説明

リアクトル装置及び電力変換装置

【課題】リアクトルコアの振動を外部へ伝達することを抑制することができるリアクトル装置及び電力変換装置を提供すること。
【解決手段】リアクトル装置20は、リアクトルコイル15と、リアクトルコア201と、リアクトルコイル15とリアクトルコア201とを内部に収容するリアクトルケース202と、リアクトルケース202の固定対象であるインバータ用筐体25の設置部26と接合する脚部203から構成されている。リアクトルコア201は、脚部203とインバータ用筐体25の設置部26との接合面32に直交する方向の脚部203の厚さ分離間した位置に配置されるため、リアクトルコア201が直接インバータ用筐体25に接合された場合と比較して、リアクトルコア201からインバータ用筐体25までの距離が増加する。よって、リアクトルコア201の振動がインバータ用筐体25を通じて外部へ伝達することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電により磁束を発生させるコイルと、磁束の磁路となるリアクトルコアと、コイルとリアクトルコアを収容するリアクトルケースとを備えたリアクトル装置及びこれを内蔵した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等には、電源あるいは電池の電圧を適当に昇圧する電力変換装置が備えられ、電力変換装置には、その構成部品群の一つとして電磁エネルギーを蓄えるためのリアクトルが含まれる。リアクトルは、リアクトルコアに巻かれたコイルに電流を流すことによって電磁エネルギーを蓄えるが、その際にリアクトルコアの振動による騒音が発生するという問題がある。
【0003】
上記問題に対して特許文献1においては、振動源となるリアクトルコアを、電力変換装置の構成部品群を格納する格納ケースに密接させ、振動の対象をリアクトルと格納ケースにすることで、振動対象の全質量を増加させるという構成を採用している。特許文献1では、この構成により、リアクトルのみで振動している場合と比較して、振動の対象となる全質量が増加することでリアクトルの振動量を抑制することができ、振動による騒音を軽減することができると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−73392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の従来技術では、振動の対象となる全質量が増加するため、振動そのものは減少する。しかし、リアクトルコアを電力変換装置の格納ケースに密接させ振動を伝達させているため、この電力変換装置の格納ケースを車体に接続するブラケットを通じた電力変換装置外部への振動の伝達は抑制できず、騒音を軽減しきれていないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、リアクトルコアを振動源とする振動を外部へ伝達することを抑制することができるリアクトル装置及び電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、通電により磁束を発生させるリアクトルコイルと、前記リアクトルコイルが発生した磁束の磁路となる磁性体のリアクトルコアと、前記リアクトルコイル及び前記リアクトルコアを内部に収容するリアクトルケースとを備えたリアクトル装置であって、前記リアクトルケースは、該リアクトルケースの固定対象である筐体との接合面を有する脚部を有し、前記リアクトルコアが前記筐体から離れる方向に、前記脚部の前記接合面と離間させて配置されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成すれば、リアクトル装置はリアクトルケースの脚部を介して固定対象であるインバータ用筐体の設置部と接合し、振動源となるリアクトルコアは脚部と設置部との接合面を基準としてインバータ用筐体から離間した方向に配置される。そのため、リアクトルコアからリアクトルケース及び脚部を通じてインバータ用筐体に伝達される振動は、リアクトルコアが直接インバータ用筐体と接触している場合と比較して振動伝達経路が増加する。ここで振動は、振動源から距離が離れるにつれて減衰し伝達される。よって、本発明によれば、リアクトルコアの振動はインバータ用筐体に対して減衰して伝達されるため、振動がインバータ用筐体25を通じて外部へ伝達することを抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリアクトル装置であって、前記筐体と前記脚部は、前記リアクトルケースと一体となるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成すれば、部品点数を削減することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリアクトル装置であって、前記リアクトルケースは、前記脚部と前記筐体との接合方向に開放部を有することを特徴とする。
