説明

ラミネートプレス装置、キャリアプレート、ラミネート加工システム及びラミネート方法

【課題】ラミネートプレスにおける積層体からの充填材の流出を抑制する。
【解決手段】ダイアフラムと、ダイアフラムにより仕切られた第1及び第2のチャンバと、第1及び第2のチャンバの内圧を独立に制御可能な内圧制御ユニットと、第1のチャンバに設けられ、ダイアフラムとの間で積層体をプレス成形する第1の熱盤とを備える。内圧制御ユニットは、第2のチャンバの内圧を第1のチャンバの内圧よりも高くして、ダイアフラムにより積層体をプレス成形する時は、第1のチャンバを真空にせず、第1のチャンバの内圧を積層体に含まれる充填材の流出が抑制される所定の圧力範囲内に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル等のラミネート構造体を製造するためのラミネートプレス装置、キュア処理装置、キャリアプレート、ラミネート加工システム及びラミネート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルは、ガラス板、充填材、太陽電池セル、充填材、裏板等の構成部材を積層した太陽電池アセンブリ(積層材料)を加熱プレスして所定の厚さに成形するラミネート加工によって製造される。太陽電池パネルを製造するためのラミネートプレス装置としては、特開2008−47765(日本国公開特許公報)に記載されているようなダイアフラムを使用したものがある。
【0003】
特開2008−47765に記載されているような従来のラミネートプレス装置は、伸縮性を有するダイアフラムにより仕切られた上下一対のチャンバを備えている。一方のチャンバ内には熱盤が設けられており、熱盤とダイアフラムの間に太陽電池アセンブリが配置される。そして、太陽電池アセンブリが配置された一方のチャンバを真空にして他方のチャンバを大気に開放すると、ダイアフラムは内圧の低い一方のチャンバ側に張り出して、熱盤とダイアフラムの間で太陽電池アセンブリが加熱プレス(成形プレス)される。
【0004】
また、太陽電池パネルは気温変動の激しい屋外環境下で長期間使用される。そのため、熱的安定性を高める目的で、成形後の太陽電池アセンブリには長時間の加熱処理(キュア処理)が施される。キュア処理を行うための装置としては、特開平11−238898号公報(日本国公開特許公報)に記載されているような多段ストッカー型のキュア炉装置が知られている。このような多段ストッカー型のキュア炉装置を使用することで、複数の太陽電池アセンブリを同時にキュア処理することが可能になり、長時間を要するキュア処理を効率的に行うことができる。
【発明の概要】
【0005】
特開平11−238898号に記載されているキュア炉装置は、内蔵されたヒータからの輻射や炉内の加熱空気による熱伝達によって積層材料の加熱を行うものである。このため、キュア炉装置によるキュア処理は、積層材料への熱伝達の効率が悪く、キュア処理に長時間を要していた。また、太陽電池アセンブリをムラなく加熱するためには、太陽電池アセンブリをヒータからある程度離す必要がある。このため、キュア炉装置による積層材料の加熱には、熱効率が低いという欠点がある。
【0006】
また、特開2008−47765に記載されているような従来のダイアフラム式のラミネートプレス装置は、積層材料を真空下で加熱プレスするように構成されている。そのため、加熱により溶融した充填材が積層材料の外部に流れ出し、適切にラミネート加工されない場合があった。また、充填材が積層材料の外部に流れ出すと、チャンバ内壁に付着し、次のラミネート加工の妨げとなることがある。そのため、充填材が積層材料の外部に流出する度にチャンバ内壁を清掃して、チャンバ内壁に付着した充填材を除去する必要があり、作業効率を下げる原因となっていた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものである。本発明の一つの特徴は、熱効率が高く短時間で効率的にキュア処理が可能なキュア処理装置を提供する上で有用である。
【0008】
また、本発明の一つの特徴は、成形プレス中に充填材が流出し難い太陽電池パネルのラミネート加工方法及び太陽電池パネル用ラミネート加工装置を提供する上で有用である。
【0009】
本発明の実施形態によれば、太陽電池の構成部材を積層してラミネートプレスにより成形した太陽電池アセンブリを加熱して太陽電池アセンブリの熱反応を完了させるキュア処理を行うキュア処理装置が提供される。本発明の実施形態に係るキュア処理装置は、上部可動盤と、上部可動盤の下方に配置される下部可動盤と、上部可動盤と下部可動盤との間に配置される少なくとも1つの中間可動盤と、上部可動盤、下部可動盤及び中間可動盤を加熱する加熱手段と、下部可動盤を上下に駆動する可動盤駆動手段と、太陽電池アセンブリを可動盤間に配置すると共に可動盤間に配置された太陽電池アセンブリを取り出す搬送手段と、制御手段とを備えている。上部可動盤及び中間可動盤は、その下面に弾性膜が設けられると共に、下面と弾性膜との間の空間に陽圧を加えることが可能なエアポンプを備えている。制御手段は、上下方向に隣接する可動盤の対を選択し、選択された可動盤の対の間隔を選択的に広げてこの可動盤の対の間に対して太陽電池アセンブリを搬入及び搬出可能とする搬送モードと、下部可動盤を上昇させて太陽電池アセンブリが可動盤の対の間に挟み込まれる状態とし、次いでエアポンプを駆動して太陽電池アセンブリの上側の可動盤の下面と上側の可動盤の弾性膜との間の空間に陽圧を加えて弾性膜が太陽電池アセンブリをプレスする状態とする圧縮モードにてキュア処理装置を作動可能である。制御手段は、圧縮モードを搬送モードに切り換える度に、搬送モードにおいて選択する可動盤の対を所定の順に切り換える。
【0010】
上記構成のキュア処理装置によりキュア処理を行うと、太陽電池アセンブリが加熱された下側の可動盤と、上側の可動盤に加熱された弾性膜との間で挟まれて、太陽電池アセンブリが加熱される。このように、太陽電池アセンブリが可動盤及び弾性膜との接触により加熱されるため、キュア炉を使用する場合と比べて、キュア処理を短時間で行うことが可能となる。また、本構成では、熱源である可動盤と太陽電池アセンブリとが近接しているため、可動盤からの熱が無駄無く太陽電池アセンブリに伝達され、熱エネルギのロスは小さなものとなる。
【0011】
上記のキュア処理装置は、複数の中間可動盤及び上部可動盤の一つが所定高さ以下に下がらないように固定する可動盤保持手段を更に備えていてもよい。この場合、制御手段は、搬送モードにおいては、選択された可動盤の対の上側の可動盤が固定されるように可動盤保持手段を制御し、また下部可動盤を降下させることによって、選択された可動盤の対の間隔を広げる制御をするように構成されることが望ましい。
【0012】
上記のように可動盤保持手段を採用することにより、大荷重の可動盤を駆動する機構を複数設ける必要が無くなるため、小型で低コストのキュア処理装置が実現する。
【0013】
例えば、本発明の幾つかの実施形態においては、複数の中間可動盤及び上部可動盤の側面には略水平方向に伸びる穴が形成されており、可動盤保持手段は、所定高さに保持されている固定部と、固定部に対して進退可能に構成されたロッドと、ロッドを駆動する駆動部とを備えている。この場合、ロッドを固定部から突出させて可動盤の穴に挿入することによって可動盤が所定高さに固定される。
【0014】
このように、凹部(穴)と凸部(ロッド)との係合により可動盤を保持する構成は、大荷重の可動盤を保持するためのエネルギを必要としない。また、複雑な機構を必要とせず、低コストで堅牢な可動盤保持手段が提供される。
【0015】
また、本発明の幾つかの実施形態における搬送手段は、太陽電池アセンブリに対して、太陽電池アセンブリの搬送方向及び上下方向に垂直な幅方向両側に設けられたコンベアである。このコンベアは、太陽電池アセンブリを搬送可能な搬送位置と、搬送位置から幅方向外側に移動して太陽電池アセンブリと干渉しない退避位置との間で移動可能となっている。制御手段は、圧縮モードにおいて、太陽電池アセンブリがコンベアの上から可動盤の上に移動した後、コンベアを退避位置に移動させる。
【0016】
また、本発明の実施形態によれば、ラミネート構造体の構成部材を積層してラミネートプレスにより成形した積層体を、加熱して安定化させるキュア処理を行うキュア処理装置が提供される。このキュア処理装置は、上部可動盤と、上部可動盤の下方に配置された下部可動盤と、上部可動盤と下部可動盤の間に上下に並んで配置された少なくとも1つの中間可動盤と、可動盤間に配置されたダイアフラムと、任意の互いに隣接する一対の可動盤を上下に離隔させる可動盤離隔機構と、互いに隣接する可動盤の一対が離隔していないときに可動盤間に形成される、ダイアフラムにより仕切られたチャンバの内圧を制御する内圧制御ユニットとを備えている。また、任意の互いに隣接する前記可動盤の少なくとも一方はヒータを備え、内圧の制御により、ヒータを備えた少なくとも一方の可動盤とダイアフラムとの間で積層体を挟むことによりキュア処理可能に構成されている。
【0017】
