説明

ランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法

【課題】アナログ信号を出力する一般的なセンサーを用いて測定した解析信号の解析結果が所定の臨界値外となった場合に、それらをランダム信号として解釈してフィルタリングし、それによって、出来る限り正確な状態の監視及び解析を行う。
【解決手段】ランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法において、或る時点にセンサーから入力したデータとレジスタに保存しておいたその時点以前のデータとを比較して、それらの差分値(速度)を計算する工程と、上記の計算結果を臨界値と比較する工程と、比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程と、比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合には、比較結果をランダム信号に関する結果と見做して、その時点のデータをその時点以前のデータと置き換える工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法に関し、より詳しくは、本発明は、アナログ信号を出力する一般的なセンサーを用いて測定した解析信号の解析結果が所定の臨界値外となった場合に、それらをランダム信号として解釈してフィルタリングし、それによって、出来る限り正確な状態の監視及び解析を行う、ランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、長さ、重量、速度、加速度、温度、圧力等を測定する際の目的に応じて、様々なタイプのセンサーが存在する。
【0003】
更に、センサーを用いて測定したデータは、対象とするプラントの状態の監視及び解析に使用することができるとともに、自動化された製造作業において、センサー出力信号を用いてリアルタイムで他のシステムを制御するために使用することもできる。
【0004】
通常言われている通り、センサーを用いた時に大抵は同時に混入してしまうノイズ信号は、所定の周期を有し、そのような所定の周期のノイズ信号には、低域通過フィルター、高域通過フィルター又は帯域通過フィルターなどの古典的なフィルタリング方法によるフィルターを使用することができる。しかしながら、センサーに対して使用される周囲環境に応じて、所定の周期のノイズ信号と共に、特定の周期を持たないノイズ信号の混入が、時々起こることが有る。
【0005】
そのような時に測定されたセンサー信号が特定のノイズによる歪を受けている場合、不正確な解釈又は制御が行われて、それが、製品の品質又は生産性に関する問題を引き起こす可能性がある。
【0006】
特に、所定の形式又は周期を持たないノイズ信号を伴う処理方法の取り扱いは非常に難しく、そのような信号を処理するためには膨大な時間が必要であり、そのため、それは、リアルタイム制御が必要とされる製造作業では一層問題となる。
【0007】
図1は、正常信号にランダム信号が混入している信号をサンプリングして時間別に速度計算した結果のグラフであり、図1を参照すると、ランダム信号と正常信号の間の区別が不明瞭であり、不規則な信号を検出することの難しさを認識することができた。これらの結果は、高周波ノイズが原因であり、そのような高周波ノイズは、様々なセンサー出力信号に含まれており、収集したデータの平均値(代表値)を計算することによって、そのようなノイズを除去することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−110652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のことから、本発明の課題は、上記の問題を解決することであり、本発明によるランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法の目的は、センサーの汎用的なアナログ信号出力を使用している場合に、センサー信号の測定時にセンサー信号と共に混入してしまうノイズ信号を適切にフィルタリングすることによって、所望の信号を取得することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法は、
或る時点にセンサーから入力したデータとレジスタに保存しておいたその時点以前のデータとを比較して、差分値(速度)を計算する工程と、
上記の計算結果を臨界値と比較する工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合には、上記の比較結果をランダム信号に関する結果と見做して、その時点のデータをその時点以前のデータと置き換える工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
更に、本発明によるランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法は、
或る時点でセンサーから入力したデータとレジスタに保存されているその時点以前のデータとを比較して、差分値(速度)を計算する工程と、
上記の計算結果を臨界値と比較する工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合には、その時点の信号を無視して、上記の工程を繰り返し、取得したデータの平均値を計算して、それをレジスタに保存する工程と、
レジスタに保存しておいた平均値を以下の式1のデータ(N)の値として代入して、

平均値={データ(1)+データ(2)+ ... データ(N)}/N (式1)