【0012】
このように構成すれば、リアクトルケースの開放部を上側に向けリアクトルコアの材料を所定高さまで注入、硬化させた後、開放部側をインバータ用筐体に向けて設置する製法を採用した場合に、インバータ用筐体と脚部との接合面からリアクトルコアを容易に離間させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のリアクトル装置であって、前記リアクトルケースは、前記リアクトルコアの側面を覆う側壁部と、前記リアクトルケースにおける開放部と180度反対側の面を覆う被覆壁部を有することを特徴とする。
【0014】
このように構成すれば、発熱源であるリアクトルコイルが発した熱は、リアクトルコアに密着している側壁部及び被覆壁部を通じてインバータ用筐体に伝熱し、インバータ用筐体を通じて外部へ放熱される。よって、リアクトルケースの外側に位置する電力変換装置の構成部品に対する熱放射を軽減することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のリアクトル装置であって、前記側壁部と前記被覆壁部は一体となるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
このように構成すれば、脚部と筐体との接合方向に開放部を有し、脚部の接合面と離間させたリアクトルコアを形成するに際して、開放部を上側に向けリアクトルコアの材料を所定高さまで注入、硬化させた後、開放部側を筐体に向けて設置する製法を採用した場合に、被覆壁部と側壁部との隙間からリアクトルコアの材料が漏れ出ることがない。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のリアクトル装置であって、前記リアクトルケースは、前記脚部と前記筐体との接合方向と180度反対側の被覆壁部が、該リアクトルケースと別部品により構成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成すれば、例えば、リアクトルケースと別部品により構成されている被覆壁部の方向にリアクトル装置の端子を配置した後、被覆壁部をリアクトルケースに組み付けることができる。よって、リアクトル装置の配線方法など、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、通電により磁束を発生させるリアクトルコイルと、前記リアクトルコイルが発生した磁束の磁路となる磁性体のリアクトルコアとを備えたリアクトル装置であって、前記リアクトルコアは、該リアクトルコアの固定対象である筐体との接合面を有する脚部を有し、前記リアクトルコアが前記筐体から離れる方向に、前記脚部の接合面と離間させて配置されていることを特徴とする。
【0020】
このように構成すれば、リアクトルケースを用いずに、リアクトル装置とインバータ用筐体を固定することができる。よって、部品点数を削減することができ、リアクトル装置の小型化を図ることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7に記載のリアクトル装置であって、前記リアクトルコアと前記筐体との間に防振ゴムが配置されていることを特徴とする。
【0022】
このように構成すれば、リアクトルコアの振動は防振ゴムに吸収されるため、振動がインバータ用筐体を通じて外部へ伝達することを抑制することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、半導体素子を内蔵する半導体モジュールと、前記半導体モジュールを冷却する冷却器と、前記半導体モジュールに電気的に接続されたリアクトル装置とを有する電力変換装置であって、前記リアクトル装置は、請求項1乃至8記載のリアクトル装置であることを特徴とする。
【0024】
このように構成すれば、リアクトル装置の振動を電力変換装置の外部へ伝達することを抑制する電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例における、電力変換装置を示す回路図。
【図2】実施例における、電力変換装置を示す断面図。
【図3】実施例1における、リアクトル装置を示す断面図。
【図4】実施例1における、リアクトル装置を示す平面図。
【図5】リアクトル装置の製造方法を示す説明図。
【図6】実施例2における、リアクトル装置を示す断面図。
【図7】実施例2における、リアクトル装置を示す平面図。
【図8】実施例3における、リアクトル装置を示す断面図。
【図9】実施例3における、リアクトル装置を示す平面図。
【図10】実施例4における、リアクトル装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例1)
