説明

リアクトル

【課題】放熱性に優れるリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル1は、巻線2wを巻回してなる一つのコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体を収納するケース4とを具える。コイル2の端面形状がレーストラック状であり、コイル2の軸方向が、ケース4の外底面41oに平行するように、コイル2がケース4に収納されている。コイル2の外周面の一部が磁性コア3(外側コア部32)に覆われ、磁性コア3に覆われていない箇所がケース4の内底面41iに接している。コイル2の外周面の一部(主として直線部22)がケース4の内底面41iに直接接触することで、コイル2の熱をケース4に直接放出でき、ケース4を介して、ケース4が設置される水冷台といった設置対象に放熱できる。従って、リアクトル1は、放熱性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用DC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに用いられるリアクトル、リアクトルを具えるコンバータ、及びコンバータを具える電力変換装置に関するものである。特に、放熱性に優れるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルとして、O字状といった環状の磁性コアの外周に、巻線を螺旋状に巻回してなる一対のコイルが並列に配置された形態が挙げられる(特許文献1)。
【0003】
その他、特許文献2に開示されるリアクトルのように、コイルを一つのみ具える小型なリアクトルがある。このリアクトルは、特許文献2の図1に示すようにコイルの内周に配置される円柱状の内側コア部と、このコイルの外周面のほぼ全周を覆う円筒状コア部と、このコイルの各端面に配置される一対の円板状コア部とを具える磁性コア、所謂ポット型コアを具える。ポット型コアは、同心状に配置された内側コア部及び円筒状コア部が上記円板状コア部により連結されて閉磁路を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/125593号
【特許文献2】特開2009-033051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアクトルの作動時、通電によりコイルが発熱してコイルや磁性コアが高温になる。特に、車載用リアクトルでは、一般的な電子部品に利用されるリアクトルと比較して発熱量が大きい。そのため、車載用リアクトルは、通常、水冷台といった冷却機能を有する設置対象に固定されて利用される。
【0006】
例えば、上述したポット型コアを具えるリアクトルを、コイルの軸方向が設置対象の表面に直交するように設置対象に固定する場合を考える(以下、この配置を縦型配置と呼ぶ)。縦型配置では、コイルの端面のみが設置対象に近接して配置され、コイルの他の領域は設置対象までの距離が長くなることから、コイルにおいて設置対象に近接した領域が少なく、コイルの熱を設置対象に伝え難い。従って、縦型配置では、十分な放熱性を有するとはいえない。
【0007】
一方、上述したポット型コアを具えるリアクトルを、コイルの軸方向が設置対象の表面に平行するように設置対象に固定する場合を考える(以下、この配置を横型配置と呼ぶ)。この場合、特許文献2に開示されるようにコイルの端面形状を真円とすると、コイルの外周面をつくる一直線のみが設置対象に近接し、上述の縦型配置と同様にコイルにおいて設置対象に近接した領域が少なく、横型配置でも、十分な放熱性を有するとはいえない。
【0008】
特に、磁性コアのうちコイルの外周面を覆う部分を、特許文献1,2に開示されるような磁性粉末と樹脂との成形硬化体により構成する場合、鉄といった磁性粉末に比較して、熱伝導性に劣る樹脂がコイルと設置対象との間に過度に介在すると、放熱性の低下を招く。
【0009】
また、ポット型コアのようにコイルの外周面の実質的に全周を磁性コアで覆う場合、コイルの熱が磁性コアを介して外部に放出されるものの、十分な放熱性を有するとはいえない。従って、一つのコイルを具えるリアクトルであって、放熱性に優れる構成の開発が望まれる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、放熱性に優れるリアクトルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記リアクトルを具えるコンバータ、このコンバータを具える電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コイルの形状を特定の形状とすると共に、放熱経路となるケースを具え、このケースに上記コイルの外周面の一部が接する構成とすることで、上記目的を達成する。
【0012】
本発明のリアクトルは、巻線を巻回してなる一つのコイルと、このコイル内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、上記コイルと上記磁性コアとの組合体を収納するケースとを具える。上記コイルは、以下の(1)〜(3)を満たす。
(1) コイルの端面形状は、非円形状で、かつ曲線部を有する形状である。
(2) コイルは、その軸方向が上記ケースにおいて設置対象によって冷却される外底面に平行するように当該ケースに収納されている。
(3) コイルの外周面の一部が上記磁性コアに覆われ、上記磁性コアに覆われていない箇所の少なくとも一部が上記ケースの内底面に接している。
上記磁性コアは、上記コイルの内側に配置される内側コア部と、上記コイルの外周面の一部を覆う外側コア部とを具える。上記内側コア部は、圧粉成形体から構成され、上記外側コア部は、磁性粉末と樹脂との混合物から構成されている。
【0013】
上述のように本発明リアクトルは、コイルの外周面(複数のターンの積層面)の実質的に全部が磁性コアに覆われるのではなく、閉磁路を形成するためにコイルの外周面の一部のみが磁性コアに覆われ、かつコイルの外周面の少なくとも一部がケースに接する構成である。特に、本発明リアクトルでは、コイルの端面形状を真円ではなく非円形状とし、かつ横型配置とする。この構成により、本発明リアクトルは、コイルの外周面とケースの内底面との接触面積を大きくしたり、ケースの内底面までの距離が短い領域、即ち冷却機能を有する設置対象に近接した領域を増やしたりすることができる。従って、本発明リアクトルは、コイルの熱をケースに直接かつ効率よく伝達でき、この熱は、設置対象に接して設置対象により冷却されるケースの外底面を経て設置対象に伝えられることから、放熱性に優れる。また、本発明リアクトルは、一対のコイルを具える特許文献1と異なり、コイルが一つであることで小型である上に、コイルの端面形状が真円ではなく扁平な形状であることから、端面形状が真円であるコイルと比較して嵩(真円の直径方向の大きさ)を小さくし易く、この点から小型である。更に、本発明リアクトルでは、コイルの端面形状が曲線部を有することで、コイルを形成し易い。
【0014】
また、本発明リアクトルは、コイルの端面形状を直線部と曲線部とを具える構成とすることで、直線部のみを具える特許文献1に記載のコイルと比較して、コイルを形成し易く、生産性に優れる。更に、本発明リアクトルは、外側コア部を上記混合物としていることで、コイルの外周面の一部をケースの内底面に接触するように収納し、このケースに上記混合物を充填して樹脂を硬化することで外側コア部を容易に形成できる。ここで、リアクトルに利用される磁性コアには、複数の電磁鋼板を積層した積層体、磁性粉末を加圧成形した圧粉成形体、上述した磁性粉末と樹脂との混合物から構成される成形硬化体、及びこれらの組合せ(以下、ハイブリッドコアと呼ぶ)が挙げられる。特に、圧粉成形体は、複雑な三次元形状であっても容易に成形できることから、内側コア部と外側コア部との双方を圧粉成形体とすることができる。しかし、本発明リアクトルは、ケースに収納された任意の形状のコイルに対して、当該コイルの外周面の一部が磁性コアの一部(外側コア部)により覆われている、といった複雑な形状である。外側コア部を上記混合物によって構成することで、外側コア部を電磁鋼板の積層体や圧粉成形体によって構成する場合に比較して、上述のような複雑な形状であっても外側コア部を容易に形成できる。また、外側コア部を上記混合物とすると、磁性粉末と樹脂との混合割合を容易に変更できることから、所望の磁気特性(主としてインダクタンス)を有する外側コア部やこの外側コア部を具える磁性コアを容易に形成できる。これらの点から本発明リアクトルは、生産性に優れる。
【0015】
更に、外側コア部が上記混合物であることで、内側コア部と当該外側コア部とが上記混合物の樹脂により一体化された構成とすることができる。この形態は、両コア部の接合工程や接合材料(接着剤や接着テープなど)が不要であり、部品点数及び工程数の低減を図ることができる。また、この形態は、コイルと内側コア部との組物をケースに収納し、例えば、コイルの外周面の一部を覆うように外側コア部を成形することで、所定の特性を有する磁性コアの形成と同時に、リアクトルを製造できる。このことからも本発明リアクトルは、生産性に優れる。
