説明

ラマンセンサに対するデータ品質および補助的データのチェック

【課題】ラマン分光測定機器および収集されたスペクトルデータの自動化された周期的評価を実行するシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】ラマンセンサを動作させる方法であって、該方法は、該ラマンセンサのシステム構成要素の動作状態を監視する複数の補助的データチェックを実行することと、ラマンスペクトルデータを取得することと、該取得されたデータに関連する、複数のデータ品質チェックを実行することと、該データ品質チェックの結果に基づいて、該取得されたデータをさらに処理するか否かを決定し、もしさらに処理する場合には、該取得されたデータをさらなる処理のために格納することと、該ラマンスペクトルデータを取得するステップおよび該データに関連する、該複数のデータ品質チェックを実行するステップを、所定の回数、連続して繰り返し、次いで該複数の補助的データチェックを実行するステップを再び実行することとを包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、ラマン分光測定センサに関し、より具体的には、センサ機器および収集されたスペクトルデータの自動化された周期的評価を実行するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
化学的または生物学的作用因子(agent)への曝露の危険は深刻であり得る。例えば、事故による意図されない放出、または意図的な送達の結果のいずれであっても、(1)放出された作用因子のタイプ、および(2)汚染の正確な領域の迅速かつ精度の高い識別を行うことが望ましい。そのような危険な物質の早期かつ精度の高い検出は、起こり得る死傷者数の低減、および作用因子の(例えば、風、人、および動物の接触などによる)さらなる拡散の制限における重要な要素であり得る。
【0003】
近年、非常に低い濃度においてさえも、未知の物質、汚染物質および作用因子を迅速に識別するために、核、生物学的および化学的(NBC)センサ技術を開発し、展開することにおける関心が増大している。これらの技術の一部は、表面に堆積された汚染を測定し、そして車両と、汚染物質の物理サンプルを引き出すための関連する試験機器とを用い、次いで作用因子を試験するために、機械的なサンプリングホイールシステムに基づいた、非常に扱いにくく時間を浪費するプロセスを用いるように設計される。
【0004】
そのようなアプローチの複雑さの観点において、より新しい、より単純な、より安全かつさらに信頼性のある技術が要求されてきた。この要望に応える1つの新しい技術は、一般に「スタンドオフ表面検出」と呼ばれ、関心のある物質と実際に物理的接触を有することなく、物質の検出を可能にする技術のカテゴリを表す。これらの検出システムの目的は、化学的または生物学的脅威を検出し、識別し、位置を決定し、定量化し、警告し、報告して、それにより、(さらなる)汚染を回避するために、軍隊または市民に十分な早期警告を与える能力を提供することである。
【0005】
スタンドオフ表面検出システムの一例は、ITT(Wilmington,DE)によって開発された表面の作用因子のレーザインタロゲーション(Laser Interrogation of Surface Agents;LISA)として公知の技術である。LISAは、既知の化学的作用因子を識別するために利用され得る光学的性質であるラマン散乱(またはラマン効果)として公知の技術を用いて、地表(または任意の表面)の化学的作用因子を捜す偵察車両に取り付けられたレーザおよび関連するセンサを用いる。現在のITTのLISAシステムは、0.4m〜3mのスタンドオフ範囲を有し、25パルス/秒のそれぞれの単一のレーザショットまたはパルスにおける検出を提供し得る。これは、地表の化学的作用因子の移動中のリアルタイム測定を実行する能力を有する車両に人員を配置することを可能にする。LISA技術はまた、検出が起こっているときに積み重なる、化学的作用因子の等高線を有するマップを作り出すかまたは生成する能力を検出チームに提供する。
【0006】
生物学的作用因子のスタンドオフ検出は、化学的作用因子の検出よりもかなり難しい。特に、生物学的作用因子を自然に生息する背景物質から弁別し、測定することは困難である。さらに、環境内の生物学的作用因子のリアルタイム検出および測定は、識別される潜在的な作用因子の数と、作用因子自体の複雑な性質と、環境内に絶えず存在する数え切れないほど多くの同様な微生物と、汚染を起こし得るごく少量の病原菌とのために、非常に困難であり得る。潜在的な生物学的作用因子はまた、良性のエンティティに変装し得る。
【0007】
これらの障害を考慮すると、生物学的作用因子を検出するためのアプローチは、化学的作用因子を検出するために使用されるそれらの技術とは多少異なる。生物学的作用因子を構成する分子は、化学的作用因子に比べて極めて複雑で、かつ大型であるが、一方でそれらは、非常に限定された数の特有の基礎単位(building block)から作られるだけである。その結果として、生物学的作用因子を探査するために、そのラマン信号を増強する非常に特定の紫外波長を有するレーザを用いることが必要であることが見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、化学的物質または生物学的物質の検出用か否かにかかわらず、ラマン分光学は進化する複雑な技術であり、当業者は、ラマンセンサのサポート機器とともにラマンセンサが、管理された実験室の条件下などの最良の環境の下でさえも複雑で、かつ敏感な装置であることを認識する。現場においてそのような装置の動作を適切に保持することは、なおいっそう大きな課題を提示する。従って、スタンドオフ表面検出を実用、特に、拡張された現場使用に効果的に導くための改善されたラマン分光機器およびその運用方法を提供するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明の実施形態は、化学的作用因子および生物学的作用因子のスタンドオフ検出用のラマン分光デバイスを、特に現場で動作させるためのシステムおよび方法を提供する。一実施形態において、デバイスは、レーザと、分光器と、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)と、自動焦点サブシステム(望遠鏡の収集光学素子を含む)と、関連するプロセッサおよびメモリとを含んでいる。好適な実施形態において、スペクトルデータ取得が始まる前に、一連の補助的データチェック(ADC)が実行されて、少なくともレーザ、ICCD、および自動焦点サブシステムの動作状態(すなわち、調子およびステータス)を監視する。さらに、各ラマンスペクトル取得の後に、一連のデータ品質チェックが実行されて、まさに収集されたデータへの信頼性を高める。データ品質チェックに合格するスペクトルデータだけが、さらに処理される。しかしながら、すべてのスペクトルデータは、好ましくはログファイル内に格納される。ログファイルが所定の容量に達するときには、ログファイルはクローズされ、補助的データチェックの新しい循環が実行されて、再びラマン分光デバイスのステータスを監視する。
【0010】
より具体的には、本発明に従った好適な方法において、装置の初期化ステップの後に、一連のADCが実行される。これらのチェックは、特に、例えば、ICCDの利得およびアレイ温度、レーザのエネルギー、ガス圧力、およびパルスカウント、ならびに温度、デバイス全体の温度および湿度レベル、自動焦点用のリニア焦点アクチュエータのステータス、および一般的な高度および大気データまでも監視することを含む。これらの自動化された試験は、デバイスの調子およびステータスが正常であり、従って、未知の化学的または生物学的作用因子を識別するために、取得され、処理されるラマンスペクトルデータへの信頼性を提供することを保証する。
【0011】
ADCの選択されたチェックが合格しない場合には、システムは、待機モードに戻され得ることにより、劣化または欠陥の可能性のあるデータの取得を防止し、機器の起こり得る点検に備える。他の失敗したADCは、システムオペレータに警告だけを結果としてもたらし得る。
【0012】
第一の一連のADCの完了後に、システムは、10個の暗スペクトル(すなわち、対応するレーザパルスのないスペクトル)を取得する。これらの10個のスペクトルの中央値が次いで計算される。この中央値は、現在の雑音または背景雑音を表しており、その後のレーザ誘起型スペクトルから減算され、それによって、レーザ誘起型スペクトルだけが検出目的のために用いられる。
【0013】
