ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池
【課題】電池としての強度低下を伴わず、開裂位置が制御された、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池の構成を得る。
【解決手段】ラミネート型電池101は、電池本体10と拘束部材20とを備える。前記電池本体10は、ラミネート外装体11と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体11は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記拘束部材20は、前記電池本体10の表裏の主面を通る経路に配置され、前記電池本体10の表裏の主面を複数の領域に区画する。
【解決手段】ラミネート型電池101は、電池本体10と拘束部材20とを備える。前記電池本体10は、ラミネート外装体11と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体11は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記拘束部材20は、前記電池本体10の表裏の主面を通る経路に配置され、前記電池本体10の表裏の主面を複数の領域に区画する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池に関し、詳しくは開裂位置が制御されたラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等の普及により、大容量・高密度な電池の開発が強く望まれている。電動アシスト自転車やハイブリッド型自動車も普及しだし、全て電気で駆動する電気自動車も徐々に見受けられるようになってきた。このような電池には、大容量・高密度であることに加えて、高出力であることが要求される。このような特性を併せ持つ電池として、可撓性でフィルム状の外装体を持つラミネート型電池がクローズアップされてきている。
【0003】
しかしながら、ラミネート型電池は、何らかの拍子で意図しない過剰な充電がされたり、高温環境下に曝された場合に、外装体の可撓性・柔軟性という性質のために膨張するおそれがある。膨張が生じると、電池内では、セパレータを挟んで隣合う正極と負極との距離が開いてしまい、充放電特性が悪化する。また、膨張の程度によっては、当該電池が格納された装置やケースを変形・破壊してしまうおそれもある。
【0004】
図1は、偏平形状のラミネート型電池10を、その厚さ方向に7個積み重ねた組電池を、積層方向と垂直の方向から見た模式図である。個々のラミネート型電池10が図1(a)から図1(b)のように膨張してラミネート型電池10aとなると、その集合体である組電池も当然膨張してしまい、しかも膨張の規模は組み合わせたラミネート型電池10の数におおよそ比例する。このように組電池の場合は、膨張によって受ける影響は特に大きくなる。
【0005】
国際公開第2007/043392号には、単電池を複数重ねて構成された組電池を備えた電池パックにおいて、単電池間に硬質の変形防止部材を挿入すると共に、組電池全体を押さえて変形を防ぐ変形防止手段を設けた電池パックが記載されている。
【0006】
また、この文献には、電解液の分解ガスによる内圧でラミネート外装体の封止を開放して、電解液を外部へ放出する電解液放出手段についても記載されている。すなわち、この文献に記載の電池は、ラミネート外装体の一部に、内圧に対して相対的に弱い箇所を設けている。圧力をこの箇所で選択的に解放することで、膨張を回避するとともに、この位置に内容物を回収する手段をあらかじめ設けることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/043392号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、内圧に対して相対的に弱い箇所を設けることは、電池全体としての強度の低下を必然的に伴う。また、内圧に対して相対的に弱い箇所を設けるために、あらたに加工が必要であった。
【0009】
本発明の目的は、電池としての強度低下を伴わず、開裂位置が制御された、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池の構成を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示するラミネート型電池は、電池本体と拘束部材とを備える。前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記拘束部材は、前記電池本体の表裏の主面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する。
【0011】
上記の構成によれば、拘束部材により、電池本体の表裏の主面は複数の領域に区画される。内圧が上昇した場合、区画された領域のうちで最も面積の大きい領域の中心が、ラミネート外装体が最も膨らむ箇所となる。したがって、この箇所から最も近いラミネート外装体の外周辺(接着されていない外周辺を除く)上の点で、接着を剥がそうとする力が最大となる。そのため、この位置を開裂位置としてあらかじめ特定できる。
【0012】
すなわち、この構成によれば、電池自体の強度の低下を伴わないで開裂位置を制御できる。
【0013】
また、拘束部材により、ラミネート型電池の膨張を抑制することができる。加えて、拘束部材が高熱伝導である場合は、拘束部材を伝わって熱伝導が発生し、電池に局所的に発生した熱を電池内で均等化できる。
【0014】
また、ここに開示する他のラミネート型電池は、電池本体と挟持部材とを備える。前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の4つまたは3つの外周辺を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持している。前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない。
【0015】
上記の構成によれば、ラミネート外装体の外周辺のうち、挟持部材によって挟持されている箇所は、内圧に対する強度が相対的に強くなる。したがって、ラミネート外装体の外周辺(接着されていない外周辺を除く)のうち、挟持部材によって挟持されていない箇所を、開裂位置としてあらかじめ特定できる。
【0016】
この構成では、開裂させない箇所の強度を高めることで、開裂位置を制御している。すなわち、この構成によれば、電池自体の強度の低下を伴わないで開裂位置を制御できる。
【0017】
ここに開示する組電池は、組電池本体と拘束部材とを備える。前記組電池本体は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものである。前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記拘束部材は、前記組電池本体の積層方向の両最外面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する。
【0018】
また、ここに開示する他の組電池は、組電池本体と挟持部材とを備える。前記組電池は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものである。前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の一部を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持している。前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電池としての強度低下を伴わず、開裂位置が制御された、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池の構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、偏平形状のラミネート型電池を、その厚さ方向に7個積み重ねた組電池を、積層方向と垂直の方向から見た模式図であって、(a)は通常時、(b)は膨張時の様子を示す。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)中のA−A’線およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図3(a)中のA−A’線、B−B’線およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態の変形例にかかるラミネート型電池の概略構成を模式的に示した正面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図5(a)中のA−A’線、B−B’線およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図6(a)中のA−A’線、B−B’線およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【図7】図7は、本発明の第5の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図7(a)中のA−A’線およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【図8】図8は、本発明の第6の実施形態にかかる組電池の概略構成を模式的に示した正面図である。
【図9】図9は、本発明の第7の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を模式的に示した斜視図である。
