リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の同定方法
本発明は、リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体ユビキチンの同定方法に関する。さらに、本発明は、前記ヘテロ多量体ユビキチン群をコードするDNAライブラリー、ならびに、前記DNAライブラリーの発現によって得られるタンパク質ライブラリー、前記DNAまたは前記タンパク質を含む細胞およびファージ、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。さらに、選択されたリガンドに高い親和性で特異的に結合可能な、ヘテロ多量体ユビキチンベースの新規な結合タンパク質を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体ユビキチンの同定方法に関する。さらに、本発明は、前記ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質の群をコードするDNAライブラリー、ならびに、前記DNAライブラリーの発現によって得られるタンパク質ライブラリー、前記DNAまたは前記タンパク質を含む細胞およびファージ、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。さらに、選択されたリガンドに高い親和性で特異的に結合可能な、ヘテロ多量体ユビキチンベースの新規な結合タンパク質を提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンではないアミノ酸からなる結合分子の需要が高まりつつある。現在に至るまで、抗体は、最もよく確立された結合分子に類別されるが、免疫グロブリン分子にはいくつかの主要な欠点があるため、高い親和性と特異性でリガンドをターゲットとするために、新しい結合分子が、なお求められている。免疫グロブリン分子は、非常に容易に製造でき、ほとんど全てのターゲットを対象とするが、極めて複雑な分子構造を有している。そのため、容易に取扱い可能な、より小さな分子によって、抗体を代用することが絶えず求められている。これら代替結合剤は、例えば、疾病の診断、予防、および治療の医療分野において、有用である。
【0003】
相対的に規定された三次元構造を有するタンパク質は、通常、足場タンパク質と呼ばれ、前記代替結合剤の設計の開始物質として用いられる。これら足場タンパク質は、一般的に、特異的またはランダムな配列のバリエーションを許容する、1以上の領域を含んでおり、そのような配列のランダム化は、しばしば、特異的結合分子を選択できる、タンパク質ライブラリーの製造のために行われる。抗体よりもサイズが小さく、かつ、ターゲット抗原への親和性が、抗体に匹敵するか、あるいはより高い分子は、薬物動態的な性質および免疫原性の点から、抗体よりも優れていると予想される。
【0004】
従前の多くのアプローチは、結合タンパク質の開始物質として足場タンパク質を用いている。例えば、国際公開第99/16873号パンフレット(特許文献1)において、特定のリガンドに結合活性を示すリポカリンファミリー(いわゆるアンチカリン)の修飾タンパク質が開発された。リポカリンファミリーのペプチド構造は、遺伝子工学的方法を用いて、天然のリガンド結合ポケットにおけるアミノ酸置換によって修飾されている。免疫グロブリンのように、アンチカリンは、分子構造の同定または結合に使用できる。抗体と類似する方法で、可動性ループ構造が修飾され、これらの修飾により、天然のものとは異なるリガンドの認識が可能となる。
【0005】
国際公開第01/04144号パンフレット(特許文献2)には、それ自体には結合部分がないβシート構造タンパク質のタンパク質表面における、結合ドメインの人工的な生成が記載されている。この手法によれば、高い親和性と特異性でリガンドと相互作用する、新規に生成された人工結合ドメイン(例えば、眼水晶体構造タンパク質であるγクリスタンのバリエーション)が得られる。アンチカリンに関して先に述べたような可動性ループ構造から形成される、すでに存在する結合部位の修飾とは対照的に、これらの結合ドメインは、βシートの表面に新規に生成される。しかし、国際公開第01/04144号パンフレットには、新規結合特性を生じるための、相対的に大きなタンパク質の改変について記載されているのみである。国際公開第01/04144号パンフレットのタンパク質は、その大きさのため、ある程度の労力を必要とする方法でしか、遺伝子工学レベルで修飾できない。さらに、これまで公開されたタンパク質においては、タンパク質の全体構造を維持するために、全アミノ酸のうち、比較的小さいパーセンテージのみが修飾されていた。そのため、従前は存在しない結合特性の発生に利用できるのは、タンパク質表面の比較的小さい領域のみである。さらに、国際公開第01/04144号パンフレットには、γ−クリスタンへの結合特性の生成のみが記載されている。
【0006】
国際公開第04/106368号パンフレット(特許文献3)には、ユビキチンタンパク質に基づく人工結合タンパク質の生成が記載されている。ユビキチンは、小さい単量体の細胞質タンパク質であり、配列が高度に保存され、原虫から脊椎動物にいたるまでの全ての公知の真核細胞に存在する。生物において、ユビキチンは、細胞タンパク質のコントロールされた分解の制御において重要な役割を担う。この目的のために、分解予定のタンパク質は、酵素カスケードを通過する間に、ユビキチンまたはポリユビキチン鎖と共有結合し、この標識により選択的に分解される。最近の研究結果によると、ユビキチンまたはユビキチンによるタンパク質の標識は、それぞれ、数種のタンパク質の移入または遺伝子制御等の他の細胞プロセスにおいても、重要な役割を担っている。
【0007】
その生理的機能の明確化に加え、ユビキチンは、そもそもその構造およびタンパク質の化学特性のために、研究対象となっている。ユビキチンのポリペプチド鎖は、非常にコンパクトなα/β構造に折りたたまれた76アミノ酸からなる(Vijay−Kumar, 1987(非特許文献1))。前記ポリペプチド鎖のほぼ87%は、水素結合によって、二次構造エレメントの形成に関与する。顕著な二次構造は、3.5αヘリックスターン、ならびに4つの鎖からなる逆平行βシートである。これらの要素の特徴的な配置(逆平行βシートがタンパク質表面に露出し、その裏側にαヘリックスがパックされ、これが前記逆平行βシート上に垂直に延びている)は、一般的に、いわゆるユビキチン様フォールディングモチーフと考えられている。さらなる構造的な特徴は、αヘリックスとβシートとの間のタンパク質内側における、標識疎水性領域である。
【0008】
ユビキチンの人工的な調製は、そのサイズが小さいため、化学合成によっても、生物学的手法によっても行うことができる。有利なフォールディング特性のため、ユビキチンは、大腸菌等の微生物を使用した遺伝子工学により、比較的大量に、そのサイトゾルまたは細胞膜周辺腔において製造できる。一般的に、後者のストラテジーは、周辺質において酸化状態が優勢であるため、分泌タンパク質の製造に使用される。簡易かつ効果的な細菌による調製のために、ユビキチンは、その製造に問題がある他の外来タンパク質に対する融合パートナーとして使用できる。ユビキチンとの融合によって、溶解度の改善およびそれによる製造収率の改善が、達成できる。
【0009】
抗体または他の代替足場と比べ、ユビキチンタンパク質をベースとする人工結合タンパク質(Affilin(登録商標)ともいう)は、小さいサイズ、高い安定性、高い親和性、高い特異性、費用対効果の高い微生物による製造、血清半減期の調整という利点を有している。しかしながら、免疫原性、迅速かつ予測的な前臨床開発の手順、および新しい治療方法の点から、それらのタンパク質をさらに開発する必要がある。国際公開第05/05730号パンフレット(特許文献4)には、人工結合タンパク質を得るためのユビキチン足場の使用が、概略的に記載されているが、ハプテンおよび抗原等(例えば、タンパク質およびペプチド、ならびにこれらのエピトープ等)のリガンドへの、より高くより特異的な結合親和性を得るために、ユビキチンタンパク質を修飾する方法や、かかる修飾ユビキチンタンパク質を効率的に選択する方法については、記載されていない。
【0010】
国際公開第05/05730号パンフレットに記載の方法は、修飾ユビキチンタンパク質の単量体または修飾ユビキチンの結合タンパク質(coupled proteins)に関する。前記結合型は、1、2、またはそれ以上の修飾ユビキチンタンパク質をスクリーニングして選択し、その後、遺伝学的手法または化学的手法のいずれかにより、これらを組み合わせて結合型を得ることによって生成される。一つの結合ユビキチン分子によって、例えば、異なる種類のリガンドへの複数の特異的結合が可能となる。一例をあげると、単一の修飾ユビキチン分子と比べて結合親和性を増加させるため、二つの同一のユビキチンベースのタンパク質の部位特異的結合(ホモ二量体)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第99/16873号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/04144号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/106368号パンフレット
【特許文献4】国際公開第05/05730号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Vijay−Kumar, 1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、リガンドへの高結合能を有する多量体ユビキチンタンパク質の同定方法を提供することである。本発明のさらなる課題は、選択されたリガンドに高親和性で特異的に結合可能な、修飾ユビキチンベースの新規な結合タンパク質の同定方法を提供することである。
【0014】
上述の課題は、提出した独立請求項の主題によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、ならびに下記の記載、実施例および図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、単量体41B10(ここでは、SPWF28−41B10th)についての、Kd=9.4μM=9.45×10−6Mの結合親和性を示す。
【図1B】図1Bは、ヘテロ二量体ユビキチンの結合親和性を示す。
【図2A】図2は、サイトカインに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
【図2B】図2Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の高親和性を示す(Kd 50.7nM=5×10−8M)。
【図2C】図2Bは、サイトカインTNFαに融合することによって多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の親和性の向上を示す(Kd=5.6nM=5.6×10−9M)。
【図2D】図2Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体変異体9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。
【図2E】図2Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図2F】図2Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図3】図3は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。
【図4】図4は、配列アライメントを示す。
【図5】図5は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始する)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。
【図6】図6は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。
【図7】図7は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。
【図8】図8は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。
【図9】図9は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。
【図10】図10は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【図11】図11は、ED−B結合変異体のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。
【図12】図12は、6種類のユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質の配列アライメントを示す。
【図13】図13は、結合決定領域BDR1およびBDR2、ならびに、図12に示すユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質のリンカーのアライメントを示す。
【図14】図14は、ビオチン化MIA−2(biot.MIA2)への、図12に示す結合変異体1111−E10についての、濃度依存性ELISAを示す。
【図15A】図15Aは、第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価したことを示す。
【図15B】図15Aは、第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価したことを示す。
【図15C】図15Aは、第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価したことを示す。
【図15D】図15Bは、第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66、68位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されていることを示す。
【図15E】図15Cは、ヘテロ二量体ユビキチン変異体SPWF−15_6−A12の、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。
【図15F】図15Dは、TNFαに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの配列を示す。
【図15G】図15Eは、前記ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。
【図16A】図16Aは、NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−1B7−thの配列を示す。
【図16B】図16Bは、濃度依存性ELISAにより、Kd0.9μΜ=9×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかることを示す。
【図16C】図16Cは、NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−6A2−thの配列を示す。
【図16D】図16Dは、濃度依存性ELISAにより、Kd180nM=1.8×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかることを示す。
【図17A】図17Aは、IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−16B2−tsの配列を示す。
【図17B】図17Bは、濃度依存性ELISAにより、Kd3.8μMの親和性でIgGへ結合することがわかることを示す。
【図17C】図17Cは、IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−9C6−tsの配列を示す。
【図17D】図17Dは、濃度依存性ELISAにより、Kd4.1μMの親和性でIgGへ結合することがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
より具体的には、本発明者らは、以下の工程を含む、リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の同定方法を提供する。
a)単量体修飾ユビキチンタンパク質から生じるヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された、異なる修飾がなされた2つ以上のユビキチン単量体または1つ以上の修飾ユビキチン単量体を含むヘテロ多量体タンパク質を含み、
前記ヘテロ多量体タンパク質に含まれる前記単量体の少なくとも2つは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位の少なくとも3個のアミノ酸における表面露出アミノ酸が、少なくとも置換により異なる修飾がなされ、
前記修飾単量体タンパク質が、非修飾のユビキチンタンパク質に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する配列を有する、前記工程
b)前記異なる修飾がなされたタンパク質群に対する潜在的なリガンドを提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記リガンドと接触させる工程
d)スクリーニング処理により、ヘテロ多量体修飾タンパク質を同定する工程であり、
前記ヘテロ多量体修飾タンパク質は、前記リガンドと、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程、および
任意に、
e)前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質を、前記結合親和性で、単離する工程
【0017】
本願で使用されている重要な用語の定義
「ユビキチンタンパク質」は、配列番号1のユビキチン、および、下記の定義によるその修飾物を包含する。ユビキチンは、真核生物において、高度に保存されている。例えば、今日まで研究されてきた全ての哺乳類において、ユビキチンは、同一のアミノ酸配列を有する。ヒト、げっ歯類、ブタ、および霊長類由来のユビキチン分子が、特に好ましい。また、任意の他の真核生物起源のユビキチンを使用することもできる。例えば、酵母由来のユビキチンは、配列番号1と3つのアミノ酸が異なるのみである。前記「ユビキチンタンパク質」に包含される前記ユビキチンタンパク質は、通常、配列番号1に対し、70%を超える、好ましくは75%を超える、80%を超える、85%を超える、90%を超える、95%を超える、96%を超える、または97%までの配列同一性を示す。
【0018】
配列番号1のアミノ酸配列に対する前記ユビキチン誘導体の配列同一性の程度の決定には、例えば、SIM Local similarity program(Xiaoquin Huang and Webb Miller, Advances in Applied Mathematics, vol. 12: 337− 357, 1991)またはClustal,W.を使用できる(Thompson et al., Nucleic Acids Res., 22(22): 4673−4680, 1994.)。好ましくは、配列番号1に対する前記修飾タンパク質の配列同一性の程度は、配列番号1の完全配列に対して相対的に決定される。
【0019】
本明細書において、「リガンド」、「ターゲット」および「結合パートナー」は、同意語として使用され、置き換え可能である。リガンドは、前述のヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質に、ここで定義される親和性をもって結合可能な任意の分子である。
【0020】
本発明の「ヘテロ多量体融合タンパク質」または「ヘテロ多量体タンパク質」は、1つ以上の異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質と考えられる。よって、本発明の「ヘテロ多量体」は、少なくとも2つの異なる修飾がなされた単量体ユビキチンタンパク質の融合体であると考えられる。前記少なくとも2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質は、特定の結合パートナーに対する一価の結合特性を共同でもたらす、2つの相互作用結合ドメイン領域を有する。ヘテロ二量体またはヘテロ三量体が好ましい。
【0021】
本発明によれば、1つのリガンドに結合する少なくとも2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、例えば、遺伝学的手法を使用して、互いにヘッドトゥテイル融合で結合される。前記異なる修飾融合ユビキチン単量体は、一価で結合し、両方の「結合ドメイン領域」(BDR)が共に作用する場合にのみ効果的である。前記ヘテロマータンパク質を形成する前記修飾および結合ユビキチン単量体は、一つの連続的な結合領域を介して同じエピトープに結合する。前記ヘテロマーのこの連続的な領域は、少なくとも2つの異なる修飾ユビキチン単量体により形成される前記少なくとも2つのモジュールの両結合決定領域により形成される。
【0022】
「ヘッドトゥテイル融合」は、2つ以上のタンパク質が、前記多量体に含まれるユニット数に応じて、N−C−N−C方向においてそれらを結合することにより、互いに融合することと解釈すべきである。このヘッドトゥテイル融合において、前記ユビキチン単量体は、リンカーを介すことなく、直接連結することもできる。または、前記ユビキチン単量体の融合は、リンカーを介して行うことができる。前記リンカーは、例えば、少なくともGIGのアミノ酸配列もしくは少なくともSGGGGのアミノ酸配列を有するリンカー、または、任意の他のリンカー、例えば、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIGもしくはSGGGGSGGGGがあげられる。2つのユビキチン単量体の遺伝学的融合用の他のリンカーも、当該技術分野では公知であり、使用できる。要約すると、修飾ユビキチン単量体の融合タンパク質を得るために、異なる修飾がなされた2つ、3つ、またはそれ以上の単量体ユビキチンタンパク質を融合させることにより、前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質が提供される。さらに別の実施形態では、前記ユビキチン単量体の少なくとも1つは修飾されず、残りのユビキチン分子のうちの少なくとも1つが修飾される。
【0023】
「群」という用語は、異種核酸によってコードされる異種ポリペプチドの混合物であるライブラリーを指す。前記ライブラリーは、核酸配列によってコードされる単一のポリペプチドをメンバーとして構成される。ライブラリーメンバー間での配列の相違により、前記ライブラリー内における多様性が得られる。前記ライブラリーは、複数のポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形態であってもよいし、あるいは、核酸ライブラリーを用いて形質転換された、生物または細胞、例えば、バクテリア、ウイルス、動物または植物の細胞等の形態でもよい。個々の生物または細胞が、前記ライブラリーのメンバーを1つだけを含むのが好ましい。前記核酸を発現ベクターに組み込み、前記核酸によってコードされる前記ポリペプチドの産生を可能にすれば有利である。したがって、好ましい態様においては、ライブラリーは、宿主生物群の形態をとってもよく、各生物が、1以上の発現ベクターのコピーを含有し、前記発現ベクターが、発現によって対応するポリペプチドメンバーを産生できる、核酸の形態にある前記ライブラリーメンバーを1つ含むよう構成してもよい。このように、前記宿主生物群は、遺伝的に多様なポリペプチド変異体の多大なレパートリーをコードできる可能性がある。
【0024】
前記ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質群は、例えば、異なる修飾がなされた単量体タンパク質をそれぞれコードするDNAライブラリーを遺伝学的に融合することによって提供される。あるいは、これに代わる手法として、前記単量体ユビキチンタンパク質の少なくとも1つを修飾し、前記DNAをヘテロ多量体融合タンパク質に翻訳し、前記タンパク質をディスプレイし、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された単量体ユビキチンタンパク質を含むヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の存在下、前記ディスプレイされたタンパク質をスクリーニングすることによって提供される。前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質は、前記リガンドと、Kd 10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示す。ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を得るため、異なる修飾がなされた単量体タンパク質のそれぞれまたは少なくとも1つをコードする2つのDNAライブラリーの融合、ヘテロ三量体ユビキチンタンパク質を得るため、異なる修飾がなされた単量体タンパク質のそれぞれまたは少なくとも1つをコードする3つのDNAライブラリーの融合等を行う。また、さらに別の代替手法を用いて、スクリーニング用のライブラリーを提供してもよい。一例として、例えば、ソリッドステート技術により前記タンパク質を化学合成し、そのアミノ酸組成にバリエーションをもたらすことが挙げられる。当業者であれば、さらに別の選択肢に想到し、その有用性を見出す可能性がある。したがって、本発明は、本明細書に記載の例に限定されるものと解釈すべきではない。
【0025】
よって、本発明は、リガンドへの結合能によって決定される機能性によりポリペプチドのレパートリーを提供し、選択の結果得られたポリペプチドのサブセットを採用して前記ターゲットリガンドへの結合能に基づくさらなる選択ラウンドを行い、前記リガンドに対する結合親和性の蓄積および増加を図る方法を開示している。
【0026】
本発明によれば、当業者は、選択されたポリペプチドのレパートリーから、請求項に規定の親和性で前記ターゲットリガンドに結合できないポリペプチドを除去することができる。また、本発明によれば、当業者は、選択されたポリペプチドのレパートリーにおいて、機能的で、かつ前記親和性の要件を満たすポリペプチドの濃度を高めることができる。
【0027】
本発明の最も重要なキーポイントの1つは、前記ターゲットに対して一価の結合親和性を有する前記修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質の選択と、それに続いて行われる、前記結合親和性に関与する前記修飾アミノ酸の決定である。
【0028】
多量体化、好ましくは二量化のさらなる利点は、新規な高親和性の結合特性を発生するために修飾され得るアミノ酸残基の総数の増加にある。前記利点は、多くのアミノ酸が修飾されても、ターゲットに対する前記新規に生成された結合タンパク質の足場全体の安定性が低下することがなく、タンパク質の化学的完全性(protein−chemical integrity)が維持されることである。一方、所定のターゲットに対する新規結合部位を発生させるために修飾され得る残基の総数は、前記修飾残基が2つ、3つ、またはそれ以上の単量体ユビキチンタンパク質に割り当てられることで増加する。修飾数は、修飾単量体ユビキチン分子数に応じて、2倍またはx倍にできる。要約すると、ユビキチンベースの結合タンパク質のモジュール構造は、2つ、3つ、またはそれ以上の単量体ユビキチン分子に前記修飾アミノ酸が含まれると、前記修飾アミノ酸の総数を増加できる。本発明の方法は、一価の特異性(一つのシングルエピトープ)を有するヘテロ多量体ユビキチン分子の同定を提供する。
【0029】
「一価」は、前記修飾二量体(任意に三量体、または通常は多量体)ユビキチンの前記第1および前記第2(任意に、さらに多くの)単量体ユニットにおいて生成された両結合領域が共に、ED−Bに相乗的に組み合わせられるように結合する機能、すなわち、両結合領域が、共同で一価の結合活性を形成する役割を果たす機能と理解されるべきである。前記二量体分子における前記第1および前記第2修飾ユビキチン両方の各結合領域を、別々に取り除いた場合、ED−Bへの結合は、前記二量体分子より明らかに効率および親和性が低下するだろう。前記修飾ユビキチンが、各単量体タンパク質を単独で使用するよりも、より効率的にED−Bに結合可能となるように、両結合領域は、アミノ酸の連続領域として前記ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質表面に形成されるユビキチン結合部位を形成する。本発明によれば、最も有力な結合ユビキチン分子をスクリーニングした後に、前記2つの単量体タンパク質が互いに連結されるのではなく、既に前記ヘテロ二量体ユビキチンが存在する状態でスクリーニング工程を行うことが、特に重要である。最も有力な結合ユビキチン分子の配列情報を取得した後に、任意の他の方法、例えば、化学合成または遺伝子工学手法により、例えば、前記2つの同定した単量体ユビキチンユニット同士を連結することにより、これらの分子を得てもよい。二量体修飾ユビキチンタンパク質に関して本明細書に提示する例は全て、三量体または通常は多量体修飾ユビキチンタンパク質に関するものに変更できると解釈すべきである。
【0030】
したがって、結合パートナーに対して共通の結合部位を有するヘテロ多量体、特にヘテロ二量体の使用は、これらの修飾残基の全量が、前記二量体または多量体を形成する前記2以上の単量体ユニットに割り振られるため、最終的な結合分子の前記タンパク質の化学的完全性に過度に影響を与えない修飾残基数を増加させる可能性を切り開く。前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質は、タンパク質ライブラリーに存在する。
【0031】
例えば、単量体修飾ユビキチンタンパク質をコードする少なくとも2つのDNAライブラリーが、各単量体ユビキチンユニットにおいて、選択されたコドンに異なる修飾をすることにより確立された後、ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質をコードするDNA分子を得るために、これらのライブラリーは、遺伝学的に融合される。本発明によれば、これらのライブラリーのDNAがタンパク質に翻訳され、このようにして得られたヘテロ多量体タンパク質がターゲット分子に接触されて、結合親和性が存在する場合には、パートナーへの結合が可能となる。好ましい修飾ユビキチンは、ヘテロ二量体である。
【0032】
接触工程およびスクリーニング工程が、ヘテロ多量体(例えば、ヘテロ二量体)修飾ユビキチンタンパク質について、既に行われていることが本発明の重要な態様である。この工程により、前記ターゲットへの一価の結合活性を提供するユビキチンタンパク質のスクリーニングが可能である。
【0033】
本発明によれば、最も有力な結合ユビキチン分子をスクリーニングにより選択した後に、前記単量体修飾ユビキチンタンパク質が互いに連結されるのではなく、既に前記ヘテロ多量体ユビキチンが存在する状態でスクリーニング工程を行うことが、特に重要である。ただし、最も有力なヘテロ多量体ユビキチン結合分子の配列情報を取得した後に、任意の他の方法、例えば、化学合成または遺伝子工学手法により、例えば、前記2つの同定した、異なる修飾がなされた単量体ユビキチンユニット同士を連結してヘテロ二量体結合タンパク質を形成することにより、これらの分子を得てもよい。
【0034】
本発明における接触は、適切な提示方法および選択方法、例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、TATファージディスプレイ、mRNAディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、または細菌表面ディスプレイ等の方法、好ましくは、リボソームディスプレイ法またはファージディスプレイ法により行われる。徹底した開示のために、下記の参考文献を参照できる;Hoess, Curr. Opin. Struct. Biol.. 3 (1993), 572−579;Wells and Lowmann, Curr. Opin. Struct. Biol. 2 (1992), 597−604;Kay et al., Phage Display of Peptides and Proteins−A Laboratory Manual (1996), Academic Press。前述の方法は、当業者に公知であり、本発明における修飾に使用できる。
【0035】
本発明によれば、前記修飾タンパク質が、所定の結合パートナーに対して、定量化できる結合親和性を有するかどうかの決定は、1以上の下記の方法により行うことが好ましい。ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、サイズ排除クロマトグラフィー、蛍光偏光測定、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、および超遠心分析法。当該技術分野において利用可能なその他の方法が、技術常識の範囲内において当業者に利用可能である。
【0036】
本明細書において、「ヘテロ多量体」は、少なくとも2つの異なる単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質であると考えられる。本発明の「ヘテロ二量体」は、異なる修飾がなされた2つの単量体ユビキチンタンパク質の融合物であると考えられる。前記2つの単量体ユビキチンタンパク質は、いずれも、特異的結合パートナーに対して、共同で一価の結合特性を示す。本発明の修飾多量体(例えば、二量体)リガンド結合ユビキチンタンパク質は、各単量体ユビキチンタンパク質を個々にスクリーニングし、その後、これら少なくとも2つを結合することによっては、得ることができず、前記リガンドへの共同での一価の結合活性を示す第1および第2単量体ユニットまたはさらなる単量体ユニットからなる多量体(任意に、二量体)タンパク質をスクリーニングすることにより、得ることができることを強調しておく。前記各サブユニットは、前記リガンドへの結合親和性がかなり制限され、結合した多量体または二量体修飾ユビキチンタンパク質のみが、本明細書に記載の優れた結合特性を有することが期待される。
【0037】
一実施形態においては、前記方法は、修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質の同定に関するものであり、2つの単量体ユビキチンユニットが互いにヘッドトゥテイル配置で結合され、前記二量体タンパク質の各単量体が、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位に位置するアミノ酸(各アミノ酸は、表面が露出されている)の少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個の置換により、異なる修飾がなされており、
前記置換は、下記(1)または(2)を含み、さらなる修飾、好ましくは、他のアミノ酸の置換を任意で含み、
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
前記修飾単量体ユビキチンユニットが、配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%、および少なくとも90%の群から選択される少なくとも一つのアミノ酸同一性を有し、
リガンドに対する前記タンパク質の特異的結合親和性がKd=10−7〜10−12Mであり、前記タンパク質が、前記リガンドに対して一価の結合活性を示す。
【0038】
本発明のさらなる実施形態では、各単量体ユビキチンユニットにおいて、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位における、6、7、8、9個または全てのアミノ酸が、修飾される。本発明においては、各単量体ユニット、例えば、第1ユニットおよび第2ユニットにおいて、これらの変異は、それぞれ組み合わせることができると理解される。例えば、前記第1ユニットが、6つの修飾を含むことができ、一方、前記第2ユニットが、7つまたは8つの修飾を含み、前記第1ユニットが8つの修飾を、前記第2ユニットが7つの修飾を含んでもよい、等である。前述に列挙する各アミノ酸は、前記第1ユニット、前記第2ユニットから選択でき、その後、前記両ユニットは、組み合わせられる。好ましい置換は、以下に記載する。
【0039】
前記修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質のディスプレイ方法
本願に適用されるファージディスプレイ法およびリボソームディスプレイ法は、下記および実施例に記載されている。これら方法は、本明細書に記載の潜在的なリガンドに対して結合特性を示すユビキチン変異体を検出するための、本発明における選択手法の例として挙げられている。同様に、例えば、細菌上に提示する方法(bacterial surface display;Daugherty et al., 1998, Protein Eng. 11(9):825−832)もしくは酵母細胞上に提示する方法(yeast surface display; Kieke et al., 1997 Protein Eng. 10(11):1303−10)、または、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun, 1997 Proc Natl Acad Sci U S A. 94(10):4937−4942; He and Taussig, 1997 Nucleic Acids Res. analytical ultracentrifugation 25(24):5132−5134)、cisディスプレイ(Odegrip et al., 2004 Proc Natl Acad Sci U S A. 101(9):2806−2810)もしくはmRNAディスプレイ等の無細胞選択システムを、適用できる。後者の場合、遺伝子型および表現型の一過性の物理的な結合が、リボソームを介して、適切なmRNAへのタンパク質変異体の連結により達成される。
【0040】
本明細書に記載のファージディスプレイ法において、ユビキチンの組換え変異体は、繊維状ファージ上に提示される。一方、この変異体のコードDNAは、一本鎖の形状でファージエンベロープパッケージされ、同時に提示される。このため、親和性濃縮の枠組みにおいて、所定の特性を有する変異体を、ライブラリーから選択でき、その遺伝情報を、それぞれ、適切な細菌に感染させることにより増幅でき、また異なる濃縮サイクルに添加できる。ファージ表面での変異したユビキチンの提示は、アミノ末端シグナル配列、好ましくはPelBシグナル配列、および、前記ファージのカプシドまたは表面タンパク質への遺伝子融合により達成され、カプシドタンパク pIIIまたはそのフラグメントのカルボキシ末端融合が好ましい。また、コードされた融合タンパク質は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによる検出および/または精製のためのアフィニティータグもしくは抗体エピトープ、または、前記親和性濃縮過程における融合タンパク質の特異的切断のためのプロテアーゼ認識配列等のさらなる機能性成分を含んでもよい。また、例えば、ユビキチン変異体の遺伝子およびファージカプシドタンパク質またはそのフラグメントのコード領域の間に、アンバー停止コドンを存在させてもよい。前記アンバー停止コドンは、1つのアミノ酸の導入により、部分的に、適切なサプレッサー株における翻訳の際に認識されない。
