説明

リアルタイム超音波多重面イメージングのための方法及び装置

【課題】定少なくとも3つの異なる走査面(138、140、142)に沿って対象から超音波情報を連続的に収集する(202)。
【解決手段】これらの走査面(138、140、142)は探触子(106)から対象を通って延びる軸に沿って互いに交差している。超音波情報に基づいてこの少なくとも3つの異なる走査面(138、140、142)に対応するデータ・スライスを格納する(204)ためにメモリ(114)が含まれている。さらに、メモリ(114)にアクセス(206)してデータ・スライスを選択かつ取得すると共に、このデータ・スライスに基づいて超音波画像(302、304、306)を作成する(206)ための処理装置(116、118、120、122)が含まれている。これらの超音波画像(302、304、306)を併行表示する(208)ためにディスプレイ(124)が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、診断用超音波の方法及びシステムに関する。詳細には、本発明は、走査対象に関する複数の走査面をリアルタイムで併行表示するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医学診断で使用するためには多数の超音波法及びシステムが存在している。患者の超音波画像に基づいた患者の検査及び診断を容易にするために様々な機能が提唱されている。例えば、ある種のシステムは対象(例えば、ヒトの心臓)に対する2方面(biplane)撮像を提供している。この2方面画像のうちの一方の画像はトランスジューサに対してある固定の向きを有しており、またもう一方の画像は固定の基準画像に対して変更されることがある。2方面撮像機能を備えた少なくとも幾つかのシステムは、一方の画像をもう一方の画像に対して回転させることや、一方の画像をもう一方の画像に対して傾斜させることがある。
【特許文献1】米国特許第6436049号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これまでの超音波法及びシステムでは、3つ以上の撮像面に対する多重面撮像を、リアルタイム表示や走査した多重面情報の解析に有用となるほど十分に迅速に収集することができなかった。さらに従来のシステムは、画像ディスプレイに定量的データ(例えば、組織速度(velocity)やひずみ速度(strain rate))を視覚表示させることができなかった。
【0004】
定量的データの任意選択による表示を伴って、対象の3つ以上の画像面に関するリアルタイムによる収集及び表示を提供する改良型の方法及びシステムに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、少なくとも3つの異なる走査面に沿って対象から超音波情報を連続して収集するための探触子を含んだ超音波システムを提供する。本実施形態に関する探触子の一例は2Dアレイ探触子である。これらの走査面は、探触子から対象を通過して延びる軸に沿って互いに交差することがある。この少なくとも3つの異なる走査面に対応するデータ・スライスをその超音波情報に基づいて格納するためにメモリが含まれている。さらに、このメモリにアクセスしてデータ・スライスを選択かつ取得すると共に、このデータ・スライスに基づいて超音波画像を作成するために、処理装置が含まれている。この超音波画像を併行表示するためにディスプレイが含まれている。
【0006】
別の実施形態では、少なくとも3つの異なる走査面に沿って対象から超音波情報を連続して収集するための超音波法を提供する。その連続性は、第1の面に対するすべての走査情報の収集、次いで次の面に対するすべての走査情報の収集、以下同様のように各面単位とすることがあり得る。代替的な一実施形態では、その連続性は、ベクトル1/面1、ベクトル2/面2、ベクトル3/面3、ベクトル2/面1、等々の順序で走査情報が収集されるような各ベクトル単位とすることがあり得る。別の実施形態では、多重ライン収集(MLA)を使用して、第1の面に対する走査情報を収集し、次いで次の面に対する走査情報を収集し、以下同様とすることがある。さらに別の実施形態では、MLAは面1に対して実施され、次いで面2に対して実施され、次いで面3に対して実施され、さらにすべての面に関するすべてのデータが収集されるまで面1、面2、面3に対して反復されることがある。本発明の実施形態は、ある走査パターン(例えば、2方面または3方面)としたすべての面に対する走査データを連続収集するこの多数の可能性によって限定されるものではない。これらの走査面は探触子から対象を通過して延びる軸に沿って互いに交差することがある。