説明

ラミネート装置、ラミネート装置用の熱板及びラミネート装置用の熱板の製造方法

【課題】ラミネート工程の際に熱板の温度を目標温度に容易かつ確実に制御できるようにする。
【解決手段】押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板122上に被加工物を配置し、前記熱板122により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板122と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置であって、前記熱板122は、裏面に収容溝63が設けられた熱板本体61と、前記収容溝63に埋設されたシースヒータ62とを備え、前記収容溝63及び前記シースヒータ62の少なくともいずれか一方を変形させて、前記シースヒータ62の外周面が前記収容溝63の内周面に面接触するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板上に太陽電池モジュール等の被加工物を配置し、熱板により加熱した被加工物を熱板と押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置、ラミネート装置用の熱板及びラミネート装置用の熱板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の温室効果ガス等の問題から、環境を汚さない太陽電池が注目されている。太陽電池は、カバーガラス、充填材、太陽電池セル、裏面材等の複数の部材が重なり合って構成されている。この種の太陽電池を製造する際には、ラミネート装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。ラミネート装置は、太陽電池の構成部材が重ね合わされた被加工物を真空状態で加熱しながら、ラミネートする。その結果、被加工物は各構成部材が重ね合わされた状態で接着される。このラミネート装置は、下方向に向けて膨張自在なダイヤフラムを有する上ケースと、熱板を有する下ケースと、を有している。太陽電池をラミネートする際、まず、使用者は、熱板上に、太陽電池の構成部材を重ね合わせて配置する。次に、ラミネート装置は、上ケースと下ケースとで形成される空間を真空状態にする。さらに、ラミネート装置は、熱板によって被加工物である太陽電池の構成部材を加熱した状態で、上ケースの内部に大気圧を導入する。このようにすることで、ラミネート装置は、ダイヤフラムと熱板とで太陽電池の構成部材を挟圧してラミネートする。
【0003】
【特許文献1】特開2004−238196号公報
【特許文献2】特開平9−33170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラミネート装置の熱板には、シースヒータという、電熱線が絶縁材を介して金属で覆われたヒータが埋設されている。シースヒータを発熱させることで、シースヒータの熱が熱板に伝達され、熱板上に配置された太陽電池の構成部材を加熱することができる。また、熱板の温度は、温度コントローラによって太陽電池を加熱するのに適正な温度になるよう制御されている。より具体的には、熱板の表面から適宜な深さ位置に埋め込まれた熱電対が熱板の温度を測定する。そして、測定された温度の情報は、温度コントローラにフィードバックされる。温度コントローラは、フィードバックされた温度の情報に基づいて、熱板の温度を適正な温度に制御する。すなわち、温度コントローラは、シースヒータの温度を上昇させたり、自然冷却させたりしている。温度コントローラが、シースヒータの温度を上昇させたり、自然冷却させたりすることで、熱板の温度を適正な温度に保持するようにする。
【0005】
図9は、熱板の温度遷移を示す図である。図9において、特性線(1)は、上述したラミネート装置において、熱板上に被加工物を配置した状態でラミネート工程を行ったときに得られる熱板の温度遷移である。熱板の温度は当初、目標温度(例えば、120℃〜180℃)となっている。被加工物を熱板上に配置することにより、熱板の熱が被加工物に奪われ、熱板の温度は急激に低下する。この温度低下を補うために、温度コントローラは熱板の温度を上昇させる温度制御を行う。しかしながら、熱板の温度は所定の加熱時間(例えば、5分間)内において、なかなか目標温度まで上昇しない。また、ラミネート加工中は、熱板が真空雰囲気中にあるのでなかなか熱板の温度が上昇しない。更に、被加工物の加熱時間が終了し、上ケースと下ケースとで形成される空間の真空状態が解除されると、熱板の温度が、目標温度を大きく超えてオーバーシュートしてしまう。このように、従来のラミネート装置においては、熱板の温度を目標温度に制御するのは困難であった。更に、熱板の温度がオーバーシュートしてしまうと、熱板の温度が目標温度に下がるまで被加工物を熱板上に配置することができない。従って、従来の熱板では、ラミネートの作業効率が低下してしまうという問題が生じる。なお、図9において特性線(2)は、熱板上に被加工物を配置していない状態でラミネート工程を行ったときに得られる熱板の温度遷移である。図9の特性線(2)に示すように、ラミネート工程が始まると、熱板の温度はダイヤフラムとの接触によりわずかに低下するが、その後目標温度に制御される。
【0006】
そこで、本願の発明者は、従来のラミネート装置を検証した。その結果、熱板の温度がなかなか上昇しない原因、及び加熱時間が終了した後に目標温度を大きく超えてオーバーシュートしてしまう原因が、熱板の構造によるものであることがわかった。図17(a)は、熱板の一部断面を簡略して示した図である。図17(a)に示すように、熱板160は、上板161と、下板162と有している。また、熱板160は、上板161の裏面に形成された収容溝及び下板162の上面に形成された収容溝に挟まれて設けられたシースヒータ163を有している。ここで、上板161とシースヒータ163との間や下板162とシースヒータ163との間には所々に隙間が発生してしまっていた。この隙間は、上板161と下板162との重ね合わせ誤差や、収容溝の加工寸法の誤差等によるものである。この隙間の発生により、シースヒータ163から上板161及び下板162への熱伝達の効率が低下してしまう。特に、上述したようにラミネート工程においては上ケースと下ケースとで形成される空間を真空状態にする工程がある。この工程において、上板161とシースヒータ163との間や下板162とシースヒータ163との間に発生した隙間も真空状態となってしまう。このように隙間が真空状態となると、シースヒータ163から上板161及び下板162への熱伝達の効率は著しく低下してしまう。そのために、温度コントローラは、熱板160の温度を制御することが困難になる。また、熱板160の温度は加熱時間内において目標温度まで、なかなか上昇しない。従って、温度コントローラは、熱板160の温度を上昇させるために、シースヒータ163の温度を更に上昇させる温度制御を行う。そのため、シースヒータ163の温度は、過度に上昇してしまう。被加工物の加熱時間が終了した後、真空状態が解除されると、上述した隙間にも空気が導入される。空気が導入されることで、空気が媒体となり、シースヒータ163の熱が熱板160(上板161及び下板162)にそれまでよりも効率よく伝達される。すると、過度に上昇したシースヒータ163の熱が熱板に伝達され、熱板160の温度は、目標温度を大きく超えてオーバーシュートを引き起こしてしまう。また、隙間が発生している箇所と接触している箇所とが存在することにより、熱板160の表面での温度分布は不均一となる。従って、ラミネート工程における構成部材の接着等の品質に影響を与えてしまう恐れがある。