【0041】
所定のターゲットへの結合特性を有するユビキチン変異体の単離に関する選択工程に適切であり、前述の融合タンパク質の遺伝子カセットが挿入された細菌ベクターは、ファージミドという。中でも、繊維状ファージの遺伝子間領域(例えば、M13もしくはf1)、または、その部分を含む。例えば、M13K07等のヘルパーファージによる前記ファージミドを輸送する細菌細胞の重複感染の際、ファージカプシド中に、ファージミドDNAの共有結合的に閉鎖された鎖(covalently closed strand)がパッケージングされる。このようにして発生したファージ粒子は、細菌により分泌され、前記カプシドタンパク質 pIIIまたはそのフラグメントとの融合により、その表面にコードされた各ユビキチン変異体を、細菌表面に提示する。本来のpIIIカプシドタンパク質は、適切な細菌株への再感染できるように、ファージ粒子に存在する。このため、対応するDNAの増幅の可能性は、保持される。このため、前記ユビキチン変異体の表現型、すなわち、潜在的な結合特性とその遺伝子型との間の物理的な結合が、確保される。
【0042】
得られたファージ粒子を、当業者に公知の手法により、ファージ上に提示されたユビキチン変異体の、任意のターゲット、例えば、ED−B、TNFα、MIA−2、NGF、IgG、またはその他のターゲットへの結合により選択できる。このために、前記提示されたユビキチン変異体は、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一時的に固定化され、結合しない変異体を分離した後に、特異的に溶出し得る。前記溶出は、例えば、100mM トリエチルアミン等の基本溶液により行うことが好ましい。また、前記溶出は、酸性条件下で、タンパク質分解または感染細菌の直接添加により行うことができる。このようにして、得られたファージ粒子は、例えば、ED−B、TNFα、MIA−2、NGF、IgGまたはその他のターゲットへの結合特性を有するユビキチン変異体の、連続的な選択サイクルおよび増幅サイクルにより、再度増幅され、濃縮され得る。
【0043】
ファージディスプレイのバリエーションの1つとして、Tatファージディスプレイ技術(Paschke、M. and W. Hohne (2005).Gene 350(1):79−88;欧州特許第1567643号明細書も併せて参照されたい)があげられる。この方法によれば、前記ファージミドにコードされた前記ユビキチン変異体が、細胞質内でネイティブ・コンフォメーションを既に獲得した折り畳みタンパク質を搬出する双アルギニン転座(Tat)系を介して分泌される。(Bruser 2007 Appl Microbiol Biotechnol 76(1):35−45)。分泌の必要条件は、前記ユビキチン変異体をTatポアへと向かわせる特定のN末端シグナルペプチドとの融合である。細胞膜周辺腔への進入後、前記N末端シグナルペプチドは、シグナルペプチダーゼによって除去される。前記細胞膜周辺腔において、前記ユビキチン変異体は、カプシドタンパク pIIIまたはそのC末端フラグメントに共有結合され、その他のファージタンパク質と共に、Sec経路を介して細胞質から分泌される。ユビキチンとpIII間のこの結合は、前記pIIIタンパク質のN末端におけるJunロイシンジッパーと、前記ユビキチン変異体のC末端におけるFosロイシンジッパーとの高親和性相互作用によって実現される。前記各ロイシンジッパーのN末端およびC末端におけるさらなるシステインにより、両タンパク質間の共有結合が可能となり、その結果、ディスプレイされたユビキチンおよびコードされた遺伝子産物間の共有結合が、前記ファージ粒子内で可能となる。
【0044】
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、前記ユビキチン変異体が、まだファージミドの形態にあるとき、すなわち、ファージに融合され、または、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、可溶性のタンパク質の形態にあるときに行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、または前記文献に記載されている。前記特性評価は、例えば、DNA配列の決定、よって、単離された変異体の一次配列の決定を含んでもよい。また、単離された変異体の親和性および特異性は、例えば、標準的な生化学的方法、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、サイズ排除クロマトグラフィー、蛍光偏光測定、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、または超遠心分析法により検出できる。安定性分析については、例えば、化学的または物理的変性についての分光法が、当業者に公知である。その他の周知な方法としては、CDスペクトル測定、タンパク質蛍光分光法、および核磁気共鳴分光法がある。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、ユビキチン変異体のリボソームディスプレイ法を、無細胞転写/翻訳系の手法により準備し、対応するmRNAおよびリボソームが複合体として提示される。このために、前述のDNAライブラリーは、基礎として使用され、変異体の遺伝子は、対応する発現およびタンパク質生合成の制御配列との融合の形態で提示される。前記遺伝子ライブラリー3’末端での前記停止コドンの欠失、および、前記新生タンパク質からなる三元複合体に適した実験条件(低温、高濃度のMg2+)により、前記mRNAおよび前記リボソームは、in vitroでの転写/翻訳中において維持される。
【0046】
各単量体ユビキチンユニットにおける選択されたアミノ酸の異なる修飾により、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質を含むタンパク質ライブラリーが確立された後に、本発明によれば、前記修飾二量体タンパク質は、ターゲットに接触され、結合親和性を有する場合には、パートナー同士の結合を可能にする。これらのタンパク質ライブラリーは、前記修飾タンパク質と前記ターゲットタンパク質間の接触を可能とする方法で、前記修飾タンパク質を提示する任意の他の方法をディスプレイし、または使用する、ディスプレイ法ライブラリーの形態でもよい。前記ディスプレイ法は、任意に、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、TATファージディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイまたはmRNAディスプレイ法である。
【0047】
前記修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質の潜在的なリガンドおよびターゲット
本発明は、下記の代表的な抗原、すなわち、ED−B、TNFα、MIA−2、NGFおよびIgGについて、十分に立証されている。これらの抗原は、あくまでも、当業者が本明細書中に提供される情報を取得した後、本明細書に記載の方法を、過度の負担を伴うことなく、十分実施可能である旨を示すために選択されたものと解釈されるべきである。本発明は、これらの特定の抗原に制限されることなく、当該技術分野において公知である全ての、もしくは少なくともほとんどのリガンドおよびターゲット分子について実施可能である。これらのターゲットは、当業者であれば、当該技術分野の技術常識の範囲内において選択可能である。リガンドおよびターゲット、ならびに抗原およびハプテンの一般的な定義を以下に示し、さらに別の潜在的なターゲット分子を選択して、例示としてあげる。
【0048】
本発明において、抗原とは、抗体と同等の機能を有する本明細書記載の修飾ユビキチンに結合可能な物質を指す。本明細書中で用いられる代替用語は、「リガンド」、「結合パートナー」、または「ターゲット」である。本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、抗体と同様に作用しながら、抗体の欠点を回避する結合分子を提供する。抗原という用語は、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、DNA等を包含する。Roche Lexikon Medizin(第4版;Urban & Fischer/Elsevier GmbH)から、抗原およびハプテンについて次の定義を得ることができ、本明細書においても使用される。
【0049】
抗原(AG)は、免疫系により異種(非自己)と認識される任意の物質を意味する。ほとんどの場合、免疫反応を引き起こし、免疫に至る(=免疫原)。アレルギー(=アレルゲン)およびアトピー(=アトピゲン)の場合、それぞれ、この免疫反応が拡大する。AGは、体液性(抗原抗体反応)および/または細胞性防御反応(免疫、下記参照)を誘導する。AGが免疫系により許容される場合(免疫寛容)、「免疫寛容原」ともいう。抗原として有効なものは、主に、免疫反応に関与する化学的に特定できる機能性(決定因子)を有する複合体、またはより大きな分子量の物質(タンパク粒、多糖、ヌクレオチド、および多くの合成化合物)である。前記抗原は、1)完全AG:ほとんどの場合、より大きな分子量を有し、それ自身で免疫反応を誘導できるもの;2)低分子量ハプテン(=半抗原);より大きなキャリア分子と結合した後でのみ免疫原として作用するもの;に分類される。前記抗原は、例えば、異物−、非自己−または同種同系−、自家AG;自己−、ヘテロ−、移植−、抗腫瘍ウイルスAG等ともいう。
【0050】
ハプテンは、抗原(AG)の特異性に関与し、または、その構造(決定因子)に起因して抗体に特異的に結合できる、単純な低分子量化合物であるが、完全AGとは対照的に、それ自身ではアレルギーを生じることはできない。キャリアと呼ばれるタンパク粒と結合した後に完全な抗原となる。
【0051】
「リガンド」、「ターゲット」、または「結合パートナー」は、本明細書に記載の修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質によって認識される分子である。本発明の実施に際して採用できるリガンドは、特に制限されず、例えば、細胞膜受容体に対する作用物質および拮抗物質、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン、ホルモン受容体、ポリペプチド、ペプチド、酵素、酵素基質、補助因子、薬剤(例えば、オピエート、ステロイド等)、レクチン、糖、ポリヌクレオチド、核酸、オリゴ糖、タンパク質、およびモノクローナル抗体があげられる。
【0052】
要約すると、本発明により提供される修飾タンパク質の結合パートナーとしては、生物学的・医学的な活性を有する、あらゆる関連分子を採用可能である。考えられる結合パートナーを、例を挙げて以下に述べる。ただし、このリストには、複数の他の考えられるリガンドも加えることができることに留意されたい。抗体と抗原の関係と同様に、潜在的な結合パートナーのリストは、さらなる潜在的なリガンドを加えることで完全なものとすることができる。
【0053】
この発明においては、ヘテロ二量体ユビキチンの結合パートナーは、例えば、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)、サイトカイン(腫瘍壊死因子α)(TNF−a)、MIA−2、免疫グロブリンまたはその一部、例えば、全抗体(例えば、免疫グロブリンG)、および成長因子(例えば、NGF、例えば、ヒト神経成長因子)があげられる。これらのリガンドについて、以下に簡潔に述べる。しかしながら、これらのリガンドは全て、長年にわたって当該技術分野において周知であり、各技術分野における当業者に公知であることを強調しておく。したがって、以下の記載は、アミノ酸配列も公知である、これらのタンパク質のいくつかの重要なパラメータの概要に過ぎない。
【0054】
フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)は、プライマリーRNA転写物の代替スプライシングによってフィブロネクチン分子に挿入された、小さいドメインである。ED−Bは、癌および乾癬に関与することが知られている。驚くべきことに、高レベルのED−B発現は、胸、結腸直腸、非小細胞肺、膵臓、肝細胞、頭と首、およびヒトの肌、ならびに頭蓋内髄膜腫、グリオブラストーマを含むほとんど全てのヒトの固体癌のエンティティにおける一次病変、ならびに転移性部位において検出された(Menrad u. Menssen, 2005)。さらに、ED−Bは、診断剤と結合でき、診断ツールとして有用である。一例として、例えば、動脈硬化プラークの分子の画像化や、例えば、癌患者の免疫シンチグラフィーによる、癌検出おける使用があげられる。さらに多くの診断用に使用できると考えられる。
【0055】
フィブロネクチンのヒトエクストラドメインB(ED−B)における91個のアミノ酸のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。前記タンパク質の発現のため、開始メチオニンを加えなければならない。ED−Bは、哺乳類、例えば、げっ歯類、ウシ、霊長類、肉食動物、ヒト等において保存されている。ヒトED−Bと100%の配列同一性を有する動物は、例えば、ラット(Rattus norvegicus)、ウシ(Bos taurus)、マウス(Mus musculus)、ウマ(Equus caballus)、アカゲザル(Macaca mulatta)、ハイイロオオカミ(Canis lupus familiaris)、チンパンジー(Pan troglodytes)である。
【0056】
前記タンパク質MIA(melanoma inhibitory activity;CD−RAP(軟骨由来レチノイン酸感受性タンパク質)ともいう)は、軟骨細胞において発現され、元来、そのin vitroでの抗増殖特性によって単離されていた。元来、メラノーマ細胞の細胞培養上清から検出され、そこから単離されていた。前記タンパク質の精製および部分的な配列決定を行った後、ヒトMIAのcDNAフラグメントを、ディジェネレートプライマーおよびRT−PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)を利用して単離した。現在、MIAについては、ヒト、マウス、ウシ、ラット、およびゼブラフィッシュの配列が公知である。関連タンパク質であるMIA−2が、欧州特許第1410803号明細書および米国特許出願公開2010/0212037号明細書に記載されている。これらの文献は、引用により、本明細書に組み込まれる。
【0057】
多面サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNFα)は、主としてマクロファージによって生成されるが、その他の種類の細胞も、これを生成する。TNFαは、有益かつ病理学的な活性を示す。TNFαは、自己制御型であることに加え、増殖促進効果と増殖抑制特性との両方を有する。TNFαの有益な機能としては、身体のサーカディアンリズムを調節することによる恒常性の維持、細菌、ウイルス、真菌、および寄生虫感染に対する免疫応答の開始、線維芽細胞成長の刺激による損傷組織の交換または再構築、およびその名が示唆する通り、ある種の腫瘍の死滅があげられる。TNFαは、多岐にわたる疾患のメディエータとされてきた。
【0058】
神経成長因子(NGF)は、感覚ニューロンおよび交感神経ニューロンの生存と分化を促進する分子として、50年以上前に発見された分泌タンパク質である。NGFは、ニューロトロフィンとして知られる神経栄養因子のファミリーメンバーである。NGFは、TrkAとして知られるトロポミオシン受容体キナーゼに高親和性で結合する。また、NGFは、p75として知られる受容体にも結合可能である。p75は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、他のニューロトロフィンとも相互作用する。NGFのβ鎖は、NGFの神経成長刺激活性にのみ関与している。前記β鎖は、ホモ二量体化し、より大きなタンパク質複合体に取り込まれる。NGFの構造および機能は、例えば、Sofroniew, M.V. et al. (2001) Annu. Rev. Neurosci. 24:1217−1281;Weismann, C. and de Vos, A.M. (2001) Cell. MoI. Life Sci. 58:748−759;Fahnestock, M. (1991) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 165:1−26、において考察されている。
【0059】
IgG抗体は、4本のペプチド鎖からなる約150kDaの大きな分子である。IgG抗体は、約50kDaの同一の2本の重鎖と、約25kDaの同一の2本の軽鎖を含み、これにより、四量体四次構造を有する。前記2本の重鎖は、ジスルフィド結合により、互いに結合すると共に、軽鎖に結合している。この結果生じた四量体は、2つの同一の二等分部分(halves)を有し、これらの部分は共同でY字形状を形成している。分岐の各端部は、同一の抗原結合部位を含む。IgGのFc領域は、高度に保存されたN−糖化部位を有している。この部位に付着したN−グリカンは、大部分が、複合型のコアフコシル化二分岐構造を有する。さらに、これらN−グリカンの少量は、バイセクティングGlcNAcおよびα−2,6結合シアル酸残基も有する。
【0060】
ディスプレイされたタンパク質の選択、濃縮、および特性評価の方法
10−7〜10−12Mの範囲のKdの特異的結合親和性による所定のターゲットへの結合活性に関して、ヘテロ多量体修飾ユビキチンの選択を、当業者に公知の方法により行うことができる。このために、例えば、リボソーム複合体で提示される前記ユビキチン変異体を、それぞれ、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一時的に固定化させ、または、溶液中で結合した後に磁性粒子に結合させ得る。非結合変異体の分離に続けて、結合活性を有する変異体の遺伝子情報を、リボソーム複合体の破壊により、mRNAの形態で特異的に溶出できる。前記溶出は、EDTAで行うのが好ましい。このようにして得られた前記mRNAは、単離され、適切な方法を使用してDNAに逆転写され(逆転写反応)、このようにして得られた前記DNAは、再度増幅され得る。
【0061】
in vitroでの転写/翻訳、選択、および増幅の連続サイクルにより、所定のハプテンまたは抗原への結合特性を有するユビキチン変異体を、濃縮できる。
【0062】
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、前述のように、可溶性のタンパク質の形態で行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、前記文献に記載されている。
【0063】
好ましくは、所定の結合パートナーに対する結合親和性を有するタンパク質の検出工程の後に、前記検出されたタンパク質の単離工程および/または濃縮工程が続く。
【0064】
前記本発明の修飾ユビキチンタンパク質の発現に続いて、それ自体公知の方法によりさらに、精製および濃縮される。前記選択された方法は、例えば、使用する発現ベクター、宿主組織、意図する使用分野、タンパク質の大きさ、およびその他の要因等、それ自体当業者に公知の複数の要因により決定される。簡易に精製するために、本発明の修飾タンパク質は、分離材料への高い親和性を有する他のペプチド配列に融合させることができる。ユビキチンタンパク質の機能性に有害な効果を有さないか、または、特定のプロテアーゼ切断部位の導入により精製後に分離可能な融合が、好ましく選択される。このような方法は、それ自体当業者に公知である。
【0065】
突然変異誘発の開始点としての非修飾および修飾ユビキチンタンパク質
「結合可能なタンパク質」または「結合タンパク質」は、さらに後述する結合領域を一つ含むユビキチンタンパク質を指す。結合領域は、少なくとも2つの結合決定領域(BDR)を指すことができる。各単量体は、少なくとも1つ結合決定領域を有し、少なくとも2つの単量体が、1つの抗原に対する1つの結合領域を形成する少なくとも2つの結合決定領域を有する多量体を形成する。このようなユビキチンベースの結合タンパク質は、いずれも、例えば、多量体化部位(multimerization moieties)、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー等の結合ドメインでない付加的なタンパク質ドメイン、および/または、非タンパク性のポリマー分子を含んでもよい。非タンパク性のポリマー分子は、例えば、ヒドロキシエチルでんぷん、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン等である。
【0066】
前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質のさらなる多量体化を、例えば、前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質を、多量体化ドメインを有するエフェクター分子(例えば、TNFα)に、翻訳後に融合させることによって行うことも可能である。さらに別の実施形態においては、さらなる多量体化が、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーの使用により行われる。さらに別の実施形態においては、前記多量体化ドメインは、薬学的活性成分としても作用する。一例としては、多量体化ドメインおよび薬学的成分の両方として作用するTNFαがあげられる。
【0067】
修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質
「修飾ユビキチンタンパク質」は、アミノ酸の置換、挿入または欠失のいずれか一つ、または、それらの組み合わせによる、前記ユビキチンタンパク質の修飾を指す。ただし、上記修飾のいずれか一つによりなされる修飾で、最も好ましいのは置換である。前記修飾単量体ユビキチンユニットは、配列番号1に対して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つであるアミノ酸同一性を有するため、前記修飾数は厳密に限定されている。それゆえ、単量体ユニットにおける全修飾アミノ酸数、好ましくは、全置換数は、80%のアミノ酸同一性に対応して、最大で15個のアミノ酸に限定される。代替例として、修飾アミノ酸数が、13、12、11、10、9、8、7、6、または5個であってもよい。前記二量体ユビキチン分子における全修飾アミノ酸数、好ましくは、全置換数は、前記二量体タンパク質に基づく、20%のアミノ酸の修飾に対応して、30個である。代替例として、前記二量体ユビキチン分子中の修飾アミノ酸数が、28、26、24、22、20、18、16、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5個であってもよい。前記二量体修飾ユビキチンタンパク質の前記アミノ酸同一性は、配列番号1の基本単量体配列を有する二つの非修飾単量体ユビキチンタンパク質からなる二量体ユビキチンと比較して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つから選択される。
【0068】
本発明の方法で得られる前記修飾ユビキチンタンパク質は、ターゲット分子、リガンド、または結合分子(これらの表現は、本明細書において相互に用いられる)に対する新規な結合親和性を有する組換え人工タンパク質である。
【0069】
「置換」は、例えば、元のアミノ酸への化学基もしくは残基の置換または付加によるアミノ酸の化学的修飾も含む。βシート領域の少なくとも一つのβ鎖に位置するアミノ酸、または、前記β鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸を含む前記タンパク質の少なくとも一つの表面露出領域におけるアミノ酸の置換が、重要である。
【0070】
修飾は、当該技術分野において、十分に確立された公知の方法により行われる。「ランダムに修飾されたヌクレオチド配列またはアミノ酸配列」は、いくつかの部位が、ヌクレオチドまたはアミノ酸により挿入、欠失または置換され、特性が予測できないヌクレオチド配列またはアミノ酸配列である。多くの場合、挿入された前記ランダムヌクレオチド(アミノ酸)配列、または、ヌクレオチド(アミノ酸)配列は、「完全にランダム」であろう(例えば、ランダム化合成またはPCRを介した突然変異の結果として)。ただし、前記ランダム配列は、共通の機能的特性(例えば、発現産物のリガンドへの反応性)を有する配列を含み得る。また、前記ランダム配列は、最終的な発現産物が、例えば、異なるアミノ酸が均等に分布した、完全にランダムな配列であるという意味で、ランダムでもよい。
【0071】
ランダム化されたフラグメントをベクター中に適切に導入するために、本発明では、前記ランダムヌクレオチドは、部位特異的PCRを介した突然変異の方式により、発現ベクター中に導入されるのが好ましい。ただし、他の選択肢は、当業者に公知であり、例えば、合成ランダム配列ライブラリーを同様にベクターに挿入可能である。
【0072】
融合PCRにより変異体またはライブラリーを発生させるために、例えば、3回のPCR反応を行ってもよい。2回のPRC反応は、部分的に重なった中間体フラグメントを発生するように行われる。3回目のPCR反応は、前記中間体フラグメントを融合するように行われる。
【0073】
ライブラリーまたは変異体株の構築方法は、所望の制限酵素認識部位周辺のプライマー(制限酵素認識部位プライマー)の第1セット、および、例えば、目的のコドンの上流および下流周辺のプライマー(変異原性プライマー)の第2セットを構築する工程を含んでもよい。制限酵素認識部位プライマーは、フォワード制限酵素認識部位プライマーおよびリバース制限酵素認識部位プライマーを含む。変異原性プライマーは、フォワード変異原性プライマーおよびリバース変異原性プライマーを含む。一実施形態において、前記プライマーは、目的のコドンのすぐ上流およびすぐ下流について構築される。前記制限酵素認識部位プライマーおよび前記変異原性プライマーは、前記第1中間体フラグメントおよび前記第2中間体フラグメントの構築に使用される。2回のPCR反応により、これらの直線状の中間体フラグメントが生成される。これらの各直線状の中間体フラグメントは、少なくとも一つの目的の変異コドン、フランキングヌクレオチド配列、および切断部位を含む。前記3回目のPCR反応では、前記2つの中間体フラグメント、ならびに前記フォワード制限酵素認識部位プライマーおよび前記リバース制限酵素認識部位プライマーが使用され、直線状の融合産物が生成される。一方、前記直線状の産物の結合していない末端は、制限酵素で切断され、前記直線状の産物に付着末端が作製される。前記直線状の産物の前記付着末端は、DNAリガーゼの使用により融合され、環状の産物、例えば、環状のポリヌクレオチド配列が生成される。
【0074】
前記中間体フラグメントの構築のために、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの2つのセットについての設計および合成が行われる。前記2つのセットは、制限酵素切断部位およびそのフランキングヌクレオチド配列を含む第1セット、ならびに、目的の変異コドンを少なくとも一つ含む第2セット(変異原性プライマー)を含む。当業者は、前記変異の数が所望の変異アミノ酸修飾の数に対応することを認識するであろう。本願発明者は、他の制限酵素が前記工程に使用可能かを熟考した。この切断部位の正確な位置、ならびに、前記フォワードプライマーおよび前記リバースプライマーの対応する配列は、適宜改変され得る。当該技術分野において利用可能な他の方法も、代替として使用し得る。
【0075】
本発明において、足場に導入される発現産物のランダム化フラグメントを有することを除けば、前記ランダム化ヌクレオチド配列を、少なくとも一つの融合パートナーをコードするヌクレオチド配列に融合させることにより、融合パートナーに前記ランダム配列を連結する必要がある。融合パートナーは、例えば、前記発現産物の発現および/または精製/単離および/または、さらに安定化を促進できる。
【0076】
精製のため、前記融合パートナーは、His6タグ、mycタグ、BirAのBSPビオチン化ターゲット配列、fluタグ、lacZ、およびGST等の精製標識を含んでもよい。さらに、前記融合パートナーは、選別シグナル(sorting signal)配列またはターゲティング配列を含んでいてもよい。
【0077】
本発明によれば、前記ターゲット分子に特異的な新規の結合ドメイン発生のための前記アミノ酸の置換を、任意の所望のアミノ酸に行うことができる。すなわち、前記ターゲット分子に対する新規の結合特性を発生させる修飾のために、任意の所望のアミノ酸をこの目的に使用できるように、アミノ酸が、置換されたアミノ酸のそれと同様の特定の化学的特性または側鎖を有する必要はない。
【0078】
本発明によれば、前記選択されたアミノ酸の修飾工程は、好ましくはランダム変異導入法による、好ましくは遺伝学的レベルでの突然変異、すなわち、前記選択されたアミノ酸のランダム置換により行われる。好ましくは、ユビキチンの修飾は、前記各タンパク質に属するDNAを改変する遺伝子工学的手法により行われる。好ましくは、ユビキチンタンパク質の発現は、その後、原核生物または真核生物において行われる。
【0079】
置換は、特に、ユビキチンタンパク質のβシートの4つのβ鎖の表面露出アミノ酸、または、前記βシート鎖に隣接する3つ目までの表面露出アミノ酸において行われる。各β鎖は、通常、5〜7個のアミノ酸からなる。配列番号1に関して、例えば、単量体ユビキチンの前記β鎖は、通常、アミノ酸残基2〜7、12〜16、41〜45および65〜71を包含する。付加的にかつ好ましく修飾され得る領域は、前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸(すなわち、1番目、2番目または3番目)の部位を含む。付加的にかつ好ましく修飾され得る前記好ましい領域は、特に、アミノ酸残基8〜11、62〜64および72〜75を含む。前記好ましい領域は、2つのβ鎖が互いに結合したβターンを含む。好ましいβターンとしては、例えば、アミノ酸残基62〜64があげられる。前記β鎖に密接する最も好ましいアミノ酸は、8位のアミノ酸である。また、アミノ酸置換のさらなる好ましい例は、36、44、70、71、および/または73位である。例えば、付加的にかつ好ましく修飾され得る領域は、62、63および64位のアミノ酸(3個のアミノ酸)、72、73位のアミノ酸(2個のアミノ酸)、または8位のアミノ酸(1個のアミノ酸)を含む。
【0080】
付加または欠失され得るアミノ酸数は、単量体ユビキチンサブユニットにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個、またはそれ以上のアミノ酸に限定され、前記へテロ二量体ユビキチンタンパク質については、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、22、24、26、または28個のアミノ酸に限定され、通常は、前記単量体タンパク質における修飾数のx倍である。通常、単量体分子においては、1〜10個のアミノ酸が挿入され、および/または1〜7個のアミノ酸が欠失される。単量体分子当たり、6個以上14個以下のアミノ酸が置換される。二量体分子においては、合計で12個以上28個以下のアミノ酸が置換され、および/または合計で1個以上20個以下のアミノ酸が挿入され、および/または1個以上14個以下のアミノ酸が欠失される。これらの数値の間に存在するあらゆる数字が使用可能であり、本発明の範囲内である。また、分子の全体的な構造的完全性が維持されるのであれば、欠失、挿入、置換数のあらゆる組み合わせが可能である。本発明の一実施形態では、βシート構造が維持される。
【0081】
任意の実施形態において、前記アミノ酸残基は、アミノ酸置換により改変される。欠失および挿入も可能である。付加または欠失され得るアミノ酸数は、単量体ユビキチンサブユニットにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個に限定され、それに応じて、前記二量体ユビキチンタンパク質については、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個に限定される。一実施形態において、アミノ酸挿入はなされない。さらなる実施形態において、欠失は行われない。
【0082】
本発明の修飾ユビキチンタンパク質が、請求項で特定され本明細書で説明された前記置換に加えて、1以上のアミノ酸の欠失および/または付加を含む場合には、野生型ヒトユビキチン(配列番号1)に与えられる前記アミノ酸部位を、対応するタンパク質同士で分配するために、前記修飾ユビキチンについてアライメントさせなければならない。融合タンパク質の場合(後述を参照)、各単量体ユビキチンサブユニットのナンバリング(およびアライメント)は、同様の方法によりなされる、すなわち、例えば、二量体のアライメントは、各サブユニットの1位のアミノ酸から開始される。
【0083】
前記単量体ユビキチンタンパク質、好ましくは、例えば、ヒト等の哺乳類由来の単量体ユビキチンにおいて、β鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも25%が修飾されることができ、好ましくは置換される。β鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の好ましくは最大で約50%、さらに好ましくは最大で約40%または約35%、約30%以下、または約25%以下が修飾され、好ましくは置換される。通常、一つのβ鎖において、1〜4個のアミノ酸が修飾される。一実施形態では、β鎖、好ましくは、第1β鎖および第4β鎖、例えば、2〜7位もしくは65〜71位のアミノ酸残基の領域において、6個のアミノ酸のうちの2個が修飾される。
【0084】
ヘテロ多量体の構成要素として使用される本発明の修飾単量体ユビキチンは、合計で、20%以下のアミノ酸が修飾される。これを考慮すると、配列番号1に対する前記修飾ユビキチンタンパク質の配列同一性は、少なくとも80%である。本発明のさらなる実施形態において、アミノ酸レベルでの配列同一性は、配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも87%、さらに、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも95%である。本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、97%以上のアミノ酸配列同一性を有する配列の前記修飾ユビキチンタンパク質をも包含する。
【0085】
本発明のさらなる実施形態では、予め修飾されたユビキチン(配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位におけるアミノ酸の3、4、5、6、または7個が修飾されている)を、ターゲットへの結合特性を発生するためのさらなる修飾の開始点として使用し、配列番号1のユビキチンのアミノ酸が、合計で、9、10、11、12、13、14、最大15個までの修飾された、好ましくは置換されたユビキチンを得る。例えば、さらなる修飾は、74および75位のアミノ酸または45位のアミノ酸における修飾を含むことができ、この修飾により、より良好な安定性またはタンパク質化学特性を発生する。一例によれば、ヘテロ多量体タンパク質の構成要素としての修飾単量体ユビキチンは、このような方法により、14個の置換および1個の欠失を有するものが得られた。ユビキチンの総アミノ酸数に基づいて、これは、約20%の割合に相当する。このことは、非常に驚くべきことであり、通常、もっと低い割合で、十分にタンパク質のフォールディングを阻害してしまうため、予測できなかったことである。
【0086】
本発明の一実施形態において、これらのアミノ酸は、タンパク質表面上に連続的な領域を形成する、新規な結合特性を有する領域の発生のために修飾される。このようにして、前記標的リガンドへの結合特性を有する連続的な領域を発生させることができる。本発明において、「連続的な領域」は、以下の通りである。側鎖の電荷、空間的構造および疎水性/親水性により、それに対応して、アミノ酸は、その環境と相互作用する。前記環境は、溶媒、通常は、水または、例えば、空間的に近いアミノ酸等の他の分子であり得る。タンパク質に関する構造情報および各種ソフトウェアの手段により、前記タンパク質表面の特徴を決定できる。例えば、タンパク質の原子と溶媒との接触領域を、この接触領域がどのような構造であるか、溶媒に接触しやすい表面領域はどれか、または、前記表面において電荷がどのように分布しているか、についての情報を含むこの方法により可視化できる。連続的な領域は、例えば、適切なソフトウェアを使用したこの種の可視化により明らかにされ得る。このような方法は、当業者に公知である。本発明によれば、基本的に、表面露出領域全体が、表面上の前記連続的な領域として使用され、新規な結合特性の発生のために修飾され得る。一実施形態において、この目的のための修飾は、αへリックス領域を含んでもよい。ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質において、結合決定領域は、1つの結合決定領域の2倍の長さを有する1つの連続的な領域を共同で形成する、2つの前記表面露出領域を含む。
【0087】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位の少なくとも一方を含む、前記タンパク質の少なくとも1つの表面露出領域におけるアミノ酸の修飾が、重要である。前記「βシート構造」は、本質的にシート状で、ほぼ完全に伸長されている(stretched)ことにより定義される。一方、ポリペプチド鎖の連続したセグメントから形成されるαへリックスに対して、βシートは、ポリペプチド鎖の異なる領域により形成され得る。このようにして、一次構造において離れて位置する領域同士が、近傍同士となることができる。β鎖は、概して、5〜10個のアミノ酸長を有し(通常は、ユビキチンにおける5〜6残基)、ほぼ完全なストレッチ構造を有する。前記β鎖は、互いに近接し、一方の鎖のCO基と他方の鎖のNH基との間で水素結合が形成される。逆もまた同様である。βシートは、複数の鎖から形成され得、シート状構造を有し、Cα原子の部位が、シート状平面の上方または下方の間で交互に入れ替わる。アミノ酸側鎖は、このパターンに追随し、そして、上端もしくは下端に向く。前記β鎖の方向により、前記シートは、平行シートおよび逆平行シートに分類される。本発明によれば、両方とも、変異可能であり、請求されたタンパク質の調製に使用可能である。
【0088】
前記βシート構造の突然変異のために、表面に近いβ鎖領域または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位が、ユビキチンにおいて選択される。表面露出アミノ酸は、利用可能なX線結晶構造により同定できる。利用できる結晶構造がない場合、利用可能な一次構造に関して、表面露出βシート領域および個々のアミノ酸部位の接触性を予測するか、もしくは3次元タンパク質構造のモデリングを行い、これにより、潜在的な表面露出アミノ酸についての情報を入手するという、コンピュータ解析手法による試みをなし得る。さらなる開示は、例えば、J. Mol. Biol., 1987 Apr 5; 194(3):531−44. Vijay−Kumar S, Bugg C.E., Cook W.Jから得ることができる。
【0089】