【0016】
加えて、本発明リアクトルは、内側コア部を圧粉成形体とすることで種々の内周形状のコイルに対して、当該コイルの内周形状に沿った外形を有する内側コア部を容易に形成できる。内側コア部の外形は、コイルの内周面に沿った相似形状とすると、内側コア部の外周面とコイルの内周面とを近接させられるため、リアクトルを更に小型にすることができる。
【0017】
内側コア部及び外側コア部の両コア部の構成材料が異なるハイブリッドコアとすると、両コア部の磁気特性をも異ならせることができる。例えば、適宜な構成材料を選択して、内側コア部の飽和磁束密度が外側コア部よりも高い形態とすることができる。この形態は、特許文献1に記載されるように磁性コア全体の飽和磁束密度が一様である磁性コアと比較して、内側コア部の断面積を小さくできる。内側コア部の断面積が小さいことで、コイルの周長も短くできるため、この形態は、小型化、軽量化、損失の低減に寄与することができる。
【0018】
或いは、適宜な構成材料を選択して、外側コア部の透磁率が内側コア部よりも低い形態とすることができる。この形態は、ギャップレス構造としたり、内側コア部をより小さくしたりすることができる。ここで、リアクトルの磁性コアに利用される代表的な磁性材料は、飽和磁束密度と比透磁率とに相関関係があり、飽和磁束密度の大きい方が比透磁率の大きいものが多い。従って、磁性コア全体の飽和磁束密度が高い場合、比透磁率も高い傾向にあり、当該磁性コア内に、磁性コアよりも透磁率が低い材料、代表的には非磁性材料からなるギャップ材やエアギャップといった、磁束の飽和を低減するギャップを介在させる。ギャップを介在させる場合、ギャップ箇所からの漏れ磁束がコイルに及んで損失が生じることを低減するために、コイルの内周面と内側コア部の外周面との間にある程度の隙間を設けることが望まれる。ギャップレス構造の場合、ギャップ分だけ小型にできる上に、コイルと内側コア部とを近接配置して上記隙間を小さくすることで、より小型なリアクトルにできる。このようにギャップレス構造とすると、ギャップ材を不要にできることから、部品点数及び工程数の低減を図ることができる。透磁率を部分的に異ならせて磁性コア全体の比透磁率を調整したハイブリッドコアとする本発明リアクトルでは、ギャップレス構造にすることができる。
【0019】
本発明リアクトルの一形態として、上記内側コア部の各端面はそれぞれ、上記コイルの各端面のそれぞれに面一である、又は、上記コイルの一方の端面に面一であり、上記コイルの他方の端面から突出している、又は、上記コイルの各端面のそれぞれから突出している形態が挙げられる。
【0020】
上記形態は、内側コア部がコイルの軸方向の長さと同等以上の長さを有する。従って、外側コア部を構成する混合物よりも飽和磁束密度が高い傾向にある圧粉成形体からなる内側コア部に、コイルの磁束を十分に通過させられるため、上記形態は、損失を低減することができる。
【0021】
本発明リアクトルの一形態として、上記コイルの端面形状は、一対の半円弧部と、これら半円弧部を繋ぐ一対の直線部とから構成されるレーストラック状であり、少なくとも上記直線部が上記ケースの内底面に接している形態が挙げられる。
【0022】
コイルの端面形状が非円形状であって、かつ曲線部を有する形状として、(1)実質的に曲線のみからなる形状、(2)曲線部と直線部とを有する形状が挙げられる。
【0023】
(1)曲線のみからなる形状は、例えば、楕円が挙げられる。楕円状のコイルは、真円に近いため周長が比較的短いことから、コイルを構成する巻線の長さを短くし易く、巻線の使用量の低減により、銅損といった損失の低減や軽量化を図ることができる。
【0024】
(2)曲線部と直線部とを具える形状は、上述のレーストラック状の他、正方形や長方形といった矩形を含む多角形において各角部分を丸めた角丸め多角形状、上述の楕円の一部の曲線が直線に置換された異形状などが挙げられる。直線部を具えることで、代表的には平面で構成されるケースの内底面に当該直線部を容易に接触することができ、かつこの接触状態を安定して保持できる。従って、直線部を具えるコイルは、ケースの内底面との接触面積を大きくし易く、この接触箇所から効率よくコイルの熱をケースに伝達できる。かつ、コイル内周の面積を一定とする場合、曲線部を具える形状の方が直線のみから構成される形状と比較して周長が短くなり易いことから、上述のように巻線の使用量の低減、銅損などの損失の低減、軽量化を図ることができる。
【0025】
特に、上述のレーストラック状のコイルは、巻線として、導体の横断面形状が四角形(代表的には長方形)である平角線を用い、この平角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズコイルを形成可能である。エッジワイズコイルは、平角線の側面が集まってなる面によりコイルの外周面が形成されるため、丸線を用いた場合に比較して、ケースとの接触面積を確保し易い。また、エッジワイズコイルは、占積率が高いコイルとし易いことから、レーストラック状のコイルは、占積率を高めて小型にし易く、リアクトルの小型化に寄与する。また、レーストラック状のコイルは、直線部の長さを長くし、かつ一対の直線部間の距離を小さくした形態、即ち、アスペクト比:長径/短径が大きい形態とすると、ケースの内底面との接触領域(少なくとも直線部)が多いことから、放熱性を高められる。特に、アスペクト比が1.1〜2程度である横長コイルとすると、ケースの内底面との接触面積の増大、嵩の低減を図ることができて好ましい。また、横長コイルは、真円コイルと比較してコイル全体がケースの内底面に近づいており(ケースの内底面までの距離が短い箇所が多くなっており)、設置対象に近接した領域が多いことからも、コイルの熱をケースの内底面、更には設置対象に伝え易い。その他、レーストラック状のコイルは、角丸め多角形状と比較して曲げ径が大きい傾向にある曲線部(半円弧部)を含むことで、エッジワイズコイルを形成し易く、この点から生産性に優れる。
【0026】
本発明リアクトルの一形態として、絶縁性樹脂から構成され、上記コイルの表面の少なくとも一部を覆って、その形状を保持する内側樹脂部を具え、上記コイルは、上記内側樹脂部を介して上記ケースの内底面に接する形態が挙げられる。
【0027】
コイルは、代表的には、銅などの導電性材料からなる導体と、この導体の外周に設けられた絶縁被覆とを具える巻線を巻回して構成される。絶縁被覆を具える巻線からなるコイルの場合、当該絶縁被覆により、コイルと磁性コアとの間、ケースがアルミニウムなどの金属材料により構成されている場合、コイルとケースとの間を電気的に絶縁することができる。これに対して、上述のようにコイルの少なくとも一部(好ましくは、コイルが磁性コアやケースと接触する箇所の全部)を絶縁性樹脂で覆うことで、コイルと磁性コアとの間の絶縁性、コイルとケースとの間の絶縁性を更に高められる。かつ、上記形態では、内側樹脂部によりコイルの形状が保持されていることで、リアクトルの製造時、例えば、ケース内にコイルと内側コア部との組物を配置する際などで、コイルが変形したり伸縮したりしないことからコイルを取り扱い易く、リアクトルの生産性に優れる。また、内側樹脂部によりコイルを圧縮状態に保持することも可能であり、この場合、コイルの軸方向の長さを短くできるため、リアクトルを小型にすることができる。
【0028】
本発明リアクトルの一形態として、上記ケースの内底面には上記コイルが配置される台座を具え、上記台座が上記コイルの外周面の一部に沿って設けられたコイル溝を有する形態が挙げられる。
【0029】
上記形態は、コイルの外周面に沿った形状のコイル溝にコイルが配置されることで、コイルとケースとの接触面積を多くすることができ、放熱性を更に高められる。また、このコイル溝は、コイルの位置決めにも利用できることから、上記形態は、組立作業性にも優れる。
【0030】
本発明リアクトルの一形態として、上記コイルが接着剤により上記ケースに固定されている形態が挙げられる。
【0031】
上記形態は、コイルとケースとの密着性に優れることで、放熱性を更に高められる。また、ケースに磁性粉末と未硬化の樹脂との混合物を充填して外側コア部を成形する場合、樹脂が硬化するまでの間にコイルの位置がずれるなどの不具合が生じ難く、上記形態は、生産性にも優れる。
【0032】
本発明リアクトルは、コンバータの構成部品に好適に利用することができる。本発明のコンバータとして、スイッチング素子と、上記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、上記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するものであって、上記リアクトルが本発明リアクトルである形態が挙げられる。この本発明コンバータは、電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。本発明の電力変換装置として、入力電圧を変換するコンバータと、上記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、上記コンバータが本発明コンバータである形態が挙げられる。