上記構成のキュア処理装置を使用すると、ダイアフラムが積層体を加熱された可動盤に密着させた状態でキュア処理が行われるため、積層体は均一な温度で速やかに加熱される。そのため、短時間で、熱効率良く、しかも高精度にキュア処理を行うことが可能になる。
【0018】
可動盤離隔機構は、下部可動盤を上下に駆動する可動盤駆動ユニットと、上部可動盤及び中間可動盤の任意の一つを所定の高さに保持する保持ユニットとを備えていてもよい。
【0019】
典型的には、可動盤離隔機構は、可動盤駆動ユニットにより下部可動盤を駆動して任意の互いに隣接する一対の可動盤の上側の一方を所定の高さに移動し、保持ユニットにより上側の一方の可動盤を所定の高さに保持し、更に可動盤駆動ユニットにより下部可動盤を駆動して下側の他方の可動盤を降下させることにより、任意の互いに隣接する一対の可動盤を上下に離隔させる。
【0020】
上記のように保持ユニットを採用することにより、重量の大きい可動盤を駆動する機構を複数設ける必要が無く、コンパクトな装置が実現される。
【0021】
また、典型的には、ラミネート構造体は太陽電池であり、積層体は太陽電池の構成部材を積層して形成された太陽電池アセンブリである。
【0022】
また、本発明の実施形態により、脆性部材を含むラミネート構造体のラミネートプレス加工に適したキャリアプレートが提供される。本発明の実施形態に係るキャリアプレートは、中空部を有する実質的な剛体である枠体と、枠体の中空部を覆うように枠体の上面に固定された可撓性のある薄板とを有している。枠体の中空部は可動盤を収容可能な大きさを有している。また、このキャリアプレートは、薄板の上にラミネート構造体の構成部材を積層した積層体を載せた状態で、ラミネートの可動盤間に配置され、積層体と一緒にプレス可能に構成されている
【0023】
このような構成のキャリアプレートを使用することにより、搬送中の振動により、ラミネート構造体に含まれる脆性部材(例えば太陽電池等のガラス基板等)が破損することが防止される。また、キャリアプレートごと積層体を加工することができるため、工程毎に積層体をキャリアプレートから載せかえる必要が無く、効率的な加工が可能になる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、ダイアフラムにより仕切られた第1及び第2のチャンバの内圧を制御して、第1のチャンバに配置された第1の熱盤とダイアフラムとの間で積層体を加熱プレスしてラミネート構造体に成形するラミネート方法が提供される。このラミネート方法は、第1のチャンバの内圧よりも第2のチャンバの内圧を高くすることにより積層体を加熱プレスして成形するプレス成形ステップを含んでいる。プレス成形ステップにおいて、第1のチャンバを真空にせず、第1のチャンバの内圧を積層体に含まれる充填材の流出が抑制される所定の圧力範囲内に制御する。
【0025】
このようなラミネート方法によれば、積層体が一定の気圧下で加熱プレスされるため、プレス成形時に溶融した充填材中の気泡が減圧により膨張して、充填材が積層体の外に押し出されることがなく、品質の良いラミネート構造体を歩留まり良く製造することが可能になる。また、積層体から流出して熱盤やダイアフラムに付着した充填材を拭き取る作業も不要になる。
【0026】
また、上記ラミネート方法は、プレス成形ステップの前に、第1のチャンバの内圧を陰圧にして積層体から気泡を除去する真空脱泡ステップを更に含むことが望ましい。プレス成形前に気泡を除去することにより、プレス成形時に発生する充填材の流出が抑制される。また、ラミネート構造体に残留する気泡は、ラミネート構造体の性能や長期信頼性に影響を与え得るため、真空脱泡ステップの導入により加工後のラミネート構造体の品質が向上する。
【0027】
プレス成形ステップの前は、ダイアフラムが積層体を加圧しないように、第2のチャンバの内圧を第1のチャンバの内圧と同程度以下に制御することが望ましい。プレス成形前に気泡が含まれている状態の積層体をダイアフラムによりプレスすると、積層体中の気泡の膨張や移動により、軟化した充填材が積層体の外に押し出されることがある。特に真空脱泡中の減圧下で積層体をプレスすると、気圧差による気泡の膨張と相俟って、積層体外への充填材の流出が顕著になる。その為、上記のような内圧制御を行うことにより、プレス成形前の積層体からの充填材の流出が抑制される。
【0028】
プレス成形ステップの前に、第2のチャンバの内圧を第1のチャンバの内圧よりも低くすることにより、第2のチャンバに配置された第2の熱盤にダイアフラムを密着させてダイアフラムを加熱するダイアフラム加熱ステップを更に含むことが望ましい。このように、プレス成形前にダイアフラムを加熱することにより、プレス成形ステップにおいて積層体が両面から均一に加熱されるため、残留ひずみが少なく、長期安定性に優れたラミネート構造が得られる。
【0029】
プレス成形ステップの後に、充填材が安定するまで積層体を加熱するキュアステップを更に含んでいてもよい。ラミネート加工のプロセスを、比較的に短時間で完了するプレス成形ステップと長時間を要するキュアステップに分けて、各ステップを別の装置を使用して行うことにより、生産効率を飛躍的に向上させることができる。ここで、プレス成形ステップは、ラミネート加工のプロセス中に積層体の形状が維持される程度に充填材の流動性が消失するまで積層体を加熱プレスして所定の形状に成形する処理である。プレス成形ステップが完了した段階では、未だ充填材は十分に硬化(反応)されておらず、不安定な状態にある。キュアステップは、プレス成形された積層体を加熱して、ラミネート構造体に要求される性能(例えば長期信頼性等)を確保するために必要な水準まで充填材の硬化を進行させる処理である。なお、プレス成形後は充填材の流動性はほとんど失われているため、キュアステップにおいて真空中で積層体を加圧しても、充填材が積層体から流出するような問題は生じない。従って、キュアステップにおいては積層体を真空中で加熱プレスしてもよい。
【0030】
また、本発明の実施形態により、上記のラミネート方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るラミネート加工システムの外観図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態のキャリアプレートの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態のラミネートプレス装置の側面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態のラミネートプレス装置の固定盤及び可動盤の断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係るラミネートプレスの手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係るキュア処理装置の正面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係るキュア処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る太陽電池用ラミネート加工システム1の外観図である。ラミネート加工システム1は、積層装置100、搬入用コンベア200、ラミネートプレス装置300、キュア処理装置400、搬出用コンベア500、及び制御装置700を備えている。制御装置700は、ラミネート加工システム1を構成する各装置と通信ケーブルにより接続され、各装置の動作を統制する。
【0033】
積層装置100は、太陽電池を構成する複数の部材(例えば、ガラス板、充填材、太陽電池セル、充填材及び裏板)を重ね合わせて太陽電池アセンブリAを組み立てる装置である。積層装置100によって組み立てられた太陽電池アセンブリAは、搬入用コンベア200によってラミネートプレス装置300に搬送される。ラミネートプレス装置300は、太陽電池アセンブリAを加熱プレスして、所定の厚さの板状体に成形する。なお、ラミネートプレス装置300による加熱プレスは、プレス温度における充填材の流動性が実質的に消失するまで行われる。成形後の太陽電池アセンブリAは、ラミネートプレス装置300に内蔵された搬送ユニットによって、キュア処理装置400に搬送される。
【0034】
キュア処理装置400は、ラミネートプレス装置300によって成形された太陽電池アセンブリAに形状を保持するための軽い圧力を加えながら加熱するキュア処理を行い、熱硬化性樹脂である太陽電池アセンブリAの充填材を安定化させる。以上の処理によって、太陽電池パネルが作製される。キュア処理を終えて完成した太陽電池パネルは、搬出用コンベア500によってラミネート加工システム1から搬出される。
【0035】