【図10】図10は、本発明の第8の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を模式的に示した斜視図である。
【図11】図11は、本発明の第9の実施形態にかかる組電池の概略構成を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態にかかるラミネート型電池101の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)中のA−A’線およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【0023】
本実施形態にかかるラミネート型電池101は、電池本体10と、拘束部材20とを備えている。
【0024】
電池本体10は、内部に図示しない積層電極体および電解液(電解質の液状のもの、以下同じ)を収容した、平面視矩形で偏平形状のラミネート外装体11と、ラミネート外装体11の外周辺111から引き出された正負の電極タブ12とを備えている。
【0025】
積層電極体は、複数の正負のシート状の電極を、セパレータを間に挟んで積層させたものである。積層電極体および電解液は公知のものを用いることができるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0026】
ラミネート外装体11は、一枚のフィルム状の外装材を折りたたんで重ね合わせ、その周縁部が接着により密封されて形成されている。図2(a)において、ラミネート外装体11の正面視下部の外周辺112が折りたたまれた辺であり、残りの3つの外周辺111,113,114が接着された辺である。
【0027】
拘束部材20は、電池本体10の正面視上下の略中央で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。拘束部材20は、例えば耐熱性樹脂のテープや、金属のリボンを用いることができる。拘束部材20は、剛性を持った材料により形成されていることが好ましい。
【0028】
拘束部材20により、電池本体10の表裏の主面は2つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113,114および拘束部材20で囲まれた領域が第1の収納部110aを形成している。同様に、外周辺112,113,114および拘束部材20で囲まれた領域が第2の収納部110bを形成している。拘束部材20は電池本体10の正面視上下の略中央に配置されているため、収納部110aおよび110bの面積は略等しい。
【0029】
このラミネート型電池101において、意図しない過剰な充電がされたり、高温環境下に曝される等により、ラミネート外装体11が膨張する場合を考える。膨張によってラミネート外装体11には、接着された外周辺111,113,114を引き剥がす方向に力がかかる。
【0030】
このとき、ラミネート外装体11が最も膨らむ箇所は、収納部110aの中心O1、および収納部110bの中心O2である。
【0031】
本実施形態では、中心O1から外周辺111への距離が、外周辺113への距離および外周辺114への距離と比べて短い。同様に、中心O2から外周辺112への距離が、外周辺113への距離および外周辺114への距離と比べて短い。したがって、外周辺111上の領域111a、および外周辺112上の領域112aに、最大の応力がかかる。
【0032】
外周辺112は、前述したように、1枚のフィルム状の外装材を折りたたんで形成した辺である。そのため、外周辺112は、接着された外周辺111,113,114と比較して、引き剥がす力に対する強度は格段に強い。したがって、外周辺112上の領域112aでは開裂は生じない。
【0033】
一方、外周辺111は接着された外周辺であるため、開裂が生じる場合は領域111aが起点となる。
【0034】
このように、本実施形態では開裂位置をあらかじめ特定できる。そのため、領域111aの付近に機器を配置しないように装置を設計したり、領域111aの付近に噴出物の回収用部材(例えば、海綿等の吸収体)を配置したりすることができる。
【0035】
また、拘束部材20はラミネート外装体11の膨張を抑制している。すなわち、拘束部材20がない場合は、ラミネート外装体11はその中心O’において最も膨らむ。中心O1と外周辺111との距離は、中心O’から外周辺111との距離と比較して短くなる。同様に、中心O2と外周辺112との距離も、中心O’から外周辺112との距離と比較して短くなる。したがって、中心O1およびO2における膨らみは、拘束部材20がない場合の中心O’における膨らみと比較して少なくなる。
【0036】
更には拘束部材20を設けることによって、電池本体10に局所的な熱が発生した場合でも、拘束部材20を導体とした熱伝導により熱が拡散し、電池本体10の熱を均等化することができ、温度の上昇を緩和することができる。この場合には、拘束部材20の材料としては金属等の熱伝導の高いものが好ましい。
【0037】
以上、本実施形態によれば、拘束部材20により、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。また、拘束部材20により、電池本体10の膨張を抑制できる。
【0038】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態にかかるラミネート型電池102の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図3(a)中のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【0039】
本実施形態にかかるラミネート型電池102は、電池本体10と、2つの拘束部材20a,20bとを備えている。
【0040】
拘束部材20aは、電池本体10の正面視上下の上から約1/4の地点で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。また、拘束部材20bは、電池本体10の正面視上下の略中央で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。
【0041】
なお、拘束部材20aと20bとは、同じ材料で形成されていても良いし、異なる材料で形成されていても良い。また、図3では拘束部材20aと20bとを同じ幅で示しているが、各々の幅が異なっていても良い。
【0042】
拘束部材20a,20bにより、電池本体10の表裏の主面は3つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113,114および拘束部材20aで囲まれた領域が第1の収納部110cを形成している。同様に、外周辺113,114、および拘束部材20a,20bで囲まれた領域が第2の収納部110dを形成している。さらに、外周辺112,113,114および拘束部材20bで囲まれた領域が第3の収納部110eを形成している。
【0043】
電池本体10は、最も面積の大きい収納部110eの中心Oにおいて最も膨らむ。固定された箇所からの距離、すなわち外周辺111〜114、および拘束部材20a,20bからの距離が最も長いためである。
【0044】
本実施形態では、中心Oから外周辺112への距離が、外周辺113および114への距離比べて短い。したがって、外周辺112上の領域112aに最大の応力がかかる。しかし、外周辺112は、1枚のフィルム状の外装材を折りたたんで形成した辺であるため、この領域では開裂は生じない。
【0045】
そのため、開裂は、接着された外周辺上の領域であって、点Oからの距離が最も短い、領域113aおよび114aで生じる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、第1の実施形態とは異なる位置に開裂位置を設定できる。
【0047】
また、本実施形態では、拘束部材20a,20bによって区画された収納部のうち、最も面積の大きい収納部110eの中心Oから、最も近い接着された外周辺113,114以外の外周辺から、電極タブ12が引き出されている。すなわち、外周辺111から電極タブ12が引き出されている。
【0048】
これにより、電極タブ12が引き出された側で開裂が生じることを避けることができる。一般的に、電極タブ12が引き出された側には保護回路などが設けられることが多いので、電極タブ12が引き出された側での開裂を避けることが望ましい。
【0049】
また、拘束部材を複数備けることで、各々の収納部の面積が小さくなる。そのため、ラミネート外装体11の膨張をより抑制することができる。
【0050】
[第2の実施形態の変形例]
図4は、本発明の第2の実施形態の変形例にかかるラミネート型電池102’の概略構成を模式的に示した正面図である。
【0051】
本変形例にかかるラミネート型電池102’は、電池本体10にかえて、電池本体10’を備えている。
【0052】
電池本体10’は、電池本体10と異なり、2枚のフィルム状の外装材を重ね合わせて、その4つの外周辺を接着して密封したラミネート外装体11’を備えている。すなわち、図4において、ラミネート外装体11’の4つの外周辺111’〜114’は、すべて接着された外周辺である。
【0053】
本変形例では、中心Oから最も近い外周辺112’が、接着された外周辺である。したがって、外周辺112’上の領域112a’が開裂の起点となる。
【0054】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態にかかるラミネート型電池103の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図5(a)中のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【0055】