前記βシートまたは前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位における修飾を行えるが、突然変異を生成させるアミノ酸部位の前選択は時間がかかるため、除外し得る。前記βシート構造または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸をコードするDNA領域を、DNA環境(DNA environment)から単離し、ランダム突然変異に供し、その後、それらを予め除去したタンパク質をコードするDNAに再度組み込む。続いて、所望の結合特性を有する変異体の選択工程を行う。
【0090】
本発明の他の実施形態において、表面に近い、前記β鎖領域または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位は、前述のように選択され、これらの選択された領域内部の突然変異誘発された前記アミノ酸部位は、同定される。ついで、このようにして選択されたアミノ酸部位は、部位特異的突然変異によりDNAレベルで、突然変異され得る。すなわち、特定のアミノ酸をコードするコドンが、予め選択された他の特定のアミノ酸をコードするコドンにより置換されるか、あるいは、この置換を、置換されるアミノ酸部位は規定されるが、新規な未定のアミノ酸をコードするコドンは規定されないランダム突然変異として行う。
【0091】
「表面露出アミノ酸」は、周囲の溶媒に接触可能なアミノ酸である。タンパク質におけるアミノ酸の接触性が、モデルトリペプチドGly−X−Glyにおけるアミノ酸の接触性と比較して8%以上である場合、前記アミノ酸は、「表面露出」と呼ばれる。これらのタンパク質領域または個々のアミノ酸部位は、それぞれ、本発明により選択される、潜在的な結合パートナーに対する好ましい結合部位でもある。また、参考文献として、Caster et al., 1983 Science, 221, 709 − 713, and Shrake & Rupley, 1973 J. Mol. Biol. 79(2):351−371があげられ、開示の全てを、引用により本願に取り込む。
【0092】
元のタンパク質および互いのタンパク質から新たに発生させた人工結合部位の領域における、アミノ酸置換によるユビキチンの変異体を、対象とされた各配列セグメントのターゲット突然変異により、発生できる。この場合、極性、電荷、溶解性、疎水性/親水性等の所定の特性を有するアミノ酸を、それぞれ、各特性を有するアミノ酸で交換または置換できる。置換の他に、「突然変異」、「修飾」および「交換」は、挿入および欠失も含む。タンパク質レベルにおいて、前記修飾を、当業者に公知の方法によるアミノ酸側鎖の化学的改変により行ってもよい。
【0093】
ユビキチンの突然変異方法
各配列セグメントの突然変異の開始点として、例えば、当業者に公知の方法により、調製され、改変され、増幅されたユビキチンのcDNAを使用できる。一次配列の比較的狭い領域(例えば、1〜3個のアミノ酸)におけるユビキチンの部位特異的改変には、市販の試薬および方法が利用可能である(「Quick Change」、Stratagene;「Mutagene Phagemid in vitro Mutagenesis Kit」、Biorad)。大きい領域の部位特異的な突然変異には、具体的な態様として、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が、当業者に利用可能である。この目的のために、所望の部位が変性された塩基対組成を有する合成オリゴデオキシヌクレオチドの混合は、例えば、変異の誘導に使用できる。これは、イノシン等のゲノムDNAに自然には発生しない塩基対類似体の使用によってもなされ得る。
【0094】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位の1つ以上の突然変異の開始点は、例えば、ユビキチンのcDNAでもよいし、ゲノムDNAでもよい。また、ユビキチンタンパク質をコードする遺伝子は、合成的に調製されてもよい。
【0095】
本発明の一実施形態において、前記突然変異は、アミノ酸コドンNNKを有するDNAオリゴヌクレオチドの集合により行われる。ただし、他のコドン(トリプレット)を使用できることも理解すべきである。前記βシート構造が維持されるように、前記変異が行われる。通常、前記突然変異は、タンパク質の表面上に露出される安定なβシート領域の外側で行われるのが好ましい。それには、部位特異的突然変異およびランダム突然変異の両方が含まれる。一次構造の比較的狭い領域(例えば、3〜5個のアミノ酸)を含む部位特異的突然変異は、市販のキットにより発生できる。前記市販のキットは、Stratagene(登録商標)(QuickChange(登録商標))またはBio−Rad(登録商標)(Mutagene(登録商標) phagemid in vitro mutagenesis kit)(米国特許第5,789,166号明細書、米国特許第4,873,192号明細書参照)があげられる。
【0096】
より広い領域を部位特異的突然変異に供する場合、DNAカセットを調製しなければならず、突然変異される領域は、変異された部位および変異されていない部位を含むオリゴヌクレオチドの集合により得られる(Nord et al., 1997 Nat. Biotechnol. 8, 772−777; McConell and Hoess, 1995 J. Mol. Biol. 250, 460−470.)。ランダム突然変異は、突然変異誘発株におけるDNAの伝播、または、PCR増幅(エラープローンPCR)により導入され得る(例えば、Pannekoek et al., 1993 Gene 128, 135 140)。このためには、エラー率の高いポリメラーゼが使用される。導入される突然変異の度合いを高め、異なる変異同士をそれぞれ組み合わせるために、PCR断片における変異を、DNAシャッフリングの手法により組み合わせることができる(Stemmer,1994 Nature 370,389−391)。酵素に関するこれらの突然変異戦略について、Kuchner and Arnold (1997) TIBTECH 15, 523−530に考察されている。選択されたDNA領域に、このランダム突然変異を行うためにも、突然変異に使用されるDNAカセットを、構築しなければならない。
【0097】
突然変異に利用可能な公知の他の手法は、部位特異的突然変異の方法、ランダム突然変異の方法、PCRを使用する突然変異または類似の方法である。
【0098】
本発明の好ましい実施形態において、突然変異が生成される前記アミノ酸部位は予め定められている。修飾されるアミノ酸の選択は、修飾されるべきアミノ酸に関して、請求項1の限定を満たすように行われる。いずれの場合にも、異なる変異のライブラリーは、通常、公知の方法によりスクリーニングされて確立される。修飾されたユビキチンタンパク質について、十分な構造情報が利用可能な場合には、通常、修飾されるアミノ酸の前選択が、特に簡易に行われ得る。
【0099】
例えば、PCR、化学的突然変異、または細菌の突然変異誘発株の使用による標的変異ならびに長い配列セグメントの突然変異のための方法もまた、従来技術に属しており、本発明においても使用可能である。
【0100】
本発明の一実施形態において、前記突然変異は、アミノ酸コドンNNKを有するDNAオリゴヌクレオチドの集合により行われる。ただし、他のコドン(トリプレット)を使用できることも理解すべきである。前記βシート構造が維持されるように、前記変異が行われる。通常、前記突然変異は、タンパク質の表面上に露出される安定なβシート領域の外側で行われるのが好ましい。それには、部位特異的突然変異およびランダム突然変異の両方が含まれる。一次構造の比較的狭い領域(例えば、3〜5個のアミノ酸)を含む部位特異的突然変異は、市販のキットにより発生できる。前記市販のキットは、Stratagene(登録商標)(QuickChange(登録商標))またはBio−Rad(登録商標)(Mutagene(登録商標) phagemid in vitro mutagenesis kit)(米国特許第5,789,166号明細書、米国特許第4,873,192号明細書参照)があげられる。
【0101】
より広い領域を部位特異的突然変異に供する場合、DNAカセットを調製しなければならず、突然変異される領域は、変異された部位および変異されていない部位を含むオリゴヌクレオチドの集合により得られる(Nord et al., 1997 Nat. Biotechnol. 8, 772−777; McConell and Hoess, 1995 J. Mol. Biol. 250, 460−470.)。ランダム突然変異は、突然変異誘発株におけるDNAの伝播、または、PCR増幅(エラープローンPCR)により導入され得る(例えば、Pannekoek et al., 1993 Gene 128, 135 140)。このためには、エラー率の高いポリメラーゼが使用される。導入される突然変異の度合いを高め、異なる変異同士をそれぞれ組み合わせるために、PCR断片における変異を、DNAシャッフリングの手法により組み合わせることができる(Stemmer,1994 Nature 370,389−391)。酵素に関するこれらの突然変異戦略について、Kuchner and Arnold (1997) TIBTECH 15, 523−530に考察されている。選択されたDNA領域に、このランダム突然変異を行うためにも、突然変異に使用されるDNAカセットを、構築しなければならない。
【0102】
本発明の一例によれば、単量体ユビキチンの2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位における、少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個のアミノ酸のランダム置換を、非常に簡易にPCRの手段により行うことができる。前述の部位が、前記タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端の近くに位置しているためである。したがって、操作されるコドンは、対応するcDNA鎖の5’末端および3’末端である。そこで、突然変異PCR反応に使用される前記第1オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される2、4、6および/または8位のコドンから離れており、ユビキチンの配列におけるアミノ末端のコード鎖に対応する。したがって、前記第2オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される62、63、64、65、66および/または68位から離れており、少なくとも部分的に、カルボキシ末端のポリペプチド配列の非コード鎖に対応する。両方のオリゴデオキシヌクレオチドにより、ポリメラーゼ連鎖反応は、鋳型として単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNA配列を使用して行うことができる。
【0103】
また、得られた増幅産物を、例えば、制限エンドヌクレアーゼの認識配列を導入するフランキングオリゴデオキシヌクレオチドを使用する、他のポリメラーゼ連鎖反応に添加できる。本発明によれば、所定のハプテンまたは抗原に対する結合特性を有するユビキチン変異体の単離のための次の選択工程での使用に適したベクター系中に、得られた前記遺伝子カセットを導入するのが好ましい。
【0104】
本発明によれば、選択されたリガンドに特異的な新規の結合ドメイン発生のための前記アミノ酸の置換を、任意の所望のアミノ酸に行うことができる。すなわち、選択されたリガンドに対する新規の結合特性を発生させる修飾のために、アミノ酸が、置換されたアミノ酸のそれと同様の特定の化学的特性または側鎖を有する必要はなく、よって任意の所望のアミノ酸をこの目的に使用できる。
【0105】
本発明によれば、前記選択されたアミノ酸の修飾工程は、好ましくは、ランダム変異導入法による遺伝学的レベルでの突然変異、すわなち、前記選択されたアミノ酸のランダム置換により行われる。好ましくは、ユビキチンの修飾は、前記各タンパク質に属するDNAを改変する遺伝子工学的手法により行われる。好ましくは、ユビキチンタンパク質の発現は、その後、原核生物または真核生物において行われる。
【0106】
本発明によれば、修飾ユビキチンタンパク質は、より好ましくは、化学的合成により調製することができる。好ましい実施形態において、前記アミノ酸残基は、アミノ酸置換により改変される。欠失および挿入も可能である。任意に、挿入または欠失されるアミノ酸数は、1〜10、1〜5、2、3、または4個である。一実施形態において、アミノ酸挿入はなされない。さらなる実施形態において、欠失は行われない。
【0107】
上記修飾後、本願発明者は、実施例で述べる修飾されたアミノ酸配列のユビキチンが、非常に高い親和性(Kd値10−10M以下)で、そのターゲットと結合することを見出した。
【0108】
ユビキチンの修飾領域
修飾領域は、基本的に、選択された結合パートナーに接触可能かどうか、および、タンパク質の全体構造が、推測上修飾に耐性を示すかどうかで、選択され得る。
【0109】
表面露出β鎖における修飾の他に、前記タンパク質の他の表面露出領域も修飾でき、前記β鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位において行われるのが好ましい。これらの修飾領域は、新規に発生させる、ターゲットに対する高い結合親和性に関与する。
【0110】
本発明の別の好ましい実施形態においては、ユビキチン、好ましくは哺乳類またはヒトのユビキチンにおける、少なくとも3、4または6個、任意に、少なくとも8、10、12個、最大で15個の表面露出アミノ酸を、前記単量体ユビキチンにおいて修飾できる。前記修飾は、置換が好ましい。これは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の、ユビキチンの表面露出アミノ酸の修飾を含む。これらの3個以上15個以下の表面露出修飾アミノ酸が、所定の結合パートナーへの結合親和性を有する領域を形成する。この領域を、本明細書中では「結合ドメイン領域(BDR)」と定義する。この点において、少なくとも2個、任意に、少なくとも4個、さらに任意に、少なくとも6、8、10、12個、最大15個の前記表面露出アミノ酸が、βシート領域、すなわちβシート鎖に存在すること、もしくは、複数のβ鎖に分布して存在すること、またはβシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位に存在することが特に好ましい。また、全て修飾、好ましくは、全て置換されている少なくとも3個のアミノ酸が、一次配列において、互いに直接隣接していることがさらに好ましい。
【0111】
本発明の他の任意の実施形態において、前記タンパク質における4つのβ鎖の1つもしくは2つにおけるアミノ酸、好ましくは2つにおけるアミノ酸、または、好ましくは前記4つのβ鎖の2つに隣接する3つ以内のアミノ酸部位が、修飾され、新規の結合特性が発生する。前記4つのβ鎖の3つもしくは4つにおける修飾、または前記β鎖の3つもしくは4つに隣接する3つ目までのアミノ酸部位の修飾も、選択されたターゲットまたはリガンドへの結合発生のために、任意で行ってもよい。
【0112】
アミノ末端およびカルボキシ末端鎖におけるアミノ酸、または、アミノ末端およびカルボキシ末端鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、前記リガンドまたはターゲットへの新規の結合部位を発生させる。この点において、前記カルボキシ末端βシート鎖に隣接する4つ目までのアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、および、前記アミノ末端β鎖に隣接する1つ目のアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換される。
【0113】
本発明によれば、ユビキチンは、そのアミノ酸が修飾され、好ましくは、前記修飾は、哺乳類のユビキチン、好ましくはヒトのユビキチンにおける下記の部位、すなわち、2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位のアミノ酸の少なくとも3個の置換であるのが好ましい。前記アミノ酸グループの少なくとも3個のアミノ酸は、特定の結合パートナー、例えば、ED−B、TNFα、NGF、IgG、MIA−2、またはその他のターゲットに対して、従来は存在しなかった結合親和性を有する修飾タンパク質の発生に特に適していることが見出された、ユビキチンの表面に連続的な表面露出領域を形成する。これらのアミノ酸残基の少なくとも3個は、修飾されなければならない。任意に、前記アミノ酸残基の3、4、5、6、7、8、9、または10個が修飾、好ましくは置換され、任意に付加的なアミノ酸残基を組み合わせることもできる。
【0114】
配列番号1のアミノ酸配列に対する前記ユビキチン誘導体の配列同一性の程度を決定する目的で、例えば、SIM Local similarity program(Xiaoquin Huang and Webb Miller, Advances in Applied Mathematics,vol.12:337−357,1991)(本願出願人および多重配列比較分析に関する本願出願人の研究所から、無料で入手可能)を採用でき、または、Clustal,W.を使用できる(Thompson et al.,Nucleic Acids Res.,22(22):4673−4680,1994.)。好ましくは、配列番号1に対する前記誘導体の配列同一性の程度は、配列番号1の完全配列に対して相対的に決定される。
【0115】
前記結合親和性を決定する方法は、それ自体公知であり、例えば、下記の方法から選択できる:ELISA、例えば、Biacore(登録商標)により提供される表面プラズモン共鳴(SPR)技術、サイズ排除クロマトグラフィー、蛍光偏光測定、蛍光分光法、等温滴定熱量測定(ITC)。
【0116】
さらに別の態様において、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した、本発明のヘテロ多量体結合タンパク質を含む融合タンパク質に関する。例えば、米国特許第7,838,629号明細書を参照でき、当該文献の全内容が、引用により本明細書に組み込まれている。
【0117】
本発明の融合タンパク質は、例えば、治療または診断に関連する放射線核種用の、非ポリペプチド成分、例えば、非ペプチドリンカー、非ペプチドリガンドを含んでもよい。低分子の有機化合物または非アミノ酸化合物、例えば、糖、オリゴ糖、多糖、脂肪酸等を含んでもよい。本発明の好ましい一実施形態において、前記ユビキチンベースの結合分子は、ペプチド性の、アミノ酸ベースのリンカーもしくはリガンド、または治療または診断特性を有するタンパク質に結合される。
【0118】
結合特性(解離定数)
前記本発明の融合タンパク質の結合特異性は、Kdで与えられる非融合タンパク質で前述のように定義したのと同様である。本発明によれば、特異的結合親和性を定義する「Kd」は、10−7〜10−12Mの範囲である。10−5M以下の値であれば、定量化可能な結合親和性であると考えられる。適用に応じて、Kdの値は、例えば、クロマトグラフィーへの適用の場合には、10−7M〜10−11Mが好ましく、または、診断もしくは治療への適用の場合には、10−9M〜10−12Mが好ましい。さらに好ましい結合親和性は、10−7〜10−10Mであり、好ましくは、10−11Mである。
【0119】
ユビキチンの多量体化
本発明によれば、遺伝学的にヘッドトゥテイルで結合された少なくとも2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、ターゲット分子、例えば、ED−B、TNFα、IgG、MIA2、NGF、またはその他の標的分子の同じエピトープに結合し、両方の結合ドメイン領域が共に作用することでのみ効果を示す。換言すれば、前記修飾ユビキチン単量体は、前記2分子の両結合領域が共に作用することによって形成される一つの連続的な結合領域を介して、同じエピトープに結合する。
【0120】
前記単量体は、直接またはリンカーを介して結合させることができる。好適な好ましいリンカーは、配列番号32のリンカー、少なくともGIG配列もしくは少なくともSGGGG配列を有するリンカー、または任意のその他のリンカー、例えば、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIGもしくはSGGGGSGGGGである。ただし、代わりに使用できる、多くのリンカーが考えられる。
【0121】
ライブラリー
さらなる態様において、本発明は、本発明のへテロ多量体ユビキチンタンパク質、好ましくは、ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を形成する、前述の修飾単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNAを含むライブラリーに関する。
【0122】
本発明のさらなる態様において、前述の2つのライブラリーの融合により得られるDNAを含む融合ライブラリーが提供され、各ライブラリーは、ヘテロ二量体ユビキチン融合タンパク質を得るために、異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質ユニットをコードし、前記単量体ユニットは、互いにヘッドトゥテイル配置で結合される。前記ライブラリーは、所定のターゲットに対して一価の結合活性を示すユビキチンのヘテロ二量体融合タンパク質をコードする。前記相互結合は、当業者に公知のリンカーのいずれか1つ、または本明細書に記載のリンカーを使用することにより行われる。「異なる修飾がなされた」は、前記ヘテロ二量体タンパク質内に非修飾分子が1つ存在する場合も含む。
【0123】
複合ライブラリーの製造は、実施例1で概要を述べる。ただし、ライブラリーの品質に注意を払わなければならない。足場技術におけるライブラリーの品質は、そもそも、複雑性(個々の変異体の数)および機能性(得られた候補の構造的およびタンパク質の化学的完全性)に左右される。両方の特性が互いにネガティブな影響を与える場合もあり、前記足場における修飾部位の数の増加によるライブラリーの複雑性の増大が、変異体のタンパク質の化学的完全性の低下をまねくおそれもある。これにより、溶解度、凝集性が低下し、および/または収量が低下する場合もある。この理由は、エネルギー的に良好なタンパク質パッケージを有する本来の足場から大きく逸脱するためである。
【0124】
このため、適切な足場ライブラリーの構築とは、ターゲットへの結合性を最適化するために、本来の配列に可能な限り多くの変異を導入すること、および、ネガティブなタンパク質化学的効果を避けるために、可能なかぎり本来の一次配列を保存すること、という両極端な姿勢のバランスをとる作業となる。
【0125】
ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質における特定の修飾
Kd=10−7〜10−12Mでリガンドに結合し、前記リガンドに対して一価の結合活性を示す、前記本発明のユビキチンのヘテロ二量体は、下記の2つの選択肢から選択される。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換、および、
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
【0126】
実施形態において、前記融合タンパク質は、第1ユビキチン単量体の6、8、63〜66位のアミノ酸の置換、ならびに、第2ユビキチン単量体の6、8、62〜66位、および、任意に2位のアミノ酸の置換を有する、前記ユビキチン単量体が、遺伝学的に融合された二量体であり、好ましくは、
前記第1ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換、
8位におけるロイシン(L)のトリプトファンまたはフェニルアラニン(W、F)への置換、
63位におけるリジン(K)のアルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
64位におけるグルタミン酸(E)のリジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換、
66位におけるトレオニン(T)のプロリン(P)への置換;
前記第2ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはグルタミン(Q)への置換
8位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)またはセリン(S)への置換
62位におけるグルタミン(Q)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換
63位におけるリジン(K)のセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)またはグルタミン(Q)への置換
64位におけるグルタミン酸(E)のアスパラギン(N)、セリン(S)、トレオニン(T)またはグルタミン(Q)への置換
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換
66位におけるトレオニン(T)のグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)への置換
任意に、2位におけるグルタミン(Q)のアルギニン(R)、ヒスチジン(H)またはロイシン(K)への置換が好ましい。
【0127】
得られた修飾ユビキチンへテロ二量体が、Kd=10−7〜10−12Mで前記リガンドに対する特異的結合親和性を示し、前記リガンドに対して一価の結合活性を示し、かつ、ユビキチンタンパク質の構造的安定性が破壊されず、妨害されない限り、各単量体におけるこれらの置換の選択肢は、何ら制限されることなく、互いに組み合わせることができる。
【0128】
最も好ましい置換は、下記のとおりである。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくともK6W、L8W、K63R、E64K、S65F、およびT66Pの置換;
および、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65W、およびT66Eの置換;任意にさらにQ2Rの置換、または
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくともQ2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65L、およびT66Sの置換;および
前記第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65、および66位における修飾、さらに任意に、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6X、L8X、Q62X、K63X、E64X、S65X、およびT66Xの置換;任意にさらにQ2Xの置換、Xは、任意のアミノ酸。
【0129】
ED−Bへの結合タンパク質を発生させる前記第1ユビキチン単量体において、特に好ましい置換は、下記のとおりである。
2位:Q→T、4位:F→W、6位:K→H、62位:Q→N、63位:K→F、64位:E→K、65位:S→L、66位:T→S
【0130】
2つの単量体のヘッドトゥテイルでの結合には、リンカーを使用しなくてもよいし、どのようなリンカーを使用してもよい。好ましいリンカーは、配列番号32のリンカーまたは、GIG配列、SGGGGIG配列もしくはSGGGGSGGGGIG配列のリンカーである。
【0131】
好ましい実施形態において、前記リガンドED−Bに結合するよう共に作用する2つの結合決定領域を有するユビキチンヘテロ二量体は、配列番号33または34のアミノ酸配列を含む。薬学的活性成分としてTNFαを含む、前記本発明の好ましい融合タンパク質は、配列番号35または36の配列を有する。別の実施形態において、前記リガンドED−Bに結合するよう共に作用する2つの結合決定領域を有するユビキチンヘテロ二量体は、配列番号XXに相当する、図11に示すアミノ酸配列を含む。
【0132】
さらに好ましいタンパク質は、XXXXが任意のアミノ酸であってもよい下記配列(配列番号47)により提供される。
【化1】
【0133】
これらの配列を有するタンパク質の例を、図11に示す。リンカーとして、ここではSGGGGSGGGGIGを使用した。ただし、その他の種類のリンカーまたはリンカーなしもまた、可能な代替例である。
【0134】
本発明のポリヌクレオチド、宿主細胞、ベクター
本発明のさらなる態様において、本発明は、前述のタンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをも包含する。また、前記ポリヌクレオチドを含むベクターは、本発明に包含される。
【0135】
本発明のさらなる態様において、前述のタンパク質もしくは融合タンパク質、および/または、前記本発明の組換えタンパク質もしくは組換え融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む、宿主細胞は、包含される。
【0136】
前記修飾ヘテロ多量体ユビキチン分子の使用
高い親和性でリガンドに結合可能な本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、例えば、in vitroまたはin vivoで使用する診断薬、および治療薬の調製に使用される。本発明のタンパク質は、例えば、直接的なエフェクター分子(修飾物質、拮抗物質、作用物質)または抗原認識ドメインとして使用できる。
【0137】
ヒトおよび獣医学の医薬療法および予防法の分野において、少なくとも一つの本発明のヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を含む、薬学的に有効な医薬品を、それ自体公知な方法により調製できる。生薬製剤に応じて、これらの組成物を、注射、点滴、全身投与、直腸投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与または他の従来から使用されている投与方法により、非経口的に投与できる。医薬品の種類は、治療対象の疾患の種類、疾患の重症度、治療対象の患者、および医学分野の当業者に公知の他の要因によって決まる。
【0138】
選択する融合パートナーに応じて、本発明の医薬組成物は、ターゲットが大量に出現する疾患の治療に適用される。
【0139】
前記組成物は、治療上の有効量を含むように適応される。投与量は、治療対象の組織、疾患の種類、患者の年齢および体重、ならびにさらに公知の要因によって決まる。
【0140】
前記組成物は、薬学的または診断的に許容されるキャリアを含み、任意に、さらに、従来公知の助剤および添加剤を含み得る。これらは、特に制限されず、例えば、安定化剤、界面活性剤、塩類、緩衝剤、着色剤等を含む。
【0141】
前記医薬組成物は、局所塗布用の液状製剤、クリーム、ローションの剤形;エアロゾル;粉末、細粒、錠剤、座剤、カプセル剤の剤形;エマルジョン、リポソーム製剤の剤形とし得る。前記組成物は、無菌、非発熱原性、等張性で、薬学的に従来公知で許容される添加剤を含むことが好ましい。また、U.S. PharmacopoeiaまたはRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mac Publishing Company(1990)の規則を参照できる。
【0142】
本発明の「医薬組成物」は、組成物の形態で提供されてもよい。種々の活性成分および希釈剤および/または担体は、互いに混合され、混合製剤の形態でもよい。前記活性成分は、部分的にまたは全体的に別々の形態で存在する。このような混合または混合製剤の一例は、複数の部品からなるキットである。
【0143】
本発明の「組成物」は、少なくとも2つの薬学的に活性な化合物を含む。これらの化合物は、同時に投与してもよいし、1分〜数日の時間間隔で個々に投与してもよい。これらの化合物は、同じ経路で投与してもよいし、異なる経路、例えば、一方の活性化合物を経口投与し、他方の活性化合物を非経口投与することも可能である。また、前記活性化合物は、一つの医薬品、例えば、一つの点滴液に処方されてもよいし、個々に処方された両化合物を含むキットとして処方されてもよい。また、両方の化合物は、2以上の包装でも提供可能である。
【0144】
さらなる実施形態において、前記医薬組成物は、複数の部品からなるキットの形態でもよく、前記本発明の組換えユビキチンタンパク質/融合タンパク質、および1以上の化学療法剤が個々に提供される。
【0145】
本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、例えば、単純な有機合成戦略、固相支援合成技術等の、任意の従来公知の種々の技術により、または、市販の自動合成装置により調製できる。一方、従来の遺伝子組換え技術単独で、または、従来の合成技術との組み合わせにより、調製することもできる。
【0146】
任意に、前記修飾は、DNAレベルでの遺伝子工学、および、原核生物、真核生物またはin vitroにおける修飾タンパク質の発現により行われてもよい。
【0147】
さらなる実施形態において、前記修飾工程は、化学的合成工程を含む。
【0148】
本発明の一態様において、異なる修飾がなされたタンパク質群は、互いに異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質をコードする、2つのDNAライブラリーを遺伝学的に融合することにより得られる。
【0149】
図面の簡単な説明
図1は、ヘテロ二量体を発生させる、BDR1と称する結合決定領域を有する前方(第1)修飾ユビキチン単量体と、BDR2と称する結合決定領域を有する異なる修飾がなされた後方(第2)ユビキチン単量体との遺伝子組み換えが、ED−Bに対する親和性の有意な向上、ならびに結合の特異性の向上をもたらすことを示す。細胞および組織切片に結合する前記修飾ユビキチン分子を、Biacore(登録商標)、蛍光偏光測定により分析した。ヒトED−Bへの複数のヘテロ二量体ユビキチン変異体の結合の濃度依存性ELISA(conc.−ELISA)を示す。
【0150】
図1Aは、単量体41B10(ここでは、SPWF28−41B10th)についての、Kd=9.4μM=9.45×10−6Mの結合親和性を示す。黒丸は、第1単量体41B10の、フィブロネクチンのエクストラドメインBであるフラグメント67B89への結合を示す。コントロールであるフラグメント6789は、ED−Bを含まず、白丸で示される。
【0151】
図1Bは、ヘテロ二量体ユビキチンの結合親和性を示す。前記ヘテロ二量体は、41B10の第1単量体と異なる第2単量体とが結合され、変異体46H9となっている(ここでは、SPWF28−46H9th)。46H9の結合親和性は、両単量体のターゲットED−Bへの一価の結合により、図1Aに示す単量体と比べて大幅に向上している(Kd=131nM=1.3×10−7M;ここでは67B89とする、黒丸)。コントロールであるフラグメント6789は、ED−Bを含まず、白丸で示される。
【0152】
図2は、サイトカインに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
【0153】
図2Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の高親和性を示す(Kd 50.7nM=5×10−8M)。黒丸は、24H12のEDBとの結合を示す。ネガティブコントロールとして、24H12のBSA(ウシ血清アルブミン)との結合を用いた(白丸)。
【0154】
図2Bは、サイトカインTNFαに融合することによって多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の親和性の向上を示す(Kd=5.6nM=5.6×10−9M)。
【0155】
図2Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体変異体9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。細胞基質のフィブロネクチン(c−FN)をコントロールとして使用した場合と比較して、ターゲットED−Bに対して、Kd ELIZA値が向上され、前記ターゲットへの特異的結合が確認された。
【0156】
図2Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の説明:0〜15μM 9E12)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、チップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析し、前記ヘテロ二量体変異体9E12とED−Bとの間の相互作用を分析した。会合解離曲線の分析からは、Kdを、決定できなかった。
【0157】
図2Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜15μM 41B10)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、チップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析し、前記ヘテロ二量体変異体41B10とED−Bとの間の相互作用を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、623nM(6.2×10−7M)であった。
【0158】
図3は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。前記異なる変異体は、小文字でマークされる共通の配列モジュールを共有する。前記変異体について、ED−B結合を分析した。図3は、修飾ユビキチンへテロ二量体が得られる、単量体の種々の組み合わせを示す。ヘテロ二量体変異体46−A5、50−G11および46−H4は、すべて同一の、BDR1を有する第1(前方)修飾単量体(同図において、「a」で示す)を有するが、第2(後方)ユビキチン単量体は、BDR2における異なる部位が修飾されている。変異体52−D10および52−B3は、BDR1を有する46−H9と比較して、異なる第1(前方)修飾単量体を有し、BDR2を有する同一の第2(後方)ユビキチン単量体(同図において、「e」で示す)を有している。
【0159】
前記修飾ユビキチンヘテロ二量体は、下記配列を有する。
46−H4:配列番号25、45−H9:配列番号26、46−A5:配列番号27、50−G11:配列番号28、52−B3:配列番号29、52−D10:配列番号30
【0160】
実験過程において、配列LEHHHHHH(配列番号31)を有するHisタグの添加により、前述の配列を修飾した。
【0161】
図3に示すように、46−H4は、ED−Bへの優れた結合親和性を有する(Kd=189nM)。46−A5および52−D10は、結合活性を有さない。また、他の修飾ユビキチンタンパク質は、ED−Bへの結合活性が46−H4と比較して低い。したがって、ヘテロ二量体変異体における両単量体が、ターゲットへの高い結合親和性のために必要とされ、両単量体がターゲットに対する一価の結合を示すと結論付けることができる。
【0162】
高いED−B結合活性を有する前記修飾ユビキチンヘテロ二量体46−H9は、前記2つの単量体の両結合ドメイン領域における下記のアミノ酸置換により、野生型ユビキチン単量体と比較して同定される。
前記第1モジュール(BDR1):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64A、S65T、T66L
