説明

ラミネートフィルム用接着剤組成物

【課題】ボイル処理やレトルト処理等の過酷な条件下においても、フィルムに対して高い接着強度を発現でき、さらに溶媒を用いることによる環境への影響等の問題が低減されたラミネートフィルム用接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】カルボジイミド基と反応し得る官能基を有する水溶性又は水分散型のポリウレタン樹脂組成物を主剤とし、カルボジイミド化合物を硬化剤とし、ポリウレタン樹脂組成物中の該官能基の100当量に対して、カルボジイミド化合物のカルボジイミド基が15〜130当量であり、該ポリウレタン樹脂組成物は、分子量200〜3000のポリオール成分、ポリイソシアネート成分、ジメチロールブタン酸、酸性基中和剤及び末端停止剤から得られる分子量が3000〜8000のポリウレタン樹脂が、第三ブタノールに溶解されているものであることを特徴とするラミネートフィルム用接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の水溶性又は水分散型のポリウレタン樹脂組成物、及びカルボジイミド化合物からなるラミネートフィルム用接着剤組成物に関するものであり、詳しくは、分子量200〜3000のポリオール成分(a)、ポリイソシアネート成分(b)、ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)及び末端停止剤(e)から得られるポリウレタン樹脂が第三ブタノールに溶解されているポリウレタン樹脂組成物である主剤成分、並びにカルボジイミド化合物を含有してなる硬化剤成分からなるラミネートフィルム用接着剤組成物に関するものである。本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物は、食品包装用途のラミネートフィルムの作成にとりわけ好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
食品包装用、化粧品包装用、医療包装用材料には、各種プラスチックフィルムが使用されている。特に機能性を高めるために、複数種のフィルムを接着剤等でラミネートしたラミネートフィルムが多用されている。これらのラミネートフィルムの接着剤としては、通常有機溶剤を用いた接着剤が使用されているが、有機溶剤を用いた接着剤は、作業環境、大気汚染の環境面の問題や、火災の危険性、作業時の曝露、貯蔵時の安定性等の問題を有している。
【0003】
かかる問題を解決すべく、ポリウレタン系の水分散型樹脂を用いた水性接着剤が検討されており、例えば、アセトンやメチルエチルケトン等の毒性の高い溶媒を用いない水性ポリウレタン組成物を製造する方法が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーをモノアルコール系溶剤により希釈した後、ポリウレタン樹脂水分散液を製造する方法が報告されている。また、特許文献2には、末端にイソシアネート基を有し、分子側鎖にカルボキシル基を有するウレタンプレポリマーから、水性ウレタン樹脂組成物を製造する方法が報告されている。
【0005】
しかし、これらの製造方法では、溶媒とウレタンプレポリマーとの副反応が制御できない場合があったり、得られるポリウレタン樹脂の粘度が高く生産性が悪いという問題があった。また、得られるポリウレタン樹脂の密着性、接着強度等の物性は、未だ満足のいくものではなかった。
【0006】
さらに、特許文献3には、イソシアネート反応性基を有する水分散性樹脂と水分散性ポリイソシアネートからなる水性ラミネート接着剤が報告されている。また、特許文献4には、アニオン基とカチオン基を有する水分散性ポリウレタン樹脂を用いたフィルム用接着剤が報告されている。また、特許文献5には、高分子ポリオール、カルボキシル基含有化合物、ポリイソシアネート、中和剤から得られるポリウレタンエマルジョンを用いた水性接着剤が報告されている。
【0007】
しかし、これらの接着剤は、対熱水性が不十分であったり、例えば食品包装用のラミネートフィルムの作製に供すると、ボイル処理等に対する耐性が十分ではない。
【0008】
さらに、特許文献6には溶媒を使用しない水性接着剤が報告されている。この水性接着剤は、溶剤を使用しないので環境性に優れるが、無溶媒なためプレポリマーの粘度が高く、製造上の問題があった。
【0009】
また、特許文献7には、水系ウレタン樹脂組成物を、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物等で硬化させることを特徴とするラミネートフィルム用接着剤が報告されている。しかしながら、この接着剤は、水系ウレタン樹脂を製造する際にMEK等の有機溶剤を使用するため、食品、化粧品、医療等の用途に使用する場合には、安全衛生上の問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平11−12339号公報
【特許文献2】特開2002−275230号公報
【特許文献3】特開平6−80948号公報
【特許文献4】特開平11−181394号公報
【特許文献5】特開11−323300号公報
【特許文献6】特開2005−76013号公報
