0235】
[0253]全体的に健康な72人(72)の男性及び女性の対象が、この試験に登録した。人口統計学的情報を表13に要約する。
【表13】

【0236】
[0254]表14に示されるように、対象を2つの異なる場所で3群(I、II及びIII群)に無作為割り付けした。2つの試験場所で、各群内で、対象を均等に分け、各場所において12人の対象(ゾタロリムス、8人の対象;プラセボ、4人の対象)が登録した。各用量群内の投与計画を下に示す。
【表14】

【0237】
[0255]I、II及びIII群について、対象は、空腹条件下で、ゾタロリムス200μg、400μg、若しくは800μgの単回60分毎日(QD)静脈内注入、又はプラセボの対応する静脈内注入を、各々試験1日目から14日目まで投与された。薬物は、y部位装置に接続されているシリンジポンプ(125〜150mLの5%デキストロース水溶液(D5W)もまた60分に亘って注入した)を介して投与された。群に順次に投与し、前の群の最後の投与と次の群の最初の投与との間に少なくとも7日置き、その間に前の群からの時間安全性データを分析した。用量増大は、より低い用量の群の安全性分析によって決定した。
【0238】
[0256]カリウムEDTAを含む管中に5(5)mLの血液試料を回収し、投与前(0時間)、並びに試験1日目及び14日目の注入開始後0.25時間、0.5時間、1.0時間、1時間5分、1.25時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間、18時間及び24時間目にゾタロリムス濃度を評価した。試験14日目の注入開始後36時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間及び168時間、並びに10日目、11日目、12日目及び13日目の投与前にさらなる試料を回収した。保存料を有さない容器中に、下記の間隔で尿を回収した。試験1日目、14日目、16日目、18日目及び20日目の注入開始後0〜6時間、6〜12時間、12〜18時間及び18〜24時間。
【0239】
[0257]有効な液体/液体抽出HPLCタンデム質量分析方法(LC−MS/MS)を使用して、ゾタロリムスの血中濃度及び尿中濃度を決定した。ゾタロリムスの定量化の下限は、0.3mLの血液試料を使用して0.20ng/mL、0.3mLの尿試料を使用して0.50ng/mLであった。
【0240】
[0258]有害事象、理学的検査、生命徴候、ECG、注射部位及び臨床検査の評価に基づいて、安全性を評価した。
【0241】
結果
[0259]全ての対象についてのゾタロリムス血中濃度−時間データは、一次消失を伴う3コンパートメントオープンモデルによって説明した。試験した投与計画に亘って、平均コンパートメント薬物動態パラメーターの範囲は、CL4.0〜4.6L/h;V11.3〜13.1L;Vss92.5〜118.0L、及び最終消失t1/224.7〜31.0hであった。ゾタロリムスの薬物動態は、1日目及び14日目では試験した投与計画に亘って用量直線性と一致した。薬物動態モデルを、1日目及び14日目についてのデータに同時にあてはめ、これは時間−線形薬物動態を示す。試験した投与計画についての全日AUC0−∞は、677〜2395ng・hr/mLの範囲であった。平均して、投与後24時間の期間内にゾタロリムス用量の0.1%が、尿中に回収された。
【0242】
薬物動態及び統計解析
[0260]コンパートメント分析を使用して個々の対象についてゾタロリムスの薬物動態パラメーター値を推定した。試験1日目の最初の用量、試験14日目の最後の用量、並びに試験10日目、11日目、12日目及び13日目のトラフ濃度からのデータを、各々の個々の対象について同時にモデル化した。決定したパラメーターは、中央コンパートメントの容量(V)、最終排泄速度定数(γ)、クリアランス(CL)、定常状態での分布容積(Vss)、半減期(tl/2)、最高濃度(Cmax)、最高濃度時間(Tmax)、14日目の血中濃度−時間曲線下面積(AUCτ)及び対応する投与量で標準化したCmax及びAUCτであった。各個人の最適モデルを使用して、14日間の期間に亘るその個人の濃度−時間プロファイルを予測して、試験期間に亘る慢性曝露、すなわちCmax及び全日AUC0−∞(試験中の14の投与全てを考慮に入れた、0時間から無限大時間までの予測した血中濃度−時間下面積プロファイル)を推定した。
【0243】
[0261]試験14日目の用量についての用量比例性を評価するために、投与量で標準化したCmax、投与量で標準化したAUC、及び最終排泄速度定数の対数についての共分散分析(ANCOVA)を行った。中央及び用量は因子であり、体重は共変量であった。定常状態に達したかという問題に取り組むために、試験10〜14日目の投与量で標準化した投与前濃度について、中央及び用量レベルが因子である反復測定分析を行った。
【0244】
薬物動態
[0262]全ての対象についてのゾタロリムス血中濃度−時間データを、一次消失を伴う3コンパートメントオープンモデルによって説明した。1日目、14日目及び1〜14日目のゾタロリムスについての平均血中濃度を、図7において示す。ゾタロリムスの薬物動態パラメーターの平均±SDを、表15に示す。
【表15】

【0245】
[0263]試験した投与計画に亘って予測した診断プロットに対して偏りが観察されなかったため、試験した用量の投与計画に亘るコンパートメント薬物動態パラメーターの範囲は非常に狭く、二次パラメーターにおける試験した用量の投与計画に亘る意味ある傾向は観察されなかった。試験した用量の投与計画に亘ってゾタロリムスについて用量直線性を推測した。
【0246】
[0264]下記の図は、ゾタロリムスの14日目のCmax及びAUC0−24hにおける用量比例性を示す。図8a、8b及び8cは、各々1日目、14日目及び1〜14日目の、200μg、400μg及び800μgQD処置群についての、ゾタロリムスの平均血中濃度−時間プロファイルを示す。図9において例示されるように、このモデルは、各用量群について、1日目、並びに14日目、及びその間の期間についてのデータを適切に説明した(800μgQD用量群データを当てはめた平均の観察及び予測した血中濃度対時間プロットの例)。線形動態であると想定する3−コンパートメントモデルによる1日目から14日目までに亘る観察したゾタロリムスの濃度−時間データの優れたフィットは、ゾタロリムスが時間不変性クリアランスを示すことを示唆する。
【0247】
[0265]図9に示すように、試験10〜14日目の投与量で標準化した投与前濃度において統計的差異は観察されなかった。
【0248】
[0266]200μg、400μg及び800μgQD処置群についてのCmax中央値は、各々11.4、22.1及び38.9ng/mLであった。対応する全日AUC0−∞中央値は、各々677、1438、及び2395ng・h/mLであった。