データ(1)を廃棄する一方、N個の単位データの平均を再計算して、それを専用のメモリ又はバッファに以前保存しておいた平均値と置き換えて、次回の速度計算に使用する工程と、
を有することを特徴とする。
【0012】
更に、或る時点でセンサーから入力したデータとレジスタに保存しておいたその時点以前のデータとを比較して、差分値(速度)を計算する工程において、その時点でセンサーから入力したデータの平均値をレジスタに保存されているその時点以前のデータの所定の周波数として使用する。
【0013】
更に、比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程において、比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合には、その時点のデータをその時点以前のデータで置き換える。
【発明の効果】
【0014】
上記の通り、本発明によるランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法は、次の効果を得ることができる。
【0015】
第一に、対象システムの正確な状態の監視及び解析が、詳細な信号測定を通して可能になるとともに、誤り/誤差を低減して製品の生産性及び品質を向上させることが可能になる。
【0016】
第二に、フィルタリングに必要な計算時間が、方法の単純化によって低減することができ、その結果、FPDや半導体を検査するための装置などのリアルタイム制御を必要とする所に本方法を適用することができる。
【0017】
第三に、本方法をリアルタイム制御に適用すれば、ランダムノイズ信号による機器の誤動作及び誤差を防止するともに、製品の生産性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】正常信号にランダム信号が混入した信号をサンプリングして時間別に速度を計算した結果のグラフ
【図2】本発明によるランダム信号の検出プロセスを図示したフローチャート
【図3】本発明によりランダムノイズを検出するために10個の単位データの平均を計算した結果を用いて速度を計算した結果のグラフ
【図4】本発明によりランダム信号を検出し、フィルタリングした結果のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照して、本発明によるランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法を詳しく説明する。本発明を説明する際に、本発明を実施する上で関連する周知技術又は構成を特に説明する必要が無いと判断した場合には、その詳細な説明を省略している。更に、ここで参照している用語は、本発明の機能を考慮して定義しており、その結果、クライアント、オペレータ又はユーザの目的に応じて異なる場合がある。従って、そのような定義は、本発明と関連する一般的な詳細事項をベースとしなければならない。
【0020】
図2は、本発明によるランダム信号の検出プロセスを図示したフローチャートであり、図3は、本発明によりランダムノイズを検出するために差分値を計算した結果のグラフであり、図4は、本発明によりランダム信号をフィルタリングした結果のグラフである。
【0021】
図2〜4を参照した本発明によるランダム信号検出プロセスの説明において、ランダムノイズ信号がアナログ出力形式のセンサー出力に含まれている場合、本発明の方法は、そのようなランダム信号を検出及び除去することに関連することとなる。
【0022】
一般に、ランダム信号は、所定の周期(音声周波数)やサイズ(振幅)を持たず、従って、そのようなランダム信号は、従来のフィルタリング方法では検出できなかった。通常、そのようなランダム信号は、急に変化(出現)する信号形式で発生し、そのように変化する信号は、正常な入力信号よりも大きな傾きとサイズを有する。
【0023】
例えば、それは、或る時点の入力信号が、それ以前の入力信号よりも急に大きくなったり小さくなったりすることを意味する。従って、本発明によるランダム信号検出プロセスで提案する通り、或る時点の入力信号とそれ以前の入力信号の間の差(速度)を計算して、その計算値が、所定の臨界値よりも大きい場合には、その時点の入力信号を無視して、次の入力信号を再び受信する。
【0024】
しかしながら、多くの高周波ノイズ信号の混入が起こっている環境では、正常信号とランダム信号の間のそのような速度の変動に大きな差が無く、従って、本発明の方法を適用するためには、過去の入力信号に対する高周波ノイズ処理を予め行ってから、速度を計算しなければならない。高周波ノイズに関しては、式1を用いて、二つ以上の測定信号を平均して、その解を求める。
【0025】
そのように計算した平均値(代表値)を専用のメモリ又はバッファに保存しておき、過去の信号を提供するために用いる。
【0026】
例えば、一つの単位データを受信した後、それ以前に計算して保存しておいた平均値を読み出して、以下の式2に示している通り、二つの単位データの間の差を計算し、それによって速度を計算する。