【0007】
このような問題点において、上板161とシースヒータ163との間や下板162とシースヒータ163との間の隙間を埋めて熱伝達を向上させる方法がある。例えば、図17(b)に示すように、隙間に熱伝導性シリコーンシート164やフッ素系樹脂シートを介在させる方法がある。しかしながら、そのような方法であっても、完全に隙間を埋めることができない。また、熱板全体のコストアップの要因となってしまう。
【0008】
一方、半導体若しくは液晶ディスプレイ等を製造する際に、半導体や液晶ディスプレイ等の被加工物を熱処理する工程がある。この工程において、被加工物を加熱するための熱盤が知られている(例えば、特許文献2参照)。この熱盤は、盤の内部に平行に形成した貫通孔を有している。この貫通孔には外郭部を有する熱伝導要素が、貫通孔の内周面と熱伝導要素の外郭部の外周面とを相互に密着させて設けられている。しかし、この熱盤は、上述したような熱伝達の効率が著しく低下してしまう真空状態にならない装置に使用されているものである。また、特許文献2に開示された熱盤は、近年、大型化する被加工物に対応できるような考慮がなされていない。
【0009】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、真空状態になる工程を有するラミネート装置における熱板の温度を目標温度に容易かつ確実に制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のラミネート装置は、押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置であって、前記熱板は、裏面に収容溝が設けられた熱板本体と、前記収容溝に埋設されたシースヒータとを備え、前記収容溝及び前記シースヒータの少なくともいずれか一方を変形させて、前記シースヒータの外周面が前記収容溝の内周面に面接触するようにしたことを特徴とする。
前記熱板は、前記収容溝に前記シースヒータが埋設された状態で、前記収容溝の開口縁に設けられた突出部を前記収容溝の内側方向にかしめるように構成することができる。
前記熱板は、前記収容溝が前記熱板本体の裏面に設けられた凹溝の底面に設けられるように構成することもできる。
前記熱板は、前記収容溝の開口縁に設けられた突出部を前記収容溝の内側方向にかしめている部分が、前記熱板本体の裏面より張出すように構成することもできる。
前記熱板は、前記収容溝に前記シースヒータが埋設された状態で、前記収容溝の開口縁そのものを前記収容溝の内側方向にかしめて構成することもできる。
前記熱板は、前記収容溝の開口縁そのものをかしめる前の状態において、前記収容溝は、前記熱板本体の裏面に直接、設けられるように構成することもできる。
前記熱板本体の材質は、前記シースヒータの外周部材の材質と同一とすることもできる。
前記熱板本体には、複数のシースヒータを埋設するように構成することもできる。
前記熱板本体の裏面には、面方向に沿って異なって蛇行する収容溝が複数、設けられ、前記複数の収容溝それぞれに埋設されるシースヒータを複数、備えるように構成することもできる。
前記熱板は、前記複数のシースヒータのうち、前記熱板本体の同一奥行き方向に埋設されている複数のシースヒータは、前記収容溝から外部に出る位置が前記熱板本体の幅方向にずれるように構成することもできる。
前記熱板は、複数の熱板本体を結合して構成することもできる。
前記熱板は、隣接する熱板本体同士を表面側から熱板本体間に跨って設けられた結合部材を介して表面側から固定部材により結合するように構成することもできる。
前記熱板は、熱板本体と、前記熱板本体に埋め込まれたシースヒータとを備え、前記シースヒータの外周全面が前記熱板本体と接触するように構成することもできる。
前記熱板は、熱板本体に、シースヒータの外周全面が前記熱板本体と接触するように埋め込まれるように構成することもできる。
前記熱板は、熱板本体の裏面に設けられた収容溝にシースヒータを埋設する埋設工程を有し、前記埋設工程で、プレス機によって、前記シースヒータの外周面が前記収容溝の内周面に面接触するように、前記収容溝及び前記シースヒータの少なくともいずれか一方を変形させると共に、前記収容溝の開口縁に設けられた突出部又は開口縁そのものを前記収容溝の内側方向にかしめる製造方法により得られる。
また、前記熱板は、シースヒータの外周全体が熱板本体と接触するように、熱板本体にシースヒータを鋳込により埋設する製造方法によっても得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シースヒータの熱が熱板本体に効率よく伝達され、ラミネート装置における熱板の温度を目標温度に容易かつ確実に制御することができる。また、被加工物のラミネート品質を向上させることができる。
例えば、熱板は、収容溝にシースヒータが埋設された状態で、収容溝の開口縁に設けられた突出部を収容溝の内側方向にかしめられる。この場合、シースヒータの外周面を収容溝の内周面に圧接した状態に維持させておくことができる。
また例えば、収容溝は、熱板本体の裏面に設けられた凹溝の底面に設けることもできる。この場合、切削面積を削減させることができる。また、かしめ部を凹溝内に位置させることができるので、かしめ部が熱板本体の裏面から突出することがなく、裏面上に他の熱板を重ねることもできる。
また例えば、収容溝の開口縁に設けられた突出部を収容溝の内側方向にかしめている部分が、熱板本体の裏面より張出することもできる。この場合、突出部をかしめるときに用いられるプレス金型費を削減することができる。
また例えば、熱板は、収容溝にシースヒータが埋設された状態で、収容溝の開口縁そのものを収容溝の内側方向にかしめることもできる。この場合、かしめるための突出部を形成する必要がないので、熱板本体を加工する加工費を削減することができる。
また例えば、収容溝の開口縁そのものをかしめる前の状態において、収容溝は、熱板本体の裏面に直接、設けることもできる。この場合、熱板本体を加工する加工費を削減することができる。
また例えば、熱板は、熱板本体の材質と、シースヒータの外周部材の材質とを同一とすることができる。この場合、シースヒータから熱板本体への熱伝達の効率を向上させることができる。
また例えば、熱板は、熱板本体に複数のシースヒータを埋設することもできる。この場合、熱板全体を満遍なく加熱することができる。
また例えば、熱板本体の裏面には、面方向に沿って異なって蛇行する収容溝を複数、設け、前記複数の収容溝それぞれに埋設されるシースヒータを複数、備えることもできる。この場合、熱板全体の温度分布を一定にすることができる。
また例えば、複数のシースヒータのうち、熱板本体の同一奥行き方向に埋設されている複数のシースヒータは、収容溝から外部に出る位置を熱板本体の幅方向にずれるようにすることもできる。この場合、複数のシースヒータを配線するときに、熱板本体の裏面から外部に出たシースヒータそれぞれが、熱板本体の下側で交差したり、重なり合ったりしないように配置できるので、熱板の下側の上下方向のスペースを削減することができる。
また例えば、熱板は、複数の熱板本体を結合した構成とすることもできる。この場合、熱板本体ごとに収容溝等を加工することができる。また、収容溝にシースヒータを埋設する作業を容易に行うことができる。