【特許文献7】特開2004−043519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、ボイル処理やレトルト処理等の過酷な条件下においても、ラミネートフィルム用のフィルムに対して高い接着強度を発現でき、さらに、溶媒を用いることによる環境への影響等の問題が低減されたラミネートフィルム用接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、溶媒として第三ブタノールを使用し、鎖延長剤としてのポリアミンを使用しないポリウレタン樹脂組成物に対し、硬化剤成分としてカルボジイミド化合物を用いることで、上記問題を解決し得ることを知見した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、カルボジイミド基と反応し得る官能基を有する水溶性又は水分散型のポリウレタン樹脂組成物(A)を主剤とし、カルボジイミド化合物(B)を硬化剤としたラミネートフィルム用接着剤組成物であり、該ポリウレタン樹脂組成物(A)中のカルボジイミド基と反応し得る官能基の100当量に対して、該カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基が15〜130当量の範囲であり、該ポリウレタン樹脂組成物(A)は、分子量200〜3000のポリオール成分(a)、ポリイソシアネート成分(b)、ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)及び末端停止剤(e)から得られる分子量3000〜8000のポリウレタン樹脂が、第三ブタノールに溶解されているポリウレタン樹脂組成物であることを特徴とするラミネートフィルム用接着剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボイル処理やレトルト処理等の過酷な条件下においても、ラミネートフィルム用のフィルムに対して高い接着強度を発現でき、しかも安全性に優れたラミネートフィルム用接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、主剤成分としてのポリウレタン樹脂組成物、及びカルボジイミド化合物を含有する硬化剤を用いる本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0016】
本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物は、主剤成分としての特定の構造を有するポリウレタン樹脂組成物(A)が、カルボジイミド化合物(B)を含有する硬化剤成分により硬化して、ラミネートフィルム用の接着剤として機能する組成物である。
【0017】
本発明に係る前記ポリウレタン樹脂組成物(A)において、ポリオール成分(a)に用いられるポリオールは、ジオール及び必要に応じて用いられるヒドロキシル基を3個以上有する他のポリオールからなるものであり、その配合等により制限を受けるものではない。該ポリオール成分(a)に用いられるジオール及びヒドロキシル基を3個以上有するポリオールとしては、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、ポリカーボネートポリオール類が挙げられる。これらは混合して使用されてもよい。
【0018】
上記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキサイド付加物;ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレンオキサイド付加物;低分子ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらは混合して使用されてもよい。
【0019】
上記ポリエステルポリオール類としては、低分子ポリオール等のポリオール類と、その化学量論量より少ない量の多価カルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体(エステル、無水物、ハライド等)、及び/又は、ラクトン類若しくはそれを加水分解開環して得られるヒドロキシカルボン酸との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られるものが挙げられる。
【0020】
上記低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
【0021】
上記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類等の多価カルボン酸が挙げられ、そのエステル形成性誘導体としては、例えば、これらの多価カルボン酸の酸無水物、該多価カルボン酸クロライド等のハライド;該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステルが挙げられる。これらは混合して使用されてもよい。上記ラクトン類としてはγ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。これらは混合して使用されてもよい。
【0022】
本発明に係るポリオール成分(a)のジオールとしては、ジカルボン酸及び低分子ジオールから得られるポリエステルジオールが、耐水性や引っ張り特性が良好なポリウレタン樹脂組成物が得られるので好ましい。
【0023】
本発明に係るポリオール成分(a)の分子量は、数平均分子量で200〜3000であり、300〜2000が好ましい。
【0024】
本発明に係る前記ポリウレタン樹脂組成物(A)において、ポリイソシアネート成分(b)は、ジイソシアネート及び必要に応じて用いられるポリイソシアネート化合物からなるものであり、その配合等により特に制限を受けるものではない。ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニル−4,4'−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び/又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類等;及びこれらの混合物が挙げられ、得られる塗膜の耐水性がよいので脂環式ジイソシアネート類が好ましく、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネートがより好ましい。これらは、カルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。これらのジイソシアネートのポリイソシアネート成分(b)中の含有量(質量%)は、50%より小さいと塗膜の可撓性が不十分になるおそれがあるので50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。また、ポリイソシアネート化合物としては、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、これらの混合物等の三官能以上のイソシアネート、これらの三官能以上のイソシアネートのカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物、これらを各種のブロッキング剤によってブロックしたブロックイソシアネート、上記例示のジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、ビウレット三量体等が挙げられる。