レーザ誘起型ラマンスペクトルの取得が次いで起動される。スペクトルデータ(好ましくは、約25Hzの周波数で)の各収集の後に、一連のデータ品質チェック(DQC)が実行され、該DQCは、リニア焦点アクチュエータに関して問題があったか否か、レーザのエネルギーが所定の範囲内にあったか否か、そして収集されたスペクトルデータが飽和振幅または低すぎる振幅を有するか否かをチェックすることを含む。後者の2つの例においては、利得調整ループが、ICCD利得を調整するために起動されて、その後のスペクトルデータ収集上の飽和または低振幅の問題を回避する。
【0014】
所与のラマンスペクトルに対するDQCがすべて合格したときには、そのデータは、他の同様に認定されたデータとともに、さらなる処理(すなわち、格納されたラマンスペクトルのライブラリに対するラマンスペクトルのパターンマッチング)に対して指定され得る。しかしながら、すべてのデータ(個々の記録という形態における)は、認定されたか否かにかかわらず、好ましくはログファイル内に格納され、データ記録は、好ましくはそれぞれのデータ取得に対するDQCの結果を含む。一旦ログファイルが所定の容量(例えば、3000個の記録)まで満たされると、ログファイルはクローズされ、かつ格納され、そして新しいログファイルがオープンされる。この期間の間に、第二の一連のADCが実行され、それによって、再びシステム全体のステータスをチェックする。レーザが約25Hzでパルス化されており、ログファイルが約3000個の記録の設定容量を有するので、補助的データチェックは、2分ごとに略1回実行される(すなわち、3000個のスペクトル/毎秒25個のスペクトル=120秒)。従って、ラマン分光システムは、自動的かつ周期的にチェックされており、それによって、収集されるスペクトルデータへの信頼性を増大し、システムが適切な機能の状態にあることを保証する。
【0015】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、それらに付随する利点とともに、以下の詳細な説明を関連する図面とともに読み込むと、より完全に認識されるであろう。
【0016】
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
ラマンセンサを動作させる方法であって、該方法は、
該ラマンセンサのシステム構成要素の動作状態を監視する複数の補助的データチェックを実行することと、
ラマンスペクトルデータを取得することと、
該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータに関連する、複数のデータ品質チェックを実行することと、
該データ品質チェックの結果に基づいて、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらに処理するか否かを決定し、もしさらに処理する場合には、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらなる処理のために格納することと、
該ラマンスペクトルデータを取得するステップおよび該ラマンスペクトルデータに関連する、該複数のデータ品質チェックを実行するステップを、所定の回数、連続して繰り返し、次いで、該複数の補助的データチェックを実行するステップを再び実行することと
を包含する、方法。
(項目2)
上記複数の補助的データチェックを実行するステップは、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)、レーザ、および自動焦点サブシステムのそれぞれの状態を監視することを包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目3)
上記ラマンセンサの1つ以上の構成要素の温度を監視することをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目4)
上記複数のデータ品質チェックを実行するステップは、上記ラマンスペクトルを収集する光学素子の適切な焦点を維持するために、リニア焦点アクチュエータを監視することを包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目5)
上記複数のデータ品質チェックを実行するステップは、レーザエネルギーを監視することを包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目6)
上記複数のデータ品質チェックを実行するステップは、上記ラマンスペクトルデータが飽和しているか否か、または不十分な振幅のものであるか否かを決定することを包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目7)
上記複数の補助的データチェックのうちの1つが失敗すると、さらなるラマンスペクトルデータ取得を停止することをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目8)
一連の取得されたラマンスペクトルデータをログファイル内に格納することと、該ログファイルをクローズすることとをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目9)
上記所定の回数の後に、上記クローズするステップを実行することをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目10)
上記クローズするステップの後に、所定の数の暗スペクトルデータを取得することと、前に計算された暗スペクトルデータの中央値を修正することとをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目11)
上記複数のデータ品質チェックのうちの1つに応答して、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)に対する利得を調整することをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目12)
ラマン分光デバイスを動作させる方法であって、該デバイスは、レーザ、分光器、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)、および自動焦点サブシステムを備え、該方法は、
少なくとも該レーザ、該ICCD、および該自動焦点サブシステムの動作状態を監視する複数の補助的データチェックを実行することと、
該レーザをパルス化し、結果としてもたらされるラマンスペクトルを、該分光器を介して該ICCDにより収集することによって、ラマンスペクトルデータを取得することと、
該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータに関連する、複数のデータ品質チェックを実行することと、
該データ品質チェックの結果に基づいて、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらに処理するか否かを決定し、もしさらに処理する場合には、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらなる処理のために格納することと、
該ラマンスペクトルデータを取得するステップおよび該ラマンスペクトルデータに関連する、該複数のデータ品質チェックを実行するステップを、所定の回数、連続して繰り返すことと
を包含する、方法。
(項目13)
上記連続して繰り返すことの後に、上記複数の補助的データチェックを実行するステップを繰り返すことをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目14)
取得されたラマンスペクトルデータのログファイルがクローズされ、格納された後に、上記複数の補助的データチェックを実行するステップを繰り返すことをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目15)
上記複数の補助的データチェックのうちの1つが失敗を示す場合には、さらなるラマンスペクトルデータ取得を停止することをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目16)
作用因子の識別処理のために、上記複数のデータ品質チェックに合格したラマンスペクトルデータを格納することをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目17)
上記複数のデータ品質チェックのうちの少なくとも1つに応答して、上記ICCDの利得を調整することをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目18)
対応するレーザパルスのない暗スペクトルの初期の組を取得することと、該暗スペクトルは、上記さらなる処理に対して用いられることと、追加の暗スペクトルの取得によって該暗スペクトルの初期の組を周期的にアップデートすることとをさらに包含する、上記項目のうちのいずれか一項目に記載の方法。