本方法は、少なくとも3つの異なる走査面に対応するデータ・スライスを超音波情報に基づいて格納する工程と、このデータ・スライスに基づいて超音波画像を作成する工程と、この超音波画像を併行表示する工程と、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明の一実施形態に従って形成した超音波システム100のブロック図である。超音波システム100は3D空間内で音響ビームを進路制御することが可能であり、また対象または患者内の関心領域(ROI)の複数の2次元(2D)表現または画像に対応する情報を収集するように構成可能である。こうしたROIのうちの1つは、ヒトの心臓、あるいはヒトの心臓の心筋層とすることがある。超音波システム100は、3つ以上の面方向で2D画像を収集するように構成可能である。超音波システム100は、ビーム形成器110のガイド下で、アレイ状トランスジューサ106の内部の複数のトランスジューサ素子104を駆動させて身体内に超音波信号を送出する送信器102を含んでいる。アレイ状トランスジューサ106内の素子104は、ビーム形成器110から受け取った制御情報に基づいた送信器102から受け取った励起信号によって励起される。トランスジューサ素子104は、励起されると、送信ビームに沿って対象内に導かれる超音波波形を発生させる。この超音波は身体内の密度境界面及び/または構造(例えば、血球や筋肉組織)から後方散乱され、トランスジューサ素子104に戻されるエコーを発生させる。このエコー情報はトランスジューサ素子104によって受け取られて電気信号に変換される。この電気信号はアレイ状トランスジューサ106によって受信器108に送られ、次いでビーム形成器110に送られる。記載した実施形態では、そのビーム形成器110は1つの送信/受信ビーム形成器として動作する。代替的な一実施形態では、そのアレイ状トランスジューサ106は探触子内部におけるサブアパーチャRXビーム形成を伴う2Dアレイである。
【0008】
ビーム形成器110は、各電気信号についてアレイ状トランスジューサ106から受け取った別の電気信号とで遅延、アポダイゼーション及び合成を行う。この合成信号は超音波ビームまたはラインからのエコーを表している。この合成信号はビーム形成器110からRF処理装置112に出力される。RF処理装置112は、複数の走査面または様々な走査パターンに関して様々なデータタイプ(例えば、Bモード、カラー・ドプラ(速度/パワー/バリアンス)、組織ドプラ(速度)、及びドプラ・エネルギー)を作成することがある。例えば、RF処理装置112は3つの(3方面)走査面に関する組織ドプラ・データを作成することがある。RF処理装置112は複数のデータ・スライスに関連する情報(例えば、I/Q、Bモード、カラー・ドプラ、組織ドプラ、及びドプラ・エネルギー情報)を集めると共に、このデータ情報をタイムスタンプ及び方向/回転情報と一緒に画像バッファ114内に格納する。方向/回転情報は、あるデータ・スライスの基準面または別のデータ・スライスに対する角度回転を示すことがある。例えば、3つの別々の方向の走査面または像に関して、ある短かい時間(例えば、1/20秒)以内に超音波情報を実質的に同時または継続的に収集するような3方面の実現形態では、あるデータ・スライスは角度0度と関連付けされ、別のデータ・スライスは角度60度と関連付けされ、また第3のデータ・スライスは角度120度と関連付けされることがある。したがって、データ・スライスは0度、60度、120度、...、0度、60度、120度、...という反復順序で画像バッファ114に追加されることがある。画像バッファ114内の第1と第4のデータ・スライスは、共通の第1の面方向を有している。第2と第5のデータ・スライスは共通の第2の面方向を有しており、また第3と第6のデータ・スライスは共通の第3の面方向を有している。
【0009】
別法として、方向/回転情報を格納するのではなく、データ・スライスと一緒にデータ・スライスのシーケンス番号を画像バッファ114内に格納することがある。したがって、データ・スライスは画像バッファ114内で、例えば1、2、3、...、1、2、3、...のようにシーケンス番号を反復することによる順序付けを受けることがある。3方面撮像では、シーケンス番号1は基準面に対する角度回転0度の面に対応することがあり、シーケンス番号2は基準面に対する角度回転60度の面に対応することがあり、またシーケンス番号3は基準面に対する角度回転120度の面に対応することがある。画像バッファ114内に格納したデータ・スライスは、2D表示処理装置116、118及び120によって処理される。
【0010】
