説明

ラミネートグレージングを作製する方法

本発明は、ラミネートグレージングを作製する方法に関し、ラミネートスペーサーが、グレージング機能を有する2つのガラス基板間に設けられており、上記方法は、予め、一定の動的変位を付与しながら、温度および周波数を変えることにより、ビスコアナライザーを使用して、スペーサーサンプル上でヤング率Eを測定し、所与の温度でスペーサーサンプルの材質の挙動法則E(f)を確立するために、WLF(ウィリアムズ(Williams)、ランデル(Landel)、フェリー(Ferry))法則を使用して、得られた曲線のデジタル処理をし、ラミネートグレージングプレートの曲げに関して有限要素法に基づいたデジタルモデルを生成し、サンプルの機械的性質が前のステップによって生じ、デジタル計算の結果を、ラミネートグレージングにおいて剪断伝達におけるスペーサーの役割が、伝達係数(ω)によって表される解析式で得られたものと比較し、伝達係数(ω)を、結果が収束するまで、解析式において変え、伝達関数(ω)=f(E)を逐次代入法によって生成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断伝達係数が最適化されたラミネーション中間層を組込むラミネートグレージングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、他の態様によれば、この種の最適化された中間層を組込むラミネートグレージングにも関する。
【0003】
ラミネートグレージングの製造を対象とするラミネーション中間層の粘弾性挙動を規定する法則が、ラミネートグレージングの静的荷重または準静的荷重を受ける場合に、上記ラミネートグレージングの機械的挙動に影響することが知られている。
【0004】
これらの荷重の強度の組み合わせ、荷重が分散される方法、荷重が適用される時間、および様々な限定状態における適用の温度がグレージングに適用され、ラミネートグレージングを組み立てるときに使用される中間層の構造上の特性(性質、構成、厚みなど)を決定することを可能にする。
【0005】
現在、ラミネートグレージングの製造において使用されるラミネーション中間層の構造上の特性の決定は、次の式によれば、中間層なしの理論グレージングの等価厚eを考慮する分析モデルに起因する。
【数1】

ここで、ωは、ラミネートアセンブリのガラス成分間で剪断を伝達するときに中間層の有効な関与を特徴づける伝達係数であり、その係数は、中間層が、ラミネートグレージングによって形成されたアセンブリの機械的性能に寄与しないなら0に等しく、またはこれに反して、中間層が、ラミネートグレージングの機械的性能に寄与するなら1に近づく値を有し
は、グレージングの各ガラス基板の厚みである。
【0006】
伝達係数ωの値および伝達係数ωを決定する方法は、文献で得られない。
【0007】
ω=0の限定の場合は、剪断応力伝達がないグレージングの層間の完全な滑りをもたらす中間層に相当し、その時、ωが1に近づく限定の場合は、応力伝達での中間層の全面的な関与に相当する。
【0008】
ラミネーション中間層、すなわち、ほんの少しだけの剪断応力伝達をもたらす、または剪断応力伝達をもたらさない「柔軟性」中間層、一般的に音響中間層、実質的な剪断応力伝達をもたらす「構造化」中間層、剪断応力伝達能力が上記定められた2つの範囲間にある「標準」中間層についての性能の種類を決定するように、これらの限定の場合間で伝達係数ωを決定しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それらの係数ωについて最適化されていない中間層を使用するラミネートグレージングは、適切に設計されておらず、制御されていない応力の場合には、場合によって機械的故障をもたらす。
【0010】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つの最適化されたラミネーション中間層を組込むラミネートグレージングを製造する方法を提案することによって、これらの欠点を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明の1つの主題は、ラミネートグレージングを製造する方法であって、
ガラス機能を有する2つの基板間にラミネーション中間層が介設されており、予め、
一定の動的変位を付与しながら、温度および周波数を変えることにより、ビスコアナライザーを使用して、上記中間層のサンプル上でヤング率Eの測定がなされ、
所与の温度で上記中間層サンプルを構成する材質の挙動を規定する法則を確立するために、WLF(ウィリアムズ(Williams)−ランデル(Landel)−フェリー(Ferry))式を使用して、得られた曲線の数値処理がなされ、
ラミネートグレージングパネルの曲げに関して有限要素法に基づいた数値モデルが生成され、サンプルの機械的性質が前のステップによって生じ、
数値計算の結果が、ラミネートグレージングにおいて剪断を伝達するときの中間層の関与が、伝達係数ωによって表される解析式で得られたものと比較され、
伝達係数ωが、結果が収束するまで、解析式において変えられ、
伝達関数ω=f(E)が、逐次代入法(succeptive iteration)によって構成され、ここで、ωは伝達係数、Eは中間層のヤング率である、方法である。