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、図1以降の説明において同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図1は、リアクトル装置20が適用される電力変換装置1の回路図を示す図である。図1に示す電力変換装置1は、昇圧コンバータ部(DC−DCコンバータ)10とインバータ部11とを有する自動車用インバータである。電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータ12に通電する駆動電流の生成に用いられる。
【0028】
昇圧コンバータ部10は外部電源13に接続され、昇圧コンバータ部10と外部電源13との間には、フィルタコンデンサ14が接続されている。フィルタコンデンサ14は、直流の外部電源13から昇圧コンバータ部10に入力される電源電流に含まれるリップル電流を吸収して、電源電流を安定化する。
【0029】
昇圧コンバータ部10は、リアクトルコイル15とIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子161A(半導体素子)及びダイオード162Aを内蔵した2個の半導体モジュール16Aとを備えている。リアクトルコイル15は、外部電源13側に接続され、入力電圧を昇圧する。昇圧コンバータ部10のIGBT素子161Aはリアクトルコイル15の交流モータ12側に接続され、各IGBT素子161Aにダイオード162Aが一対として接続されている。IGBT素子161Aは、制御回路23(図2参照)による制御によりスイッチング動作を行う。
【0030】
また、昇圧コンバータ部10のIGBT素子161Aとインバータ部11との間には、平滑コンデンサ17が接続されている。平滑コンデンサ17は、断続電流となる昇圧コンバータ部10の出力電流を平滑化して、安定した直流電流をインバータ部11に入力させる。
【0031】
インバータ部11は、IGBT素子161B(半導体素子)及びダイオード162Bを内蔵した6個の半導体モジュール16Bとスナバコンデンサ18とを備えている。インバータ部11のIGBT素子161Bは平滑コンデンサ17に接続され、各IGBT素子161Bにダイオード162Bが一対となって接続されている。IGBT素子161Bは制御部23(図2参照)による制御によりスイッチング動作を行う。スナバコンデンサ18は、IGBT素子161Bに接続され、IGBT素子161Bの動作時に発生する電圧サージを抑制して、過電圧によるIGBT素子161Bの破損を防止している。
【0032】
また、インバータ部11には、三相の交流モータ12が接続されており、インバータ部11によって生成された駆動電流を交流モータ12に供給する。
【0033】
図2は、リアクトルコイル15を内包するリアクトル装置20を搭載した電力変換装置1の断面図を示している。
【0034】
電力変換装置1は、図2に示すように、半導体モジュール16、冷却器21、リアクトル装置20、フィルタコンデンサ14、平滑コンデンサ17、バスバー22、及び制御回路部23が格納ケース24に収容されて構成されている。
【0035】
半導体モジュール16はコンバータ部10又はインバータ部11を構成するIGBT素子161A、161Bとダイオード162A、162Bとを内蔵している。半導体モジュール16からは信号端子25と主電極端子26が突出して形成されており、信号端子25と主電極端子26とは180度反対側からそれぞれ突出している。
【0036】
冷却器21は、半導体モジュール16を冷却する。冷却器21は図2に示すごとく、半導体モジュール16を両面から挟持するように配置される複数の冷却管211と冷媒導入管212、冷媒排出管(不図示)とを有している。そして、全体的には、冷却管211と半導体モジュール16の列とを交互に積層している。これにより、全ての半導体モジュール16は、その両面を冷却管211により挟持された状態となる。
【0037】
各冷却管211は、その内部に冷媒流路213を有しており、これに冷却媒体を流通させることができるように構成されている。また、複数の冷却管211の両端がそれぞれ連結され、2箇所のヘッダ部(不図示)を形成している。また、2箇所のヘッダ部(不図示)の端部には、冷媒導入管212と冷媒排出管(不図示)とがそれぞれ設けてある。冷媒導入管212と冷媒排出管(不図示)とは、冷却器21の積層方向の一端に配された冷却管211に接続されている。そして、冷媒流路213に冷却媒体を流通させることにより、半導体モジュール16を両面から冷却することができる。
【0038】
上記冷却器21における冷媒導入管212が接続されている冷却管211の積層方向の端部であって、冷媒導入管212と冷媒排出管(不図示)との間の空間にはリアクトル装置20が配置されている。
【0039】
また、冷却器21の紙面下方、つまり半導体モジュール16の主電極端子26側には、半導体モジュール16に対して電流を入出させるバスバー22が配置されている。
【0040】