(項目19)
ラマン分光システムであって、該システムは、
所定の周波数でパルス化するように構成されるレーザと、
該レーザによって照明された同一地点に光学的に指向される望遠鏡の焦点を制御する自動焦点サブシステムと、
該望遠鏡を介して該レーザパルスに起因するラマンスペクトルを受信するように構成された分光器および増倍型電荷結合デバイス(ICCD)と、
プロセッサおよび関連するメモリであって、
該メモリは、該ICCDによって捕捉されたときに、該個々のラマンスペクトルをラマンスペクトルデータの個々の記録として格納するように構成され、
該プロセッサは、少なくとも該レーザ、該ICCD、および該自動焦点サブシステムの動作状態を監視する複数の補助的データチェックを実行し、かつ該ラマンスペクトルデータの有用性に関連する複数のデータ品質チェックを実行するように構成される、プロセッサおよび関連するメモリと
を備え、
該プロセッサは、該データ品質チェックの結果に基づいて、さらなる処理のためにラマンスペクトルデータを格納するか否か、および該複数の補助的データチェックの実行を繰り返すか否かを決定するようにさらに構成される、
システム。
(項目20)
熱交換器をさらに備える、上記項目のうちのいずれか一項目に記載のシステム。
(項目21)
上記自動焦点サブシステムとともに動作する距離計サブシステムをさらに備える、上記項目のうちのいずれか一項目に記載のシステム。
(項目22)
上記プロセッサは、一連の暗スペクトルの捕捉を引き起こすようにさらに構成される、上記項目のうちのいずれか一項目に記載のシステム。
(項目23)
上記プロセッサは、アップデートされる暗スペクトルの捕捉を引き起こすようにさらに構成される、上記項目のうちのいずれか一項目に記載のシステム。
(項目24)
上記プロセッサは、所与のラマンスペクトルが飽和しているか否か、壊れているか否か、または不十分な振幅のものであるか否かを決定するように構成される、上記項目のうちのいずれか一項目に記載のシステム。
(項目25)
上記プロセッサは、所与のラマンスペクトルが飽和しているか、または不十分な振幅を有していることを決定するときには、上記ICCDの利得を調整するルーチンを起動するように構成される、上記項目のうちのいずれか一項目に記載のシステム。
【0017】
(摘要)
レーザと、分光器と、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)と、自動焦点サブシステムとを含むラマン分光デバイスを、特に現場において動作させるシステムおよび方法である。スペクトルデータ取得が始まる前に、一連の補助的データチェックが実行されて、少なくとも、レーザ、ICCD、および自動焦点サブシステムの動作状態を監視する。さらに、各ラマンスペクトル取得の後に、一連のデータ品質チェックが実行されて、まさに収集されたデータへの信頼性を高める。データ品質チェックに合格するスペクトルデータだけが、さらに処理される。しかしながら、すべてのスペクトルデータは、ログファイル内に格納される。ログファイルが所定の容量に達したときには、ログファイルはクローズされ、補助的データチェックの新しい循環が実行されて、再びラマン分光デバイスのステータスを監視する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従った、ラマン分光システムの図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従った、ラマンセンサモジュールの構成要素を示す。
【図3】図3および図4は、本発明の実施形態に従った、ラマン分光システムを動作させる例示的な一連のステップを示す。
【図4】図3および図4は、本発明の実施形態に従った、ラマン分光システムを動作させる例示的な一連のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
便宜のために、次のリストは、以下の詳細な説明において用いられた頭字語を規定する。
【0020】
ADC(Ancillary data check)− 補助的データチェック
CAPPS(Control, acquisition, processing, and power system)− 制御、取得、処理および電源システム
DQC(Data quality check)− データ品質チェック
HV(High voltage)− 高電圧
ICCD(Intensified Charged−Coupled Device)− 増倍型電荷結合デバイス
KS(Kinetic series)− 動的シリーズ
LFA(Linear focus actuator)− リニア焦点アクチュエータ
LPMT(Laser Power Module Temperature)− レーザ電源モジュール温度
MCPV(Micro−Channel Plate Voltage)− マイクロチャネルプレート電圧(ICCDの利得を表す)。
【0021】
概して、本発明の実施形態は、自動的かつ周期的なデータ品質チェック(DQC)および補助的データチェック(ADC)を有する一体型ラマン分光システムまたは単に「ラマンセンサ」を提供し、データ品質チェックおよび補助的データチェックは、それぞれ、収集されたラマンスペクトルデータの性質および妥当性と、ラマンセンサの様々なサブシステムおよび構成要素のステータスとについてフィードバックを提供する。DQCおよびADCは、好ましくは、ラマンスペクトルデータの取得および処理過程のいくつかの異なる時点で挿入されることにより、収集されたラマンスペクトルデータが、処理に対して十分信頼できることを保証し、かつラマンセンサが全体として、公称範囲内で動作していることをさらに保証し、それによって、処理データの最終結果の信頼性を高め、そして最後には、分析される未知の物質または作用因子の識別の信頼性を提供する。
【0022】
図1を参照すると、制御、取得、処理および電源システム(CAPPS)105とセンサ110とを含むラマン分光システムの全体100が示されている。CAPPS105は、高水準のメモリ115と、プロセッサ130とを備える。電源システムは図示されない。センサ110は、高水準の、以下でより完全に記載される光学素子モジュール200と、熱交換器モジュール120とを備える。
【0023】
メモリ115は、特に、処理命令(本明細書中の以下でより完全に論じられる)、グローバル変数、初期化変数およびルーチン、ならびに、ラマンサイン(Raman signature)のライブラリを格納する不揮発性の読み出し専用メモリ(ROM)を備え得る。メモリ115はまた、ROM内に格納されるように記載されたデータを代わりに含む、特に、前述のデータまたは他のデータ(例えば、検出されたラマンスペクトルデータ/収集されたラマンスペクトルデータ)、センサステータスの読み取り、およびユーザ入力/設定を格納する揮発性のランダムアクセスメモリ(RAM)を備え得る。メモリ115は、ディスクドライブ、フラッシュメモリ、または任意の他の適切なデータストレージ技術をなおさらに含み得る。
【0024】
熱交換器120は、センサ110を加熱するかまたは冷却し、システムおよびその構成要素に対して定常温度を維持するために利用される。なぜならば、収集されたスペクトルデータの分析が、高温度または温度ドリフトにより性能が変化する機械的構成要素、電気的構成要素および光学的構成要素によって、有害な影響を受け得るからである。実際の実装において、CAPPS105は、CAPPSユニット内部にフィルタを通して送風するファンによってのみ冷却される。熱交換器は必要である。なぜならば、センサが、好ましくは外部の汚れおよび蒸気(例えば、車両排気)からセンサを保護する密封されたユニットだからである。
【0025】
プロセッサ130は、特に、ユーザインタフェース(図示されない)を介する入力および出力の管理、ならびにセンサ110の様々な構成要素の制御およびそれらの構成要素から受信される信号の制御を含むシステム全体の制御を提供するソフトウェアルーチンの作動に適した従来のプロセッサである。プロセッサ130はまた、好ましくは、必要なデジタル信号処理を収集されたスペクトルデータに対して実行することと、同じスペクトルデータを、メモリ115に格納されたラマンサインのライブラリと比較することとが可能であることにより、未知の物質を識別する。プロセッサ130とメモリ115とは、示されているように、従来技術、例えば制御バス/信号バス/データバスを介して互いに通信可能である。
【0026】
光学素子モジュール200(図2を参照して詳細に記載される)は、プロセッサ130と通信可能であり、レーザを用いて未知の物質(例えば、表面汚染物質140)を照射し、その結果もたらされるラマンスペクトルデータを収集し、収集されたデータを詳細解析のためにプロセッサ130に伝えるように配置される。