【0012】
この最適化された中間層によって、中間層を組込むラミネートグレージングは、それが受ける機械的応力に対応して機械的性質を改善した。
【0013】
本発明の文脈では、ガラス機能を有する基板は、ガラス基板またはプラスチック基板であってもよい。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、次の条件の1つまたは両方が更に任意に適用されてもよい:
温度が−20℃〜+60℃で変えられる。
周波数が5×10−7Hz〜3×10−1Hzで変えられる。
【0015】
本発明の他の主題は、他の態様によれば、このように製造されたラミネートグレージングで使用されることができる一群の中間層でもある。
【0016】
3秒の風荷重の時間および0℃〜20℃の使用温度で、
0℃で、E>8×10Pa、
10℃で、E>3×10Pa、
20℃で、E>1×10Pa、
であるなら、中間層は、「構造化」機能を有するとされる。
【0017】
3秒の風荷重の時間および0℃〜20℃の使用温度で、
0℃で、E>1×10PaおよびE≦8×10Pa、
10℃で、E>2×10PaおよびE≦3×10Pa、
20℃で、E>5×10PaおよびE≦1×10Pa、
であるなら、中間層は、「標準」機能を有するとされる。
【0018】
3秒の風荷重の時間および0℃〜20℃の使用温度で、
0℃で、E>1×10PaおよびE≦1×10Pa、
10℃で、E>3×10PaおよびE≦2×10Pa、
20℃で、E>5×10PaおよびE≦5×10Pa、
であるなら、中間層は、「柔軟性または音響」機能を有するとされる。
【0019】
本発明の他の主題は、ガラス機能を有する第1の基板と、ガラス機能を有する第2の基板とを少なくとも含むラミネートグレージングであって、これらの基板は、上記のように中間層を使用して積層されている。
【0020】
本発明の他の主題は、ガラス機能を有する第1の基板と、ガラス機能を有する第2の基板とを少なくとも含み、それらの間にラミネーション中間層が介設されているラミネートグレージングであって、このラミネートグレージングは、上記方法によって製造される。
【0021】
本発明の特徴および利点は、本発明によるラミネートグレージングを製造する方法を実行する方法の次の記載において明らかとなり、もっぱら実施例によって、および添付の図面を参照して付与される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】構造化中間層についての20℃でのマスターカーブ、すなわち、1×10−7〜1×10Hzで変化する周波数fの関数としての20℃でのヤング率Eを示す。
【図2】伝達関数の曲線の例、すなわち、伝達曲線ω=f(E)を与え、ωは伝達係数、Eは中間層のヤング率である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、ラミネーション中間層を使用する積層技術によって組み立てられることを対象とする、ガラス機能を有する2つの基板から始めて、上記中間層の機械的パラメーターは、予めMetravib社から販売されているビスコアナライザー(VA400)を使用することを特徴とする。
【0024】
上記中間層のサンプルが上記ビスコアナライザー内に設置された後、一定の動的変位、特にこの実施例では、1×10−6mの変位を付与しながら、温度および周波数を変えることにより、ビスコアナライザーを使用して上記中間層のサンプル上でヤング率が測定される。
【0025】
Solutia社によって販売されている「RM11」(商標)の中間層のサンプルが、20℃で3秒の荷重時間に2×10Paのヤング率Eを付与することによってテストされた。
【0026】
次に、得られた曲線の数値処理が、挙動法則E(f)、つまり、所定の温度で上記中間層サンプルを構成する材質の周波数の関数としてヤング率Eの変化を確立するために、WLF(ウィリアムズ(Williams)−ランデル(Landel)−フェリー(Ferry))式(ウィリー(Wiley)によって公表されたJ.D.フェリー(Ferry)、「Viscoelastic Properties」(1980))を使用してなされ、ここで、この温度は、一般的に基準温度と呼ばれる。
【0027】
ラミネートグレージングのパネルの曲げに関して有限要素法に基づいた数値モデルが生成され、ここで、サンプルの機械的性質は前のステップによって生じる。この数値モデルは、COSMOS−M計算ソフトウェアを使用して生成されることができ、問題となっている中間層を含むラミネートグレージングプレートの非線形モデルがそれに組み入れられ、プレートは均一荷重で、単に各側で支持される。
【0028】
数値計算の結果が、次いで、ラミネートグレージングにおける剪断伝達に対する中間層の寄与が、伝達係数ωによって表される解析式で得られたものと比較される。そのような解析式は、欧州規格案prEN 13474の付属書Bの主題である。これらの解析式は、特に、グレージングの厚みを含み、例えば、ラミネートグレージングの等価厚eに関する次の式によって付与されてもよい。
【数2】

はグレージングのガラス機能を有する各基板の厚みである。
