説明

ランチビオティックメルサシジンの変種およびそれらの使用

本発明は、ランチビオティックであるメルサシジンの変種、ならびにそれらの製造方法および使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ランチビオティック(lantibiotic)メルサシジン(mersacidin)の変種およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
メルサシジンは、ランチビオティックと呼ばれる殺菌性のペプチドの群に属する。その名称は、これらのペプチドがアミノ酸ランチオニンおよび/または3-メチルランチオニンを含むことを表す。メルサシジンは、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)に対する活性を有し、したがって医学上非常に関心が高い。
【0003】
メルサシジンは、HIL Y-85,54728(「HIL」)と称されるバチルス属の特定の種によって産生される。メルサシジン遺伝子のクローニングは、Bierbaum et al, 1995によって開示されている。
【0004】
メルサシジンは、68アミノ酸の低分子タンパク質のプロセッシングによって産生される。このタンパク質のN末端の48アミノ酸はリーダー配列を形成し、C末端の20アミノ酸は、修飾酵素によってプロセシングされメルサシジンを産生するプロペプチド配列である。メルサシジン遺伝子であるmrsAの配列をSEQ ID NO:1として、その翻訳物をSEQ ID NO:2として提供する。翻訳後に修飾された残基を含む成熟ペプチドの配列を図1に示す(SEQ ID NO:3)。
【0005】
mrsA遺伝子は、約12.3 kbのmrs遺伝子クラスターの一部を形成する(Altena et al, 2000)。この遺伝子クラスターは、mrsA遺伝子の発現および/またはその修飾酵素を調節することによってメルサシジンの産生を制御する調節遺伝子を含む。mrsA遺伝子は、バチルスHIL株の増殖の初期静止期に発現する。
【0006】
天然の抗生物質の変種は、医学において有用であり得る。合成的に、半合成的に(例えば発酵産物の化学的改変によって)、またはそれらを産生する生物に対する遺伝的変化によって、変種を産生することができる。潜在的に、メルサシジンは3つの経路全てで変化させることができ、後者2つは特に関心が高い。例えば、アミノ酸の改変を用いて、生物学的利用能、生体内分布、またはメルサシジン自体に対する抵抗性メカニズムを克服する能力などの特性と同様に、改変された活性プロファイルを有する変種を産生することができる。改変されたアミノ酸はまた、化学的手法によってペプチドの改変を可能にする反応性側鎖を導入するのに有用である可能性がある。
【0007】
Szekat et al. (2003) Appl. Env. Microbiol. 69, 3777-3783に、変種メルサシジンの生成のための発現系の構成が記載されている。部位特異的変異誘発によって、改変したmrsA遺伝子を生成し、天然のmrsA遺伝子との相同組換えによってmrs遺伝子クラスターに導入した。メルサシジンの3つの変種を産生した;F3L、S16I、およびE17A(番号は、成熟メルサシジンペプチド配列のナンバリングを指し、文字は1文字アミノ酸コードである)。
【0008】
これら3つの変種のうち、S16IおよびE17Aの両方は、本質的に不活性であり(M.ルテウス(M. luteus)に対して測定された最小阻止濃度(MIC)を約1000倍上回る)、一方F3Lペプチドは、弱く活性であった(野生型の0.195と比較して、M.ルテウスに対して12.5 mg/lのMIC)。したがってSzekat et alのデータは、メルサシジンが、改変に非常に影響されやすく、かつ一次配列の変動が有害となる可能性があることを示唆している。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明者らは、メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌(MRSA)の2つの系統を含む、様々な細菌に対して活性を有する多くのメルサシジン変種を同定した。したがって、Szekat et alによって記載された変種とは異なり、本発明の変種は、多くの場合メルサシジン自体に匹敵するかまたはよりよいレベルの抗菌活性を有する。したがって本発明は、新規な抗菌性化合物、そのような化合物をコードする遺伝子、そのような化合物を作製する方法、および特に抗菌療法を必要とする状態のヒトまたは動物対象の処置におけるそれらの使用を提供する。本発明のこれらのおよびその他の局面を、本明細書において以下に記載する。
【0010】
発明の詳細な説明
メルサシジン変種
一つの局面において、本発明は、下記の表1に示すようなメルサシジンの3、5、6、7、8、9、10、11、14、または16位への改変を含むメルサシジン変種を提供する。
【0011】
(表1)

【0012】
ここで、Dhaはデヒドロアラニンであり、Dhbはデヒドロブチリンである。これらの改変されたアミノ酸残基が存在する場合、これは、mrsA遺伝子クラスターの他の遺伝子の発現によってもたらされるセリンおよびトレオニンの翻訳後修飾にそれぞれ起因する。
【0013】
好ましい局面において、変種は、下記の表2に示すようなメルサシジンの3、6、7、8、9、10、11、14、または16位への改変を含む。
【0014】
(表2)

【0015】
より好ましい局面において、変種は、下記の表3に示すようなメルサシジンの3、6、7、8、9、10、11、14、または16位への改変を含む。
【0016】
(表3)

【0017】
さらにより好ましい局面において、変種は、下記の表4に示すようなメルサシジンの3、7、8、9、10、11、14、または16位への改変を含む。
【0018】
(表4)