【0027】
CAPPS105およびセンサ110は、好ましくは別個の筐体に入れられる。システム100は、好ましくは、ジープ/トラックの搭載ユニットとして、または携帯型デバイスとしてさえも、現場で動作するようにさらに構成される。いずれの場合にも、熱交換器120は、センサに内部で生成された熱(光学素子モジュール200によるなど)に対して補償する必要があるだけでなく、熱交換器120はまた、起こり得る広範囲な現場の環境条件、例えば、砂漠の暑さから冬の氷および雪までの範囲の温度条件に対して補償しなければならない。
【0028】
ここで図2を参照して、センサ110の光学素子モジュール200が、より完全に記載される。
【0029】
光学素子モジュール200の中心は、コヒーレントな光ビームを生成するレーザ210である。レーザ210は、紫外(UV)スペクトルの光ビームを作り出し得、実質的に単色である(すなわち、単一波長または狭い範囲の波長に限定される)。エキシマーレーザあるいは周波数シフト型のNd:YAGまたはNd:YLFレーザは、この目的に適し得る。レーザ210は、好ましくは、ラマン散乱された十分な光学エネルギー(スペクトル)から成る、戻り光学エネルギーをもたらす光エネルギーを作り出すことにより、公知の分光技術を用いた分析を可能にする。
【0030】
当該分野で周知なように、レーザ光のコヒーレンス長を増大させるために用いられるエタロン215が、レーザ210と関連づけられる。本明細書中の以下でより完全に記載されるように、レーザ210とエタロン215との両方の選択される動作パラメータは、ラマンシステム100の動作に関連して実行される補助的データチェック(ADC)に関連して監視される。エタロン215がエキシマーレーザなどの特定のレーザのみに必要であることは注目される。エタロン215がすべてのレーザに必要なわけではない。狭い線幅をレーザが有するようにさせる多数の技術が存在する。エキシマーでさえも、他の公知の方法を介してスペクトル的に狭くされ得る。
【0031】
画素化型検出器として役立つ分光器222と、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)220とがまた、光学素子モジュール200に含まれている。当該分野で公知なように、分光器222が回折格子を備えることにより、散乱された放射(レーザ照射による)をICCD220上に分散する。ICCD220は、単一ユニットとして分光器222と一体化され得る。当該システムで用いられ得る適切なICCDは、Andor Technology(ベルファスト、北アイルランド)から入手可能な、品番DK720A−25H−186である。
【0032】
なおも図2を参照すると、光学素子モジュール200はまた、好ましくは自動焦点サブシステム230と、距離測定サブシステム235とを備える。光を分光器222/ICCD220に伝える望遠鏡232などの収集光学素子の焦点を合わせる能力は、より安全な距離、すなわち「スタンドオフ」距離からのラマンスペクトルの収集を可能にする。スタンドオフ距離の調整は必須とされていないが、一方で測定プロセスは、この調整能力を提供することによって向上される。なぜならば、センサが所与のスタンドオフ範囲に対して限定された被写界深度を有するからである。焦点合わせは、適切なアクチュエータ(モータ、ギアなど)を介して、例えば、望遠鏡232の光学素子を移動させることによって遂行され得る。そのようなシステムは、当該分野で周知である。自動化された焦点合わせは望ましいが、焦点合わせはまた、好ましくは手動で実行され得る。
【0033】
距離測定サブシステム235は、対象または関心のある未知の物質の範囲または距離に関する情報を提供する。この情報は、望遠鏡の焦点を最適化し、従って収集されるラマン光の量を最適化するための自動焦点プロセスに対して役立ち得る。
【0034】
コントローラ/レジスタモジュール240は、好ましくは、光学素子モジュール200内の構成要素のそれぞれと電気的に通信可能である。コントローラ/レジスタモジュール240は、プロセッサ130から起動されたコマンドを1つ以上の構成要素に伝え得、さらに構成要素のいずれか1つからの情報をプロセッサ130に返し得る。コントローラ/レジスタモジュール240はまた、関連するそれぞれの構成要素の出力から受信される情報をバッファリングし得、それによって、さらに分散型のシステム全体を実現する。本発明の実施形態に従った、コントローラ/レジスタモジュール240は、さらに、一部の構成要素に関する性能およびステータスのデータを伝えるために用いられ得、それによって、そのようなデータが、プロセッサ130におけるデータ品質チェック(DQC)と、補助的データチェック(ADC)とに対して用いられ得る。もちろん、コントローラ/レジスタモジュール240が、プロセッサ130内に(メモリ115とともに)直接組み込まれ得、それによって、光学素子モジュール200の一部の構成要素が、何らの介在デバイスなしにプロセッサ130と直接的に接続される。
【0035】
本発明の実施形態に従った、ラマンセンサを動作させる例示的な一連のステップ300を説明するために、ここで図3が参照される。ステップ301は、システムが最初に電源オンされ、その後に、システムが一連の内蔵された試験を完了し得たときに提供される待機モードを表している。例えば、特に、構成要素の温度、システムの調子およびステータス、ICCDの雑音レベル、レーザエネルギー、およびシステムの較正がチェックされ得る。ステップ301の待機モードは、プロセスのシーケンス300において、表示またはユーザインタフェース(図示されない)を介して、メッセージがユーザに提示され得るポイントでもある。本質において、待機モード301は、ユーザからの入力を待っているシステムの「アイドリング」モードである。
【0036】
一旦システムを運用モードに移行させることをユーザが所望する指示が(例えば、押しボタン、タッチスクリーンなどを介して)なされると、シーケンス300はステップ305に進み、動作モードが初期化される。
【0037】
一旦初期化ステップ305が完了すると、シーケンス300は、ステップ310に移り、複数のシステムチェックが実行されて、ラマンセンサ100全体の「調子およびステータス」を決定する。これらのシステムチェックは、公式に補助的データチェック(ADC)と呼ばれる。好適なADCが、以下に分類され記載される。
【0038】
(補助的データチェック(ADC))
本発明の実施形態に従った、シーケンス300において、所定の時点で好ましくはルーチン的に実行されるADCの5つの主要なカテゴリが存在する。ADCのこれらのカテゴリは、(A)ICCDチェック、(B)レーザチェック、(C)センサチェック、(D)自動焦点チェック、および(E)その他のチェック、に属する。これらのカテゴリのそれぞれは、以下に記載される。
【0039】
((A)ICCDチェック)
デバイスから受信されるデータが自信をもって頼られ得るように、ICCD220が適切に作動していることを知ることは望ましい。この点において、以下のチェックの少なくともいくつかが、好ましくはICCD220に関して行われる。
【0040】
(1)ICCDの高電圧(HV)が所定の設定値の許容範囲内にあることを検証すること。このチェックにおいて、ICCDのマイクロチャネルプレート電圧(MCPV)が、3回、100ミリ秒の時間を隔ててチェックされ、中央値がとられる(「medianMCPVoltage」)。MCPGainと呼ばれる変数が、次の
MCPGain=200+ICCDHVSlope*(medianMCPVoltage−ICCDHVat200)
として計算される。
【0041】
次いで、|現在の利得設定−mcpgain|(絶対値)が、設定の許容範囲値を超える場合には、この試験は、失敗したとみなされる。このICCD HV試験は、ICCD増倍器のHVが、現在の利得設定に正しく対応していることを確認する。好適な実施形態において、試験が失敗するときには、ユーザのエラー表示が生成される必要はないが、エラーは、システムログに書き込まれ得る。
【0042】
(2)ICCDの温度安定性をチェックすること。この試験は、ICCD内の機能をコールして、ICCDのアレイ温度が安定しているか否かをチェックする。もし安定していない場合には、試験は失敗する。この試験は、特に有用である。なぜならば、ICCDの温度が安定していない場合には、暗スペクトル(dark spectrum)が、シフトするかまたはドリフトするからである。試験が失敗する場合には、警告が、好ましくはユーザに提供されるが、運用は依然として継続され得る。
【0043】