前記第2モジュール(BDR2):(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
50G11
前記第1モジュール(46H9):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュール:(c)K6M、L8R、Q62M、K63N、E64A、S65R、T66L
46H4
前記第1モジュール(46H9):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュール:(d)K6G、L8W、Q62T、K63Q、E64Q、S65T、T66R
52B3
前記第1モジュール:(g)Q2R、F4P、K6Y、Q62P、K63P、E64F、S65A、T66R
前記第2モジュール(46H9):K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
52D10(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュール:Q2V、F4C、K6R、Q62T、K63A、E64P、S65G、T66D
前記第2モジュール(46H9):(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
46A5(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュール(46H9):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュール:(b)K6L、L8M、Q62L、K63A、E64F、S65A
【0163】
図4は、配列アライメントを示す。1行目:野生型ユビキチンタンパク質の2つの単量体(1行目)は、77位から88位までの12個のアミノ酸のリンカーSGGGGSGGGGIGにより結合される。BDR2を有する第2単量体は、89位のメチオニンから始まる。この二量体野生型ユビキチンタンパク質は、第1単量体および第2単量体において異なる修飾がなされ、その結果2つのBDRを有する、前記修飾へテロ二量体変異体46−H9(2行目)と整列されている。ターゲットへの一価の結合のために、両BDRは、ターゲットとの結合において、共に作用する。
【0164】
図5は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始する)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。前記第2単量体の最後のC末端アミノ酸において、グリシンからアラニンに置換されている。3行目は、二量体の野生型ユビキチンであり、リンカーアライメントを示さない(このため、77位のメチオニンから第2単量体が開始する)、「Ubi−Dimer wt」を示す。4行目は、ヒトの野生型ユビキチンである「Ubi−Monomer wt」を示す。
【0165】
図6は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。変異体1041−D11は、非常に高いED−Bへの結合親和性を示す(Kd=6.9nM=6.9×10−9M)。ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89−t0という)への結合親和性を示すことを、黒丸で示し、この変異体が、ネガティブコントロール(6789−t0という)には結合しないこと(白丸)と比較する。
【0166】
図7は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。1041−D11は、可溶性67B89のIC50:140nMで、固定化された67B89から解離し、1041−D11の結合が、conc−ELISA設定で用いられた疎水性表面への固定化に起因するED−B構造の劣化によるものではないことを示している。
【0167】
図8は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。種々の濃度(図中の説明:0〜200nM 1041−D11)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、SAチップ(Biacore)に固定化された、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89という)への結合を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、1nM(1×10−9M)であり、koff率は、7.7×10−4s−1であり、1041−D11とED−Bとの複合体の半減期が長いことを示す。
【0168】
図9は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。マウス血清もしくはラット血清またはコントロールとしてのPBST中での、37℃で1時間での前記変異体のプレインキュベーション等の、種々の条件を示す。Kd値は、すべて10〜20nMである。したがって、ED−Bへの前記ヘテロ二量体1041−D11の結合は、血清による顕著な影響を受けないと結論付けることができる。
【0169】
図10は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【0170】
図10Aは、1041−D11とED−Bとの複合体形成を示す。3回のHPLCのランを重ねている。SE−HPLC後の、保持時間21.651分の青色のピークは、純粋な1041−D11に由来し、保持時間26.289分の黒色のピークは、フィブロネクチンフラグメント67B89を表し、保持時間21.407分の赤色のピークは、1041−D11と67B89との混合物の結果を示す。1041−D11のピークの保持時間が短くなる側へのシフト、および、67B89のピークの消失は、1041−D11と可溶性ED−Bとの複合体の形成を示す。
【0171】
図10Bは、1041−D11(青色、21.944分)、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789(黒色、26.289分)、および1041−D11と6789との混合物(21.929分および26.289分にピークを有する赤色線)に関する3回のSE−HPLCのランを重ねて示す。前記1041−D11のピークのシフトは、ほとんど観察されなかった。6789のピークが消失しなかったこととあわせて、この事実は、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789に、有意に結合しないことを示す。
【0172】
図11は、ED−B結合変異体のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。ED−Bへの驚くほど強力な結合親和性を有することが見出された、16種類の代表的なヘテロ二量体の配列を示す。前記コンセンサスアミノ酸部位は、前記第1単量体の結合決定領域である、2、4、6、62、63、64、65、66位である。一方、コンセンサスアミノ酸置換は、Q2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sである。
【0173】
図12は、6種類のユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質の配列アライメントを示す。前記第2ユビキチン単量体は、89位(1111−B4、1111−C9)または80位(1111−E10、1111−F6、1111−H12、1111−H2)のメチオニンから開始される。
【0174】
図13は、結合決定領域BDR1およびBDR2、ならびに、図12に示すユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質のリンカーのアライメントを示す。さらに、ユビキチン配列における追加のアミノ酸交換を示す。
【0175】
図14は、ビオチン化MIA−2(biot.MIA2)への、図12に示す結合変異体1111−E10についての、濃度依存性ELISAを示す。Kd=2.6μM(黒丸)であり、コントロールはヒト血清アルブミン(HSA)とした(白丸)。
【0176】
図15A:第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価した。パートAは、第1単量体修飾ユビキチンユニットの配列情報を、パートBは、第2単量体修飾ユビキチンユニットの配列情報を示す。
【0177】
図15B:第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66、68位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0178】
図15C:ヘテロ二量体ユビキチン変異体SPWF−15_6−A12の、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。結合タンパク質SPWF−15_6−A12は、非常に高い親和性でTNFαに結合する(Kd=12nM=1.2×10−8M)。図15Cは、ヒトTNFαに対する高親和性結合を示し(黒丸)、コントロールはBSAとした(白丸)。
【0179】
図15D:TNFαに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの配列を示す。第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0180】
図15E:前記ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thは、非常に高い親和性でTNFαに結合する(Kd=1.7nM=1.7×10−9M)。図15Eは、ヒトTNFαに対する結合を示し(黒丸)、コントロールはウシ血清アルブミン(BSA)とした(白丸)。
【0181】
図16は、修飾ユビキチンベースのヘテロ二量体のNGFへの結合を示す。
【0182】
図16A:NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−1B7−thの配列を示す。第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66位、および51位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0183】
図16B:濃度依存性ELISAにより、Kd0.9μΜ=9×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかる。図16Bは、組換えヒトNGF(rhNGF;黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSAとした(白丸)。
【0184】
図16C:NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−6A2−thの配列を示す。第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66位と、第2単量体の6、8、62、64〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0185】
図16D:濃度依存性ELISAにより、Kd180nM=1.8×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかる。図16Dは、組換えヒトNGF(rhNGF;黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSAとした(白丸)。
【0186】
図17:ヘテロ二量体IgG結合タンパク質を示す。
【0187】
図17A:IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−16B2−tsの配列を示す。第1ユビキチン単量体の6、62、63、65、66位と、第2単量体の6、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0188】
図17B:濃度依存性ELISAにより、Kd3.8μMの親和性でIgGへ結合することがわかる。図17Bは、IgG(黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSA−1、BSA−2、およびEnbrel(赤丸、緑丸、および青丸、適合線なし)とした。Enbrelは、ヒトIgG1のFc部分を有する。Enbrelへの弱い結合は、SPVF4−16B2−tsのIgGのFab部分への結合を示唆している。
【0189】
図17C:IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−9C6−tsの配列を示す。第1ユビキチン単量体の6、8、62〜66位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0190】
図17D:濃度依存性ELISAにより、Kd4.1μMの親和性でIgGへ結合することがわかる。図17Dは、IgG(黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSA(白丸)およびエタネルセプト(商品名:エンブレル)(赤丸、適合線なし)とした。エンブレルは、ヒトIgG1のFc部分を有する。エンブレルへの弱い結合は、SPVF4−9C6−tsのIgGのFab部分への結合を示唆している。
【実施例】
【0191】
下記実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものである。本発明は、特に、ユビキチンの修飾を例にあげて実証されている。ただし、本発明は、これに限定されず、下記実施例は、単に、前述の記載に基づいた本発明の実施可能性を示しているにすぎない。本発明の完全な開示のため、本願および付属書類に引用されている文献についても言及しているが、これらの引用文献は全て、引用により、その開示全体が本願に取り込まれている。
【0192】
[実施例1]
修飾ユビキチンタンパク質に基づくヘテロ二量体ED−B結合タンパク質の同定
【0193】
ライブラリーの構築とクローニング
特に示さない限り、例えば、Sambrook et alに記載されているような、確立された組換え遺伝学的手法を使用した。
【0194】
合計15の選択されたアミノ酸部位における協調した変異誘発によって、高度な複雑性を有するヒトユビキチンヘテロ二量体のランダムライブラリーを用意した。NNKトリプレットによって置換された修飾アミノ酸は、第1ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸、および第2ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸を含む。両ユビキチン単量体は、少なくともGIG配列、または少なくともSGGGG配列を有するグリシン/セリンリンカーによって遺伝的に結合(ヘッドトゥテイル配置)しており、リンカー配列の例としては、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIG(配列番号32)またはSGGGGSGGGGがあげられるが、その他のリンカーでもよい。
【0195】
TATファージディスプレイ選択
ヘテロ二量体ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてTATファージディスプレイを使用し、ターゲットに対して濃縮した。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットは、タンパク質結合表面上に、またはタンパク質に共有結合されたビオチン化残基を介して、非特異的に固定化され得る。ビオチンを介するストレプトアビジンビーズまたはニュートラアビジンストリップ上への固定化が好ましい。ターゲット結合ファージは、溶液中または固定化ターゲット上のいずれかにおいて選択される。例えば、ビオチン化され固定化されたターゲットとファージとを、インキュベートし、続いて、マトリックスに結合したファージの洗浄およびマトリックス結合ファージの溶出を行う。ターゲットのインキュベーションに続く各サイクルにおいて、前記ビーズを磁力により溶液から分離し、数回洗浄した。1〜3回目の選択サイクルにおいて、ターゲットを担持した磁気ビーズに固定化された三元複合体を洗浄した。4回目の選択サイクルにおいて、洗浄を数回行った。最初の選択サイクルにおいて、ビオチン化ターゲットを、ニュートラアビジンストリップに固定化し、一方、2回目から4回目のサイクルにおいて、溶液における選択を行い、続いて、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)上に、ターゲットとファージとの複合体を固定化した。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、前記ビーズを再度磁力により溶液から分離し、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のファージを、酸性溶液での溶出により遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のファージ溶出を行った。溶出したファージを再増幅した。バインダーの特異性を誘導するため、選択に際し、ターゲットに類似するタンパク質を含めてもよい。
【0196】
TATファージディスプレイ選択の代替:リボソームディスプレイ選択
ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてリボソームディスプレイを使用して、ターゲットに対して濃縮した(Zahnd et al., 2007、Ohashi et al., 2007)。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットを、標準的な方法によってビオチン化し、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)に固定化した。リボソーム、mRNAおよび新生ユビキチンポリペプチドを含む三元複合体を、PURExpress(登録商標) In Vitro Protein Synthesis Kit(NEB社製)を用いて構築した。選択の一次ラウンドを2回行い、三元複合体をインキュベートし、続いて、類似する選択のラウンドを2回行った。ターゲットインキュベーションに続く各サイクルにおいて、ビーズを磁力により溶液から分離し、ストリンジェンシーを増加させながら、リボソームディスプレイバッファーで洗浄した。1〜3回目の選択サイクルにおいて、ターゲットを担持した磁気ビーズに固定化された三元複合体を洗浄した。4回目の選択サイクルにおいて、洗浄を数回行った。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、前記ビーズを再度磁力により溶液から分離し、50mM EDTAの添加により、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のmRNAをリボソームから遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のmRNAの溶出を行った(Lipovsek and Pluckthun, 2004)。各サイクルの後、RNeasy MinElute Cleanup Kit(Qiagen社製、ドイツ)、Turbo DNA−free Kit(Applied Biosystems社製、アメリカ)、およびTranscriptor Reverse Transcriptase(Roche社製、ドイツ)を用いて、RNAの精製とcDNAの合成を行った。
【0197】
濃縮プールのクローニング
4回目の選択サイクルの後、合成cDNAを、当該技術分野において公知の方法であるPCRで増幅し、適切な制限ヌクレアーゼで切断し、適合性付着端を介して発現ベクターpET−20b(+)(Merck社製、ドイツ)に連結した。
【0198】
単一コロニーのヒット解析
NovaBlue(DE3)細胞(Merck社製、ドイツ)への形質転換の後、アンピシリン耐性単一コロニーを培養した。自己誘導培地(Studier、2005)を用いた、96ディープウェルプレート(Genetix社製、イギリス)での培養により、ターゲットに結合する修飾ユビキチンを発現させた。細胞を回収し、その後、溶解した。遠心分離した後、得られた上清を、ターゲット、およびセイヨウワサビペルオキシダーゼ(POD)とのユビキチン特異的FabフラグメントコンジュゲートでコートしたELISAによりスクリーニングした。検出試薬としてTMB−Plus(Biotrend社製、ドイツ)を用いた。0.2M H2SO4溶液を用いて、黄色を発色させ、プレートリーダーにおいて450nmと620nmを測定した。
【0199】
数サイクルの選択ディスプレイを、ターゲットに対して行った。最後の2サイクルの選択において、結合分子を、過剰量の遊離ターゲットを用いて溶出した。
【0200】
例えば、46H9(配列番号6)、9E12(配列番号7)、22D1(配列番号8)、1041−D11(図5)(配列番号33)、1045−D10(配列番号34)等の、前記ターゲットED−Bに対するヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質を同定した。また、例えば、その他のターゲットに対するヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質、例えば、ターゲットMIA−2結合タンパク質1111−E10(図12)(配列番号53)、ターゲットTNFα結合タンパク質SPWF−15_6−A12(図15B)(配列番号57)およびSPWF−15_16−D4(図15D)(配列番号90)、ターゲットNGF結合タンパク質SPWF9−1B7−th(図16A)(配列番号91)およびSPWF9−6A2−th(図16C)(配列番号92)、ならびにターゲットIgG結合タンパク質SPVF4−16B2−ts(図17A)(配列番号93)およびSPVF4−9C6−ts(図17C)(配列番号94)を同定した。
【0201】
野生型ユビキチン単量体(Ubi monomer wt)と、野生型ユビキチン二量体(ubi dimer wt)、野生型ユビキチンタンパク質(図5におけるUb2−TsX9、各単量体の45位の置換およびC末端に2つの置換を有する)、および修飾ユビキチンヘテロ二量体変異体1041−D11との配列アライメントを、図5に示す。デユビキチナーゼは、ユビキチンのGGの後ろを切断し、AAの後ろを切断しないため、Ub2−TsXにおいて、前記単量体のC末端の置換(GGからAA)は、血清における安定性を増加させる。野生型ユビキチンの二次構造は、前記C末端における置換を有するユビキチンと比較して、ほぼ同一である。
【0202】
1041−D11(図X、配列番号36)または1045−D10と呼ばれる、優れたED−B結合親和性を有する修飾ユビキチンは、野生型と比較して、後述のアミノ酸置換によって同定される。
第1モジュール
K6W、L8W、K63R、E64K、S65F、T66P
第2モジュール
K6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65W、T66E
任意に、Q2R(当該置換は、変異体1041−D11に存在し、変異体1045−D10には存在しない)
融合タンパク質に適した好ましいリンカーは、少なくともGIG配列を有するリンカーまたは少なくともSGGGG配列を有するリンカー、あるいは、例えばGIG配列、SGGGG配列、SGGGGIG配列、SGGGGSGGGGIG配列、またはSGGGGSGGGG配列を有するその他のリンカーが挙げられる。ただし、代わりに使用できる、多くのリンカーが考えられる。第1単量体結合決定領域においてコンセンサス配列を有する、さらに別のEDBバインダーを、図11に示す。
【0203】
優れたMIA−2結合活性を有する修飾ユビキチンを、図12〜14に示す。
【0204】
優れたNGF結合活性を有する修飾ユビキチンを、図16に示す。
【0205】
優れたTNFα結合活性を有する修飾ユビキチンを、図15に示す。
【0206】
優れたIgG結合活性を有する修飾ユビキチンを、図17に示す。
【0207】
[実施例2]
修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体のヒトターゲットに対する結合分析
【0208】
実施例2A:濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースの結合変異体の結合分析
ユビキチンベースの変異体のヒトターゲットに対する結合を、濃度依存ELISAによって分析した。精製タンパク質を、ヒトターゲット、BSAまたはHSA、および考えられるその他のコントロール(ターゲットとしてED−Bを用いた場合には、細胞フィブロネクチン(cFN)等)でコーティングされた複数のNUNC−medisorpプレートに、量を増加させてアプライした。ウェルあたり50μlのタンパク質溶液(10μg/ml)での抗原コーティングを、4℃で一晩行った。前記プレートを、0.1% Tween20を含むPBS(pH7.4;PBST)で洗浄した後、前記ウェルを、室温で2時間、ブロッキング溶液(PBS pH7.4;3% BSA;0.5% Tween20)を用いてブロッキングした。前記ウェルを、PBSTでさらに3回洗浄し、次いで、PBSで3回洗浄した。コーティングされたウェルを、異なる濃度のターゲット結合タンパク質で、室温で1時間インキュベートした。PBSTで前記ウェルを洗浄した後、抗ユビキチンfabフラグメント(AbyD)PODコンジュゲートを、PBSTに適切に希釈して、アプライした。前記プレートを、PBSTで3回洗浄した。50μlのTMB基質溶液(KEM−EN−Tec)を各ウェルに加え、15分間インキュベートした。0.2M H2SO4を加えて反応を停止させた。前記ELISAプレートを、TECAN Sunrise ELISA−Readerを用いて読み取った。参照波長を620nmとして、450nmで吸光光度測定を行った。図6は、変異体1041−D11のED−Bに対する非常に高い結合親和性を示す(Kd=6.9nM)。このことは、図14、15、16、17に示す結果により、他のターゲット分子であるMIA−2、TNFα、NGF、およびIgGについてもそれぞれ確認されている。このように、野生型ユビキチンにおけるわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)により、所定のターゲットに対する、低いマイクロモーラー(M)の範囲の親和性がもたらされる。
【0209】
実施例2B:競合的濃度依存ELISAによる、修飾ユビキチンベースの結合変異体の結合分析
本実施例では、ターゲットED−Bに関する結合分析について述べるが、この結合分析は、これ以外の任意のターゲットについても、さらに実験を行うことなく使用できる。競合的濃度依存ELISAにより、量が増加する遊離のターゲットの存在下、フィブロネクチンフラグメント(67B89)を含む固定化ED−Bに対するユビキチン変異体1041−D11の結合を分析した。ELISAの条件は、1041−D11タンパク質を、ED−B(67B89)(0μM〜10μM)、またはネガティブコントロール6789(0μM〜10μM)で、1時間プレインキュベートし、その後、その混合物を、Medisorp−plate上に配置したターゲット67B89に添加した以外は、実施例2Aで述べたとおりである。これに続き、前記変異体を、対応する抗体によって検出した(抗ユビキチン−Fab−POD;希釈度1:6500)。
【0210】
図7は、変異体1041−D11が、ED−Bに対して非常に高い結合親和性を有することを示す(IC50=140nM)。図6に示した結果が裏付けられている。すなわち、野生型ユビキチンにおけるわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)のみにより、ED−Bに対する非常に高い結合親和性がもたらされる。
【0211】
実施例2C:結合活性の血清安定性を同時に分析する、濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当該技術分野における公知の方法により、前述(実施例2Aおよび2B)と同様に、ELISAを行った。ED−B(67B89ともいう)を、マイクロタイタープレートにコーティングし、前記変異体を、ED−Bに結合させ、特異的ユビキチン抗体(抗ユビキチン−Fab−POD)により検出した。この分析において、前記変異体は、異なる方法で処理した。すなわち、前記変異体を、37℃で1時間、マウス血清中でインキュベートする処理(図9参照、青丸)、前記変異体を、37℃で1時間、ラット血清中でインキュベートする処理(図9、赤丸)、または、前記変異体を、37℃で1時間、PBSでインキュベートする処理(図9、黒丸)である。図9、変異体1041−D11の全てのKdが、10.3nM(PBS)から20.74nM(マウス血清)の間にあることを示す。
【0212】
実施例2D:Biacore分析による修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当業者に公知の方法を用いて、CM5チップ(Biacore)に固定化したフィブロネクチンフラグメント(67B89という)を含むED−Bに対する結合について、前記変異体を異なる濃度で分析した(例えば、0〜200nMの変異体、好ましくは1041−D11)。得られたデータは、BIA評価ソフトウェアおよび1:1−Langmuir−fittingにより処理した。図8に示すように、変異体1041−D11のKDは、1.0nMであった。結合速度定数は、kon=7.6×105M−1s−1、koff=7.7×10−4s−1であった。融合タンパク質1041−D11−TNFαのKDは、1.13nMであった。結合速度定数は、kon=4.5×105M−1s−1、koff=5.0×10−4s−1であった。
【0213】
実施例2E:SE−HPLCによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の複合体構造の分析
複合体構造の分析のために、Tricorn Superdex75 5/150 GLカラム(GE−Healthcare社製)(V=3ml)を使用し、50μlのタンパク質をアプライした。さらなる条件は、バッファー:1×PBS(pH7.3)、流速:0.3ml/分、ラン:45分(サンプルの注入:15分後)とした。条件:0.72nmol 1041−D11タンパク質+0.72nmol ED−B(以下、67B89という)またはネガティブコントロールのフィブロネクチン(以下、6789という)を、室温で1時間インキュベートし、複合体構造を分析するために、カラムにアプライした。図10は、前記変異体のみを黒で示し、ターゲットED−Bのみを青で示し、ED−Bとの複合体を構成する変異体結合をピンクで示す。図10Aは、前記変異体とED−B含有フィブロネクチン(67B89)とを示す。図10Bは、前記変異体とED−Bフリーのフィブロネクチンとを示す。図10は、変異体1041−D11が、ED−B(67B89)と複合体を構築するが、フィブロネクチン(6789)とは複合体を構築しないことを示し、特異性を裏付けている。
【0214】
[実施例3]
TNFαへの結合性が向上したユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質
【0215】
TNFαに対して特異的なユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質を、本発明の方法により選択した。すなわち、TNFαに対する結合性能に基づいてスクリーニングされたヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質群を含むファージライブラリーを確立した。下記の修飾を行った。
【0216】
第1単量体:2、4、6、62〜66位、任意に追加で68、70、72〜74位のうちの1以上、任意にさらに別の位置の1以上のアミノ酸の修飾
【0217】
第2単量体:6、8、62〜66位のうちの1以上のアミノ酸の修飾
【0218】
1144−D11(配列番号79)および1144−E9(配列番号80)を除き、ほとんどの場合、リンカーとしてSGGGGSGGGGIGを使用した。1144−D11および1144−E9に関しては、第1および第2ユビキチン単量体間にリンカーを使用しなかった。75および76位は、AAまたはGGである。前記リンカーを、図15のパートAに示す。結合親和性を、図15B〜15Eに示す。
【0219】
[実施例4]
MIA2への結合性が向上した、ユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質の生成
【0220】
MIA2は、特に、肝硬変、線維症、および肝臓癌に関する診断および治療用のマーカーである。このマーカーに関する詳しい情報は、米国特許第2004076965号明細書中に見出せる。
【0221】
本発明の修飾ユビキチン結合タンパク質のターゲットタンパク質は、MIAのコア領域である安定した101個のアミノ酸からなり、ここではSPR30−3という。SPR30−3は、MIA−2の構造化された部分である。SPR30−3は、シグナルペプチドを除く、MIA(CD−RAP)、OTOR、TANGOと相同的である。その分子量は、11569.198Daである。
【0222】
前記MIA−2のコア領域のアミノ酸配列は、以下の通りである(配列番号95)。
MLESTKLLADLKKCGDLECEALINRVSAMRDYRGPDCRYLNFTKGEEISVYVKLAGEREDLWAGSKGKEFGYFPRDAVQIEEVFISEEIQMSTKESDFLCL
【0223】
MIA2に特異的なユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質を、本発明の方法により選択した。MIA2に対する結合性能に基づいてスクリーニングされたヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質群を含むファージライブラリーを確立した。下記の修飾を行った。結果を以下に示す。
【0224】
図13は、ユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質のアライメントを示す。
【0225】
変異体1111−E10は、マイクロモーラーの範囲でのビオチン化ターゲットへの親和性と、サイズ排除クロマトグラフィーにおける複合体形成とを示す。最も強力なバインダーは、第1単量体ユビキチンユニット(BDR1)の6、8、62、63、64、65、66位におけるアミノ酸が置換され、第2単量体ユビキチンユニット(BDR2)の6、8、62、63、64、65、66位において異なる置換がなされた1111−El0である。
【0226】
第1単量体ユビキチンユニット(BDR1)における置換は、1111−H2および1111−H12では同様である。したがって、変異体1111−H2および1111−H12は、1つのアミノ酸の置換のみが相違するBDR1とBDR2との組み合わせと考えられる。
【0227】
下記のさらなる強力な結合分子、1111−C9、1111−B4および1111−F6を評価した。これらのバインダーは、不溶性であるか、あるいは、ELISAおよびSECにおいて、MIA2のSPR30−3に対して結合を示さなかった。変異体1111−E10および1111−C9のそれぞれと、1111−B4とを濃縮した(1111−B4において、さらなる置換T9Aが数回発生した)。1111−F6は濃縮しなかったが、Hit−ELISAにおいて高いシグナルを示すことから、興味深い候補であると考えられた。しかしながら、このバインダーは、不溶性のようであった。
【0228】
図14は、ビオチン化MIA−2(biot.MIA2)に対する結合変異体1111−E10についての濃度依存性ELISAを示す。Kd=2.6μMであり(黒丸)、コントロールはHSA(白丸)である。この変異体1111−E10は、MIA2に対する最良の結合分子であることが証明された。その配列は、下記の通りである。
MQIFVETFTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIGWHPELHLVLRLRGGGIGMQIFVRTETGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNILMGYVLHLVLRLRAA(配列番号53)
【0229】
使用したリンカーを、添付の配列表において、以下のように示す。
1111−B4_21231 sggggsggggig (配列番号96)
1111−C9_21265 sggggsggggig (配列番号96)
1111−E10_21315 gig
1111−F6_21331 gig
1111−H12_21391 eig
1111−H2_21371 gig
【0230】
刊行物
1. Birchler, M., F. Viti, L. Zardi, B. Spiess, and D. Neri. 1999. Selective targeting and photocoagulation of ocular angiogenesis mediated by a phage−derived human antibody fragment. Nat Biotechnol 17:984−8.
2. Brenmoehl, J., M. Lang, M. Hausmann, S. N. Leeb, W. Falk, J. Scholmerich, M. Goke, and G. Rogler. 2007. Evidence for a differential expression of fibronectin splice forms ED−A and ED−B in Crohn’s disease (CD) mucosa. Int J Colorectal Dis 22:611−23.
3. Dubin, D., J. H. Peters, L. F. Brown, B. Logan, K. C. Kent, B. Berse, S. Berven, B. Cercek, B. G. Sharifi, R. E. Pratt, and et al. 1995. Balloon catheterization induced arterial expression of embryonic fibronectins. Arterioscler Thromb Vasc Biol 15:1958−67.
4. Goodsell, D. S. 2001. FUNDAMENTALS OF CANCER MEDICINE: The Molecular Perspective: Antibodies. The Oncologist 6:547−548.
5. Kaczmarek, J., P. Castellani, G. Nicolo, B. Spina, G. Allemanni, and L. Zardi. 1994. Distribution of oncofetal fibronectin isoforms in normal, hyperplastic and neoplastic human breast tissues. Int J Cancer 59:11−6.
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13. Zahnd, C., Amstutz, P., and Pluckthun, A. (2007). Ribosome display: selecting and evolving proteins in vitro that specifically bind to a target. Nat. Methods 4, 269−279.