【0019】
F3W、G8A、G9A、G9H、V11I、V11L、L14I、L14M、L14V、Dha16G、およびDha16Dhbの群から選択される改変を含む変種が、特に好ましい。
【0020】
一つの局面において、メルサシジン変種は、2つまたはそれ以上の上記改変、例えば2つまたは3つなど1〜4つの改変、の組み合わせを含んでもよい(残りの残基は野生型メルサシジン配列のものである)。したがって一つの局面において、上記の改変のいずれか1つを含む変種は、組み合わせて2、3、もしくは4つの変化からなるか、または単一の位置での変化のみからなる変種でもよい。
【0021】
一つの局面において、本発明者らは、F3Wの変化がメルサシジン変種(「メルサシジンF3W」)を提供することを見出し、これは様々な微生物に対する、メルサシジン自体よりも強力な活性を有する。したがって一つの局面において、メルサシジン変種は、1つ、2つ、または3つの他の変化と共にF3Wを含んでもよい。そのようなメルサシジンは、メルサシジンF3W G8A、メルサシジンF3W G9A、メルサシジンF3W G9H、メルサシジンF3W V11I、メルサシジンF3W V11L、メルサシジンF3W L14I、メルサシジンF3W L14M、メルサシジンF3W L14V、メルサシジンF3W Dha16G、およびメルサシジンF3W Dha16Dhbを含む。
【0022】
別の局面において、メルサシジンは、メルサシジンG8A G9A、メルサシジンG8A G9H、メルサシジンG8A V11I、メルサシジンG8A V11L、メルサシジンG8A L14I、メルサシジンG8A L14M、メルサシジンG8A L14V、メルサシジンG8A Dha16G、およびメルサシジンG8A Dha16Dhbを含む。
【0023】
別の局面において、メルサシジンは、メルサシジンG9A V11I、メルサシジンG9H V11I、メルサシジンV11I L14I、メルサシジンV11I L14M、メルサシジンV11I L14V、メルサシジンV11I Dha16G、およびメルサシジンV11I Dha16Dhbを含む。
【0024】
別の局面において、メルサシジンは、メルサシジンG9A L14I、メルサシジンG9H L14I、メルサシジンV11L L14I、メルサシジンL14I Dha16G、およびメルサシジンL14I Dha16Dhbを含む。
【0025】
別の局面において、メルサシジンは、Dha16Dhb、メルサシジンG9A Dha16Dhb、メルサシジンG9H Dha16Dhb、メルサシジンV11L Dha16Dhb、メルサシジンL14M Dha16Dhb、およびメルサシジンL14V Dha16Dhbを含む。
【0026】
製剤および組成物
本発明のメルサシジン変種は、実質的に単離された形態、例えばメルサシジン変種の産生のために用いる宿主細胞内で、メルサシジン変種が結合している物質を含まないかまたは実質的に含まない形態で提供されてもよい。
【0027】
メルサシジン変種は、塩の形態、特に薬学的に許容される塩の形態であってよい。これらは、アルカリまたはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、もしくはマグネシウム塩など塩基性塩を含む。塩はまた、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、および酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸と形成される塩のような酸付加塩であってもよい。カリウム塩が好ましい。カリウム塩の調製は、US-A-5,112,806に記載される。
【0028】
メルサシジン変種は、薬学的組成物の形態に調製してもよい。この組成物は、液体、ゲル、または固体の形態であってよい。
【0029】
薬学的に許容される担体または希釈剤は、経口、直腸、経鼻、局所的(頬側および舌下を含む)、膣、または非経口的(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内、および硬膜外を含む)投与に適切した製剤において用いられるものを含む。経口、経鼻、および局所投与は、エアロゾルによる投与を含んでもよい。
【0030】
局所製剤はまた、使用目的の部位に応じて、クリーム、軟膏、またはゲルの形態で存在してもよい。本発明の局所組成物は、通常局所適用に用いられる任意の薬学的形態であってよく、特に水性、水性アルコール、または油性溶液、水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤または多重乳剤、水性ゲルまたは油性ゲル、液状、ペースト状、または固体状無水産物の形態であってよい。この組成物はまた、1つもしくは複数の親水性または親油性のゲル化剤、親水性または親油性の活性剤、保存剤、および抗酸化剤など、化粧品ならびに皮膚科学の分野で通常のアジュバントを含んでもよい。本発明の組成物が乳剤である場合、脂肪相の割合は、組成物の総重量に対して5〜80重量%および好ましくは5〜50重量%の範囲であり得る。乳剤形態の組成物において用いられる油、乳化剤、および共乳化剤は、考慮される分野で従来用いられるものから選択される。乳化剤および共乳化剤は、組成物の総重量に対して0.3〜30重量%および好ましくは0.5〜20重量%の範囲の割合で、この組成物内に存在する。
【0031】
用いることができる油には、鉱油(液化石油ゼリー)、植物起源の油(アボガド油、ダイズ油)、動物起源の油(ラノリン)、合成油(ペルヒドロスクアレン)、シリコン油(シクロメチコン)、およびフッ化油(パーフルオロポリエーテル)が含まれる。脂肪アルコール(セチルアルコール)脂肪酸、およびロウ(カルナウバロウ、オゾケライト)もまた、脂肪物質として用いることができる。
【0032】
用いることができる乳化剤および共乳化剤には、例えばPEG 20ステアリン酸などポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、およびステアリン酸グリセリンなどグリセロールの脂肪酸エステルが含まれる。
【0033】
製剤は、便宜上単位剤形で存在してもよく、薬学の技術分野において周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。このような方法は、1つまたは複数の付属の成分を構成する担体と活性成分とを結合させる工程を含む。一般に、液体担体もしくは微粉固体担体、またはその両方と活性成分とを均一かつ密接に結合させ、次いで必要に応じて産物を成形することによって、製剤を調製する。
【0034】
固体組成物に関しては、例えば薬学的グレードのマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどを含む従来の非毒性固体担体を用いてもよい。上記で定義した活性化合物を、例えば担体としてポリアルキレングリコール、アセチル化トリグリセリドなどを用いて、坐剤として製剤化してもよい。例えば上記で定義した活性化合物と、例えば水、生理食塩水性デキストロース、グリセロール、エタノールなど担体内の任意の薬学的アジュバントとを溶解、分散することなどによって、薬学的に投与可能な液体組成物を調製し、それによって溶液または懸濁液を形成することができる。望ましければ、投与される薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなどのような微量の非毒性補助物質を含有してもよい。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者には公知であるか、または明らかである:例えば「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」20版, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい。投与する組成物または製剤は、任意の事象において、処置する対象の症状を緩和するのに効果的な量の活性化合物を含むであろう。