2D表示処理装置116、118及び120は、画像バッファ114からのデータ・スライスを処理する際に別法として、ラウンドロビン方式でも逐次動作することができる。例えば、表示処理装置116、118及び120は、画像バッファ114内のデータ・スライスのすべてに対してアクセスすることができるが、ある1つの角度方向を有するデータ・スライスに対して動作するように構成されている。例えば、表示処理装置116は、画像バッファ114からの角度回転0度すなわちシーケンス番号1に関連付けされたデータ・スライスだけを処理することがある。同様に、表示処理装置118は60度を向いた、すなわちシーケンス番号2のデータ・スライスだけを処理することがあり、また表示処理装置120は120度を向いた、すなわちシーケンス番号3のデータ・スライスだけを処理することがある。コンピュータ・ディスプレイ124の選択した四分区画126内には、面同士の相対角度を示す図形表示子144を表している。
【0011】
2D表示処理装置116は、共通の方向を有する画像バッファ114からの1組のデータ・スライスを処理し、コンピュータ・ディスプレイ124の四分区画126内に表示させる走査対象の2D画像または像を作成することがある。四分区画126内に再生される画像フレームのシーケンスが1つのシネループを形成することがある。同様に、表示処理装置118は共通の方向を有する画像バッファ114からの1組のデータ・スライスを処理し、四分区画130内に表示させる走査対象の別の第2の2D像を作成することがある。表示処理装置120は共通の方向を有する画像バッファ114からの1組のデータ・スライスを処理し、四分区画128内に表示させる走査対象の別の第3の2D像を作成することがある。
【0012】
例えば、表示処理装置116によって処理されたデータ・スライスは、四分区画126内に表示させる心臓の心尖2腔像を生成することがある。表示処理装置118によって処理されたデータ・スライスは、四分区画130内に表示させるための心臓の心尖4腔像を生成することがある。表示処理装置120は、四分区画128内に表示させるための心臓の心尖長軸像を形成するようにデータ・スライスを処理することがある。ヒトの心臓に関する3つの像の全部が、コンピュータ・ディスプレイ124の3つの四分区画126、128及び130内に同時にリアルタイムで表示されることがある。
【0013】
2D表示処理装置(例えば、処理装置116)は、画像バッファ114から受け取ったデータ・スライス情報に対するフィルタ処理、並びに処理済み画像フレームを生成するためのデータ・スライスに対する処理を実行することがある。処理済みの画像フレームに関する幾つかの形式は、Bモード・データ(例えば、エコーの信号強度または振幅)とすることや、ドプラ・データとすることがある。ドプラ・データの例には、カラー・ドプラ速度データ(CDV)、カラー・ドプラ・エネルギー・データ(CDE)、あるいはドプラ組織データ(DTI)が含まれる。次いで、表示処理装置116は、コンピュータ・ディスプレイ124上に表示させるためにデータを極座標系からデカルト座標系にマッピングするような走査変換を実行することがある。
【0014】
任意選択では、3D表示処理装置122が、これ以外の2D表示処理装置116、118及び120からの出力を処理するために設けられることがある。処理装置122は、2D表示処理装置116、118及び120から作成された3つの像からのフレームを合成させ、コンピュータ・ディスプレイ124の四分区画132内に1つの3方面像(ナビゲーション画像とも呼ぶ)を形成させることがある。この3方面像は、この3方面の交差する3つの面138、140及び142に対して整列させた3D画像(例えば、ヒトの心臓の3D画像)を示すことがある。この3つの面138、140及び142は、探触子の表面から対象を通過して延びている共通の回転軸(図1では図示せず)の位置で交差することがある。
【0015】
ユーザインタフェース134は、ユーザが走査パラメータ136を入力できるようにするために設けられている。走査パラメータの例としては、2方面、3方面、深度、走査角度、走査線の数、回転角度、及びトランスジューサ表面に対する傾斜角度が含まれる。走査パラメータ136によって、ユーザは希望する走査面の数を指定することができる。この走査パラメータによって、3方面の面138、140及び142のそれぞれについて、対象に対する走査の深度及び幅を調整することが可能となることがある。3つの走査面138、140及び142からのデータ・スライスの同時収集を実行する際に、ビーム形成器110は送信器102と連携してアレイ状トランスジューサ106を制御し、対象を通過して延びる3つの面138、140及び142の内部に位置する走査線に沿って焦点合わせされた超音波ビームを生成させている。走査シーケンス制御(ビーム順序)によって走査情報が連続して集められる。