【0033】
本発明コンバータや本発明電力変換装置は、本発明リアクトルを具えることで、放熱性に優れる。
【発明の効果】
【0034】
本発明リアクトルは、放熱性に優れる。本発明コンバータや本発明電力変換装置は、放熱性に優れる本発明リアクトルを具えることで、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、実施形態1に係るリアクトルの概略斜視図である。
【図2】図2(A)は、実施形態1に係るリアクトルにおいて図1に示す(II)-(II)線で切断した断面図、図2(B)は、図2(A)に示すリアクトルに具えるケースのみを示す断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るリアクトルの構成部材を説明するための概略分解図である。
【図4】図4は、実施形態2に係るリアクトルに具えるコイル成形体の概略斜視図である。
【図5】図5は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。
【図6】図6は、本発明コンバータを具える本発明電力変換装置の一例を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0037】
(実施形態1)
図1〜図3を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。リアクトル1は、巻線2wを巻回してなる一つのコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体を収納するケース4とを具える。リアクトル1の特徴とするところは、コイル2の端面形状、ケース4に対するコイル2の収納状態、磁性コア3の材質にある。以下、各構成を詳細に説明する。
【0038】
[コイル2]
コイル2は、1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる筒状体である。巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を具える被覆線が好適に利用できる。導体は、横断面形状が長方形である平角線、円形状である丸線、多角形状である異形線などの種々の形状のものを利用できる。絶縁被覆を構成する絶縁性材料は、ポリアミドイミドといったエナメル材料が代表的である。絶縁被覆の厚さは、20μm以上100μm以下が好ましく、厚いほどピンホールを低減でき、絶縁性を高められる。例えば、エナメル材料を多層に塗布して絶縁被覆を形成すると、絶縁被覆の厚さを厚くできる。また、絶縁被覆は、異なる材質の多層構造とすることもできる。例えば、ポリアミドイミド層の外周にポリフェニレンスルフィド層を具える多層構造が挙げられる。多層構造の絶縁被覆も電気絶縁性に優れる。巻き数(ターン数)は適宜選択でき、30〜70程度のものが車載部品に好適に利用することができる。
【0039】
ここでは、コイル2は、導体が銅製で、横断面形状が長方形状の平角線(アスペクト比:幅/厚さが5以上、好ましくは10以上)からなり、絶縁被覆がエナメルからなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにして形成されたエッジワイズコイルとしている(巻き数:50)。
【0040】
[端面形状]
図2(A)は、リアクトル1をコイル2の軸方向に直交する平面で切断した断面図である。コイル2は、その軸方向の断面形状が一様であり、端面形状と等しい。コイル2の端面形状は、図2(A)に示すように曲線部と直線部とで構成された形状である。より具体的には、コイル2の端面形状は、並行配置された一対の直線部22と、両直線部22の端部同士を繋ぐように配置された一対の半円弧部21とから構成されたレーストラック状である。ここでは、コイル2のアスペクト比:長径/短径を約1.3としている。半円弧部21は、曲げ半径が比較的大きく、曲げの緩やかな曲線部であることから、この端面形状はエッジワイズ巻きし易い形状である。上記端面形状により、コイル2の外周面及び内周面は、半円弧部21がつくる曲面と、直線部22がつくる平面とで構成される。
【0041】
[配置]
このコイル2は、その内周に磁性コア3の一部(内側コア部31)が挿入された状態でケース4内に収納されている。特に、本発明のリアクトル1では、当該リアクトル1を冷却台といった設置対象に設置したとき、コイル2の軸方向が当該設置対象の表面に平行するようにケース4に収納された横型配置である。ここで、リアクトル1では、設置対象に接触する設置面が平面で構成されたケース4の外底面41oであることから、コイル2は、外底面41oに平行にケース4に収納されている。また、コイル2の外周面において直線部22がつくる平面領域がケース4の外底面41oに平行である。端的に言うと、コイル2は、ケース4に対して横長に収納されている(図1)。
【0042】
また、コイル2は、その外周面の一部(ここでは、一方の直線部22がつくる平面、及びこの直線部22に繋がる両半円弧部21のうち、直線部22と繋がる箇所の近傍がつくる曲面)が磁性コア3(外側コア部32)に覆われている。端的に言うと、コイル2の外周面のうち、端面からみてC字状の領域が磁性コア部3に覆われている。かつ、コイル2は、その外周面のうち、磁性コア3で覆われていない残部がケース4の内底面41iに接している。ここでは、上記コイル2の外周面の残部は、ケース4の内底面41iに設けられたコイル溝44に接している。コイル溝44は、内底面41iに一体に形成された台座43に形成されている。
【0043】
[端部の処理]
コイル2を形成する巻線2wは、ターン形成部分から適宜引き延ばされて外側コア部32の外部に引き出された引出箇所を有し、その両端部の絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、銅やアルミニウムなどの導電性材料からなる端子部材(図示せず)が接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続される。巻線2wの導体部分と端子部材との接続には、TIG溶接などの溶接、圧着などが利用できる。図1に示す例では、コイル2の軸方向に直交するように巻線2wの両端部を引き出しているが、両端部の引き出し方向は適宜選択することができる。例えば、巻線2wの両端部をコイル2の軸方向に平行するように引き出してもよいし、各端部の引き出し方向をそれぞれ異ならせることもできる。
【0044】
上記引出箇所のうち、少なくとも磁性コア3(特に外側コア部32)に接触する可能性がある箇所には、絶縁紙や絶縁性テープ(例えば、ポリイミドテープ)、絶縁フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)などの絶縁材を配置したり、絶縁材をディップコーティングしたり、絶縁性チューブ(熱収縮チューブや常温収縮チューブなど)によって覆ったりすることが好ましい。ここで、例えば、巻き数:50ターンのコイルに電圧を印加したとき、ターン間電圧が12V〜14V程度であっても、引出箇所には600V〜700V程度の電圧が加わる場合がある。従って、上記引出箇所のうち、少なくとも磁性コア3との接触部分を絶縁材で覆っておくことで、当該引出箇所と外側コア部32との間の絶縁を確保することができる。
【0045】
[磁性コア3]
磁性コア3は、図1に示すようにコイル2内に挿通された柱状の内側コア部31と、内側コア部31の少なくとも一方の端面、及びコイル2の筒状の外周面の一部を覆うように形成された外側コア部32とを具え、コイル2を励磁した際に閉磁路を形成する。内側コア部31の構成材料と、外側コア部32の構成材料とが異なっており、磁性コア3は、部分的に磁気特性が異なる。具体的には、内側コア部31は、外側コア部32よりも飽和磁束密度が高く、外側コア部32は、内側コア部31よりも透磁率が低い。
【0046】
《内側コア部》
内側コア部31は、コイル2の内周形状に沿ったレーストラック状の外形を有する柱状体である。内側コア部31は、その全体が圧粉成形体から構成され、ここでは、ギャップ材やエアギャップが介在していない中実体としているが、アルミナ板などの非磁性材料からなるギャップ材やエアギャップが介在した形態とすることができる。
【0047】
圧粉成形体は、代表的には、表面にシリコーン樹脂などからなる絶縁被膜を具える軟磁性粉末や、この軟磁性粉末に加えて適宜結合剤を混合した混合粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。圧粉成形体の作製にあたり、軟磁性粉末の材質や、軟磁性粉末と結合剤との混合比、絶縁被膜を含む種々の被膜の量などを調整したり、成形圧力を調整したりすることで飽和磁束密度を変化させることができる。例えば、飽和磁束密度の高い軟磁性粉末を用いたり、結合剤の配合量を低減して軟磁性材料の割合を高めたり、成形圧力を高くしたりすることで、飽和磁束密度が高い圧粉成形体が得られる。