【0035】
経口投与に関して、例えば薬学的グレードのマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなど任意の通常用いられる賦形剤の組み込みによって、薬学的に許容される非毒性組成物を形成する。そのような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態をとる。
【0036】
非経口投与は概ね、皮下、筋肉内、または静脈内へのいずれかの注射によって特徴付けられる。液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の溶液もしくは懸濁液に適した固形、または乳濁液のいずれかとして、従来の形態で注射剤を調製することができる。適した賦形剤は例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。さらに望ましければ、投与される薬学的組成物はまた、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウムなどのような湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など、微量の非毒性補助物質を含有してもよい。
【0037】
非経口投与のための別のアプローチは、投与量の一定レベルが維持されるように、持続放出システムまたは徐放システムの埋め込みを用いる。例えば、米国特許第3,710,795号を参照されたい。
【0038】
非毒性担体から構成されるバランスを伴う0.1〜95%の範囲の活性成分を含む剤形または組成物を調製してもよい。好ましくは、溶液中で0.1%〜50%の活性成分の割合が使用可能である。
【0039】
混合性調製物
本発明のメルサシジン変種の組成物はまた、本明細書に記載したものを含む異なるメルサシジン変種、異なる抗菌性剤、または処置すべき状態の第二の症状もしくは原因を処置することを意図した他の薬剤を含む第二の活性剤を含んでもよい。
【0040】
様々な抗菌性剤を、本発明のメルサシジン変種と組み合わせて用いることができる。これらは、キノロン、テトラサイクリン、グリコペプチド、アミノグリコシド、β-ラクタム、リファマイシン、クーママイシン、マクロライド、ケトライド、アザリド(azalide)、およびクロラムフェニコールを含む。特定の態様において、上記クラスの抗生物質は、例えば下記のうちの1つである可能性がある。
β-ラクタム抗生物質:イミペネム、メロペネム、ビアペネム、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフィキシム、セフィネノキシム(cefinenoxime)、セフォジジム、セホニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフピミゾール、セフピラミド、セフポドキシム、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリル、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セフィネタゾール(cefinetazole)、セフォキシチン、セフォテタン、アズトレオナム、カルモナム、フロモキセフ、モキサラクタム、アムジノシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、ベンジルペニシリン、カルフェシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ピペラシリン、スルベニシリン、テモシリン、チカルシリン、セフジトレン、SC004、KY-020、セフジニル、セフチブテン、FK-312、S-1090、CP-0467、BK-218、FK-037、DQ-2556、FK-518、セフォゾプラン、ME1228、KP-736、CP-6232、Ro 09-1227、OPC-20000、およびLY206763。
マクロライド:アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、オレアンドマイシン、ロキタマイシン、ロサラマイシン(rosaramicin)、ロキシスロマイシン、およびトロレアンドマイシン。
ケトライド:ABT-773、テリスロマイシン(HMR 3647)、HMR3562、HMR3004、HMR3787、ABT-773、CP-654,743、C2フッ化ケトリド、A1957730、およびTE802。
キノロン:アミフロキサシン(amifloxacin)、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、ロメフロキサシン、ナリジキシン酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、オキソリン酸、ペフロキサシン、ロソクサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、クリナフロキサシン(clinafloxacin)、PD131628、PD138312、PD140248、Q-35、AM-1155、NM394、T-3761、ルフロキサシン、OPC-17116、DU-6859a、およびDV-7751a。
テトラサイクリン:クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびテトラサイクリン。
グリコペプチド:バンコマイシンおよびその誘導体。
アミノグリコシド:アミカシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォルチマイシン(fortimicins)、ゲンタミシン、カナマイシン、メオマイシン(meomycin)、ネチルマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン、およびリンコマイシン。
リファマイシン:リファマイシンSV、リファマイシンO、リファブチン、リファンピシン、リファンピン、およびリファリジル(rifalizil)。
【0041】
第二の抗菌性剤の代わりに、本組成物は、メルサシジン変種によって処置すべき状態の症状または原因をさらに処置することを意図した第二の薬剤を含んでもよい。例えば本組成物は、鎮痛剤、例えば非ステロイド抗炎症化合物を含んでもよい。特に組成物が皮膚感染症の処置のためである場合、組成物は、皮膚の炎症の処置のためのステロイドなどの皮膚科学的薬剤を含んでもよい。皮膚科学的適用に有用な他の薬剤には、レチノイド、過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤、および抗真菌剤が含まれる。
【0042】
本発明のこれらの局面において、第二の活性剤と組み合わされるメルサシジン変種は、メルサシジンF3W、メルサシジンG8A、およびメルサシジンF3W G8Aを含む上記の変種のうち任意の一つであってよい。
【0043】
メルサシジン変種の使用
処置方法において、例えば細菌感染、特にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染の処置において、本発明のメルサシジン変種(上記のようなその組成物を含む)を、ヒトまたは動物対象に投与してもよい。そのような処置は、処置を必要とする対象に、有効量の該メルサシジン変種またはその組成物を投与する段階を含んでもよい。
【0044】
したがって、本発明はまた、ヒトもしくは動物体の処置方法または予防方法における使用のためにメルサシジン変種またはその組成物を提供する。本発明はまた、ヒトもしくは動物体の特定の処置方法または予防方法における使用のためにメルサシジン変種またはその組成物を提供し、特定の方法は、本明細書で以下に記載するものを含む。本発明はまた、ヒトもしくは動物体の特定の処置方法または予防方法における使用のための医用薬剤の製造ためにメルサシジン変種またはその組成物の使用を提供し、特定の方法は、本明細書で以下に記載するものを含む。