【0025】
上記ポリオール成分(a)及び上記ポリイソシアネート成分(b)の使用比率は、ポリオール成分(a)由来の水酸基等の活性水素含有基1モルに対して、ポリイソシアネート成分(b)の成分イソシアネート基が1.2〜2.0モルの範囲が好ましい。
【0026】
本発明に係るジメチロールブタン酸(c)の使用量は、モル比でポリオール成分(a)に含まれるポリオールを100とすると、5より小さいと、水に分散させたときの分散安定性が低下し、1000より大きいとポリウレタン樹脂組成物から得られる塗膜等の耐水性が悪化する場合があるので、5〜1000が好ましく、10〜500がより好ましい。
【0027】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)における酸性基中和剤(d)は、ポリウレタンに水分散性を与えるために酸性基を中和させる化合物であり、その具体例としては、トリメチルアミンやトリエチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類、N−メチルモルフォリンやN−エチルモルフォリン等のN−アルキルモルフォリン等の3級アミン;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアミン類及びN−アルキルモルフォリンから選択される1種以上を用いることが好ましい。使用量は、上記の酸性基と反応して塩を形成して水分散性を与える範囲であればよく、中和率50〜200%が好ましく、75〜150%がより好ましい。
【0028】
また、上記酸性基中和剤(d)の使用量は、酸性基1モルに対して過不足が大きいとポリウレタン樹脂組成物から得られる塗膜等の耐水性、強度、伸び等の物性が低下するおそれがあるので0.2〜2.0モルが好ましく、0.5〜1.5モルがより好ましい。
【0029】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)における末端停止剤(e)としては、例えば、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン類、エタノール、n−プロピルアルコール等のモノアルコール類、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン等のポリオール類、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール等のアルカノールアミン類を用いることができ、これらの中でもポリオール類が好ましい。末端停止剤(e)の使用量は、ポリイソシアネート成分(b)1モルに対して0.1〜5.0モルが好ましく、0.5〜1.5モルがさらに好ましい。
【0030】
上記原料(a)〜(e)から得られるポリウレタン樹脂は、分子量(平均分子量)が3000〜8000、好ましくは3000〜6000である。
【0031】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)で用いられる溶媒である第三ブタノールは、通常、プレポリマーを製造するために用いられる上記原料の合計量に対して、好ましくは20〜1000質量%、さらに好ましくは50〜500質量%の範囲で用いられる。
【0032】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)は、分子量200〜3000のポリオール成分(a)及びポリイソシアネート成分(b)からポリウレタンプレポリマーを製造した後、これを第三ブタノールに溶解させ、次いで、ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)及び末端停止剤(e)を加え反応させる方法により得るのが、反応制御及び取り扱いの点で好ましい。ポリウレタンプレポリマーは、ポリオール成分(a)及びポリイソシアネート成分(b)を、好ましくは90〜100℃で1〜3時間反応させることにより製造することができる。ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)及び末端停止剤(e)は、三者を一括で加えてもよく、ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)、末端停止剤(e)の順で別個に加えてもよく、ジメチロールブタン酸(c)及び酸性基中和剤(d)を一括で加えて反応させた後に末端停止剤(e)を加えてもよい。いずれの場合も、原料を加えた後の各反応は、好ましくは30〜80℃で2〜4時間で行い、最終的にイソシアネート基が消失するようにする。
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、その他、イ)ポリオール成分(a)及びポリイソシアネート成分(b)、ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)、末端停止剤(e)及び溶媒としての第三ブタノールを一括で加えて反応を行う方法、あるいはロ)ポリオール成分(a)にポリイソシアネート成分(b)、ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)、末端停止剤(e)及び溶媒としての第三ブタノールを順次加えて反応を行う方法によっても得られる。
