説明

ラミネート装置

【課題】支持部材のたわみを抑制すると共に、装置コストの増加を防止するラミネート装置を提供する。
【解決手段】ラミネート装置は、ダイアフラム31が取り付けられた上ケース10と、上面が開放された内部空間を有する下ケース12と、複数の孔が設けられ、被ラミネート体を加熱するヒータ板33と、前記複数の孔を挿通して設けられ、上端部分で前記被ラミネート体を保持する保持部34と、保持部34の下端部分に連結された支持部材35と、前記支持部材を昇降させる昇降部37、38と、前記支持部材の下面と前記下ケースの内壁底面との間に設けられたバネ36と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールのラミネート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルを製造するためのラミネート装置として、下方に向かって膨張自在なダイアフラムを有する上チャンバと、被ラミネート体を保持する保持機構及びヒータ盤を有する下チャンバとを備えた構成が知られている(例えば特許文献1参照)。ヒータ盤上方に被ラミネート体を載置した状態で上チャンバと下チャンバを密閉して真空引き(減圧)した後、被ラミネート体を加熱して充填剤としての樹脂を溶融し、上チャンバに大気を導入して被ラミネート体をヒータ盤の上面とダイアフラムとの間で挟圧することで、太陽電池モジュールのラミネートが行われる。
【0003】
被ラミネート体を保持する保持機構は、支持部材に支持されている。この支持部材は、両端部がシリンダに連結されており、上下に昇降することができる。支持部材の昇降に伴い、保持機構も上下に昇降し、被ラミネート体とヒータ盤との間の距離を調節することができる。
【0004】
従来のラミネート装置では、被ラミネート体のサイズが大きくなり重量が重くなると、支持部材も大型化し、重量が重くなる。大型の支持部材は、シリンダに連結されていない領域(例えば中央部分)がたわみやすい。支持部材がたわむと、たわんだ部分に連結されている保持機構の位置が下がり、被ラミネート体がヒータ盤に接触していた。これにより、被ラミネート体内部の空気が十分除去される前に充填材が溶融することになり、被ラミネート体内部に気泡が残るという問題があった。この気泡は、太陽電池パネルの使用時において、起電力や外気温等による温度上昇の影響で膨張し、太陽電池パネルの劣化や寿命の短命化といった問題を引き起こす。
【0005】
シリンダを多数設けることで支持部材のたわみを防止することが考えられるが、シリンダの取り付けスペースが大きくなり、装置コストが増加するという問題が生じていた。また、支持部材の重量が重くなると、シリンダ間でたわみが発生し得るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3017231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、支持部材のたわみを抑制すると共に、装置コストの増加を防止するラミネート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるラミネート装置は、下方に向かって膨張自在なダイアフラムが取り付けられた上ケースと、上面が開放された内部空間を有する下ケースと、を有し、前記上ケースと前記下ケースを用いて内部に前記ダイアフラムによって仕切られた上下のチャンバを形成し、被ラミネート体を加熱し、前記ダイアフラムによって前記被ラミネート体を狭圧することによりラミネート加工を行うラミネート装置であって、複数の孔が設けられ、前記被ラミネート体を加熱するヒータ板と、前記複数の孔を挿通して設けられ、上端部分で前記被ラミネート体を保持する保持部と、前記保持部の下端部分に連結された支持部材と、前記支持部材を昇降させる昇降部と、前記支持部材の下面と前記下ケースの内壁底面との間に設けられたバネと、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持部材のたわみを抑制すると共に、装置コストの増加を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るラミネート装置の平面図である。
【図2】同実施形態に係るラミネート装置の側面図である。
【図3】ラミネート部の概略構成図である。
【図4】支持部材の上昇位置と下降位置を説明する図である。
【図5】ラミネート部の動作を説明する図である。
【図6】ラミネート部の動作を説明する図である。