【0249】
[0267]800μgQD用量群について尿中に排泄されたゾタロリムス用量の画分を計算した。1日目及び14日目に24時間の期間内で、平均してゾタロリムスの約0.1%が尿中に回収された。
【0250】
安全性
[0268]ゾタロリムスと関連する最も一般の治療中に発生した有害事象は、疼痛、頭痛、注射部位反応、乾燥肌、腹痛、下痢及び発疹であった。有害事象の大半は、重篤度が軽度で自然に消散した。この試験において報告されている重篤な有害事象はなかった。具体的には、対象は、免疫抑制のいかなる臨床上又は生化学的証拠、QTc延長又は臨床的に有意な有害事象を示さなかった。
【0251】
結論
[0269]試験した用量の投与計画に亘って14日間連続静脈内投与された場合、ゾタロリムス薬物動態は、用量比例性及び時間不変性であった。
【0252】
[0270]ゾタロリムスのQD投与についての定常状態は、最初のトラフ試料が測定された日である10日目までに到達された。
【0253】
[0271]1日当たり用量の約0.1%が尿中に変化しない薬物として排泄されるため、腎排泄はゾタロリムスの主要な排泄経路ではない。
【0254】
[0272]ゾタロリムスは一般に、200μg、400μg、及び800μgの多回用量で14日間連続投与された場合、耐容性良好である。
【0255】
実施例8 ゾタロリムス及びパクリタキセルの抗増殖性作用
[0273]試験は、組み合わせて投与された場合のゾタロリムス(ABT−578)とパクリタキセルとの相互作用を調査するために行われた。in vitro増殖アッセイを使用して、ヒト冠動脈平滑筋細胞(hCaSMC)及び内皮細胞(hCaEC)の増殖抑制作用についてのパクリタキセル及びゾタロリムスの効果を決定した。血管の新生内膜への血管平滑筋細胞の増殖及び移動は、再狭窄病変に見出される特有の病理学反応である(Lafont及びLibby、1998)。その結果、ヒト冠動脈平滑筋細胞及び内皮細胞上で候補となる抗再狭窄化合物の増殖抑制作用を特異的に測定するin vitroアッセイは、潜在的なin vivo抗再狭窄作用を予測する。
【0256】
[0274]in vitroのトリチウム取込みアッセイによって測定される、増殖因子媒介性のヒト冠動脈平滑筋細胞(hCaSMC)増殖を減弱させる化合物又は化合物の組合せは、候補となる抗再狭窄剤である。トリチウムの組込みアッセイは、細胞数及び増殖を決定するための正確で感受性の高い方法である。このアッセイを使用して、単独で増殖抑制作用を示す薬剤が、組合せにおいてもまた同様の作用を示すかを決定した。さらに、より低い効力の増殖抑制作用を示す薬剤は、組み合わせて投与された場合、より強力な抗増殖剤の作用を遮断する場合がある。ゾタロリムスの増殖抑制作用のタクロリムスによる減弱は、この効果の明らかな例である(図10A)。ゾタロリムス及びパクリタキセルの組合せの潜在的な抗再狭窄作用を決定するために、各化合物の存在下及び組合せ中におけるhCaSMCの増殖を測定した。
【0257】
[0275]パクリタキセルは、微小管脱重合を妨げ、S期における細胞の進行を遮断する(Schiff及びHorwitz、1980)。ゾタロリムスは、ラパマイシンのように、mTOR阻害を介してサイクリン依存性キナーゼを遮断し、G1〜S期における細胞周期進行を阻害する(Marxら、1995;Sehgal、1998;Sehgal、2003)。
【0258】
[0276]パクリタキセルがゾタロリムスの作用を減弱又は増大しているかを決定するために、増殖因子誘導性増殖に対する単独及び組み合わせたパクリタキセル及びゾタロリムスの効果を決定した。アイソボログラムアプローチ及び併用指数分析を使用して、その相加性についてデータを分析した。アイソボログラムは、組み合わせて特定のレベルの効果を生じさせる組合せの用量のデカルト図である。軸ポイントを結ぶ線の下又は上にあたる試験ポイントの対応値は、各々相乗作用及び非相乗作用を示すため、薬物の組合せ及び同様の試験の結果を図表によって示す便利な方法である。
【0259】
増殖アッセイ法
H−チミジン取込み
[0277]血清及び増殖因子によって刺激された細胞の新たに合成されたDNAへのH−チミジンの組込みを追うことによって、細胞増殖をモニターした。指数関数的に増殖するhCaSMCを、96ウェルフラットボトム組織培養プレート中に5,000細胞/ウェルで播いた(hCaECについては10,000細胞/ウェル)。細胞を一晩付着させた。増殖培地を翌日取り除き、細胞を非補足(基本)培地で2度洗浄し、微量の血清及び増殖因子を取り除いた。基本培地(200μl)を、各ウェルに加え、増殖因子及び血清を欠いている培地中で細胞をインキュベートし、それらをG0状態で飢餓状態にし、同期化させた。血清及び増殖因子を欠いている培地中で飢餓状態(hCaSMCについては48時間、及びhCaECについては39時間)後、薬物の非存在下又は存在下で細胞に200μlの補足培地を補充した。ジメチルスルホキシド(DMSO)を、全てのウェル中で0.1%の最終濃度に維持した。72時間のインキュベーション期間後、25μl(1μCi/ウェル)のH−チミジン(Amersham Biosciences;Piscataway、NJ)を、各ウェルに加えた。細胞を37℃で16〜18時間インキュベートし、セルハーベスター(Harvester9600、TOMTEC;Hamden、CT)を使用して、接着したガラス繊維フィルターを含む96ウェルプレート上で細胞を収集した。フィルタプレートを一晩空気乾燥し、MicroScint−20(25μl;PerkinElmer;Wellesley;MA)を各フィルターウェルに加え、プレートをTopCountマイクロプレートシンチレーションカウンター(PerkinElmer)を使用して計数した。対照は、培地のみ、飢餓状態の細胞及び完全培地の細胞を含んだ。完全培地中の細胞増殖と比較して、新たに合成したDNAへのH−チミジンの組込みの阻害を決定することによって、薬物作用を確立した。
【0260】
[0278]データは、ビヒクル処理対照と比較したH−チミジンの組込みの阻害割合として表し、3〜4回の試験の平均±SEMとして示す。薬物濃度に対する各試験からの阻害の平均値の片対数図を作成し、薬物の非存在下の完全培地中でインキュベートされた細胞と比較した50%阻害レベルを外挿することによって、各試験についてのIC50(半数阻害濃度(細胞増殖を50%減少させる濃度)を決定した。最終IC50は、3〜4回の試験の平均である。
【0261】
[0279]これらの試験において、x軸は、多様な薬物の濃度を表す。各グラフは、ゾタロリムス及びパクリタキセルの単独曲線を含む。各グラフ中の一連の曲線は、一定の濃度のパクリタキセルを、示された濃度のゾタロリムスに加えることによって作製した。各曲線は、示された一定の濃度のパクリタキセルの存在下でのゾタロリムス(x軸上に示した濃度)の用量反応を表す。