(3)ICCDのアレイ温度をチェックすること。これは、ICCDの現在の温度の直接的な試験である。温度が、ICCDArrayTempSetPoint(所定の値)の許容範囲内にない場合には、データ取得が、好ましくは停止される。ICCDの温度は、暴走状態におけるものであり得る。ユーザは、好ましくはシステムを冷却することを警告される。
【0044】
(4)ICCDCaseTemperature。ケース温度が、限界1(所定の値)を超える場合には、警告が、好ましくはユーザに提供される。ケース温度が、限界2(別の所定の値)を超える場合には、データ取得が、好ましくは停止され、そしてユーザはまた、是正措置をとることを警告される。
【0045】
((B)レーザチェック)
(1)LaserTotalPulseCount。レーザの総パルス数が、限界1(所定の値)を超える場合には、ユーザは、近い将来に点検が必要であることを通知される。このチェックと続く警告とは、レーザが、その指定された動作寿命を超えて作動することを妨げ、レーザの光学構成要素などの極めてまれに置き換えが必要な構成要素に対し適合される。
【0046】
(2)LaserPulseCountRefill。これが、限界1(所定の値)を超える場合には、ユーザが好ましくは、指定の任務時間の後に、エキシマーレーザガスの補充が必要であることを警告される。非ガスレーザに対しては、このチェックは、定期的または頻繁な置き換えが必要な、レーザ閃光ランプまたはレーザダイオードなどの他の構成要素が、いつ保守を必要とするかを決定し得る。
【0047】
(3)REX5HVSet。これは、レーザの高電圧に対する設定値である。この設定値は、レーザが、どれくらいのエネルギーを作り出すかに直接関連している。レーザは、2つのモードを有し、それらのモードとは、定エネルギーモードと定電圧モードとである。定エネルギーモードにおいて、高電圧の制御は、所定のレーザエネルギーを維持するように継続的に調整される。定電圧モードにおいて、電圧は、レーザのエネルギー出力にかかわらずこの値に設定される。REX5HVSet変数が、レーザから受信されるときに、所定の値を超える場合には、試験は失敗し、そしてユーザは、次の機会にエキシマーレーザガスを補充するように警告される。しかしながら、スペクトルデータ取得は、パルスエネルギーが一貫して低すぎることをデータ品質チェック(以下に記載される)が示すまで、停止される必要はない。固体レーザにおいて、閃光ランプが動作する高電圧はまた、閃光ランプの寿命のときに限界まで増大する。
【0048】
(4)REX5FilMon。これは、レーザフィラメント(サイラトロン)電圧に対する監視である。サイラトロンは、レーザ作用を引き起こす高速な高電圧スイッチとして作動する。短い有効期間(年)を有するレーザ電気構成要素の1つである。REX5FilMon変数が、その許容範囲(例えば、6.0ボルトまたは7.0ボルト)外にある場合には、この試験は失敗し、ユーザは、次の機会にサイラトロンを置き換える必要があることを警告される。
【0049】
(5)REX5GasPress。REX5GasPressが、許容範囲(例えば、3200トルまたは3900トル)外にある場合には、この試験は失敗する。スペクトルデータ取得は停止され、ユーザは、ガス圧力が範囲外にあり、レーザが補充されなければならないことを知らされる。この試験は、低すぎる圧力を引き起こすガス漏れなどの他の起こり得る圧力の問題に関与する。
【0050】
(6)LaserTemp。レーザのケース温度が、限界1(所定の値)を超える場合には、警告が、好ましくはユーザに提供され、そしてレーザのケース温度が、限界2(別の所定の値)を超える場合には、データ取得が、好ましくは停止される。
【0051】
(7)EtalonTemp。|エタロン温度−設定値|(絶対値)が、限界1(所定の値)を超える場合には、ユーザは、好ましくは警告され、そして、|エタロン温度−設定値|(絶対値)が、限界2(別の所定の値)を超える場合には、データ取得が、好ましくは停止される。
【0052】
((C)センサチェック)
(1)SensorTemp。システム100のセンサ部分110の内部の周囲温度が、第一の限界よりも高い場合には、警告が与えられ得、第二の限界よりも高い温度は、データ取得の停止または可能性としてシステムのシャットダウンを引き起こす。
【0053】
SensorHumidity。システム内の湿度が、第一の限界よりも高い場合には、警告が与えられ得、第二の限界よりも高い湿度レベルは、データ取得のシャットダウンを引き起こす。
【0054】
((D)自動焦点チェック)
(1)LFAAmpTemp。この試験は、リニア焦点アクチュエータ(LFA)の電磁モータを駆動する増幅器のケース温度をチェックする。ケース温度が、限界1(所定の値)を超える場合には、警告が、好ましくは提供され、そしてケース温度が、限界2(別の所定の値)を超える場合には、データ取得が、好ましくは停止され、LFAは、冷却のために一時的にパワーダウンされる。
【0055】
(2)LFACompTemp。この試験は、センサコンピュータの温度をチェックする。ケース温度が、限界1(所定の値)を超える場合には、警告が、好ましくは提供され、そしてケース温度が、限界2(別の所定の値)を超える場合には、データ取得が、好ましくは停止される。
【0056】
(3)LFABrakePosition。この試験は、LFAのブレーキ位置が、適切に設定されるか否かを決定する。もし適切に設定されない場合には、データ取得が停止され、自動焦点システムがリセットされる。
【0057】
(4)RangerOK。このチェックは、センサコンピュータとレーザ距離計との間の通信が適切に作動しているか否かを試験する。
【0058】
(5)PSDOK。この試験は、位置感知デバイス(PSD)によって決定されるような、望遠鏡のミラー位置が、許容範囲内にあることを検証する。その結果が許容範囲内にない場合には、データ取得は停止される。
【0059】
((E)その他のチェック)
(1)AltitudeCal。この試験は、現在の高度を確認するために、GPS受信器(図示されない)からの情報を較正情報と組み合わせる。現在の高度は、スペクトルの較正に影響し、従ってデータ解析に影響し得る。高度が、最後の較正からかなり変更されている場合には、ユーザは、システムの再較正を実行するように促される。
【0060】
(2)AtmosPress。同様に、現在の大気圧を確認することは、望ましいことであり得る。なぜならば、このメトリックがまた、スペクトルの較正に影響し、従ってデータ解析に影響し得るからである。大気圧が最後の較正からかなり変更されている場合には、ユーザは、システムの再較正を実行するように促される。
【0061】
(3)CAPPST。この試験は、CAPPS105の温度をチェックする。第一の限界と第二の限界とが実装され得、第一の限界が警告を生成し、一方で第二の限界が、データ取得を停止させるか、または可能性としてシステムのシャットダウンを強制する。
【0062】
(4)SUHtExInT。SUHtExInTは、センサユニットの熱交換器入口の温度である。これは、本質的に、センサが置いてある車両キャビンの周囲温度である。入口温度が、限界1を超える場合には、ユーザに警告し、入口温度が、限界2を超える場合には、データ取得を停止させる。警告手段は、ユーザに対して車両キャビンを冷却する行動をとるようにアドバイスする。データ取得が停止される場合には、ユーザの行動が必要である。
【0063】
(5)SUHtExOutT。SUHtExOutTは、センサユニットの熱交換器出口の温度である。これは、センサ内の気温に近い。出口温度が、限界1を超える場合には、ユーザに警告し、出口温度が、限界2を超える場合には、データ取得を停止させる。警告手段は、ユーザに対して機器を冷却する行動をとるようにアドバイスする。データ取得が停止される場合には、ユーザの行動が必要である。
【0064】
(6)LPMT。LPMTは、レーザ電源モジュールの温度である。これは、他の温度と同様にチェックされる。その温度が、第一の限界よりも高い/低い場合には、警告が、機器を冷却するために発行される。第二の限界よりも高い/低い場合には、重大ではない障害が起こり、データ取得が停止され、そしてシステムは、冷却するためにシャットダウンされなければならない。
【0065】
(7)AFSAmpTemp。自動焦点システムの増幅器の実際の温度を他の温度と同じ態様でチェックする。この試験は、自動焦点システム(AFS)増幅器温度から報告されるビット(OEMから提供されるデータ)をチェックする。試験の結果、ビットが0である場合には、データ取得が停止され、ユーザの行動が必要である。
【0066】