また例えば、複数の熱板本体のうち、隣接する熱板本体同士は、表面側から熱板本体間に跨って設けられた結合部材を介して、表面側から固定部材で結合した構成とすることもできる。この場合、作業者は、結合部材を熱板本体間においた状態で、表面側から作業を行うことができるので、熱板を組み立てる作業の効率が向上する。
また例えば、熱板は、熱板本体にシースヒータを鋳込により埋設した構成とすることもできる。この場合、シースヒータの外周面が収容溝の内周面に面接触している熱板を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態に係るラミネート装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るラミネート装置100の全体の構成を示す図である。また、図2は、ラミネート装置100の全体の構成を示す斜視図である。ラミネート装置100は、上ケース110と、下ケース120と、被加工物10を搬送するための搬送ベルト130と、を有する。搬送ベルト130は、被加工物10を上ケース110と下ケース120との間に搬送する。ラミネート装置100には、ラミネート前の被加工物10をラミネート装置100に搬送するための搬入コンベア200が設けられている。また、ラミネート装置100には、ラミネート後の被加工物10をラミネート装置100から搬出するための搬出コンベア300が設けられている。搬入コンベア200と搬出コンベア300とは、連設されている。被加工物10は、搬入コンベア200から搬送ベルト130に受け渡され、搬送ベルト130から搬出コンベア300に受け渡される。
【0013】
図2に示すように、ラミネート装置100には、シリンダ及びピストンロッド等で構成される昇降装置150が設けられている。昇降装置150は、上ケース110を水平状態に維持したまま下ケース120に対して昇降させることができる。昇降装置150が上ケース110を下降させることで、上ケース110と下ケース120との内部空間を密閉させることができる。
【0014】
次に、ラミネート装置100でラミネートされる被加工物10について説明する。
図3は、被加工物10として結晶系セルを使用した太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。太陽電池モジュールは、図示のように、透明なカバーガラス11と裏面材12との間に、充填材13、14を介してストリング15を挟み込んだ構成を有する。裏面材12にはポリエチレン樹脂等の材料が使用される。充填材13、14にはEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が使用される。ストリング15は、電極16、17の間に結晶系セルとしての太陽電池セル18をリード線19を介して接続した構成である。
【0015】
また、被加工物10としては、上述した太陽電池モジュールだけではなく、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池モジュールを対象とすることもできる。この薄膜式太陽電池モジュールの代表的な構造例では、透明なカバーガラスに、予め、透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。このような薄膜式太陽電池モジュールは、カバーガラスを下向きに配置し、カバーガラス上の発電素子の上に充填材を被せる。更に、充填材の上に裏面材を被せた構造になっている。このような状態で真空加熱ラミネートすることにより薄膜式太陽電池モジュールの構成部材が接着される。すなわち、薄膜式太陽電池モジュールは、上述した太陽電池モジュールの結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけある。薄膜式太陽電池モジュールの基本的な封止構造は上述した太陽電池モジュールと同じである。
【0016】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100のラミネート部101の構成についてより具体的に説明する。図4は、ラミネート装置100において被加工物10をラミネートするラミネート部101の側断面図である。図5は、ラミネート加工時におけるラミネート部101の側断面図である。
【0017】
上ケース110には、下方向に開口された空間が形成されている。この空間には、空間を水平に仕切るようにダイヤフラム112が設けられている。ダイヤフラム112は、シリコーン系のゴム等の耐熱性のあるゴムにより成形されている。後述するように、ダイヤフラム112は、被加工物10を押圧する押圧部材として機能し、ラミネートを行う。上ケース110内には、ダイヤフラム112によって仕切られた空間(上チャンバ113)が形成される。
【0018】
また、上ケース110の上面には、上チャンバ113と連通する吸排気口114が設けられている。上チャンバ113では、吸排気口114を介して、上チャンバ113内を真空引きして真空状態にしたり、上チャンバ113内に大気を導入したりすることができる。
【0019】
下ケース120には、上方向に開口された空間(下チャンバ121)が形成されている。この空間には、熱板122(パネル状のヒータ)が設けられている。熱板122は、下ケース120の底面に立設された支持部材によって、水平状態を保つように支持されている。この場合に、熱板122は、その表面が下チャンバ121の開口面とほぼ同一高さになるように支持される。
【0020】
また、下ケース120の下面には、下チャンバ121と連通する吸排気口123が設けられている。下チャンバ121では、吸排気口123を介して、下チャンバ121内を真空引きして真空状態にしたり、下チャンバ121内に大気を導入したりすることができる。
【0021】
上ケース110と下ケース120との間であって、熱板122の上方には、搬送ベルト130が移動自在に設けられている。搬送ベルト130は、図1の搬入コンベア200からラミネート前の被加工物10を受け取ってラミネート部101の中央位置に搬送する。また、搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を図1の搬出コンベア300に受け渡す。
【0022】
また、上ケース110と下ケース120との間であって、搬送ベルト130の上方には、剥離シート140が設けられている。剥離シート140は、被加工物10の充填材13、14(図3参照)が溶融したときに、充填材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。
【0023】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100によるラミネート工程についてより具体的に説明する。まず、図4に示すように、搬送ベルト130は、被加工物10をラミネート部101の中央位置に搬送する。
【0024】
次に、昇降装置150は、上ケース110を下降させる。上ケース110を下降させることにより、図5に示すように、上ケース110と下ケース120との内部空間は、密閉される。すなわち、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保つことができる。
【0025】