本実施形態は、前述の第2の実施形態の構成に加えて、拘束部材20cをさらに備えている。すなわち、本実施形態にかかるラミネート型電池103は、電池本体10と、3つの拘束部材20a,20b,20cとを備えている。
【0056】
拘束部材20cは、電池本体10の正面視左右の略中央で、電池本体10の上下から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。なお、拘束部材20cは、拘束部材20a,20bと同じ材料で形成されていても良いし、異なる材料で形成されていても良い。
【0057】
拘束部材20a,20b,20cにより、電池本体10の表裏の主面は6つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113および拘束部材20a,20cで囲まれた領域が第1の収納部110c1を形成している。同様に、外周辺111,114、および拘束部材20a,20cで囲まれた領域が第2の収納部110c2を形成している。外周辺113および拘束部材20a,20b,20cで囲まれた領域が第3の収納部110d1を形成している。外周辺114および拘束部材20a,20b,20cで囲まれた領域が第4の収納部110d2を形成している。外周辺112,113および拘束部材20b,20cで囲まれた領域が第5の収納部110e1を形成している。外周辺112,114および拘束部材20b,20cで囲まれた領域が第6の収納部110e2を形成している。
【0058】
拘束部材20cが電池本体10の正面視左右の略中央に配置されていることにより、収納部110c1と110c2とは面積が略等しい。同様に、収納部110d1と110d2とは面積が略等しい。また、収納部110e1と110e2とは面積が略等しい。また、これらのなかでは、収納部110e1及び110e2の面積が最も大きい。
【0059】
そのため、電池本体10が最も膨らむ点は、収納部110e1の中心O1、および収納部110e2の中心O2となる。したがって、開裂が生じる場合は、接着された外周辺上の点であって、中心O1およびO2のそれぞれから最も近い領域が起点となる。すなわち、本実施形態では、領域113aおよび114aのいずれか、または両方において開裂が生じる。
【0060】
また、拘束部材20cを加えたことで、収納部110c〜110eがそれぞれ分割され、各々の面積が小さくなっている。これにより、電池本体10の膨れは、前述の第3の実施例の場合と比較して抑制される。
【0061】
本実施形態によっても、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。また、電池本体10の膨張を、より抑制できる。
【0062】
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態にかかるラミネート型電池104の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図6(a)中のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【0063】
本実施形態は、前述の第3の実施形態の構成において、拘束部材20cを、電池本体10の正面視左右の略中心から左側(外周辺113側)にずらしたものである。すなわち、本実施形態にかかるラミネート型電池104は、ラミネート型電池103と同様に、電池本体10と、3つの拘束部材20a,20b,20cとを備えている。
【0064】
本実施形態においても、拘束部材20a,20b,20cにより、電池本体10の表裏の主面は6つの領域に区画されている。すなわち、第4の実施形態と同様に、収納部110c1’,110c2’,110d1’,110d2’,110e1’,110e2’が形成されている。
【0065】
一方、拘束部材20cが電池本体10の正面視左右の中央から左側にずらして配置されていることにより、収納部110c1’の面積は収納部110c2’の面積よりも小さくなっている。同様に、収納部110d1’の面積は収納部110d2’の面積よりも小さくなっている。また、収納部110e1’の面積は収納部110e2’の面積よりも小さくなっている。
【0066】
電池本体10は、最も面積の大きい収納部110e2’の中心Oにおいて最も膨らむ。したがって、開裂が生じる場合は、接着された外周辺上の領域であって、中心Oから最も近い領域が起点となる。すなわち、本実施形態では、領域114aにおいて開裂が生じる。
【0067】
本実施形態によれば、第3の実施形態では2箇所であった開裂位置を、1箇所に特定することができる。
【0068】
[第5の実施形態]
図7は、本発明の第5の実施形態にかかるラミネート型電池105の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図7(a)中のA−A’線、およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【0069】
本実施形態は、前述の第4の実施形態の構成において、拘束部材20a、20bに変えて、幅広の拘束部材20dを配置したものである。すなわち、本実施形態にかかるラミネート型電池105は、電池本体10と、2つの拘束部材20c,20dとを備えている。
【0070】
拘束部材20cは、第4の実施形態と同様、電池本体10の正面視左右の中央から左側(外周辺113側)によった地点で、電池本体10の上下から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。拘束部材20dは、電池本体10の正面視上下の中央から上側(外周辺111側)によった地点で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。
【0071】
拘束部材20dは、拘束部材20cと比較して幅広に形成され、電池本体10の正面視上下の中心から上方を、半分以上覆っている。なお、拘束部材20cと20dとは、同じ材料で形成されていても良く、異なる材料で形成されていても良い。
【0072】
拘束部材20c,20dにより、電池本体10の表裏の主面は4つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第1の収納部110f1を形成している。同様に、外周辺111,114および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第2の収納部110f2を形成している。外周辺112,113および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第3の収納部110g1を形成している。外周辺112,114および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第4の収納部110g2を形成している。
【0073】
電池本体10は、最も面積の大きい収納部110g2の中心Oにおいて最も膨らむ。したがって、開裂が生じる場合は、接着された外周辺上の領域であって、中心Oから最も近い領域が起点となる。すなわち、本実施形態では、領域114aにおいて開裂が生じる。
【0074】
本実施形態によっても、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。
【0075】
[第6の実施形態]
図8は、本発明の第6の実施形態にかかる組電池201の概略構成を示す模式図である。
【0076】
組電池201は、組電池本体30と、拘束部材20eとを備える。
【0077】
組電池本体30は、複数の電池本体10が、その厚さ方向に積層されて形成されている。複数の電池本体10は、例えば直列に接続されている。
【0078】
拘束部材20eは、組電池本体30の正面視上下の略中央で、組電池本体30の左右から積層方向の両最外面を通る経路にわたって配置されている。
【0079】
拘束部材20eにより、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10の表裏の主面は、2つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113,114および拘束部材20eで囲まれた領域が第1の収納部110aを形成している。同様に、外周辺112,113,114および拘束部材20eで囲まれた領域が第2の収納部110bを形成している。
【0080】
拘束部材20eは組電池本体30の正面視上下の略中央に配置されているため、収納部110aおよび110bの面積は略等しい。そのため、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10が最も膨らむ箇所は、収納部110aの中心O1、および収納部110bの中心O2の、2箇所に存在する。
【0081】
以下、第1の実施形態において単電池の場合で説明したのと同様の原理によって、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10において開裂が生じる場合は、その外周辺111上の領域111aが起点となる。
【0082】
本実施形態によれば、拘束部材20eにより、電池としての強度低下を伴わずに、組電池本体30の開裂位置を制御できる。また、拘束部材20eにより、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10の膨張を抑制できる。
【0083】
また、本実施形態では、拘束部材20eが、複数の電池本体10を結束して組電池本体30とする働きを兼ねている。
【0084】
なお、第2〜第5の実施形態で単電池の場合について例示してきたように、複数の拘束部材を用いて、または拘束部材の位置を変えながら、組電池本体30を拘束することも可能である。