ここでまた図3を参照すると、ADCの一部またはADCのすべてが完了した後に、試験のいずれか1つがデータ取得の停止を結果としてもたらした場合には、プロセス300は、ステップ301の待機モードに戻り得、それによって、失敗した特定の試験またはチェックに応答して、システムが適切に点検されるかまたは再設定され得る。ADCがスペクトルデータ取得の停止を引き起こさなかった場合には、プロセス300は、ステップ315に進み、10個の暗スペクトルの初期の組が取得される。すなわち、一連のスペクトルが、対応するレーザパルスが存在しない間に取得される。これらのスペクトルのすべての中央値が次いで計算され、この中央値は、その後のスペクトル分析において、所与のスペクトルデータ取得値から中央値を減算することによって用いられ、それによって、雑音と背景の影響とを除去する。当業者は、取得される暗スペクトルの数は例示的な数であり、より多い数またはより少ない数の初期の暗スペクトルデータ収集を含むことが望ましくあり得ることを認識するであろう。
【0067】
次に、ステップ320において、「動的シリーズ」(KS)ループが初期化される。KSは、連続して実行されるために、ICCD内にロードされ得る命令の群である。この機能性は、本発明の実際の実装に用いられたAndor ICCDによって提供され、ICCDのさらなる自律動作を可能にする(すなわち、絶えず外部から提供される命令を必要としない動作モード)。この運用方法の利点は、記録される各フレームの前にICCDが命令を与えられる従来の方法とは対照的に、このKSモードが、より高速にICCDがフレームを取得(25/秒で)することを可能にすることである。このより高いデータレートが、より高い検出確率を結果としてもたらす。もちろん、ICCD220を従来のように動作させることがまた望ましいこともある。
【0068】
一旦ICCD220が作動可能になると、ステップ325において、レーザ210がパルス化され、ラマンスペクトルが、当該分野で周知なように、分光器222とICCD220とを用いて取得される。本発明に従って、このように取得されたスペクトルデータは次いで、ステップ330において、データの有用性を確認するためにデータ品質チェック(DQC)を受ける。以下で詳細に記載されるように、スペクトルデータが別個の作用因子識別コンピュータ(AIC)(図示されない)、またはプロセッサ130により実行される作用因子識別ルーチン/アルゴリズムによってさらに処理される前に、いくつかの試験が、選択されたシステム構成要素に対して遂行され、かつスペクトルデータ自体に対して遂行され、スペクトルデータがメモリに格納される。
【0069】
(データ品質チェック(DQC))
以下のDQCは、好ましくは、本発明の実施形態に従って実行される。
【0070】
(1)リニア焦点アクチュエータ(LFA)故障。この試験は、望遠鏡232の焦点が合わないことがあり得る場合に、自動焦点アクチュエータ(望遠鏡232と関連づけられている)が故障したか否かを決定する。故障である場合には、まさに収集されたデータは、さらなる処理に対して拒絶される。
【0071】
(2)LFAブレーキ係合。この試験は、LFAブレーキが係合されているか否かを決定する。係合されている場合には、望遠鏡アクチュエータがセーフモードにあり得、従って、取得されたデータは疑わしくあり得、その結果として、データは、同様に、さらなる処理に対して送られない。
【0072】
(3)LFA焦点モード。この試験は、LFAモードが、自動モード、FFAutoモード(固定焦点自動)またはコマンドモードのいずれであるかを決定する。自動モードは、システムが自動的に焦点合わせを行うことを意味する。システムが車両に搭載され、車両が移動するときには、地表までの距離が変化する(穴、岩石、植物など)。自動モードにおいて、望遠鏡の一次側は、システムを焦点が合った状態(もちろん特定の範囲内)に保持するように動かされる。FFAutoモードは、地表までの距離が急速に変化するとき(例えば、システムが丈の高い草を越えるとき)に用いられ、その場合において、焦点は、統計的に計算されたセンサ範囲に短時間(例えば、1秒間)固定される。コマンドモードは、ユーザに命令された範囲に望遠鏡の焦点を固定する。これらの正しいモードのうちのいずれかでない場合には、望遠鏡232は、焦点が合わないことがあり得、取得されたデータは、再び拒絶される。
【0073】
(4)レーザのエネルギー範囲。この試験は、レーザエネルギーが受容可能な範囲内にあるか否かを決定する。レーザエネルギーがこの範囲外にある場合には、現在のスペクトルデータを拒絶する。(4)飽和したスペクトル。この試験は、取得されたスペクトルデータが、かなり飽和しているか否かを決定する。信号スペクトルは、暗スペクトルの中央値が収集されたデータから減算される前に、好ましくは分析される。特に、カウントが、第二の所定の値よりも大きい振幅を有する信号スペクトル内のピクセルの数から作られる。所定の数よりも多いカウントが見出される場合には、スペクトルが、飽和しているとみなされ、そしてスペクトルは拒絶される。
【0074】
(5)低振幅のスペクトル。この試験は、飽和したスペクトル試験に対する補完である。ここでは、スペクトル振幅が、低すぎるか否かが決定される。最初に、暗スペクトルの中央値が信号スペクトルから減算される。カウントは次いで、所定の値を超える振幅を有する、暗スペクトルを減算されたスペクトル内のピクセルの数から作られる。この値よりも大きい値を超える振幅を有するピクセルの数が、第二の所定の値以下である場合には、スペクトルは拒絶される。低い信号が、低い信号対雑音比のスペクトルを結果としてもたらすので、この試験は、信号対雑音比(SNR)試験の一例であり、そのSNRが低すぎる場合には、スペクトルを拒絶することになる。
【0075】
(6)(壊れた)スペクトルの分裂。この試験は、取得されたスペクトルが、ICCDからの壊れたデータ、または表面からの異常に高いけい光値が原因で拒絶されるべきか否かを決定する。これは、スペクトルの使用されていないエッジのピクセルの振幅が、所定の限界よりも高いか否かを試験することによって決定される。これらのピクセルは、ICCDの搭載構造によって光からブロックされ、有意な振幅を有するべきではない。これらのピクセル内の有意な振幅の存在は、スペクトルに欠陥がある(読み出しの間に分裂し誤って再組み立てされたスペクトルが原因で、ピクセルの振幅が不正確に配列されている)か、またはICCD上の光のレベルがあまりにも高すぎ、光がエッジのピクセル上に「漏れ出し」、そしてスペクトルが信頼できないことを意味している。これは、スペクトルが飽和していない場合でさえも起こり得る。スペクトル内の全部の統合された振幅の試験が、けい光試験の代替として用いられるかもしれないが、そのような試験は、壊れたスペクトルを区別することができない。
【0076】
ここでまた図3を参照すると、ステップ330において、DQCと関連づけられた1つ以上の試験が失敗した場合には、ステップ335において、失敗が、飽和または低振幅のいずれの結果であったかが決定される。もし飽和または低振幅である場合には、ICCDの利得が、好ましくは問題に対して補償するように(適切な方向で)調整される。利得調整ループは、図4を参照して本明細書中の以下に記載される。ステップ330において、すべてのDQCが合格した場合には、ステップ340において、収集されたスペクトルデータが、スペクトルデータのブロックに追加され、該ブロックは、スペクトルデータのブロックを処理するCAPPS105内のプロセッサ130によって一緒に処理される、レーザパルスと関連づけられた最大で50個までの個々のラマンスペクトルデータの組を備え、該処理は、特に、メモリに格納される作用因子のラマンサインのライブラリにアクセスすることを含む。当該分野で周知なように、収集されたスペクトルを格納されたパターンとマッチングさせることによって、化学的物質および生物学的物質などの作用因子を識別することが可能である。本明細書中に開示された50個のブロックサイズは、ある程度は任意であるが、実際の実装においては、この数は、バッチの態様におけるデジタル信号処理に対してよい構成であることが分かる。何らかの理由で、DQCが失敗した場合には、所与のレーザパルスと関連づけられるデータは、50個のブロックに追加されない。すなわち、低品質なスペクトルデータは、プロセッサ130によって処理されることを妨げられ、それによって、時間を節約し、起こり得る不正確な検出を防止し、そしてデータ取得プロセス全体をより効率的にする。
【0077】
低信号レベルまたは飽和ではない理由のためにDQCが失敗したことをステップ335において決定した場合か、またはステップ340(所与のレーザパルスに対するスペクトルデータを50個のブロックに追加する)の後の場合には、プロセス300は、ステップ345に続く。この次のステップにおいて、全部で3000個の信号スペクトル(例えば、それぞれのレーザパルスに対するデータ記録)がメモリ115に格納されたか否かが決定される。3000個の信号スペクトルのブロックは、その関連するDQCおよびADCの結果データとともに別個に格納され得るログファイルに対しては便利な数である。再び、この特定の数は、ある程度は任意であり、当業者は、任意のログファイルのサイズが、例えば、利用可能なコンピューティング機器およびメモリの性質に依存して実装され得ることを認識するであろう。3000個の信号スペクトルのブロック内に追加データの余地がまだある場合には、プロセス300は、次のレーザパルスおよびスペクトル取得のために、ステップ325にループを戻る。