以上の一連の処理は、制御装置700が、積層装置100、搬入用コンベア200、ラミネートプレス装置300、キュア処理装置400、及び搬出用コンベア500を制御することによって行われる。図2は制御装置700の概略構成を示すブロック図である。制御装置700は、ラミネート加工システム1を制御するための制御プログラム721が記録されたROM(Read-Only Memory)720、ROM720に記録されたプログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)710、主記憶装置であるRAM(Random-Access Memory)730、ラミネート加工システム1を構成する各装置との通信を行う通信インターフェース740、及びラミネート加工システム1の動作状態を表示してユーザ入力を受け付けるタッチパネルディスプレイである表示装置750を備えている。本実施形態の制御プログラム721は、例えば被加工品の受け渡しのタイミング調整等、各装置の連携動作の為の制御の他、後述するラミネートプレス装置300が行うラミネートプレス処理(図6)及びキュア処理装置400が行うキュア処理(図8)の制御を行うためのサブプログラムも含んでおり、ラミネートプレス処理及びキュア処理は制御装置700の制御の下で実行される。
【0036】
本実施形態においては、太陽電池アセンブリA及び加工後の太陽電池パネルは、次に説明するキャリアプレート800に載せられた状態で搬送され、ラミネートプレス装置300及びキュア処理装置400によってキャリアプレート800ごとプレスされる。
【0037】
図3は、本実施形態において使用されるキャリアプレート800の斜視図である。本実施形態のキャリアプレート800は、中央部に中空部Hが形成された枠体810と、中空部Hを覆うように枠体810の上面に固定された薄板820とを有している。薄板820は、例えば接着剤によって枠体810に固定されている。
【0038】
枠体810は、太陽電池パネルの製造工程において実質的に変形しない(実質的に剛体とみなせる)程度の十分な剛性を有する構造材である。また、枠体810は、加熱プレス時にも十分な剛性を維持するよう、金属や耐熱性樹脂(例えばポリイミド樹脂)から形成される。本実施形態においては、ステンレス鋼板の折り曲げ加工により形成された枠体810が使用される。
【0039】
また、薄板820は、脆性部材である太陽電池セルやガラス板を柔軟に支持して衝撃から保護する可撓性を有する低剛性の支持部材である。薄板820は、加熱プレスを繰り返しても破損しないよう高温下でも十分な強度を有するフッ素樹脂シート、繊維強化耐熱樹脂シート、あるいは金属薄板(例えばステンレス鋼板や銅板)等の耐熱材料から形成されている。また、薄板820の厚さは、耐久性と柔軟性が両立する範囲に設定される。例えば、ポリイミドを母材とする炭素繊維強化プラスチックから形成される薄板820を使用する場合、薄板820の板厚は0.05〜1.5ミリメートルの範囲、より好ましくは0.5〜1.0ミリメートルの範囲に設定される。
【0040】
キャリアプレート800において、薄板820の周縁部は枠体810に裏打ちされて柔軟性を失っているが、中空部Hに面する中央部は柔軟性を維持している。太陽電池アセンブリAは、柔軟性のある薄板820の中央部の上に配置され、薄板820によって柔軟に支持される。また、搬入用コンベア200や搬出用コンベア500等の搬送ユニットによってキャリアプレート800が搬送されるときは、枠体810が搬送ユニットによって支持される。そのため、キャリアプレート800に載せられた太陽電池アセンブリAには搬送中に強い衝撃が加わることがなく、搬送中の太陽電池アセンブリAの破損が防止される。
【0041】
次に、ラミネートプレス装置300の構成について説明する。図4は、ラミネートプレス装置300の側面図である。ラミネートプレス装置300は、太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を搬送するための一対のコンベア310(図には手前側の1つのみが示されている)を備えている。なお、以下の説明においては、太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800が搬送される方向(図4における左右方向)を「搬送方向」、搬送方向と垂直な水平方向(図4において紙面に垂直な方向)を「幅方向」と定義する。一対のコンベア310は、幅方向に並んで配置されている。
【0042】
一対のコンベア310の間には固定盤320が配置されている。また、固定盤320の上方には可動盤330が設けられている。固定盤320はラミネートプレス装置300のフレームに固定されている。また、可動盤330は、シリンダユニット340を介してフレームに固定されおり、シリンダユニット340によって上下方向に駆動可能となっている。太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を固定盤320の上に配置し、次いで可動盤330を降下させて可動盤330と固定盤320の間に太陽電池アセンブリAを挟み込ませた状態で、後述するダイアフラム333を使用した太陽電池アセンブリAのラミネートプレスが行われる。なお、固定盤320がキャリアプレート800の枠体810と干渉しないよう、固定盤320の上面全体がキャリアプレート800の中空部H(図3)内に収容されるように固定盤320の幅方向及び奥行方向の寸法が設定されている。
【0043】
また、コンベア310は、図示されないアクチュエータによって上下方向に移動可能となっている。コンベア310が太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を搬送する際は、コンベア310の上面311が固定盤320の上面321よりも高い位置に移動される。そのため、キャリアプレート800及び太陽電池アセンブリAは、固定盤320と干渉することなく搬送される。一方、太陽電池アセンブリAのラミネートプレスを行う際は、コンベア310の上面311が固定盤320の上面321よりも低い位置に移動され、固定盤320の上面321にキャリアプレート800の薄板820が直接載せられた状態となる。この時、枠部810は薄板820を介して固定盤320の上面321から垂れ下がった状態となる。
【0044】
次に、固定盤320と可動盤330による太陽電池アセンブリAのラミネートプレス方法について説明する。図4(a)〜(e)は、ラミネートプレス中の固定盤320及び可動盤330を搬送方向と垂直な面で切断した断面図である。また、図6はラミネートプレス処理を説明するフローチャートである。
【0045】
図5に示されるように、可動盤330は、可動盤本体331と、可動盤本体331の下面331aに取り付けられた枠部332を備えている。枠部332は、耐熱性ゴム等の弾性材料から形成されている。枠部332は、上部枠体332aと下部枠体332bを有している。上部枠体332aと下部枠体332bの間には、枠部332の開口を塞ぐダイアフラム333が挟み込まれている。ダイアフラム333は、伸縮性、気密性、及び耐熱性を有するシート状部材であり、接着剤により上部枠体332a及び下部枠体332bと気密に接合されている。これにより、可動盤本体331には、ダイアフラム333、可動盤本体331の下面331a及び枠部332(詳細には上部枠体332a)に囲まれた上部チャンバUCが形成される。また、可動盤本体331には上部チャンバUCと外部空間とを連通する連通路331cが設けられている。可動盤本体331の下面331aと側面には、連通路331cの開口が形成されている。可動盤本体331の側面に設けられた連通路331cの開口には、図示されない真空ポンプ及びコンプレッサ(又は高圧ガスボンベ)が接続されており、上部チャンバUC内を加圧及び減圧が可能になっている。
【0046】
また、可動盤本体331と固定盤320には図示されないヒータが内蔵されており、このヒータにより可動盤本体331と固定盤320は太陽電池アセンブリAを成形温度まで加熱するめに必要な温度に保たれている。
【0047】
ラミネートプレスが行われる前に、先ず搬入用コンベア200により、太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800が可動盤330と固定盤320の間に搬送される(S1)。図5(a)は、ステップS1の完了後の状態を示したものである。
【0048】
次に、可動盤本体331の連通路331cに接続された真空ポンプにより、上部チャンバUCが減圧される(S2)。図5(b)は、ステップS2の完了後の状態を示したものである。図5(b)に示されるように、このとき上部チャンバUCの内圧と大気圧との圧力差により上部チャンバUCの体積が収縮する。すなわち、ダイアフラム333は、上部チャンバUC側に突出し、可動盤本体331の下面331aと接触する。この接触により、可動盤本体331からダイアフラム333へ急速に熱が移動し、ダイアフラム333は速やかに太陽電池アセンブリAの加工温度まで加熱される。
【0049】