冷却器21、半導体モジュール16、リアクトル装置20、及びバスバー22は、電力変換装置1の構成物品群を格納する格納ケース24の一部を構成するインバータ用筐体25に格納されている。インバータ用筐体25は半導体モジュール16の信号端子25及び主電極端子26の両突出方向にそれぞれ開口し、リアクトル装置20を設置する設置部26を有している。
【0041】
冷却器21の紙面上方、つまり半導体モジュール16の信号端子25側には、半導体モジュール16のIGBT素子161A、161Bを制御する制御回路部23が配置されている。半導体モジュール16の信号端子25は、制御回路部23に接続されている。
【0042】
また、バスバー22の紙面下方、つまり、バスバー22を挟んで冷却器21及び半導体モジュール16の反対側にはフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ17が配置されている。半導体モジュール16の主電極端子26とフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ17はともにバスバー22に接続されている。なお、図2には不図示であるが、スナバコンデンサ18もフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ17と共に配置されている。
【0043】
次に、上記電力変換装置1に配置されたリアクトル装置20の具体的構成について説明する。
【0044】
図3は実施例1におけるリアクトル装置20の断面図、図4はリアクトル装置20の平面図を示している。
【0045】
リアクトル装置20は、通電により磁束を発生させるリアクトルコイル15と、リアクトルコイル15が発生した磁束の磁路となる磁性体リアクトルコア201と、リアクトルコイル15とリアクトルコア201を内部に収容するリアクトルケース202とから構成されている。
【0046】
リアクトルケース202は円筒形状であり、リアクトルコア201の側面全周を覆う側壁部2021と、側壁部2021の端部でリアクトルコア201の端面を覆う円板状の被覆壁部2022が配置される構成になっている。リアクトルケース202は被覆壁部2022と180度反対側、つまり、インバータ用筐体25の設置部26との接合方向(図3、z軸方向)には、設置部26に対してリアクトルコア201を露出させた開放部31を有している。そのため、被覆壁部2022は開放部31と180度反対側のリアクトルコア201の端面を覆っているといえる。
【0047】
また、リアクトルケース202は、開放部31側の端部に脚部203を有している。脚部203は、リアクトルケース202の固定対象である設置部26との接合面32を有している。この接合面32を介してリアクトルケース202は設置部26に接合されている。脚部203は、側壁部2021の端部周縁から上記接合方向と直交する方向に延出して形成されている。脚部203は、上記接合方向から見た投影形状が被覆壁部2022の円形の投影形状よりも大きい四角形となるように延出して形成されている。つまり、四角形である脚部203の投影形状の一辺は円形の被覆壁部2022の直径より長く、脚部203の内側に側壁部2021が配置される構成になっている。ここで実施例1においては、図3に示すようにリアクトル装置20として側壁部2021と被覆壁部2022と脚部203とが一体となるように形成されている。また、側壁部2021と被覆壁部2022と脚部203とを別部品とし、リアクトル装置20の製造過程において各部品を接合させてもよい。
【0048】
図3、図4に示すように、四角形である脚部203の4つの遇部にはボルト33が挿入されるねじ孔34がそれぞれ設けられている。また、設置部26には、脚部203に設けられた各ねじ孔34と対向する位置に各締結穴35が設けられている。脚部203と設置部26は、脚部203の接合面32が設置部26に接合した状態で、各ねじ孔34を貫通して各締結穴35に締結するボルト33によって固定されている。
【0049】
リアクトルケース202内には、リアクトルコイル15とリアクトルコア201が収容されている。リアクトルコイル15の端子204は、設置部26に設けられた孔を通じてリアクトル装置20の外に引き出され、外部と接続している。リアクトルコイル15はリアクトルコア201で全体が囲まれており、リアクトルコア201はリアクトルケース202の側壁部2021と被覆壁部2022に密着している。
【0050】
リアクトルコア201には、磁性鉄粉と樹脂を混入したダストコア(磁性鉄粉混合樹脂)が用いられている。ダストコアは、リアクトルコイル15の内外に充填され、硬化されてリアクトルコイル15並びにリアクトルケース202の側壁部2021と被覆壁部2022に密着している。ダストコアに用いられる磁性鉄粉としては、軟磁性を示すソフトフェライト粉末、樹脂としては、耐熱性や絶縁性、密着性に優れるエポキシ樹脂の他、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが用いられる。また、リアクトルコア201としてダストコアの代わりに、圧粉磁心材料を用いて形成した固定子コアや、電磁鋼板を用いてもよい。