【0045】
したがって本発明の変種またはその組成物を、クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)、スタフィロコッカス種(Staphylococcus spp)、ストレプトコッカス種(Streptococcus spp)、エンテロコッカス種(Enterococcus spp)、プロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)、およびヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)を含む細菌によって引き起こされる全身性細菌感染症を含む細菌感染症の処置のために用いてもよい。
【0046】
スタフィロコッカス種は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌であってもよい。スタフィロコッカス種は、特に表皮ブドウ球菌(Staphylococcus. epidermidis)であってもよい。スタフィロコッカス種は、MRSA、VISA(バンコマイシン中程度黄色ブドウ球菌)、VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)、GISA(グリコペプチド中程度黄色ブドウ球菌)、LRSA(リネゾリド耐性黄色ブドウ球菌)、またはムピロシン耐性黄色ブドウ球菌などの薬物耐性種を含む黄色ブドウ球菌であってもよい。ストレプトコッカス種は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、または肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)であってよい。エンテロコッカス種には、エンテロコッカス フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス フェカリス(Enterococcus faecalis)が含まれる。
【0047】
変種および組成物を、菌血症(カテーテル関連菌血症を含む)、肺炎、皮膚および皮膚組織感染症(手術部位感染を含む)、心内膜炎、ならびに骨髄炎の全身性処置のために用いてもよい。変種または組成物はまた、アクネ、すなわちプロピオニバクテリウム アクネスを含む皮膚感染症の局所処置のために用いてもよい。変種およびその組成物はまた、結膜炎などの眼感染症の処置において、および多重耐性C.ディフィシレ(C. difficile)を含むクロストリジウム ディフィシレによって引き起こされるもの(偽膜性大腸炎)など腸の重複感染症、またはヘリコバクター ピロリに関連する腸の感染症に対する経口処置のために用いてもよい。
【0048】
変種はまた、創傷または熱傷における皮膚感染症の処置または予防において用いてもよい。さらに、変種およびその組成物は、鼻孔のクリアランスのためなど予防的方法において用い、MRSAの伝染を阻止してもよい。感染症のリスクのある対象(例えば病院に行った患者)、またはそのような感染症のキャリアであるリスクのある医療従事者もしくはその他の介護人に対して、これを実施してもよい。腹部手術に先立つ腸管内菌叢の予防的クリアランスもまた、企図される。
【0049】
投与するメルサシジン変種の有効量は最終的に、特定の対象(例えばヒト患者または動物モデル)における疾患の重症度、および対象の全身状態を考慮した医師の判断によるであろう。適した用量範囲は典型的に、1〜50 mg/kg、例えば5〜25 mg/kgの範囲にあり、医師が適切であると見なすように、用量は典型的に一日二回、毎日、または隔日に投与される。
【0050】
核酸
別の局面において、本発明は、本発明のメルサシジン変種のペプチド前駆体をコードする核酸、一般にDNAを提供する。「前駆体」とは、mrsA遺伝子クラスターの他の要素によって翻訳後に修飾され、メルサシジンを産生する天然のアミノ酸をコードすることを意味する。したがって、例えばメルサシジンG10Dhaは、コドン10がセリンである配列によってコードされてもよい。
【0051】
核酸を、mrsAタンパク質リーダー配列のN末端の48アミノ酸をコードする核酸と、インフレームで融合してもよい。核酸またはその融合物は、複製可能ベクター内に存在してもよい。ベクター、例えばプラスミドベクターは、複製起点(例えば細菌宿主細胞、特にバチルス宿主細胞内で機能する複製起点)を、抗菌性マーカー遺伝子などの他の要素と共に含んでもよい。mrsA遺伝子クラスターの1つまたは複数の他の遺伝子が、ベクター内に存在してもよい。例えば、mrsR1遺伝子がベクター内に存在してもよい。
【0052】
核酸配列はまた、そこでmrsA野生型遺伝子を置き換えた、メルサシジン生合成遺伝子クラスターの一部を形成してもよい。そのような置換は、相同組換えによって達成してもよい。
【0053】
当技術分野で公知の任意の標準的な方法によって、本発明の核酸を作製してもよい。任意の他の適した方法を用いてもよいが、Szekat et alによって記載されるように、典型的にmrsA遺伝子のオリゴヌクレオチド変異誘発によって、核酸を作製する。
【0054】
宿主細胞
本発明の核酸は、宿主細胞、特にバチルス宿主細胞などの細菌宿主細胞(例えばバチルス種(Bacillus sp.)HIL Y-85,54728、またはその誘導体)内に存在してもよい。核酸がベクターの形態である場合、宿主細胞はmrsA遺伝子クラスターを含んでもよく、クラスター内では、例えば転写が起こらないような遺伝子配列の変異のため、または不活性な遺伝子産物をもたらす変異(例えばメルサシジンE17A)の存在のために、mrsA遺伝子は不活性である。
【0055】
mrs遺伝子クラスターの制限マップは、Altena et al, 2000に示される。このクラスターの配列は、GenBankアクセッション番号:AJ250862として利用可能である。寄託されたHIL株をDNA供給源として使用して、例えばAJ250862由来のプライマーに基づくPCR増幅によってAltena et alにおいて図示されたオーバーラップする制限断片を得てもよい。これらの断片を、標準的なクローニング手順および適したクローニングベクターにクローニングしたmrs遺伝子クラスターを用いて組み立てる。そのようなベクターはpTRKH2(O'Sullivan and Klaenhammer 1993)であってよい。
【0056】
複製のためにベクターを枯草菌(B.subtilis)168などの枯草菌の実験室株に導入してもよく、プラスミドDNAをこの宿主から単離する。プラスミドをこの宿主に組み込んでもよく、または回収して他の宿主細胞、特に低GCグラム陽性宿主細胞に導入してもよい。これらは、バチルス種、特に枯草菌、同様に例えばS.カルノサス(S. carnosus)を含む。
【0057】
したがって、本発明は、mrs遺伝子クラスターを含むベクターおよび本発明のベクターの1つを保持する細菌宿主細胞、またはmrs遺伝子クラスターが本発明のメルサシジン変種を産生するよう改変されている細菌宿主細胞を提供する。本発明はまた、mrs遺伝子クラスターがゲノムに組み込まれ、細胞が本発明のメルサシジン変種を産生する細菌宿主細胞を提供する。
【0058】
好ましい局面において、宿主細胞はバチルス種HIL Y-85,54728である。別の局面において、本発明は、SigH欠損バチルス種HIL Y-85,54728(「ΔSigH HIL Y-85,54728」)、またはmrsA遺伝子が本発明の変種メルサシジンをコードするmrsA遺伝子クラスターを保持するバチルス種であってよい。本発明者らは、本明細書で下記に論じるように、ΔSigH HIL Y-85,54728の使用が、メルサシジンおよびその変種の産生を改善するためのある利点を提供できることを見出した。