【0085】
[第7の実施形態]
図9は、本発明の第7の実施形態にかかるラミネート型電池106の概略構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0086】
ラミネート型電池106は、電池本体10と、挟持部材40とを備えている。
【0087】
挟持部材40は、平面視矩形で板状の底部41と、底部41の外周辺から垂直に形成された壁部42とを備える。壁部42は、電池本体10が備えるラミネート外装体11の、外周辺111〜114と対応するように形成されている。壁部42のうち、外周辺111と対応する辺の中央に切欠き42aが設けられている。
【0088】
挟持部材40としては、樹脂、金属、セラミックなど種々の材料を用いることができるが、ある程度剛性のあるものが好ましい。挟持部材40は、底部41と壁部42とが、一体的に形成されたものであっても、個別に形成されたものを結合させたものであってもよい。また、挟持部材40は、底部41を備えず、壁部42のみからなる構成としてもよい。
【0089】
外周辺111〜114は、電池本体10の厚さ方向両側から、2つの挟持部材40によって挟持されている。外周辺111〜114は、挟持部材40の自重により、あるいは図示しない加圧手段により、ある程度強く挟持されていることが望ましい。
【0090】
壁部42から圧力を受けることにより、外周辺111〜114は、内圧に対する強度が高まる。これにより、切欠き42aが設けられた箇所では、相対的に内圧に対する強度が弱くなる。したがって、開裂が生じる場合には、切欠き42aに対応するラミネート外装体11の外周辺111上の領域111aが起点となる。
【0091】
本実施形態では、挟持部材40によって、開裂箇所とする領域111aを除いた外周辺の強度を高めることで、開裂位置を特定している。したがって、本実施形態によれば、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。
【0092】
なお、本実施形態では接着された外周辺ではない外周辺112に対応する辺にも壁部42を設けて押圧している。しかし、この辺に壁部42を設けるかは任意である。
【0093】
挟持部材40は、底部41が電池本体10の収納部110に接するように形成されていても良いし、接しないように形成されていても良い。底部41が収納部110に接している場合には、電池本体10の膨張を抑制する効果が得られる。
【0094】
更には挟持部材40を設けることによって、電池本体10に局所的な熱が発生した場合でも、挟持部材40を導体とした熱伝導により熱が拡散し、電池本体10の熱を均等化することができ、温度の上昇を緩和することができる。この場合には底部41が収納部110に接している方が効果は高く、挟持部材40の材料としては金属等の熱伝導の高いものが好ましい。
【0095】
[第8の実施形態]
図10は、本発明の第8の実施形態にかかるラミネート型電池107の概略構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0096】
ラミネート型電池107は、前述の第7の実施形態にかかるラミネート型電池106と比較して、壁部42に設けられた切欠きの位置が異なる。すなわち、ラミネート型電池107では、外周辺111に対応する壁部42上に切欠き42aが設けられていた。これに対し、本実施形態にかかる組電池108では、外周辺113に対応する壁部42上に切欠き42bが設けられている。
【0097】
本実施形態においても、外周辺111〜114は、電池本体10の厚さ方向両側から、2つの挟持部材40によって挟持されている。
【0098】
壁部42から圧力を受けることにより、外周辺111〜114は、内圧に対する強度が高まる。これにより、切欠き42bが設けられた箇所では、相対的に内圧に対する強度が弱くなる。したがって、開裂が生じる場合には、切欠き42bに対応するラミネート外装体11の外周辺113上の領域113aが起点となる。
【0099】
本実施形態によれば、第7の実施形態とは異なる領域113aに開裂位置を設定できる。
【0100】
[第9の実施形態]
図11は、本発明の第9の実施形態にかかる組電池202の概略構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0101】
組電池202は、組電池本体30と、挟持部材40とを備えている。
【0102】
組電池本体30は、複数の電池本体10が、その厚さ方向に積層されて形成されている。複数の電池本体10は、例えば直列に接続されている。なお、挟持部材40は、第7の実施形態と同じものである。
【0103】
組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10の外周辺111〜114は、組電池本体30の積層方向両側から、2つの挟持部材40によって挟持されている。
【0104】
壁部42から圧力を受けることにより、接着された外周辺111〜113は、内圧に対する強度が高まる。これにより、切欠き42aが設けられた箇所では、相対的に内圧に対する強度が弱くなる。したがって、開裂が生じる場合には、切欠き42aに対応するラミネート外装体11の外周辺111上の領域111aが起点となる。
【0105】
本実施形態によれば、挟持部材40により、電池としての強度低下を伴わずに、組電池本体30の開裂位置を制御できる。
【0106】
また、本実施形態では、挟持部材40が、複数の電池本体10を結束して組電池本体30とする働きを兼ねている。
【0107】
[その他の実施形態]
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0108】
例えば、上述の各実施形態では、正面視縦長の電池本体10を例示したが、電池本体の寸法は任意である。また、電極タブ12が引き出される外周辺も任意であり、正負の電極タブ12が、異なる外周辺から引き出されていても良い。電池本体10にかえて、第2の実施形態の変形例で示した電池本体10’を、他の実施形態で用いることも可能である。
【0109】
また、第1〜第6の実施形態で例示した拘束部材は、例示した範囲に位置、数を限定するものではなく、種々の変形や組み合わせが可能である。同様に、第7〜第9の実施形態で例示した挟持部材の切欠きの位置も、例示したものに限定されない。また、切欠きを複数設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
101〜107 ラミネート型電池、201,202 組電池、10 電池本体、11 ラミネート外装体、110,110a〜110g 収納部、111〜114 外周辺、12 電極タブ、20,20a〜20e 拘束部材、30 組電池本体、40 挟持部材、41 底部、42 壁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池に関し、詳しくは開裂位置が制御されたラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等の普及により、大容量・高密度な電池の開発が強く望まれている。電動アシスト自転車やハイブリッド型自動車も普及しだし、全て電気で駆動する電気自動車も徐々に見受けられるようになってきた。このような電池には、大容量・高密度であることに加えて、高出力であることが要求される。このような特性を併せ持つ電池として、可撓性でフィルム状の外装体を持つラミネート型電池がクローズアップされてきている。
【0003】
しかしながら、ラミネート型電池は、何らかの拍子で意図しない過剰な充電がされたり、高温環境下に曝された場合に、外装体の可撓性・柔軟性という性質のために膨張するおそれがある。膨張が生じると、電池内では、セパレータを挟んで隣合う正極と負極との距離が開いてしまい、充放電特性が悪化する。また、膨張の程度によっては、当該電池が格納された装置やケースを変形・破壊してしまうおそれもある。
【0004】
図1は、偏平形状のラミネート型電池10を、その厚さ方向に7個積み重ねた組電池を、積層方向と垂直の方向から見た模式図である。個々のラミネート型電池10が図1(a)から図1(b)のように膨張してラミネート型電池10aとなると、その集合体である組電池も当然膨張してしまい、しかも膨張の規模は組み合わせたラミネート型電池10の数におおよそ比例する。このように組電池の場合は、膨張によって受ける影響は特に大きくなる。
【0005】
国際公開第2007/043392号には、単電池を複数重ねて構成された組電池を備えた電池パックにおいて、単電池間に硬質の変形防止部材を挿入すると共に、組電池全体を押さえて変形を防ぐ変形防止手段を設けた電池パックが記載されている。
【0006】
また、この文献には、電解液の分解ガスによる内圧でラミネート外装体の封止を開放して、電解液を外部へ放出する電解液放出手段についても記載されている。すなわち、この文献に記載の電池は、ラミネート外装体の一部に、内圧に対して相対的に弱い箇所を設けている。圧力をこの箇所で選択的に解放することで、膨張を回避するとともに、この位置に内容物を回収する手段をあらかじめ設けることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/043392号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、内圧に対して相対的に弱い箇所を設けることは、電池全体としての強度の低下を必然的に伴う。また、内圧に対して相対的に弱い箇所を設けるために、あらたに加工が必要であった。
【0009】