【図7】比較例によるラミネート部の概略構成図である。
【図8】シリンダ及びスプリングの配置例を示す図である。
【図9】変形例によるラミネート部の概略構成図である。
【図10】変形例によるラミネート部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1及び図2に本発明の実施形態に係るラミネート装置の概略構成を示す。図1は平面図であり、図2は側面図である。ラミネート装置1は、ラミネート部2、供給コンベア3、及び搬出コンベア4を備える。
【0013】
ラミネート部2は、被ラミネート体をラミネートすることができる。本実施形態では、被ラミネート体を太陽電池モジュールMとして説明を行う。ラミネート部2は、太陽電池モジュールMを載せて搬入、搬出を行う搬送シート5を有する。搬送シート5は、駆動プーリP1、従動プーリP2〜P4、及び駆動プーリP1と従動プーリP2〜P4との間に巻回されたチェーン51により、循環するように移動する。搬送シート5は例えばフッ素樹脂によってコーティングされた耐熱ガラスクロスシートを用いることができる。
【0014】
駆動プーリP1を構成するプーリ対の間には搬送ロール52が設けられている。従動プーリP2〜P4を各々構成する各プーリの対の間には搬送ロール53が設けられている。
【0015】
また、ラミネート部2は、上ケース10及び下ケース12を有する。下ケース12は、上面が開放された内部空間を有し、基台16の上方に固定支持されている。基台16の正面側と背面側(図2における手前側と後側)には支柱17に沿って移動自在なブラケット21が設けられている。上ケース10の正面側及び背面側は、それぞれブラケット21に固定されている。
【0016】
支柱17の側方には、油圧式のシリンダ22が設けられており、シリンダ22のピストンロッド23の先端が、上ケース10に固定されたブラケット21下面に連結されている。シリンダ22の稼働によりピストンロッド23が伸長又は短縮する。これにより、上ケース10は支柱17に沿って、下ケース12に対して平行な姿勢を保ちながら昇降できる。上ケース10が下降し、下ケース12と密着することで、内部が密閉状態となる。
【0017】
供給コンベア3は、ラミネート処理を行う太陽電池モジュールMをラミネート部2に向かって搬送する。搬出コンベア4は、ラミネート部2によりラミネート処理された太陽電池モジュールMを搬出する。
【0018】
図3に上ケース10及び下ケース12の概略構成を示す。ここでは簡単に説明するため、搬送シート5を図示していない。上ケース10には内部空間の下面を水平に仕切るようにしてダイアフラム31が装着されており、このダイアフラム31と上ケース10の内壁面で囲まれた空間が上チャンバ13を構成する。ダイアフラム31はシリコン系材料やブチル系材料を用いることができる。
【0019】
また、上ケース10の側面には上チャンバ13に連通するようにして吸排気口32が設けられている。この吸排気口32を介して上チャンバ13内を真空引きしたり、上チャンバ13内に大気を導入したりすることができる。
【0020】
下ケース12には、ヒータ板33が設けられている。ヒータ板33は例えばアルミ製の金属板の内部にヒータを設けたものである。ヒータ板33には複数の孔が設けられており、この孔を挿通するように保持部34が設けられている。保持部34は、その上端面において太陽電池モジュールMを保持することができる。保持部34は、例えば円柱状の金属である。
【0021】
保持部34の下端は支持部材35に連結されている。支持部材35は例えば厚さ25mmのアルミ板である。支持部材35の(図中左右方向)両端部の下面はスプリング(バネ)36に連結されている。スプリング36は下ケース12の内壁底面と支持部材35下面との間に設けられる。
【0022】
また、支持部材35の中央部の下面は、油圧式のシリンダ37のピストンロッド38の先端に連結されている。シリンダ37が稼働してピストンロッド38が伸長又は短縮することで、支持部材35は上下に昇降する。支持部材35の昇降により保持部34の上端面とヒータ板33表面との間の距離を変えることができる。
【0023】
例えば、図4(a)に示すように、支持部材35が下降位置にある時、保持部34の上端面とヒータ板33表面とが同じ高さになる。一方、図4(b)に示すように、支持部材が上昇位置にある時、保持部34の上面はヒータ板33表面より高い位置となり、太陽電池モジュールMとヒータ板33とを非接触の状態に保つことができる。
【0024】
