説明

ラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法

【課題】音響機器用表面材、家具用表面材、建築用内装材、キャビネット用表面材、キッチン扉用内装材、自動車内装部品等として用いる材料として使用することができるインサート成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】不織布状模様に加工されたポリエステル生地3や、あるいは木目板等の装飾模様を印刷したポリエステル生地3の表面に、透明フィルム4でラミネート加工を施して形成されたラミネート部材2をインサート成形して、該成形して得られたインサート成形体1を装飾用合成樹脂パネルとして使用することができるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器用表面材、家具用表面材、建築用内装材、キャビネット用表面材、キッチン扉用内装材、自動車内装部品等として用いる材料に、不織布状模様に加工されたポリエステル生地や、あるいは木目板等の装飾模様を印刷したポリエステル生地の表面に、透明フィルムでラミネート加工を施して形成されたラミネート加工生地をインサート成形して、該成形して得られたインサート成形体を装飾用合成樹脂パネルとして使用することができるラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木目柄等の模様が印刷された家具用表面材等として用いる材料には、インサート成形法によって得られたインサート成形品が広く使用されている。ここで、インサート成形法とは、アクリルフィルム基体に木目板インキ層などの図柄インキ層を印刷したインサートフィルムを、射出成形用金型内に配置し、インサートフィルムを加熱し、型閉めした後に溶融樹脂を金型内に射出し、樹脂を固化させることにより、アクリルインサートフィルムのインキ層側を樹脂成形品に接着する方法である。
【0003】
そして、前記インサート成形によって得られた樹脂成形品に接着されたアクリルインサートフィルムのインキ層側が外部に露出している面を表側にして、音響機器用表面材や家具用表面材として使用している。
【0004】
更に、従来、例えば、音響機器等の表面材として、合成樹脂板の表面に装飾模様を印刷したパネルが使用されている。しかしながら、前記パネルを表面材として使用すると、装飾模様部分が外部に露出するため、ゴミが付着して汚れてしまい、特に装飾模様が凹凸状に形成されている場合は、ごみが凹部にこびりついてしまって、その除去が困難で、極めて見苦しくなるという課題があった。
【0005】
そして、前記外部に露出した表面側を美麗に保つためには、その表面を雑巾で拭くとか、クリーナーで磨くとか、あるいは洗剤を使用する以外にはないが、それでも経時と共にその表面に汚れが付着し、取れにくくなって、美麗さが損なわれてしまうという課題があった。
【0006】
しかしながら、前記課題を解決する方法としては、従来より行われている雑巾で拭くとか、クリーナーで磨くとか、あるいは洗剤を使用するという以外の方法はなく、過去の特許文献を遡及検索しても、これら以外の方法は見当らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたもので、不織布状模様に加工したポリエステル生地の表面、または木目板等の装飾模様を印刷したポリエステル生地の表面に、透明フィルムでラミネート加工を施して形成されたラミネート加工生地を、インサート成形により合成樹脂と一体成形してインサート成形体を形成し、前記形成されたインサート成形体を透明フィルムを剥離することなく、そのまま音響機器用表面材、建築用内装材、キャビネット用表面材、キッチン扉用内装材、自動車内装部品等の装飾用パネルとして使用することにより、前記透明フィルムが、パネルの装飾模様等の保護シートの役目を果たして、前記パネルが汚れることのないラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、不織布状模様に加工したポリエステル生地の表面、または装飾模様を印刷したポリエステル生地の表面に、透明フィルムでラミネート加工を施して形成されたラミネート加工生地を、インサート成形により合成樹脂と一体成形するという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によって得られたインサート成形体の所要枚数を、装飾用として使用する音響機器等の各部材の目的とする個所に接着固定して使用すると、透明フィルムが保護シートの役目を果たすため、内部の不織布状模様に加工されたポリエステル生地、または装飾模様を印刷したポリエステル生地の不織布状模様または装飾模様が視認できると共に、汚れがあっても、内部の不織布状模様または装飾模様を傷付けることもなく、雑巾やクリーナを使用して汚れを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明ラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法に使用するインサート部材の縦断面図である。
【図2】本発明ラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法により製造されたインサート成形体の縦断面図である。
【図3】本発明ラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法において、インサート部材を金型に配置した縦断面図である。