【0033】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)は、そのままであるいは有機溶媒で希釈して水溶性ポリウレタン樹脂組成物として使用することもできるし、水に分散させて水分散型ポリウレタン樹脂組成物として使用することもできる。水溶性ポリウレタン樹脂組成物及び水分散型ポリウレタン樹脂組成物のいずれの場合も、その固形分は5〜75質量%であることが好ましい。上記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;ヘキサン、2−メチルペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類が挙げられる。これらは混合して使用してもよいが、第三ブタノールを含めた全ての有機溶媒の合計量において第三ブタノールが50質量%以上となるようにするのが好ましい。
【0034】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)を水に分散させる場合、必要に応じて、周知一般に用いられるポリウレタン分子に架橋構造を与える架橋剤を用いてもよい。該ポリウレタン樹脂組成物に好適な架橋剤としては、メラミン、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0035】
また、本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)を水に分散させる場合、必要に応じて、水分散性ポリウレタンに使用される周知一般の乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができる。中でも、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤がコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
【0036】
上記のアニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N−アシルアミノ酸塩;N−アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
【0037】
また、ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。該ノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第三ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第三アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられ、アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第三ブチルフェノール、2,5−ジ第三ブチルフェノール、3,5−ジ第三ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第三オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものが挙げられる。また、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物でもブロック付加物でもよい。
【0038】
また、本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)には、さらに必要に応じて、周知一般に用いられる各種添加剤を用いてもよい。該添加剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;フェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物等の酸化防止剤;トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤;帯電防止剤;外部架橋剤;粘度調整剤;レベリング剤;消泡剤;ゲル化防止剤;ラジカル捕捉剤;耐熱性付与剤;無機及び有機充填剤;可塑剤;滑剤;補強剤;触媒;揺変剤;抗菌剤;防カビ剤;防腐触剤;顔料等が挙げられる。基材に対して特に強固な密着性を与えるシランカップリング剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、コロイダルシリカ、テトラアルコキシシラン及びその縮重合物、キレート剤、エポキシ化合物を用いてもよい。これらの添加剤の使用量は、使用目的によって適宜選択できるが、好ましくは原料(a)〜(e)から得られるポリウレタン樹脂100質量部に対して合計で300質量部以下とする。
【0039】
上記のヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0040】
また、上記の酸化防止剤としてのフェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4'−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス (4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ第三ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0041】
また、上記の酸化防止剤としてのリン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、 トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2'−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4'−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0042】