【0059】
シグマHは、sigH(またはspo0H)遺伝子の産物である。それは、対数期から静止期への移行において、および胞子形成の誘導において機能する遺伝子の転写に重要である。SigHが欠損した変異体は、胞子を形成しない。シグマHは、多くの他の調節タンパク質、例えばspo0A、spo0F、kinA、spo0M、spoVG、spoVS、およびspoIIAファミリー、ならびに分泌ペプチドフェロモンのphrファミリーの転写を活性化する。さらなる詳細については、Britton et al. J Bacteriol. 184, 4881-90; 2002を参照されたい。
【0060】
2004年3月19日にNCIMBアクセッション番号NCIMB 41211として寄託されたHIL株を利用して、本発明のΔSigH HIL株を作製してもよい。ΔSigH誘導体を作製するために、例えば相同組換えを含む当技術分野で利用可能な標準的な技術に従って、HIL株におけるSigH遺伝子を不活性化してもよい。そのような技術はさらにWO2005/093069に記載され、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0061】
その最も単純な形態において、バチルスSigHコード配列の一部を含むプラスミドなどの構築物を、例えばプロトプラスト形質転換によってHIL株に導入する。ベクターは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子などの選択マーカーを含み、形質転換された細胞を、そのマーカーの染色体への組み込みに関して選択する。SigHコード配列は当技術分野において広く利用可能であり、同様にGenBankアクセッション番号NC_000964などのデータベースにおいても利用可能である。
【0062】
別のアプローチは、二重相同組換え(遺伝子置換)の実施である。このアプローチでは、単一の欠損のみが必要である。第二の組換え事象が生じる場合、野生型sigHに戻すか、変異を生成するかのいずれかである可能性がある。
【0063】
別の局面において、ΔSigH HILはまた、mrsA遺伝子が転写的に不活性であるか、または遺伝子産物が通常メルサシジンによって死滅する細菌に対して抗菌活性を示さない変異体であるかのいずれかの理由で、mrsA遺伝子産物が不活性であるHIL誘導体であってもよい。そのような細菌には、M.ルテウスATCC 4498などのミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)が含まれる。
【0064】
mrsA遺伝子がエリスロマイシン耐性遺伝子のmrsA遺伝子への挿入によって不活性化されているΔMrsA HILが、Altena et al, 2000に開示される。別のΔMrsA HILは、Szekat et al, 2003によって開示されたE17A HILである。さらなるΔMrsA HILは、mrsA遺伝子が、切断型および不活性型遺伝子産物をもたらすストップコドンを含むように改変されているものである。これらおよび他のΔMrsA HIL株全てを用いて、本発明における使用のためのΔMrsA ΔSigH HIL株を産生してもよい。
【0065】
メルサシジン変種の産生
本発明はまた、培養培地で本発明の宿主細胞を培養する段階および培地からメルサシジン変種を回収する段階を含む、メルサシジン変種を作製する方法を提供する。
【0066】
クロマトグラフィー手法による培養培地の他の成分からの分離など、当技術分野において標準的な技術によって、メルサシジン変種を培地から回収してもよい。そのような手法には、疎水性樹脂の使用、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびHPLCが含まれる。メルサシジンの回収は、US-A-5,112,806に図示される。
【0067】
用い得る1つのプロセスは、HP20などの疎水性樹脂上に培養上清からのメルサシジン変種を結合させ、次いでアセトニトリル-水またはメタノール-水で溶出することである。この後、C18逆相樹脂などの疎水性カラム上に結合させるために、水で希釈する。メルサシジンを次いで、アセトニトリルまたはメタノールで溶出し、溶出物を蒸発させ、容積を減少させる。次いで、リン酸緩衝液を用いてpHを約pH 2.5に調節し、溶液を、Varian SCXのような強陽イオン交換体上に結合させ、その後50%メタノール、250mMリン酸緩衝液pH7によって溶出する。この溶出物を、別のC18カラム上で脱塩し、メタノールで溶出し、次いで凍結乾燥させる。
【0068】
変種が、メルサシジンとは異なる電荷を有する場合、プロセスの改変を導入してもよい。例えば、電荷が異なり、hplcを利用し得る場合、イオン交換段階を改変または省略してもよい。メルサシジン変種が、それが産生される細菌に部分的に結合する場合、産物は、メタノール、アセトニトリル、または同様の溶媒による処理によって放出され得る。
【0069】
本明細書における「回収」または「回収すること」への言及には、薬学的使用に適した程度までメルサシジンまたはその変種を精製することが含まれる。したがって一般に回収は、微生物除去の工程(例えば遠心分離または濾過による)、培養培地に存在する他の細菌成分および望ましければ任意で培養培地の成分からランチビオティックを分離する工程を含むであろう。したがってメルサシジン変種は、実質的に単離された形態であろう。
【0070】
クロマトグラフィーカラムからメルサシジン変種を溶出するのに必要とされる緩衝液などの溶液中に、メルサシジン変種を回収してもよく、または凍結乾燥分画の形態で回収してもよい。
【0071】
寄託情報
バチルス種HIL Y-85,54728は、2004年3月19日に、NCIMBにアクセッション番号NCIMB 41211で、Novacta Biosystems Limitedの名において寄託された。
【0072】
先願の参照
メルサシジンF3W、メルサシジンG8A、およびメルサシジンF3W G8Aは、2005年3月21日に出願されたWO2005/093069(PCT/GB2005/001055)に記載され、2004年3月26日に出願された0406870.6の優先権を主張し、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。そのような化合物およびそれらの製造または使用に関する事項がPCT/GB2005/001055に記載され、かつそのような化合物および関連する事項が、本開示から派生する任意の出願に対して有効な技術の言明の一部を形成する範囲で、先願においてどちらが適用可能であっても、そのような化合物または関連する事項が特許請求されるかまたは開示され、かつそのような権利放棄が関連出願がなされた国の国内法令下で有効である範囲で、そのような化合物または関連する事項が権利放棄される。
【0073】
本発明を広く記載してきたが、さらに本発明を説明するために以下の実施例を提供し、これにより当業者は十分に、この最良の形態を含む本発明を作製し、使用できる。しかしながら、本発明の範囲は、これらの特定の実施例に制限することとして解釈されるべきではなく、むしろこの目的のためには、添付の特許請求の範囲およびその等価物が言及されるべきである。
【0074】
実施例1:メルサシジン変種の産生
生理活性メルサシジン変種
例えばSzekat et al,同書により開示される当技術分野において本来公知の方法を用いて、メルサシジンの部位特異的変異誘発を実施してもよい。指標となる株としてミクロコッカス ルテウスATCC 4698を含むアガープレートを用いるバイオアッセイにより決定されるような抗菌活性を有するメルサシジン変種を作製した。これらの変種を表1に提示する。
【0075】
(表1)

