説明

リアルタイム3次元映像の映像酔い防止制御方法および制御装置

【課題】視点の位置や姿勢を自由に移動させることができるリアルタイム3次元映像の表示に関するもので、映像酔いを引き起こすような急激な変化のある映像が表示されてしまう部分を、変化の少ない映像に差し替えたい場合に有効な映像制御方法と映像制御装置を提供する。
【解決手段】視点の位置と姿勢を変化させられるリアルタイム3次元映像の制御で、視点制御に用いるモーションセンサから得られる変位量情報の値と閾値とを用いて、変位情報の値が閾値よりも大きい間は、表示する映像を急激な変化の少ない映像とする映像の差し替えを行い、好ましくは、差し替えを行う判定に用いる開始用閾値と、差し替え映像の表示を終了する判定に用いる終了用閾値とを別個に設定しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視点の位置や姿勢を自由に移動させることができるリアルタイム3次元映像の表示の制御に関するもので、特には、映像コンテンツ内の視点の位置や姿勢が急激に変化してしまった場合でも映像酔いを引き起こさないよう、映像表示に配慮した映像の制御方法や制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視点を自由に移動できる3次元映像の表示では、視点の移動量が想定を超えた量になることがあり、その対策としては、移動量そのものに上限を加えるものが一般的であった。
3次元空間内で視点を自由に移動・回転させることができる、リアルタイム3次元映像コンテンツにおいて、視点の位置や姿勢が急激に変化するときに映像酔いを引き押すことがある。
【0003】
特に、視点位置の操作がマウスやゲームパッドといったインターフェイス装置を用いる場合には、視点の位置や姿勢の移動は、一定の差分ずつ制御されるため、視点の位置や姿勢が急激に変化することが少ない。(例えば特許文献1に記載の発明)
但し、視点位置の操作にモーショントラッキングなどの手法を用いると、視点の位置や姿勢がモーショントラッキングセンサに絶対対応するため、モーショントラッキングセンサ自体の位置や姿勢を急激に変化させた場合には、リアルタイム3次元映像コンテンツ内の視点の位置や姿勢も急激に変化してしまう。
【0004】
これを回避する対策として、例えば、モーショントラッキングセンサの移動速度や移動角速度に上限を設ける手法も考えられる。しかし、これによるとモーショントラッキングセンサの位置が絶対対応するという操作性の面での優位性が損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−270029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来の技術の問題点に鑑みなされたものであり、視点の位置や姿勢を自由に移動させることができるリアルタイム3次元映像の表示に関するもので、映像酔いを引き起こすような急激な変化のある映像が表示されてしまう部分を、変化の少ない映像に差し替えたい場合に有効な映像制御方法と映像制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、視点の位置と姿勢を変化させられるリアルタイム3次元映像を制御する方法であって、
視点制御に用いるモーションセンサから得られる変位量情報の値と、閾値とを用いて、該変位情報の値が該閾値よりも大きい間は、表示する映像を急激な変化の少ない映像とする映像の差し替えを行うこと、
を特徴とする映像制御方法である。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記閾値には、前記映像の差し替えを行うかどうかの判定に用いる開始用閾値と、該差し替えを行った映像の表示を終了するかどうかの判定に用いる終了用閾値とがあり、該開始用閾値と該終了用閾値とを別個に設定しておくこと、
を特徴とする請求項1に記載の映像制御方法である。
これにより、映像の切り替えが頻発する動作の不安定を回避することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記映像の差し替えにより表示する映像とは、該差し替えの直前の映像の表示がそのまま続く映像か、又は、該差し替えの直前の視点の速度ベクトルと角速度ベクトルを維持したままであたかも視点が移動し続けるかのように表示される映像のいずれかであること、を特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の映像制御方法である。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記差し替えた映像の表示を開始する前後で、又は、前記差し替えた映像の表示を終了する前後で、トランジション効果を付加したこと、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の映像制御方法である。