その連続性は、第1の面に対するすべての走査情報の収集、次いで次の面に対するすべての走査情報の収集、以下同様のように各面単位とすることがあり得る。代替的な一実施形態ではその連続性は、ベクトル1/面1、ベクトル2/面2、ベクトル3/面3、ベクトル2/面1、等々の順序で走査情報が収集されるような各ベクトル単位とすることがあり得る。別の実施形態では、多重ライン収集(MLA)を使用して、第1の面に対する走査情報を収集し、次いで次の面に対する走査情報の収集し、以下同様とすることがある。さらに別の実施形態では、MLAは面1に対して実施され、次いで面2に対して実施され、次いで面3に対して実施され、さらにすべての面に関するすべてのデータが収集されるまで面1、面2、面3に対して反復されることがある。本発明の実施形態は、ある走査パターン(例えば、2方面または3方面)としたすべての面に対する走査データを連続収集するこの多数の可能性によって限定されるものではない。反射された超音波エコーが集められ、画像バッファ114内に格納されるデータ・スライスが生成される。RF処理装置112によって画像バッファ114が満たされている際に、一方では2D表示処理装置116、118及び120によって画像バッファ114が空にされている。2D表示処理装置116、118及び120は、観察のための画像フレーム・データを形成させる。四分区画126、130及び128内での3つの像の表示、並びに四分区画132におけるこの3つの像の合成像の任意選択による表示はリアルタイムで実施される。リアルタイム表示は、データが表示に利用可能となった時点でそのデータ・スライスを利用する。
【0016】
図2は、複数の走査面からの超音波データに対するリアルタイムでの収集、処理及び表示のための例示的な一方法の流れ図200である。ここでは、3つの面(3方面)という1つの例示的な実施形態を用いているが、本発明はデータ・スライスをその面に沿って収集できる走査面の数に関して何ら制限されるものではない。202では、対象からの超音波データが少なくとも3つの異なる走査面から連続的に収集される。この3つの走査面は、互いに対して0度、60度及び120度の対応する方向を有することがあり、また超音波探触子表面から対象を通過して延びる共通の回転軸に沿って互いに交差することがある。この軸は、軸の端点を位置決めし直すために走査パラメータを変更しようとするユーザによって調整されることがある。回転軸の方向に対する調整によって、この回転軸に沿った3つの面の方向が自動的に調整される。さらに、走査パラメータに対する調整を通じて、1つまたは複数の面が別の面に対して傾けられることがある。データ・スライスは、この3つの異なる走査面に沿って50ミリ秒未満の間で同時に収集されている。
【0017】
この3つの面からの超音波情報は、対象の動きの周期内のある所定の時点のものとすることがある。例えば、この3つの面は、心拍周期の心拡張フェーズの終了時点でのヒトの心臓の同時像に関するデータ・スライスを提供することがある。これらの面は、心拍周期中のある所定の瞬間における心臓の心尖2腔像、心尖4腔像、及び心尖長軸像を表示するように選択されることがある。
【0018】
超音波情報が収集されると、この情報はビーム形成器110によってデータ・スライスの形に編集されると共に、204において2Dデータ・スライスとして画像バッファ114内に格納される。各2Dデータ・スライスは、タイムスタンプ及びフレーム方向、または他のデータ・スライスを基準としたシーケンス番号と一緒に格納される。3方面走査のこの例では、その2Dデータ・スライスが対応している面は、フレーム方向角度(例えば、0度、60度、または120度)によるか、あるいは1、2または3というシーケンス番号によって識別されることがある。ある方向またはシーケンス番号をもつデータ・スライスのすべてはこの3つの面のうちの同じ1つの面から取得されると共に、当該の面または像からの対象のリアルタイム表示用画像をシネループの形で作成するためにこれらのデータ・スライスが使用されることがある。データ・スライスは、方向またはシーケンス番号に従った収集順に画像バッファ114内に格納される。例えばシーケンス番号による場合では、シーケンス番号1、2、3、1、2、3、...という反復組に従って3方面データ・スライスが格納される。ある所定の数のサイクル分のデータ・スライスを格納し終わると、画像バッファ114はバッファの始点で開始することによって追加のデータ・スライスを格納できるという点で画像バッファ114はリング型と考えることができる。この方式では、画像バッファ114はリング状に自身のおいて折り返している。画像バッファ114内にデータ・スライスが格納されると、データ・スライスが上書きされる速度でデータ・スライスが除去される。各シーケンス番号またはフレーム方向は、1組の関連する走査パラメータを有することがある。例えば、シーケンス番号1のデータ・スライスはある所定の走査幅及び深度を有することがあり、またシーケンス番号2のデータ・スライスはある異なる所定の走査幅及び深度を有することがある。シーケンス番号3のデータ・スライスはさらに別の異なる所定の走査幅及び深度を有することがある。