【0262】
[0280]2つの方法を使用し、増殖に対するゾタロリムス及びパクリタキセルの複合効果を分析した。いくつかの効果レベルでアイソボログラムを作製した(Tallaridaら、1989)。濃度反応曲線を、非線形回帰(Prism、GraphPadソフトウェア;San Diego、CA)によってあてはめ、EC50及びhillslope値を得た。4つのパラメーターの式(式1)を使用して、特異的増殖抑制効果を引き出す濃度を決定した。
【数1】


式中、Xは濃度の対数であり、Yは反応である。式1はまた、
【数2】


(式中、X=反応Yを生じる薬物の対数濃度であり、Top値及びBottom値は、各々100及び0とする)としても表すことができる。
【0263】
[0281]アイソボログラムに加えて、Chou及びTalalayの方法を使用して、下記を例外として相乗作用についてデータを分析した(Chou及びTalalay、1984)。非線形4パラメーター式は濃度反応曲線をより正確に作るため、各曲線について作製した回帰モデルを、半有効データ(ログロジットプロット)の代わりに使用した。半有効プロットは、0.2未満及び0.8超の分数占有の値によって非常に影響を受ける。25%、50%、60%及び75%を生じさせるいくつかの薬物の組合せについての併用指数(CI)を、式2によって計算した。
【数3】


式中、特定の効果レベルで、(D)1及び(D)2は、組合せ中の薬物1及び薬物2の濃度であり、(Dx)1及び(Dx)2は、薬物1単独及び薬物2単独の濃度である。各薬物がそれ自体の効力に従って作用することを仮定して、CI値は組合せの効果の合計を反映する。式2は、2種の相互に非排他的な化合物の組合せについての予測される効果を説明する。各薬物がそれ自体の用量依存的な分数占有に従って複合効果に貢献している場合、CIは1と等しい。1未満のCI値は、相乗的であると考えられ、有意に1を超える値は、劣加法的であると考えられる。CIと、相乗性、相加性又は減弱化との関係は、効果レベル依存性である場合があるので、複数の薬物の組合せを使用していくつかの効果レベルでCIを決定した。CI値が計算された効果レベル(又はfa)の関数として、CI値をプロットした。CI値は、アイソボログラム分析と同様に、効果レベル依存性であり、効果レベルが変化すると変動するので、CI値を比較する上で効果レベルを考慮することは重要である。CI値の正確性は、今度は、それらの計算に使用される濃度値の正確性に依存する。この試験において、精度の高い方法(GraphPadソフトウェアによる反復曲線の当てはめ)を使用して、いくつかの効果レベルで各累積用量反応曲線から薬物濃度を計算した。用量反応曲線は、用量依存的な作用をあまり示さない場合があるデータにあてはめることができる。高濃度の試験剤の1つの存在下で生じる用量反応曲線を分析する場合、これは特に明らかである。このような条件下では用量反応曲線から薬物濃度を決定する上での誤差は、低い効果レベル(fa)で高いCI値をもたらす場合がある。したがって、最大半量効果(すなわち、fa〜0.5)に近いか又は超える明確な用量反応曲線から作製したCI値は、薬物組合せの作用の最も正確な予測材料である。このような条件下では、1未満のCI値は、超加法的であると考えられ、1を有意に超える値は、劣加法的であると考えられる。1に近い値は加法的であると考えられる。
【0264】
結果
[0282]この試験は、再狭窄に関与している2種の細胞型であるヒト冠動脈平滑筋細胞(hCaSMC)及びヒト冠動脈内皮細胞(hCaEC)への薬剤の作用について取り扱う。結果を図10及び表16に示す。図10は、タクロリムスが、in vitroで平滑筋細胞においてゾタロリムスの増殖抑制作用を遮断することを示す(図10A)。in vitroでの平滑筋細胞(図10B)及び内皮細胞(図10C)におけるゾタロリムス、パクリタキセル(P)及び組合せの増殖抑制作用もまた示されている。図10D−Gは、平滑筋細胞における組合せの増殖抑制作用のアイソボログラム分析を示す。特定のレベルの増殖抑制作用を生じる濃度を、平均データの非線形曲線の当てはめから作製した用量反応曲線から決定した。図10H−Kは、内皮細胞におけるゾタロリムス及びパクリタキセルの組合せの増殖抑制作用のアイソボログラム分析を示す。特定のレベルの作用を生じさせる化合物の濃度を、平均データから決定した。図10L−Mは、hCaSMC及びhCaECにおけるABT−578及びパクリタキセルの組合せの増殖抑制作用の併用指数(CI)分析を示す。Chou及びTalalayの方法を使用して、平均データからCI値を決定した(Chou及びTalalay、1984)。
【0265】
[0283]各個々の薬剤単独からのデータは、ゾタロリムス及びパクリタキセルの両方が、各細胞型において用量依存的に増殖を阻害することを示す。図10Bは、ゾタロリムスによる増殖の阻害が、パクリタキセルによって遮断されないことを示す。パクリタキセル及びゾタロリムス両方の増加する濃度は、hCaEC及びhCaSMC増殖をほぼ完全に阻害する。これらのデータは、低い効果レベル(すなわち、増殖の≦50%阻害)では、パクリタキセル及びゾタロリムスを合わせた効果は、それらの個々の作用を合計することによって予測されることを示す。この関係は、高い阻害レベルを除いて大部分の阻害レベルで維持される。高い阻害レベルでは、増殖抑制作用は、各薬剤単独の作用から予測されるより僅かに超える。hCaSMCデータのアイソボログラム及びCI分析の両方は、パクリタキセル(2.5nM)及びゾタロリムスを含む組合せが、高い効果レベル(60及び75%)で潜在的に超加法的な増殖抑制作用を示すことを示す。
【表16】

【0266】
[0284]パクリタキセルはゾタロリムスの増殖抑制作用を遮断しないことをこれらのデータは示す。さらに、高濃度のゾタロリムス及びパクリタキセルは、相乗的であると思われる増殖抑制作用を示す。
【0267】
実施例9 有益な薬剤の溶出試験
PC1036によるステントのコーティング
[0285]任意の試験の前に、コーティングされたステントを調製した。これらは、3.0mm×15mmの316L電解研磨したステンレス鋼ステントであった。ホスホリルコリンポリマーPC1036(Biocompatibles Ltd.;Farnham、Surrey、UK)の濾過したエタノール(EtOH)溶液20mg/mLを使用して、各ステントを噴霧コーティングした。ステントを最初に空気乾燥させ、次いで70℃で16時間加硫した。次いでそれらを<25KGyのガンマ線照射に送った。
【0268】
ステントへの治療物質添加