14. Paschke, M. and W. Hohne (2005). Gene 350(1):79−88
15. Bruser 2007 Appl Microbiol Biotechnol 76(1):35−45
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体ユビキチンの同定方法に関する。さらに、本発明は、前記ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質の群をコードするDNAライブラリー、ならびに、前記DNAライブラリーの発現によって得られるタンパク質ライブラリー、前記DNAまたは前記タンパク質を含む細胞およびファージ、前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。さらに、選択されたリガンドに高い親和性で特異的に結合可能な、ヘテロ多量体ユビキチンベースの新規な結合タンパク質を提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンではないアミノ酸からなる結合分子の需要が高まりつつある。現在に至るまで、抗体は、最もよく確立された結合分子に類別されるが、免疫グロブリン分子にはいくつかの主要な欠点があるため、高い親和性と特異性でリガンドをターゲットとするために、新しい結合分子が、なお求められている。免疫グロブリン分子は、非常に容易に製造でき、ほとんど全てのターゲットを対象とするが、極めて複雑な分子構造を有している。そのため、容易に取扱い可能な、より小さな分子によって、抗体を代用することが絶えず求められている。これら代替結合剤は、例えば、疾病の診断、予防、および治療の医療分野において、有用である。
【0003】
相対的に規定された三次元構造を有するタンパク質は、通常、足場タンパク質と呼ばれ、前記代替結合剤の設計の開始物質として用いられる。これら足場タンパク質は、一般的に、特異的またはランダムな配列のバリエーションを許容する、1以上の領域を含んでおり、そのような配列のランダム化は、しばしば、特異的結合分子を選択できる、タンパク質ライブラリーの製造のために行われる。抗体よりもサイズが小さく、かつ、ターゲット抗原への親和性が、抗体に匹敵するか、あるいはより高い分子は、薬物動態的な性質および免疫原性の点から、抗体よりも優れていると予想される。
【0004】
従前の多くのアプローチは、結合タンパク質の開始物質として足場タンパク質を用いている。例えば、国際公開第99/16873号パンフレット(特許文献1)において、特定のリガンドに結合活性を示すリポカリンファミリー(いわゆるアンチカリン)の修飾タンパク質が開発された。リポカリンファミリーのペプチド構造は、遺伝子工学的方法を用いて、天然のリガンド結合ポケットにおけるアミノ酸置換によって修飾されている。免疫グロブリンのように、アンチカリンは、分子構造の同定または結合に使用できる。抗体と類似する方法で、可動性ループ構造が修飾され、これらの修飾により、天然のものとは異なるリガンドの認識が可能となる。
【0005】
国際公開第01/04144号パンフレット(特許文献2)には、それ自体には結合部分がないβシート構造タンパク質のタンパク質表面における、結合ドメインの人工的な生成が記載されている。この手法によれば、高い親和性と特異性でリガンドと相互作用する、新規に生成された人工結合ドメイン(例えば、眼水晶体構造タンパク質であるγクリスタンのバリエーション)が得られる。アンチカリンに関して先に述べたような可動性ループ構造から形成される、すでに存在する結合部位の修飾とは対照的に、これらの結合ドメインは、βシートの表面に新規に生成される。しかし、国際公開第01/04144号パンフレットには、新規結合特性を生じるための、相対的に大きなタンパク質の改変について記載されているのみである。国際公開第01/04144号パンフレットのタンパク質は、その大きさのため、ある程度の労力を必要とする方法でしか、遺伝子工学レベルで修飾できない。さらに、これまで公開されたタンパク質においては、タンパク質の全体構造を維持するために、全アミノ酸のうち、比較的小さいパーセンテージのみが修飾されていた。そのため、従前は存在しない結合特性の発生に利用できるのは、タンパク質表面の比較的小さい領域のみである。さらに、国際公開第01/04144号パンフレットには、γ−クリスタンへの結合特性の生成のみが記載されている。
【0006】
国際公開第04/106368号パンフレット(特許文献3)には、ユビキチンタンパク質に基づく人工結合タンパク質の生成が記載されている。ユビキチンは、小さい単量体の細胞質タンパク質であり、配列が高度に保存され、原虫から脊椎動物にいたるまでの全ての公知の真核細胞に存在する。生物において、ユビキチンは、細胞タンパク質のコントロールされた分解の制御において重要な役割を担う。この目的のために、分解予定のタンパク質は、酵素カスケードを通過する間に、ユビキチンまたはポリユビキチン鎖と共有結合し、この標識により選択的に分解される。最近の研究結果によると、ユビキチンまたはユビキチンによるタンパク質の標識は、それぞれ、数種のタンパク質の移入または遺伝子制御等の他の細胞プロセスにおいても、重要な役割を担っている。
【0007】
その生理的機能の明確化に加え、ユビキチンは、そもそもその構造およびタンパク質の化学特性のために、研究対象となっている。ユビキチンのポリペプチド鎖は、非常にコンパクトなα/β構造に折りたたまれた76アミノ酸からなる(Vijay−Kumar, 1987(非特許文献1))。前記ポリペプチド鎖のほぼ87%は、水素結合によって、二次構造エレメントの形成に関与する。顕著な二次構造は、3.5αヘリックスターン、ならびに4つの鎖からなる逆平行βシートである。これらの要素の特徴的な配置(逆平行βシートがタンパク質表面に露出し、その裏側にαヘリックスがパックされ、これが前記逆平行βシート上に垂直に延びている)は、一般的に、いわゆるユビキチン様フォールディングモチーフと考えられている。さらなる構造的な特徴は、αヘリックスとβシートとの間のタンパク質内側における、標識疎水性領域である。
【0008】
ユビキチンの人工的な調製は、そのサイズが小さいため、化学合成によっても、生物学的手法によっても行うことができる。有利なフォールディング特性のため、ユビキチンは、大腸菌等の微生物を使用した遺伝子工学により、比較的大量に、そのサイトゾルまたは細胞膜周辺腔において製造できる。一般的に、後者のストラテジーは、周辺質において酸化状態が優勢であるため、分泌タンパク質の製造に使用される。簡易かつ効果的な細菌による調製のために、ユビキチンは、その製造に問題がある他の外来タンパク質に対する融合パートナーとして使用できる。ユビキチンとの融合によって、溶解度の改善およびそれによる製造収率の改善が、達成できる。
【0009】
抗体または他の代替足場と比べ、ユビキチンタンパク質をベースとする人工結合タンパク質(Affilin(登録商標)ともいう)は、小さいサイズ、高い安定性、高い親和性、高い特異性、費用対効果の高い微生物による製造、血清半減期の調整という利点を有している。しかしながら、免疫原性、迅速かつ予測的な前臨床開発の手順、および新しい治療方法の点から、それらのタンパク質をさらに開発する必要がある。国際公開第05/05730号パンフレット(特許文献4)には、人工結合タンパク質を得るためのユビキチン足場の使用が、概略的に記載されているが、ハプテンおよび抗原等(例えば、タンパク質およびペプチド、ならびにこれらのエピトープ等)のリガンドへの、より高くより特異的な結合親和性を得るために、ユビキチンタンパク質を修飾する方法や、かかる修飾ユビキチンタンパク質を効率的に選択する方法については、記載されていない。
【0010】
国際公開第05/05730号パンフレットに記載の方法は、修飾ユビキチンタンパク質の単量体または修飾ユビキチンの結合タンパク質(coupled proteins)に関する。前記結合型は、1、2、またはそれ以上の修飾ユビキチンタンパク質をスクリーニングして選択し、その後、遺伝学的手法または化学的手法のいずれかにより、これらを組み合わせて結合型を得ることによって生成される。一つの結合ユビキチン分子によって、例えば、異なる種類のリガンドへの複数の特異的結合が可能となる。一例をあげると、単一の修飾ユビキチン分子と比べて結合親和性を増加させるため、二つの同一のユビキチンベースのタンパク質の部位特異的結合(ホモ二量体)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第99/16873号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/04144号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/106368号パンフレット
【特許文献4】国際公開第05/05730号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Vijay−Kumar, 1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、リガンドへの高結合能を有する多量体ユビキチンタンパク質の同定方法を提供することである。本発明のさらなる課題は、選択されたリガンドに高親和性で特異的に結合可能な、修飾ユビキチンベースの新規な結合タンパク質の同定方法を提供することである。
【0014】
上述の課題は、提出した独立請求項の主題によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、ならびに下記の記載、実施例および図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、単量体41B10(ここでは、SPWF28−41B10th)についての、Kd=9.4μM=9.45×10−6Mの結合親和性を示す。
【図1B】図1Bは、ヘテロ二量体ユビキチンの結合親和性を示す。
【図2A】図2は、サイトカインに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
【図2B】図2Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の高親和性を示す(Kd 50.7nM=5×10−8M)。
【図2C】図2Bは、サイトカインTNFαに融合することによって多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の親和性の向上を示す(Kd=5.6nM=5.6×10−9M)。
【図2D】図2Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体変異体9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。
【図2E】図2Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図2F】図2Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図3】図3は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。
【図4】図4は、配列アライメントを示す。
【図5】図5は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始する)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。
【図6】図6は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。
【図7】図7は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。
【図8】図8は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。
【図9】図9は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。
【図10】図10は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【図11】図11は、ED−B結合変異体のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。
【図12】図12は、6種類のユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質の配列アライメントを示す。
【図13】図13は、結合決定領域BDR1およびBDR2、ならびに、図12に示すユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質のリンカーのアライメントを示す。
【図14】図14は、ビオチン化MIA−2(biot.MIA2)への、図12に示す結合変異体1111−E10についての、濃度依存性ELISAを示す。
【図15A】図15Aは、第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価したことを示す。
【図15B】図15Aは、第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価したことを示す。
【図15C】図15Aは、第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価したことを示す。
【図15D】図15Bは、第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66、68位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されていることを示す。
【図15E】図15Cは、ヘテロ二量体ユビキチン変異体SPWF−15_6−A12の、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。
【図15F】図15Dは、TNFαに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの配列を示す。
【図15G】図15Eは、前記ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。
【図16A】図16Aは、NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−1B7−thの配列を示す。
【図16B】図16Bは、濃度依存性ELISAにより、Kd0.9μΜ=9×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかることを示す。
【図16C】図16Cは、NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−6A2−thの配列を示す。
【図16D】図16Dは、濃度依存性ELISAにより、Kd180nM=1.8×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかることを示す。
【図17A】図17Aは、IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−16B2−tsの配列を示す。
【図17B】図17Bは、濃度依存性ELISAにより、Kd3.8μMの親和性でIgGへ結合することがわかることを示す。
【図17C】図17Cは、IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−9C6−tsの配列を示す。
【図17D】図17Dは、濃度依存性ELISAにより、Kd4.1μMの親和性でIgGへ結合することがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
より具体的には、本発明者らは、以下の工程を含む、リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の同定方法を提供する。
a)単量体修飾ユビキチンタンパク質から生じるヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された、異なる修飾がなされた2つ以上のユビキチン単量体または1つ以上の修飾ユビキチン単量体を含むヘテロ多量体タンパク質を含み、
前記ヘテロ多量体タンパク質に含まれる前記単量体の少なくとも2つは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位の少なくとも3個のアミノ酸における表面露出アミノ酸が、少なくとも置換により異なる修飾がなされ、
前記修飾単量体タンパク質が、非修飾のユビキチンタンパク質に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する配列を有する、前記工程
b)前記異なる修飾がなされたタンパク質群に対する潜在的なリガンドを提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記リガンドと接触させる工程
d)スクリーニング処理により、ヘテロ多量体修飾タンパク質を同定する工程であり、
前記ヘテロ多量体修飾タンパク質は、前記リガンドと、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程、および
任意に、
e)前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質を、前記結合親和性で、単離する工程
【0017】
本願で使用されている重要な用語の定義
「ユビキチンタンパク質」は、配列番号1のユビキチン、および、下記の定義によるその修飾物を包含する。ユビキチンは、真核生物において、高度に保存されている。例えば、今日まで研究されてきた全ての哺乳類において、ユビキチンは、同一のアミノ酸配列を有する。ヒト、げっ歯類、ブタ、および霊長類由来のユビキチン分子が、特に好ましい。また、任意の他の真核生物起源のユビキチンを使用することもできる。例えば、酵母由来のユビキチンは、配列番号1と3つのアミノ酸が異なるのみである。前記「ユビキチンタンパク質」に包含される前記ユビキチンタンパク質は、通常、配列番号1に対し、70%を超える、好ましくは75%を超える、80%を超える、85%を超える、90%を超える、95%を超える、96%を超える、または97%までの配列同一性を示す。
【0018】
配列番号1のアミノ酸配列に対する前記ユビキチン誘導体の配列同一性の程度の決定には、例えば、SIM Local similarity program(Xiaoquin Huang and Webb Miller, Advances in Applied Mathematics, vol. 12: 337− 357, 1991)またはClustal,W.を使用できる(Thompson et al., Nucleic Acids Res., 22(22): 4673−4680, 1994.)。好ましくは、配列番号1に対する前記修飾タンパク質の配列同一性の程度は、配列番号1の完全配列に対して相対的に決定される。
【0019】
本明細書において、「リガンド」、「ターゲット」および「結合パートナー」は、同意語として使用され、置き換え可能である。リガンドは、前述のヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質に、ここで定義される親和性をもって結合可能な任意の分子である。
【0020】
本発明の「ヘテロ多量体融合タンパク質」または「ヘテロ多量体タンパク質」は、1つ以上の異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質と考えられる。よって、本発明の「ヘテロ多量体」は、少なくとも2つの異なる修飾がなされた単量体ユビキチンタンパク質の融合体であると考えられる。前記少なくとも2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質は、特定の結合パートナーに対する一価の結合特性を共同でもたらす、2つの相互作用結合ドメイン領域を有する。ヘテロ二量体またはヘテロ三量体が好ましい。
【0021】
本発明によれば、1つのリガンドに結合する少なくとも2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、例えば、遺伝学的手法を使用して、互いにヘッドトゥテイル融合で結合される。前記異なる修飾融合ユビキチン単量体は、一価で結合し、両方の「結合ドメイン領域」(BDR)が共に作用する場合にのみ効果的である。前記ヘテロマータンパク質を形成する前記修飾および結合ユビキチン単量体は、一つの連続的な結合領域を介して同じエピトープに結合する。前記ヘテロマーのこの連続的な領域は、少なくとも2つの異なる修飾ユビキチン単量体により形成される前記少なくとも2つのモジュールの両結合決定領域により形成される。
【0022】
「ヘッドトゥテイル融合」は、2つ以上のタンパク質が、前記多量体に含まれるユニット数に応じて、N−C−N−C方向においてそれらを結合することにより、互いに融合することと解釈すべきである。このヘッドトゥテイル融合において、前記ユビキチン単量体は、リンカーを介すことなく、直接連結することもできる。または、前記ユビキチン単量体の融合は、リンカーを介して行うことができる。前記リンカーは、例えば、少なくともGIGのアミノ酸配列もしくは少なくともSGGGGのアミノ酸配列を有するリンカー、または、任意の他のリンカー、例えば、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIGもしくはSGGGGSGGGGがあげられる。2つのユビキチン単量体の遺伝学的融合用の他のリンカーも、当該技術分野では公知であり、使用できる。要約すると、修飾ユビキチン単量体の融合タンパク質を得るために、異なる修飾がなされた2つ、3つ、またはそれ以上の単量体ユビキチンタンパク質を融合させることにより、前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質が提供される。さらに別の実施形態では、前記ユビキチン単量体の少なくとも1つは修飾されず、残りのユビキチン分子のうちの少なくとも1つが修飾される。
【0023】
「群」という用語は、異種核酸によってコードされる異種ポリペプチドの混合物であるライブラリーを指す。前記ライブラリーは、核酸配列によってコードされる単一のポリペプチドをメンバーとして構成される。ライブラリーメンバー間での配列の相違により、前記ライブラリー内における多様性が得られる。前記ライブラリーは、複数のポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形態であってもよいし、あるいは、核酸ライブラリーを用いて形質転換された、生物または細胞、例えば、バクテリア、ウイルス、動物または植物の細胞等の形態でもよい。個々の生物または細胞が、前記ライブラリーのメンバーを1つだけを含むのが好ましい。前記核酸を発現ベクターに組み込み、前記核酸によってコードされる前記ポリペプチドの産生を可能にすれば有利である。したがって、好ましい態様においては、ライブラリーは、宿主生物群の形態をとってもよく、各生物が、1以上の発現ベクターのコピーを含有し、前記発現ベクターが、発現によって対応するポリペプチドメンバーを産生できる、核酸の形態にある前記ライブラリーメンバーを1つ含むよう構成してもよい。このように、前記宿主生物群は、遺伝的に多様なポリペプチド変異体の多大なレパートリーをコードできる可能性がある。
【0024】
前記ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質群は、例えば、異なる修飾がなされた単量体タンパク質をそれぞれコードするDNAライブラリーを遺伝学的に融合することによって提供される。あるいは、これに代わる手法として、前記単量体ユビキチンタンパク質の少なくとも1つを修飾し、前記DNAをヘテロ多量体融合タンパク質に翻訳し、前記タンパク質をディスプレイし、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された単量体ユビキチンタンパク質を含むヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の存在下、前記ディスプレイされたタンパク質をスクリーニングすることによって提供される。前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質は、前記リガンドと、Kd 10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示す。ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を得るため、異なる修飾がなされた単量体タンパク質のそれぞれまたは少なくとも1つをコードする2つのDNAライブラリーの融合、ヘテロ三量体ユビキチンタンパク質を得るため、異なる修飾がなされた単量体タンパク質のそれぞれまたは少なくとも1つをコードする3つのDNAライブラリーの融合等を行う。また、さらに別の代替手法を用いて、スクリーニング用のライブラリーを提供してもよい。一例として、例えば、ソリッドステート技術により前記タンパク質を化学合成し、そのアミノ酸組成にバリエーションをもたらすことが挙げられる。当業者であれば、さらに別の選択肢に想到し、その有用性を見出す可能性がある。したがって、本発明は、本明細書に記載の例に限定されるものと解釈すべきではない。
【0025】
よって、本発明は、リガンドへの結合能によって決定される機能性によりポリペプチドのレパートリーを提供し、選択の結果得られたポリペプチドのサブセットを採用して前記ターゲットリガンドへの結合能に基づくさらなる選択ラウンドを行い、前記リガンドに対する結合親和性の蓄積および増加を図る方法を開示している。
【0026】
本発明によれば、当業者は、選択されたポリペプチドのレパートリーから、請求項に規定の親和性で前記ターゲットリガンドに結合できないポリペプチドを除去することができる。また、本発明によれば、当業者は、選択されたポリペプチドのレパートリーにおいて、機能的で、かつ前記親和性の要件を満たすポリペプチドの濃度を高めることができる。
【0027】
本発明の最も重要なキーポイントの1つは、前記ターゲットに対して一価の結合親和性を有する前記修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質の選択と、それに続いて行われる、前記結合親和性に関与する前記修飾アミノ酸の決定である。
【0028】
多量体化、好ましくは二量化のさらなる利点は、新規な高親和性の結合特性を発生するために修飾され得るアミノ酸残基の総数の増加にある。前記利点は、多くのアミノ酸が修飾されても、ターゲットに対する前記新規に生成された結合タンパク質の足場全体の安定性が低下することがなく、タンパク質の化学的完全性(protein−chemical integrity)が維持されることである。一方、所定のターゲットに対する新規結合部位を発生させるために修飾され得る残基の総数は、前記修飾残基が2つ、3つ、またはそれ以上の単量体ユビキチンタンパク質に割り当てられることで増加する。修飾数は、修飾単量体ユビキチン分子数に応じて、2倍またはx倍にできる。要約すると、ユビキチンベースの結合タンパク質のモジュール構造は、2つ、3つ、またはそれ以上の単量体ユビキチン分子に前記修飾アミノ酸が含まれると、前記修飾アミノ酸の総数を増加できる。本発明の方法は、一価の特異性(一つのシングルエピトープ)を有するヘテロ多量体ユビキチン分子の同定を提供する。
【0029】
「一価」は、前記修飾二量体(任意に三量体、または通常は多量体)ユビキチンの前記第1および前記第2(任意に、さらに多くの)単量体ユニットにおいて生成された両結合領域が共に、ED−Bに相乗的に組み合わせられるように結合する機能、すなわち、両結合領域が、共同で一価の結合活性を形成する役割を果たす機能と理解されるべきである。前記二量体分子における前記第1および前記第2修飾ユビキチン両方の各結合領域を、別々に取り除いた場合、ED−Bへの結合は、前記二量体分子より明らかに効率および親和性が低下するだろう。前記修飾ユビキチンが、各単量体タンパク質を単独で使用するよりも、より効率的にED−Bに結合可能となるように、両結合領域は、アミノ酸の連続領域として前記ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質表面に形成されるユビキチン結合部位を形成する。本発明によれば、最も有力な結合ユビキチン分子をスクリーニングした後に、前記2つの単量体タンパク質が互いに連結されるのではなく、既に前記ヘテロ二量体ユビキチンが存在する状態でスクリーニング工程を行うことが、特に重要である。最も有力な結合ユビキチン分子の配列情報を取得した後に、任意の他の方法、例えば、化学合成または遺伝子工学手法により、例えば、前記2つの同定した単量体ユビキチンユニット同士を連結することにより、これらの分子を得てもよい。二量体修飾ユビキチンタンパク質に関して本明細書に提示する例は全て、三量体または通常は多量体修飾ユビキチンタンパク質に関するものに変更できると解釈すべきである。
【0030】
したがって、結合パートナーに対して共通の結合部位を有するヘテロ多量体、特にヘテロ二量体の使用は、これらの修飾残基の全量が、前記二量体または多量体を形成する前記2以上の単量体ユニットに割り振られるため、最終的な結合分子の前記タンパク質の化学的完全性に過度に影響を与えない修飾残基数を増加させる可能性を切り開く。前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質は、タンパク質ライブラリーに存在する。
【0031】
例えば、単量体修飾ユビキチンタンパク質をコードする少なくとも2つのDNAライブラリーが、各単量体ユビキチンユニットにおいて、選択されたコドンに異なる修飾をすることにより確立された後、ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質をコードするDNA分子を得るために、これらのライブラリーは、遺伝学的に融合される。本発明によれば、これらのライブラリーのDNAがタンパク質に翻訳され、このようにして得られたヘテロ多量体タンパク質がターゲット分子に接触されて、結合親和性が存在する場合には、パートナーへの結合が可能となる。好ましい修飾ユビキチンは、ヘテロ二量体である。
【0032】
接触工程およびスクリーニング工程が、ヘテロ多量体(例えば、ヘテロ二量体)修飾ユビキチンタンパク質について、既に行われていることが本発明の重要な態様である。この工程により、前記ターゲットへの一価の結合活性を提供するユビキチンタンパク質のスクリーニングが可能である。
【0033】
本発明によれば、最も有力な結合ユビキチン分子をスクリーニングにより選択した後に、前記単量体修飾ユビキチンタンパク質が互いに連結されるのではなく、既に前記ヘテロ多量体ユビキチンが存在する状態でスクリーニング工程を行うことが、特に重要である。ただし、最も有力なヘテロ多量体ユビキチン結合分子の配列情報を取得した後に、任意の他の方法、例えば、化学合成または遺伝子工学手法により、例えば、前記2つの同定した、異なる修飾がなされた単量体ユビキチンユニット同士を連結してヘテロ二量体結合タンパク質を形成することにより、これらの分子を得てもよい。
【0034】
本発明における接触は、適切な提示方法および選択方法、例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、TATファージディスプレイ、mRNAディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、または細菌表面ディスプレイ等の方法、好ましくは、リボソームディスプレイ法またはファージディスプレイ法により行われる。徹底した開示のために、下記の参考文献を参照できる;Hoess, Curr. Opin. Struct. Biol.. 3 (1993), 572−579;Wells and Lowmann, Curr. Opin. Struct. Biol. 2 (1992), 597−604;Kay et al., Phage Display of Peptides and Proteins−A Laboratory Manual (1996), Academic Press。前述の方法は、当業者に公知であり、本発明における修飾に使用できる。
【0035】
本発明によれば、前記修飾タンパク質が、所定の結合パートナーに対して、定量化できる結合親和性を有するかどうかの決定は、1以上の下記の方法により行うことが好ましい。ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、サイズ排除クロマトグラフィー、蛍光偏光測定、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、および超遠心分析法。当該技術分野において利用可能なその他の方法が、技術常識の範囲内において当業者に利用可能である。
【0036】
本明細書において、「ヘテロ多量体」は、少なくとも2つの異なる単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質であると考えられる。本発明の「ヘテロ二量体」は、異なる修飾がなされた2つの単量体ユビキチンタンパク質の融合物であると考えられる。前記2つの単量体ユビキチンタンパク質は、いずれも、特異的結合パートナーに対して、共同で一価の結合特性を示す。本発明の修飾多量体(例えば、二量体)リガンド結合ユビキチンタンパク質は、各単量体ユビキチンタンパク質を個々にスクリーニングし、その後、これら少なくとも2つを結合することによっては、得ることができず、前記リガンドへの共同での一価の結合活性を示す第1および第2単量体ユニットまたはさらなる単量体ユニットからなる多量体(任意に、二量体)タンパク質をスクリーニングすることにより、得ることができることを強調しておく。前記各サブユニットは、前記リガンドへの結合親和性がかなり制限され、結合した多量体または二量体修飾ユビキチンタンパク質のみが、本明細書に記載の優れた結合特性を有することが期待される。
【0037】
一実施形態においては、前記方法は、修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質の同定に関するものであり、2つの単量体ユビキチンユニットが互いにヘッドトゥテイル配置で結合され、前記二量体タンパク質の各単量体が、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位に位置するアミノ酸(各アミノ酸は、表面が露出されている)の少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個の置換により、異なる修飾がなされており、
前記置換は、下記(1)または(2)を含み、さらなる修飾、好ましくは、他のアミノ酸の置換を任意で含み、
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
前記修飾単量体ユビキチンユニットが、配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%、および少なくとも90%の群から選択される少なくとも一つのアミノ酸同一性を有し、
リガンドに対する前記タンパク質の特異的結合親和性がKd=10−7〜10−12Mであり、前記タンパク質が、前記リガンドに対して一価の結合活性を示す。
【0038】
本発明のさらなる実施形態では、各単量体ユビキチンユニットにおいて、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位における、6、7、8、9個または全てのアミノ酸が、修飾される。本発明においては、各単量体ユニット、例えば、第1ユニットおよび第2ユニットにおいて、これらの変異は、それぞれ組み合わせることができると理解される。例えば、前記第1ユニットが、6つの修飾を含むことができ、一方、前記第2ユニットが、7つまたは8つの修飾を含み、前記第1ユニットが8つの修飾を、前記第2ユニットが7つの修飾を含んでもよい、等である。前述に列挙する各アミノ酸は、前記第1ユニット、前記第2ユニットから選択でき、その後、前記両ユニットは、組み合わせられる。好ましい置換は、以下に記載する。
【0039】
前記修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質のディスプレイ方法
本願に適用されるファージディスプレイ法およびリボソームディスプレイ法は、下記および実施例に記載されている。これら方法は、本明細書に記載の潜在的なリガンドに対して結合特性を示すユビキチン変異体を検出するための、本発明における選択手法の例として挙げられている。同様に、例えば、細菌上に提示する方法(bacterial surface display;Daugherty et al., 1998, Protein Eng. 11(9):825−832)もしくは酵母細胞上に提示する方法(yeast surface display; Kieke et al., 1997 Protein Eng. 10(11):1303−10)、または、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun, 1997 Proc Natl Acad Sci U S A. 94(10):4937−4942; He and Taussig, 1997 Nucleic Acids Res. analytical ultracentrifugation 25(24):5132−5134)、cisディスプレイ(Odegrip et al., 2004 Proc Natl Acad Sci U S A. 101(9):2806−2810)もしくはmRNAディスプレイ等の無細胞選択システムを、適用できる。後者の場合、遺伝子型および表現型の一過性の物理的な結合が、リボソームを介して、適切なmRNAへのタンパク質変異体の連結により達成される。
【0040】
本明細書に記載のファージディスプレイ法において、ユビキチンの組換え変異体は、繊維状ファージ上に提示される。一方、この変異体のコードDNAは、一本鎖の形状でファージエンベロープパッケージされ、同時に提示される。このため、親和性濃縮の枠組みにおいて、所定の特性を有する変異体を、ライブラリーから選択でき、その遺伝情報を、それぞれ、適切な細菌に感染させることにより増幅でき、また異なる濃縮サイクルに添加できる。ファージ表面での変異したユビキチンの提示は、アミノ末端シグナル配列、好ましくはPelBシグナル配列、および、前記ファージのカプシドまたは表面タンパク質への遺伝子融合により達成され、カプシドタンパク pIIIまたはそのフラグメントのカルボキシ末端融合が好ましい。また、コードされた融合タンパク質は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによる検出および/または精製のためのアフィニティータグもしくは抗体エピトープ、または、前記親和性濃縮過程における融合タンパク質の特異的切断のためのプロテアーゼ認識配列等のさらなる機能性成分を含んでもよい。また、例えば、ユビキチン変異体の遺伝子およびファージカプシドタンパク質またはそのフラグメントのコード領域の間に、アンバー停止コドンを存在させてもよい。前記アンバー停止コドンは、1つのアミノ酸の導入により、部分的に、適切なサプレッサー株における翻訳の際に認識されない。
【0041】
所定のターゲットへの結合特性を有するユビキチン変異体の単離に関する選択工程に適切であり、前述の融合タンパク質の遺伝子カセットが挿入された細菌ベクターは、ファージミドという。中でも、繊維状ファージの遺伝子間領域(例えば、M13もしくはf1)、または、その部分を含む。例えば、M13K07等のヘルパーファージによる前記ファージミドを輸送する細菌細胞の重複感染の際、ファージカプシド中に、ファージミドDNAの共有結合的に閉鎖された鎖(covalently closed strand)がパッケージングされる。このようにして発生したファージ粒子は、細菌により分泌され、前記カプシドタンパク質 pIIIまたはそのフラグメントとの融合により、その表面にコードされた各ユビキチン変異体を、細菌表面に提示する。本来のpIIIカプシドタンパク質は、適切な細菌株への再感染できるように、ファージ粒子に存在する。このため、対応するDNAの増幅の可能性は、保持される。このため、前記ユビキチン変異体の表現型、すなわち、潜在的な結合特性とその遺伝子型との間の物理的な結合が、確保される。
【0042】
得られたファージ粒子を、当業者に公知の手法により、ファージ上に提示されたユビキチン変異体の、任意のターゲット、例えば、ED−B、TNFα、MIA−2、NGF、IgG、またはその他のターゲットへの結合により選択できる。このために、前記提示されたユビキチン変異体は、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一時的に固定化され、結合しない変異体を分離した後に、特異的に溶出し得る。前記溶出は、例えば、100mM トリエチルアミン等の基本溶液により行うことが好ましい。また、前記溶出は、酸性条件下で、タンパク質分解または感染細菌の直接添加により行うことができる。このようにして、得られたファージ粒子は、例えば、ED−B、TNFα、MIA−2、NGF、IgGまたはその他のターゲットへの結合特性を有するユビキチン変異体の、連続的な選択サイクルおよび増幅サイクルにより、再度増幅され、濃縮され得る。
【0043】
ファージディスプレイのバリエーションの1つとして、Tatファージディスプレイ技術(Paschke、M. and W. Hohne (2005).Gene 350(1):79−88;欧州特許第1567643号明細書も併せて参照されたい)があげられる。この方法によれば、前記ファージミドにコードされた前記ユビキチン変異体が、細胞質内でネイティブ・コンフォメーションを既に獲得した折り畳みタンパク質を搬出する双アルギニン転座(Tat)系を介して分泌される。(Bruser 2007 Appl Microbiol Biotechnol 76(1):35−45)。分泌の必要条件は、前記ユビキチン変異体をTatポアへと向かわせる特定のN末端シグナルペプチドとの融合である。細胞膜周辺腔への進入後、前記N末端シグナルペプチドは、シグナルペプチダーゼによって除去される。前記細胞膜周辺腔において、前記ユビキチン変異体は、カプシドタンパク pIIIまたはそのC末端フラグメントに共有結合され、その他のファージタンパク質と共に、Sec経路を介して細胞質から分泌される。ユビキチンとpIII間のこの結合は、前記pIIIタンパク質のN末端におけるJunロイシンジッパーと、前記ユビキチン変異体のC末端におけるFosロイシンジッパーとの高親和性相互作用によって実現される。前記各ロイシンジッパーのN末端およびC末端におけるさらなるシステインにより、両タンパク質間の共有結合が可能となり、その結果、ディスプレイされたユビキチンおよびコードされた遺伝子産物間の共有結合が、前記ファージ粒子内で可能となる。