【0019】
206では、画像バッファからデータ・スライスが取り出されて、2D画像処理装置116、118及び120によって処理される。各2D画像処理装置116は、所与の方向またはシーケンス番号をもつデータ・スライスを処理するようにプログラムされ/割り当てられることがある。この3方面の例では、3つの2D画像処理装置116、118及び120が設けられることがある。ある処理装置はシーケンス番号1を有するデータ・スライスを処理し、別の処理装置はシーケンス番号2を有するデータ・スライスを処理し、また第3の処理装置はシーケンス番号3を有するデータ・スライスを処理する。あるデータ・スライスが2D画像処理装置116に対して利用可能になると、そのシーケンス番号または方向が2D画像処理装置116のものと一致した場合にだけ、2D画像処理装置116によってそのデータ・スライスが処理される。
【0020】
フレームデータに対する空間的及び時間的な2Dフィルタ処理や、画像バッファから取り出されたフレームの走査変換などの機能を実行すること以外に、2D画像処理装置116はコンピュータ・ディスプレイによる画像の表示の準備としてフレーム画像にカラーを付加することがある。2D画像処理装置116によってBモード画像上にカラーが重ね合わせられ、これにより例えば、画像の局所領域内にある組織の速度をこのカラーによって示すことがある。その超音波データ収集モード(例えば、カラー・ドプラ、組織ドプラ、Bモード収集)に応じて、その処理済み走査データは、組織または血流速度データを含んでおり、これから速度情報が導出されることがある。速度のカラー指示は、2D画像処理装置116〜120によって超音波画像に付加される。より高いフレームレートを達成するために、2D画像処理装置116は各フレームごとに画像フレームのバックグラウンド(Bモード・データ)を更新しないことがある。速度データに関してより高いフレームレートを達成するために、各カラーフレームまたは組織速度フレームごとにBモード・フレームの一部(例えば、2分の1フレーム)だけが走査されるように走査シーケンス制御することがある。一実施形態では、3方面撮像に関して毎秒15フレームのカラー・フレームまたは毎秒25フレームのモノクロ・フレームのフレームレートが達成されることがある。
【0021】
208では、2D画像処理装置116〜120から作成した画像フレームが併行表示される。3方面走査による3つの画像の併行表示に加えて、表示された画像のうちの少なくとも1つの画像のユーザ選択領域から速度トレースが表示されることがある。ユーザインタフェース134を介してユーザは、四分区画126〜132のうちの1つの区画内など画像表示のうちの1つの内部にある選択した関心領域上にマウス・カーソルを位置決めしてマウスをクリックし、画像の当該部分を選択しこの部分に対する時間経過に伴う速度トレースを作成することがある。この速度トレースはコンピュータ・ディスプレイ124上で、このトレースが対応する画像と共に表示されることがある。
【0022】
図3は、3つの対応する像または面308、310及び312から形成されて併行表示された3つの超音波画像302、304及び306を表示させた例示的な画面表示300である。さらに、別の2D画像302、304及び306から形成させた3D合成画像314を表示している。この合成画像314は、共通の回転軸316を有しており、この軸に沿ってこれら3つの面308、310及び312が交差している。ユーザが最後にマウスクリックした画像である画像306がハイライト表示されており、またどの面がこのハイライトされた画像306に対応するかをユーザに対して示すために合成画像314内の対応する面312がハイライト表示されている。ユーザが画像304をマウスクリックすると、画像304がハイライト表示になると共に、合成画像314中の対応する面310がハイライト表示される。この方式により、画面表示300はユーザに対して、現在ハイライト表示されている画像を形成するために走査データが取得された方向である面の方向を提示している。この3つの画像302、304及び306は、この3つの画像302、304及び306に関する走査データが同時収集(この同時とは本明細書で定義した意味を有する)されているため、概ね同じ時点における走査対象の像を示している。画像302、304及び306は対応する走査データのデータ収集時刻から1秒または2秒以内に表示されるため、ユーザは走査を進行させながらリアルタイム画像の表示を受けられる。この3つの画像302、304、306は、心拍動すなわち心拍サイクルのうちの特定の時点における患者の心臓から得られることがある。別法として、この3つの画像302、304及び306は、心臓が拍動している間の患者の心臓の連続した動きを示していることがある。一実施形態では、ある面(例えば、面310)は、ユーザが面310に関連する選択した走査パラメータを変更することによって、これ以外の面に対して傾斜される(本図では図示していない)ことがあり、またこれ以外の面に対する角度回転が変更されることもある。