次に、コンベア310(図4)を降下させ(S3)、図5(c)に示されるように、キャリアプレート800の薄板820が固定盤320の上に載せられる。次いで、可動盤330が下方に移動し、キャリアプレート800の薄板820が枠部332の下面と固定盤320の上面321とで挟まれた状態となる(S4)。ここで、弾性材料から形成された枠部332は、薄板820に密着する。すなわち枠部332がパッキンとして機能し、キャリアプレート800の薄板820、枠部332、及びダイアフラム333により密閉された下部チャンバLCが形成される。枠部332の下部枠体332bには水平方向に貫通する連通絡332cが形成されている。下部枠体332bの外側面に形成された連通絡332cの開口には、図示されない真空ポンプ及びコンプレッサ(又は高圧ガスボンベ)が接続されており、下部チャンバLC内を加圧及び減圧可能になっている。なお、ステップS4までは連通絡332cは大気に開放されており、下部チャンバLC内は大気圧に保たれる。また、上部チャンバUCは陰圧に維持され、ダイアフラム333は可動盤本体331により加熱され続ける。
【0050】
次に、下部枠体332bの連通絡332cに接続された真空ポンプにより、下部チャンバLCが上部チャンバUCと略同じ内圧になるまで減圧され、一定時間だけ減圧状態が保たれる(S5)。このとき、上部チャンバUCと下部チャンバLCの内圧が略等しくなるため、図5(d)に示されるようにダイアフラム333は略平坦な自然状態に戻る。また、ダイアフラム333は、可動盤本体331の下面331aから離れるため、加熱されなくなる。しかし、上部チャンバUCと下部チャンバLCの内部は真空状態に近いためダイアフラム333からの放熱量は少なく、ダイアフラム333の温度はほとんど低下せずに略一定温度に保たれる。また、このとき太陽電池アセンブリAはキャリアプレート800の薄板820を介して加熱された固定盤320と接触している。そのため、固定盤320から太陽電池アセンブリAへ急速に熱が移動し、太陽電池アセンブリAの温度は速やかに加工温度まで上昇し、太陽電池アセンブリAに含まれる充填材が軟化する。また、太陽電池アセンブリAの周囲(下部チャンバLC内)は真空に近い低圧となっているため、軟化した充填材に含まれる気泡が放出され、短時間で充填材が脱泡される。また、このとき上部チャンバUCと下部チャンバLCの内圧は略等しいため、上下チャンバの内圧差によりダイアフラム333が太陽電池アセンブリAをプレスすることはない。そのため、従来のダイアフラム式ラミネートプレス装置のように、充填材が軟化した太陽電池アセンブリAを真空中でプレスすることにより、充填材が膨張する気泡と共に太陽電池アセンブリAの端部から流出することがない。また、下部チャンバLCの減圧中においても、下部チャンバLCは上部チャンバUCよりも内圧が高い状態に保たれる。従って、下部チャンバLCの減圧中にもダイアフラム333が太陽電池アセンブリAをプレスすることはない。下部チャンバLCの減圧中においても、固定盤320から伝わる熱により太陽電池アセンブリAの充填材は軟化している。また、この段階の充填材には気泡が多く含まれており、下部チャンバLCの内圧減少と共に充填材の気泡が膨張する。このような状態の太陽電池アセンブリAをプレスすると、プレスによって充填材に加えられる圧力と、気泡の膨張により充填材に加えられる圧力が相俟って、軟化した充填材を太陽電池アセンブリAの端部から流出させる現象が発生し易い。従って、上記のように下部チャンバLCの減圧中に太陽電池アセンブリAをプレスしない構成とすることにより、充填材が太陽電池アセンブリAの端部から流出することが防止される。
【0051】
次に、上部チャンバUCと下部チャンバLCの内圧を略同圧に保ちながら、両チャンバの内圧を大気圧まで徐々に上昇させる(S6)。このとき、両チャンバ間には内圧の差がほとんど無いため、ダイアフラム333は図5(d)に示される形態を維持する。従って、昇圧中もダイアフラム333が太陽電池アセンブリAをプレスすることはない。
【0052】
上部チャンバUCと下部チャンバLCの内圧が大気圧に到達すると、下部チャンバLCが大気圧に保たれたまま、可動盤本体331の連通路331cに接続されたコンプレッサにより、上部チャンバUCの内圧が陽圧(プレス圧)に加圧される(S7)。このとき、図5(e)に示されるように、両チャンバの内圧差により、上部チャンバUCが膨張し、ダイアフラム333が下部チャンバLC側に張り出して太陽電池アセンブリAの上面に密着する。そして、ダイアフラム333は、固定盤320との間で、両チャンバの内圧差に略等しいプレス圧で、加熱された太陽電池アセンブリAをプレスする。このとき、既に充填材中の気泡はほとんど除去されており、また太陽電池アセンブリAの周囲は気泡の内圧と略同じ大気圧になっているため、プレス中に軟化した充填材が気泡の膨張に伴って太陽電池アセンブリAの端部から流出することがない。また、上述のようにダイアフラム333は予め好適な温度に加熱されているため、太陽電池アセンブリAとの接触により太陽電池アセンブリから大量の熱を奪い、太陽電池アセンブリAに不均一な温度分布を与えることもない。従って、太陽電池アセンブリAは略均一な温度に加熱された状態でプレスされるため、残留熱応力の少ない均一な厚さの太陽電池パネルを製造することができる。
【0053】
所定時間の加熱プレスが終了すると、上部チャンバUCの内圧が大気圧まで減圧される(S8)。上部チャンバUCの内圧が大気圧まで減圧されると、ダイアフラム333の形態は図5(d)に示される状態に戻る。そして、可動盤330が上方に移動して、枠部332がキャリアプレート800の薄板820から離れる(S9)。次いでコンベア310が上昇して、キャリアプレート800の薄板820がコンベア310に持ち上げられて固定盤320の上面321から離れると(S10)、コンベア310を駆動して成形後の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800がキュア処理装置400に搬送される(S11)。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係るキュア処理装置400の構成について説明する。図7は、キュア処理装置400を搬送方向から見た正面図である。図7に示されるように、キュア処理装置400は、上下方向に配列された上部可動盤411、第1中間可動盤421、第2中間可動盤422、第3中間可動盤423及び下部可動盤431を備えている。隣り合う可動盤間に太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800が1枚ずつ配置され、キュア処理装置400は最大4個の太陽電池アセンブリAを同時にキュア処理することができる。上部可動盤411、第1中間可動盤421、第2中間可動盤422、及び第3中間可動盤423は、キュア処理装置400のフレームに対して上下方向へ自由に移動可能に設けられている。また、キュア処理装置400は、下部可動盤431をフレームに対して上下方向に駆動する駆動ユニット441を備えている。駆動ユニット441は、送りねじ機構など、下部可動盤431の高さを精密に制御可能な駆動機構である。
【0055】
上部可動盤411、第1中間可動盤421、第2中間可動盤422及び第3中間可動盤423は、ラミネートプレス装置300の可動盤330(図5)と略同一の構造を有している。すなわち、上部可動盤411及び各中間可動盤421〜423の本体にはヒータが内蔵され、本体の下面にはダイアフラム333が張られた枠体が設けられている。上部可動盤411及び各中間可動盤421〜423の枠体に形成された連通絡には、上部チャンバUC又は下部チャンバLC内の気圧を調節するための図示されない真空ポンプ及び/又はコンプレッサ(若しくは高圧ガスボンベ)が接続されている。
【0056】
また、下部可動盤431は、ラミネートプレス装置300の固定盤320(図5)と略同一の構造である。すなわち、下部可動盤431には、ヒータが内蔵されている。
【0057】
キュア処理装置400によって太陽電池アセンブリAをキュア処理する際は、駆動ユニット441により下部可動盤431が上昇する。下部可動盤431が上昇すると、下部可動盤431によって第3中間可動盤423、第2中間可動盤422、第1中間可動盤421、及び上部可動盤411が順次持ち上げられる。そして、上部可動盤411及び各中間可動盤421〜423の自重によって、キャリアプレート800が上下の可動盤の間で挟み込まれる。
【0058】
下部可動盤431又は各中間可動盤421〜423の上に配置された太陽電池アセンブリAは、キャリアプレート800を介してこれらの可動盤と接触し、下側から加熱される。また、キャリアプレート800が下側の下部可動盤431又は中間可動盤421〜423と上側の中間可動盤421〜423又は上部可動盤411の枠部とにより挟み込まれた状態で、コンプレッサにより下部チャンバLCよりも高い内圧を上部チャンバUCに与えて、下部チャンバLCからエアを押し出す(又は真空ポンプにより下部チャンバLCからエアを排出する)ことにより、上側の中間可動盤421〜423又は上部可動盤411の下面に設けられたダイアフラム333が下部チャンバLC側に張り出して太陽電池アセンブリAに密着する。各中間可動盤421〜423及び上部可動盤411は内蔵のヒータによって加熱されており、この熱が上部チャンバUC内のエアを介して及び/又はキュア処理前に上側の可動盤421〜423及び411に密着して加熱されたダイアフラム333を介して太陽電池アセンブリAに移動することによって、太陽電池アセンブリAは上側からも加熱される。このように、太陽電池アセンブリAが上下両方向から加熱されることによって、太陽電池アセンブリAのキュア処理が行われ、太陽電池が形成される。