【0048】
上記軟磁性粉末は、Fe,Co,Niなどの鉄族金属、Feを主成分とするFe基合金、例えばFe-Si,Fe-Ni,Fe-Al,Fe-Co,Fe-Cr,Fe-Si-Alなどといった鉄基材料からなる粉末、希土類金属粉末、フェライト粉末などが挙げられる。特に、鉄基材料は、フェライトよりも飽和磁束密度が高い磁性コアを得易い。軟磁性粉末に形成される絶縁被膜は、例えば、燐酸化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、又は硼素化合物などが挙げられる。この絶縁被覆は、特に磁性粉末を構成する磁性粒子が鉄族金属やFe基合金といった金属からなる場合に具えると、渦電流損を効果的に低減できる。結合剤は、例えば、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、又は高級脂肪酸が挙げられる。この結合剤は、上記焼成により消失したり、シリカなどの絶縁物に変化したりする。圧粉成形体は、磁性粒子間に絶縁被膜などの絶縁物が存在することで、磁性粒子同士が絶縁されて渦電流損失を低減でき、コイルに高周波の電力が通電される場合であっても、上記損失を低減することができる。圧粉成形体は、公知のものを利用することができる。
【0049】
ここでは、内側コア部31は、絶縁被膜などの被膜を具える軟磁性材料からなる圧粉成形体から構成されており、飽和磁束密度が1.6T以上、かつ外側コア部32の飽和磁束密度の1.2倍以上である。また、内側コア部31の比透磁率は100〜500であり、内側コア部31及び外側コア部32からなる磁性コア3全体の比透磁率は10〜100である。一定の磁束を得る場合、内側コア部の飽和磁束密度の絶対値が高いほど、また、内側コア部の飽和磁束密度が外側コア部よりも相対的に大きいほど、内側コア部の断面積を小さくできる。そのため、内側コア部の飽和磁束密度が高い形態は、リアクトルの小型化に寄与することができる。内側コア部31の飽和磁束密度は、1.8T以上、更に2T以上が好ましく、外側コア部32の飽和磁束密度の1.5倍以上、更に1.8倍以上が好ましく、いずれも上限は設けない。なお、圧粉成形体に代えて、珪素鋼板に代表される電磁鋼板の積層体を利用すると、内側コア部の飽和磁束密度を更に高め易い。
【0050】
図1に示す例では、内側コア部31におけるコイル2の軸方向の長さ(以下、単に長さと呼ぶ)がコイル2の長さよりも長い。そして、コイル2内に挿通配置された状態において内側コア部31の両端面及びその近傍がコイル2の各端面からそれぞれ突出している。内側コア部の突出長さは適宜選択することができる。ここでは、内側コア部31においてコイル2の各端面からそれぞれ突出する突出長さを等しくしているが、異ならせてもよいし、コイル2のいずれか一方の端面からのみ突出部分が存在するように内側コア部を配置することができる。また、内側コア部の長さとコイルの長さとが等しい形態、内側コア部の長さがコイルの長さよりも短い形態とすることもできる。内側コア部の長さがコイルの長さと同等以上である場合、この例に示すように、内側コア部の各端面がそれぞれコイルの各端面から突出した形態の他、内側コア部の各端面とコイルの各端面とがそれぞれ面一である形態、或いは、内側コア部の一端面がコイルの一端面に面一で、内側コア部の他端面がコイルの他端面から突出した形態であると、低損失にすることができる。上述のいずれの形態にしても、コイル2を励磁したときに閉磁路が形成されるように外側コア部32を具えるとよい。
【0051】
本発明のリアクトル1では、上述のように横型配置であることから、リアクトル1を設置対象に固定したとき、内側コア部31もコイル2の配置形態に則って横長に配置される。
【0052】
ここでは、コイル2と内側コア部31との間の絶縁性をより高めるために、内側コア部31とコイル2との間に絶縁材33(図2)を介在させている。絶縁材33は、例えば、コイル2の内周面や内側コア部31の外周面に、絶縁性テープを貼り付けたり、絶縁紙や絶縁シートを配置したりすることが挙げられる。また、内側コア部31の外周に、絶縁性材料からなるボビン(図示せず)を配置してもよい。ボビンは、内側コア部31の外周を覆う筒状体からなる形態、この筒状体と筒状体の両端に設けられたフランジ部(代表的には環状)とを具える形態などが挙げられる。ボビンの構成材料には、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの絶縁性樹脂が好適に利用できる。また、ボビンは、分割片を組み合せて筒状となる形態とすると、内側コア部31の外周に配置し易い。
【0053】
《外側コア部》
外側コア部32は、コイル2の両端面、コイル2の外周面のうち、ケース4のコイル溝44に接触していない箇所の実質的に全て、及び内側コア部31の両端面及びその近傍を覆うように形成されており、以下のような断面形状を有する。リアクトル1においてコイル2が存在する領域について、縦断面(コイル2の軸方向に沿った平面であって、ケース4の外底面41o(図2)に垂直な面で切断した断面)及び図2(A)に示すように横断面(コイル2の軸方向に垂直な面で切断した断面)をとった場合、各断面形状がいずれもC字状であり、水平断面(コイル2の軸を通り、ケース4の外底面41oに平行な平面で切断した断面)をとった場合、この断面形状が矩形枠状である。外側コア部32の一部が内側コア部31の両端面を連結するように設けられていることで、磁性コア3は閉磁路を形成する。
【0054】
ここでは、外側コア部32は、その全体が磁性粉末と樹脂とを含む混合物(成形硬化体)により形成され、内側コア部31と外側コア部32とは接着剤を介在することなく、外側コア部32の構成樹脂により接合されている。また、ここでは外側コア部32もギャップ材やエアギャップが介在していない形態としている。従って、磁性コア3は、その全体に亘ってギャップ材を介することなく一体化された一体化物である。
【0055】
また、外側コア部32は、コイル2においてケース4のコイル溝44に接触していない箇所の実質的に全てを覆い、コイル2と内側コア部31とをケース4に封止していることから、コイル2と内側コア部31との封止材としても機能する。従って、リアクトル1は、外側コア部32により、コイル2や内側コア部31を外部環境から保護したり、機械的保護の強化を図ったりすることができる。
【0056】
外側コア部32は、閉磁路が形成できればよく、その形状(コイル2の被覆領域)は特に問わない。例えば、コイル2の外周の一部が外側コア部により覆われていない形態を許容する。この形態は、例えば、コイル2の外周面においてケース4の開口側領域が外側コア部に覆われず露出された形態が挙げられる。或いは、ケース4の底面側領域に具える台座43の厚さを更に厚くして、図3に示すコイル溝44よりも更に深いコイル溝を設けた形態が挙げられる。このコイル溝は、例えば、コイル2の直線部22に加えて半円弧部21のより広い領域(例えば、ケース4の底面側に配置される1/4円弧領域)が接触する構成とすることが挙げられる。ケース4の底面側領域全体を厚くして、上記深いコイル溝を設けることもできる。そして、コイル2における上記深いコイル溝との接触部分が外側コア部により覆われない形態(コイルとケースに設けたコイル溝との接触面積を大きくした形態)とすることができる。但し、内側コア部31の端面がコイル溝に覆われずに露出され、外側コア部32に十分に接触するように、当該コイル溝を設けることが好ましい。その他、ケース4の内底面41iにコイル2の位置決め部材(図示せず)を別途配置し、コイル2においてこの位置決め部材との接触部分が外側コア部により覆われない形態などが挙げられる。位置決め部材は、放熱性に優れる材料により構成すると、放熱性を高められる。
【0057】
成形硬化体は、代表的には、射出成形、注型成形により形成することができる。射出成形は、通常、磁性材料からなる粉末と流動性のある樹脂とを混合し、この混合流体を、所定の圧力をかけて成形型(ここではケース4)に流し込んで成形した後、上記樹脂を硬化させる。注型成形は、射出成形と同様の混合流体を得た後、この混合流体を、圧力をかけることなく成形型に注入して成形・硬化させる。
【0058】
いずれの成形手法も、磁性粉末には、上述した内側コア部31に利用する軟磁性粉末と同様のものを利用することができる。特に、外側コア部32に利用する軟磁性粉末は、純鉄粉末やFe基合金粉末といった鉄基材料からなるものが好適に利用できる。材質の異なる複数種の磁性粉末を混合して用いてもよい。軟磁性材料(特に金属材料)からなる磁性粒子の表面に燐酸塩などからなる絶縁被膜を具える被覆粉末を利用してもよい。被覆粉末を利用すると、渦電流損を低減できる。磁性粉末は、平均粒径が1μm以上1000μm以下、更に10μm以上500μm以下の粉末が利用し易い。粒径が異なる複数種の粉末を利用すると、飽和磁束密度が高く、低損失なリアクトルが得られ易い。
【0059】