また、上記の酸化防止剤としての硫黄系化合物としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0043】
また、上記の紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩又は金属キレート、特にニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
【0044】
上記ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤のそれぞれの使用量は、ポリウレタン樹脂組成物(A)の固形分100質量部に対して0.001質量部より小さいと充分な添加効果を得られない場合があり、10質量部より大きいと分散性や塗装物性に影響を及ぼすおそれがあるので0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。また、これらのヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤の添加方法としては、ポリオール成分(a)に添加する方法、ポリウレタンに添加する方法、水分散前の水相に添加する方法、水分散後に添加する方法等が挙げられるが、操作が容易なのでポリオール成分(a)に添加する方法、ポリウレタンに添加する方法が好ましい。
【0045】
上記帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤等の両性帯電防止剤が挙げられる。係る帯電防止剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上の帯電防止剤を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物は、上記の水溶性若しくは水分散性のポリウレタン樹脂組成物(A)を主剤とし、カルボジイミド化合物(B)を硬化剤とするものである。
カルボジイミド化合物(B)は、カルボジイミド基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、有機ジイソシアネートを、ホスホレン化合物、金属カルボニル錯体化合物及びリン酸エステル等のようにカルボジイミド化を促進する触媒の存在下に反応させることにより得られるイソシアネート末端カルボジイミド化合物を用いることができる。カルボジイミド化合物(B)としては、さらに該イソシアネート末端カルボジイミド化合物に親水性セグメント化合物を反応させた水性カルボジイミド化合物も用いることができる。
【0047】
上記イソシアネート末端カルボジイミド化合物の具体例としては、イソシアネート末端イソホロンカルボジイミド、イソシアネート末端ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、イソシアネート末端ヘキサメチレンカルボジイミド、イソシアネート末端ジフェニルメタンカルボジイミド、イソシアネート末端トリレンカルボジイミド、イソシアネート末端テトラメチルキシリレンカルボジイミド等が挙げられ、各々の重合度は、好ましくは1〜30の範囲であるが、該重合度は、使用条件や所望の硬化時間等により適宜選択することができる。
【0048】
また、上記水性カルボジイミド化合物の具体例としては、水性イソホロンカルボジイミド、水性ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、水性ヘキサメチレンカルボジイミド、水性ジフェニルメタンカルボジイミド、水性トリレンカルボジイミド、水性テトラメチルキシリレンカルボジイミド等が挙げられる。これらの水性カルボジイミド化合物の中でも、特に原料の有機ジイソシアネートが脂環式のジイソシアネートであるもの(水性イソホロンカルボジイミド又は水性ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)は、得られるラミネートフィルム用接着剤組成物が黄変することが少なく、好ましく使用される。また、重合度は、上記イソシアネート末端カルボジイミド化合物と同様に、好ましくは1〜30の範囲から適宜選択される。
【0049】
上記水性カルボジイミド化合物には、上記親水性セグメント化合物の選択により、カチオンタイプ、アニオンタイプ、ノニオンタイプの3種のイオン性を有する水性カルボジイミド化合物がある。具体的には、例えば、上記親水性セグメント化合物として、ジアルキルアミノアルコールを使用した場合はカチオンタイプとなり、反応性ヒドロキシル基を少なくとも1つ有するアルキルスルホン酸塩を使用した場合はアニオンタイプとなり、反応性ヒドロキシル基を少なくとも1つ有するアルコキシ基で末端封鎖されたポリ(アルキレンオキサイド)を使用した場合はノニオンタイプとなる。該ポリ(アルキレンオキサイド)のアルキレンオキサイドの種類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。ノニオンタイプとする場合に使用する上記ポリ(アルキレンオキサイド)としては、重合度が4〜30の範囲のものが好ましく使用される。
尚、本発明でいう「水性」という語は、本発明に係るカルボジイミド化合物(B)が、水溶性或いは自己乳化性、その他の水と均一になじむ性質を有していることを意味するものである。
【0050】
カルボジイミド化合物(B)は、水に溶解又は分散させてから硬化剤として用いることもできる。水性タイプのカルボジイミド化合物は、分子中に親水性基が導入されているので、自己乳化(ソープフリー)法により水に溶解させることができる。エマルジョンタイプ(非水性タイプ)のカルボジイミド化合物は、ノニオン性乳化剤を用いて強制乳化法(エマルジョン)により、水に分散させることができる。
カルボジイミド化合物(B)を水に溶解又は分散させる際には、好ましくは固形分が5〜80質量%の範囲となるようにする。
【0051】