【0051】
リアクトルコア201は、上記接合方向、つまり設置部26から離れる方向(図3、z軸方向)に、脚部203の接合面32と離間させて配置されている。リアクトルコア201は、具体的には脚部203の厚さ分(図3、T1)接合面32から離間した位置に配置されている。リアクトルコア201と設置部26とが離間した空間は空気層とされている。この空気層は脚部203の内周縁で囲まれる範囲内において、設置部26と対向するリアクトルコア201の全面に亘って形成されている。その結果、リアクトルコア201と設置部26とは接触していない。

次に、本実施例におけるリアクトル装置20の製造方法の一例について、図5を用いて説明する。
【0052】
まず、図5(a)に示すように、リアクトルケース202内における所定の位置に、リアクトルコイル15を配置する。このとき、リアクトルコイル15の端子204をリアクトルケース202の開放部31よりも外側に突出させる。次いで、図5(b)に示すように、リアクトルケース202の開放部31から底面に向かって脚部203の厚さ分(図5(b)、T1)離間した位置までダストコアとなる磁性粉末混合樹脂液40を注入する。そして、所定加熱温度にて所定時間保持し、磁性粉末混合樹脂液40を固化させてリアクトルコア201を形成する。次いで、図5(c)に示すように、リアクトルケース202を180度回転し設置部26に接合する。そのため、リアクトルケース202を回転させて接続するだけで、容易にリアクトルコア201を設置部26から離間させて配置することができる。
【0053】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
【0054】
リアクトルコア201の材料である磁性体は、一般的に磁歪特性を有する。磁歪特性とは、磁性体に対して外部から磁界を与えることにより、磁性体内部の各磁区における自発磁化の方向が、外部から与えられた磁界の方向に揃うことによって磁性体の外形が変形する特性である。したがって、リアクトルコイル15に電流が流れると、その電流によって生じる磁界の方向と大きさに応じて、磁性体であるリアクトルコア201が変形する。ここで、リアクトルコイル15に断続的に電流が流れた場合、リアクトルコア201は伸縮し振動が生じる。例えば、図1に示すようにリアクトル装置20が電気自動車やハイブリッド自動車等の電力変換装置1に搭載された場合、電力変換装置1に用いられる半導体モジュール16のスイッチング周波数fに応じた振動が生じる。そのため、スイッチング周波数fによっては、車両の乗員に耳障りな振動音を与えることになる。
【0055】
実施例1では、リアクトル装置20はリアクトルケース202の脚部203を介して固定対象であるインバータ用筐体25の設置部26と接合し、振動源となるリアクトルコア201は脚部203と設置部26との接合面32を基準としてインバータ用筐体25から離間した方向に配置される。そのため、リアクトルコア201からリアクトルケース202及び脚部203を通じてインバータ用筐体25に伝達される振動は、リアクトルコア201が直接インバータ用筐体25と接触している場合と比較して振動伝達経路が増加する。ここで振動は、振動源から距離が離れるにつれて減衰し伝達される。よって、実施例1によれば、リアクトルコア201の振動はインバータ用筐体25に対して減衰して伝達されるため、振動がインバータ用筐体25を通じて外部へ伝達することを抑制することができる。
【0056】
また、リアクトルケース202の開放部31を上側に向けリアクトルコア201の材料を所定高さまで注入、硬化させた後、開放部31側をインバータ用筐体25に向けて設置する製法を採用した場合に、インバータ用筐体25と脚部203との接合面32からリアクトルコア201を容易に離間させることができる。
【0057】
また、発熱源であるリアクトルコイル14が発した熱は、リアクトルコア201に密着している側壁部2021及び被覆壁部2022を通じてインバータ用筐体25に伝熱し、インバータ用筐体25を通じて外部へ放熱される。よって、リアクトルケース202の外側に位置する電力変換装置1の構成部品に対する熱放射を軽減することができる。
【0058】
また、上記構成のリアクトル装置20を電力変換装置1内に配置したため、リアクトル装置20の振動を外部へ伝達することを抑制する電力変換装置1を提供できる。
(実施例2)
図6は実施例2におけるリアクトル装置20の断面図、図7はリアクトル装置20の平面図を示している。
【0059】
実施例2では、リアクトルケース202の被覆壁部2023が、リアクトルケース202の側壁部2021に対して別部品により構成されている。また、リアクトルコイル15の端子204は、円板状の被覆壁部2023に設けられた孔を通じてリアクトル装置20の外に引き出され、外部と接続している。
【0060】