【0044】
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、前記ユビキチン変異体が、まだファージミドの形態にあるとき、すなわち、ファージに融合され、または、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、可溶性のタンパク質の形態にあるときに行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、または前記文献に記載されている。前記特性評価は、例えば、DNA配列の決定、よって、単離された変異体の一次配列の決定を含んでもよい。また、単離された変異体の親和性および特異性は、例えば、標準的な生化学的方法、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、サイズ排除クロマトグラフィー、蛍光偏光測定、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、または超遠心分析法により検出できる。安定性分析については、例えば、化学的または物理的変性についての分光法が、当業者に公知である。その他の周知な方法としては、CDスペクトル測定、タンパク質蛍光分光法、および核磁気共鳴分光法がある。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、ユビキチン変異体のリボソームディスプレイ法を、無細胞転写/翻訳系の手法により準備し、対応するmRNAおよびリボソームが複合体として提示される。このために、前述のDNAライブラリーは、基礎として使用され、変異体の遺伝子は、対応する発現およびタンパク質生合成の制御配列との融合の形態で提示される。前記遺伝子ライブラリー3’末端での前記停止コドンの欠失、および、前記新生タンパク質からなる三元複合体に適した実験条件(低温、高濃度のMg2+)により、前記mRNAおよび前記リボソームは、in vitroでの転写/翻訳中において維持される。
【0046】
各単量体ユビキチンユニットにおける選択されたアミノ酸の異なる修飾により、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質を含むタンパク質ライブラリーが確立された後に、本発明によれば、前記修飾二量体タンパク質は、ターゲットに接触され、結合親和性を有する場合には、パートナー同士の結合を可能にする。これらのタンパク質ライブラリーは、前記修飾タンパク質と前記ターゲットタンパク質間の接触を可能とする方法で、前記修飾タンパク質を提示する任意の他の方法をディスプレイし、または使用する、ディスプレイ法ライブラリーの形態でもよい。前記ディスプレイ法は、任意に、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、TATファージディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイまたはmRNAディスプレイ法である。
【0047】
前記修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質の潜在的なリガンドおよびターゲット
本発明は、下記の代表的な抗原、すなわち、ED−B、TNFα、MIA−2、NGFおよびIgGについて、十分に立証されている。これらの抗原は、あくまでも、当業者が本明細書中に提供される情報を取得した後、本明細書に記載の方法を、過度の負担を伴うことなく、十分実施可能である旨を示すために選択されたものと解釈されるべきである。本発明は、これらの特定の抗原に制限されることなく、当該技術分野において公知である全ての、もしくは少なくともほとんどのリガンドおよびターゲット分子について実施可能である。これらのターゲットは、当業者であれば、当該技術分野の技術常識の範囲内において選択可能である。リガンドおよびターゲット、ならびに抗原およびハプテンの一般的な定義を以下に示し、さらに別の潜在的なターゲット分子を選択して、例示としてあげる。
【0048】
本発明において、抗原とは、抗体と同等の機能を有する本明細書記載の修飾ユビキチンに結合可能な物質を指す。本明細書中で用いられる代替用語は、「リガンド」、「結合パートナー」、または「ターゲット」である。本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、抗体と同様に作用しながら、抗体の欠点を回避する結合分子を提供する。抗原という用語は、ハプテン、ペプチド、タンパク質、糖、DNA等を包含する。Roche Lexikon Medizin(第4版;Urban & Fischer/Elsevier GmbH)から、抗原およびハプテンについて次の定義を得ることができ、本明細書においても使用される。
【0049】
抗原(AG)は、免疫系により異種(非自己)と認識される任意の物質を意味する。ほとんどの場合、免疫反応を引き起こし、免疫に至る(=免疫原)。アレルギー(=アレルゲン)およびアトピー(=アトピゲン)の場合、それぞれ、この免疫反応が拡大する。AGは、体液性(抗原抗体反応)および/または細胞性防御反応(免疫、下記参照)を誘導する。AGが免疫系により許容される場合(免疫寛容)、「免疫寛容原」ともいう。抗原として有効なものは、主に、免疫反応に関与する化学的に特定できる機能性(決定因子)を有する複合体、またはより大きな分子量の物質(タンパク粒、多糖、ヌクレオチド、および多くの合成化合物)である。前記抗原は、1)完全AG:ほとんどの場合、より大きな分子量を有し、それ自身で免疫反応を誘導できるもの;2)低分子量ハプテン(=半抗原);より大きなキャリア分子と結合した後でのみ免疫原として作用するもの;に分類される。前記抗原は、例えば、異物−、非自己−または同種同系−、自家AG;自己−、ヘテロ−、移植−、抗腫瘍ウイルスAG等ともいう。
【0050】
ハプテンは、抗原(AG)の特異性に関与し、または、その構造(決定因子)に起因して抗体に特異的に結合できる、単純な低分子量化合物であるが、完全AGとは対照的に、それ自身ではアレルギーを生じることはできない。キャリアと呼ばれるタンパク粒と結合した後に完全な抗原となる。
【0051】
「リガンド」、「ターゲット」、または「結合パートナー」は、本明細書に記載の修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質によって認識される分子である。本発明の実施に際して採用できるリガンドは、特に制限されず、例えば、細胞膜受容体に対する作用物質および拮抗物質、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン、ホルモン受容体、ポリペプチド、ペプチド、酵素、酵素基質、補助因子、薬剤(例えば、オピエート、ステロイド等)、レクチン、糖、ポリヌクレオチド、核酸、オリゴ糖、タンパク質、およびモノクローナル抗体があげられる。
【0052】
要約すると、本発明により提供される修飾タンパク質の結合パートナーとしては、生物学的・医学的な活性を有する、あらゆる関連分子を採用可能である。考えられる結合パートナーを、例を挙げて以下に述べる。ただし、このリストには、複数の他の考えられるリガンドも加えることができることに留意されたい。抗体と抗原の関係と同様に、潜在的な結合パートナーのリストは、さらなる潜在的なリガンドを加えることで完全なものとすることができる。
【0053】
この発明においては、ヘテロ二量体ユビキチンの結合パートナーは、例えば、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)、サイトカイン(腫瘍壊死因子α)(TNF−a)、MIA−2、免疫グロブリンまたはその一部、例えば、全抗体(例えば、免疫グロブリンG)、および成長因子(例えば、NGF、例えば、ヒト神経成長因子)があげられる。これらのリガンドについて、以下に簡潔に述べる。しかしながら、これらのリガンドは全て、長年にわたって当該技術分野において周知であり、各技術分野における当業者に公知であることを強調しておく。したがって、以下の記載は、アミノ酸配列も公知である、これらのタンパク質のいくつかの重要なパラメータの概要に過ぎない。
【0054】
フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)は、プライマリーRNA転写物の代替スプライシングによってフィブロネクチン分子に挿入された、小さいドメインである。ED−Bは、癌および乾癬に関与することが知られている。驚くべきことに、高レベルのED−B発現は、胸、結腸直腸、非小細胞肺、膵臓、肝細胞、頭と首、およびヒトの肌、ならびに頭蓋内髄膜腫、グリオブラストーマを含むほとんど全てのヒトの固体癌のエンティティにおける一次病変、ならびに転移性部位において検出された(Menrad u. Menssen, 2005)。さらに、ED−Bは、診断剤と結合でき、診断ツールとして有用である。一例として、例えば、動脈硬化プラークの分子の画像化や、例えば、癌患者の免疫シンチグラフィーによる、癌検出おける使用があげられる。さらに多くの診断用に使用できると考えられる。
【0055】
フィブロネクチンのヒトエクストラドメインB(ED−B)における91個のアミノ酸のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。前記タンパク質の発現のため、開始メチオニンを加えなければならない。ED−Bは、哺乳類、例えば、げっ歯類、ウシ、霊長類、肉食動物、ヒト等において保存されている。ヒトED−Bと100%の配列同一性を有する動物は、例えば、ラット(Rattus norvegicus)、ウシ(Bos taurus)、マウス(Mus musculus)、ウマ(Equus caballus)、アカゲザル(Macaca mulatta)、ハイイロオオカミ(Canis lupus familiaris)、チンパンジー(Pan troglodytes)である。
【0056】
前記タンパク質MIA(melanoma inhibitory activity;CD−RAP(軟骨由来レチノイン酸感受性タンパク質)ともいう)は、軟骨細胞において発現され、元来、そのin vitroでの抗増殖特性によって単離されていた。元来、メラノーマ細胞の細胞培養上清から検出され、そこから単離されていた。前記タンパク質の精製および部分的な配列決定を行った後、ヒトMIAのcDNAフラグメントを、ディジェネレートプライマーおよびRT−PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)を利用して単離した。現在、MIAについては、ヒト、マウス、ウシ、ラット、およびゼブラフィッシュの配列が公知である。関連タンパク質であるMIA−2が、欧州特許第1410803号明細書および米国特許出願公開2010/0212037号明細書に記載されている。これらの文献は、引用により、本明細書に組み込まれる。
【0057】
多面サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNFα)は、主としてマクロファージによって生成されるが、その他の種類の細胞も、これを生成する。TNFαは、有益かつ病理学的な活性を示す。TNFαは、自己制御型であることに加え、増殖促進効果と増殖抑制特性との両方を有する。TNFαの有益な機能としては、身体のサーカディアンリズムを調節することによる恒常性の維持、細菌、ウイルス、真菌、および寄生虫感染に対する免疫応答の開始、線維芽細胞成長の刺激による損傷組織の交換または再構築、およびその名が示唆する通り、ある種の腫瘍の死滅があげられる。TNFαは、多岐にわたる疾患のメディエータとされてきた。
【0058】
神経成長因子(NGF)は、感覚ニューロンおよび交感神経ニューロンの生存と分化を促進する分子として、50年以上前に発見された分泌タンパク質である。NGFは、ニューロトロフィンとして知られる神経栄養因子のファミリーメンバーである。NGFは、TrkAとして知られるトロポミオシン受容体キナーゼに高親和性で結合する。また、NGFは、p75として知られる受容体にも結合可能である。p75は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、他のニューロトロフィンとも相互作用する。NGFのβ鎖は、NGFの神経成長刺激活性にのみ関与している。前記β鎖は、ホモ二量体化し、より大きなタンパク質複合体に取り込まれる。NGFの構造および機能は、例えば、Sofroniew, M.V. et al. (2001) Annu. Rev. Neurosci. 24:1217−1281;Weismann, C. and de Vos, A.M. (2001) Cell. MoI. Life Sci. 58:748−759;Fahnestock, M. (1991) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 165:1−26、において考察されている。
【0059】
IgG抗体は、4本のペプチド鎖からなる約150kDaの大きな分子である。IgG抗体は、約50kDaの同一の2本の重鎖と、約25kDaの同一の2本の軽鎖を含み、これにより、四量体四次構造を有する。前記2本の重鎖は、ジスルフィド結合により、互いに結合すると共に、軽鎖に結合している。この結果生じた四量体は、2つの同一の二等分部分(halves)を有し、これらの部分は共同でY字形状を形成している。分岐の各端部は、同一の抗原結合部位を含む。IgGのFc領域は、高度に保存されたN−糖化部位を有している。この部位に付着したN−グリカンは、大部分が、複合型のコアフコシル化二分岐構造を有する。さらに、これらN−グリカンの少量は、バイセクティングGlcNAcおよびα−2,6結合シアル酸残基も有する。
【0060】
ディスプレイされたタンパク質の選択、濃縮、および特性評価の方法
10−7〜10−12Mの範囲のKdの特異的結合親和性による所定のターゲットへの結合活性に関して、ヘテロ多量体修飾ユビキチンの選択を、当業者に公知の方法により行うことができる。このために、例えば、リボソーム複合体で提示される前記ユビキチン変異体を、それぞれ、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一時的に固定化させ、または、溶液中で結合した後に磁性粒子に結合させ得る。非結合変異体の分離に続けて、結合活性を有する変異体の遺伝子情報を、リボソーム複合体の破壊により、mRNAの形態で特異的に溶出できる。前記溶出は、EDTAで行うのが好ましい。このようにして得られた前記mRNAは、単離され、適切な方法を使用してDNAに逆転写され(逆転写反応)、このようにして得られた前記DNAは、再度増幅され得る。
【0061】
in vitroでの転写/翻訳、選択、および増幅の連続サイクルにより、所定のハプテンまたは抗原への結合特性を有するユビキチン変異体を、濃縮できる。
【0062】
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、前述のように、可溶性のタンパク質の形態で行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、前記文献に記載されている。
【0063】
好ましくは、所定の結合パートナーに対する結合親和性を有するタンパク質の検出工程の後に、前記検出されたタンパク質の単離工程および/または濃縮工程が続く。
【0064】
前記本発明の修飾ユビキチンタンパク質の発現に続いて、それ自体公知の方法によりさらに、精製および濃縮される。前記選択された方法は、例えば、使用する発現ベクター、宿主組織、意図する使用分野、タンパク質の大きさ、およびその他の要因等、それ自体当業者に公知の複数の要因により決定される。簡易に精製するために、本発明の修飾タンパク質は、分離材料への高い親和性を有する他のペプチド配列に融合させることができる。ユビキチンタンパク質の機能性に有害な効果を有さないか、または、特定のプロテアーゼ切断部位の導入により精製後に分離可能な融合が、好ましく選択される。このような方法は、それ自体当業者に公知である。
【0065】
突然変異誘発の開始点としての非修飾および修飾ユビキチンタンパク質
「結合可能なタンパク質」または「結合タンパク質」は、さらに後述する結合領域を一つ含むユビキチンタンパク質を指す。結合領域は、少なくとも2つの結合決定領域(BDR)を指すことができる。各単量体は、少なくとも1つ結合決定領域を有し、少なくとも2つの単量体が、1つの抗原に対する1つの結合領域を形成する少なくとも2つの結合決定領域を有する多量体を形成する。このようなユビキチンベースの結合タンパク質は、いずれも、例えば、多量体化部位(multimerization moieties)、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー等の結合ドメインでない付加的なタンパク質ドメイン、および/または、非タンパク性のポリマー分子を含んでもよい。非タンパク性のポリマー分子は、例えば、ヒドロキシエチルでんぷん、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン等である。
【0066】
前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質のさらなる多量体化を、例えば、前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質を、多量体化ドメインを有するエフェクター分子(例えば、TNFα)に、翻訳後に融合させることによって行うことも可能である。さらに別の実施形態においては、さらなる多量体化が、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーの使用により行われる。さらに別の実施形態においては、前記多量体化ドメインは、薬学的活性成分としても作用する。一例としては、多量体化ドメインおよび薬学的成分の両方として作用するTNFαがあげられる。
【0067】
修飾ヘテロ多量体ユビキチンタンパク質
「修飾ユビキチンタンパク質」は、アミノ酸の置換、挿入または欠失のいずれか一つ、または、それらの組み合わせによる、前記ユビキチンタンパク質の修飾を指す。ただし、上記修飾のいずれか一つによりなされる修飾で、最も好ましいのは置換である。前記修飾単量体ユビキチンユニットは、配列番号1に対して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つであるアミノ酸同一性を有するため、前記修飾数は厳密に限定されている。それゆえ、単量体ユニットにおける全修飾アミノ酸数、好ましくは、全置換数は、80%のアミノ酸同一性に対応して、最大で15個のアミノ酸に限定される。代替例として、修飾アミノ酸数が、13、12、11、10、9、8、7、6、または5個であってもよい。前記二量体ユビキチン分子における全修飾アミノ酸数、好ましくは、全置換数は、前記二量体タンパク質に基づく、20%のアミノ酸の修飾に対応して、30個である。代替例として、前記二量体ユビキチン分子中の修飾アミノ酸数が、28、26、24、22、20、18、16、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5個であってもよい。前記二量体修飾ユビキチンタンパク質の前記アミノ酸同一性は、配列番号1の基本単量体配列を有する二つの非修飾単量体ユビキチンタンパク質からなる二量体ユビキチンと比較して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つから選択される。
【0068】
本発明の方法で得られる前記修飾ユビキチンタンパク質は、ターゲット分子、リガンド、または結合分子(これらの表現は、本明細書において相互に用いられる)に対する新規な結合親和性を有する組換え人工タンパク質である。
【0069】
「置換」は、例えば、元のアミノ酸への化学基もしくは残基の置換または付加によるアミノ酸の化学的修飾も含む。βシート領域の少なくとも一つのβ鎖に位置するアミノ酸、または、前記β鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸を含む前記タンパク質の少なくとも一つの表面露出領域におけるアミノ酸の置換が、重要である。
【0070】
修飾は、当該技術分野において、十分に確立された公知の方法により行われる。「ランダムに修飾されたヌクレオチド配列またはアミノ酸配列」は、いくつかの部位が、ヌクレオチドまたはアミノ酸により挿入、欠失または置換され、特性が予測できないヌクレオチド配列またはアミノ酸配列である。多くの場合、挿入された前記ランダムヌクレオチド(アミノ酸)配列、または、ヌクレオチド(アミノ酸)配列は、「完全にランダム」であろう(例えば、ランダム化合成またはPCRを介した突然変異の結果として)。ただし、前記ランダム配列は、共通の機能的特性(例えば、発現産物のリガンドへの反応性)を有する配列を含み得る。また、前記ランダム配列は、最終的な発現産物が、例えば、異なるアミノ酸が均等に分布した、完全にランダムな配列であるという意味で、ランダムでもよい。
【0071】
ランダム化されたフラグメントをベクター中に適切に導入するために、本発明では、前記ランダムヌクレオチドは、部位特異的PCRを介した突然変異の方式により、発現ベクター中に導入されるのが好ましい。ただし、他の選択肢は、当業者に公知であり、例えば、合成ランダム配列ライブラリーを同様にベクターに挿入可能である。
【0072】
融合PCRにより変異体またはライブラリーを発生させるために、例えば、3回のPCR反応を行ってもよい。2回のPRC反応は、部分的に重なった中間体フラグメントを発生するように行われる。3回目のPCR反応は、前記中間体フラグメントを融合するように行われる。
【0073】
ライブラリーまたは変異体株の構築方法は、所望の制限酵素認識部位周辺のプライマー(制限酵素認識部位プライマー)の第1セット、および、例えば、目的のコドンの上流および下流周辺のプライマー(変異原性プライマー)の第2セットを構築する工程を含んでもよい。制限酵素認識部位プライマーは、フォワード制限酵素認識部位プライマーおよびリバース制限酵素認識部位プライマーを含む。変異原性プライマーは、フォワード変異原性プライマーおよびリバース変異原性プライマーを含む。一実施形態において、前記プライマーは、目的のコドンのすぐ上流およびすぐ下流について構築される。前記制限酵素認識部位プライマーおよび前記変異原性プライマーは、前記第1中間体フラグメントおよび前記第2中間体フラグメントの構築に使用される。2回のPCR反応により、これらの直線状の中間体フラグメントが生成される。これらの各直線状の中間体フラグメントは、少なくとも一つの目的の変異コドン、フランキングヌクレオチド配列、および切断部位を含む。前記3回目のPCR反応では、前記2つの中間体フラグメント、ならびに前記フォワード制限酵素認識部位プライマーおよび前記リバース制限酵素認識部位プライマーが使用され、直線状の融合産物が生成される。一方、前記直線状の産物の結合していない末端は、制限酵素で切断され、前記直線状の産物に付着末端が作製される。前記直線状の産物の前記付着末端は、DNAリガーゼの使用により融合され、環状の産物、例えば、環状のポリヌクレオチド配列が生成される。
【0074】
前記中間体フラグメントの構築のために、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの2つのセットについての設計および合成が行われる。前記2つのセットは、制限酵素切断部位およびそのフランキングヌクレオチド配列を含む第1セット、ならびに、目的の変異コドンを少なくとも一つ含む第2セット(変異原性プライマー)を含む。当業者は、前記変異の数が所望の変異アミノ酸修飾の数に対応することを認識するであろう。本願発明者は、他の制限酵素が前記工程に使用可能かを熟考した。この切断部位の正確な位置、ならびに、前記フォワードプライマーおよび前記リバースプライマーの対応する配列は、適宜改変され得る。当該技術分野において利用可能な他の方法も、代替として使用し得る。
【0075】
本発明において、足場に導入される発現産物のランダム化フラグメントを有することを除けば、前記ランダム化ヌクレオチド配列を、少なくとも一つの融合パートナーをコードするヌクレオチド配列に融合させることにより、融合パートナーに前記ランダム配列を連結する必要がある。融合パートナーは、例えば、前記発現産物の発現および/または精製/単離および/または、さらに安定化を促進できる。
【0076】
精製のため、前記融合パートナーは、His6タグ、mycタグ、BirAのBSPビオチン化ターゲット配列、fluタグ、lacZ、およびGST等の精製標識を含んでもよい。さらに、前記融合パートナーは、選別シグナル(sorting signal)配列またはターゲティング配列を含んでいてもよい。
【0077】
本発明によれば、前記ターゲット分子に特異的な新規の結合ドメイン発生のための前記アミノ酸の置換を、任意の所望のアミノ酸に行うことができる。すなわち、前記ターゲット分子に対する新規の結合特性を発生させる修飾のために、任意の所望のアミノ酸をこの目的に使用できるように、アミノ酸が、置換されたアミノ酸のそれと同様の特定の化学的特性または側鎖を有する必要はない。
【0078】
本発明によれば、前記選択されたアミノ酸の修飾工程は、好ましくはランダム変異導入法による、好ましくは遺伝学的レベルでの突然変異、すなわち、前記選択されたアミノ酸のランダム置換により行われる。好ましくは、ユビキチンの修飾は、前記各タンパク質に属するDNAを改変する遺伝子工学的手法により行われる。好ましくは、ユビキチンタンパク質の発現は、その後、原核生物または真核生物において行われる。
【0079】
置換は、特に、ユビキチンタンパク質のβシートの4つのβ鎖の表面露出アミノ酸、または、前記βシート鎖に隣接する3つ目までの表面露出アミノ酸において行われる。各β鎖は、通常、5〜7個のアミノ酸からなる。配列番号1に関して、例えば、単量体ユビキチンの前記β鎖は、通常、アミノ酸残基2〜7、12〜16、41〜45および65〜71を包含する。付加的にかつ好ましく修飾され得る領域は、前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸(すなわち、1番目、2番目または3番目)の部位を含む。付加的にかつ好ましく修飾され得る前記好ましい領域は、特に、アミノ酸残基8〜11、62〜64および72〜75を含む。前記好ましい領域は、2つのβ鎖が互いに結合したβターンを含む。好ましいβターンとしては、例えば、アミノ酸残基62〜64があげられる。前記β鎖に密接する最も好ましいアミノ酸は、8位のアミノ酸である。また、アミノ酸置換のさらなる好ましい例は、36、44、70、71、および/または73位である。例えば、付加的にかつ好ましく修飾され得る領域は、62、63および64位のアミノ酸(3個のアミノ酸)、72、73位のアミノ酸(2個のアミノ酸)、または8位のアミノ酸(1個のアミノ酸)を含む。
【0080】
付加または欠失され得るアミノ酸数は、単量体ユビキチンサブユニットにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個、またはそれ以上のアミノ酸に限定され、前記へテロ二量体ユビキチンタンパク質については、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、22、24、26、または28個のアミノ酸に限定され、通常は、前記単量体タンパク質における修飾数のx倍である。通常、単量体分子においては、1〜10個のアミノ酸が挿入され、および/または1〜7個のアミノ酸が欠失される。単量体分子当たり、6個以上14個以下のアミノ酸が置換される。二量体分子においては、合計で12個以上28個以下のアミノ酸が置換され、および/または合計で1個以上20個以下のアミノ酸が挿入され、および/または1個以上14個以下のアミノ酸が欠失される。これらの数値の間に存在するあらゆる数字が使用可能であり、本発明の範囲内である。また、分子の全体的な構造的完全性が維持されるのであれば、欠失、挿入、置換数のあらゆる組み合わせが可能である。本発明の一実施形態では、βシート構造が維持される。
【0081】
任意の実施形態において、前記アミノ酸残基は、アミノ酸置換により改変される。欠失および挿入も可能である。付加または欠失され得るアミノ酸数は、単量体ユビキチンサブユニットにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個に限定され、それに応じて、前記二量体ユビキチンタンパク質については、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個に限定される。一実施形態において、アミノ酸挿入はなされない。さらなる実施形態において、欠失は行われない。
【0082】
本発明の修飾ユビキチンタンパク質が、請求項で特定され本明細書で説明された前記置換に加えて、1以上のアミノ酸の欠失および/または付加を含む場合には、野生型ヒトユビキチン(配列番号1)に与えられる前記アミノ酸部位を、対応するタンパク質同士で分配するために、前記修飾ユビキチンについてアライメントさせなければならない。融合タンパク質の場合(後述を参照)、各単量体ユビキチンサブユニットのナンバリング(およびアライメント)は、同様の方法によりなされる、すなわち、例えば、二量体のアライメントは、各サブユニットの1位のアミノ酸から開始される。
【0083】
前記単量体ユビキチンタンパク質、好ましくは、例えば、ヒト等の哺乳類由来の単量体ユビキチンにおいて、β鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも25%が修飾されることができ、好ましくは置換される。β鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の好ましくは最大で約50%、さらに好ましくは最大で約40%または約35%、約30%以下、または約25%以下が修飾され、好ましくは置換される。通常、一つのβ鎖において、1〜4個のアミノ酸が修飾される。一実施形態では、β鎖、好ましくは、第1β鎖および第4β鎖、例えば、2〜7位もしくは65〜71位のアミノ酸残基の領域において、6個のアミノ酸のうちの2個が修飾される。
【0084】
ヘテロ多量体の構成要素として使用される本発明の修飾単量体ユビキチンは、合計で、20%以下のアミノ酸が修飾される。これを考慮すると、配列番号1に対する前記修飾ユビキチンタンパク質の配列同一性は、少なくとも80%である。本発明のさらなる実施形態において、アミノ酸レベルでの配列同一性は、配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも87%、さらに、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも95%である。本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、97%以上のアミノ酸配列同一性を有する配列の前記修飾ユビキチンタンパク質をも包含する。
【0085】
本発明のさらなる実施形態では、予め修飾されたユビキチン(配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位におけるアミノ酸の3、4、5、6、または7個が修飾されている)を、ターゲットへの結合特性を発生するためのさらなる修飾の開始点として使用し、配列番号1のユビキチンのアミノ酸が、合計で、9、10、11、12、13、14、最大15個までの修飾された、好ましくは置換されたユビキチンを得る。例えば、さらなる修飾は、74および75位のアミノ酸または45位のアミノ酸における修飾を含むことができ、この修飾により、より良好な安定性またはタンパク質化学特性を発生する。一例によれば、ヘテロ多量体タンパク質の構成要素としての修飾単量体ユビキチンは、このような方法により、14個の置換および1個の欠失を有するものが得られた。ユビキチンの総アミノ酸数に基づいて、これは、約20%の割合に相当する。このことは、非常に驚くべきことであり、通常、もっと低い割合で、十分にタンパク質のフォールディングを阻害してしまうため、予測できなかったことである。
【0086】
本発明の一実施形態において、これらのアミノ酸は、タンパク質表面上に連続的な領域を形成する、新規な結合特性を有する領域の発生のために修飾される。このようにして、前記標的リガンドへの結合特性を有する連続的な領域を発生させることができる。本発明において、「連続的な領域」は、以下の通りである。側鎖の電荷、空間的構造および疎水性/親水性により、それに対応して、アミノ酸は、その環境と相互作用する。前記環境は、溶媒、通常は、水または、例えば、空間的に近いアミノ酸等の他の分子であり得る。タンパク質に関する構造情報および各種ソフトウェアの手段により、前記タンパク質表面の特徴を決定できる。例えば、タンパク質の原子と溶媒との接触領域を、この接触領域がどのような構造であるか、溶媒に接触しやすい表面領域はどれか、または、前記表面において電荷がどのように分布しているか、についての情報を含むこの方法により可視化できる。連続的な領域は、例えば、適切なソフトウェアを使用したこの種の可視化により明らかにされ得る。このような方法は、当業者に公知である。本発明によれば、基本的に、表面露出領域全体が、表面上の前記連続的な領域として使用され、新規な結合特性の発生のために修飾され得る。一実施形態において、この目的のための修飾は、αへリックス領域を含んでもよい。ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質において、結合決定領域は、1つの結合決定領域の2倍の長さを有する1つの連続的な領域を共同で形成する、2つの前記表面露出領域を含む。
【0087】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位の少なくとも一方を含む、前記タンパク質の少なくとも1つの表面露出領域におけるアミノ酸の修飾が、重要である。前記「βシート構造」は、本質的にシート状で、ほぼ完全に伸長されている(stretched)ことにより定義される。一方、ポリペプチド鎖の連続したセグメントから形成されるαへリックスに対して、βシートは、ポリペプチド鎖の異なる領域により形成され得る。このようにして、一次構造において離れて位置する領域同士が、近傍同士となることができる。β鎖は、概して、5〜10個のアミノ酸長を有し(通常は、ユビキチンにおける5〜6残基)、ほぼ完全なストレッチ構造を有する。前記β鎖は、互いに近接し、一方の鎖のCO基と他方の鎖のNH基との間で水素結合が形成される。逆もまた同様である。βシートは、複数の鎖から形成され得、シート状構造を有し、Cα原子の部位が、シート状平面の上方または下方の間で交互に入れ替わる。アミノ酸側鎖は、このパターンに追随し、そして、上端もしくは下端に向く。前記β鎖の方向により、前記シートは、平行シートおよび逆平行シートに分類される。本発明によれば、両方とも、変異可能であり、請求されたタンパク質の調製に使用可能である。
【0088】
前記βシート構造の突然変異のために、表面に近いβ鎖領域または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位が、ユビキチンにおいて選択される。表面露出アミノ酸は、利用可能なX線結晶構造により同定できる。利用できる結晶構造がない場合、利用可能な一次構造に関して、表面露出βシート領域および個々のアミノ酸部位の接触性を予測するか、もしくは3次元タンパク質構造のモデリングを行い、これにより、潜在的な表面露出アミノ酸についての情報を入手するという、コンピュータ解析手法による試みをなし得る。さらなる開示は、例えば、J. Mol. Biol., 1987 Apr 5; 194(3):531−44. Vijay−Kumar S, Bugg C.E., Cook W.Jから得ることができる。
【0089】
前記βシートまたは前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位における修飾を行えるが、突然変異を生成させるアミノ酸部位の前選択は時間がかかるため、除外し得る。前記βシート構造または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸をコードするDNA領域を、DNA環境(DNA environment)から単離し、ランダム突然変異に供し、その後、それらを予め除去したタンパク質をコードするDNAに再度組み込む。続いて、所望の結合特性を有する変異体の選択工程を行う。
【0090】
本発明の他の実施形態において、表面に近い、前記β鎖領域または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位は、前述のように選択され、これらの選択された領域内部の突然変異誘発された前記アミノ酸部位は、同定される。ついで、このようにして選択されたアミノ酸部位は、部位特異的突然変異によりDNAレベルで、突然変異され得る。すなわち、特定のアミノ酸をコードするコドンが、予め選択された他の特定のアミノ酸をコードするコドンにより置換されるか、あるいは、この置換を、置換されるアミノ酸部位は規定されるが、新規な未定のアミノ酸をコードするコドンは規定されないランダム突然変異として行う。
【0091】
「表面露出アミノ酸」は、周囲の溶媒に接触可能なアミノ酸である。タンパク質におけるアミノ酸の接触性が、モデルトリペプチドGly−X−Glyにおけるアミノ酸の接触性と比較して8%以上である場合、前記アミノ酸は、「表面露出」と呼ばれる。これらのタンパク質領域または個々のアミノ酸部位は、それぞれ、本発明により選択される、潜在的な結合パートナーに対する好ましい結合部位でもある。また、参考文献として、Caster et al., 1983 Science, 221, 709 − 713, and Shrake & Rupley, 1973 J. Mol. Biol. 79(2):351−371があげられ、開示の全てを、引用により本願に取り込む。
【0092】
元のタンパク質および互いのタンパク質から新たに発生させた人工結合部位の領域における、アミノ酸置換によるユビキチンの変異体を、対象とされた各配列セグメントのターゲット突然変異により、発生できる。この場合、極性、電荷、溶解性、疎水性/親水性等の所定の特性を有するアミノ酸を、それぞれ、各特性を有するアミノ酸で交換または置換できる。置換の他に、「突然変異」、「修飾」および「交換」は、挿入および欠失も含む。タンパク質レベルにおいて、前記修飾を、当業者に公知の方法によるアミノ酸側鎖の化学的改変により行ってもよい。
【0093】
ユビキチンの突然変異方法
各配列セグメントの突然変異の開始点として、例えば、当業者に公知の方法により、調製され、改変され、増幅されたユビキチンのcDNAを使用できる。一次配列の比較的狭い領域(例えば、1〜3個のアミノ酸)におけるユビキチンの部位特異的改変には、市販の試薬および方法が利用可能である(「Quick Change」、Stratagene;「Mutagene Phagemid in vitro Mutagenesis Kit」、Biorad)。大きい領域の部位特異的な突然変異には、具体的な態様として、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が、当業者に利用可能である。この目的のために、所望の部位が変性された塩基対組成を有する合成オリゴデオキシヌクレオチドの混合は、例えば、変異の誘導に使用できる。これは、イノシン等のゲノムDNAに自然には発生しない塩基対類似体の使用によってもなされ得る。
【0094】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位の1つ以上の突然変異の開始点は、例えば、ユビキチンのcDNAでもよいし、ゲノムDNAでもよい。また、ユビキチンタンパク質をコードする遺伝子は、合成的に調製されてもよい。
【0095】
本発明の一実施形態において、前記突然変異は、アミノ酸コドンNNKを有するDNAオリゴヌクレオチドの集合により行われる。ただし、他のコドン(トリプレット)を使用できることも理解すべきである。前記βシート構造が維持されるように、前記変異が行われる。通常、前記突然変異は、タンパク質の表面上に露出される安定なβシート領域の外側で行われるのが好ましい。それには、部位特異的突然変異およびランダム突然変異の両方が含まれる。一次構造の比較的狭い領域(例えば、3〜5個のアミノ酸)を含む部位特異的突然変異は、市販のキットにより発生できる。前記市販のキットは、Stratagene(登録商標)(QuickChange(登録商標))またはBio−Rad(登録商標)(Mutagene(登録商標) phagemid in vitro mutagenesis kit)(米国特許第5,789,166号明細書、米国特許第4,873,192号明細書参照)があげられる。
【0096】
より広い領域を部位特異的突然変異に供する場合、DNAカセットを調製しなければならず、突然変異される領域は、変異された部位および変異されていない部位を含むオリゴヌクレオチドの集合により得られる(Nord et al., 1997 Nat. Biotechnol. 8, 772−777; McConell and Hoess, 1995 J. Mol. Biol. 250, 460−470.)。ランダム突然変異は、突然変異誘発株におけるDNAの伝播、または、PCR増幅(エラープローンPCR)により導入され得る(例えば、Pannekoek et al., 1993 Gene 128, 135 140)。このためには、エラー率の高いポリメラーゼが使用される。導入される突然変異の度合いを高め、異なる変異同士をそれぞれ組み合わせるために、PCR断片における変異を、DNAシャッフリングの手法により組み合わせることができる(Stemmer,1994 Nature 370,389−391)。酵素に関するこれらの突然変異戦略について、Kuchner and Arnold (1997) TIBTECH 15, 523−530に考察されている。選択されたDNA領域に、このランダム突然変異を行うためにも、突然変異に使用されるDNAカセットを、構築しなければならない。
【0097】
突然変異に利用可能な公知の他の手法は、部位特異的突然変異の方法、ランダム突然変異の方法、PCRを使用する突然変異または類似の方法である。
【0098】