次に、ラミネート装置100は、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内の真空引きを行う。同様に、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内の真空引きを行う。下チャンバ121の真空引きにより、被加工物10に含まれている気泡は、被加工物10外に送出される。この状態で、被加工物10は熱板122によって加熱され、その内部に含まれる充填材13、14が溶融する。
【0026】
次に、ラミネート装置100は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じることで、ダイヤフラム112が膨張する。従って、ダイヤフラム112は、図5に示すように下方に押し出される。被加工物10は、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板122とで挟圧され、溶融した充填材13、14により各構成部材が接着される。
【0027】
このとき、充填材13、14がカバーガラス11と裏面材12との間からはみ出てしまうことがある。このとき、はみ出した充填材13、14は剥離シート140に付着する。このように剥離シート140を介在させることにより、はみ出した充填材13、14がダイヤフラム112に付着するのを防止する。従って、剥離シート140は、ダイヤフラム112から次にラミネートする被加工物10に充填材13、14が付着するのを防止する。また、はみ出した充填材13、14が、搬送ベルト130上に付着した場合は、付着した充填材13、14は、図示しないクリーニング機構により除去される。
【0028】
このようにラミネート工程が終了した後、ラミネート装置100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置150は、上ケース110を上昇させる。上ケース110を上昇させることにより、図4に示すように、搬送ベルト130を移動させることができるようになる。搬送ベルト130は、ラミネート後の被加工物10を搬出コンベア300に受け渡す。
【0029】
次に、本実施形態に係るラミネート装置100の熱板122について詳細に説明する。図6は、熱板122及びその周辺の構成を示す斜視図である。熱板122は、複数の熱板本体61と、複数のシースヒータ62とを有している。熱板122の大きさは、下ケース120に収まるように形成されている。本実施形態の熱板122は、近年大型化している被加工物のサイズに対応した大きさで形成され、具体的には、熱板122の寸法は、大きくなると幅約4000mm(図6に示すW参照)、奥行き約2000mm(図6に示すDE参照)である。
【0030】
熱板本体61は、アルミニウム又はアルミニウム合金によりパネル状に形成されている。本実施形態の熱板122は、幅方向に4つの熱板本体61を並べて構成されている。隣接する熱板本体61同士は、これら熱板本体61の裏面側において、隣接する熱板本体61間に跨って設けられている結合部材67を介して表面側よりボルト等の固定部材によって結合されている。このように分割して構成することで、後述する収容溝を加工する場合において、熱板本体61ごとに加工することができる。また、収容溝に後述するシースヒータを埋設する場合において、熱板本体61ごとにシースヒータを埋設すればよい。従って、例えばシースヒータを熱板全体に埋設させるような大型なプレス機を使用しなくてもよく、加工費用を削減することができる。更には、熱板122の輸送や組み立て作業が容易になる。また、熱板本体61を更に結合することで、より大型の被加工物に対応した熱板を容易に構成することができる。なお、熱板122は、複数の熱板本体61によって構成されている場合に限られず、1枚の熱板本体61によって構成されていてもよい。
【0031】
各熱板本体61の裏面には、シースヒータ62を埋設するための収容溝63が形成されている。収容溝63は、熱板本体61の表面での温度分布を均一にするために、裏面の全面に亘るように蛇行するように形成されている。
【0032】
収容溝63にはシースヒータ62が埋設される。シースヒータ62は、後述する図8(b)に示すように、中心がコイル状に加工されたニクロム線62aである。また、シースヒータ62は、ニクロム線62aの周りを酸化マグネシウム等の粉末を充填した絶縁材62bを有している。更に、シースヒータ62は、絶縁材62bの周りをシース62c(外周をなす管部材)の材質として、アルミニウム又はアルミニウム合金が覆っている。このように熱板本体61とシースヒータ62のシースとは、同じ材質で形成されている。従って、熱板122では、シースヒータ62から熱板本体61への熱伝達の効率を向上させることができる。各熱板本体61の収容溝63に埋設されたシースヒータ62は、図6に示すように、ラミネート装置100内又は外部に設置されている温度コントローラ64に接続されている。この温度コントローラ64は、熱板122の温度が目標温度になるように温度制御する。
【0033】
図7は、熱板122の平面図である。なお、図7では、各熱板本体61に埋設されるシースヒータ62を破線で示している。シースヒータ62は、独立して温度制御するために、1〜12チャンネル(ch)に分けられている。具体的に、各熱板本体61には4本のシースヒータ62が埋設されている。各熱板本体61は、両端部のシースヒータ62がそれぞれ1つのチャンネルとして温度制御される。また、各熱板本体61は、中央の2つのシースヒータ62が1つのチャンネルとして温度制御される。収容溝63に埋設されたシースヒータ62は、図7の矢印の地点において熱板本体61の裏面から外部へ出され、熱板122の下側を通過して温度コントローラ64に接続される。なお、シースヒータの配置や温度制御のチャンネル(ch)設定は、図7に限定されるものではない。
【0034】
シースヒータ62は、チャンネルごとに、その曲げ形状が異なっている。図7に示す通り5チャンネルのシースヒータ62は、2点鎖線L1に対して略左右対称となるように蛇行する。また、図7に示す通り8チャンネルのシースヒータ62は、2点鎖線L2に対して略左右対称となるように蛇行する。それに対して、図7に示す1〜4チャンネル、6チャンネル、7チャンネル、9〜12チャンネルのシースヒータ62は、左右非対称となるように蛇行する。また、1〜3チャンネルのシースヒータ62と10〜12チャンネルのシースヒータ62とは2点鎖線L3に対して略左右対称となっている。また、4〜6チャンネルのシースヒータ62と7〜9チャンネルのシースヒータ62とは2点鎖線L3に対して略左右対称となっている。これは特に熱板122全体の温度分布を均一にするために構成されている。なお、これらの形状は、熱板の温度分布を一様にするように適宜設定することができる。
【0035】
また、チャンネルごとに蛇行の形態を異ならせているので、熱板本体61の裏面からシースヒータ62が外部に出る位置を、熱板122の幅方向にずらすことができる。具体的に、10〜12チャンネルが埋設されている熱板本体61を例にして説明する。図16は、10〜12チャンネルが埋設されている熱板本体61を裏側からみた図である。この熱板本体61には、同一奥行き方向にシースヒータ62A、62B、62C、62Dが埋設されている。ここでは、熱板本体61の裏面から外部に出るシースヒータを一点鎖線で示している。図16に示すように、各シースヒータ62は、11チャンネルを構成するシースヒータ62Bとシースヒータ62Cとの組み合わせを除き、互いに熱板本体61の裏面から外部に出るシースヒータの位置が幅方向にずれている。すなわち、任意に2つのシースヒータ62を選択する複数の組合せのうち、少なくとも1つの組み合せでは、2つのシースヒータ62は、収容溝63から外部に出る位置が熱板本体61の幅方向でずれている。