【0023】
図4は、3方面超音波走査のうちの1つの撮像面408内部の選択した関心領域(ROI)410に対する速度トレース412を表した例示的な画面表示400である。ユーザは、平面像402について撮像対象の内部にあるROI410をマウスを用いてクリックしてこれを選択することがある(例えば、選択されるROI410は患者の心臓の心筋層のうちの基底中隔領域内とすることがある)。3方面像404は、走査データを収集した3つの面を表すと共に、この3方面のうちのどの面が平面像402内に表示されているのかをユーザに伝えるために、平面像402のカラー境界に合わせて面408の輪郭をハイライト表示させかつ/またはカラー整合させている。例えば、平面像402のカラー境界が黄色でハイライト表示されることがあり、かつ3方面像404内の面408の輪郭が黄色でハイライト表示されることがある。ユーザは、ユーザインタフェース(図4では図示せず)内のフリーズ・ボタンをマウスクリックすることによって、ROI410の速度トレースを開始させる時点を選択することがある。この例示的な画面表示400では、ユーザは心拍周期の心拡張フェーズ414の終了時点で速度トレース412を開始させている。この速度トレース412は、秒を単位とした時間(水平軸)に対してプロットしたcm/s単位とした速度(垂直軸)を表している。図4のモノクロ画像では見えていないが、速度トレース412は黄色で表示されており、この黄色は、平面像402のカラー境界及び面408の輪郭に対して使用されている黄色と整合している。この速度トレースは、Bモード・フレーム(1〜3または1〜4)と一緒に集められた組織速度画像(TVI)フレームから抽出される。2D処理装置はフィルタ処理、走査変換及び混合を通じてこのBモード・フレームとTVIフレームを合成する。フリーズ・ボタンをマウスクリックすると、TVIデータとBモード・データからなるシネループが作成される。速度はTVIデータから計算され、画面表示400の速度表示部406の速度トレース412のように表示される。
【0024】
図5は、ROI510の速度トレース512を図4の速度トレース412と重ね合わせて図示した例示的な画面表示500である。図4に関する説明と同様に、ユーザは平面像502の撮像対象内部のROI510の上をマウスを用いてクリックしてROI510を選択することがある(例えば、選択されるROI510は、患者の心臓の心筋層のうちの基底前方領域内にあることがある)。3方面像504は、走査データを収集した3つの面を表すと共に、この3方面のうちのどの面が平面像502内に表示されているのかをユーザに伝えるために、平面像502のカラー境界に合わせて面508の輪郭をハイライト表示させかつ/またはカラー整合させている。例えば、平面像502のカラー境界が青色でハイライト表示されることがあり、かつ3方面像504内の面508の輪郭が青色でハイライト表示されることがある。ROI510の選択以外に、ユーザはさらに、図4に関して記載したようにROI410も選択することがある。ユーザは、ユーザインタフェース(図5では図示せず)内のフリーズ・ボタンをマウスクリックすることによって、速度トレースを開始させる時点を選択することがある。この例示的な画面表示500では、ユーザは心拍周期の心拡張フェーズ414の終了時点で速度トレース412及び512を開始させている。この速度トレース512(青色)は速度トレース412(黄色)の上に重ね合わせられており、ここでこの速度トレースの両者は、秒を単位とした時間(水平軸)に対してプロットしたcm/s単位とした速度(垂直軸)を表している。図5のモノクロ画像では見えていないが、速度トレース512は青色で表示されており、この青色は、平面像502のカラー境界及び面508の輪郭に対して使用されている青色と整合している。フリーズ・ボタンをマウスクリックすると、TVIデータとBモード・データからなる2つのシネループが作成され、これから速度トレース412及び512が計算されて画面表示500の速度表示部506に表示される。
【0025】