【0059】
次に、キュア処理装置400の各可動盤間に太陽電池アセンブリAを配置し、更に各可動盤間から太陽電池アセンブリAを取り出すための構成について説明する。本実施形態のキュア処理装置400は、キュア処理前の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800をラミネートプレス装置300のコンベア310(図4)から受け取ってキュア処理装置400の可動盤間に移動し、キュア処理後の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を搬出用コンベア500に引き渡す、一対のコンベア450を備えている。コンベア450は、キャリアプレート800を搬送可能な搬送位置(図7中実線部)と、搬送位置から幅方向外側斜め下に移動した退避位置(図7中破線部)との間で移動可能となっている。搬送位置におけるコンベア450の高さは、ラミネートプレス装置300のコンベア310及び搬出用コンベア500と同じ高さに設定されている。
【0060】
本実施形態においては、太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を、任意の中間可動盤421〜423及び下部可動盤431の上に移動できるようになっている。この目的のため、中間可動盤421〜423及び下部可動盤431のうちの任意の一つの上面を、コンベア450の上面と略同じ高さに移動できるようになっている。また、上部可動盤411及び中間可動盤421〜423のうちの任意の一つの下面を、コンベア450の上面よりも充分に高い所定の高さに保持できるようになっている。このため、駆動ユニット441によって所望の可動盤(下部可動盤431又は中間可動盤421〜423)の上面の高さがコンベア450の上面と略同じ高さとなるよう下部可動盤431を上下に移動させ、さらにこの所望の可動盤の上側に隣接する可動盤(上部可動盤411又は中間可動盤421〜423)の下面を所定高さに保持することによって、太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を収容するスペースが所望の可動盤の上面とその上の可動盤の下面との間に形成される。この状態でコンベア450を駆動することによって、太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を所望の可動盤の上に移動させることができる。また、キュア処理後の太陽電池を搬出する場合には、搬出する太陽電池を載せたキャリアプレート800を間に挟む隣接する2つの可動盤とコンベア450を搬入時と同じ位置に移動した後、コンベア450を駆動して、キャリアプレート800を搬出用コンベア500(図1)に押し出す。すなわち、コンベア450を駆動することによって、キュア処理前の太陽電池アセンブリAを可動盤間に搬入すると共に、キュア処理後の太陽電池を可動盤間から搬出することができる。
【0061】
なお、コンベア450が退避位置にある時は、キャリアプレート800が挟み込まれた可動盤を上下に移動させても、コンベア450とキャリアプレート800とが接触しないようになっている。
【0062】
次に、上部可動盤411及び中間可動盤421〜423を所定の高さに保持するための保持機構について説明する。図7に示されるように、上部可動盤411及び中間可動盤421〜423の幅方向(図中左右方向)両側面には搬送方向に並ぶ2対の係合穴h(図7中には一対のみ記載)が設けられている。また、キュア処理装置400は、2対の係合穴hと対応する2対の保持部材460を備えている。具体的には、保持部材460の夫々は、可動盤を所定の高さに配置したときに可動盤の係合穴hと対向する位置に設けられている。
【0063】
保持部材460は、シリンダ461及びロッド462を有している。シリンダ461は、図示されない支持フレームに固定されている。また、ロッド462は、シリンダ461から幅方向内側に、すなわち係合穴hに向かって突出するように構成されている。ロッド462は、先端が可動盤の係合穴hに差し込まれるようにシリンダ461から突出する固定位置(図7の状態)と、先端が可動盤の係合穴hから抜けるようにシリンダ461内に退避する退避位置との間で進退可能となっている。ロッド462は保持部材460の図示されない駆動ユニットによって、固定位置と退避位置との間を移動するよう駆動される。なお、駆動ユニットは、油圧、空圧、或いはソレノイドを用いてロッド462を駆動するようになっている。
【0064】
上部可動盤411及び中間可動盤421〜423のうちの任意の一つの可動盤を所定の高さに保持させるときには、次の処理が行われる。先ず、駆動ユニット441により下部可動盤431を駆動して、任意の可動盤を係合穴hが所定の高さとなる位置まで移動する。次に、所定の高さで支持されている保持部材460のロッド462を退避位置から固定位置に駆動すると、ロッド462が可動盤の係合穴hに差し込まれる。この結果、ロッド462が差し込まれた可動盤、及びこの可動盤の上にある他の可動盤、キャリアプレート800及び太陽電池アセンブリAは、保持部材460に支持される。この状態から駆動ユニット441によって下部可動盤431を下方に移動させると、ロッド462が差し込まれている可動盤から、その下の可動盤が離れ、両可動盤の間にスペースが形成される。
【0065】
次に、キュア処理装置400によるキュア処理の手順について説明する。図8は、キュア処理装置400が行うキュア処理の手順を示すフローチャートである。なお、キュア処理は、ラミネート加工システム1の制御装置700(図1)が、キュア処理装置400の各部(コンベア450、駆動ユニット441及び保持部材460等)を制御することによって実行される。また、本実施形態においては、ラミネートプレス装置(図5)による太陽電池アセンブリAのラミネート時間は5分間であり、5分毎にラミネートプレスされた太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800がキュア処理装置400に送られるようになっている。
【0066】
キュア処理では、最初に下部可動盤431の上面へのキャリアプレート800の搬入及び/又は搬出が行われる(S21)。ステップS21では、制御装置700は、先ずキュア処理装置400の下部可動盤431を駆動して、第3中間可動盤423の係合穴hが保持部材460のロッド462と同じ高さとなる位置へ第3中間可動盤423を移動する。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を退避位置から固定位置に移動させて、ロッド462の先端を第3中間可動盤423の係合穴hに差し込む。次いで、制御装置700は再び下部可動盤431を駆動し、搬送位置におけるコンベア450の上面よりも低い高さまで下部可動盤431の上面を降下させる。この時、下部可動盤431の上面と第3中間可動盤423の下面との間にキャリアプレート800を搬入及び/又は搬出するためのスペースが形成される。次いで、制御装置700は、コンベア450を退避位置から搬送位置に移動させた後、コンベア450を駆動してキュア処理済みの太陽電池を載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペースから搬出し、キュアプレス前の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペース内に搬入すると、図7に示される状態となり、処理S21は完了する。
【0067】
ステップS22では、制御装置700は、先ず下部可動盤431を上昇させて、コンベア450上の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を下部可動盤431の上に移した後、コンベア450を搬送位置から退避位置に移動させる。次いで、制御装置700は、下部可動盤431を更に上昇させて、下部可動盤431の上に載せられたキャリアプレート800を下部可動盤431と第3中間可動盤423との間に挟み込む。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を固定位置から退避位置に移動させて、ロッド462の先端を第3中間可動盤423の係合穴hから抜き取る。次いで、制御装置700は、第3中間可動盤423に接続された真空ポンプ及び/又はコンプレッサを駆動してダイアフラムにより太陽電池アセンブリAをプレスする。この状態は、次のステップS23が開始するまで、例えば約5分間維持される。なお、後述する処理S23〜S29を介して再び処理S21に戻るまで、第3中間可動盤423は下部可動盤431の上に載せられ、下部可動盤431の上面に載せられた太陽電池アセンブリAのキュア処理が継続される。
【0068】