なお、スプリング36は、支持部材35が上昇位置にある時は自然長の状態にあり、支持部材35が下降位置にある時は圧縮状態になる。従って、スプリング36の反発力によって、シリンダ37が支持部材35を上昇させる際の荷重が軽減される。また、スプリング36は、支持部材35の重量により圧縮される。
【0025】
支持部材35は、両端部がスプリング36に支持され、中央部がシリンダ37のピストンロッド38に支持されている。そのため、支持部材35のサイズが大きくなったり、重量が重くなったりしても、支持部材35がたわむことを防止できる。また、支持部材35の両端部をスプリング36によって支持することで、全てシリンダ37のピストンロッド38で支持する場合と比較して、コストを削減することができる。
【0026】
図3に示すように、下ケース12の側面には吸排気口39が設けられている。上ケース10と下ケース12とが密着した場合、ダイアフラム31と下ケース12の内壁面で囲まれた空間が下チャンバ14を構成する。吸排気口39を介して、下チャンバ14内を真空引きしたり、下チャンバ14内に大気を導入したりすることができる。
【0027】
次に、太陽電池モジュールMのラミネート方法について説明する。まず、供給コンベア3に図示しないロボット等の手段によって、ラミネートを行う太陽電池モジュールMが位置決めされて供給される。供給コンベア3に供給される太陽電池モジュールMは、例えば、下側に配置された透明なカバーガラスと、上側に配置された保護材とを有し、カバーガラスと保護材との間に充填剤を介してストリングを挟んだ構成となっている。ストリングは、2つの電極の間に、リード線を介して、複数の太陽電池セルを接続した構成を有する。保護材は例えばPE樹脂等の透明な材料が使用される。充填剤には、例えば、エチレンビニルアセテート樹脂などが使用される。
【0028】
供給コンベア3に供給された太陽電池モジュールMが、供給コンベア3の稼働によって、搬送シート5上に載せられる。太陽電池モジュールMは、搬送シート5と共に、ラミネート部2に搬入される。なお、太陽電池モジュールMの搬入前に、上ケース10を持ち上げ、ラミネート部2を開放状態にすると共に、支持部材35を下降位置に配置しておく。
【0029】
太陽電池モジュールMの搬入が完了すると、上ケース10が下降し、ラミネート部2を密閉状態にする。そして、図5に示すように、支持部材35を上昇させ、太陽電池モジュールMとヒータ板33とを非接触の状態に保つ。
【0030】
続いて、吸排気口32、39を介して上チャンバ13内と下チャンバ14内を同時に真空引きする。
【0031】
上チャンバ13内と下チャンバ14内を、それぞれ例えば0.7〜1.0Torrにまで真空引きした後、支持部材35を下降させる。これにより、太陽電池モジュールMとヒータ板33とが熱的に接触した状態となり、太陽電池モジュールMが加熱される。ヒータ板33は例えば150℃程度の温度で加熱を行う。
【0032】
この状態で、図6に示すように、吸排気口32を介して上チャンバ13内に大気を導入して上チャンバ13内を大気圧にすることで、ダイアフラム31が下方に膨張する。これにより、太陽電池モジュールMが、ヒータ板33とダイアフラム31との間で狭圧される。
【0033】
加熱により、太陽電池モジュールM内の充填剤の化学反応(融解)が促進され、架橋が行われる。加熱及び狭圧によりラミネート処理が終了すると、吸排気口39を介して下チャンバ14内に大気を導入する。また、上ケース10を持ち上げて、ラミネート部2を開放状態にする。搬送シート5と共にラミネート部2から搬出された太陽電池モジュールMは、搬出コンベア4上に搬出される。そして、太陽電池モジュールMは、図示しないロボット等の手段により、搬出コンベア4上から取り除かれ、後工程に搬送される。
【0034】
上記実施形態によれば、シリンダ37だけでなく、スプリング36を用いて支持部材35がたわまないように支持する。従って、必要となるシリンダ37のサイズや個数を低減でき、装置コストの増加を防止することができる。
【0035】
(比較例)図7に比較例によるラミネート装置の下ケースの概略構成を示す。ここでは、スプリング36を用いずに、シリンダ37だけで支持部材35を支持している。シリンダ37のピストンロッド38は支持部材の両端部の下面に連結されている。このような構成では、支持部材35のサイズが大きくなり重量が増すと、シリンダ37に支持されていない部分(ここでは中央部)において、支持部材35がたわむ。
【0036】
支持部材35がたわむと、たわんだ箇所に連結されている保持部34が下がり、太陽電池モジュールMがヒータ板33に接触し、加熱される。ラミネート部2の上チャンバや下チャンバの十分な真空引きが行われていない状態で太陽電池モジュールMが加熱されると、内部に気泡が残るという問題があった。