水に溶解又は分散しているカルボジイミド化合物(B)としては、市販品を用いてもよい。自己乳化(ソープフリー)法により水に溶解している水性(ノニオン)タイプのカルボジイミド化合物の市販品としては、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトV−6等が挙げられ、ノニオン性乳化剤を用いて強制乳化法(エマルジョン)により水に分散しているエマルジョンタイプのカルボジイミド化合物の市販品としては、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02が挙げられる(いずれも日清紡(株)製)。
【0052】
本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物において、その形態、使用方法は任意である。形態としては、1液タイプの接着剤と2液タイプの接着剤が挙げられる。使用方法としては、1液タイプのものは、基材としてのフィルムに塗布し、塗布面を乾燥させた後、接着又は圧着するのが一般的であり、必要に応じて、塗布、乾燥、及び接着又は圧着の各工程で、加温又は加熱してもよい。2液タイプの接着剤は、使用直前に主剤であるポリウレタン樹脂組成物(A)と硬化剤であるカルボジイミド化合物(B)とを混合してから上記1液タイプと同様に使用してもよいし、接着するフィルムの片方にポリウレタン樹脂組成物(A)を塗布し、もう一方のフィルムに硬化剤成分を塗布して使用してもよい。
【0053】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物(A)と硬化剤成分として用いるカルボジイミド化合物(B)との配合比(当量比)は、前記ポリウレタン樹脂組成物(A)中のカルボジイミド基と反応し得る官能基の100当量に対して、カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基が15〜130当量となる比率とし、好ましくは50〜100当量とする。カルボジイミド基が15当量未満の場合、得られる接着剤強度が不十分となり、カルボジイミド基が130当量を超える場合は、反応しないカルボジイミド基が過剰となり、無駄である。前記ポリウレタン樹脂組成物(A)中のカルボジイミド基と反応し得る官能基は、例えば、ポリオール成分(a)由来の水酸基等の活性水素含有基、ジメチロールブタン酸(c)由来のカルボキシル基、酸性基中和剤(d)由来のアミノ基、末端停止剤(e)由来の水酸基である。
また、ポリウレタン樹脂組成物(A)及びカルボジイミド化合物(B)の使用量は、ポリウレタン樹脂組成物(A)の固形分100質量部に対し、カルボジイミド化合物(B)が固形分で1〜100質量部となる範囲から、上記当量比を満たすように選択することが好ましい。
【0054】
本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物は、種々の基材に対して高い密着性を示す。基材としては、例えば、金属(アルミニウム、銅等)、セラミックス、プラスチック、木材、紙等の種々の基材を使用することができるが、本発明のラミネートフィルム用接着剤は、一般的に接着が困難なプラスチック面に好適に適用できる。本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物を適用するプラスチックフィルムとしては、例えば、延伸ポリプロピレン(OPP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NY)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢ビ共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチックで形成されたフィルム、上記基材にこれらのプラスチックによりコーティングを施したフィルムが挙げられる。また、これらのフィルムには、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理表面、アルミ蒸着、シリカ蒸着、ラビング処理等の表面処理が施されてもよい。特にコロナ放電処理を施すと、フィルムの密着性を向上させることができるため好ましい。
上記のうち、OPP/CPP、PET/CPP、OPP/LLDPE、PET/LLDPE、ONY/LLDPE、PET/Al/CPP等のフィルムの組み合わせは、特に食品包装用として広く用いられている。
フィルムの厚みは、ラミネートフィルムの使用用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは5〜100μmである。
【0055】
本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物を用いてラミネート基材(フィルム)を接着加工する際には、室温でも接着加工は可能であるが、好ましくは加温して接着加工を行う。加温して接着加工を行うには、通常用いられる方法を採用すればよく、例えば、ドライラミネーター、サーマルラミネーター等によって接着剤を一方のラミネート基材の片面に塗布し、溶剤及び/又は水を揮散させた後、他方のラミネート基材と50〜130℃にて貼りあわせ、常温にて硬化させればよい。ラミネート基材表面に塗布される本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物の量は、好ましくは0.2g〜20g/m2、さらに好ましくは0.5〜10g/m2である。
【0056】
本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物は、強固な接着性、耐水性又は耐熱水性等が要求される食品包装用、医療包装用、化粧品包装用等のラミネートフィルムに好適に用いられる。本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物は、特に食品包装用途のラミネートフィルムに有用であり、レトルトパウチ、ボイルパウチ、蓋材等の包装容器に使用した場合でも、食品製造工程において80℃以上で行われる高温殺菌によってフィルムが剥離することがなく、しかも、内容物である食品の長期保存安定性及び安全性に優れた食品包装材料を提供することができる。