続くステップS23では、第3中間可動盤423の上面へのキャリアプレート800の搬入及び/又は搬出が行われる。ステップS23では、制御装置700は、先ずキュア処理装置400の下部可動盤431を駆動して、第2中間可動盤423の係合穴hが保持部材460のロッド462と同じ高さとなる位置へ第2中間可動盤423を移動する。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を退避位置から固定位置に移動させて、ロッド462の先端を第2中間可動盤422の係合穴hに差し込む。次いで、制御装置700は、再び下部可動盤431を駆動し、搬送位置におけるコンベア450の上面よりも低い高さまで第3中間可動盤423の上面を降下させる。このとき、第3中間可動盤423の上面と第2中間可動盤422の下面との間にキャリアプレート800を搬入及び/又は搬出するためのスペースが形成される。次いで、制御装置700は、コンベア450を退避位置から搬送位置に移動させた後、コンベア450を駆動してキュア処理済みの太陽電池を載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペースから搬出し、キュア処理前の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペース内に搬入して、処理S23は完了する。
【0069】
ステップS24では、制御装置700は、先ず下部可動盤431を上昇させて、コンベア450上の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を第3中間可動盤423の上に移す。太陽電池アセンブリAを第3中間可動盤423の上に移ると、制御装置700はコンベア450を搬送位置から退避位置に移動させる。次いで、制御装置700は下部可動盤431を更に上昇させて、第3中間可動盤423の上に載せられたキャリアプレート800を第3中間可動盤423と第2中間可動盤422との間に挟み込む。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を固定位置から退避位置に移動させて、ロッド462の先端を第2中間可動盤422の係合穴hから抜き取る。次いで、制御装置700は、第2中間可動盤422に接続された真空ポンプ及び/又はコンプレッサを駆動してダイアフラムにより太陽電池アセンブリAをプレスする。この状態は、次のステップS25が開始するまで、例えば約5分間維持される。なお、後述する処理S25〜S29及びS21〜22を介して再び処理S23に戻るまで、第2中間可動盤422は第3中間可動盤423の上に載せられ、第2中間可動盤422の上面に載せられた太陽電池アセンブリAのキュア処理が継続される。
【0070】
続くステップS25では、第2中間可動盤422の上面へのキャリアプレート800の搬入及び/又は搬出が行われる。ステップS25では、制御装置700は、先ずキュア処理装置400の下部可動盤431を駆動して、第1中間可動盤421の係合穴h保持部材460のロッド462と同じ高さとなる位置へ第1中間可動盤421を移動する。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を退避位置から固定位置に移動させて、ロッド462の先端を第1中間可動盤421の係合穴hに差し込む。次いで、制御装置700は、再び下部可動盤431を駆動し、搬送位置におけるコンベア450の上面よりも低い高さまで第2中間可動盤422の上面を降下させる。このとき、第2中間可動盤422の上面と第1中間可動盤421の下面との間にキャリアプレート800を搬入及び/又は搬出するためのスペースが形成される。次いで、制御装置700は、コンベア450を退避位置から搬送位置に移動させた後、コンベア450を駆動してキュア処理済みの太陽電池を載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペースから搬出し、キュア処理前の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペース内に搬入して、処理S25は完了する。
【0071】
ステップS26では、制御装置700は、先ず下部可動盤431を上昇させて、コンベア450上の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を第2中間可動盤422の上に移した後コンベア450を搬送位置から退避位置に移動させる。次いで、制御装置700は、下部可動盤431を更に上昇させて、第2中間可動盤422の上に載せられたキャリアプレート800を第2中間可動盤422と第1中間可動盤421との間に挟み込む。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を固定位置から退避位置に移動させて、ロッド462の先端を第2中間可動盤422の係合穴hから抜き取る。次いで、制御装置700は、第1中間可動盤421に接続された真空ポンプ及び/又はコンプレッサを駆動してダイアフラムにより太陽電池アセンブリAをプレスする。この状態は、次のステップS27が開始するまで、例えば約5分間維持される。なお、後述する処理S27〜S29及びS21〜24を介して再び処理S25に戻るまで、第1中間可動盤421は第2中間可動盤422の上に載せられ、第2中間可動盤422の上面に載せられた太陽電池アセンブリAのキュア処理が継続される。
【0072】
続くステップS27では、第1中間可動盤421の上面へのキャリアプレート800の搬入及び/又は搬出が行われる。ステップS27では、制御装置700は、先ずキュア処理装置400の下部可動盤431を駆動して、第1中間可動盤421の係合穴hが保持部材460のロッド462と同じ高さとなる位置へ第1中間可動盤421を移動する。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を退避位置から固定位置に移動させて、ロッド462の先端を上部可動盤411の係合穴hに差し込む。次いで、制御装置700は、再び下部可動盤431を駆動し、搬送位置におけるコンベア450の上面よりも低い高さまで第1中間可動盤421の上面を降下させる。このとき、第1中間可動盤421の上面と上部可動盤411の下面との間にキャリアプレート800を搬入及び/又は搬出するためのスペースが形成される。次いで、制御装置700は、コンベア450を退避位置から搬送位置に移動させた後、コンベア450を駆動してキュア処理済みの太陽電池を載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペースから搬出し、キュア処理前の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を可動盤間のスペース内に搬入して、処理S27は完了する。
【0073】
ステップS28では、制御装置700は、先ず下部可動盤431を上昇させて、コンベア450上の太陽電池アセンブリAを載せたキャリアプレート800を第1中間可動盤421の上に移す。太陽電池アセンブリAが第1中間可動盤421の上に移ると、制御装置700はコンベア450を搬送位置から退避位置に移動させる。次いで、制御装置700は下部可動盤431を更に上昇させて、第1中間可動盤421の上に載せられたキャリアプレート800を第1中間可動盤421と上部可動盤411との間に挟み込む。次いで、制御装置700は、保持部材460のロッド462を固定位置から退避位置に移動させて、ロッド462の先端を第1中間可動盤421の係合穴hから抜き取る。次いで、制御装置700は、上部可動盤411に接続された真空ポンプ及び/又はコンプレッサを駆動してダイアフラムにより太陽電池アセンブリAをプレスする。この状態は、次のステップS29が開始するまで、例えば約5分間維持される。なお、後述する処理S29及びS21〜26を介して再び処理S27に戻るまで、上部可動盤411は第1中間可動盤421の上に載せられ、第1中間可動盤421の上面に載せられた太陽電池アセンブリAのキュア処理が継続される。
【0074】
ステップS29では、上述のステップS21〜S28の動作を繰り返して実行するかどうかを判断する。繰り返して動作を実行するかどうかの判断は、図示しない入力ユニットによる作業者の指示に基づいて行ってもよいし、カウンタで記録した繰り返し回数が予め設定された回数に到達したかどうかを判断することによって行ってもよい。動作を繰り返す場合(ステップS29:YES)にはステップS21へ戻り、動作を繰り返さない場合(ステップS29:NO)にはフローを終了する。
【0075】
動作を繰り返す場合、再び実行されるステップS21において、前回のステップS21において下部可動盤431と第3中間可動盤423の間に配置された太陽電池アセンブリAが、キュア処理済みの太陽電池としてコンベア450により搬出される。なお、コンベア450により搬出されたキュア処理済みの太陽電池を載せたキャリアプレート800は、搬出用コンベア500(図1)に引き渡され、搬出用コンベア500によって図示されないストッカーに移送される。