[0286]これらの試験において、薬剤をステントに添加し、溶出プロファイルを試験した。一般に、この手順は下記の通りであった。多重PCコーティングされたステントに、各薬物の組合せ溶液を添加した。薬物の溶液は通常、膜形成を促進するために約10%PC1036を溶液に加えた100%エタノール中の2〜20mg/mLの範囲のゾタロリムス及び1.0〜7.0mg/mLの範囲のパクリタキセルであった。アイソレーターユニット内のワンパス噴霧システム中で適切な薬物をステントに噴霧添加することによって2種の薬物ステント及び単一の薬物ステントの添加を行った。全てのDESステントは、Abbott Laboratories TriMaxx N5デザイン15mm×3.0mmステントから作製し、全てのカテーテルは、Medtronic(Minneapolis、MN)OTW、15mm×3.0であった。各組合せのために製造した数には、加速溶出、薬物添加含量、不純物プロファイル、及び動物有効性試験のためのユニットが含まれた。薬液を添加する前にステントを秤量した。全てのステントに、エタノール中91:9の比の適切な薬物(複数可)及びPCl036を含む溶液からの標的とする薬物含量を噴霧添加した。パクリタキセル:ゾタロリムスの組合せでは、7μg/mmのパクリタキセル及び10μg/mmのゾタロリムス、3.5μg/mmのパクリタキセル及び5μg/mmのゾタロリムス、1μg/mmのパクリタキセル及び10μg/mmのゾタロリムス、7μg/mmのパクリタキセル単独、及び10μg/mmのゾタロリムス単独でステントを調製した。添加すると、全てのステントをオーブンセット中で40℃にてオープンバイアル中30分間乾燥させ、薬物添加を測定するために秤量した。次いで、薬物を添加したステントを、エタノール中の10mg/mlポリマー溶液を噴霧することによって5μg/mmのPC1036でオーバーコーティングした。
【0269】
[0287]オーバーコーティング後、秤量してオーバーコートの重量を決定する前に、ステントをオーブン中で70℃にて2時間加硫した。薬物添加の後、ステントをカテーテル上に組み立て、バルーンに圧着した。次いで、ステントをコーティング及び物理的欠損について目視検査した。ステント/カテーテルを、保護用フープ中に挿入し、ステント/カテーテルを、Tyvekパウチ中に置いた。パウチをVertrod(San Rafael、CA)Impulseヒートシーラーで密封した。ステント識別ラベルをパウチ正面の底の角の、製造物を含む密封した領域の外側に取り付けた。次いで製造物の詳細のラベルを付けた白い箱中に製造物を置き、EtO滅菌に送った。滅菌から戻った後、製造物を脱酸素剤及び乾燥剤のサシェ剤を含むホイルパウチ中に包んだ。パウチに、ステントの識別番号及び製造物の詳細のラベルを付けた。窒素流下パウチを密封した。
【0270】
ステントからの薬物の抽出
[0288]各薬物について、3種のステントを使用して、添加された薬物の総量を評価した。ステントを、アセトニトリル50%、水50%の溶液6mL中に浸漬し、20分間超音波処理した。抽出溶液中の各薬物の濃度を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。
【0271】
[0289]後述する溶出試験の終わりに、ステントを溶出媒体から取り出し、アセトニトリル50%、水50%の溶液6mLに浸漬し、20分間超音波処理した。これらのバイアル中の各薬物の濃度は、溶出試験の終わりにステント上に残る薬物の量を示した。
【0272】
溶出過程
[0290]in vitro薬物溶出を評価するために、ステント(各群についてn=3)を拡張し、次いで1%Solutol HS15(BASF;Florham Park、NY)を含む10mMの緩衝酢酸溶液(pH=4.0)中に置き、USP Type II溶解装置中で37℃まで加熱した。薬物の水溶性が非常に低いため可溶化剤が必要であった。6超のpHで起こるolimus薬の分解を最小限にするために、溶解培地を緩衝した。pH4で緩衝させることがこの問題を解決する。これらの薬物はこれらのpH範囲で最小の解離を有するため、pHは溶出速度にほとんど影響を有さないはずである。Teflon、ステンレス鋼又はガラス製の表面のみが取り付けられたシリンジサンプラーを使用して、選択した時間間隔に試料を溶解浴から引き上げた。15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間及び24時間後に、一定分量を回収した。ゾタロリムス及びパクリタキセル濃度について、HPLCによって試料をアッセイする。データを溶出した薬物(マイクログラム)及び溶出した平均割合として表す。
【0273】
[0291]HPLC方法において、分析カラムのSolutol汚染を最小限にするため、及びガードカラムのすすぎを可能にするためにカラムスイッチングを使用することが必要である。そうでないと、このシステムはSolutolでコーティングされ、クロマトグラフィー保持が劇的に変化する。試料を最初にガードカラムに注入した。分析物ピークがガードカラムから溶出し、分析カラムに移ると、ガードカラムを分析経路から切り替えた。次いで、次の注入の前に、ガードカラムを洗浄しSolutolを除去する。
【0274】
結果
[0292]図11〜13は、上記のようなポリマーPC1036の5μg/mmトップコートを有するステントに、7μg/mmのパクリタキセル及び10μg/mmのゾタロリムス、3.5μg/mmのパクリタキセル及び5μg/mmのゾタロリムス、1μg/mmのパクリタキセル及び10μg/mmのゾタロリムス、7μg/mmのパクリタキセル単独、並びに10μg/mmのゾタロリムス単独で、ゾタロリムス及びパクリタキセルを添加したステントの加速溶出速度を例示する。
【0275】
[0293]図11において、示した24時間溶出プロファイルは、1つの有益な薬剤がパクリタキセルであり、第2の有益な薬剤がゾタロリムスである。上記のように溶出を行った。パクリタキセルの単一薬物ステントは、2つの放出プロファイル、すなわち最初の大きなバースト放出(約60%)とそれに続くより遅いゼロ次放出速度の組合せを示し、一方パクリタキセル及びゾタロリムスの両方を含む2種の薬物ステントは、バースト放出を有さない。
【0276】
[0294]図12は、図11と同一のデータを示すが、最後のステント抽出後のステント上で測定した総薬物で標準化した。示されているように、両方の薬物の100%をステントコーティングから回収し、回収した総薬物は、薬物添加処理の間のステント重量取込みによって予測した薬物添加と良好に一致する。これらのデータは、薬物の効力及びステント上で試験した同じバッチからの関連する物質に加えて、記載の通りに製造された場合、薬物はポリマーコーティング中で安定であったことを示す。小さい標準偏差は、2種の薬物溶出ステントが、再現性のある溶出動態を有して製造できることを示す。
【0277】