速度トレースを作成するためにフリーズ・ボタンを選択する前に、ユーザは速度を計算して表示させるための複数のROIを選択することがある。ユーザは任意選択で、3方面のうちの1つの面内で1つまたは複数のROIを選択すること、かつ/または複数の面内でROIを選択することがある。フリーズ・ボタンを選択すると、図4に関して行った説明と同様にして選択したすべてのROIに関する速度トレースが作成されて表示される。したがって、複数のROIを選択して、心臓拍動の同じサイクル内にそのすべてが表示されるような速度トレースを作成することができる。こうした機能は心臓の局所的及び全体的機能(例えば、タイミングや隆起(bulging))に関する定量的情報(例えば、速度やひずみ速度)を提供するために使用されることがある。
【0026】
図6は、超音波データ・スライスをバッファリングするための画像バッファ600を表した図である。データ・スライスは走査情報から作成されて画像組(例えば、画像組602、604及び606)として画像バッファ600内に格納される。画像組602は複数のデータ・スライスであり、この画像組602内のデータ・スライスの数は走査を受けた走査面の数に等しい。3方面走査の例では、それぞれが3方面の各走査面に対応する3つのデータ・スライスが画像組602内に含まれている。同様に、画像組604及び606のそれぞれにも3つのデータ・スライスが含まれている。画像バッファ600の内部でデータ・スライスは画像組として編成されかつ順序付けされているが、画像バッファ600内には個々にデータ・スライスが格納され画像バッファ600内から個々に取り出されることがある。図1のRF処理装置112などのRF処理装置によってデータ・スライスが作成され画像バッファ600内に格納されている際に、一方では2D表示処理装置(例えば、図1の表示処理装置116、118及び120)によって画像バッファ600の反対の端からデータ・スライスが取り出され/空にされている。画像バッファ600もまた1つのリング・バッファであり、次のデータ・スライスに関する格納位置を特定する指標が画像バッファ600の終わりに到達すると、指標は画像バッファ600の始点までリセットされる。画像バッファ600からのデータ・スライスを処理する速度は、データ・スライスが画像バッファ内に格納される速度と等しいか該速度より大きい。速度に関するこの関係を維持していれば、画像バッファ600内へのデータ・スライスの格納によって画像バッファ600内に直前に格納されたデータ・スライスが上書きされることがない。
【0027】
上では、診断用超音波システムの例示的な実施形態について詳細に記載した。本システムは、本明細書に記載した特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ、各システムの構成要素は本明細書に記載した別の構成要素と独立にまた個別に利用されることもある。各システムの構成要素は別のシステムの構成要素と組み合わせて使用することも可能である。
【0028】
本発明を、具体的な様々な実施形態に関して記載してきたが、当業者であれば、本発明が本特許請求の範囲の精神及び趣旨の域内にある修正を伴って実施できることを理解するであろう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に従って形成させた超音波システムのブロック図である。
【図2】超音波3方面データに対するリアルタイムによる収集、処理及び表示のための例示的な一方法の流れ図である。
【図3】走査対象の3つの面または像から形成させて併行表示した3つの超音波画像を表している例示的な画面表示である。
【図4】1つの走査面の内部の選択した関心領域(ROI)に関する速度トレースを表した例示的な画面像である。
【図5】ROIの速度トレースを、図4の速度トレースに重ね合わせて表した例示的な画面像である。
【図6】超音波データ・スライスをバッファリングするためのリング・バッファを表した図である。
【符号の説明】
【0030】
100 超音波システム
102 送信器
104 トランスジューサ素子
106 アレイ状トランスジューサ
108 受信器
110 ビーム形成器
112 RF処理装置
114 画像バッファ
116 2D表示処理装置
118 2D表示処理装置
120 2D表示処理装置
122 3D表示処理装置
124 コンピュータ・ディスプレイ
126 四分区画
128 四分区画
130 四分区画
132 四分区画
134 ユーザインタフェース
136 走査パラメータ
138 走査面
140 走査面
142 走査面
144 グラフィック・インジケータ
300 画面表示
302 超音波画像
304 超音波画像
306 超音波画像
308 走査面
310 走査面
312 走査面
314 3D合成画像
316 共通回転軸
400 画面表示
402 平面像
404 3方面像
406 速度表示部
408 撮像面
410 関心領域(ROI)