【0076】
バチルスHILΔmrsAにおける変種の発現および分析:
30℃で4日間インキュベートした後、各形質転換体から得た4つのランダムコロニーを、各メルサシジン変種の産生について試験した。クロラムフェニコール(25 mg/L)を添加した3 mlのトリプシンソイブロスを入れた15 ml遠心管(Falcon)内でコロニーを増殖させることによって、種培養を実施した。30℃、250 rpmで24時間インキュベートした後、0.5 mlの種培養物を用いて、50 mlコニカルフラスコ内でクロラムフェニコール(25 mg/L)を添加した10 mlの2×BPMに播種した。30℃、250 rpmで5日間インキュベートした後、メルサシジン変種産生を評価した。発酵試料を、15 ml遠心管中、4000 rpmで10分間スピンダウンした。100 mgの調整済樹脂Diaion HP-20(Supelco)を入れた50 ml遠心管に上清を移した。室温で6時間、振盪させながらインキュベートした後、上清を捨て、メルサシジン変種を含む樹脂を2×10 mlの水で洗浄した。二回目の洗浄工程は、2×10 mlのメタノール:水(1:1)で行った。1 mlの100%メタノールを用いて、メルサシジン変種を樹脂から溶出した。溶出物を蒸発させて乾燥させ、0.250 mlのメタノール:水(1:1)で再懸濁し、LC-MS、HPLC、およびバイオアッセイによって分析した。
【0077】
発酵ブロス試料および/または濃縮樹脂溶出物をHPLCバイアルに移し、表5に列挙したHPLC勾配条件および表6に列挙した質量分析条件を用いるLC-MSによって20μlの各試料を分析した。
【0078】
ブロス試料および発酵濃縮物中の成分のバイオアッセイの前に、96ウェルマイクロタイタープレートフラクションコレクターに結合した分析用HPLCを用いて試料を分画した。概して、0.2 mlのブロス試料または発酵濃縮物をカラムにロードして、表7に示すように成分を分離し、回収する。96ウェルマイクロタイタープレート中の分画を蒸発させて乾燥させ、得られた残留物を50μlのメタノール:水(1:1)に溶解した。各変種について、指標となる株としてミクロコッカス ルテウスATCC 4698を含むバイオアッセイアガープレートに、分画36〜43由来の再懸濁した残留物をロードした。メルサシジン変種試料を含むバイオアッセイプレートを室温に1時間放置し、試料をアガー中に拡散させ、その後30℃で一晩インキュベートした。
【0079】
(表5)LC-MSによるブロス試料および発酵濃縮物試料の分析に用いるHPLC条件