本発明の好ましい実施形態において、突然変異が生成される前記アミノ酸部位は予め定められている。修飾されるアミノ酸の選択は、修飾されるべきアミノ酸に関して、請求項1の限定を満たすように行われる。いずれの場合にも、異なる変異のライブラリーは、通常、公知の方法によりスクリーニングされて確立される。修飾されたユビキチンタンパク質について、十分な構造情報が利用可能な場合には、通常、修飾されるアミノ酸の前選択が、特に簡易に行われ得る。
【0099】
例えば、PCR、化学的突然変異、または細菌の突然変異誘発株の使用による標的変異ならびに長い配列セグメントの突然変異のための方法もまた、従来技術に属しており、本発明においても使用可能である。
【0100】
本発明の一実施形態において、前記突然変異は、アミノ酸コドンNNKを有するDNAオリゴヌクレオチドの集合により行われる。ただし、他のコドン(トリプレット)を使用できることも理解すべきである。前記βシート構造が維持されるように、前記変異が行われる。通常、前記突然変異は、タンパク質の表面上に露出される安定なβシート領域の外側で行われるのが好ましい。それには、部位特異的突然変異およびランダム突然変異の両方が含まれる。一次構造の比較的狭い領域(例えば、3〜5個のアミノ酸)を含む部位特異的突然変異は、市販のキットにより発生できる。前記市販のキットは、Stratagene(登録商標)(QuickChange(登録商標))またはBio−Rad(登録商標)(Mutagene(登録商標) phagemid in vitro mutagenesis kit)(米国特許第5,789,166号明細書、米国特許第4,873,192号明細書参照)があげられる。
【0101】
より広い領域を部位特異的突然変異に供する場合、DNAカセットを調製しなければならず、突然変異される領域は、変異された部位および変異されていない部位を含むオリゴヌクレオチドの集合により得られる(Nord et al., 1997 Nat. Biotechnol. 8, 772−777; McConell and Hoess, 1995 J. Mol. Biol. 250, 460−470.)。ランダム突然変異は、突然変異誘発株におけるDNAの伝播、または、PCR増幅(エラープローンPCR)により導入され得る(例えば、Pannekoek et al., 1993 Gene 128, 135 140)。このためには、エラー率の高いポリメラーゼが使用される。導入される突然変異の度合いを高め、異なる変異同士をそれぞれ組み合わせるために、PCR断片における変異を、DNAシャッフリングの手法により組み合わせることができる(Stemmer,1994 Nature 370,389−391)。酵素に関するこれらの突然変異戦略について、Kuchner and Arnold (1997) TIBTECH 15, 523−530に考察されている。選択されたDNA領域に、このランダム突然変異を行うためにも、突然変異に使用されるDNAカセットを、構築しなければならない。
【0102】
本発明の一例によれば、単量体ユビキチンの2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位における、少なくとも3個、好ましくは少なくとも6個のアミノ酸のランダム置換を、非常に簡易にPCRの手段により行うことができる。前述の部位が、前記タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端の近くに位置しているためである。したがって、操作されるコドンは、対応するcDNA鎖の5’末端および3’末端である。そこで、突然変異PCR反応に使用される前記第1オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される2、4、6および/または8位のコドンから離れており、ユビキチンの配列におけるアミノ末端のコード鎖に対応する。したがって、前記第2オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される62、63、64、65、66および/または68位から離れており、少なくとも部分的に、カルボキシ末端のポリペプチド配列の非コード鎖に対応する。両方のオリゴデオキシヌクレオチドにより、ポリメラーゼ連鎖反応は、鋳型として単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNA配列を使用して行うことができる。
【0103】
また、得られた増幅産物を、例えば、制限エンドヌクレアーゼの認識配列を導入するフランキングオリゴデオキシヌクレオチドを使用する、他のポリメラーゼ連鎖反応に添加できる。本発明によれば、所定のハプテンまたは抗原に対する結合特性を有するユビキチン変異体の単離のための次の選択工程での使用に適したベクター系中に、得られた前記遺伝子カセットを導入するのが好ましい。
【0104】
本発明によれば、選択されたリガンドに特異的な新規の結合ドメイン発生のための前記アミノ酸の置換を、任意の所望のアミノ酸に行うことができる。すなわち、選択されたリガンドに対する新規の結合特性を発生させる修飾のために、アミノ酸が、置換されたアミノ酸のそれと同様の特定の化学的特性または側鎖を有する必要はなく、よって任意の所望のアミノ酸をこの目的に使用できる。
【0105】
本発明によれば、前記選択されたアミノ酸の修飾工程は、好ましくは、ランダム変異導入法による遺伝学的レベルでの突然変異、すわなち、前記選択されたアミノ酸のランダム置換により行われる。好ましくは、ユビキチンの修飾は、前記各タンパク質に属するDNAを改変する遺伝子工学的手法により行われる。好ましくは、ユビキチンタンパク質の発現は、その後、原核生物または真核生物において行われる。
【0106】
本発明によれば、修飾ユビキチンタンパク質は、より好ましくは、化学的合成により調製することができる。好ましい実施形態において、前記アミノ酸残基は、アミノ酸置換により改変される。欠失および挿入も可能である。任意に、挿入または欠失されるアミノ酸数は、1〜10、1〜5、2、3、または4個である。一実施形態において、アミノ酸挿入はなされない。さらなる実施形態において、欠失は行われない。
【0107】
上記修飾後、本願発明者は、実施例で述べる修飾されたアミノ酸配列のユビキチンが、非常に高い親和性(Kd値10−10M以下)で、そのターゲットと結合することを見出した。
【0108】
ユビキチンの修飾領域
修飾領域は、基本的に、選択された結合パートナーに接触可能かどうか、および、タンパク質の全体構造が、推測上修飾に耐性を示すかどうかで、選択され得る。
【0109】
表面露出β鎖における修飾の他に、前記タンパク質の他の表面露出領域も修飾でき、前記β鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位において行われるのが好ましい。これらの修飾領域は、新規に発生させる、ターゲットに対する高い結合親和性に関与する。
【0110】
本発明の別の好ましい実施形態においては、ユビキチン、好ましくは哺乳類またはヒトのユビキチンにおける、少なくとも3、4または6個、任意に、少なくとも8、10、12個、最大で15個の表面露出アミノ酸を、前記単量体ユビキチンにおいて修飾できる。前記修飾は、置換が好ましい。これは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の、ユビキチンの表面露出アミノ酸の修飾を含む。これらの3個以上15個以下の表面露出修飾アミノ酸が、所定の結合パートナーへの結合親和性を有する領域を形成する。この領域を、本明細書中では「結合ドメイン領域(BDR)」と定義する。この点において、少なくとも2個、任意に、少なくとも4個、さらに任意に、少なくとも6、8、10、12個、最大15個の前記表面露出アミノ酸が、βシート領域、すなわちβシート鎖に存在すること、もしくは、複数のβ鎖に分布して存在すること、またはβシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位に存在することが特に好ましい。また、全て修飾、好ましくは、全て置換されている少なくとも3個のアミノ酸が、一次配列において、互いに直接隣接していることがさらに好ましい。
【0111】
本発明の他の任意の実施形態において、前記タンパク質における4つのβ鎖の1つもしくは2つにおけるアミノ酸、好ましくは2つにおけるアミノ酸、または、好ましくは前記4つのβ鎖の2つに隣接する3つ以内のアミノ酸部位が、修飾され、新規の結合特性が発生する。前記4つのβ鎖の3つもしくは4つにおける修飾、または前記β鎖の3つもしくは4つに隣接する3つ目までのアミノ酸部位の修飾も、選択されたターゲットまたはリガンドへの結合発生のために、任意で行ってもよい。
【0112】
アミノ末端およびカルボキシ末端鎖におけるアミノ酸、または、アミノ末端およびカルボキシ末端鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸部位が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、前記リガンドまたはターゲットへの新規の結合部位を発生させる。この点において、前記カルボキシ末端βシート鎖に隣接する4つ目までのアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、および、前記アミノ末端β鎖に隣接する1つ目のアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換される。
【0113】
本発明によれば、ユビキチンは、そのアミノ酸が修飾され、好ましくは、前記修飾は、哺乳類のユビキチン、好ましくはヒトのユビキチンにおける下記の部位、すなわち、2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位のアミノ酸の少なくとも3個の置換であるのが好ましい。前記アミノ酸グループの少なくとも3個のアミノ酸は、特定の結合パートナー、例えば、ED−B、TNFα、NGF、IgG、MIA−2、またはその他のターゲットに対して、従来は存在しなかった結合親和性を有する修飾タンパク質の発生に特に適していることが見出された、ユビキチンの表面に連続的な表面露出領域を形成する。これらのアミノ酸残基の少なくとも3個は、修飾されなければならない。任意に、前記アミノ酸残基の3、4、5、6、7、8、9、または10個が修飾、好ましくは置換され、任意に付加的なアミノ酸残基を組み合わせることもできる。
【0114】
配列番号1のアミノ酸配列に対する前記ユビキチン誘導体の配列同一性の程度を決定する目的で、例えば、SIM Local similarity program(Xiaoquin Huang and Webb Miller, Advances in Applied Mathematics,vol.12:337−357,1991)(本願出願人および多重配列比較分析に関する本願出願人の研究所から、無料で入手可能)を採用でき、または、Clustal,W.を使用できる(Thompson et al.,Nucleic Acids Res.,22(22):4673−4680,1994.)。好ましくは、配列番号1に対する前記誘導体の配列同一性の程度は、配列番号1の完全配列に対して相対的に決定される。
【0115】
前記結合親和性を決定する方法は、それ自体公知であり、例えば、下記の方法から選択できる:ELISA、例えば、Biacore(登録商標)により提供される表面プラズモン共鳴(SPR)技術、サイズ排除クロマトグラフィー、蛍光偏光測定、蛍光分光法、等温滴定熱量測定(ITC)。
【0116】
さらに別の態様において、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した、本発明のヘテロ多量体結合タンパク質を含む融合タンパク質に関する。例えば、米国特許第7,838,629号明細書を参照でき、当該文献の全内容が、引用により本明細書に組み込まれている。
【0117】
本発明の融合タンパク質は、例えば、治療または診断に関連する放射線核種用の、非ポリペプチド成分、例えば、非ペプチドリンカー、非ペプチドリガンドを含んでもよい。低分子の有機化合物または非アミノ酸化合物、例えば、糖、オリゴ糖、多糖、脂肪酸等を含んでもよい。本発明の好ましい一実施形態において、前記ユビキチンベースの結合分子は、ペプチド性の、アミノ酸ベースのリンカーもしくはリガンド、または治療または診断特性を有するタンパク質に結合される。
【0118】
結合特性(解離定数)
前記本発明の融合タンパク質の結合特異性は、Kdで与えられる非融合タンパク質で前述のように定義したのと同様である。本発明によれば、特異的結合親和性を定義する「Kd」は、10−7〜10−12Mの範囲である。10−5M以下の値であれば、定量化可能な結合親和性であると考えられる。適用に応じて、Kdの値は、例えば、クロマトグラフィーへの適用の場合には、10−7M〜10−11Mが好ましく、または、診断もしくは治療への適用の場合には、10−9M〜10−12Mが好ましい。さらに好ましい結合親和性は、10−7〜10−10Mであり、好ましくは、10−11Mである。
【0119】
ユビキチンの多量体化
本発明によれば、遺伝学的にヘッドトゥテイルで結合された少なくとも2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、ターゲット分子、例えば、ED−B、TNFα、IgG、MIA2、NGF、またはその他の標的分子の同じエピトープに結合し、両方の結合ドメイン領域が共に作用することでのみ効果を示す。換言すれば、前記修飾ユビキチン単量体は、前記2分子の両結合領域が共に作用することによって形成される一つの連続的な結合領域を介して、同じエピトープに結合する。
【0120】
前記単量体は、直接またはリンカーを介して結合させることができる。好適な好ましいリンカーは、配列番号32のリンカー、少なくともGIG配列もしくは少なくともSGGGG配列を有するリンカー、または任意のその他のリンカー、例えば、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIGもしくはSGGGGSGGGGである。ただし、代わりに使用できる、多くのリンカーが考えられる。
【0121】
ライブラリー
さらなる態様において、本発明は、本発明のへテロ多量体ユビキチンタンパク質、好ましくは、ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を形成する、前述の修飾単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNAを含むライブラリーに関する。
【0122】
本発明のさらなる態様において、前述の2つのライブラリーの融合により得られるDNAを含む融合ライブラリーが提供され、各ライブラリーは、ヘテロ二量体ユビキチン融合タンパク質を得るために、異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質ユニットをコードし、前記単量体ユニットは、互いにヘッドトゥテイル配置で結合される。前記ライブラリーは、所定のターゲットに対して一価の結合活性を示すユビキチンのヘテロ二量体融合タンパク質をコードする。前記相互結合は、当業者に公知のリンカーのいずれか1つ、または本明細書に記載のリンカーを使用することにより行われる。「異なる修飾がなされた」は、前記ヘテロ二量体タンパク質内に非修飾分子が1つ存在する場合も含む。
【0123】
複合ライブラリーの製造は、実施例1で概要を述べる。ただし、ライブラリーの品質に注意を払わなければならない。足場技術におけるライブラリーの品質は、そもそも、複雑性(個々の変異体の数)および機能性(得られた候補の構造的およびタンパク質の化学的完全性)に左右される。両方の特性が互いにネガティブな影響を与える場合もあり、前記足場における修飾部位の数の増加によるライブラリーの複雑性の増大が、変異体のタンパク質の化学的完全性の低下をまねくおそれもある。これにより、溶解度、凝集性が低下し、および/または収量が低下する場合もある。この理由は、エネルギー的に良好なタンパク質パッケージを有する本来の足場から大きく逸脱するためである。
【0124】
このため、適切な足場ライブラリーの構築とは、ターゲットへの結合性を最適化するために、本来の配列に可能な限り多くの変異を導入すること、および、ネガティブなタンパク質化学的効果を避けるために、可能なかぎり本来の一次配列を保存すること、という両極端な姿勢のバランスをとる作業となる。
【0125】
ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質における特定の修飾
Kd=10−7〜10−12Mでリガンドに結合し、前記リガンドに対して一価の結合活性を示す、前記本発明のユビキチンのヘテロ二量体は、下記の2つの選択肢から選択される。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換、および、
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65、および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
【0126】
実施形態において、前記融合タンパク質は、第1ユビキチン単量体の6、8、63〜66位のアミノ酸の置換、ならびに、第2ユビキチン単量体の6、8、62〜66位、および、任意に2位のアミノ酸の置換を有する、前記ユビキチン単量体が、遺伝学的に融合された二量体であり、好ましくは、
前記第1ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換、
8位におけるロイシン(L)のトリプトファンまたはフェニルアラニン(W、F)への置換、
63位におけるリジン(K)のアルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
64位におけるグルタミン酸(E)のリジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換、
66位におけるトレオニン(T)のプロリン(P)への置換;
前記第2ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはグルタミン(Q)への置換
8位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)またはセリン(S)への置換
62位におけるグルタミン(Q)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換
63位におけるリジン(K)のセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)またはグルタミン(Q)への置換
64位におけるグルタミン酸(E)のアスパラギン(N)、セリン(S)、トレオニン(T)またはグルタミン(Q)への置換
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換
66位におけるトレオニン(T)のグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)への置換
任意に、2位におけるグルタミン(Q)のアルギニン(R)、ヒスチジン(H)またはロイシン(K)への置換が好ましい。
【0127】
得られた修飾ユビキチンへテロ二量体が、Kd=10−7〜10−12Mで前記リガンドに対する特異的結合親和性を示し、前記リガンドに対して一価の結合活性を示し、かつ、ユビキチンタンパク質の構造的安定性が破壊されず、妨害されない限り、各単量体におけるこれらの置換の選択肢は、何ら制限されることなく、互いに組み合わせることができる。
【0128】
最も好ましい置換は、下記のとおりである。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくともK6W、L8W、K63R、E64K、S65F、およびT66Pの置換;
および、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65W、およびT66Eの置換;任意にさらにQ2Rの置換、または
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくともQ2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65L、およびT66Sの置換;および
前記第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65、および66位における修飾、さらに任意に、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6X、L8X、Q62X、K63X、E64X、S65X、およびT66Xの置換;任意にさらにQ2Xの置換、Xは、任意のアミノ酸。
【0129】
ED−Bへの結合タンパク質を発生させる前記第1ユビキチン単量体において、特に好ましい置換は、下記のとおりである。
2位:Q→T、4位:F→W、6位:K→H、62位:Q→N、63位:K→F、64位:E→K、65位:S→L、66位:T→S
【0130】
2つの単量体のヘッドトゥテイルでの結合には、リンカーを使用しなくてもよいし、どのようなリンカーを使用してもよい。好ましいリンカーは、配列番号32のリンカーまたは、GIG配列、SGGGGIG配列もしくはSGGGGSGGGGIG配列のリンカーである。
【0131】
好ましい実施形態において、前記リガンドED−Bに結合するよう共に作用する2つの結合決定領域を有するユビキチンヘテロ二量体は、配列番号33または34のアミノ酸配列を含む。薬学的活性成分としてTNFαを含む、前記本発明の好ましい融合タンパク質は、配列番号35または36の配列を有する。別の実施形態において、前記リガンドED−Bに結合するよう共に作用する2つの結合決定領域を有するユビキチンヘテロ二量体は、配列番号XXに相当する、図11に示すアミノ酸配列を含む。
【0132】
さらに好ましいタンパク質は、XXXXが任意のアミノ酸であってもよい下記配列(配列番号47)により提供される。
【化1】
【0133】
これらの配列を有するタンパク質の例を、図11に示す。リンカーとして、ここではSGGGGSGGGGIGを使用した。ただし、その他の種類のリンカーまたはリンカーなしもまた、可能な代替例である。
【0134】
本発明のポリヌクレオチド、宿主細胞、ベクター
本発明のさらなる態様において、本発明は、前述のタンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをも包含する。また、前記ポリヌクレオチドを含むベクターは、本発明に包含される。
【0135】
本発明のさらなる態様において、前述のタンパク質もしくは融合タンパク質、および/または、前記本発明の組換えタンパク質もしくは組換え融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む、宿主細胞は、包含される。
【0136】
前記修飾ヘテロ多量体ユビキチン分子の使用
高い親和性でリガンドに結合可能な本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、例えば、in vitroまたはin vivoで使用する診断薬、および治療薬の調製に使用される。本発明のタンパク質は、例えば、直接的なエフェクター分子(修飾物質、拮抗物質、作用物質)または抗原認識ドメインとして使用できる。
【0137】
ヒトおよび獣医学の医薬療法および予防法の分野において、少なくとも一つの本発明のヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を含む、薬学的に有効な医薬品を、それ自体公知な方法により調製できる。生薬製剤に応じて、これらの組成物を、注射、点滴、全身投与、直腸投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与または他の従来から使用されている投与方法により、非経口的に投与できる。医薬品の種類は、治療対象の疾患の種類、疾患の重症度、治療対象の患者、および医学分野の当業者に公知の他の要因によって決まる。
【0138】
選択する融合パートナーに応じて、本発明の医薬組成物は、ターゲットが大量に出現する疾患の治療に適用される。
【0139】
前記組成物は、治療上の有効量を含むように適応される。投与量は、治療対象の組織、疾患の種類、患者の年齢および体重、ならびにさらに公知の要因によって決まる。
【0140】
前記組成物は、薬学的または診断的に許容されるキャリアを含み、任意に、さらに、従来公知の助剤および添加剤を含み得る。これらは、特に制限されず、例えば、安定化剤、界面活性剤、塩類、緩衝剤、着色剤等を含む。
【0141】
前記医薬組成物は、局所塗布用の液状製剤、クリーム、ローションの剤形;エアロゾル;粉末、細粒、錠剤、座剤、カプセル剤の剤形;エマルジョン、リポソーム製剤の剤形とし得る。前記組成物は、無菌、非発熱原性、等張性で、薬学的に従来公知で許容される添加剤を含むことが好ましい。また、U.S. PharmacopoeiaまたはRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mac Publishing Company(1990)の規則を参照できる。
【0142】
本発明の「医薬組成物」は、組成物の形態で提供されてもよい。種々の活性成分および希釈剤および/または担体は、互いに混合され、混合製剤の形態でもよい。前記活性成分は、部分的にまたは全体的に別々の形態で存在する。このような混合または混合製剤の一例は、複数の部品からなるキットである。
【0143】
本発明の「組成物」は、少なくとも2つの薬学的に活性な化合物を含む。これらの化合物は、同時に投与してもよいし、1分〜数日の時間間隔で個々に投与してもよい。これらの化合物は、同じ経路で投与してもよいし、異なる経路、例えば、一方の活性化合物を経口投与し、他方の活性化合物を非経口投与することも可能である。また、前記活性化合物は、一つの医薬品、例えば、一つの点滴液に処方されてもよいし、個々に処方された両化合物を含むキットとして処方されてもよい。また、両方の化合物は、2以上の包装でも提供可能である。
【0144】
さらなる実施形態において、前記医薬組成物は、複数の部品からなるキットの形態でもよく、前記本発明の組換えユビキチンタンパク質/融合タンパク質、および1以上の化学療法剤が個々に提供される。
【0145】
本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、例えば、単純な有機合成戦略、固相支援合成技術等の、任意の従来公知の種々の技術により、または、市販の自動合成装置により調製できる。一方、従来の遺伝子組換え技術単独で、または、従来の合成技術との組み合わせにより、調製することもできる。
【0146】
任意に、前記修飾は、DNAレベルでの遺伝子工学、および、原核生物、真核生物またはin vitroにおける修飾タンパク質の発現により行われてもよい。
【0147】
さらなる実施形態において、前記修飾工程は、化学的合成工程を含む。
【0148】
本発明の一態様において、異なる修飾がなされたタンパク質群は、互いに異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質をコードする、2つのDNAライブラリーを遺伝学的に融合することにより得られる。
【0149】
図面の簡単な説明
図1は、ヘテロ二量体を発生させる、BDR1と称する結合決定領域を有する前方(第1)修飾ユビキチン単量体と、BDR2と称する結合決定領域を有する異なる修飾がなされた後方(第2)ユビキチン単量体との遺伝子組み換えが、ED−Bに対する親和性の有意な向上、ならびに結合の特異性の向上をもたらすことを示す。細胞および組織切片に結合する前記修飾ユビキチン分子を、Biacore(登録商標)、蛍光偏光測定により分析した。ヒトED−Bへの複数のヘテロ二量体ユビキチン変異体の結合の濃度依存性ELISA(conc.−ELISA)を示す。
【0150】
図1Aは、単量体41B10(ここでは、SPWF28−41B10th)についての、Kd=9.4μM=9.45×10−6Mの結合親和性を示す。黒丸は、第1単量体41B10の、フィブロネクチンのエクストラドメインBであるフラグメント67B89への結合を示す。コントロールであるフラグメント6789は、ED−Bを含まず、白丸で示される。
【0151】
図1Bは、ヘテロ二量体ユビキチンの結合親和性を示す。前記ヘテロ二量体は、41B10の第1単量体と異なる第2単量体とが結合され、変異体46H9となっている(ここでは、SPWF28−46H9th)。46H9の結合親和性は、両単量体のターゲットED−Bへの一価の結合により、図1Aに示す単量体と比べて大幅に向上している(Kd=131nM=1.3×10−7M;ここでは67B89とする、黒丸)。コントロールであるフラグメント6789は、ED−Bを含まず、白丸で示される。
【0152】
図2は、サイトカインに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
【0153】
図2Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の高親和性を示す(Kd 50.7nM=5×10−8M)。黒丸は、24H12のEDBとの結合を示す。ネガティブコントロールとして、24H12のBSA(ウシ血清アルブミン)との結合を用いた(白丸)。
【0154】
図2Bは、サイトカインTNFαに融合することによって多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体24H12の親和性の向上を示す(Kd=5.6nM=5.6×10−9M)。
【0155】
図2Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体変異体9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。細胞基質のフィブロネクチン(c−FN)をコントロールとして使用した場合と比較して、ターゲットED−Bに対して、Kd ELIZA値が向上され、前記ターゲットへの特異的結合が確認された。
【0156】
図2Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の説明:0〜15μM 9E12)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、チップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析し、前記ヘテロ二量体変異体9E12とED−Bとの間の相互作用を分析した。会合解離曲線の分析からは、Kdを、決定できなかった。
【0157】
図2Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記ヘテロ二量体修飾ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜15μM 41B10)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、チップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析し、前記ヘテロ二量体変異体41B10とED−Bとの間の相互作用を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、623nM(6.2×10−7M)であった。
【0158】
図3は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。前記異なる変異体は、小文字でマークされる共通の配列モジュールを共有する。前記変異体について、ED−B結合を分析した。図3は、修飾ユビキチンへテロ二量体が得られる、単量体の種々の組み合わせを示す。ヘテロ二量体変異体46−A5、50−G11および46−H4は、すべて同一の、BDR1を有する第1(前方)修飾単量体(同図において、「a」で示す)を有するが、第2(後方)ユビキチン単量体は、BDR2における異なる部位が修飾されている。変異体52−D10および52−B3は、BDR1を有する46−H9と比較して、異なる第1(前方)修飾単量体を有し、BDR2を有する同一の第2(後方)ユビキチン単量体(同図において、「e」で示す)を有している。
【0159】
前記修飾ユビキチンヘテロ二量体は、下記配列を有する。
46−H4:配列番号25、45−H9:配列番号26、46−A5:配列番号27、50−G11:配列番号28、52−B3:配列番号29、52−D10:配列番号30
【0160】
実験過程において、配列LEHHHHHH(配列番号31)を有するHisタグの添加により、前述の配列を修飾した。
【0161】
図3に示すように、46−H4は、ED−Bへの優れた結合親和性を有する(Kd=189nM)。46−A5および52−D10は、結合活性を有さない。また、他の修飾ユビキチンタンパク質は、ED−Bへの結合活性が46−H4と比較して低い。したがって、ヘテロ二量体変異体における両単量体が、ターゲットへの高い結合親和性のために必要とされ、両単量体がターゲットに対する一価の結合を示すと結論付けることができる。
【0162】
高いED−B結合活性を有する前記修飾ユビキチンヘテロ二量体46−H9は、前記2つの単量体の両結合ドメイン領域における下記のアミノ酸置換により、野生型ユビキチン単量体と比較して同定される。
前記第1モジュール(BDR1):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64A、S65T、T66L
前記第2モジュール(BDR2):(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
50G11
前記第1モジュール(46H9):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュール:(c)K6M、L8R、Q62M、K63N、E64A、S65R、T66L
46H4
前記第1モジュール(46H9):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュール:(d)K6G、L8W、Q62T、K63Q、E64Q、S65T、T66R
52B3
前記第1モジュール:(g)Q2R、F4P、K6Y、Q62P、K63P、E64F、S65A、T66R
前記第2モジュール(46H9):K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
52D10(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュール:Q2V、F4C、K6R、Q62T、K63A、E64P、S65G、T66D
前記第2モジュール(46H9):(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
46A5(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュール(46H9):(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュール:(b)K6L、L8M、Q62L、K63A、E64F、S65A
【0163】
図4は、配列アライメントを示す。1行目:野生型ユビキチンタンパク質の2つの単量体(1行目)は、77位から88位までの12個のアミノ酸のリンカーSGGGGSGGGGIGにより結合される。BDR2を有する第2単量体は、89位のメチオニンから始まる。この二量体野生型ユビキチンタンパク質は、第1単量体および第2単量体において異なる修飾がなされ、その結果2つのBDRを有する、前記修飾へテロ二量体変異体46−H9(2行目)と整列されている。ターゲットへの一価の結合のために、両BDRは、ターゲットとの結合において、共に作用する。
【0164】
図5は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始する)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。前記第2単量体の最後のC末端アミノ酸において、グリシンからアラニンに置換されている。3行目は、二量体の野生型ユビキチンであり、リンカーアライメントを示さない(このため、77位のメチオニンから第2単量体が開始する)、「Ubi−Dimer wt」を示す。4行目は、ヒトの野生型ユビキチンである「Ubi−Monomer wt」を示す。
【0165】
図6は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。変異体1041−D11は、非常に高いED−Bへの結合親和性を示す(Kd=6.9nM=6.9×10−9M)。ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89−t0という)への結合親和性を示すことを、黒丸で示し、この変異体が、ネガティブコントロール(6789−t0という)には結合しないこと(白丸)と比較する。
【0166】
図7は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。1041−D11は、可溶性67B89のIC50:140nMで、固定化された67B89から解離し、1041−D11の結合が、conc−ELISA設定で用いられた疎水性表面への固定化に起因するED−B構造の劣化によるものではないことを示している。
【0167】
図8は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。種々の濃度(図中の説明:0〜200nM 1041−D11)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、SAチップ(Biacore)に固定化された、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89という)への結合を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、1nM(1×10−9M)であり、koff率は、7.7×10−4s−1であり、1041−D11とED−Bとの複合体の半減期が長いことを示す。
【0168】
図9は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。マウス血清もしくはラット血清またはコントロールとしてのPBST中での、37℃で1時間での前記変異体のプレインキュベーション等の、種々の条件を示す。Kd値は、すべて10〜20nMである。したがって、ED−Bへの前記ヘテロ二量体1041−D11の結合は、血清による顕著な影響を受けないと結論付けることができる。
【0169】
図10は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【0170】
図10Aは、1041−D11とED−Bとの複合体形成を示す。3回のHPLCのランを重ねている。SE−HPLC後の、保持時間21.651分の青色のピークは、純粋な1041−D11に由来し、保持時間26.289分の黒色のピークは、フィブロネクチンフラグメント67B89を表し、保持時間21.407分の赤色のピークは、1041−D11と67B89との混合物の結果を示す。1041−D11のピークの保持時間が短くなる側へのシフト、および、67B89のピークの消失は、1041−D11と可溶性ED−Bとの複合体の形成を示す。
【0171】
図10Bは、1041−D11(青色、21.944分)、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789(黒色、26.289分)、および1041−D11と6789との混合物(21.929分および26.289分にピークを有する赤色線)に関する3回のSE−HPLCのランを重ねて示す。前記1041−D11のピークのシフトは、ほとんど観察されなかった。6789のピークが消失しなかったこととあわせて、この事実は、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789に、有意に結合しないことを示す。
【0172】
図11は、ED−B結合変異体のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。ED−Bへの驚くほど強力な結合親和性を有することが見出された、16種類の代表的なヘテロ二量体の配列を示す。前記コンセンサスアミノ酸部位は、前記第1単量体の結合決定領域である、2、4、6、62、63、64、65、66位である。一方、コンセンサスアミノ酸置換は、Q2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sである。
【0173】
図12は、6種類のユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質の配列アライメントを示す。前記第2ユビキチン単量体は、89位(1111−B4、1111−C9)または80位(1111−E10、1111−F6、1111−H12、1111−H2)のメチオニンから開始される。
【0174】
図13は、結合決定領域BDR1およびBDR2、ならびに、図12に示すユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質のリンカーのアライメントを示す。さらに、ユビキチン配列における追加のアミノ酸交換を示す。
【0175】
図14は、ビオチン化MIA−2(biot.MIA2)への、図12に示す結合変異体1111−E10についての、濃度依存性ELISAを示す。Kd=2.6μM(黒丸)であり、コントロールはヒト血清アルブミン(HSA)とした(白丸)。
【0176】
図15A:第1および第2単量体ユビキチンユニットの連続する分子におけるアミノ酸残基を修飾し、配列アライメントを行って、最も強力な結合部位を評価した。パートAは、第1単量体修飾ユビキチンユニットの配列情報を、パートBは、第2単量体修飾ユビキチンユニットの配列情報を示す。
【0177】
図15B:第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66、68位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0178】