また、上記いずれの成形手法も、バインダとなる樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に利用できる。熱硬化性樹脂を用いた場合、成形体を加熱して樹脂を熱硬化させる。バインダとなる樹脂に常温硬化性樹脂、或いは低温硬化性樹脂を用いてもよく、この場合、成形体を常温〜比較的低温に放置して樹脂を硬化させる。成形硬化体は、非磁性材料である樹脂が比較的多く残存するため、内側コア部31を構成する圧粉成形体と同じ軟磁性粉末を用いた場合でも、圧粉成形体よりも飽和磁束密度が低く、かつ透磁率も低いコアを形成し易い。
【0060】
成形硬化体の構成材料に磁性粉末及びバインダとなる樹脂に加えて、アルミナやシリカといったセラミックスからなるフィラーを混合させてもよい。磁性粉末に比較して比重が小さい上記フィラーを混合することで、磁性粉末の偏在を抑制して、全体に磁性粉末が均一的に分散した外側コア部を得易い。また、上記フィラーが熱伝導性に優れる材料から構成される場合、放熱性の向上に寄与することができる。上記フィラーを混合する場合、フィラーの含有量は、成形硬化体を100質量%とするとき、0.3質量%以上30質量%以下が挙げられ、磁性粉末とフィラーとの合計含有量は、外側コア部を100体積%とするとき、20体積%〜70体積%が挙げられる。また、フィラーを磁性粉末よりも微粒とすると、フィラーを磁性粒子間に介在させて、偏在を効果的に防止して、磁性粉末を均一的に分散できる上に、フィラーの含有による磁性粉末の割合の低下を抑制し易い。
【0061】
なお、リアクトル1のように横型配置で、かつコイル2がケース4の内底面41iに近接した状態でケース4に収納されている場合、成形硬化体の製造途中、磁性粉末がケース4の底面41側に沈降し、底面41側に磁性粉末が偏在した外側コア部となることがある。しかし、この場合でも、内側コア部31もケース4の底面41側に寄って配置されており、外側コア部のうち磁性粉末が高密度な領域が内側コア部31に接した状態になり易いことから、閉磁路を十分に形成できる。
【0062】
ここでは、外側コア部32は、平均粒径100μm以下の鉄基材料からなる粒子の表面に上記被膜を具える被覆粉末とエポキシ樹脂との成形硬化体から構成され、比透磁率:5〜30、飽和磁束密度:0.5T以上内側コア部31の飽和磁束密度未満である。外側コア部32の透磁率を内側コア部31よりも低くすることで、磁性コア3の漏れ磁束を低減したり、ギャップレス構造の磁性コア3としたりすることができる。成形硬化体の透磁率や飽和磁束密度は、磁性粉末とバインダとなる樹脂との配合を変えることで調整することができる。例えば、磁性粉末の配合量を減らすと、透磁率が低い成形硬化体が得られる。各コア部31,32の飽和磁束密度や比透磁率は、各コア部31,32から作製した試験片を用意し、市販のB-HカーブトレーサーやVSM(試料振動型磁力計)などを用いることで測定することができる。
【0063】
[ケース]
ケース4は、代表的には、図1〜図3に示すように矩形状の底面41と、底面41から立設される四つの側壁42とで構成される直方体状の箱体であり、底面41との対向面が開口したものが挙げられる。このケース4は、コイル2と磁性コア3との組合体を収納する容器として利用されると共に、放熱経路に利用される。従って、ケース4の構成材料は、熱伝導性に優れる材料、好ましくは鉄などの磁性材料よりも熱伝導率が高い材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金といった金属を好適に利用することができる。これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、軽量であることから、軽量化が望まれる自動車部品の構成材料にも好適である。また、これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、非磁性材料で、かつ導電性材料でもあることから、ケース4外部への漏れ磁束も効果的に防止できる。ここでは、ケース4は、アルミニウム合金から構成している。
【0064】
ケース4は、外周形状と内周形状とが相似形状のものが代表的であるが、ここでは、非相似形状のものを利用している。具体的には、図2(B)に示すようにケース4の底面41は、リアクトル1を水冷台といった設置対象に設置するとき、設置面となる外底面41oを具える。外底面41oは、設置対象によって冷却される冷却面として機能する。外底面41oは平面で構成されている。また、底面41は、コイル2の外周面の一部が接触する内底面41iを具える。内底面41iは、図2(B)に示すように部分的に厚さが異なって凹凸形状となっており、その中央部であって、一方の側壁42からこの側壁に対向する他方の側壁42に亘って台座43を具え、台座43部分が肉厚になっている。ここでは、台座43は、内底面41iに一体に形成されている。台座43の一部には、コイル2の外周面の一部が嵌め込まれるコイル溝44が設けられている。
【0065】
コイル溝44は、図3に示すようにコイル2の外周面に沿った形状であり、直線部22がつくる平面に沿った平面領域が接する平面部分と、半円弧部21がつくる曲面に沿った曲面領域が接する曲面部分とで構成される。台座43のうち、平面部分を構成する箇所は、その厚さが最も薄く、底面41(図2)において、台座43が存在しない箇所と同等の厚さとなっている。このように底面41の一部のみを厚くすることで、外側コア部32(図1,図2)の体積を十分に確保できると共に、ケース4の重量が大きくなることを低減できる。また、コイル溝44がコイル2の外周面に沿った形状であることで、コイル溝44は、ケース4に対するコイル2の位置決め部としても機能する。
【0066】
台座43においてコイル溝44が設けられていない肉厚な部分は、内側コア部31の支持部として機能させることができる。この支持部は、内側コア部31を支持ができれば、図3に示すような面積が広いものでなくてもよく、図3に示す面積よりも小さくする(コイルの軸方向に沿った長さを短くする、コイルの軸方向に直交する方向の長さを短くする)ことができる。或いは、台座43は、コイル2の外周面が接触するコイル溝44のみを具え、コイル2の端面や内側コア部31の端面を覆わない構成とすることができる。台座43の体積を低減することで、外側コア部32の体積を増加することができる。
【0067】
なお、コイル溝44を省略して、内底面41iが平面により構成された形態とすることができる。この場合でも、コイル2が直線部22を有することで、コイル2の外周面のうち、直線部22がつくる平面領域が平坦な内底面に接触できる。コイル溝44を有していない場合、コイル2をケース4内に位置決めし易いように、位置決め部材(図示せず)を別途配置してもよい。この位置決め部材は、例えば、外側コア部32の構成材料と同様の材料からなる成形硬化体とすると、外側コア部32の形成時に容易に一体化できる上に、当該別部材を磁路に利用することができる。或いは、位置決め部材を放熱性に優れる材料で構成すると、放熱性を高められる。また、本例に示すように外底面41o(図2)を実質的に平面のみで構成すると、設置対象との接触面積を十分に広く確保できる上にケース4の製造性に優れるが、ケース4の表面積の増大などを目的として外底面が凹凸部分を有した形態とすることを許容する。
【0068】
その他、図1に示す例では、ケース4は、リアクトル1を設置対象にボルトといった固定部材により固定するためのボルト孔45hを有する取付部45を具える。取付部45を有することで、ボルトなどの固定部材によりリアクトル1を設置対象に容易に固定できる。上述のように台座43やコイル溝44、取付部45を具える複雑な三次元形状のケース4は、鋳造や切削加工などにより、容易に製造できる。
【0069】
ケース4は、開口したままでも使用できるが、ケース4と同様にアルミニウムなどの導電性材料で構成した蓋を具える形態とすると、漏れ磁束の防止、外側コア部32の環境からの保護や機械的保護を図ることができる。蓋には、コイル2を構成する巻線2wの端部が引き出せるように、切欠や貫通孔を設けておく。
【0070】
コイル2とケース4との間の絶縁性を高めるために、上述した絶縁紙や絶縁性シート、絶縁性テープといった絶縁材を介在させた形態としてもよい。例えば、コイル2の表面に上記絶縁性テープなどを巻回することで、コイル2の内周面及び外周面の双方(コイル2の端面を含んでいてもよい)に絶縁材が存在する形態とすることができる。或いは、上述のようにコイル2の内周に絶縁材33が存在し、かつコイル2においてケース4の内底面41iとの接触箇所と内底面41iとの間に別途、上記絶縁材が存在する形態とすることができる。この絶縁材は、コイル2とケース4との間に求められる最低限の絶縁を確保できる程度に存在すればよく、できるだけ薄くすることで、当該絶縁材の介在による熱伝導性の低下を抑制できる上に、小型化を図ることができる。また、この絶縁材は、熱伝導性が高いものを利用することが好ましい。
【0071】