【0080】
(表6)LC-MSによるブロス試料および発酵濃縮物の分析に用いる質量分析パラメーター

【0081】
(表7)ブロス試料および発酵濃縮物を分画するのに用いる分析用HPLC条件

【0082】
実施例2:単離したメルサシジン変種に関するMICデータ
上記実施例1で産生された変種の選択を、様々な細菌に対する活性についてさらに試験した。塩化カルシウム二水和物として50μg/mlのカルシウムを添加したミュラーヒントンブロス(MHB)内で、抗生物質による二倍段階希釈によって、肺炎連鎖球菌を除く全ての生物に対する最小阻止濃度(MIC)を決定した。塩化カルシウム二水和物として50μg/mlのカルシウムを添加したブレインハートインフュージョン(BHI)ブロス内で、抗生物質による二倍段階希釈によって、肺炎連鎖球菌に対する最小阻止濃度(MIC)を決定した。抗菌剤保存液を調製し、NCCLSスタンダードM7-A6に従い保存した。
【0083】
600 nmで0.2〜0.3の吸光度に調節することにより、McFarland 0.5スタンダードに相当する105〜106 CFU/mlを含むように活性増殖ブロス培養液を希釈した。次いでそれらを、ブロス中でさらに1:100に希釈した。96ウェルマイクロタイタープレート内、総容積200μl(160μlブロス、20μl抗生物質、20μl種菌)で、64μg/ml〜0.06μg/mlの濃度範囲内で、アッセイを二回実施した。マイクロタイタープレートの12番目のウェルには、抗菌剤を入れなかった。バンコマイシンは、品質管理のための参照抗生物質として用いた。目に見える増殖をもたらさない薬物の最も低い濃度として定義されるMICで、プレートを好気的に振盪しながら、18〜20時間37℃でインキュベートした。
【0084】
変種F3W、G7N、G8N、G8Q、G9H、G9A、G9S、G10V、G10Y、V11I、V11L、V11M、L14M、L14V、S16G、Dha16Dhb、Dha16A、L14I、G10A、G10N、G9R、G9N、P6H、およびG7Aに対する結果を、下記の表8Aおよび8Bに示す(単位はμg/ml)。
【0085】
(表8A)

【0086】
(表8B)

【0087】
実施例3:さらなるMICデータ
様々な他の生物に対して、実施例2の変種のいくつかでMIC試験を行った。結果を表9および10に示す(単位はμg/ml)。
【0088】
(表9)

【0089】
(表10)

【0090】
実施例4:G8Hの活性
G8H変種を実施例2に記載した通りに試験した。実施例2の株のうち8つに対するMIC(μg/ml)を表11に示した。
【0091】
(表11)

【0092】
実施例5:フシジン酸耐性黄色ブドウ球菌に対する活性
黄色ブドウ球菌のフシジン酸耐性株に対する3つの変種について、MIC(μg/ml)を実施例2に記載した通りに決定した。結果を表12に示す。
【0093】
(表12)

【0094】
実施例6:ムピロシン耐性黄色ブドウ球菌に対する活性
黄色ブドウ球菌のムピロシン耐性株に対する3つの変種について、MICを実施例2に記載した通りに決定した。結果をμg/mlで表13に示す。
【0095】
(表13)

【0096】
実施例7:化膿連鎖球菌に対する活性
化膿連鎖球菌の株に対する5つの変種について、MICを実施例2に記載した通りに決定した。結果をμg/mlで表14に示す。
【0097】
(表14)

【0098】
実施例8:緑色連鎖球菌に対する活性
緑色連鎖球菌の株に対する5つの変種について、MICを実施例2に記載した通りに決定した。結果をμg/mlで表15に示す。
【0099】
(表15)

【0100】
実施例9:プロピオニバクテリウム アクネスに対する活性
フラゾリドン(1〜2μg/ml)を添加したWilkens-Chalgrenアガー(WCA)上での3〜7日間の増殖から、試験生物を選別した。新鮮なWilkens-Chalgrenブロス(WCB)に、P.アクネス(P.acnes)の単一コロニーを伴うコロニー懸濁液を直接播種し、密度をMcFarland 0.5スタンダード(1×108 CFU/ml)に相当するように調節し、次いで約105 CFU/mlの96ウェルマイクロタイタープレートにおける最後の接種のため、50μg/mlのCa2+(塩化カルシウム二水和物として)を添加した滅菌WCB中でさらに希釈した。NCCLSスタンダード(M11-A5, 2001)に従って調製し保存した保存液により、滅菌水中で、抗生物質による二倍段階希釈を実施した。品質管理のための参照抗生物質として用いるバンコマイシンおよびクリンダマイシンにより、アッセイを二回実施した。対照プレート上の増殖と比較して、試験プレート上の増殖の出現が顕著に減少した場合の薬物の濃度として定義されるMICで、プレートを嫌気的に48〜72時間37℃でインキュベートした。空気への短時間曝露のみによって予め還元した培地において周囲の大気中で、全ての操作を二回実施した。
【0101】
P.アクネスの株に対する3つの変種のMIC(μg/ml)は、表16に示す通りであった。
【0102】
(表16)