本発明の目的は、電池としての強度低下を伴わず、開裂位置が制御された、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池の構成を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示するラミネート型電池は、電池本体と拘束部材とを備える。前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記拘束部材は、前記電池本体の表裏の主面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する。
【0011】
上記の構成によれば、拘束部材により、電池本体の表裏の主面は複数の領域に区画される。内圧が上昇した場合、区画された領域のうちで最も面積の大きい領域の中心が、ラミネート外装体が最も膨らむ箇所となる。したがって、この箇所から最も近いラミネート外装体の外周辺(接着されていない外周辺を除く)上の点で、接着を剥がそうとする力が最大となる。そのため、この位置を開裂位置としてあらかじめ特定できる。
【0012】
すなわち、この構成によれば、電池自体の強度の低下を伴わないで開裂位置を制御できる。
【0013】
また、拘束部材により、ラミネート型電池の膨張を抑制することができる。加えて、拘束部材が高熱伝導である場合は、拘束部材を伝わって熱伝導が発生し、電池に局所的に発生した熱を電池内で均等化できる。
【0014】
また、ここに開示する他のラミネート型電池は、電池本体と挟持部材とを備える。前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の4つまたは3つの外周辺を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持している。前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない。
【0015】
上記の構成によれば、ラミネート外装体の外周辺のうち、挟持部材によって挟持されている箇所は、内圧に対する強度が相対的に強くなる。したがって、ラミネート外装体の外周辺(接着されていない外周辺を除く)のうち、挟持部材によって挟持されていない箇所を、開裂位置としてあらかじめ特定できる。
【0016】
この構成では、開裂させない箇所の強度を高めることで、開裂位置を制御している。すなわち、この構成によれば、電池自体の強度の低下を伴わないで開裂位置を制御できる。
【0017】
ここに開示する組電池は、組電池本体と拘束部材とを備える。前記組電池本体は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものである。前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記拘束部材は、前記組電池本体の積層方向の両最外面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する。
【0018】
また、ここに開示する他の組電池は、組電池本体と挟持部材とを備える。前記組電池は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものである。前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備える。前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容している。前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の一部を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持している。前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電池としての強度低下を伴わず、開裂位置が制御された、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池の構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、偏平形状のラミネート型電池を、その厚さ方向に7個積み重ねた組電池を、積層方向と垂直の方向から見た模式図であって、(a)は通常時、(b)は膨張時の様子を示す。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)中のA−A’線およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図3(a)中のA−A’線、B−B’線およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態の変形例にかかるラミネート型電池の概略構成を模式的に示した正面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図5(a)中のA−A’線、B−B’線およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図6(a)中のA−A’線、B−B’線およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【図7】図7は、本発明の第5の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図7(a)中のA−A’線およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【図8】図8は、本発明の第6の実施形態にかかる組電池の概略構成を模式的に示した正面図である。
【図9】図9は、本発明の第7の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を模式的に示した斜視図である。
【図10】図10は、本発明の第8の実施形態にかかるラミネート型電池の概略構成を模式的に示した斜視図である。
【図11】図11は、本発明の第9の実施形態にかかる組電池の概略構成を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態にかかるラミネート型電池101の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図2(a)中のA−A’線およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【0023】
本実施形態にかかるラミネート型電池101は、電池本体10と、拘束部材20とを備えている。
【0024】
電池本体10は、内部に図示しない積層電極体および電解液(電解質の液状のもの、以下同じ)を収容した、平面視矩形で偏平形状のラミネート外装体11と、ラミネート外装体11の外周辺111から引き出された正負の電極タブ12とを備えている。
【0025】
積層電極体は、複数の正負のシート状の電極を、セパレータを間に挟んで積層させたものである。積層電極体および電解液は公知のものを用いることができるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0026】
ラミネート外装体11は、一枚のフィルム状の外装材を折りたたんで重ね合わせ、その周縁部が接着により密封されて形成されている。図2(a)において、ラミネート外装体11の正面視下部の外周辺112が折りたたまれた辺であり、残りの3つの外周辺111,113,114が接着された辺である。
【0027】
拘束部材20は、電池本体10の正面視上下の略中央で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。拘束部材20は、例えば耐熱性樹脂のテープや、金属のリボンを用いることができる。拘束部材20は、剛性を持った材料により形成されていることが好ましい。
【0028】
拘束部材20により、電池本体10の表裏の主面は2つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113,114および拘束部材20で囲まれた領域が第1の収納部110aを形成している。同様に、外周辺112,113,114および拘束部材20で囲まれた領域が第2の収納部110bを形成している。拘束部材20は電池本体10の正面視上下の略中央に配置されているため、収納部110aおよび110bの面積は略等しい。
【0029】
このラミネート型電池101において、意図しない過剰な充電がされたり、高温環境下に曝される等により、ラミネート外装体11が膨張する場合を考える。膨張によってラミネート外装体11には、接着された外周辺111,113,114を引き剥がす方向に力がかかる。
【0030】
このとき、ラミネート外装体11が最も膨らむ箇所は、収納部110aの中心O1、および収納部110bの中心O2である。
【0031】
本実施形態では、中心O1から外周辺111への距離が、外周辺113への距離および外周辺114への距離と比べて短い。同様に、中心O2から外周辺112への距離が、外周辺113への距離および外周辺114への距離と比べて短い。したがって、外周辺111上の領域111a、および外周辺112上の領域112aに、最大の応力がかかる。
【0032】
外周辺112は、前述したように、1枚のフィルム状の外装材を折りたたんで形成した辺である。そのため、外周辺112は、接着された外周辺111,113,114と比較して、引き剥がす力に対する強度は格段に強い。したがって、外周辺112上の領域112aでは開裂は生じない。
【0033】
一方、外周辺111は接着された外周辺であるため、開裂が生じる場合は領域111aが起点となる。
【0034】
このように、本実施形態では開裂位置をあらかじめ特定できる。そのため、領域111aの付近に機器を配置しないように装置を設計したり、領域111aの付近に噴出物の回収用部材(例えば、海綿等の吸収体)を配置したりすることができる。
【0035】