速度=(データ(N)−平均値)/サンプリング時間 (式2)
【0027】
前述したフィルタリング方法を適用した結果が、図4に図示されている。フィルタリング方法を適用する前で、かつ速度値の事前計算に続いて、適切な速度マージン(例えば、7mm/s)の設定後にフィルタリング方法を適用した結果、巨視的なセンサー計算信号だけが残り、瞬間的に変動する信号が全てフィルタリングされていることが分かる。
【0028】
フィルタリングされて残った信号を式1のデータ(N)の値として代入して、データ(1)を破棄し、N個のデータの平均を再び計算して、それを、専用のメモリ又はバッファに以前保存しておいた平均値と置き換えるために使用するとともに、次回の速度計算に使用する。
【0029】
ここで、図2に図示された本発明によるランダム信号検出プロセスを表すフローチャートを参照して、ランダム信号がアナログ形式のセンサー出力に含まれている場合に、そのようなランダム信号を検出及び除去する方法の詳細な説明を行う。
【0030】
先ずは、アナログ形式のセンサー出力から、新しい一つの単位データを取得して、それを以前レジスタに記録しておいたデータと比較する。それに続いて、新しいデータから以前のデータを差し引いて、速度を計算する。
【0031】
そして、計算した速度が臨界値を上回る場合には、新しいデータを破棄して、再び一つの信号をセンサーから取得して、上記のプロセスを繰り返す。
【0032】
計算した速度が臨界値を上回らない場合には、平均値を計算する一方、このプロセスを繰り返す。
【0033】
その後、このようにして計算した平均値をレジスタに保存する。その結果、このプロセスを繰り返すのに応じて、ランダム信号は、全てこのプロセスによってフィルタリングされることとなる。
【0034】
フィルタリングして残った信号に関して、前述した通り、それらの信号を式1のデータ(N)の値として代入して、データ(1)を消去する一方、N個の単位データの平均を再計算して、それを専用のメモリ又はバッファに以前保存しておいた平均値と置き換えるとともに、次回の速度計算で使用する。
【0035】
前述した本発明は、有利な実施例に基づいて説明したが、それらの実施例は、本発明を制限することを意図するものではなく、むしろ例示を目的としたものであり、従って、本発明による技術形態の当業者は、本発明による技術形態から逸脱すること無く、上記の実施例に対して様々な変更、修正又は調整を加えることが可能である。そのため、本発明の権利保護範囲は、本発明の技術形態の対象内に含まれる変更、修正又は調整の全ての実施例を含むものと解釈しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法において、
或る時点にセンサーから入力したデータとレジスタに保存しておいたその時点以前のデータとを比較して、それらの差分値(速度)を計算する工程と、
上記の計算結果を臨界値と比較する工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合には、上記の比較結果をランダム信号に関する結果と見做して、その時点のデータをその時点以前のデータと置き換える工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
ランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法において、
或る時点にセンサーから入力したデータとレジスタに保存しておいたその時点以前のデータとを比較して、それらの差分値(速度)を計算する工程と、
上記の計算結果を臨界値と比較する工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程と、
上記の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合には、その時点のセンサー入力信号を無視して、上記の工程を繰り返し、取得したデータから平均値を計算して、レジスタに保存する工程と、
上記のレジスタに保存しておいた平均値を、以下の式1のデータ(N)の値として代入して、

平均値={データ(1)+データ(2)+ ... データ(N)}/N (式1)

データ(1)を廃棄する一方、N個の単位データの平均を再計算して、専用のメモリ又はバッファに以前保存しておいた平均値と置き換えるとともに、次回の速度計算に使用する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項3】
当該の或る時点にセンサーから入力したデータとレジスタに保存しておいたその時点以前のデータとを比較して、差分値(速度)を計算する工程において、その時点にセンサーから入力したデータの平均値をレジスタに保存しておいたその時点以前のデータの所定の周波数として使用する請求項1又は2に記載のランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法。
【請求項4】
当該の或る時点にセンサーから入力したデータとレジスタに保存しておいたその時点以前のデータとを比較して、差分値(速度)を計算する工程において、レジスタに保存しておいたその時点以前のデータの代わりに所定の標準的な一定値を用いて、当該の速度を計算する請求項1又は2に記載のランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法。
【請求項5】
当該の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程において、比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合に、その時点の入力データを以前のデータで置き換える請求項1に記載のランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法。
【請求項6】
当該の比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さいか否かに関する比較を行う工程において、比較結果が最大臨界値よりも大きいか、或いは最小臨界値よりも小さい場合に、その時点の入力データを所定の標準的な一定値で置き換える請求項1に記載のランダムノイズ信号の検出及びフィルタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−69821(P2011−69821A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−203930(P2010−203930)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(508250936)スンハン・エンジニアリング・コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】