【0036】
これにより、各熱板本体61の裏面から外部に出た複数のシースヒータ62は、熱板本体61の下側で互いに交差したり、互いに重なり合うことが少ないように配置することができる。すなわち、シースヒータ62を外部に出す位置が、熱板122の幅方向で同じであれば、同じ経路で温度コントローラ64に配線されるために、シースヒータ62同士が交差したり重なり合ったりしてしまい、それだけ熱板本体61の下側に上下方向のスペースが必要になる。本実施形態のように、シースヒータ62を外部に出す位置を、熱板122の幅方向にずらすことで互いに交差したり、重なり合うことが少ないので、熱板122の下側のスペースを有効に利用することができる。なお、図16では、11チャンネルを構成するシースヒータ62Bとシースヒータ62Cとの熱板本体61の裏面から外部に出る位置を幅方向に対して同一にしているが、両者の間でも異なるように配置することで、更に、熱板122の下側のスペースを有効に利用することができる。
【0037】
また、図7に示すように、各チャンネルの中央部に、熱板122の温度を測定するための熱電対66が埋設されている。熱電対66は、熱板本体61の表面から適宜な深さ位置に埋め込まれており、熱板122の裏面から温度コントローラ64に接続される。熱電対66によって測定された熱板122の温度は、温度コントローラ64にフィードバックされる。温度コントローラ64は、熱板122の温度が目標温度になるようにシースヒータ62の発熱を制御する。
【0038】
次に、熱板本体61の収容溝63とシースヒータ62との関係について詳細に説明する。図8は、第1の実施形態に係る熱板の構成を説明するための図である。図8(a)は、図7におけるA−A断面を矢印方向からみた断面図であり、収容溝63にシースヒータ62が埋設された状態を示している。図8(a)に示すように、シースヒータ62の外周面は、収容溝63の内周面と隙間ができないように面接触するように圧接されている。
【0039】
図8(b)は、収容溝63にシースヒータ62を埋設させる前の状態を示す図である。図8(b)に示すように、収容溝63は、熱板本体61の裏面65に凹状に加工された凹溝71の底面に形成されている。収容溝63の開口縁の両側には、突出部72が設けられている。図8(b)に示す収容溝63を形成する場合、熱板本体61の裏面から切削加工により行う。このとき、凹溝71及び突出部72も同様に切削加工する。
次に、収容溝63にシースヒータ62を埋設する場合、凹溝71の形状に合った、プレス金型を用いてプレス機によりシースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に圧接させる。
【0040】
図8(c)は、収容溝63にシースヒータ62を埋設した後の状態を示す図である。プレス機によって、シースヒータ62は収容溝63の内周面に圧接させられると、シースヒータ62の外周面(シース)が収容溝63の内周面に倣うように塑性変形する。すると、シースヒータ62の外周面と収容溝63の内周面との間には、隙間ができないように密着して面接触した状態になる。また、プレス機は、シースヒータ62をプレスすると同時に、収容溝63に設けられた突出部72を、収容溝63の開口を塞ぐように収容溝63の内側方向に塑性変形させて、かしめ部73を形成する。かしめ部73には、凹溝71の底面から下側に盛り上がった盛上部74(楕円で示される部分)が形成される。このように、かしめを行うことにより、シースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に圧接した状態を維持することができる。なお、収容溝63が形成されている熱板本体61の裏面65は、熱板122を下チャンバ121へ取り付けるときの取付け面となる。収容溝63を凹溝71の底面に形成することで、突出部72をかしめたときのかしめ部73は、凹溝71内に位置したままである。従って、かしめ部73は、熱板本体61の裏面65から突出することがない。
【0041】
ここで、プレス金型を用いてシースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に圧接させるとき、シースヒータ62の曲げ形状と略同一形状のプレス金型を用いて、シースヒータ62の外周面を一度に収容溝63の内周面に圧接させる。このように、プレスすることで、シースヒータ62の外周面と収容溝63の内周面との間に隙間をなくすことができる。これにより、シースヒータから熱板本体への熱伝達が良好になり、熱板の温度制御性が向上する。また、シースヒータ62を発熱させたときに熱板122の表面の温度分布を均一にすることができる。従って、熱板122の温度が目標温度を大きく超えてオーバーシュートしてしまう現象を防止することができる。
かしめ状態の均一性を保ち、熱板本体61の歪み撓み変形をなくすためには、上述したように一度で全面をかしめるのが望ましい。しかしながら、熱板122が大型化していることから熱板本体61も大きくなるため、プレス設備の能力の関係から1枚の熱板本体61を数回に分割してかしめる方法を用いてもよい。なお、分割してかしめる方法を用いる場合、歪み撓み変形を除去する工程が必要になる。
【0042】
次に、本実施形態の熱板122によって被加工物10をラミネートする場合について説明する。なお、本実施形態に係る熱板122上に被加工物10を配置していない状態でラミネート工程を行ったときに測定した熱板122の温度遷移は、図9に示す従来の熱板(特性線(2))と同様のものとなる。
【0043】
図9において、特性線(3)は、本実施形態に係る熱板122上に被加工物10を配置した状態でラミネート工程を行ったときに測定した熱板122の温度遷移である。従来の熱板(特性線(1))と同様に、被加工物10を熱板122上に配置することにより、熱板122の熱が被加工物10に奪われ、熱板122の温度は急激に低下する。この温度低下を補うために、熱板122の温度を上昇させる温度制御が行われる。特性線(3)に示すように熱板122の温度は、目標温度に向かって急激に上昇する。従って、これによって加熱作業効率が向上する。そして、目標温度に達したとき、熱板122の温度と、シースヒータ62との温度に大きな誤差が生じていない。これは、シースヒータ62の外周面が、収容溝63の内周面に面接触するように圧接されているので、シースヒータ62と収容溝63との間には隙間が発生していないためである。すなわち、下チャンバ121が真空状態にあっても、シースヒータ62の熱が、直に熱板本体61に伝達されるため、シースヒータ62の温度が熱板122にすぐに反映される。このように、温度コントローラ64はシースヒータ62の温度を上昇させたり、自然冷却させたりすることで、熱板122の温度を目標温度に容易かつ確実に制御することができる。
【0044】