実施例2においては、図7に示すように円板状の被覆壁部2023の周縁部にボルト50が挿入される4個のねじ孔51が設けられている。また、側壁部2021の端部には、円板状の被覆壁部2023に設けられた各ねじ孔51と対向する位置に各締結穴52が設けられている。円板状の被覆壁部2023と側壁部2021は各ねじ孔51を貫通して各締結穴52に締結するボルト50によって接合されている。ここで、図6に示すように、側壁部2021に締結穴52を設けるため、側壁部2021は被覆壁部2023との接合面からボルト50の締結方向(図6、z軸方向)に対して一定長さ(少なくとも、ボルト50の軸長以上)、リアクトルケース202の内側方向に対して肉厚となっている。また、円板状の被覆壁部2023とリアクトルケース202との接合はボルト50を用いず、ろう付けにより接合してもよい。
【0061】
なお、上記以外の構成は実施例1と同様である。
【0062】
実施例2においては、上記のように構成することによって、図6、図7に示すように、側壁部2021と別部品により構成されている被覆壁部2023にリアクトルコイル15の端子204を配置した後、円板状の被覆壁部2023をリアクトルケース202に組み付けることができる。よって、リアクトル装置20の配線方法など、設計の自由度の向上を図ることができる。
(実施例3)
図8は実施例3におけるリアクトル装置20の断面図、図9はリアクトル装置20の平面図を示している。
【0063】
実施例3では、リアクトルコア201は、設置部26と接合する脚部203が円柱状リアクトルコア本体部205に一体成形されている。また、リアクトルコア本体部205はリアクトルケース202に覆われていない。つまり、リアクトルコア本体部205の外表面全体が露出している。脚部203は、リアクトルコア本体部205と同一材質で形成され、リアクトルコア本体部205の端部周縁からリアクトル装置20とインバータ用筐体25の設置部26との接合方向(図8、z軸方向)と直交する方向に延出して形成されている。脚部203は、上記接合方向から見た投影形状がリアクトルコア本体部205の円形の投影形状よりも大きい四角形となるように延出して形成されている。つまり、四角形である脚部203の投影形状の一辺は、円形であるリアクトルコア本体部205の投影形状の直径より長くなっている。
【0064】
また、四角形である脚部203の4つの遇部には、ボルト33が挿入されるねじ孔34を有する金属製の補強部60がインサート成形により埋設され、金属製の補強部60が設置部26と脚部203との接合面32の一部を成している。ここで、実施例3においては、リアクトルコア201は、磁性鉄粉と樹脂を混入したダストコア又は圧粉磁心材料を用いて形成されている。
【0065】
リアクトルコア本体部205に一体成形された脚部203は、リアクトルコア本体部205の端部面から接合方向に対して突出している。そのため、リアクトルコア本体部205は、接合方向、つまり、設置部26から離れる方向に接合面32から離間して配置され、空気層が形成されている。この空気層は脚部203の内周縁で囲まれる範囲内において、設置部26と対向するリアクトルコア本体部205の全面に亘って形成されている。その結果、リアクトルコア本体部205と設置部26とは接触していない。
【0066】
なお、上記以外の構成は実施例1と同様である。
【0067】
実施例3においては、上記のように構成することによって、リアクトルケース202を用いずに、リアクトル装置20とインバータ用筐体25を固定することができる。よって、部品点数を削減することができ、リアクトル装置20の小型化を図ることができる。
(実施例4)
図10は実施例4におけるリアクトル装置20の断面図を示している。
【0068】
実施例4では、リアクトルコア201とインバータ用筐体25の設置部26とが離間した空間に防振ゴム70を充填している。ここで、図8は一例として実施例1に記載されたリアクトル装置20のリアクトルコア201と設置部26とが離間した空間に対して防振ゴム70を充填しているが、実施例2、実施例3に対して適用してもよい。
【0069】
実施例4においては、上記のように構成することによって、リアクトルコア201の振動は防振ゴム70に吸収されるため、振動がインバータ用筐体25を通じて外部へ伝達することを抑制することができる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されることはなく、本発明の技術的範囲に存在する限り、以下のように変形させてもよい。
【0071】
・上記実施例1に記載した電力変換装置1に、上記実施例2乃至4に記載したリアクトル装置20を適用させてもよい。このようにしても、リアクトル装置20の振動を外部へ伝達することを抑制する電力変換装置1を提供することができる。
【0072】
・上記実施例1乃至3では、リアクトルケース202に開放部31を形成したが、リアクトルケース202でリアクトルコア201の全面を覆い、リアクトルコア201がリアクトルケース201に内包された状態でインバータ用筐体25から離間させてもよい。