図15C:ヘテロ二量体ユビキチン変異体SPWF−15_6−A12の、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。結合タンパク質SPWF−15_6−A12は、非常に高い親和性でTNFαに結合する(Kd=12nM=1.2×10−8M)。図15Cは、ヒトTNFαに対する高親和性結合を示し(黒丸)、コントロールはBSAとした(白丸)。
【0179】
図15D:TNFαに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの配列を示す。第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0180】
図15E:前記ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thの、ヒトTNFαへの結合についての濃度依存性ELISAを示す。結合タンパク質SPWF−15_16−D4_Thは、非常に高い親和性でTNFαに結合する(Kd=1.7nM=1.7×10−9M)。図15Eは、ヒトTNFαに対する結合を示し(黒丸)、コントロールはウシ血清アルブミン(BSA)とした(白丸)。
【0181】
図16は、修飾ユビキチンベースのヘテロ二量体のNGFへの結合を示す。
【0182】
図16A:NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−1B7−thの配列を示す。第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66位、および51位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0183】
図16B:濃度依存性ELISAにより、Kd0.9μΜ=9×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかる。図16Bは、組換えヒトNGF(rhNGF;黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSAとした(白丸)。
【0184】
図16C:NGFに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPWF9−6A2−thの配列を示す。第1ユビキチン単量体の2、4、6、62〜66位と、第2単量体の6、8、62、64〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0185】
図16D:濃度依存性ELISAにより、Kd180nM=1.8×10−7Mの高親和性でNGFへ結合することがわかる。図16Dは、組換えヒトNGF(rhNGF;黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSAとした(白丸)。
【0186】
図17:ヘテロ二量体IgG結合タンパク質を示す。
【0187】
図17A:IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−16B2−tsの配列を示す。第1ユビキチン単量体の6、62、63、65、66位と、第2単量体の6、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0188】
図17B:濃度依存性ELISAにより、Kd3.8μMの親和性でIgGへ結合することがわかる。図17Bは、IgG(黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSA−1、BSA−2、およびEnbrel(赤丸、緑丸、および青丸、適合線なし)とした。Enbrelは、ヒトIgG1のFc部分を有する。Enbrelへの弱い結合は、SPVF4−16B2−tsのIgGのFab部分への結合を示唆している。
【0189】
図17C:IgGに対して特異性を有する、ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質SPVF4−9C6−tsの配列を示す。第1ユビキチン単量体の6、8、62〜66位と、第2単量体の6、8、62〜66位が修飾されている。前記2つのユビキチン単量体間のリンカーは「SGGGGSGGGGIG」である。
【0190】
図17D:濃度依存性ELISAにより、Kd4.1μMの親和性でIgGへ結合することがわかる。図17Dは、IgG(黒丸)に対する結合を示し、コントロールはBSA(白丸)およびエタネルセプト(商品名:エンブレル)(赤丸、適合線なし)とした。エンブレルは、ヒトIgG1のFc部分を有する。エンブレルへの弱い結合は、SPVF4−9C6−tsのIgGのFab部分への結合を示唆している。
【実施例】
【0191】
下記実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものである。本発明は、特に、ユビキチンの修飾を例にあげて実証されている。ただし、本発明は、これに限定されず、下記実施例は、単に、前述の記載に基づいた本発明の実施可能性を示しているにすぎない。本発明の完全な開示のため、本願および付属書類に引用されている文献についても言及しているが、これらの引用文献は全て、引用により、その開示全体が本願に取り込まれている。
【0192】
[実施例1]
修飾ユビキチンタンパク質に基づくヘテロ二量体ED−B結合タンパク質の同定
【0193】
ライブラリーの構築とクローニング
特に示さない限り、例えば、Sambrook et alに記載されているような、確立された組換え遺伝学的手法を使用した。
【0194】
合計15の選択されたアミノ酸部位における協調した変異誘発によって、高度な複雑性を有するヒトユビキチンヘテロ二量体のランダムライブラリーを用意した。NNKトリプレットによって置換された修飾アミノ酸は、第1ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸、および第2ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸を含む。両ユビキチン単量体は、少なくともGIG配列、または少なくともSGGGG配列を有するグリシン/セリンリンカーによって遺伝的に結合(ヘッドトゥテイル配置)しており、リンカー配列の例としては、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIG(配列番号32)またはSGGGGSGGGGがあげられるが、その他のリンカーでもよい。
【0195】
TATファージディスプレイ選択
ヘテロ二量体ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてTATファージディスプレイを使用し、ターゲットに対して濃縮した。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットは、タンパク質結合表面上に、またはタンパク質に共有結合されたビオチン化残基を介して、非特異的に固定化され得る。ビオチンを介するストレプトアビジンビーズまたはニュートラアビジンストリップ上への固定化が好ましい。ターゲット結合ファージは、溶液中または固定化ターゲット上のいずれかにおいて選択される。例えば、ビオチン化され固定化されたターゲットとファージとを、インキュベートし、続いて、マトリックスに結合したファージの洗浄およびマトリックス結合ファージの溶出を行う。ターゲットのインキュベーションに続く各サイクルにおいて、前記ビーズを磁力により溶液から分離し、数回洗浄した。1〜3回目の選択サイクルにおいて、ターゲットを担持した磁気ビーズに固定化された三元複合体を洗浄した。4回目の選択サイクルにおいて、洗浄を数回行った。最初の選択サイクルにおいて、ビオチン化ターゲットを、ニュートラアビジンストリップに固定化し、一方、2回目から4回目のサイクルにおいて、溶液における選択を行い、続いて、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)上に、ターゲットとファージとの複合体を固定化した。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、前記ビーズを再度磁力により溶液から分離し、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のファージを、酸性溶液での溶出により遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のファージ溶出を行った。溶出したファージを再増幅した。バインダーの特異性を誘導するため、選択に際し、ターゲットに類似するタンパク質を含めてもよい。
【0196】
TATファージディスプレイ選択の代替:リボソームディスプレイ選択
ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてリボソームディスプレイを使用して、ターゲットに対して濃縮した(Zahnd et al., 2007、Ohashi et al., 2007)。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットを、標準的な方法によってビオチン化し、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)に固定化した。リボソーム、mRNAおよび新生ユビキチンポリペプチドを含む三元複合体を、PURExpress(登録商標) In Vitro Protein Synthesis Kit(NEB社製)を用いて構築した。選択の一次ラウンドを2回行い、三元複合体をインキュベートし、続いて、類似する選択のラウンドを2回行った。ターゲットインキュベーションに続く各サイクルにおいて、ビーズを磁力により溶液から分離し、ストリンジェンシーを増加させながら、リボソームディスプレイバッファーで洗浄した。1〜3回目の選択サイクルにおいて、ターゲットを担持した磁気ビーズに固定化された三元複合体を洗浄した。4回目の選択サイクルにおいて、洗浄を数回行った。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、前記ビーズを再度磁力により溶液から分離し、50mM EDTAの添加により、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のmRNAをリボソームから遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のmRNAの溶出を行った(Lipovsek and Pluckthun, 2004)。各サイクルの後、RNeasy MinElute Cleanup Kit(Qiagen社製、ドイツ)、Turbo DNA−free Kit(Applied Biosystems社製、アメリカ)、およびTranscriptor Reverse Transcriptase(Roche社製、ドイツ)を用いて、RNAの精製とcDNAの合成を行った。
【0197】
濃縮プールのクローニング
4回目の選択サイクルの後、合成cDNAを、当該技術分野において公知の方法であるPCRで増幅し、適切な制限ヌクレアーゼで切断し、適合性付着端を介して発現ベクターpET−20b(+)(Merck社製、ドイツ)に連結した。
【0198】
単一コロニーのヒット解析
NovaBlue(DE3)細胞(Merck社製、ドイツ)への形質転換の後、アンピシリン耐性単一コロニーを培養した。自己誘導培地(Studier、2005)を用いた、96ディープウェルプレート(Genetix社製、イギリス)での培養により、ターゲットに結合する修飾ユビキチンを発現させた。細胞を回収し、その後、溶解した。遠心分離した後、得られた上清を、ターゲット、およびセイヨウワサビペルオキシダーゼ(POD)とのユビキチン特異的FabフラグメントコンジュゲートでコートしたELISAによりスクリーニングした。検出試薬としてTMB−Plus(Biotrend社製、ドイツ)を用いた。0.2M H2SO4溶液を用いて、黄色を発色させ、プレートリーダーにおいて450nmと620nmを測定した。
【0199】
数サイクルの選択ディスプレイを、ターゲットに対して行った。最後の2サイクルの選択において、結合分子を、過剰量の遊離ターゲットを用いて溶出した。
【0200】
例えば、46H9(配列番号6)、9E12(配列番号7)、22D1(配列番号8)、1041−D11(図5)(配列番号33)、1045−D10(配列番号34)等の、前記ターゲットED−Bに対するヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質を同定した。また、例えば、その他のターゲットに対するヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質、例えば、ターゲットMIA−2結合タンパク質1111−E10(図12)(配列番号53)、ターゲットTNFα結合タンパク質SPWF−15_6−A12(図15B)(配列番号57)およびSPWF−15_16−D4(図15D)(配列番号90)、ターゲットNGF結合タンパク質SPWF9−1B7−th(図16A)(配列番号91)およびSPWF9−6A2−th(図16C)(配列番号92)、ならびにターゲットIgG結合タンパク質SPVF4−16B2−ts(図17A)(配列番号93)およびSPVF4−9C6−ts(図17C)(配列番号94)を同定した。
【0201】
野生型ユビキチン単量体(Ubi monomer wt)と、野生型ユビキチン二量体(ubi dimer wt)、野生型ユビキチンタンパク質(図5におけるUb2−TsX9、各単量体の45位の置換およびC末端に2つの置換を有する)、および修飾ユビキチンヘテロ二量体変異体1041−D11との配列アライメントを、図5に示す。デユビキチナーゼは、ユビキチンのGGの後ろを切断し、AAの後ろを切断しないため、Ub2−TsXにおいて、前記単量体のC末端の置換(GGからAA)は、血清における安定性を増加させる。野生型ユビキチンの二次構造は、前記C末端における置換を有するユビキチンと比較して、ほぼ同一である。
【0202】
1041−D11(図X、配列番号36)または1045−D10と呼ばれる、優れたED−B結合親和性を有する修飾ユビキチンは、野生型と比較して、後述のアミノ酸置換によって同定される。
第1モジュール
K6W、L8W、K63R、E64K、S65F、T66P
第2モジュール
K6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65W、T66E
任意に、Q2R(当該置換は、変異体1041−D11に存在し、変異体1045−D10には存在しない)
融合タンパク質に適した好ましいリンカーは、少なくともGIG配列を有するリンカーまたは少なくともSGGGG配列を有するリンカー、あるいは、例えばGIG配列、SGGGG配列、SGGGGIG配列、SGGGGSGGGGIG配列、またはSGGGGSGGGG配列を有するその他のリンカーが挙げられる。ただし、代わりに使用できる、多くのリンカーが考えられる。第1単量体結合決定領域においてコンセンサス配列を有する、さらに別のEDBバインダーを、図11に示す。
【0203】
優れたMIA−2結合活性を有する修飾ユビキチンを、図12〜14に示す。
【0204】
優れたNGF結合活性を有する修飾ユビキチンを、図16に示す。
【0205】
優れたTNFα結合活性を有する修飾ユビキチンを、図15に示す。
【0206】
優れたIgG結合活性を有する修飾ユビキチンを、図17に示す。
【0207】
[実施例2]
修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体のヒトターゲットに対する結合分析
【0208】
実施例2A:濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースの結合変異体の結合分析
ユビキチンベースの変異体のヒトターゲットに対する結合を、濃度依存ELISAによって分析した。精製タンパク質を、ヒトターゲット、BSAまたはHSA、および考えられるその他のコントロール(ターゲットとしてED−Bを用いた場合には、細胞フィブロネクチン(cFN)等)でコーティングされた複数のNUNC−medisorpプレートに、量を増加させてアプライした。ウェルあたり50μlのタンパク質溶液(10μg/ml)での抗原コーティングを、4℃で一晩行った。前記プレートを、0.1% Tween20を含むPBS(pH7.4;PBST)で洗浄した後、前記ウェルを、室温で2時間、ブロッキング溶液(PBS pH7.4;3% BSA;0.5% Tween20)を用いてブロッキングした。前記ウェルを、PBSTでさらに3回洗浄し、次いで、PBSで3回洗浄した。コーティングされたウェルを、異なる濃度のターゲット結合タンパク質で、室温で1時間インキュベートした。PBSTで前記ウェルを洗浄した後、抗ユビキチンfabフラグメント(AbyD)PODコンジュゲートを、PBSTに適切に希釈して、アプライした。前記プレートを、PBSTで3回洗浄した。50μlのTMB基質溶液(KEM−EN−Tec)を各ウェルに加え、15分間インキュベートした。0.2M H2SO4を加えて反応を停止させた。前記ELISAプレートを、TECAN Sunrise ELISA−Readerを用いて読み取った。参照波長を620nmとして、450nmで吸光光度測定を行った。図6は、変異体1041−D11のED−Bに対する非常に高い結合親和性を示す(Kd=6.9nM)。このことは、図14、15、16、17に示す結果により、他のターゲット分子であるMIA−2、TNFα、NGF、およびIgGについてもそれぞれ確認されている。このように、野生型ユビキチンにおけるわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)により、所定のターゲットに対する、低いマイクロモーラー(M)の範囲の親和性がもたらされる。
【0209】
実施例2B:競合的濃度依存ELISAによる、修飾ユビキチンベースの結合変異体の結合分析
本実施例では、ターゲットED−Bに関する結合分析について述べるが、この結合分析は、これ以外の任意のターゲットについても、さらに実験を行うことなく使用できる。競合的濃度依存ELISAにより、量が増加する遊離のターゲットの存在下、フィブロネクチンフラグメント(67B89)を含む固定化ED−Bに対するユビキチン変異体1041−D11の結合を分析した。ELISAの条件は、1041−D11タンパク質を、ED−B(67B89)(0μM〜10μM)、またはネガティブコントロール6789(0μM〜10μM)で、1時間プレインキュベートし、その後、その混合物を、Medisorp−plate上に配置したターゲット67B89に添加した以外は、実施例2Aで述べたとおりである。これに続き、前記変異体を、対応する抗体によって検出した(抗ユビキチン−Fab−POD;希釈度1:6500)。
【0210】
図7は、変異体1041−D11が、ED−Bに対して非常に高い結合親和性を有することを示す(IC50=140nM)。図6に示した結果が裏付けられている。すなわち、野生型ユビキチンにおけるわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)のみにより、ED−Bに対する非常に高い結合親和性がもたらされる。
【0211】
実施例2C:結合活性の血清安定性を同時に分析する、濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当該技術分野における公知の方法により、前述(実施例2Aおよび2B)と同様に、ELISAを行った。ED−B(67B89ともいう)を、マイクロタイタープレートにコーティングし、前記変異体を、ED−Bに結合させ、特異的ユビキチン抗体(抗ユビキチン−Fab−POD)により検出した。この分析において、前記変異体は、異なる方法で処理した。すなわち、前記変異体を、37℃で1時間、マウス血清中でインキュベートする処理(図9参照、青丸)、前記変異体を、37℃で1時間、ラット血清中でインキュベートする処理(図9、赤丸)、または、前記変異体を、37℃で1時間、PBSでインキュベートする処理(図9、黒丸)である。図9、変異体1041−D11の全てのKdが、10.3nM(PBS)から20.74nM(マウス血清)の間にあることを示す。
【0212】
実施例2D:Biacore分析による修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当業者に公知の方法を用いて、CM5チップ(Biacore)に固定化したフィブロネクチンフラグメント(67B89という)を含むED−Bに対する結合について、前記変異体を異なる濃度で分析した(例えば、0〜200nMの変異体、好ましくは1041−D11)。得られたデータは、BIA評価ソフトウェアおよび1:1−Langmuir−fittingにより処理した。図8に示すように、変異体1041−D11のKDは、1.0nMであった。結合速度定数は、kon=7.6×105M−1s−1、koff=7.7×10−4s−1であった。融合タンパク質1041−D11−TNFαのKDは、1.13nMであった。結合速度定数は、kon=4.5×105M−1s−1、koff=5.0×10−4s−1であった。
【0213】
実施例2E:SE−HPLCによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の複合体構造の分析
複合体構造の分析のために、Tricorn Superdex75 5/150 GLカラム(GE−Healthcare社製)(V=3ml)を使用し、50μlのタンパク質をアプライした。さらなる条件は、バッファー:1×PBS(pH7.3)、流速:0.3ml/分、ラン:45分(サンプルの注入:15分後)とした。条件:0.72nmol 1041−D11タンパク質+0.72nmol ED−B(以下、67B89という)またはネガティブコントロールのフィブロネクチン(以下、6789という)を、室温で1時間インキュベートし、複合体構造を分析するために、カラムにアプライした。図10は、前記変異体のみを黒で示し、ターゲットED−Bのみを青で示し、ED−Bとの複合体を構成する変異体結合をピンクで示す。図10Aは、前記変異体とED−B含有フィブロネクチン(67B89)とを示す。図10Bは、前記変異体とED−Bフリーのフィブロネクチンとを示す。図10は、変異体1041−D11が、ED−B(67B89)と複合体を構築するが、フィブロネクチン(6789)とは複合体を構築しないことを示し、特異性を裏付けている。
【0214】
[実施例3]
TNFαへの結合性が向上したユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質
【0215】
TNFαに対して特異的なユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質を、本発明の方法により選択した。すなわち、TNFαに対する結合性能に基づいてスクリーニングされたヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質群を含むファージライブラリーを確立した。下記の修飾を行った。
【0216】
第1単量体:2、4、6、62〜66位、任意に追加で68、70、72〜74位のうちの1以上、任意にさらに別の位置の1以上のアミノ酸の修飾
【0217】
第2単量体:6、8、62〜66位のうちの1以上のアミノ酸の修飾
【0218】
1144−D11(配列番号79)および1144−E9(配列番号80)を除き、ほとんどの場合、リンカーとしてSGGGGSGGGGIGを使用した。1144−D11および1144−E9に関しては、第1および第2ユビキチン単量体間にリンカーを使用しなかった。75および76位は、AAまたはGGである。前記リンカーを、図15のパートAに示す。結合親和性を、図15B〜15Eに示す。
【0219】
[実施例4]
MIA2への結合性が向上した、ユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質の生成
【0220】
MIA2は、特に、肝硬変、線維症、および肝臓癌に関する診断および治療用のマーカーである。このマーカーに関する詳しい情報は、米国特許第2004076965号明細書中に見出せる。
【0221】
本発明の修飾ユビキチン結合タンパク質のターゲットタンパク質は、MIAのコア領域である安定した101個のアミノ酸からなり、ここではSPR30−3という。SPR30−3は、MIA−2の構造化された部分である。SPR30−3は、シグナルペプチドを除く、MIA(CD−RAP)、OTOR、TANGOと相同的である。その分子量は、11569.198Daである。
【0222】
前記MIA−2のコア領域のアミノ酸配列は、以下の通りである(配列番号95)。
MLESTKLLADLKKCGDLECEALINRVSAMRDYRGPDCRYLNFTKGEEISVYVKLAGEREDLWAGSKGKEFGYFPRDAVQIEEVFISEEIQMSTKESDFLCL
【0223】
MIA2に特異的なユビキチンベースのヘテロ二量体結合タンパク質を、本発明の方法により選択した。MIA2に対する結合性能に基づいてスクリーニングされたヘテロ二量体修飾ユビキチン結合タンパク質群を含むファージライブラリーを確立した。下記の修飾を行った。結果を以下に示す。
【0224】
図13は、ユビキチンベースのヘテロ二量体MIA2結合タンパク質のアライメントを示す。
【0225】
変異体1111−E10は、マイクロモーラーの範囲でのビオチン化ターゲットへの親和性と、サイズ排除クロマトグラフィーにおける複合体形成とを示す。最も強力なバインダーは、第1単量体ユビキチンユニット(BDR1)の6、8、62、63、64、65、66位におけるアミノ酸が置換され、第2単量体ユビキチンユニット(BDR2)の6、8、62、63、64、65、66位において異なる置換がなされた1111−El0である。
【0226】
第1単量体ユビキチンユニット(BDR1)における置換は、1111−H2および1111−H12では同様である。したがって、変異体1111−H2および1111−H12は、1つのアミノ酸の置換のみが相違するBDR1とBDR2との組み合わせと考えられる。
【0227】
下記のさらなる強力な結合分子、1111−C9、1111−B4および1111−F6を評価した。これらのバインダーは、不溶性であるか、あるいは、ELISAおよびSECにおいて、MIA2のSPR30−3に対して結合を示さなかった。変異体1111−E10および1111−C9のそれぞれと、1111−B4とを濃縮した(1111−B4において、さらなる置換T9Aが数回発生した)。1111−F6は濃縮しなかったが、Hit−ELISAにおいて高いシグナルを示すことから、興味深い候補であると考えられた。しかしながら、このバインダーは、不溶性のようであった。
【0228】
図14は、ビオチン化MIA−2(biot.MIA2)に対する結合変異体1111−E10についての濃度依存性ELISAを示す。Kd=2.6μMであり(黒丸)、コントロールはHSA(白丸)である。この変異体1111−E10は、MIA2に対する最良の結合分子であることが証明された。その配列は、下記の通りである。
MQIFVETFTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIGWHPELHLVLRLRGGGIGMQIFVRTETGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNILMGYVLHLVLRLRAA(配列番号53)
【0229】
使用したリンカーを、添付の配列表において、以下のように示す。
1111−B4_21231 sggggsggggig (配列番号96)
1111−C9_21265 sggggsggggig (配列番号96)
1111−E10_21315 gig
1111−F6_21331 gig
1111−H12_21391 eig
1111−H2_21371 gig
【0230】
刊行物
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の同定方法。
a)単量体修飾ユビキチンタンパク質から生じるヘテロ多量体修飾ユビキチン群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つ以上のユビキチン単量体を含むヘテロ多量体タンパク質を含み、
前記ヘテロ多量体タンパク質に含まれる前記単量体の少なくとも1つは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位に位置する表面露出アミノ酸の少なくとも3個が、少なくとも置換により異なる修飾がなされ、
前記修飾単量体タンパク質が、非修飾のユビキチンタンパク質に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する配列を有する、前記工程
b)前記異なる修飾がなされたタンパク質群に対する潜在的なリガンドを提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記リガンドと接触させる工程
d)スクリーニング処理により、ヘテロ多量体修飾タンパク質を同定する工程であり、
前記ヘテロ多量体修飾タンパク質は、前記リガンドと、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程、および
任意に、
e)前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンを、前記結合親和性で単離する工程
【請求項2】
前記ヘテロ多量体タンパク質が、ヘテロ二量体タンパク質またはヘテロ三量体タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記修飾単量体タンパク質は、1以上のアミノ酸が挿入され、挿入アミノ酸数が合計で1〜10個であり、および/または、1以上のアミノ酸が欠失され、欠失アミノ酸数が合計で1〜7個であり、さらに任意に、前記修飾単量体ユビキチンタンパク質は、6個以上14個以下のアミノ酸が置換され、
前記修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質は、合計で12個以上28個以下のアミノ酸が置換され、および/または、合計で1個以上20個以下のアミノ酸が挿入され、および/または合計で1個以上14個以下のアミノ酸が欠失されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記修飾単量体ユビキチンタンパク質が、ユビキチンをコードするDNAを遺伝子工学的に設計し、前記タンパク質を原核生物もしくは真核生物内またはin vitroで発現させることにより得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多量体タンパク質が、in vitro選択法によって提供され、前記in vitro選択法が、好ましくはディスプレイ法であり、任意に、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、TATファージディスプレイ法、酵母ディスプレイ法、細菌ディスプレイ法、細胞表面ディスプレイ法またはmRNAディスプレイ法である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リガンドが、抗原またはハプテンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記単量体ユビキチンタンパク質の少なくとも1つにおいて、さらに追加で1〜7個のアミノ酸が置換され、
これらのアミノ酸は、任意に、配列番号1の36、44、70、および71位の1以上のアミノ酸から選択され、
さらに、任意に、配列番号1の62、63および64位、72および73位、または8位を追加した1以上のアミノ酸から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ユビキチンのヘテロ多量体融合タンパク質群は、異なる修飾がなされた単量体タンパク質をそれぞれコードする2つのDNAライブラリーを遺伝学的に融合し、前記DNAをヘテロ多量体融合タンパク質に翻訳し、前記タンパク質をディスプレイし、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された単量体ユビキチンタンパク質を含むヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の存在下、前記ディスプレイされたタンパク質をスクリーニングすることによって提供され、前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質は、前記リガンドと、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示すタンパク質であるか、あるいは
前記ユビキチンのヘテロ多量体融合タンパク質群が、前記タンパク質の化学合成によって提供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
単量体ユビキチンから生じるヘテロ多量体ユビキチン融合タンパク質群をコードするDNAを含むDNAライブラリーであり、
各多量体タンパク質が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つ以上の修飾ユビキチン単量体を含み、
前記多量体タンパク質の各単量体の少なくとも2つは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位に位置する表面露出アミノ酸の少なくとも3個が、少なくとも置換により異なる修飾がなされ、
前記修飾単量体タンパク質が、非修飾タンパク質に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する配列を有する、DNAライブラリー。
【請求項10】
請求項9記載のDNAライブラリーの発現によって得られるタンパク質ライブラリー。
【請求項11】
請求項9記載のDNAライブラリー、または請求項10記載のタンパク質ライブラリーを含む、原核細胞もしくは真核細胞、またはファージ群。
【請求項12】
請求項10記載のタンパク質ライブラリーにおける融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項1】
以下の工程を含む、リガンドへの結合能を有するヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の同定方法。
a)単量体修飾ユビキチンタンパク質から生じるヘテロ多量体修飾ユビキチン群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つ以上のユビキチン単量体を含むヘテロ多量体タンパク質を含み、
前記ヘテロ多量体タンパク質に含まれる前記単量体の少なくとも1つは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位に位置する表面露出アミノ酸の少なくとも3個が、少なくとも置換により異なる修飾がなされ、
前記修飾単量体タンパク質が、非修飾のユビキチンタンパク質に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する配列を有する、前記工程
b)前記異なる修飾がなされたタンパク質群に対する潜在的なリガンドを提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記リガンドと接触させる工程
d)スクリーニング処理により、ヘテロ多量体修飾タンパク質を同定する工程であり、
前記ヘテロ多量体修飾タンパク質は、前記リガンドと、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程、および
任意に、
e)前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンを、前記結合親和性で単離する工程
【請求項2】
前記ヘテロ多量体タンパク質が、ヘテロ二量体タンパク質またはヘテロ三量体タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記修飾単量体タンパク質は、1以上のアミノ酸が挿入され、挿入アミノ酸数が合計で1〜10個であり、および/または、1以上のアミノ酸が欠失され、欠失アミノ酸数が合計で1〜7個であり、さらに任意に、前記修飾単量体ユビキチンタンパク質は、6個以上14個以下のアミノ酸が置換され、
前記修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質は、合計で12個以上28個以下のアミノ酸が置換され、および/または、合計で1個以上20個以下のアミノ酸が挿入され、および/または合計で1個以上14個以下のアミノ酸が欠失されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記修飾単量体ユビキチンタンパク質が、ユビキチンをコードするDNAを遺伝子工学的に設計し、前記タンパク質を原核生物もしくは真核生物内またはin vitroで発現させることにより得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多量体タンパク質が、in vitro選択法によって提供され、前記in vitro選択法が、好ましくはディスプレイ法であり、任意に、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、TATファージディスプレイ法、酵母ディスプレイ法、細菌ディスプレイ法、細胞表面ディスプレイ法またはmRNAディスプレイ法である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リガンドが、抗原またはハプテンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記単量体ユビキチンタンパク質の少なくとも1つにおいて、さらに追加で1〜7個のアミノ酸が置換され、
これらのアミノ酸は、任意に、配列番号1の36、44、70、および71位の1以上のアミノ酸から選択され、
さらに、任意に、配列番号1の62、63および64位、72および73位、または8位を追加した1以上のアミノ酸から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ユビキチンのヘテロ多量体融合タンパク質群は、異なる修飾がなされた単量体タンパク質をそれぞれコードする2つのDNAライブラリーを遺伝学的に融合し、前記DNAをヘテロ多量体融合タンパク質に翻訳し、前記タンパク質をディスプレイし、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された単量体ユビキチンタンパク質を含むヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質の存在下、前記ディスプレイされたタンパク質をスクリーニングすることによって提供され、前記ヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質は、前記リガンドと、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記リガンドに対して、一価の結合活性を示すタンパク質であるか、あるいは
前記ユビキチンのヘテロ多量体融合タンパク質群が、前記タンパク質の化学合成によって提供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
単量体ユビキチンから生じるヘテロ多量体ユビキチン融合タンパク質群をコードするDNAを含むDNAライブラリーであり、
各多量体タンパク質が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つ以上の修飾ユビキチン単量体を含み、
前記多量体タンパク質の各単量体の少なくとも2つは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68位に位置する表面露出アミノ酸の少なくとも3個が、少なくとも置換により異なる修飾がなされ、
前記修飾単量体タンパク質が、非修飾タンパク質に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する配列を有する、DNAライブラリー。
【請求項10】
請求項9記載のDNAライブラリーの発現によって得られるタンパク質ライブラリー。
【請求項11】
請求項9記載のDNAライブラリー、または請求項10記載のタンパク質ライブラリーを含む、原核細胞もしくは真核細胞、またはファージ群。
【請求項12】
請求項10記載のタンパク質ライブラリーにおける融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2D】
【図14】
【図2C】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2D】
【図14】
【図2C】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【公表番号】特表2013−513376(P2013−513376A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542583(P2012−542583)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069674
【国際公開番号】WO2011/073214
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501139870)シル プロテインズ ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Scil Proteins GmbH
【住所又は居所原語表記】Heinrich−Damerow−Str. 01, D−06120, Halle, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069674
【国際公開番号】WO2011/073214
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501139870)シル プロテインズ ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Scil Proteins GmbH
【住所又は居所原語表記】Heinrich−Damerow−Str. 01, D−06120, Halle, Germany
【Fターム(参考)】
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