更に、被加工物の加熱時間(例えば、5分間)が終了し、下チャンバ121の真空状態が解除されたとき、従来の熱板のように熱板の温度以上に過度にシースヒータ62の温度が上昇していない。すなわち、熱板122の温度が目標温度を大きく超えてオーバーシュートしてしまうということがない。このように、本実施形態の熱板122によれば、目標温度を確実に保持することができる。また、従来の熱板(特性線(1))の場合、ラミネート工程が終了した後、オーバーシュートによる熱板の過度の温度上昇が生じていたため、次の被加工物10のラミネートをする場合において、熱板の温度下降を待つ必要があった。しかし、本実施形態の熱板122によれば、過度の温度上昇が生じていないため、すぐに次の被加工物10のラミネートを行うことができ、作業効率が向上する。
【0045】
本実施形態によれば、ラミネート工程の際に熱板122の温度を目標温度に容易かつ確実に制御することができる。従って、ラミネート工程における太陽電池の構成部材の接着不良等を防止して、ラミネート品質を向上させることができる。また、ラミネートの作業効率を向上させることができる。
なお、本実施形態によれば、プレス機によりシースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に圧接させるとき、図8の凹溝71の形状に合った、専用のプレス金型を用いる必要がある。従って、熱板の機種ごとに専用のプレス金型費等が必要になり、イニシャルコストがかかってしまう。しかしながら、熱板本体61に収容溝63を形成する場合、基準面を切削するような後述する図11の第3の実施形態に比べて切削面積は少なくてよい。すなわち、本実施形態によれば、熱板本体の加工費等を少なくすることができるので、ランニングコストを削減することができる。このように、本実施形態は少機種大量生産に適した実施形態である。
【0046】
図10は、第2の実施形態に係る熱板の構成を示す図である。本実施形態では、熱板本体81の裏面に形成された収容溝83は、熱板本体81の表面に向かって先細りの略三角形とする楔形状に形成されている。この場合に、楔形状の先端は略60度の角度になっている。一方で、収容溝83に埋設されるシースヒータ82は、断面を略三角形状とする楔形状に形成されている。プレス機により、シースヒータ82の外周面を収容溝83の内周面に圧接させる。すると、シースヒータ82の外周面は、収容溝83の内周面との間で隙間なく面接触するように塑性変形する。このとき、図10に示すように、かしめ部73には、凹溝71の底面から下側に盛り上がった盛上部74が形成される。
本実施形態でも、第1の実施形態と同様、収容溝83の開口縁に設けられた突出部をかしめて、かしめ部73を形成することで、シースヒータ82の外周面と収容溝83の内周面との間の面接触を維持することができる。また、シースヒータ82が収容溝83から脱落するのを防止することができる。このように、本実施形態では、シースヒータ82の断面の形状を略三角形状にし、収容溝83の断面を略三角形状に構成した。従って、シースヒータ82の三角形状の平坦面と収容溝83の三角形状の平坦面とを面接触させ易くすることができる。
【0047】
図11は、第3の実施形態に係る熱板の構成を示す図である。これまでの実施形態は、図8及び図10に示すように熱板本体の裏面65に凹溝71を加工し、この凹溝71に収容溝63、83を形成する場合について説明した。本実施形態では、凹溝を加工することなく、熱板本体85の裏面65より張出した平坦部76を設け、その平坦部76に収容溝63を形成したものである。
【0048】
図11に示すように、収容溝63は、熱板本体85の裏面65より張出し凸状に加工して設けられた平坦部76に形成されている。収容溝63の開口縁の両側には、図8(b)に示す実施形態と同様に、突出部が設けられている。図11に示す熱板本体85の裏面65は、熱板122を下チャンバ121に取り付けるときの基準面75となる。収容溝63を形成する場合、熱板本体85の裏面から切削加工により行う。このとき、基準面65、平坦部76及び突出部も同様に切削加工する。
次に、収容溝63にシースヒータ62を埋設する場合、プレス機を用いてシースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に圧接させる。また、プレス機は、同時に収容溝63の開口縁に設けられた突出部を収容溝63の開口を塞ぐように収容溝63の内側方向にかしめて、かしめ部73を形成する。この結果、図11に示すように、熱板84は、熱板本体85の裏面65より張出した平坦部76に盛上部74を有する形状となる。
【0049】
本実施形態によれば、基準面75、収容溝63及び突出部を形成するように切削加工を行うために、熱板本体85の裏面全体に亘って切削加工を行う必要がある。従って、熱板本体85の材料費、及び加工費がかかってしまう。しかし、本実施形態では、熱板本体85の裏面65の平坦部76に突出部を設けるので、凹溝等によってかしめる空間が制限されることがない。従って、かしめ加工用のプレス金型を例えば平面板にする等、単純な形状にすることができ、プレス金型の金型費用を大幅に削減することができる。すなわち、本実施形態は、熱板の機種ごとの専用のプレス金型費が不要なので、イニシャルコストを削減することができる。このように、本実施形態は、多機種少量生産に適した実施形態である。
【0050】
図12は、第4の実施形態に係る熱板の構成を説明するための図である。図12(a)は、図7におけるA−A断面を矢印方向からみた断面図であり、収容溝63にシースヒータ62が埋設された状態を示している。図12(a)に示すように、シースヒータ62の外周面は、収容溝63の内周面と隙間ができないように面接触するように圧接されている。
【0051】
図12(b)は、収容溝63にシースヒータ62を埋設させる前の状態を示す図である。図12(b)に示すように、収容溝63は、熱板本体91の裏面92に直接、凹状に形成されている。また、収容溝63の開口縁の両側は、開口縁の面と熱板本体91の裏面とが同一面で形成されている。すなわち、本実施形態は、第1の実施形態から第3の実施形態で説明した突出部が形成されていない。ここで、図12(b)に示すシースヒータ62の直径dは、収容溝63の溝底の内径D(図12(b)に示す破線参照)より小さく形成されている。従って、シースヒータ62を収容溝63に簡単に収容することができる。シースヒータ62を収容溝63に収容した状態から、プレス金型を用いてプレス機によりシースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に圧接させる。
【0052】
図12(c)は、収容溝63にシースヒータ62を埋設した後の状態を示す図である。プレス機によって、シースヒータ62は収容溝63の内周面に圧接させられると、シースヒータ62の外周面(シース)が収容溝63の内周面に倣うように塑性変形する。すると、シースヒータ62の外周面と収容溝63の内周面との間には、隙間ができないように密着して面接触した状態になる。また、プレス機は、シースヒータ62をプレスすると同時に、収容溝63の開口縁そのものを、収容溝63の開口を塞ぐように収容溝63の内側方向に塑性変形させて、かしめ部73を形成する。図12(c)には、シースヒータ62及び開口縁部を塑性変形させるプレス金型93の形状が示されている。プレス金型93は、離間して配置された両側の突起94a、94bから中央に向かって傾斜する傾斜部95a、95bを有している。従って、プレス金型93が熱板本体91の裏面92をプレスしたときに、傾斜部95a、95bが収容溝63の開口縁を収容溝63の内側方向に向かうように変形させる。また、プレス金型93には、シースヒータ62と熱板本体91の開口縁部との境界に形成される微小な窪みに対応する箇所に、小さな突起97a、97bを有している。