これにより、フェードか又はワイプなどのトラジション効果を付加することで、自然にカットが切り替わった印象を与えることができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、視点の位置と姿勢を変化させられるリアルタイム3次元映像を制御する映像制御装置であって、
視点制御に用いることができ変位量情報の値を出力するモーションセンサ、
閾値を記録する閾値記録手段、
該変位量情報の値と閾値とを比較する変位量判定手段、
及び、該変位量情報の値が該閾値より大の間は、表示する映像を急激な変化の少ない映像とする映像の差し替えを行うこと映像差し替え手段、
を全て具備することを特徴とする映像制御装置である。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記閾値には、前記映像の差し替えを行うかどうかの判定に用いる開始用閾値と、該差し替えを行った映像の表示を終了するかどうかの判定に用いる終了用閾値とがあり、
該開始用閾値を記録しておく開始用閾値記録手段と、該終了用閾値を記録しておく終了用閾値記録手段とを有しており、該開始用閾値と該終了用閾値とは別個に設定しておくことができること、
を特徴とする請求項1に記載の映像制御装置である。
これにより、映像の切り替えが頻発する動作の不安定を回避することができる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、前記映像の差し替えにより表示する映像とは、該差し替えの直前の映像の表示がそのまま続く映像か、又は、該差し替えの直前の視点の速度ベクトルと角速度ベクトルを維持したままであたかも視点が移動し続けるかのように表示される映像のいずれかであって、これらの映像を表示する映像表示手段を備えること、
を特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の映像制御装置である。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、前記差し替えた映像の表示を開始する前後で、又は、前記差し替えた映像の表示を終了する前後で、トランジション効果を付加した映像を表示するトランジション映像表示手段を備えること、
を特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の映像制御装置である。
これにより、フェードか又はワイプなどのトラジション効果を付加することで、自然にカットが切り替わった印象を与えることができる。
【発明の効果】
【0015】
自由に視点が動くリアルタイム3次元映像は、その有効性の反面で、映像酔いを引き起こす可能性がある。しかし、本発明によると、その要因を映像コンテンツから排除することで、視聴者の体質に関わらずリアルタイム3次元映像を堪能することができるようになる。また、そういった映像コンテンツを排除する処理を、視聴者の感覚に自然ととけ込むよに行うことで映像作品の価値を損なうことなく、映像酔いのリスクを容易に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の映像制御方法に係る一例のアルゴリズムを説明するフローチャート。
【図2】本発明の映像制御装置に係る一例の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2に示すリアルタイム3次元映像を描画し映像を制御するPC(100)は、映像コンテンツ本体の描画が可能で、表示制御プログラムが実行可能な性能を有する必要があり、インターフェイス装置との接続等に使用されるI/O(1)、1つ以上のCPU(2)、メインメモリ(3)、例えばハードディスクドライブである主記憶手段(4)、グラフィックスアダプタ(201)、GPU(Graphics Processing Unit)(5)、VRAM(Video Random Access Memory)(6)から構成される。
【0018】
PC(100)には、視点を制御するインターフェイス装置(200)がI/O(1)を介して接続される。接続されるインターフェイス装置は、視点の位置と姿勢がインターフェイス装置のセンサー部の位置と姿勢に絶対対応するモーショントラッキングセンサーを用いる。
【0019】
接続されるインターフェイス装置(200)は、任意のデバイスドライバによってPCと論理的に接続され、センサーのアナログ信号が時系列のデジタル値としてCPUに渡される。
【0020】
リアルタイム3次元映像のコンテンツプログラムは主記憶手段(4)に格納される。コンテンツプログラムは起動時にメインメモリ(3)に展開されCPUによりプログラム処理が実行される。さらに描画処理に応じてPC(100)に取り付けられたグラフィックスアダプタ(201)内のVRAM(6)に3次元映像の形状・画像データが展開され、GPU(5)によって描画処理が行われる。