【0078】
全部で3000個(または、設定された何らかの数)の信号スペクトルが格納されたことをステップ345において決定した場合には、3000個のスペクトルを有するログファイルは、その関連するDQCおよびADCの結果データとともに、ステップ347において別個に格納される。図3に例示するように、このログファイルを格納するステップの間またはすぐ後に、いくつかの、例えば、3つの新しい暗スペクトルが、ステップ350において収集される。本発明の実際の実装においては、最初の10個の暗スペクトルの最も古い3つが除去され、3つの新しく収集された暗スペクトルが、先入れ先出し(FIFO)態様で追加される。新しい中央値が次いで、その後の暗スペクトルではないスペクトルのデータ処理における背景雑音の消去用に計算され用いられる。またここで、ステップ355において、前に初期化されたKSループが閉じられ、ステップ360によって示されるように、ADCの新しい組が実行される。シャットダウンかまたはさらなるデータ取得の停止を正当化する、ADCにおける失敗が存在する場合には、プロセス300は、ステップ365に進み、そして表面上は、待機モード301に戻る。ステップ360のADCがすべて合格する場合には、プロセス300は、ステップ320にループを戻ることにより、新しいKSループを初期化、すなわち、レーザパルスとともに再びスペクトルデータの収集を開始する。
【0079】
本発明に従った、3000個の信号スペクトルを含むログファイルの格納は、ラマンシステムの全体100が適切に作動していることを再確認するための、プロセス300の間の好都合な時間である。好適な実施形態においては、レーザが25Hzでパルス化され、従って、ステップ360のADCが、約120秒すなわち2分ごとに実行される。現場において、このADCの頻度は、収集されるスペクトルデータの信頼性を維持するために、適切であると考えられている。もちろん、周囲の気象条件、機器の寿命などの変化に依存して、ADCの頻度を増大させるかまたは減少させることは、望ましいことであり得る。さらに、システムの使用が開始される前であっても、オペレータが起こり得る問題について注意をうながされるように、待機モード(ステップ301)の間にADCを実行することは、望ましいことであり得る。
【0080】
ステップ335に参照を戻すと、DQCが低い信号または飽和に起因して失敗した場合には、ICCD220の利得が、好ましくは適切な方向に調整される。これは、図4に示されたプロセス400を介して遂行される。示されるように、ステップ401において、シングル走査モードが初期化される。これは、動的シリーズ(KS)モードとは異なる、Andorから提供されるICCDモードであり、ICCD利得が調整され得る。あるいは、ICCDのタイプに依存して、KSモードのままで利得が調整され得、その結果として、ステップ401が取り除かれ得る。いずれの場合にも、ステップ405において、ICCDの現在すなわち現時の利得が、場合に応じて、上方または下方に修正される。
【0081】
本発明の実施形態に従って、最初に、低い信号または飽和のどちらがあったかを考慮して、NewGainSetPointが、CurrentGainSetpointを増やすかまたは減らすことによって設定される。デルタ利得値が次いで、
デルタ利得値=NewGainSetpoint−CurrentGainSetpoint
として計算される。
【0082】
次いで、デルタ利得値が、5を超える場合には、
現在利得設定値=現在利得設定値+5、
|デルタ利得値|(絶対値)が、5未満の場合には、
現在利得設定値=NewGainSetPoint、
または、デルタ利得値が、−5未満の場合には、
現在利得設定値=現在利得設定値−5、
として設定される。
【0083】
一旦現在の利得設定が確立されると、プロセス400は、ステップ410に移動して、ICCDの実際の現在の利得を示す、ICCDのマイクロチャネルプレート電圧(MCVP)を捕捉する。いずれにせよ、本発明の実際の実装に用いられたAndor ICCDでは、所望のICCD利得の設定と、その利得値によるICCDの実際の動作との間に、しばしばタイムラグが存在する。従って、ステップ410が、レーザの次のパルス、およびラマンスペクトルのその後の収集(ステップ415)のすぐ前に、ICCDの実際の利得を捕捉するために用いられる。このようにICCDのMCVPに対して捕捉された値は、単純な関係を用いて、デジタルの利得値に変換され、このデジタル値は、パルスヘッダ(すなわち、そのレーザパルスに対して収集されたスペクトルデータ用のデータ記録のヘッダ)に書き込まれる。さらに、AICは、その処理においてデジタル利得値を利用し得る。
【0084】
プロセス400は次いで、ステップ420によって継続し、ステップ420は、収集されたスペクトルデータの品質を試験し、そのスペクトルデータが、さらなる処理のために格納されるべきか否かを決定する。もし格納されるべきでない場合には、プロセス400は、ステップ430にスキップする。収集されたデータがDQCに合格する場合には、ステップ425において、上記されたように、データは、AICまたは対応するルーチンまたはアルゴリズムによる処理のために、50個のスペクトルデータ記録のブロック内に格納される。また、上記のように、この最新のスペクトルデータ記録が、ログファイルに対する3000個の記録の最後であったか否かが決定され、もし最後であった場合には、プロセス400は、暗スペクトル取得および中央値のアップデートのために、図3のステップ350に制御を戻す。現在の3000個のデータ記録ログが、いっぱいでない場合には、プロセス400は、ステップ435に移動し、現在の利得(ICCDのMCVP読み取りから導かれる)が、新しい所望の利得設定値と等しいか否かが決定される。もし等しくない場合には、プロセス400は、ステップ405にループを戻り、利得が再び調整される。
【0085】
現在の利得が所望の新しい利得設定値と等しい場合には、プロセス400は完了し、本方法は、図3のステップ320によって継続し、新しい動的シリーズのループが初期化される。
【0086】
上記から、当業者は、ラマンスペクトルデータ(または実質的に任意の光データ)が適切に収集され、価値を有することを保証する体系的なアプローチを、本明細書中に記載された本発明の実施形態が提供することを認識するであろう。すなわち、本発明の実施形態は、システムの動作状態の結果としておそらくほとんど価値を有しないデータを拒絶するように設計される。本発明の実施形態はまた、機器の誤動作に起因する不正確性を収集されたデータが含まないことを保証し、そして1つ以上の警告または注意を介してシステムのユーザに提示され得るシステムの傾向を監視するために、体系的かつ規則的にいくつかのシステム構成要素を監視する。
【0087】
本明細書中に記載されたシステムおよび方法は、本明細書の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態に組み込まれ得る。従って、上記の実施形態は、すべての点において例示と考えられ、限定を意味するものではない。
【符号の説明】
【0088】
100 ラマン分光システム
105 制御、取得、処理および電源システム(CAPPS)
110 センサ
115 メモリ
120 熱交換器モジュール
130 プロセッサ
140 表面汚染物質
200 光学素子モジュール
210 レーザ
215 エタロン
220 増倍型電荷結合デバイス(ICCD)
222 分光器
230 自動焦点サブシステム
232 望遠鏡
235 距離測定サブシステム
240 コントローラ/レジスタモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラマンセンサを動作させる方法であって、該方法は、
該ラマンセンサのシステム構成要素の動作状態を監視する複数の補助的データチェックを実行することと、
ラマンスペクトルデータを取得することと、
該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータに関連する、複数のデータ品質チェックを実行することと、
該データ品質チェックの結果に基づいて、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらに処理するか否かを決定し、もしさらに処理する場合には、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらなる処理のために格納することと、