【実施例】
【0057】
以下、製造例、実施例、評価例等をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例、評価例等によって何ら制限を受けるものではない。尚、下記実施例等において、固形分は全て質量基準である。
【0058】
〔製造例1〕ポリウレタン樹脂組成物No.1の製造
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得た数平均分子量2000のポリエステルポリオール0.20モル、イソホロンジイソシアネート1.00モル及び1,4−ブタンジオール0.49モルを反応フラスコに仕込み、窒素気流中で、100℃で2時間反応させてポリウレタンプレポリマーを得た。次に、このポリウレタンプレポリマー656gを第三ブタノール250gに溶解し、ジメチロールブタン酸0.18モル及びN−メチルモルフォリン0.25モルを加えて60〜70℃で2時間反応させた後、1,4−ブタンジオール0.49モルを加えて60〜70℃でイソシアネート基が消失するまで攪拌し、末端水酸基のポリウレタン樹脂組成物No.1を得た。得られたポリウレタン樹脂組成物No.1は、ウレタン結合濃度2.75eq/kg、粘度71000mPa・s/25℃、平均分子量が5200、固形分は70.6%であった。
【0059】
〔製造例2〕ポリウレタン樹脂組成物No.2の製造
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得た数平均分子量2000のポリエステルポリオール0.20モル、イソホロンジイソシアネート1.00モル及び1,4−ブタンジオール0.49モルを反応フラスコに仕込み、窒素気流中で、100℃で2時間反応させてポリウレタンプレポリマーを得た。次に、このポリウレタンプレポリマー656gを第三ブタノール250gに溶解し、ジメチロールブタン酸0.18モル及びN−エチルモルフォリン0.25モルを加えて60〜70℃で2時間反応させた後、1,4−ブタンジオール0.49モルを加えて60〜70℃でイソシアネート基が消失するまで攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物No.2を得た。得られたポリウレタン樹脂組成物No.2は、ウレタン結合濃度2.74eq/kg、粘度50000mPa・s/25℃、平均分子量が5200、固形分は68.2%であった。
【0060】
〔製造例3〕ポリウレタン樹脂組成物No.3の製造
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得た数平均分子量2000のポリエステルポリオール0.20モル、イソホロンジイソシアネート1.00モル及び1,4−ブタンジオール0.49モルを反応フラスコに仕込み、窒素気流中で、100℃で2時間反応させてポリウレタンプレポリマーを得た。次に、このポリウレタンプレポリマー656gを第三ブタノール250gに溶解し、ジメチロールブタン酸0.18モル及びN−エチルモルフォリン0.25モルを加えて60〜70℃で2時間反応させた後、トリメチロールプロパン0.49モルを加えて60〜70℃でイソシアネート基が消失するまで攪拌し、ポリウレタン樹脂組成物No.3を得た。得られたポリウレタン樹脂組成物No.3は、ウレタン結合濃度2.77eq/kg、粘度100000mPa・s/25℃、平均分子量が5200、固形分は69.8%であった。
【0061】
〔実施例〕ラミネートフィルム用接着剤組成物の調製
上記の製造例で得られたポリウレタン樹脂組成物No.1〜No.3の42.5gそれぞれを、水57.5gに分散させて水分散型ポリウレタン樹脂組成物No.1〜No.3とした。
主剤としての該水分散型ポリウレタン樹脂組成物に、硬化剤として下記表1に記載のカルボジイミド化合物を配合して、ラミネートフィルム用接着剤組成物をそれぞれ得た。
尚、主剤(水分散型ポリウレタン樹脂組成物)100gに対する硬化剤(カルボジイミド化合物)の配合量は表1に記載した通りである。また、表1におけるラミネートフィルム用接着剤組成物の配合比は、水分散型ポリウレタン樹脂組成物中のカルボジイミド基と反応し得る官能基の100当量に対するカルボジイミド化合物のカルボジイミド基の当量を示す。
これらのラミネートフィルム用接着剤組成物について、下記評価例1及び3では、ボイル試験後の接着性評価を行い、下記評価例2では、レトルト試験後の接着性評価を行った。
【0062】
〔評価例1〕
コロナ放電処理した厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)の処理面に、バーコーターを用いてラミネートフィルム用接着剤組成物を膜厚5μmに塗工後、ヘアドライヤーを用いて塗工面を10秒乾燥した。これにコロナ放電処理した厚さ40μmの未延伸キャストポリプロピレンフィルム(CPP)の処理面を重ねた後、常温にてロールで圧着した。これを40℃で2日間放置して、接着サンプルとしてのラミネートフィルムを得た。得られた接着サンプルについて、ボイル試験(95℃熱水中、30分)を行った後、180°T型剥離試験(試験片:200mm×15mm、引張速度:300mm/分、測定雰囲気:25℃×50%RH)により接着強度を測定した。それらの結果を表1に示す。尚、表1には、これらの結果と共に、ボイル試験をしていない接着サンプルの強度(初期強度)も示す。
また、T型剥離試験時に接着サンプルの剥離状態を目視観察し、ボイル試験及び初期のいずれの測定においても材料破壊したものを○、いずれかの測定において未延伸基材伸び剥離が認められたものを△、いずれかの測定において界面剥離が認められたものを×として評価した。これらの結果を表1に示す。表1に示す通り、比較評価例1−1〜比較評価例1−4の評価結果は、いずれも×であった。これは、比較評価例1−1〜1−4いずれにおいても、初期強度の測定で接着界面剥離が認められたためである。さらに、比較評価例1−1においては、ボイル試験で接着剤の部分が界面剥離を起こしたため、その後の接着強度の測定は実施できなかった。