【0076】
以上のルーチンによって、一枚の太陽電池アセンブリAは、4サイクルのラミネートプレスが繰り返される間、すなわち約20分間キュア処理装置400によってプレスされる。一方、キュア処理装置400は、新しい太陽電池アセンブリAを搬入すると共にキュア処理済みの太陽電池アセンブリAを搬出するという処理を、約5分毎に実施することができる。そのため、本実施形態においては、各太陽電池アセンブリAに対して充分なキュア処理の時間(約20分間)を確保しつつ、加工時間の短いラミネートプレスを終えた太陽電池アセンブリAのラミネートプレスを適時(約5分毎)に開始することができる。
【0077】
以上が本発明の好適な実施形態の一例についての説明である。しかしながら、本発明の実施形態の具体的態様は、上記のものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0078】
例えば、上記実施形態のラミネートプレス装置においては、加熱プレス時に被加工物が配置されたチャンバの内圧が大気圧に保たれているが、加熱プレス時の内圧を大気圧以上に設定してもよい。但し、加熱プレス時の内圧が高過ぎると、加圧されたガスが加工後のラミネート構造体に残留し、接着の剥離等の原因となる可能性がある。そのため、被加工物が配置されるチャンバの加熱プレス時の内圧は2気圧以下、より好ましくは1.5気圧以下に設定されることが望ましい。また、被加工物が配置されたチャンバの加熱プレス時の内圧を大気圧より多少低くしても本発明の効果は奏される。具体的には、加熱プレス時の同内圧を0.1気圧以上にすれば一定の充填材の流出防止効果が得られる。しかしながら、十分な効果を得るためには、被加工物が配置されるチャンバの加熱プレス時の内圧を0.5気圧以上、より好ましくは0.8気圧以上に設定することが望ましい。
【0079】
また、上記の実施形態のラミネートプレス装置においては、下部チャンバLCに被加工物が配置されるように構成されているが、上部チャンバUCに被加工物が配置される構成にしてもよい。この場合、ダイアフラムは下部チャンバLCに固定され、上部チャンバUCが開閉可能に構成される。被加工物は例えばダイアフラムの上に配置される。また、各チャンバの内圧制御は上記実施形態のものとは上下逆転したものとなる。すなわち、上部チャンバUCの内圧を大気圧に保ったまま下部チャンバLCの内圧を陽圧にすることで、ダイアフラムが上部チャンバUC側に突出して、上部チャンバUCの天井面とダイアフラムとの間で被加工物が加熱プレスされる。この場合、ダイアフラムと被加工物との間に可動熱盤を更に設け、可動熱盤と上部チャンバUCの天井面との間で被加工物を加熱プレスする構成にしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態のラミネートプレス装置においては、下部チャンバLCが固定盤に、上部チャンバUCが可動盤に支持される構成が採用されているが、下部チャンバLCを可動盤に、上部チャンバUCを固定盤に支持させる構成にしてもよい。あるいは、両チャンバを別個の可動盤に支持させる構成にしてもよい。
【0081】
被加工物を加熱プレスするまでは、被加工物がダイアフラムにより実質的にプレスされないようにすることが望ましい。上記の実施形態のラミネートプレス装置においては、上部チャンバUCと下部チャンバLCの内圧を均衡させた状態で両チャンバの内圧を大気圧まで昇圧する制御が採用されているが、別の制御によっても本発明を実施することができる。脱泡が完了するまでの間、常に下部チャンバLCの内圧を上部チャンバUCと同程度以上に保つことで、被加工物がダイアフラムにより実質的にプレスされないようにすることができる。例えば、上部チャンバUCを減圧したまま被加工物が配置された下部チャンバLCを大気圧まで昇圧し、その後に上部チャンバUCを加圧する構成にしてもよい。このような制御によっても、被加工物が真空中で加熱プレスされることで軟化した充填材が被加工物から流出するのを防ぐことができる。
【0082】
また、上記実施形態においてはキュア処理装置400の中間可動盤の数を3とし、4枚の太陽電池アセンブリAに対して同時にキュア処理を行うことが出来るようになっている。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、キュア処理に必要な時間がより長くなるような場合は、より多くの中間可動盤を備えたキュア処理装置を使用することで、太陽電池を効率的に製造することができる。
【0083】
上記実施形態においては、キュア処理装置400の可動盤411、421、422、423及び431、並びにラミネートプレス装置300の固定盤320及び可動盤330は、各可動盤又は固定盤内に設けられた電熱ヒータによって加熱されるようになっているが、可動盤又は固定盤内に加熱された熱媒(オイル等)を循環させる構成としてもよい。なお、本実施形態の電熱ヒータ方式は、オイルミストを発生する恐れが無いため、クリーンルーム内で使用することができる。
【0084】
上記実施形態においては、ラミネートプレス装置300及びキュア処理装置400とは別に設けられた制御装置700によりラミネートプレス処理及びキュア処理の制御が行われるが、ラミネートプレス装置300及びキュア処理装置400に制御部を設けて、各装置の制御部によりラミネートプレス処理及びキュア処理の実行を制御する構成にしてもよい。また、上記実施形態においては、制御装置700が各装置の連携動作の為の制御を行っているが、ラミネート加工システム1を集中制御する制御装置700を設けずに、各装置に設けられた制御部間の通信により自律的に連携動作する構成としてもよい。
【0085】
また、上記の実施形態は太陽電池パネルの製造に本発明を適用したものであるが、本発明は任意のラミネート構造体の成形に適用することができる。例えば、本発明は、プリプレグを含む構成材の積層体を加熱プレスすることにより成形されるプリント配線基板等の板状ラミネート構造体の製造に適用することができる。また、プラズマディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネル等の製造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 ラミネート加工システム
100 積層装置
200 搬入用コンベア
300 ラミネートプレス装置
310 コンベア
320 固定盤
330 可動盤
333 ダイアフラム
400 キュア処理装置
411 上部可動盤
421 第1中間可動盤
422 第2中間可動盤
423 第3中間可動盤
431 下部可動盤
441 駆動ユニット
450 コンベア
460 保持部材
461 シリンダ
462 ロッド
700 制御装置
800 キャリアプレート
810 枠体
820 薄板
A 太陽電池アセンブリ
UC 上部チャンバ
LC 下部チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の構成部材を積層してラミネートプレスにより成形した太陽電池アセンブリを、加熱して該太陽電池アセンブリの熱反応を完了させるキュア処理を行うキュア処理装置であって、
上部可動盤と、
前記上部可動盤の下方に配置される下部可動盤と、
前記上部可動盤と前記下部可動盤との間に配置される少なくとも1つの中間可動盤と、
前記上部可動盤、前記下部可動盤及び前記中間可動盤を加熱する加熱手段と、
前記下部可動盤を上下に駆動する可動盤駆動手段と、
前記太陽電池アセンブリを前記可動盤間に配置すると共に該可動盤間に配置された該太陽電池アセンブリを取り出す搬送手段と、
制御手段と
を備え、
前記上部可動盤及び前記中間可動盤は、その下面に弾性膜が設けられると共に、該下面と該弾性膜との間の空間に陽圧を加えることが可能なエアポンプを備え、
前記制御手段は、上下方向に隣接する前記可動盤の対を選択し、該選択された可動盤の対の間隔を選択的に広げてこの可動盤の対の間に対して前記太陽電池アセンブリを搬入及び搬出可能とする搬送モードと、前記下部可動盤を上昇させて該太陽電池アセンブリが可動盤の対の間に挟み込まれる状態とし、次いで前記エアポンプを駆動して該太陽電池アセンブリの上側の可動盤の下面と該上側の可動盤の弾性膜との間の空間に陽圧を加えて該弾性膜が該太陽電池アセンブリをプレスする状態とする圧縮モードにて前記キュア処理装置を作動可能であり、該圧縮モードを該搬送モードに切り換える度に、該搬送モードにおいて選択する可動盤の対を所定の順に切り換える
ことを特徴とするキュア処理装置。
【請求項2】
前記複数の中間可動盤及び上部可動盤の一つが所定高さ以下に下がらないように固定する可動盤保持手段を更に備え、
前記制御手段は、該搬送モードにおいては、選択された可動盤の対の上側の可動盤が固定されるように前記可動盤保持手段を制御し、且つ前記下部可動盤を降下させることによって、該選択された可動盤の対の間隔を広げる
ことを特徴とする請求項1に記載のキュア処理装置。
【請求項3】
前記複数の中間可動盤及び上部可動盤の側面には略水平方向に伸びる穴が形成されており、