また、拘束部材20はラミネート外装体11の膨張を抑制している。すなわち、拘束部材20がない場合は、ラミネート外装体11はその中心O’において最も膨らむ。中心O1と外周辺111との距離は、中心O’から外周辺111との距離と比較して短くなる。同様に、中心O2と外周辺112との距離も、中心O’から外周辺112との距離と比較して短くなる。したがって、中心O1およびO2における膨らみは、拘束部材20がない場合の中心O’における膨らみと比較して少なくなる。
【0036】
更には拘束部材20を設けることによって、電池本体10に局所的な熱が発生した場合でも、拘束部材20を導体とした熱伝導により熱が拡散し、電池本体10の熱を均等化することができ、温度の上昇を緩和することができる。この場合には、拘束部材20の材料としては金属等の熱伝導の高いものが好ましい。
【0037】
以上、本実施形態によれば、拘束部材20により、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。また、拘束部材20により、電池本体10の膨張を抑制できる。
【0038】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態にかかるラミネート型電池102の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図3(a)中のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【0039】
本実施形態にかかるラミネート型電池102は、電池本体10と、2つの拘束部材20a,20bとを備えている。
【0040】
拘束部材20aは、電池本体10の正面視上下の上から約1/4の地点で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。また、拘束部材20bは、電池本体10の正面視上下の略中央で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。
【0041】
なお、拘束部材20aと20bとは、同じ材料で形成されていても良いし、異なる材料で形成されていても良い。また、図3では拘束部材20aと20bとを同じ幅で示しているが、各々の幅が異なっていても良い。
【0042】
拘束部材20a,20bにより、電池本体10の表裏の主面は3つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113,114および拘束部材20aで囲まれた領域が第1の収納部110cを形成している。同様に、外周辺113,114、および拘束部材20a,20bで囲まれた領域が第2の収納部110dを形成している。さらに、外周辺112,113,114および拘束部材20bで囲まれた領域が第3の収納部110eを形成している。
【0043】
電池本体10は、最も面積の大きい収納部110eの中心Oにおいて最も膨らむ。固定された箇所からの距離、すなわち外周辺111〜114、および拘束部材20a,20bからの距離が最も長いためである。
【0044】
本実施形態では、中心Oから外周辺112への距離が、外周辺113および114への距離比べて短い。したがって、外周辺112上の領域112aに最大の応力がかかる。しかし、外周辺112は、1枚のフィルム状の外装材を折りたたんで形成した辺であるため、この領域では開裂は生じない。
【0045】
そのため、開裂は、接着された外周辺上の領域であって、点Oからの距離が最も短い、領域113aおよび114aで生じる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、第1の実施形態とは異なる位置に開裂位置を設定できる。
【0047】
また、本実施形態では、拘束部材20a,20bによって区画された収納部のうち、最も面積の大きい収納部110eの中心Oから、最も近い接着された外周辺113,114以外の外周辺から、電極タブ12が引き出されている。すなわち、外周辺111から電極タブ12が引き出されている。
【0048】
これにより、電極タブ12が引き出された側で開裂が生じることを避けることができる。一般的に、電極タブ12が引き出された側には保護回路などが設けられることが多いので、電極タブ12が引き出された側での開裂を避けることが望ましい。
【0049】
また、拘束部材を複数備けることで、各々の収納部の面積が小さくなる。そのため、ラミネート外装体11の膨張をより抑制することができる。
【0050】
[第2の実施形態の変形例]
図4は、本発明の第2の実施形態の変形例にかかるラミネート型電池102’の概略構成を模式的に示した正面図である。
【0051】
本変形例にかかるラミネート型電池102’は、電池本体10にかえて、電池本体10’を備えている。
【0052】
電池本体10’は、電池本体10と異なり、2枚のフィルム状の外装材を重ね合わせて、その4つの外周辺を接着して密封したラミネート外装体11’を備えている。すなわち、図4において、ラミネート外装体11’の4つの外周辺111’〜114’は、すべて接着された外周辺である。
【0053】
本変形例では、中心Oから最も近い外周辺112’が、接着された外周辺である。したがって、外周辺112’上の領域112a’が開裂の起点となる。
【0054】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態にかかるラミネート型電池103の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図5(a)中のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【0055】
本実施形態は、前述の第2の実施形態の構成に加えて、拘束部材20cをさらに備えている。すなわち、本実施形態にかかるラミネート型電池103は、電池本体10と、3つの拘束部材20a,20b,20cとを備えている。
【0056】
拘束部材20cは、電池本体10の正面視左右の略中央で、電池本体10の上下から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。なお、拘束部材20cは、拘束部材20a,20bと同じ材料で形成されていても良いし、異なる材料で形成されていても良い。
【0057】
拘束部材20a,20b,20cにより、電池本体10の表裏の主面は6つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113および拘束部材20a,20cで囲まれた領域が第1の収納部110c1を形成している。同様に、外周辺111,114、および拘束部材20a,20cで囲まれた領域が第2の収納部110c2を形成している。外周辺113および拘束部材20a,20b,20cで囲まれた領域が第3の収納部110d1を形成している。外周辺114および拘束部材20a,20b,20cで囲まれた領域が第4の収納部110d2を形成している。外周辺112,113および拘束部材20b,20cで囲まれた領域が第5の収納部110e1を形成している。外周辺112,114および拘束部材20b,20cで囲まれた領域が第6の収納部110e2を形成している。
【0058】
拘束部材20cが電池本体10の正面視左右の略中央に配置されていることにより、収納部110c1と110c2とは面積が略等しい。同様に、収納部110d1と110d2とは面積が略等しい。また、収納部110e1と110e2とは面積が略等しい。また、これらのなかでは、収納部110e1及び110e2の面積が最も大きい。
【0059】
そのため、電池本体10が最も膨らむ点は、収納部110e1の中心O1、および収納部110e2の中心O2となる。したがって、開裂が生じる場合は、接着された外周辺上の点であって、中心O1およびO2のそれぞれから最も近い領域が起点となる。すなわち、本実施形態では、領域113aおよび114aのいずれか、または両方において開裂が生じる。
【0060】
また、拘束部材20cを加えたことで、収納部110c〜110eがそれぞれ分割され、各々の面積が小さくなっている。これにより、電池本体10の膨れは、前述の第3の実施例の場合と比較して抑制される。
【0061】
本実施形態によっても、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。また、電池本体10の膨張を、より抑制できる。
【0062】
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態にかかるラミネート型電池104の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図6(a)中のA−A’線、B−B’線、およびC−C’線に沿った断面形状を示す。
【0063】
本実施形態は、前述の第3の実施形態の構成において、拘束部材20cを、電池本体10の正面視左右の略中心から左側(外周辺113側)にずらしたものである。すなわち、本実施形態にかかるラミネート型電池104は、ラミネート型電池103と同様に、電池本体10と、3つの拘束部材20a,20b,20cとを備えている。
【0064】
本実施形態においても、拘束部材20a,20b,20cにより、電池本体10の表裏の主面は6つの領域に区画されている。すなわち、第4の実施形態と同様に、収納部110c1’,110c2’,110d1’,110d2’,110e1’,110e2’が形成されている。
【0065】
一方、拘束部材20cが電池本体10の正面視左右の中央から左側にずらして配置されていることにより、収納部110c1’の面積は収納部110c2’の面積よりも小さくなっている。同様に、収納部110d1’の面積は収納部110d2’の面積よりも小さくなっている。また、収納部110e1’の面積は収納部110e2’の面積よりも小さくなっている。
【0066】