412 速度トレース
414 心拡張フェーズ
500 画面表示
502 平面像
504 3方面像
506 速度表示部
508 面
510 ROI
512 速度トレース
600 画像バッファ
602 画像組
604 画像組
606 画像組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差している少なくとも3つの異なる走査面(138、140、142)に沿って対象から超音波情報を連続的に収集(202)するための探触子(106)と、
前記少なくとも3つの異なる走査面(138、140、142)に対応するデータ・スライスを前記超音波情報に基づいて格納(204)するメモリ(114)と、
前記メモリ(114)にアクセスして前記データ・スライスを取得し前記データ・スライスに基づいて超音波画像(302、304、306)を作成(206)する処理装置(116、118、120、122)と、
前記超音波画像(302、304、306)を併行表示(208)するディスプレイ(124)と、
を備える超音波システム(100)。
【請求項2】
互いに交差している前記走査面(138、140、142)は、前記探触子(106)から前記対象を通って延びる軸に沿って交差している、請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項3】
前記探触子(106)は、第1、第2及び第3の走査面(138、140、142)のそれぞれに沿った収集が完了した時点で、前記探触子(106)が対象に対して物理的に移動することなく該第1、第2及び第3の走査面(138、140、142)間で走査を自動的に切り替えている、請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項4】
前記メモリ(114)は、
その各々が別々の異なる走査面(138、140、142)に沿って収集したデータ・スライスを包含している複数組のデータ・スライス(602、604、606)を含んだ一連の前記データ・スライスを格納するリング・バッファ(600)を含むこと、並びに
対応するデータ・スライスが取得された時点を特定しているタイムスタンプと前記データ・スライスが取得された方向にあたる対応する走査面(138、140、142)を特定している向きスタンプのうちの少なくとも一方を前記データ・スライスのそれぞれに関連付けして格納(204)していること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項5】
前記ディスプレイ(124)は、前記少なくとも3つの異なる走査面(138、140、142)に対応した少なくとも3つの超音波画像(302、304、306)を、該ディスプレイ(124)の隣接した四分区画(126、128、130)内に同時に併行表示(208)している、請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項6】
前記ディスプレイ(124)は、少なくとも1つの超音波画像(302、304、306)と、前記少なくとも3つの切断面(138、140、142)を表すナビゲーション画像(314)と、を同時に併行表示(208)している、請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項7】
前記ディスプレイ(124)は、対応する走査面(308、310、312)に沿って互いに交差している前記少なくとも3つの超音波画像(302、304、306)の斜視像(314)を表示(208)している、請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項8】
前記処理装置(116、118、120、122)は、前記データ・スライスに対して時間フィルタ処理と空間フィルタ処理のうちの少なくとも一方を実行している、請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項9】
前記走査面(138、140、142)は互いを基準として事前定義の角度を向いている、請求項1に記載の超音波システム(100)。
【請求項10】
前記探触子(106)は2次元アレイ状のトランスジューサ素子(104)を含んでいる、請求項1に記載の超音波システム(100)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−6935(P2006−6935A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179045(P2005−179045)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】