或いは、この絶縁材として、絶縁性接着剤を利用することができる。即ち、コイル2とケース4とを接着剤により固定する形態とすることができる。この形態は、コイル2とケース4との間の絶縁性を高められる上に、外側コア部32の樹脂成分に係わらず、接着剤によってコイル2をケース4に密着できる。上記接着剤は、特に、熱伝導性に優れるもの、例えば、アルミナなどの熱伝導性・電気絶縁性に優れるフィラーを含有するものが好適に利用できる。この接着剤による層の厚さを薄くすると共に多層構造とすると、合計厚さが薄くても電気絶縁性を高められる。また、この接着剤は、シート状のものを利用すると、作業性に優れる。このような接着剤は、市販品を利用することができる。
【0072】
本発明では、上述のようにコイル2とケース4との間に、これらを電気的に絶縁するために望まれる絶縁性を有する絶縁材が介在する場合も、コイルとケースの内底面とが接するものとして扱う。この絶縁材は、できる限り薄くすることで、当該絶縁材の介在による放熱性の低下を抑制できる。例えば、この絶縁材の厚さ(多層構造とする場合には合計厚さ)は、2mm未満、更に1mm以下、特に0.5mm以下とすることができる。
【0073】
[用途]
上記構成を具えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。この用途では、直流通電が0Aのときのインダクタンスが、10μH以上2mH以下、最大電流通電時のインダクタンスが、0Aのときのインダクタンスの10%以上を満たすものが好適に利用できると期待される。
【0074】
[リアクトルの大きさ]
リアクトル1を車載部品とする場合、リアクトル1は、ケース4を含めた容量が0.2リットル(200cm3)〜0.8リットル(800cm3)程度であることが好ましい。本例では、約500cm3である。
【0075】
[リアクトルの製造方法]
リアクトル1は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、コイル2、及び圧粉成形体からなる内側コア部31を用意し、図3に示すようにコイル2内に内側コア部31を挿入して、コイル2と内側コア部31との組物を作製する。上述のようにコイル2と内側コア部31との間に絶縁材33を適宜配置させてもよい(図3では絶縁材33を省略している)。また、巻線2wの引出箇所に上述のように絶縁性チューブなどの絶縁材を配置させてもよい。
【0076】
次に、上記組物をケース4内に収納する。コイル溝44に上記組物のコイル2を嵌め込むことで、ケース4に上記組物を容易に位置決めできる。このケース4内に、外側コア部32(図1)を構成する磁性粉末と樹脂との混合流体を適宜流し込んで、所定の形状に成形した後、樹脂を硬化させることで、外側コア部32を形成できると同時に、リアクトル1(図1)が得られる。
【0077】
[効果]
リアクトル1は、コイル2の外周面の一部をケース4の内底面41iに接した構成とすることで、コイル2の熱をアルミニウムといった熱伝導性に優れるケース4に直接的に伝えられ、ケース4の外周面41o(冷却面)を介して水冷台といった設置対象に効率よく伝達できる。従って、リアクトル1は、放熱性に優れる。特に、リアクトル1では、コイル2の端面形状を曲線部と直線部とを有するレーストラック状とし、直線部がつくる平面領域をケース4との接触領域とすることで、コイル2におけるケース4との接触面積を大きくし易いことからも、放熱性に優れる。また、コイル2の直線部22をケース4との接触箇所とすることで、コイル2は、ケース4の内底面41iに安定して支持され、この支持状態が外側コア部32に封止されることで確実に維持される。そのため、リアクトル1は、長期に亘り、放熱性に優れる。更に、リアクトル1では、ケース4の内底面41iにコイル2の外周面に沿った形状のコイル溝44を具え、直線部22だけでなく、半円弧部21がつくる曲線領域の一部も内底面41iに接触する構成とすることで、内底面が平面のみで形成されている場合と比較してコイル2とケース4との接触面積が更に広く、放熱性により優れる。加えて、リアクトル1は、コイル2の外周が磁性粉末を含有する成形硬化体に覆われていることで、樹脂のみに覆われる場合よりも放熱性に優れる。
【0078】
かつ、リアクトル1は、コイル2を一つとし、このコイル2の軸方向がケース4の外底面41oに平行となるように、当該コイル2がケース4に収納された横型配置であることで、嵩が小さく、小型である。特に、リアクトル1では、コイル2の端面形状をレーストラック状とすることで、巻線に被覆平角線を用いてエッジワイズコイルに形成でき、占積率が高く小型なコイルとすることができる。この点からも、リアクトル1は、小型である。更に、リアクトル1は、ケース4を放熱経路に利用できる上に、このケース4により、コイル2と磁性コア3との組合体を粉塵や腐食といった外部環境から保護したり、機械的に保護したりすることができる。
【0079】
また、リアクトル1は、外側コア部32が磁性粉末と樹脂とを含む混合物から構成されていることで、任意の形状の外側コア部32を容易に製造できる。従って、リアクトル1は、コイル2の外周面の一部を覆うといった複雑な形状であっても外側コア部32を容易に形成できて、生産性に優れる。その他、上記混合物を利用することで、(1)外側コア部32の磁気特性を容易に変更可能である、(2)外側コア部32が樹脂成分を具えることで、ケース4が開口していても、コイル2や内側コア部31における外部環境から保護・機械的保護を図ることができる、といった効果を奏する。
【0080】
更に、リアクトル1では、内側コア部31を圧粉成形体とすることで、コイル2の内周形状に沿ったレーストラック状の外形を有する柱状体といった複雑な三次元形状の内側コア部31を容易に形成でき、生産性に優れる。かつ、内側コア部31を圧粉成形体とすることで、飽和磁束密度といった磁気特性を容易に調整可能である。
【0081】
その他、リアクトル1は、内側コア部31の飽和磁束密度が外側コア部32よりも高いことで、単一の材質から構成されて、全体の飽和磁束密度が均一的な磁性コアと同じ磁束を得る場合、内側コア部31の断面積(磁束が通過する面)を小さくでき、この点から小型である。また、リアクトル1は、コイル2が配置される内側コア部31の飽和磁束密度が高く、かつコイル2の外周面の一部を覆う外側コア部32の透磁率が低いことで、ギャップを省略しても磁気飽和を抑制でき、ギャップの省略により小型である。更に、リアクトル1は、磁性コア3の全体に亘ってインダクタンスを調整するためのギャップが存在しないことで、このギャップ箇所での漏れ磁束がコイル2に影響を及ぼすことが無いため、内側コア部31の外周面とコイル2の内周面とを近付けて配置できる。従って、内側コア部31の外周面とコイル2の内周面との間の隙間を小さくでき、この点からも、リアクトル1を小型にできる。特に、リアクトル1では、上述のように内側コア部31の外形をコイル2の内周形状に沿った相似形状としたことで、上記隙間を更に小さくできる。その他、ギャップの省略により、ギャップに起因する損失の低減を図ることができる。
【0082】
また、リアクトル1は、外側コア部32の形成と同時に、外側コア部32の構成樹脂により内側コア部31と外側コア部32とを接合して磁性コア3を形成し、その結果リアクトル1を製造できるため、製造工程が少なく生産性に優れる。更に、リアクトル1は、ギャップレス構造であることから、ギャップ材の接合工程が不要であり、この点からも生産性に優れる。
【0083】
(実施形態2)
図4を参照して、実施形態2のリアクトルを説明する。実施形態1では、コイル2を構成する巻線2wの絶縁被覆や別途用意した絶縁材33により、コイル2と磁性コア3との間の絶縁、コイル2とケース4との間の絶縁性を高める構成を説明した。実施形態2のリアクトルは、コイル2の表面を覆う内側樹脂部23を具える点が、実施形態1のリアクトル1と異なる。以下、この相違点及びこの相違点に基づく効果を中心に説明し、実施形態1と共通する構成及び効果は、説明を省略する。
【0084】
実施形態2のリアクトルは、コイル2と内側コア部31とが内側樹脂部23の構成樹脂により一体化されたコイル成形体2cを具える。
【0085】
[コイル成形体]
コイル成形体2cは、実施形態1で説明した、巻線2wが被覆平角線からなり、端面形状がレーストラック状であるコイル2と、コイル2内に挿通された内側コア部31と、コイル2の表面を覆ってその形状を保持すると共に、コイル2と内側コア部31とを一体に保持する内側樹脂部23とを具える。
【0086】
《内側コア部》
内側コア部31は、実施形態1で説明した、レーストラック状の外形を有する柱状体である。この内側コア部31は、コイル2の内周に挿通配置され、両端面及びその近傍が内側樹脂部23の各端面23eからそれぞれ若干突出した状態で、内側樹脂部23の構成樹脂によりコイル2に一体に保持されている。
【0087】
《内側樹脂部》