【0029】
伝達係数ωは、結果が収束するまで解析式で変えられ、伝達関数ω=f(E)が逐次代入法によって構成され、その実例が図2に付与されている。
【0030】
この曲線から、このサンプルについて、20℃で、3秒の荷重時間で、値ω=0.7が得られた。これらの条件下では、中間層は「構造化」中間層と称してもよい。
【0031】
本発明による方法は、他のラミネーション中間層で繰り返され、以下のものが得られた:
20℃、3秒の風荷重時間、E=9MPa、ω=0.4で、Solutiaから販売されているRB41(商標)の中間層。これらの条件下では、中間層は「標準」中間層と称してもよい。
20℃、3秒の風荷重時間、E=1MPa、ω=0.1で、KEGから販売されているSC(商標)の中間層。これらの条件下では、中間層は「柔軟性または音響」中間層と称してもよい。
【0032】
これらの各タイプの中間層を使用して、この中間層を使用する主面の1つを介して連結された2つの基板S1およびS2を含むラミネートグレージングを製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートグレージングを製造する方法であって、
ガラス機能を有する2つの基板間にラミネーション中間層が介設されており、予め、
一定の動的変位を付与しながら、温度および周波数を変えることにより、ビスコアナライザーを使用して、前記中間層のサンプル上でヤング率Eの測定がなされ、
所与の温度で前記中間層サンプルを構成する材質の挙動を規定する法則を確立するために、WLF(ウィリアムズ(Williams)−ランデル(Landel)−フェリー(Ferry))式を使用して、得られた曲線の数値処理がなされ、
ラミネートグレージングパネルの曲げに関して有限要素法に基づいた数値モデルが生成され、サンプルの機械的性質が前のステップによって生じ、
数値計算の結果が、ラミネートグレージングにおいて剪断を伝達するときの中間層の関与が、伝達係数ωによって表される解析式で得られたものと比較され、
伝達係数ωが、結果が収束するまで、解析式において変えられ、
伝達関数ω=f(E)が、逐次代入法によって構成され、ここで、ωは伝達係数、Eは中間層のヤング率であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
温度が−20℃〜+60℃で変えられることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
周波数が5×10−7Hz〜3×10−1Hzで変えられることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法で使用される中間層であって、
中間層は、「構造化」機能を有するとされ、3秒の風荷重の時間および0℃〜20℃の使用温度で、
0℃で、E>8×10Pa、
10℃で、E>3×10Pa、
20℃で、E>1×10Pa、
であることを特徴とする、中間層。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法で使用される中間層であって、
中間層は、「標準」機能を有するとされ、3秒の風荷重の時間および0℃〜20℃の使用温度で、
0℃で、E>1×10PaおよびE≦8×10Pa、
10℃で、E>2×10PaおよびE≦3×10Pa、
20℃で、E>5×10PaおよびE≦1×10Pa、
であることを特徴とする、中間層。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法で使用される中間層であって、
中間層は、「柔軟性または音響」機能を有するとされ、3秒の風荷重の時間および0℃〜20℃の使用温度で、
0℃で、E>1×10PaおよびE≦1×10Pa、
10℃で、E>3×10PaおよびE≦2×10Pa、
20℃で、E>5×10PaおよびE≦5×10Pa、
であることを特徴とする、中間層。
【請求項7】
ガラス機能を有する第1の基板(S1)と、ガラス機能を有する第2の基板(S2)とを少なくとも含むラミネートグレージングであって、
前記基板(S1、S2)が、請求項4から6のいずれか一項に記載の中間層を使用して積層されている、ラミネートグレージング。
【請求項8】
ガラス機能を有する第1の基板と、ガラス機能を有する第2の基板とを少なくとも含み、それらの間にラミネーション中間層が介設されているラミネートグレージングであって、
請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されていることを特徴とする、ラミネートグレージング。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504543(P2012−504543A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529604(P2011−529604)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051860
【国際公開番号】WO2010/037973
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】