【0063】
尚、評価例1−1〜1−4並びに比較評価例1−1、1−2及び1−4では、フィルムの組み合わせはいずれもOPPとCPPであるが、ラミネートフィルム用接着剤組成物の組成を表1に記載の通り変えている。また、評価例1−5〜1−10及び比較評価例1−3は、フィルムの組み合わせを表1に記載の通りに変え、さらにラミネートフィルム用接着剤組成物の組成も表1に記載の通りとした。
但し、表1において、フィルムの名称及び厚さは以下の通りである。
OPP:延伸ポリプロピレン、厚さ20μm
PET:延伸ポリエチレンテレフタレート、厚さ12μm
ONY:延伸ナイロン、厚さ15μm
CPP:未延伸キャストポリプロピレン、厚さ40μm
LLDPE:未延伸低密度ポリエチレン、厚さ50μm
【0064】
また、下記表1に記載の硬化剤は下記の通りである。尚、下記NCN当量及びオキサゾリン当量は、各々固形分に対する当量数である。
・V−02:「カルボジライトV−02」日清紡(株)製、NCN当量590、固形分40%
・V−02−L2:「カルボジライトV−02−L2」日清紡(株)製、NCN当量385、固形分40%
・E−02:「カルボジライトE−02(エマルジョンタイプ)」日清紡(株)製、NCN当量445、固形分40%
・EX−614B:「デナコールEX−614B」ナガセケムテックス(株)製、エポキシ当量170、固形分100%
・WS−700:「エポクロスWS−700」(株)日本触媒製、オキサゾリン当量220、固形分25%
【0065】
【表1】

【0066】
〔評価例2〕
上記評価例1と同様の方法で、接着サンプルとしてのラミネートフィルムを作製した。得られた接着サンプルについてレトルト試験(120℃水蒸気中、30分)を行った。その後180°T型剥離試験(試験片:200mm×15mm、引張速度:300mm/分、測定雰囲気:25℃×50%RH)により接着強度を測定した。それらの結果を表2に示す。尚、表2には、これらの結果と共に、レトルト試験をしていない接着サンプルの強度(初期強度)も示す。
【0067】
【表2】

【0068】
〔評価例3〕
評価例1と同様の方法でラミネートフィルムを作製した。但し、ラミネートフィルムは、サイズが12cm×14cmの袋とした。この袋に、内容物として水と酢と油との混合物(重量比:水/酢/油=10/1/1)を充填した。内容物を充填した袋を沸騰水中で30分間の条件で煮沸高温殺菌(ボイル試験)した後、袋の外観を目視観察した。剥離状態が認められず外観が良好なものを○、剥離状態が観察されたものは×とした。結果を〔表3〕に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
上記の評価例1、評価例2及び評価例3の結果から、本発明のラミネート用接着剤組成物は、剥離強度が強く、ボイル試験後及びレトルト試験後も優れていることが確認できた。これに対し、比較評価例では、ボイル試験及びレトルト試験において接着剤の部分が界面剥離を起こしていることから、接着強度が弱く、ラミネートフィルム用接着剤としては不適であることが確認できた。また、食品を充填した状態で行われる包装容器の高温殺菌工程においても、本発明のラミネートフィルム用接着剤組成物を使用した場合は、フィルムが剥離することなく、保存安定性及び衛生性にも優れた包装材料を製造が可能であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド基と反応し得る官能基を有する水溶性又は水分散型のポリウレタン樹脂組成物(A)を主剤とし、カルボジイミド化合物(B)を硬化剤としたラミネートフィルム用接着剤組成物であり、該ポリウレタン樹脂組成物(A)中のカルボジイミド基と反応し得る官能基の100当量に対して、該カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基が15〜130当量の範囲であり、該ポリウレタン樹脂組成物(A)は、分子量200〜3000のポリオール成分(a)、ポリイソシアネート成分(b)、ジメチロールブタン酸(c)、酸性基中和剤(d)及び末端停止剤(e)から得られる分子量が3000〜8000のポリウレタン樹脂が、第三ブタノールに溶解されているポリウレタン樹脂組成物であることを特徴とするラミネートフィルム用接着剤組成物。
【請求項2】
上記ポリオール成分(a)のジオール成分が、ジカルボン酸及び低分子ジオールから得られるポリエステルジオールである請求項1記載のラミネートフィルム用接着剤組成物。
【請求項3】
上記低分子ジオールが、3−メチル−1,5−ペンタンジオールである請求項2記載のラミネートフィルム用接着剤組成物。
【請求項4】
上記ポリイソシアネート成分(b)のジイソシアネートが、脂環式ジイソシアネート類である請求項1〜3のいずれかに記載のラミネートフィルム用接着剤組成物。
【請求項5】
上記カルボジイミド化合物(B)が、分子中に親水性基が導入された水性カルボジイミド化合物であり、該水性カルボジイミド化合物を自己乳化法により水に溶解させて上記硬化剤として用いる請求項1〜4のいずれかに記載のラミネートフィルム用接着剤組成物。
【請求項6】
上記ポリウレタン樹脂組成物(A)中のカルボジイミド基と反応し得る官能基の100当量に対して、上記カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド基が50〜100当量の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載のラミネートフィルム用接着剤組成物。
【請求項7】
食品包装用途のラミネートフィルムに用いる請求項1〜6のいずれかに記載のラミネートフィルム用接着剤組成物。

【公開番号】特開2007−106797(P2007−106797A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296390(P2005−296390)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】