【0053】
ここで、プレス金型93によりシースヒータ62及び開口縁部を塑性変形させるときに、図12(c)に示すように凹溝96も同時に形成する。従って、かしめ部73は、熱板本体91の裏面92から突出することがない。
なお、本実施形態によれば、開口縁部を塑性変形させると共に凹溝96を形成するような、専用のプレス金型を用いる必要があり、イニシャルコストがかかってしまう。しかしながら、熱板本体91に収容溝63を形成する場合、熱板本体91に収容溝63を加工するだけでよい。従って、本実施形態によれば、突出部や凹溝等の切削加工が必要なく、ランニングコストを削減することができる。
【0054】
図13は、第5の実施形態に係る熱板本体87にシースヒータ62を埋設させる工程を説明するための図である。上述した第1の実施形態から第4の実施形態では、シースヒータ62を収容溝63の内周面に圧接させ、シースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に倣うように塑性変形させる場合について説明した。本実施形態では収容溝63の内周面をシースヒータ62の外周面に倣うように塑性変形させる。例えば、図13に示すように熱板本体87の収容溝63の開口縁の両側に、外側面に傾斜部を有する突出部77を設ける。そして、突出部77の傾斜部の角度より、緩やかな角度の傾斜部を内面に有するかしめ加工用のプレス金型78を用いる。プレス機は、プレス金型78により収容溝63にシースヒータ62が収容された状態で、熱板本体87をプレスする。すると、突出部77及びプレス金型78の傾斜部の作用により、収容溝63の突出部77(内周面)がシースヒータ62の外周面に沿うように塑性変形する。このように本実施形態によれば、収容溝63を塑性変形させることで、シースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に面接触させることができる。
【0055】
図14は、第6の実施形態に係る熱板の構成を示す図である。上述した第1の実施形態から第5の実施形態ではプレス機を用いてシースヒータ62の外周面を収容溝63の内周面に面接触させる場合について説明した。本実施形態では、プレス機によって加工するのではなく、シースヒータ62をアルミニウムの鋳物等により鋳込みすることにより熱板本体89に埋設する。具体的には、シースヒータ62を鋳型の所定位置に配置させた状態で、鋳型に溶融させたアルミニウムを流し込むことにより、シースヒータ62の外周全体に熱板本体を構成する鋳物が鋳込まれる。なお、シースヒータ62のシース62cは、鋳型に流し込まれる鋳物の融点より高い材質で構成されている。ここでは、シース62cの材質は、例えば鉄パイプ、ステンレスパイプ、インコロイやインコネルを用いたパイプ等が好ましい。
【0056】
図14は、上述した鋳込みの工程により形成された熱板88の構成を示す図である。図14に示すように、シースヒータ62の外周全面は熱板本体89に面接触するように囲まれている。従って、シースヒータ62の熱は熱板本体89に効率よく伝達される。なお、鋳物材を鋳型に鋳込む方法は、鋳物材の中にガスが含まれているため鋳物が凝固する際に気孔が形成されてしまう。従って、シースヒータ62と熱板本体89との接触は、上述したプレス機によってかしめ加工する熱板と比較すると劣ってしまう。しかしながら、従来技術である図17に記載した方法と比較すると、ラミネート加工時に熱板88が真空になっても熱伝達は十分になされ、熱板88の温度制御性は十分確保される。
【0057】
図15は、第7の実施形態に係る熱板及びその周辺の構成を示す斜視図である。図15は、熱板98及びその周辺の構成を示す斜視図である。第1の実施形態において説明した熱板122は、隣接する熱板本体61同士を、これら熱板本体61の裏面側において、隣接する熱板本体61間に跨って設けられている結合部材67を介して表面側からボルト等の固定部材によって結合していた。
本実施形態の熱板98は、隣接する熱板本体99同士を、これら熱板本体99の表面側において、隣接する熱板本体99間に跨って設けられている結合部材67を介して表面側からボルト等の固定部材によって熱板98の表面側から結合する。このように構成することで、作業者は、結合部材67を熱板本体99間に置いた状態で、表面側から作業を行うことができるので、熱板98を組み立てる作業の効率が向上する。
【0058】
上述したように本発明の熱板をラミネート工程において真空状態となるようなラミネート装置に使用することにより、熱板の温度制御性を格段に向上させることができる。すなわち、本発明の熱板は、ラミネート工程において真空状態となるようなラミネート装置に使用した場合、シースヒータの熱を熱板本体に効率よく伝達することができる。本発明の熱板は、ラミネート工程において真空状態となるようなラミネート装置の使用に特に適し、そのようなラミネート装置に使用されることで顕著な効果を奏することができる。
【0059】
また、本発明の熱板は、熱板の温度分布を従来技術である図17に記載した方法と比較して、格段に向上させることができる。従来技術である図17に記載した方法は、上板161及び下板162の2枚の板に溝加工を行い、その溝にシースヒータ163を埋設していた。複雑に曲がった形状のシースヒータ163を埋設することは容易ではない。すなわち、上下2枚の溝加工の精度を向上させる必要があり、更に、シースヒータ163の曲げ加工精度を向上させる必要があるからである。従って、従来技術では、上下2枚の板に直線形状の溝加工をして直線形状のシースヒータ163を埋設していた。
【0060】
一方、本発明の熱板では、一枚の熱板本体にシースヒータの収容溝を加工すればよいので、その収容溝は、図7に示すように複雑な曲線形状も容易に実現できる。従って、シースヒータの曲げ形状を適宜設定すれば熱板の温度分布を一様にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ラミネート装置の全体の構成を示す図である。
【図2】ラミネート装置の全体の構成を示す斜視図である。
【図3】被加工物としての太陽電池モジュールの構成を示す断面図である。
【図4】ラミネート装置のラミネート部の側断面図である。
【図5】ラミネート装置のラミネート加工時におけるラミネート部の側断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る熱板及びその周辺の構成を示す斜視図である。
【図7】第1の実施形態に係る熱板の平面図である。
【図8】第1の実施形態に係る熱板の構成を説明するための図である。
【図9】熱板の温度を測定した温度遷移を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る熱板の構成を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る熱板の構成を示す図である。
【図12】第4の実施形態に係る熱板の構成を説明するための図である。
【図13】第5の実施形態に係る熱板本体にシースヒータを埋設させる工程を説明するための図である。
【図14】第6の実施形態に係る熱板の構成を示す図である。
【図15】第7の実施形態に係る熱板及びその周辺の構成を示す斜視図である。
【図16】第1の実施形態に係る熱板一部の裏面を示す図である。