【0103】
実施例10:クロストリジウム ディフィシレに対する活性
C.ディフィシレに対する最小阻止濃度(MIC)を決定し、嫌気性菌に対するNCCLS基準アガー希釈法(M11-A5, 2001)に従い、抗菌剤保存液を調製し、保存した。Wilkens-Chalgrenアガー(WCA)中で、抗生物質による二倍段階希釈物を調製した。Braziers(C.C.E.Y.)アガー上での48時間の増殖から試験生物を選別し、McFarland 0.5スタンダード(1×108 CFU/ml)に相当する密度までSchaedlerブロスにおいて継代し、50μg/ml Ca2+(塩化カルシウム二水和物として)を添加したWCAプレート上に約105 CFU/スポットで最終接種した。バクテロイデス フラジリス(Bacteroides fragilis)ATCC 25285は、参照対照株として含まれ、メトロニダゾールを品質管理のための参照抗生物質として用いた。空気への短時間曝露のみによって予め還元した培地において周囲の大気中で、全ての操作を二回実施した。対照プレート上の増殖と比較して、試験プレート上の増殖の出現が顕著に減少した場合の薬物の濃度として定義されるMICで、プレートを嫌気的に48時間37℃でインキュベートした。
【0104】
F3WおよびF3W-L14I変種のMICを、μg/mlで表17に示す。
【0105】
(表17)

【0106】
実施例11:二重変種の活性
実施例2の株のうち8つに対して、実施例2の通りに二重変種のMICを決定した。それらのMICをμg/mlで表18に示す。
【0107】
(表18)

【0108】
配列の概要
本明細書に記載する配列の概要は以下である。
【0109】
SEQ ID NO:1
リーダー配列およびプロペプチド領域を含む、MrsAをコードする配列のMrsA遺伝子配列。プロペプチドをコードする領域を下線で示す。

SEQ ID NO:2
SEQ ID NO:1の翻訳産物。プロペプチドを下線で示す。

【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】メルサシジンの構造を示す。この化合物は20アミノ酸から産生され、そのうち8つはC末端システインを含み、ランチオニン架橋形成に関与する。この化合物は、セリンおよびトレオニンの翻訳後修飾によってそれぞれ産生される非天然のアミノ酸デヒドロアラニン(Dha)および[2-アミノ酪酸](Abu)を含む。2-アミノ酪酸部分はさらに、システイン部分と結合し、メチルランチオニンとして公知のチオエーテル架橋を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1

に示すようなメルサシジンの3、5、6、7、8、9、10、11、14、または16位への改変を含む、メルサシジン(mersacidin)変種。
【請求項2】
F3W、G8A、G9A、G9H、V11I、V11L、L14I、L14M、L14V、Dha16G、およびDha16Dhbの群から選択される改変を含む、請求項1記載の変種。
【請求項3】
表1に示すようなメルサシジンの3、5、6、7、8、9、10、11、14、または16位への改変からなる、請求項1記載の変種。
【請求項4】
改変F3Wおよび表1に示す5、6、7、8、9、10、11、14、または16位のうちの1つでの第二の改変を含む、請求項1記載の変種。
【請求項5】
メルサシジンF3W G9A、メルサシジンF3W G9H、メルサシジンF3W V11I、メルサシジンF3W V11L、メルサシジンF3W L14I、メルサシジンF3W L14M、メルサシジンF3W L14V、メルサシジンF3W Dha16G、およびメルサシジンF3W Dha16Dhbの群から選択される、請求項4記載の変種。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の変種をコードする核酸。
【請求項7】
請求項6記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項6記載の核酸または請求項7記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項9】
宿主細胞がバチルス種(Bacillus sp.)HIL Y-85,54728またはその変種であり、そこにおいてmrsA遺伝子が請求項1〜5のいずれか一項記載の変種をコードする、請求項8記載の宿主細胞。
【請求項10】
薬学的に許容される担体と共に、請求項1〜6のいずれか一項記載のメルサシジン変種を含む組成物。
【請求項11】
担体が、水性、水性アルコール、または油性溶液、水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤または多重乳剤、水性ゲルまたは油性ゲル、液状、ペースト状、または固体状無水産物の、局所投与に適した形態である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
ヒトもしくは動物体の処置または予防の方法における使用のための、請求項1〜6のいずれか一項記載の変種、または請求項10もしくは11記載の組成物。
【請求項13】
処置または予防が、全身性細菌感染症の処置;菌血症の全身性処置;肺炎の処置;皮膚および皮膚組織感染症の処置;心内膜炎の処置;骨髄炎の処置;アクネの処置;眼感染症の処置;腸の重複感染症の処置;創傷もしくは熱傷における皮膚感染症の処置または予防、から選択される、
ヒトもしくは動物体の処置または予防の方法における使用のための、請求項1〜6のいずれか一項記載の変種、または請求項10もしくは11記載の組成物。
【請求項14】
処置が、クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)、ストレプトコッカス種(Streptococcus spp.)、エンテロコッカス種(Enterococcus spp.)、スタフィロコッカス種(Staphylococcus spp.)、プロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)、およびヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)によって引き起こされる感染症から選択される細菌感染症に対する処置である、
ヒトもしくは動物体の処置または予防の方法における使用のための、請求項1〜6のいずれか一項記載の変種、または請求項10もしくは11記載の組成物。
【請求項15】
スタフィロコッカス種が、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を含むコアグラーゼ陰性ブドウ球菌であるか、またはスタフィロコッカス種が、黄色ブドウ球菌(S. aureus)またはMRSA、VISA、VRSA、GISA、LRSA、およびムピロシン耐性黄色ブドウ球菌から選択される薬物耐性種である、請求項14記載の使用のための変種または組成物。
【請求項16】
ストレプトコッカス種が、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、および肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の群から選択される、請求項14記載の使用のための変種または組成物。
【請求項17】
エンテロコッカス種が、E.フェシウム(E. faecium)またはE.フェカリス(E. faecalis)である、請求項14記載の使用のための変種または組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−509519(P2009−509519A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532859(P2008−532859)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003570
【国際公開番号】WO2007/036706
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508091889)ノヴァクタ バイオシステムズ リミティッド (1)
【Fターム(参考)】