【0021】
映像装置への出力はグラフィックスアダプタ(201)から任意の形式の映像信号として出力される。
【0022】
映像差し替えの判定は、主記憶手段(4)のからメインメモリ(3)に展開されたコンテンツプログラム内の開始用閾値、終了用閾値を用いてセンサーからの入力値との比較処理を行う。
【0023】
映像差し替え処理は、グラフィックスアダプタ(201)によって描画フレームを合成することで行う。
【産業上の利用可能性】
【0024】
自由に視点を移動させることができるリアルタイム3次元映像は、プロダクトデザインや医療分野で潜在的な需要がある。また、エンターテイメント業界でインタラクティブな映像コンテンツを上映する際にも大いに需要がある。
そのような背景の中、映像酔いが発生することは、大きな懸念となるが、本発明により、リアルタイム3次元映像で、視聴時の映像酔いを引き起こすリスクを軽減することが出来、より多くの人に快適に受け入れられうる映像の提供に貢献できる。
【符号の説明】
【0025】
1 ・・・CPU
2 ・・・GPU
3 ・・・メインメモリ
4 ・・・主記憶手段(例:ハードディスクドライブ)
100・・・PC
200・・・インターフェイス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視点の位置と姿勢を変化させられるリアルタイム3次元映像を制御する方法であって、
視点制御に用いるモーションセンサから得られる変位量情報の値と、閾値とを用いて、該変位情報の値が該閾値よりも大きい間は、表示する映像を急激な変化の少ない映像とする映像の差し替えを行うこと、
を特徴とする映像制御方法。
【請求項2】
前記閾値には、前記映像の差し替えを行うかどうかの判定に用いる開始用閾値と、該差し替えを行った映像の表示を終了するかどうかの判定に用いる終了用閾値とがあり、該開始用閾値と該終了用閾値とを別個に設定しておくこと、
を特徴とする請求項1に記載の映像制御方法。
【請求項3】
前記映像の差し替えにより表示する映像とは、該差し替えの直前の映像の表示がそのまま続く映像か、又は、該差し替えの直前の視点の速度ベクトルと角速度ベクトルを維持したままであたかも視点が移動し続けるかのように表示される映像のいずれかであること、を特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の映像制御方法。
【請求項4】
前記差し替えた映像の表示を開始する前後で、又は、前記差し替えた映像の表示を終了する前後で、トランジション効果を付加したこと、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の映像制御方法。
【請求項5】
視点の位置と姿勢を変化させられるリアルタイム3次元映像を制御する映像制御装置であって、
視点制御に用いることができ変位量情報の値を出力するモーションセンサ、
閾値を記録する閾値記録手段、
該変位量情報の値と閾値とを比較する変位量判定手段、
及び、該変位量情報の値が該閾値より大の間は、表示する映像を急激な変化の少ない映像とする映像の差し替えを行うこと映像差し替え手段、
を全て具備することを特徴とする映像制御装置。
【請求項6】
前記閾値には、前記映像の差し替えを行うかどうかの判定に用いる開始用閾値と、該差し替えを行った映像の表示を終了するかどうかの判定に用いる終了用閾値とがあり、
該開始用閾値を記録しておく開始用閾値記録手段と、該終了用閾値を記録しておく終了用閾値記録手段とを有しており、該開始用閾値と該終了用閾値とは別個に設定しておくことができること、
を特徴とする請求項1に記載の映像制御装置。
【請求項7】
前記映像の差し替えにより表示する映像とは、該差し替えの直前の映像の表示がそのまま続く映像か、又は、該差し替えの直前の視点の速度ベクトルと角速度ベクトルを維持したままであたかも視点が移動し続けるかのように表示される映像のいずれかであって、これらの映像を表示する映像表示手段を備えること、
を特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の映像制御装置。
【請求項8】
前記差し替えた映像の表示を開始する前後で、又は、前記差し替えた映像の表示を終了する前後で、トランジション効果を付加した映像を表示するトランジション映像表示手段を備えること、
を特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の映像制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−266989(P2010−266989A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116372(P2009−116372)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】