前記可動盤保持手段は、所定高さに保持されている固定部と、前記固定部に対して進退可能に構成されたロッドと、前記ロッドを駆動する駆動部と、を有し、
前記ロッドを前記固定部から突出させて前記可動盤の穴に挿入することによって前記可動盤が所定高さに固定される、
ことを特徴とする請求項2に記載のキュア処理装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記太陽電池アセンブリに対して、該太陽電池アセンブリの搬送方向及び上下方向に垂直な幅方向両側に設けられたコンベアであり、
前記コンベアは、前記太陽電池アセンブリを搬送可能な搬送位置と、該搬送位置から幅方向外側に移動して前記太陽電池アセンブリと干渉しない退避位置との間で移動可能となっており、
前記制御手段は、前記圧縮モードにおいて、前記太陽電池アセンブリが前記コンベアの上から前記可動盤の上に移動した後、前記コンベアを退避位置に移動させる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のキュア処理装置。
【請求項5】
ラミネート構造体の構成部材を積層してラミネートプレスにより成形した積層体を、加熱して安定化させるキュア処理を行うキュア処理装置であって、
上部可動盤と、
前記上部可動盤の下方に配置された下部可動盤と、
前記上部可動盤と前記下部可動盤の間に上下に並んで配置された少なくとも1つの中間可動盤と、
前記可動盤間に配置されたダイアフラムと、
任意の互いに隣接する前記可動盤の一対を上下に離隔させる可動盤離隔機構と、
互いに隣接する前記可動盤の一対が離隔していないときに前記可動盤間に形成される、前記ダイアフラムにより仕切られたチャンバの内圧を制御する内圧制御ユニットと
を備え、
任意の互いに隣接する前記可動盤の少なくとも一方はヒータを備え、
前記内圧の制御により、前記ヒータを備えた少なくとも一方の可動盤と前記ダイアフラムとの間で前記積層体を挟むことによりキュア処理可能に構成されていることを特徴とするキュア処理装置。
【請求項6】
前記可動盤離隔機構は、
前記下部可動盤を上下に駆動する可動盤駆動ユニットと、
前記上部可動盤及び前記中間可動盤の任意の一つを所定の高さに保持する保持ユニットと
を備えることを特徴とする請求項5に記載のキュア処理装置。
【請求項7】
前記可動盤離隔機構は、前記可動盤駆動ユニットにより前記下部可動盤を駆動して前記任意の互いに隣接する一対の可動盤の上側の一方を前記所定の高さに移動し、保持ユニットにより前記上側の一方の可動盤を前記所定の高さに保持し、更に前記可動盤駆動ユニットにより前記下部可動盤を駆動して下側の他方の可動盤を降下させることにより、前記任意の互いに隣接する一対の可動盤を上下に離隔させることを特徴とする請求項6に記載のキュア処理装置。
【請求項8】
前記ラミネート構造体は太陽電池であり、前記積層体は太陽電池の構成部材を積層して形成された太陽電池アセンブリであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のキュア処理装置。
【請求項9】
積層体を加熱プレスしてラミネート構造体に成形するラミネートプレス装置であって、
ダイアフラムと、
前記ダイアフラムにより仕切られた第1及び第2のチャンバと、
前記第1及び第2のチャンバの内圧を独立に制御可能な内圧制御ユニットと、
前記第1のチャンバに設けられ、前記ダイアフラムとの間で積層体をプレス成形する第1の熱盤と
を備え、
前記内圧制御ユニットは、前記第2のチャンバの内圧を前記第1のチャンバの内圧よりも高くして前記ダイアフラムにより積層体をプレス成形する時は、前記第1のチャンバを真空にせず、前記第1のチャンバの内圧を前記積層体に含まれる充填材の流出が抑制される所定の圧力範囲内に制御することを特徴とするラミネートプレス装置。
【請求項10】
前記内圧制御ユニットは、前記プレス成形を行う前に、前記積層体が真空脱泡されるように前記第1のチャンバの内圧を陰圧に制御することを特徴とする請求項9に記載のラミネートプレス装置。
【請求項11】
前記内圧制御ユニットは、前記プレス成形を行う前は、前記ダイアフラムが積層体を加圧しないように、前記第2のチャンバの内圧を前記第1のチャンバの内圧と同程度以下に制御することを特徴とする請求項9又は10のいずれか一項に記載のラミネートプレス装置。
【請求項12】
前記第2のチャンバに設けられた第2の熱盤を更に備え、
前記内圧制御ユニットは、前記プレス成形を行う前に、前記第2の熱盤に前記ダイアフラムが密着して前記ダイアフラムが加熱されるように、前記第2のチャンバの内圧を前記第1のチャンバの内圧よりも低い圧力に制御することを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載のラミネートプレス装置。
【請求項13】
前記ラミネート構造体は太陽電池パネルであることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載のラミネートプレス装置。
【請求項14】
積層体を加熱プレスしてラミネート構造体に成形するラミネートプレス装置と、
前記ラミネート構造体を加熱して安定化させるキュア処理を行うキュア処理装置と
を備え、
前記ラミネートプレス装置が、請求項9から13のいずれか一項に記載のラミネートプレス装置であることを特徴とするラミネート加工システム。
【請求項15】
前記キュア処理装置が、請求項1から8のいずれか一項に記載のキュア処理装置であることを特徴とする、請求項14に記載のラミネート加工システム。
【請求項16】
積層体を加熱プレスしてラミネート構造体に成形するラミネートプレス装置と、
前記ラミネート構造体を加熱して安定化させるキュア処理を行うキュア処理装置と
を備え、
前記キュア処理装置が、請求項1から8のいずれか一項に記載のキュア処理装置であることを特徴とするラミネート加工システム。
【請求項17】
脆性部材を含むラミネート構造体のラミネートプレス加工に適したキャリアプレートであって、
中空部を有する実質的な剛体である枠体と、
前記枠体の中空部を覆うように前記枠体の上面に固定された可撓性のある薄板と
を有し、
前記枠体の中空部は前記可動盤を収容可能な大きさを有し、
前記キャリアプレートは、前記薄板の上に前記ラミネート構造体の構成部材を積層した積層体を載せた状態で、ラミネートの可動盤間に配置され、前記積層体と一緒にプレス可能に構成されている
ことを特徴とするキャリアプレート。
【請求項18】
ダイアフラムにより仕切られた第1及び第2のチャンバの内圧を制御して、前記第1のチャンバに配置された第1の熱盤と前記ダイアフラムとの間で積層体を加熱プレスしてラミネート構造体に成形するラミネート方法であって、
前記第1のチャンバの内圧よりも前記第2のチャンバの内圧を高くすることにより前記積層体を加熱プレスして成形するプレス成形ステップを含み、
前記プレス成形ステップにおいて、前記第1のチャンバを真空にせず、前記第1のチャンバの内圧を前記積層体に含まれる充填材の流出が抑制される所定の圧力範囲内に制御することを特徴とするラミネート方法。
【請求項19】
前記プレス成形ステップの前に、前記第1のチャンバの内圧を陰圧にして前記積層体から気泡を除去する真空脱泡ステップを更に含むことを特徴とする請求項18に記載のラミネート方法。
【請求項20】
前記プレス成形ステップの前は、前記ダイアフラムが積層体を加圧しないように、前記第2のチャンバの内圧を前記第1のチャンバの内圧と同程度以下に制御することを特徴とする請求項18又は19のいずれか一項に記載のラミネート方法。
【請求項21】
前記プレス成形ステップの前に、前記第2のチャンバの内圧を前記第1のチャンバの内圧よりも低くすることにより、前記第2のチャンバに配置された第2の熱盤に前記ダイアフラムを密着させて前記ダイアフラムを加熱するダイアフラム加熱ステップを更に含むことを特徴とする請求項18から20のいずれか一項に記載のラミネート方法。
【請求項22】
前記プレス成形ステップの後に、前記充填材が安定するまで前記積層体を加熱するキュアステップを更に含むことを特徴とする請求項18から21のいずれか一項に記載のラミネート方法。
【請求項23】
前記ラミネート構造体は太陽電池パネルであることを特徴とする請求項18から22のいずれか一項に記載のラミネート方法。
【請求項24】
請求項18から23のいずれか一項に記載のラミネート方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−80120(P2012−80120A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277721(P2011−277721)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2011−530786(P2011−530786)の分割
【原出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000242242)北川精機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】