[0295]図13において、4つの曲線は、同一の条件下での各々ゾタロリムス単独及びパクリタキセル存在下の溶出プロファイルである(マイクログラム放出に対する時間)。示されている通り、10μg/mmのゾタロリムス単独又はパクリタキセルと組み合わせたステントに属する3つの曲線は非常に似ている。これは、パクリタキセルがゾタロリムスの溶出プロファイルにあまり影響を及ぼさないことを示す。第4の曲線(PTX3.5及びZota5)は、他のステントの半分の薬物を溶出することが予測された。
【0278】
実施例10 ステント移植後のin vivo新生内膜形成
[0296]ブタ冠動脈過伸張モデル試験(Schwartz、1992)は、ステント移植後28日間の新生内膜形成を試験するために行われた。この試験は、対照ゾタロリムス添加(10μg/mm;ZoMaxx(商標))ステントに対して無作為化されたいくつかの薬剤溶出ステントを評価した。予想外に、ステントから送達されたゾタロリムス及びパクリタキセルの組合せが、非常に効果的であり、広範に利用されるブタ冠動脈過伸張モデルにおける新生内膜過形成の低下の改善を実現する。
【0279】
試験計画及び方法
[0297]各ブタにおいて、2つの主要な冠動脈に各々1つの試験ステントを移植し、第3の主要な冠動脈にゾタロリムス(10μg/mm又は1.69μg/mm)をコーティングした1つのZoMaxx(商標)ステントを移植した。さらに比較のため、3頭のブタに、3種の非薬物を含むTriMaxx(商標)ステント(Abbott Laboratories;Abbott Park、IL)を各々移植した(全部で9つのステント)。比較したステントには、ZoMaxx(商標)ステント(3.0×15mm)、市販のシロリムス(8.5μg/mm又は1.40μg/mm)ポリマーコーティングCypher(登録商標)ステント(3.0×13mm;Cordis Corp.;Miami、FL)及びパクリタキセル(6.8μg/mm又は1.0μg/mm)ポリマーコーティングTaxus(登録商標)ステント(3.0×16mm;Boston Scientific;Natick、MA)ステントが含まれた。ステントの残りの群は、3.0×15mmであった。Taxus(7μg/mm)と同じ薬物添加をされているが、送達ビヒクルとしてPC−1036を添加したパクリタキセルステントが、試験に含まれた(PTX−7)。さらに、3組の組合せステントを、表17に示すように添加した様々な量のゾタロリムス及びパクリタキセルでコーティングした。
【表17】

【0280】
[0298]最後に、新生内膜形成についてのベースラインを同定するために非薬物溶出TriMaxxステントを含めた。
【0281】
[0299]定量的冠動脈血管造影で決定されるように、1.30のバルーン/動脈比でステントを移植した。試験中、心臓又はステントに関連した死亡はなかった。28日後に、動物を安楽死させ、心臓を取り出し、血液が除かれるまで潅流を乳酸加リンゲル液、次いで10%中性ホルマリン緩衝液で約100mm Hgに維持した。ステントを留置した管を切除し、次いでメタクリル酸メチル(MMA)中に浸潤させ、包埋した。3つのステント内セクション及び2つの対照セクションとなるように、ステントを留置した管を含めた全てのブロックを区分した。2つの連続した薄いセクション(約5μm)を各レベルで取り出し、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)及びマッソンヴァーヘフエラスチン(MVE)で染色した。セクションを、BIOQUANT TCW98画像分析システム(Bioquant;Nashville、TN)を使用して評価し、スコア化した。
【0282】
結果
[0300]新生内膜面積、新生内膜の厚さ、及び面積狭窄率についての8群内の全てのステントの平均値を、図14〜16に各々示す(平均±平均値の標準誤差として表す。TriMaxxに対してp値を計算した。4角の中の数字はステント/群の数を示す)。ZoMaxx(商標)、Cypher(登録商標)、及びTaxus(登録商標)ステントは、TriMaxx(商標)ステントと比較した形態計測によって表すと、新生内膜の形成において統計的に等しい減少を示した。10μg/mmのゾタロリムス及び1μg/mmのパクリタキセル(Zot/PTX10/1)を含む組合せステントは、TriMaxx(商標)ステントに対して、新生内膜過形成において有意な減少を示した。さらに、Zot/PTX10/1組合せステントはまた、ZoMaxx(商標)、Cypher(登録商標)、及びTaxus(登録商標)ステントに対して、新生内膜の減少においてさらなる改善を示した。表18は、TriMaxx(商標)に対して、ZoMaxx(商標)及びZot/PTX10/1組合せ薬物ステントで得られる改善を要約する。比較を図17(新生内膜面積)及び図18(面積狭窄率)においてグラフで示す。
【0283】
[0301]最新式の単一の薬物ステントであるZoMaxx(商標)、Cypher(登録商標)、及びTaxus(登録商標)の各々は、TriMaxx(商標)対照に対して新生内膜形成において劇的な減少を示した。例えば、ZoMaxx(商標)ステントについての新生内膜における平均の減少は、対照に対して34.5%であった。Zot/PTX10/1組合せステントは、市販の最良の単一薬物ステント及び臨床試験において観察される新生内膜の減少においてさらなる改善を生じた。Zot/PTX10/1組合せ薬剤溶出ステントは、TriMaxx(商標)非薬物溶出ステントと比較した場合、46.8%の新生内膜過形成の平均の減少を有した。ZoMaxx(商標)、Cypher(登録商標)、及びTaxus(登録商標)と比較して、新生内膜の形成におけるさらなる劇的な減少は、各々18.8%、21.7%、及び21.5%であった(表19)。画像による表示を図19a−eに示し、ここでは各群についての平均新生内膜面積を表す顕微鏡写真を示す。
【表18】


【表19】

【0284】
[0302]10μg/mmのゾタロリムス及び7μg/mmのパクリタキセル(Zot/PTX10/7)でコーティングしたステントは、ZoMaxxステントに対して新生内膜の形成の減少は統計的に同等であった(図14〜16)。Olimus薬とパクリタキセル誘導体の理想的な比の実施形態には、10:7〜10:0.01(重量比)、10:0.1、及び10:1と等しい比が含まれる。5μg/mmのゾタロリムス及び3.5μg/mmのパクリタキセル(Zot/PTX5/3.5)に総薬物用量を減少させると、非薬物溶出TriMaxxステントと同等の、最適以下の成績をもたらした(図14〜16)。したがって、Olimus及びパクリタキセル誘導体の最適な総用量は、olimusとパクリタキセルの比が10:7に近づくにつれ、15mmのステント上で約150μgを下回るべきではない。
【0285】