【0037】
これに対し、上記実施形態では、スプリング36を設けることで、装置コストの増加を抑制しつつ、支持部材35がたわむことを防止できる。
【0038】
なお、スプリング36やシリンダ37の配置個数は支持部材35のサイズや重量、太陽電池モジュールのサイズや重量、スプリング36の強度に応じて決定される。例えば、図8(a)に示すように、スプリング36を2個、シリンダ37を4個配置して支持部材35を支えてもよいし、図8(b)に示すように、スプリング36及びシリンダ37をそれぞれ4個配置して支持部材35を支えてもよい。
【0039】
上記実施形態では、スプリング36を支持部材35の両端部に連結していたが、図9に示すように、スプリング36を支持部材35の中央部に連結し、シリンダ37のピストンロッド38を支持部材35の両端部の下面に連結するようにしてもよい。このような構成にすることで、実際に被ラミネート体(太陽電池モジュールM)を保持して被ラミネート体の重量がかかる保持部34に対応する領域、すなわち支持部材35において最もたわみが発生しやすい領域、をスプリング36で支えることができる。
【0040】
また、図10に示すように、支持部材35を設けず、熱板33をシリンダ37で昇降すると共に、スプリング36で支持するような構成にしてもよい。この場合、保持部35の下端は下ケース12の内壁底面に連結される。
【0041】
上記実施形態では、ラミネート部2が1つ設けられたラミネート装置について説明を行ったが、ラミネート装置は、スプリングで支持される支持部材を有するラミネート部を上下方向に複数備える構成にしてもよい。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ラミネート装置
2 ラミネート部
3 供給コンベア
4 搬出コンベア
5 搬送シート
10 上ケース
12 下ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向かって膨張自在なダイアフラムが取り付けられた上ケースと、上面が開放された内部空間を有する下ケースと、を有し、前記上ケースと前記下ケースを用いて内部に前記ダイアフラムによって仕切られた上下のチャンバを形成し、被ラミネート体を加熱し、前記ダイアフラムによって前記被ラミネート体を狭圧することによりラミネート加工を行うラミネート装置であって、
複数の孔が設けられ、前記被ラミネート体を加熱するヒータ板と、
前記複数の孔を挿通して設けられ、上端部分で前記被ラミネート体を保持する保持部と、
前記保持部の下端部分に連結された支持部材と、
前記支持部材を昇降させる昇降部と、
前記支持部材の下面と前記下ケースの内壁底面との間に設けられたバネと、
を備えることを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
前記昇降部が、前記支持部材を所定位置に移動させることで、前記保持部が保持する前記被ラミネート体が前記ヒータ板に接触し、前記支持部材を前記所定位置から上昇させることで、前記保持部が保持する前記被ラミネート体が前記ヒータ板に非接触となることを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項3】
前記バネの自然長は、前記支持部材が前記所定位置にあるときの前記支持部材の下面と前記下ケースの内壁底面との間の距離より長いことを特徴とする請求項2に記載のラミネート装置。
【請求項4】
前記昇降部は前記支持部材の端部に連結され、前記バネは前記支持部材の中央部に連結されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のラミネート装置。
【請求項5】
前記被ラミネート体が太陽電池モジュールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のラミネート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−255559(P2011−255559A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130805(P2010−130805)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(595013427)株式会社エヌ・ピー・シー (54)
【Fターム(参考)】