内側樹脂部23は、ここでは、巻線2wの両端部を含む引出箇所を除いて、コイル2の概ね全体を覆う。内側樹脂部23におけるコイル2の被覆領域は適宜選択することができ、コイル2の一部が内側樹脂部23に覆われず、露出された形態とすることができる。これに対して、本例のように、コイル2の表面の実質的に全部を被覆する形態とすることで、コイル2と内側コア部31との間、コイル2と外側コア部との間、コイル2とケースとの間に内側樹脂部23の構成樹脂といった絶縁物を確実に存在させることができる。内側樹脂部23は、実質的に均一な厚さである。内側樹脂部23の厚さは、所望の絶縁特性を満たすように適宜選択することができ、例えば、1mm〜10mm程度が挙げられ、薄いほど放熱性を高められる。
【0088】
上記内側樹脂部23は、更に、コイル2を自由長よりも圧縮した状態に保持する機能を有する。
【0089】
上記内側樹脂部23の構成樹脂は、コイル成形体2cを具えるリアクトルを使用した際に、コイル2や磁性コアの最高到達温度に対して軟化しない程度の耐熱性を有し、トランスファー成形や射出成形が可能な絶縁性材料が好適に利用できる。例えば、エポキシなどの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、LCPなどの熱可塑性樹脂が好適に利用できる。ここでは、エポキシ樹脂を利用している。また、内側樹脂部23の構成樹脂として、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを混合したものを利用すると、コイル2の熱を放出し易く、放熱性に優れるリアクトルが得られる。
【0090】
[コイル成形体の製造方法]
このような内側コア部31を具えるコイル成形体2cは、例えば、特開2009-218293号公報に記載される製造方法を利用することで製造できる。具体的には、開閉可能な金型であって、この金型内を進退可能な複数の棒状体を具えるものを用意する。この金型内にコイル2及び内側コア部31を配置した後、上記棒状体でコイル2を押圧して圧縮状態にし、この圧縮状態で金型内に樹脂を注入し、その後固化する。
【0091】
或いは、コイルを圧縮状態に保持可能な保持部材を別途用意してコイルに取り付けて、圧縮状態のコイルを金型に収納した後、この保持部材を金型に固定することで、金型内でコイルを圧縮状態に保持してもよい。この保持部材は、取り外しが可能な構成とすると、再利用できて好ましい。
【0092】
なお、コイル2において巻線2wの引出箇所のうち、内側樹脂部23で覆われず、かつ外側コア部に接する可能性のある箇所(巻線2wの端部近傍)に上述したように絶縁紙や絶縁性テープ、絶縁性チューブなどの絶縁材を適宜配置することができる。コイル2の引出箇所に上記絶縁材を配置する場合、内側樹脂部23を単純な形状にできるため、成形性に優れる上に、内側樹脂部23の構成樹脂によって引出箇所を覆う部分を形成する場合よりもコイル成形体を小型にし易く、リアクトルの小型化に寄与することができる。
【0093】
[リアクトルの製造方法]
上記コイル成形体2cを具えるリアクトルは、コイル成形体2cを作製してケースに収納し、このケース内に外側コア部を構成する磁性材料と樹脂との混合流体を流し込んで、成形・硬化することで製造することができる。コイル成形体2cを上述の接着剤によりケースに固定してもよい。
【0094】
[効果]
実施形態2のリアクトルでは、コイル2の表面が内側樹脂部23により覆われていることから、コイル2は、内側樹脂部23を介してケースの内底面に接する。即ち、コイル2とケースとの間に絶縁物が介在されることから、ケースがアルミニウムといった金属から構成されている場合でも、コイル2とケースとの間の絶縁性を効果的に高められる。また、コイル2とケースとの間に内側樹脂部23が介在するものの、コイル2の端面形状がレーストラック状といった特定の形状である上に横型配置である実施形態2のリアクトルは、コイル2において設置対象に近接した領域が多いことから、実施形態1と同様に放熱性に優れる。
【0095】
また、コイル成形体2cでは、コイル2と内側コア部31とが内側樹脂部23により一体化されて、かつコイル2の内周面と内側コア部31の外周面との間の隙間に実質的に内側樹脂部23の構成樹脂のみが存在することで、インシュレータといった別部材を用いることなくコイル2と内側コア部31との間の絶縁性も効果的に高められる。更に、実施形態2のリアクトルは、コイル2の形状が保持されたコイル成形体2cを利用することで、形状が安定していて製造時にコイル2を取り扱い易く、生産性に優れる。特に、このコイル成形体2cは、内側コア部31をも一体に具えることで、内側樹脂部23の成形と同時に、コイル2と内側コア部31との一体化を行えるため工程数・部品点数を低減でき、この点からもリアクトルの生産性に優れる。加えて、コイル2と内側コア部31とを一体物として取り扱えてケースに同時に収納できることから、両者が別部材である場合と比較してケースへの収納作業などが行い易く、この点からもリアクトルの生産性に優れる。
【0096】
その他、コイル成形体2cは、内側樹脂部23によってコイル2を圧縮状態に保持することから、圧縮状態を維持する別の部材を用いることなく、コイル2の軸方向の長さを短くすることができ、この点からリアクトルを小型にできる。また、コイル2と内側コア部31とを内側樹脂部23により一体とせず別部材とする場合、内側樹脂部に内側コア部31を挿入するための中空孔を設けると共に、内側コア部31の挿入性を考慮して、内側コア部31と中空孔との間に隙間を設ける必要がある。これに対して、コイル2と内側コア部31とを内側樹脂部23により一体化した本例では、上記隙間が不要であり、この隙間の分だけリアクトルを小型にできる。
【0097】
(実施形態3)
実施形態2では、コイル成形体2cとして、コイル2と内側コア部31とが内側樹脂部23により一体化された構成を説明した。その他、コイル成形体として、内側コア部が内側樹脂部によりコイルと一体化されていない形態、即ち、コイル成形体がコイルと内側樹脂部とにより構成された形態とすることができる。このコイル成形体は、コイルの内周面を覆い、内側樹脂部の構成樹脂により形成される中空孔を有する。この中空孔には、内側コア部が挿通配置される。内側コア部がコイルの内周の適切な位置に配置されるように内側樹脂部の構成樹脂の厚さを調整すると共に、中空孔の形状を内側コア部の外形に合わせることで、当該構成樹脂を内側コア部の位置決め部として機能させることができる。
【0098】
このようなコイル成形体は、上記実施形態2で説明したコイル成形体2cの製造工程において、内側コア部に代わり、所定の形状の中子を配置することで製造できる。また、このようなコイル成形体を具えるリアクトルは、得られたコイル成形体の中空孔に内側コア部を挿通配置し、このコイル成形体と内側コイル部との組物をケースに収納して、外側コア部を形成することで製造できる。
【0099】
この形態も、実施形態2のコイル成形体2cと同様に、上記内側樹脂部がコイルの形状を保持することから、コイルを取り扱い易い。また、この形態も、実施形態2のコイル成形体2cと同様に、コイルと内側コア部との間、コイルと外側コア部との間、コイルとケースとの間に内側樹脂部が介在することで、コイルと磁性コアとの間の絶縁性やコイルとケースとの間の絶縁性を高められる。
【0100】
(実施形態4)
上記実施形態では、コイルの端面形状がレーストラック状である場合を説明したが、楕円状、横長の楕円において曲線の一部が長径に平行な直線に置換され、この直線部を一つ具える異形状、角丸め長方形状とすることができる。
【0101】
楕円状のコイルは、特に、アスペクト比(長径/短径)が大きい横長の楕円形状とすると、当該コイルにおいてケースの内底面(引いては設置対象)に近接した領域が多くなることで、放熱性を高められる。また、この横長のコイルは、嵩が小さく、小型である。このような曲線のみからなるコイルは、例えば、導体の横断面形状が円形である丸線を用いると、形成し易い。更に、楕円状のコイルは、コイル内周の面積を一定とすると、実施形態1のリアクトル1と比較して周長を短くできるため、巻線の使用量の低減、銅損といった損失の低減、軽量化を図ることができる。
【0102】
上記異形状のコイル及び角丸め長方形状のコイルは、実施形態1のリアクトル1のコイル2と同様に直線部を有することから、ケースの内底面が平面である場合でも、当該内底面との接触面積を十分に確保できる上に、ケースに対する安定性に優れる。異形状のコイルも上記丸線を用いることで形成し易い。一方、角丸め長方形状のコイルは、実施形態1のリアクトル1のコイル2と同様に平角線を用いたエッジワイズコイルとすることができ、直線部がつくる平面領域によって接触面積を高められると共に、占積率を高められることから、小型化を図ることができる。
【0103】
(実施形態I)
実施形態1〜4のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを具える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【0104】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両200は、図5に示すようにメインバッテリ210と、メインバッテリ210に接続される電力変換装置100と、メインバッテリ210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)220とを具える。モータ220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両200は、モータ220に加えてエンジンを具える。なお、図5では、車両200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを具える形態とすることができる。