[0303](Falotico、2003;Suzukiら、2001)から以前に公表されたデータに基づくと、olimus薬と第2薬物とを合わせることは何ら利益がないことを結論付けたであろう。これらの試験の観察は、意外で予期しないものであり、適切なゾタロリムス及びパクリタキセルの組合せが、高度に効果的であることを示し、当技術分野で受け入れられているブタ冠動脈過伸張モデルにおいて新生内膜過形成の減少の増加を実現する。図15及び16は、ゾタロリムス及びパクリタキセル(Zot/PTX10/1)について観察された結果と、及びシロリムス及びデキサメタゾンについて以前に公表された結果(Falotico、2003;Suzukiら、2001)との著しい違いを示す。以前に公表された試験は、組合せステントと単一の薬剤溶出ステントとの間の利点を示さなかった。同一の過伸張比を有するブタモデルでのBX Velocity(登録商標)に対する対照TriMaxx(商標)における劇的な改善があってもなお、この実施例における組合せ製造物は、対照よりも実質的に良好、単一の薬物溶出ステントZoMaxx(商標)よりも実質的、統計的に有意に良好の両方であった。
【0286】
実施例11(予言的)臨床適用
[0304]単一の抗増殖剤を送達するステントの導入とその後の普及によって、一般の臨床人口では再狭窄率が10%未満に低下した。しかし、一般の臨床人口及び種々の心血管疾患サブセットからの両方の患者を治療して、再狭窄率及び有害な臨床イベントをさらに減少させるための、適切な薬物の組合せのステントからの送達について、明確な理論的根拠が存在する。例えば、再狭窄率は、ステントを留置した糖尿病患者において、疾患を有さない患者と比較した場合有意に増加し、糖尿病及び非糖尿病患者の両方においてステント術への炎症反応が存在することは一般に認められている(Aggarwalら、2003)。さらに、炎症は、急性冠動脈症候群(ACS)(不安定狭心症、非STセグメント上昇心筋梗塞、並びに持続的STセグメント上昇と関連する梗塞を含めた心筋の急性虚血状態の範囲を定義する用語である)を有する患者において顕著な特徴である。これらの患者は、ステント配置の最有力候補であることが多く、経皮的インターベンション(PCI)を受ける一般の患者集団と比較して、再発性虚血、再梗塞、その後のPCI処置を繰り返す必要性が生じる確立がより有意に高い。最後に、肥満症は、炎症誘発性状態及び内皮機能不全と関連することが多い。両方の状態は、冠動脈ステント留置後の早期の再狭窄の独立した予測材料であることが知られている。実際は、肥満症、脂肪細胞によるインターロイキン−6(IL−6)産生、及び冠動脈疾患との間に関連する事実があり、これはこのサブセットの患者において、この炎症性サイトカインの上昇とCADの発生との間の関連を示唆する(Yudkinら、2000)。
【0287】
[0305]糖尿病患者は、非糖尿病患者よりもより高いレベルの炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)を示す(Aggarwalら、2003;Dandona及びAljada、2002)。このタンパク質は、冠動脈疾患を有する患者における重要な炎症メディエーターとして明確に同定されてきており、重篤な不安定狭心症を有する患者における有害事象の予測材料である(Biondi−Zoccaiら、2003)。CRPは、ヒト内皮細胞による単球走化性タンパク質(MCP−1)の産生を刺激する。このメディエーターの放出は、単球の流入を伴い、これらの細胞が活性化され、内皮下の空間に移動し、そこで酸化低密度リポタンパク質(LDL)を含めた泡沫細胞を形成すると、著しい炎症性状態をもたらす。血漿IL−6及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)は、肥満の患者、及び2型糖尿病患者においてまた上昇する炎症性サイトカインである。実際は、高感度CRP、IL−6又は血清血管細胞接着分子−1(VCAM−1)の上昇は、冠動脈疾患を有する患者における死亡率の上昇と関連付けられてきた(Roffi及びTopol、2004)。再狭窄過程の特徴である新生内膜形成は、炎症によって悪化することが示されてきたため、ゾタロリムス及びパクリタキセルを含めた抗炎症性及び抗増殖性作用を有する薬剤の組合せを局所管環境に送達するステントの使用は、糖尿病患者において明確な有用性を有することが期待されるであろう。
【0288】
[0306]アテローム性プラークの破綻は、急性冠動脈症候群の開始の中心である(Grech及びRamsdale、2003)。プラーク破綻は泡沫細胞によって分泌されるマトリックスメタロプロテイナーゼの濃度の上昇によって誘発される場合があり、プラークの不安定性と発生している病変の上に重なる薄い線維性キャップの最終的な破綻とをもたらす。さらに、泡沫細胞の表面上で発現している組織因子は、凝固因子VIIを活性化し、それはトロンビンの形成をもたらす。このタンパク質の生成は、血小板活性化及び凝集、並びにフィブリノゲンのフィブリンへの変換、及び血栓の明確な形成をもたらす。ステント配置及び技術の改善によって、ステントを留置された患者について、再発性虚血がより少なく、再梗塞率は同様であり、血管形成術を繰り返す必要性が減少することを示してきたため、この状況におけるステントの配置に関する当初の懸念は根拠がないようである(Grech及びRamsdale、2003)。炎症と冠動脈病変の発生との密接な関係によって、ゾタロリムス及びパクリタキセルを含めた抗炎症性及び抗増殖性作用を有する薬剤の組合せを局所管環境に送達するステントを使用することは、このような患者を治療するための魅力的なアプローチとなっている。
【0289】
[0307]本明細書に記載するステントは、冠動脈内の狭窄病変によって虚血性心疾患と診断された患者及び再発性冠疾患及び他の有害な臨床イベントについてより高リスクの臨床人口のサブセットに配置されるであろう。インターベンションの他の標的には、表層大腿骨動脈、腎動脈、腸骨、及び膝窩の管の狭窄を含めた末梢血管疾患が含まれる。インターベンション処置の標的管には、大腿骨動脈又は橈骨動脈を介した経皮的な血管へのアクセスによって到達し、ガイディングカテーテルが管に挿入されるであろう。次いで、標的病変をガイドワイヤーでクロスし、ワイヤーによって又は急速交換システムを使用してバルーンカテーテルを挿入する。医師はオンラインの定量的冠動脈血管造影(QCA)により、又は視覚による推定により移植するステントの適切なサイズを決定するであろう。ステントのコンプライアンスによって示されるような適切な圧力を使用してステントを配置し、次いで処置後の血管造影図を得ることができる。処置が完了した場合、患者は、アンギナの状態及び何らかの有害事象の存在について定期的にモニターされるであろう。処置を繰り返す必要性についても評価されるであろう。
【0290】