【図17】検証により判明した従来のラミネート装置の熱板の構成及び熱板に伝熱性シリコーンシートを介在させた構成を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 被加工物
100 ラミネート装置
101 ラミネート部
110 上ケース
112 ダイヤフラム
113 上チャンバ
120 下ケース
121 下チャンバ
122 熱板
61 熱板本体
62 シースヒータ
63 収容溝
65 裏面
67 結合部材
71 凹溝
72 突出部
73 かしめ部
74 盛上部
75 基準面
76 平坦部
77 突出部
78 プレス型
80 熱板
81 熱板本体
82 シースヒータ
83 収容溝
84 熱板
85 熱板本体
86 熱板
87 熱板本体
88 熱板
89 熱板本体
91 熱板本体
92 裏面
98 熱板
99 熱板本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置であって、
前記熱板は、裏面に収容溝が設けられた熱板本体と、
前記収容溝に埋設されたシースヒータとを備え、
前記収容溝及び前記シースヒータの少なくともいずれか一方を変形させて、前記シースヒータの外周面が前記収容溝の内周面に面接触するようにしたことを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
前記収容溝に前記シースヒータが埋設された状態で、前記収容溝の開口縁に設けられた突出部を前記収容溝の内側方向にかしめていることを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項3】
前記収容溝は、前記熱板本体の裏面に設けられた凹溝の底面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラミネート装置。
【請求項4】
前記収容溝の開口縁に設けられた突出部を前記収容溝の内側方向にかしめている部分が、前記熱板本体の裏面より張出していることを特徴とする請求項2に記載のラミネート装置。
【請求項5】
前記収容溝に前記シースヒータが埋設された状態で、前記収容溝の開口縁そのものを前記収容溝の内側方向にかしめていることを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項6】
前記収容溝の開口縁そのものをかしめる前の状態において、前記収容溝は、前記熱板本体の裏面に直接、設けられていることを特徴とする請求項5に記載のラミネート装置。
【請求項7】
前記熱板本体の材質と、前記シースヒータの外周部材の材質とが同一であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のラミネート装置。
【請求項8】
前記熱板本体には複数のシースヒータが埋設されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のラミネート装置。
【請求項9】
前記熱板本体の裏面には、面方向に沿って異なって蛇行する収容溝が複数、設けられ、
前記複数の収容溝それぞれに埋設されるシースヒータを複数、備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のラミネート装置。
【請求項10】
前記複数のシースヒータのうち、前記熱板本体の同一奥行き方向に埋設されている複数のシースヒータは、前記収容溝から外部に出る位置が前記熱板本体の幅方向にずれていることを特徴とする請求項9に記載のラミネート装置。
【請求項11】
前記熱板は、複数の熱板本体を結合して構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のラミネート装置。
【請求項12】
前記複数の熱板本体のうち、隣接する熱板本体同士は、表面側から熱板本体間に跨って設けられた結合部材を介して、表面側から固定部材で結合されていることを特徴とする請求項11に記載のラミネート装置。
【請求項13】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記熱板と前記押圧部材とで挟圧してラミネートするラミネート装置であって、
前記熱板は、熱板本体と、
前記熱板本体に埋め込まれたシースヒータとを備え、
前記シースヒータの外周全面が前記熱板本体と接触するようにしたことを特徴とするラミネート装置。
【請求項14】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、下チャンバを真空とし上チャンバに大気を導入し前記押圧部材との間で挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板であって、
裏面に収容溝が設けられた熱板本体と、
前記収容溝に埋設されたシースヒータとを備え、
前記収容溝及び前記シースヒータの少なくともいずれか一方を変形させて、前記シースヒータの外周面が前記収容溝の内周面に面接触するようにしたことを特徴とするラミネート装置用の熱板。
【請求項15】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、下チャンバを真空とし上チャンバに大気を導入し前記押圧部材との間で挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板であって、
前記熱板は、
熱板本体に、
シースヒータの外周全面が前記熱板本体と接触するように埋め込まれたことを特徴とするラミネート装置用の熱板。
【請求項16】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバとを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、前記下チャンバを真空とし前記上チャンバに大気を導入し前記押圧部材との間で挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板の製造方法であって、
熱板本体の裏面に設けられた収容溝にシースヒータを埋設する埋設工程を有し、
前記埋設工程で、プレス機によって、前記シースヒータの外周面が前記収容溝の内周面に面接触するように、前記収容溝及び前記シースヒータの少なくともいずれか一方を変形させると共に、前記収容溝の開口縁に設けられた突出部又は開口縁そのものを前記収容溝の内側方向にかしめるようにしたことを特徴とする製造方法。
【請求項17】
押圧部材により仕切られた上チャンバと下チャンバを有し、その下チャンバに設けられた熱板上に被加工物を配置し、前記熱板により加熱した前記被加工物を、下チャンバを真空とし上チャンバに大気を導入し前記押圧部材との間で挟圧してラミネートするラミネート装置用の熱板の製造方法であって、
シースヒータの外周全体が熱板本体と接触するように、前記熱板本体に前記シースヒータを鋳込により埋設することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−78547(P2009−78547A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208054(P2008−208054)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【出願人】(390008497)日本電熱株式会社 (32)
【Fターム(参考)】