【0105】
電力変換装置100は、メインバッテリ210に接続されるコンバータ110と、コンバータ110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ120とを有する。この例に示すコンバータ110は、車両200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ120に給電する。また、コンバータ110は、回生時、モータ220からインバータ120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ210に充電させている。インバータ120は、車両200の走行時、コンバータ110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ220に給電し、回生時、モータ220からの交流出力を直流に変換してコンバータ110に出力している。
【0106】
コンバータ110は、図6に示すように複数のスイッチング素子111と、スイッチング素子111の動作を制御する駆動回路112と、リアクトルLとを具え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1〜4のリアクトルを具える。放熱性に優れるこれらのリアクトルを具えることで、電力変換装置100やコンバータ110は、放熱性に優れる。
【0107】
なお、車両200は、コンバータ110の他、メインバッテリ210に接続された給電装置用コンバータ150や、補機類240の電力源となるサブバッテリ230とメインバッテリ210とに接続され、メインバッテリ210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ160を具える。コンバータ110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ150や補機電源用コンバータ160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ150や補機電源用コンバータ160のリアクトルに、上記実施形態1〜4のリアクトルと同様の構成を具え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1〜4のリアクトルを利用することもできる。
【0108】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。
【0109】
また、放熱性に優れるリアクトルの別の形態として、以下の構成が挙げられる。
(付記1)
巻線を巻回してなる一つのコイルと、このコイル内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体を収納するケースとを具えるリアクトルであって、
前記コイルは、
その端面形状が非円形状で、かつ曲線部を有する形状であり、
その軸方向が、前記ケースの設置面となる外底面に平行するように当該ケースに収納され、
その外周面の一部が前記磁性コアに覆われ、前記磁性コアに覆われていない箇所の少なくとも一部が前記ケースの内底面に接していることを特徴とするリアクトル。
【0110】
(付記2)
前記磁性コアのうち、前記コイルの外周面の一部を覆う外側コア部は、磁性粉末と樹脂とを含む混合物から構成されていることを特徴とする付記1に記載のリアクトル。
【0111】
(付記3)
前記磁性コアは、前記コイルの内側に配置される内側コア部と、前記コイルの外周面の一部を覆う外側コア部とを具え、
前記内側コア部は、圧粉成形体から構成されていることを特徴とする付記1又は2に記載のリアクトル。
【0112】
上記付記1〜付記3に記載のリアクトルでは、複数の電磁鋼板の積層体、圧粉成形体、成形硬化体、及びこれらの組合せから選択されるいずれかの形態の磁性コアを利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明リアクトルは、各種のリアクトル(車載部品、発電・変電設備の部品など)に好適に利用することができる。特に、本発明リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった車両に搭載されるDC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品に利用することができる。本発明コンバータや本発明電力変換装置は、車載用、発電・変電設備用などの種々の用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 リアクトル
2 コイル 2w 巻線 2c コイル成形体
21 半円弧部 22 直線部 23 内側樹脂部 23e 端面
3 磁性コア 31 内側コア部 32 外側コア部 33 絶縁材
4 ケース 41 底面 41i 内底面 41o 外底面 42 側壁 43 台座
44 コイル溝 45 取付部 45h ボルト孔
100 電力変換装置 110 コンバータ 111 スイッチング素子 112 駆動回路
120 インバータ 150 給電装置用コンバータ 160 補機電源用コンバータ
200 車両 210 メインバッテリ 220 モータ 230 サブバッテリ 240 補機類
250 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を巻回してなる一つのコイルと、このコイル内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体を収納するケースとを具えるリアクトルであって、
前記コイルは、
その端面形状が非円形状で、かつ曲線部を有する形状であり、
その軸方向が、前記ケースにおいて設置対象によって冷却される外底面に平行するように当該ケースに収納され、
その外周面の一部が前記磁性コアに覆われ、前記磁性コアに覆われていない箇所の少なくとも一部が前記ケースの内底面に接しており、
前記磁性コアは、
前記コイルの内側に配置される内側コア部と、前記コイルの外周面の一部を覆う外側コア部とを具え、
前記内側コア部は、圧粉成形体から構成されており、
前記外側コア部は、磁性粉末と樹脂との混合物から構成されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記内側コア部の各端面はそれぞれ、前記コイルの各端面のそれぞれに面一である、又は、前記コイルの一方の端面に面一であり、前記コイルの他方の端面から突出している、又は、前記コイルの各端面のそれぞれから突出していることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記コイルの端面形状は、一対の半円弧部と、これら半円弧部を繋ぐ一対の直線部とから構成されるレーストラック状であり、
少なくとも前記直線部が前記ケースの内底面に接していることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
絶縁性樹脂から構成され、前記コイルの表面の少なくとも一部を覆って、その形状を保持する内側樹脂部を具え、
前記コイルは、前記内側樹脂部を介して前記ケースの内底面に接することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記ケースの内底面には、前記コイルが配置される台座を具え、
前記台座は、前記コイルの外周面の一部に沿って設けられたコイル溝を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記コイルは、接着剤により前記ケースに固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータであって、
前記リアクトルは、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリアクトルであることを特徴とするコンバータ。
【請求項8】
入力電圧を昇降圧するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、
前記コンバータは、請求項7に記載のコンバータであることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39099(P2012−39099A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148682(P2011−148682)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】