[0308]上記の詳細な説明及び添付の実施例は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によってのみ定義される本発明の範囲を限定するものでないことは理解されよう。開示した実施形態の様々な変更形態及び修正形態は、当業者であれば明らかであろう。これらだけに限定されないが、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤及び/又は使用方法に関するものを含めたこのような変更形態及び修正形態を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行ってもよい。
【0291】
[0309]ある物質が、1つ若しくは複数の立体中心及び/又は位置中心に複数の立体化学及び/又は位置化学を有することが可能であり、1つ若しくは複数の立体中心及び/又は位置中心におけるその物質の立体化学及び/又は位置化学が示されていない場合、本発明の範囲は、その物質の全ての可能性のある立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマーなど)及び/又は位置異性体を包含することもまた理解されよう。
【0292】
[0310]参考文献
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【0293】
[0311]本明細書において参照した全ての特許及び非特許文献は、本明細書においてその全体が参照により組み込まれている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及び治療有効量のパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む医薬組成物であって、
ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γが、10:7≦γ≦10:0.01であり、組成物が対象の体内の管に投与された場合、体内の管中の新生内膜過形成が、減少、阻害又は防止される組成物。
【請求項2】
γ=10:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩が、効果及び/又は作用を互いに補完する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
経口的に、直腸内に、非経口的に、大槽内に、腟内に、腹腔内に、局所的に、口腔内に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、皮下に、関節内に、経皮的に、心嚢内に、又はこれらを組み合わせて対象に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
対象への局所送達のために製剤される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
医療装置に関連し、前記対象に前記装置を介して投与される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記医療装置が、ステント、移植片、ステント移植片、カテーテル、リード、電極、クリップ、シャント、閉鎖装置、弁、及び粒子から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記医療装置がステントである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのコーティングが前記ステントの上に配置され、前記組成物を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコーティングが、≦約10ミクロンの厚さを有し、約12カ月以内に完全又は実質的に完全に分解される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度が約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度が約1μg/mmステント長である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗炎症性物質が、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、クロベタゾール、アダリムマブ及びスリンダクから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種のさらなる治療物質が、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬物、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、及びこれらの組合せから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞症、尿管閉塞症並びに腫瘍閉鎖から選択される状態又は障害の治療又は予防に使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記状態又は障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄及び不安定プラークから選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物を含むキット。
【請求項18】
対象の体内の管中に移植された場合、体内の管中の新生内膜過形成が、減少、阻害又は防止される、治療有効量のゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及び治療有効量のパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含有する組成物を含む、薬物送達システム。
【請求項19】
ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩、及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の制御放出を提供する、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項20】
ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩が、局所に送達された場合、効果及び/又は作用を互いに補完する、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項21】
新生内膜過形成が、対照システムと比較した場合≧10%減少又は阻害される、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項22】