電池本体10は、最も面積の大きい収納部110e2’の中心Oにおいて最も膨らむ。したがって、開裂が生じる場合は、接着された外周辺上の領域であって、中心Oから最も近い領域が起点となる。すなわち、本実施形態では、領域114aにおいて開裂が生じる。
【0067】
本実施形態によれば、第3の実施形態では2箇所であった開裂位置を、1箇所に特定することができる。
【0068】
[第5の実施形態]
図7は、本発明の第5の実施形態にかかるラミネート型電池105の概略構成を示す模式図であって、(a)は正面図を示し、(b)は図7(a)中のA−A’線、およびB−B’線に沿った断面形状を示す。
【0069】
本実施形態は、前述の第4の実施形態の構成において、拘束部材20a、20bに変えて、幅広の拘束部材20dを配置したものである。すなわち、本実施形態にかかるラミネート型電池105は、電池本体10と、2つの拘束部材20c,20dとを備えている。
【0070】
拘束部材20cは、第4の実施形態と同様、電池本体10の正面視左右の中央から左側(外周辺113側)によった地点で、電池本体10の上下から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。拘束部材20dは、電池本体10の正面視上下の中央から上側(外周辺111側)によった地点で、電池本体10の左右から表裏の主面を通る経路にわたって配置されている。
【0071】
拘束部材20dは、拘束部材20cと比較して幅広に形成され、電池本体10の正面視上下の中心から上方を、半分以上覆っている。なお、拘束部材20cと20dとは、同じ材料で形成されていても良く、異なる材料で形成されていても良い。
【0072】
拘束部材20c,20dにより、電池本体10の表裏の主面は4つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第1の収納部110f1を形成している。同様に、外周辺111,114および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第2の収納部110f2を形成している。外周辺112,113および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第3の収納部110g1を形成している。外周辺112,114および拘束部材20c,20dで囲まれた領域が第4の収納部110g2を形成している。
【0073】
電池本体10は、最も面積の大きい収納部110g2の中心Oにおいて最も膨らむ。したがって、開裂が生じる場合は、接着された外周辺上の領域であって、中心Oから最も近い領域が起点となる。すなわち、本実施形態では、領域114aにおいて開裂が生じる。
【0074】
本実施形態によっても、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。
【0075】
[第6の実施形態]
図8は、本発明の第6の実施形態にかかる組電池201の概略構成を示す模式図である。
【0076】
組電池201は、組電池本体30と、拘束部材20eとを備える。
【0077】
組電池本体30は、複数の電池本体10が、その厚さ方向に積層されて形成されている。複数の電池本体10は、例えば直列に接続されている。
【0078】
拘束部材20eは、組電池本体30の正面視上下の略中央で、組電池本体30の左右から積層方向の両最外面を通る経路にわたって配置されている。
【0079】
拘束部材20eにより、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10の表裏の主面は、2つの領域に区画されている。すなわち、ラミネート外装体11の外周辺111,113,114および拘束部材20eで囲まれた領域が第1の収納部110aを形成している。同様に、外周辺112,113,114および拘束部材20eで囲まれた領域が第2の収納部110bを形成している。
【0080】
拘束部材20eは組電池本体30の正面視上下の略中央に配置されているため、収納部110aおよび110bの面積は略等しい。そのため、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10が最も膨らむ箇所は、収納部110aの中心O1、および収納部110bの中心O2の、2箇所に存在する。
【0081】
以下、第1の実施形態において単電池の場合で説明したのと同様の原理によって、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10において開裂が生じる場合は、その外周辺111上の領域111aが起点となる。
【0082】
本実施形態によれば、拘束部材20eにより、電池としての強度低下を伴わずに、組電池本体30の開裂位置を制御できる。また、拘束部材20eにより、組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10の膨張を抑制できる。
【0083】
また、本実施形態では、拘束部材20eが、複数の電池本体10を結束して組電池本体30とする働きを兼ねている。
【0084】
なお、第2〜第5の実施形態で単電池の場合について例示してきたように、複数の拘束部材を用いて、または拘束部材の位置を変えながら、組電池本体30を拘束することも可能である。
【0085】
[第7の実施形態]
図9は、本発明の第7の実施形態にかかるラミネート型電池106の概略構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0086】
ラミネート型電池106は、電池本体10と、挟持部材40とを備えている。
【0087】
挟持部材40は、平面視矩形で板状の底部41と、底部41の外周辺から垂直に形成された壁部42とを備える。壁部42は、電池本体10が備えるラミネート外装体11の、外周辺111〜114と対応するように形成されている。壁部42のうち、外周辺111と対応する辺の中央に切欠き42aが設けられている。
【0088】
挟持部材40としては、樹脂、金属、セラミックなど種々の材料を用いることができるが、ある程度剛性のあるものが好ましい。挟持部材40は、底部41と壁部42とが、一体的に形成されたものであっても、個別に形成されたものを結合させたものであってもよい。また、挟持部材40は、底部41を備えず、壁部42のみからなる構成としてもよい。
【0089】
外周辺111〜114は、電池本体10の厚さ方向両側から、2つの挟持部材40によって挟持されている。外周辺111〜114は、挟持部材40の自重により、あるいは図示しない加圧手段により、ある程度強く挟持されていることが望ましい。
【0090】
壁部42から圧力を受けることにより、外周辺111〜114は、内圧に対する強度が高まる。これにより、切欠き42aが設けられた箇所では、相対的に内圧に対する強度が弱くなる。したがって、開裂が生じる場合には、切欠き42aに対応するラミネート外装体11の外周辺111上の領域111aが起点となる。
【0091】
本実施形態では、挟持部材40によって、開裂箇所とする領域111aを除いた外周辺の強度を高めることで、開裂位置を特定している。したがって、本実施形態によれば、電池としての強度低下を伴わずに開裂位置を制御できる。
【0092】
なお、本実施形態では接着された外周辺ではない外周辺112に対応する辺にも壁部42を設けて押圧している。しかし、この辺に壁部42を設けるかは任意である。
【0093】
挟持部材40は、底部41が電池本体10の収納部110に接するように形成されていても良いし、接しないように形成されていても良い。底部41が収納部110に接している場合には、電池本体10の膨張を抑制する効果が得られる。
【0094】
更には挟持部材40を設けることによって、電池本体10に局所的な熱が発生した場合でも、挟持部材40を導体とした熱伝導により熱が拡散し、電池本体10の熱を均等化することができ、温度の上昇を緩和することができる。この場合には底部41が収納部110に接している方が効果は高く、挟持部材40の材料としては金属等の熱伝導の高いものが好ましい。
【0095】
[第8の実施形態]
図10は、本発明の第8の実施形態にかかるラミネート型電池107の概略構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0096】
ラミネート型電池107は、前述の第7の実施形態にかかるラミネート型電池106と比較して、壁部42に設けられた切欠きの位置が異なる。すなわち、ラミネート型電池107では、外周辺111に対応する壁部42上に切欠き42aが設けられていた。これに対し、本実施形態にかかる組電池108では、外周辺113に対応する壁部42上に切欠き42bが設けられている。
【0097】
本実施形態においても、外周辺111〜114は、電池本体10の厚さ方向両側から、2つの挟持部材40によって挟持されている。
【0098】
壁部42から圧力を受けることにより、外周辺111〜114は、内圧に対する強度が高まる。これにより、切欠き42bが設けられた箇所では、相対的に内圧に対する強度が弱くなる。したがって、開裂が生じる場合には、切欠き42bに対応するラミネート外装体11の外周辺113上の領域113aが起点となる。
【0099】
本実施形態によれば、第7の実施形態とは異なる領域113aに開裂位置を設定できる。
【0100】
[第9の実施形態]
図11は、本発明の第9の実施形態にかかる組電池202の概略構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0101】
組電池202は、組電池本体30と、挟持部材40とを備えている。
【0102】
組電池本体30は、複数の電池本体10が、その厚さ方向に積層されて形成されている。複数の電池本体10は、例えば直列に接続されている。なお、挟持部材40は、第7の実施形態と同じものである。
【0103】