【図4】本発明ラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法において、インサート部材を金型に配置し、雌型内に溶融樹脂を射出した状態を示す縦断面図である。
【実施例】
【0011】
本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。本発明は、金型の雌型の内側面に沿ってラミネート加工生地より成るインサート部材を配置し、然る後、雄型を閉じて、該雌型内に溶融樹脂を射出し、外表面にラミネート加工生地が接合された成形体、すなわちインサート成形体を製造するようにしたラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法である。
【0012】
本発明は、インサート成形体1の素材となるインサート部材2を形成すると共に、該インサート部材2を金型内に配置してインサート成形することによって、インサート成形体1を製造する方法である。
【0013】
前記インサート成形体1の素材となるインサート部材2は、図1で示すように不織布状模様に加工されたポリエステル生地3、あるいは木目板等の装飾模様を印刷したポリエステル生地3の表面に透明フィルム4をラミネート加工処理して形成される。
【0014】
本発明においては、ラミネート加工処理をしたインサート部材2を金型5に配置した後、射出成形して得られるインサート成形体1は、多角形平板状、あるいは断面凹状のように、多角形平板の少なくとも1片が起立したものであるため、前記金型5は多角形平板状のパネル、あるいは多角形平板の少なくとも1片が起立したインサート成形体1を形成できる金型を使用する。本発明においては、説明の都合上、断面凹状のインサート成形体1を形成する金型として説明する。
【0015】
本発明方法によって製造されたインサート成形体1は、図2に示すように、断面凹状のインサート部材2の接合面2aに樹脂層6が一体に接合固定されて成るものである。
【0016】
前記樹脂層6としては、アクリロニトリル・ブタジェン・スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレクタレ―ト樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シンジオタクチックポリエチレン樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂から成る群の中から選ばれた少なくとも1種類以上の樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂から成るものが好適に用いられる。なお、前記樹脂層6は、前記樹脂に加え、シリカ等、従来公知の各種フィラ―や、熱安定剤、離型剤、可塑剤等の添加剤を含有したものであってもよい。
【0017】
前記インサート部材2を配置する金型5は、図3、図4に示すように、下型5aと、樹脂を注入する注入口7を備えた上型5bとから成るものである。金型5は、図3に示すように、下型5aと上型5bとを閉じたときの雌型8内の形状が、インサート成形体の形状に対応する形状に形成される。
【0018】
前記インサート部材2は、その透明フィルム3面が下型5aの載置面9に摺接して配置し、下型5aと上型5bとを閉じる。なお、前記インサート部材2を下型5aの載置面に摺接して配置する際、前記透明フィルム4面に接着層を設けて、該載置面に接着してもよい。
【0019】
続いて、注入口7から雌型8内に、樹脂層6となる溶融された樹脂を注入して硬化させることにより、インサート成形体1が形成され、その後該インサート成形体1を金型5から取出す。
【0020】
前記金型5から取出されたインサート成形体1は、樹脂層6の上面にインサート部材2がそのまま強固に一体に接合固定した状態に形成されている。
【0021】
前記インサート成形体1は、装飾用として使用する音響機器等の各部材の目的とする個所に、所要枚数を接着固定して使用する。前記したように、透明フィルム3が保護シートの役目を果たすため、内部の不織布状模様に加工されたポリエステル生地3、または装飾模様を印刷したポリエステル生地3の不織布状模様または装飾模様が視認できると共に、汚れがあっても、内部の不織布状模様または装飾模様を傷付けることもなく、雑巾やクリーナを使用して汚れを除去することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 インサート成形体
2 インサート部材
3 ポリエステル生地
4 透明フィルム
5 金型
5a 上型
5b 下型
6 樹脂層
7 注入口
8 雌型
9 載置面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布状模様に加工したポリエステル生地の表面、または装飾模様を印刷したポリエステル生地の表面に、透明フィルムでラミネート加工を施して形成されたラミネート加工生地を、インサート成形により合成樹脂と一体成形することを特徴とするラミネート加工を施したポリエステル生地のインサート成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−131133(P2012−131133A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285627(P2010−285627)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(510157122)三善産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】