該ラマンスペクトルデータを取得するステップおよび該ラマンスペクトルデータに関連する、該複数のデータ品質チェックを実行するステップを、所定の回数、連続して繰り返し、次いで、該複数の補助的データチェックを実行するステップを再び実行することと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記複数の補助的データチェックを実行するステップは、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)、レーザ、および自動焦点サブシステムのそれぞれの状態を監視することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラマンセンサの1つ以上の構成要素の温度を監視することをさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のデータ品質チェックを実行するステップは、前記ラマンスペクトルを収集する光学素子の適切な焦点を維持するために、リニア焦点アクチュエータを監視することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のデータ品質チェックを実行するステップは、レーザエネルギーを監視することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のデータ品質チェックを実行するステップは、前記ラマンスペクトルデータが飽和しているか否か、または不十分な振幅のものであるか否かを決定することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の補助的データチェックのうちの1つが失敗すると、さらなるラマンスペクトルデータ取得を停止することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
一連の取得されたラマンスペクトルデータをログファイル内に格納することと、該ログファイルをクローズすることとをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の回数の後に、前記クローズするステップを実行することをさらに包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記クローズするステップの後に、所定の数の暗スペクトルデータを取得することと、前に計算された暗スペクトルデータの中央値を修正することとをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のデータ品質チェックのうちの1つに応答して、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)に対する利得を調整することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ラマン分光デバイスを動作させる方法であって、該デバイスは、レーザ、分光器、増倍型電荷結合デバイス(ICCD)、および自動焦点サブシステムを備え、該方法は、
少なくとも該レーザ、該ICCD、および該自動焦点サブシステムの動作状態を監視する複数の補助的データチェックを実行することと、
該レーザをパルス化し、結果としてもたらされるラマンスペクトルを、該分光器を介して該ICCDにより収集することによって、ラマンスペクトルデータを取得することと、
該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータに関連する、複数のデータ品質チェックを実行することと、
該データ品質チェックの結果に基づいて、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらに処理するか否かを決定し、もしさらに処理する場合には、該取得するステップの間に取得された該ラマンスペクトルデータをさらなる処理のために格納することと、
該ラマンスペクトルデータを取得するステップおよび該ラマンスペクトルデータに関連する、該複数のデータ品質チェックを実行するステップを、所定の回数、連続して繰り返すことと
を包含する、方法。
【請求項13】
前記連続して繰り返すことの後に、前記複数の補助的データチェックを実行するステップを繰り返すことをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
取得されたラマンスペクトルデータのログファイルがクローズされ、格納された後に、前記複数の補助的データチェックを実行するステップを繰り返すことをさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の補助的データチェックのうちの1つが失敗を示す場合には、さらなるラマンスペクトルデータ取得を停止することをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
作用因子の識別処理のために、前記複数のデータ品質チェックに合格したラマンスペクトルデータを格納することをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のデータ品質チェックのうちの少なくとも1つに応答して、前記ICCDの利得を調整することをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
対応するレーザパルスのない暗スペクトルの初期の組を取得することと、該暗スペクトルは、前記さらなる処理に対して用いられることと、追加の暗スペクトルの取得によって該暗スペクトルの初期の組を周期的にアップデートすることとをさらに包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
ラマン分光システムであって、該システムは、
所定の周波数でパルス化するように構成されるレーザと、
該レーザによって照明された同一地点に光学的に指向される望遠鏡の焦点を制御する自動焦点サブシステムと、
該望遠鏡を介して該レーザパルスに起因するラマンスペクトルを受信するように構成された分光器および増倍型電荷結合デバイス(ICCD)と、
プロセッサおよび関連するメモリであって、
該メモリは、該ICCDによって捕捉されたときに、該個々のラマンスペクトルをラマンスペクトルデータの個々の記録として格納するように構成され、
該プロセッサは、少なくとも該レーザ、該ICCD、および該自動焦点サブシステムの動作状態を監視する複数の補助的データチェックを実行し、かつ該ラマンスペクトルデータの有用性に関連する複数のデータ品質チェックを実行するように構成される、プロセッサおよび関連するメモリと
を備え、
該プロセッサは、該データ品質チェックの結果に基づいて、さらなる処理のためにラマンスペクトルデータを格納するか否か、および該複数の補助的データチェックの実行を繰り返すか否かを決定するようにさらに構成される、
システム。
【請求項20】
熱交換器をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記自動焦点サブシステムとともに動作する距離計サブシステムをさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサは、一連の暗スペクトルの捕捉を引き起こすようにさらに構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサは、アップデートされる暗スペクトルの捕捉を引き起こすようにさらに構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサは、所与のラマンスペクトルが飽和しているか否か、壊れているか否か、または不十分な振幅のものであるか否かを決定するように構成される、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記プロセッサは、所与のラマンスペクトルが飽和しているか、または不十分な振幅を有していることを決定するときには、前記ICCDの利得を調整するルーチンを起動するように構成される、請求項24に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−149914(P2011−149914A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13526(P2010−13526)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】