新生内膜過形成が、前記対照システムと比較した場合≧20%減少又は阻害される、請求項21に記載の薬物送達システム。
【請求項23】
新生内膜過形成の減少又は阻害が、新生内膜面積測定、新生内膜の厚さ測定及び面積狭窄率測定から選択される少なくとも1つの測定方法によって測定される、請求項21に記載の薬物送達システム。
【請求項24】
ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩が、相加効果を及ぼすゾタロリムスとパクリタキセル(又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩)との比(γ)で存在する、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項25】
ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩と、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩との重量比γが、10:7≦γ≦10:0.01である、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項26】
γ=10:1である、請求項25に記載の薬物送達システム。
【請求項27】
支持構造をさらに含む、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項28】
前記支持構造が、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有する、請求項27に記載の薬物送達システム。
【請求項29】
前記支持構造が、ステント、移植片、ステント移植片、カテーテル、リード、電極、クリップ、シャント、閉鎖装置、弁、及び粒子から選択される医療装置である、請求項27に記載の薬物送達システム。
【請求項30】
前記組成物が前記医療装置と結合する、請求項29に記載の薬物送達システム。
【請求項31】
前記医療装置がステントである、請求項29に記載の薬物送達システム。
【請求項32】
少なくとも1つのコーティングが前記ステントの上に配置され、前記組成物を含む、請求項31に記載の薬物送達システム。
【請求項33】
前記少なくとも1つのコーティングがポリマーである、請求項32に記載の薬物送達システム。
【請求項34】
前記少なくとも1つのコーティングが、≦約10ミクロンの厚さを有し、約12カ月以内に完全又は実質的に完全に分解される、請求項33に記載の薬物送達システム。
【請求項35】
ゾタロリムス又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度が、約10μg/mmステント長であり、パクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の濃度が、約1μg/mmステント長である、請求項32に記載の薬物送達システム。
【請求項36】
抗増殖性、抗腫瘍性、抗有糸分裂性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝血性、抗ファブリン性、抗トロンビン性、抗血栓性、血栓溶解性、抗菌性、抗アレルギー性、及び抗酸化性の物質から選択される少なくとも1種のさらなる治療物質をさらに含む、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項37】
ゾタロリムス及びパクリタキセル又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩が、前記少なくとも1種のさらなる治療物質の効果及び/又は作用を補完する、請求項36に記載の薬物送達システム。
【請求項38】
前記少なくとも1種のさらなる治療物質が抗体を含む、請求項36に記載の薬物送達システム。
【請求項39】
前記抗炎症性物質が、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、クロベタゾール、アダリムマブ及びスリンダクから選択される、請求項36に記載の薬物送達システム。
【請求項40】
前記少なくとも1種のさらなる治療物質が、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(バイオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬物、そのプロドラッグ、そのコドラッグ、及びこれらの組合せから選択される、請求項36に記載の薬物送達システム。
【請求項41】
アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈及び人工移植片の吻合部増殖、動静脈吻合、胆管閉塞症、尿管閉塞症並びに腫瘍閉鎖から選択される状態又は障害の治療又は予防に使用するための、請求項18に記載の薬物送達システム。
【請求項42】
前記状態又は障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄及び不安定プラークから選択される、請求項41に記載の薬物送達システム。
【請求項43】
請求項18に記載の薬物送達システムを含むキット。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B−C】
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【図10D−G】
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【図10H−K】
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【図10L−M】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19a−e】
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【図8a−c】
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【公表番号】特表2010−500404(P2010−500404A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524621(P2009−524621)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/017619
【国際公開番号】WO2008/021124
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(507316642)アボット ラボラトリーズ (18)
【Fターム(参考)】