【0073】
・上記実施例では、リアクトル装置20が設置されるインバータ用筐体25は電力変換装置1の構成物品群を格納する格納ケース24の一部を構成したが、インバータ用筐体25が電力変換装置1の格納ケース25に内装される態様にしてもよい。
【0074】
・上記実施例1乃至3では、リアクトルコア201はインバータ用筐体25の設置部26から脚部203の厚さ分離間しているが、脚部203の厚さ以下、脚部203の厚さ以上で離間してもよい。
【0075】
・上記実施例では、脚部203と被覆壁部2023は4箇所で締結されていたが、3箇所以下、5箇所以上で締結してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 電力変換装置
15 リアクトルコイル
16 半導体モジュール
20 リアクトル装置
201 リアクトルコア
202 リアクトルケース
2021 側壁部
2022、2023 被覆壁部
203 脚部
204 端子
24 格納ケース
25 インバータ用筐体
26 設置部
31 開放部
33、50 ボルト
34、51 ねじ孔
35、52 締結穴
60 補強部
70 防振ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により磁束を発生させるリアクトルコイル(14)と、
前記リアクトルコイル(14)が発生した磁束の磁路となる磁性体のリアクトルコア(201)と、
前記リアクトルコイル(14)及び前記リアクトルコア(201)を内部に収容するリアクトルケース(202)とを備えたリアクトル装置(20)であって、
前記リアクトルケース(202)は、該リアクトルケース(202)の固定対象である筐体(25)との接合面(32)を有する脚部(203)を有し、
前記リアクトルコア(201)が前記筐体(25)から離れる方向に、前記脚部(203)の前記接合面(32)と離間させて配置されていること、
を特徴とするリアクトル装置(20)。
【請求項2】
前記筐体(25)と前記脚部(203)は、前記リアクトルケース(202)と一体となるように形成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のリアクトル装置(20)。
【請求項3】
前記リアクトルケース(202)は、前記脚部(203)と前記筐体(25)との接合方向に開放部(31)を有すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル装置(20)。
【請求項4】
前記リアクトルケース(202)は、前記リアクトルコア(201)の側面を覆う側壁部(2021)と、
前記リアクトルケース(202)における開放部(31)と180度反対側の面を覆う被覆壁部(2022)を有すること、
を特徴とする請求項3に記載のリアクトル装置(20)。
【請求項5】
前記側壁部(2021)と前記被覆壁部(2022)は一体となるように形成されていること、
を特徴とする請求項4に記載のリアクトル装置(20)。
【請求項6】
前記リアクトルケース(202)は、前記脚部(203)と前記筐体(25)との接合方向と180度反対側の被覆壁部(2023)が、該リアクトルケース(202)と別部品により構成されていること、
を特徴とする請求項4に記載のリアクトル装置(20)。
【請求項7】
通電により磁束を発生させるリアクトルコイル(14)と、
前記リアクトルコイル(14)が発生した磁束の磁路となる磁性体のリアクトルコア(201)とを備えたリアクトル装置(20)であって、
前記リアクトルコア(201)は、該リアクトルコア(201)の固定対象である筐体(25)との接合面(32)を有する脚部(203)を有し、
前記リアクトルコア(201)が前記筐体(25)から離れる方向に、前記脚部(203)の接合面(32)と離間させて配置されていること、
を特徴とするリアクトル装置(20)。
【請求項8】
前記リアクトルコア(201)と前記筐体(25)との間に防振ゴム(70)が配置されていること、
を特徴とする請求項1乃至7に記載のリアクトル装置(20)。
【請求項9】
半導体素子を内蔵する半導体モジュール(13)と、
前記半導体モジュール(13)を冷却する冷却器(21)と、
前記半導体モジュール(13)に電気的に接続されたリアクトル装置(20)とを有する電力変換装置(1)であって、
前記リアクトル装置(20)は、請求項1乃至8記載のリアクトル装置(20)であること、
を特徴とする電力変換装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−181804(P2011−181804A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46363(P2010−46363)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】