組電池本体30を構成するそれぞれの電池本体10の外周辺111〜114は、組電池本体30の積層方向両側から、2つの挟持部材40によって挟持されている。
【0104】
壁部42から圧力を受けることにより、接着された外周辺111〜113は、内圧に対する強度が高まる。これにより、切欠き42aが設けられた箇所では、相対的に内圧に対する強度が弱くなる。したがって、開裂が生じる場合には、切欠き42aに対応するラミネート外装体11の外周辺111上の領域111aが起点となる。
【0105】
本実施形態によれば、挟持部材40により、電池としての強度低下を伴わずに、組電池本体30の開裂位置を制御できる。
【0106】
また、本実施形態では、挟持部材40が、複数の電池本体10を結束して組電池本体30とする働きを兼ねている。
【0107】
[その他の実施形態]
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0108】
例えば、上述の各実施形態では、正面視縦長の電池本体10を例示したが、電池本体の寸法は任意である。また、電極タブ12が引き出される外周辺も任意であり、正負の電極タブ12が、異なる外周辺から引き出されていても良い。電池本体10にかえて、第2の実施形態の変形例で示した電池本体10’を、他の実施形態で用いることも可能である。
【0109】
また、第1〜第6の実施形態で例示した拘束部材は、例示した範囲に位置、数を限定するものではなく、種々の変形や組み合わせが可能である。同様に、第7〜第9の実施形態で例示した挟持部材の切欠きの位置も、例示したものに限定されない。また、切欠きを複数設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、ラミネート型電池およびラミネート型電池からなる組電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
101〜107 ラミネート型電池、201,202 組電池、10 電池本体、11 ラミネート外装体、110,110a〜110g 収納部、111〜114 外周辺、12 電極タブ、20,20a〜20e 拘束部材、30 組電池本体、40 挟持部材、41 底部、42 壁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池本体と拘束部材とを備え、
前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記拘束部材は、前記電池本体の表裏の主面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する、ラミネート型電池。
【請求項2】
請求項1に記載のラミネート型電池であって、
前記拘束部材を複数備える、ラミネート型電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載のラミネート型電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記電極タブは、前記拘束部材によって区画された複数の領域のうちの最も広い領域の中心から、最も近い接着された外周辺以外の外周辺から引き出されている、ラミネート型電池。
【請求項4】
電池本体と挟持部材とを備え、
前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の4つまたは3つの外周辺を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持し、
前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない、ラミネート型電池。
【請求項5】
請求項4に記載のラミネート型電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記ラミネート外装体の前記電極タブが引き出された外周辺は、前記挟持部材によって挟持されている、ラミネート型電池。
【請求項6】
組電池本体と拘束部材とを備え、
前記組電池本体は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものであって、
前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記拘束部材は、前記組電池本体の積層方向の両最外面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する、組電池。
【請求項7】
請求項6に記載の組電池であって、
前記拘束部材を複数備える、組電池。
【請求項8】
請求項6または7に記載の組電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記電極タブは、前記拘束部材によって区画された複数の領域のうちの最も広い領域の中心から、最も近い接着された外周辺以外の外周辺から引き出されている、組電池。
【請求項9】
組電池本体と挟持部材とを備え、
前記組電池は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものであって、
前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の一部を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持し、
前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない、組電池。
【請求項10】
請求項9に記載の組電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記ラミネート外装体の前記電極タブが引き出された外周辺は、前記挟持部材によって挟持されている、組電池。
【請求項1】
電池本体と拘束部材とを備え、
前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記拘束部材は、前記電池本体の表裏の主面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する、ラミネート型電池。
【請求項2】
請求項1に記載のラミネート型電池であって、
前記拘束部材を複数備える、ラミネート型電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載のラミネート型電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記電極タブは、前記拘束部材によって区画された複数の領域のうちの最も広い領域の中心から、最も近い接着された外周辺以外の外周辺から引き出されている、ラミネート型電池。
【請求項4】
電池本体と挟持部材とを備え、
前記電池本体は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の4つまたは3つの外周辺を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持し、
前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない、ラミネート型電池。
【請求項5】
請求項4に記載のラミネート型電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記ラミネート外装体の前記電極タブが引き出された外周辺は、前記挟持部材によって挟持されている、ラミネート型電池。
【請求項6】
組電池本体と拘束部材とを備え、
前記組電池本体は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものであって、
前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記拘束部材は、前記組電池本体の積層方向の両最外面を通る経路に配置され、前記電池本体の表裏の主面を複数の領域に区画する、組電池。
【請求項7】
請求項6に記載の組電池であって、
前記拘束部材を複数備える、組電池。
【請求項8】
請求項6または7に記載の組電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記電極タブは、前記拘束部材によって区画された複数の領域のうちの最も広い領域の中心から、最も近い接着された外周辺以外の外周辺から引き出されている、組電池。
【請求項9】
組電池本体と挟持部材とを備え、
前記組電池は、単電池をその厚さ方向に複数積み重ねたものであって、
前記単電池は、ラミネート外装体と、電極体と、電解質とを備え、
前記ラミネート外装体は、平面視矩形の偏平形状で、その4つまたは3つの外周辺が接着により密封され、内部に前記電極体と前記電解質とを収容しており、
前記挟持部材は、前記ラミネート外装体の一部を、前記電池本体の厚さ方向両側から挟持し、
前記ラミネート外装体の外周辺のうち、接着により密封された外周辺の一部は、前記挟持部材により挟持されていない、組電池。
【請求項10】
請求項9に記載の組電池であって、
前記電池本体は、前記ラミネート外装体の外周辺から引き出された電極タブをさらに備え、
前記ラミネート外装体の前記電極タブが引き出された外周辺は、前記挟持部材によって挟持されている、組電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−4260(P2013−4260A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133143(P2011−133143)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】
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