リガンド免疫原複合体を用いる処置方法
【課題】サイトカインによる免疫付与効果を高めるリガンド免疫原コンジュゲートの提供。
【解決手段】下図に示される葉酸塩ーフルオレセインイソチオシアネート。
【解決手段】下図に示される葉酸塩ーフルオレセインイソチオシアネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性細胞集団の存在を特徴とする疾患の処置における使用のための方法および医薬組成物に関する。特に、細胞標的リガンド免疫原複合体を疾患宿主に、好ましくは免疫系促進物質などの治療因子と組み合せて投与し、病原性細胞に対する宿主の免疫応答を高めおよび/または再導する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の免疫系は、腫瘍細胞、他の病原性細胞、侵入する外来病原体を認識し、消失せしめる手段を提供する。免疫系は強い防衛線を普通提供するが、多くの場合に、癌細胞、他の病原性細胞、感染性物質が宿主の免疫応答を免れ、随伴的な宿主病原性をもち増殖または持続する。化学療法剤および放射線治療法が開発され、複製される腫瘍を消失せしめている。しかし、現在用いられている化学療法剤および放射線治療法の大部分は、そのすべてではないが、有害な副作用を持っている。すなわち、これらは、癌細胞の破壊に働くだけでなく、造血系細胞などの正常な宿主細胞にも作用する。さらに、化学療法剤は、宿主の薬物抵抗性が生じる場合には限定的な効力しか有しない。
【0003】
外来病原体も宿主中で有効な免疫応答を免れて増殖でき、あるいは宿主の免疫系が薬物治療または他の健康上の問題で傷められている。多くの治療化合物が開発されているが、多くの病原体がこの治療に対して抵抗性であり、また抵抗性をつくる。治療物質に対する抵抗性を発達させる癌細胞および感染性生物体の能力、および現在使用されている抗癌剤の有害な副作用からして、低い宿主毒性をもつ病原性細胞集団に特異的な新しい治療法を開発する必要性がある。
【0004】
研究者は、このような細胞に特異的に細胞毒性化合物を標的とすることにより癌細胞を破壊する治療プロトコールを開発してきた。これらのプロトコールは、癌細胞に独特の受容体または癌細胞により過剰に発現された受容体に結合するリガンドにコンジュゲートするトキシンを用いて、トキシンの正常細胞への配送を少なくしようとする。この方法を用いて、病原性細胞上の特殊な受容体に対する抗体からなるある種の免疫トキシンが開発されており、抗体はリシン、シュードモナス属エキソトキシン、ジフテリアトキシン、腫瘍壊死因子などのトキシンに結合している。これらの免疫トキシンは、抗体により認識された特異的受容体を保持する腫瘍細胞を標的とする(Olsnes,S.,Immunol.Today,10,291−295,1989;Melby,E.L.,Cancer Res.,58(8),1755−1760,1993;Better,M.D.,PCT公開WO91/07418,公開1991年5月30日)。
【0005】
宿主中の癌細胞または外来病原体の集団を選択的に標的とする他の方法は、病原性細胞に対する宿主の応答を高め、もって独立的な宿主毒性も示すことのある化合物の投与の必要性を回避することである。免疫療法について報告されているひとつの戦略は、抗体、例えば遺伝子学的に処理された多重的抗体を腫瘍細胞の表面に結合し、細胞表面上の抗体の定常領域を表示し、もって種々の免疫系仲介プロセスによって腫瘍細胞が殺されるのを誘発することである(De Vita,V.T.,Biologic Therapy of Cancer,2d ed.Philadelphia,Lippincott,1995;Soulillou,J.P.,米国特許5,672,486)。しかし、この方法は、腫瘍特異的抗原を明確にするのが難しく複雑である。宿主の免疫能力に基づく他の方法は、腫瘍表面に対する抗T細胞受容体抗体または抗Fc受容体抗体を標的にし、免疫細胞の腫瘍との直接結合を誘導する(Kranz.D.M.,米国特許5,547,668)。ワクチンを基とする方法も報告されている。これは、サイトカインに融合した抗原を含有するワクチンを基とし、ワクチン抗原の免疫原性を修飾するサイトカインを有し、もって病原体物質に対する免疫応答を刺激する(Pillai,S.,PCT公開WO91/11146,公開1991年2月7日)。この方法は、報告された免疫応答の間接的調節によっている。望ましくない細胞集団を殺すための別の方法は、IL−2または抗原に結合した抗胸腺細胞グロブリンのFab断片を利用する。しかし、報告された実験データからすると、この方法は、標的にされた細胞集団の50%のみを消失せしめるようであり、インビボで非特異的な細胞を殺す(すなわち、T細胞でない末梢血のリンパ球の50%)(Pouletty,P.,PCT公開WO97/37690,公開1997年10月16日)。このように、宿主における病原性細胞集団を特徴とする疾患状態の処置を目的とする治療について大きい必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第91/07418号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,672,486号明細書
【特許文献3】米国特許第5,547,668号明細書
【特許文献4】国際公開第91/11146号パンフレット
【特許文献5】国際公開第97/37690号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Olsnes,S.,Immunol.Today,10,291−295,1989
【非特許文献2】Melby,E.L.,Cancer Res.,58(8),1755−1760,1993
【非特許文献3】De Vita,V.T.,Biologic Therapy of Cancer,2d ed.Philadelphia,Lippincott,1995
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、病原性細胞集団に対する宿主の免疫系の認識および応答を増加することにより、宿主中の病原性細胞集団を消失せしめる方法に関する。効果的には、細胞性病原体の抗原性を増加して、内因性免疫応答の仲介で病原性細胞集団の消失を高める。この方法は細胞毒性または抗菌性治療剤の使用を避けるか、最小とする。本方法は、リガンド免疫原コンジュゲートの投与を含む。リガンドは、リガンド結合部分を特に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現するような病原性細胞集団に、インビボで特異的に結合できる。また、リガンドコンジュゲート免疫原は、抗体産生を誘発でき、より好ましくは、宿主動物において内因性または共投与の外因性の抗体により認識され得る。病原性細胞の免疫系仲介消失は、病原性細胞が独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現するような受容体やトランスポーターなどの表面提示タンパク質との免疫原コンジュゲートリガンドの結合により導かれる。病原性細胞が独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現するような表面提示タンパク質は、非病原性細胞上では存在しないか、少量でのみ存在する受容体であって、病原性細胞の選択的消失について手段を提供する。少なくとも1つの追加の治療因子、例えば、免疫系促進物質、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤を、宿主に共投与して、治療効率を高める。
【0009】
ひとつの実施態様において、本方法は、標的の病原性細胞集団上で独特的に発現されるか、優先的に発現されるか、過剰に発現される細胞表面タンパク質に、インビボで高い親和性特異的結合力をもつリガンドを投与する工程を含む。このリガンドは、宿主動物中にすでに存在しまたは誘発され得る先天性または獲得性の免疫に対する免疫原にコンジュゲートしている。選択的に、内因性免疫応答活性物質または細胞毒性化合物である治療因子の少なくとも1つを共投与する。
【0010】
好ましいひとつの実施態様において、本方法は、リガンド免疫原コンジュゲート組成物を投与することを含む。その場合、リガンドは葉酸または他の葉酸塩の受容体結合リガンドである。リガンドは共有結合などにより、宿主動物における抗体応答を誘発し得る免疫原に、さらに好ましくは、宿主動物における前存在の内因性抗体(先天性または獲得性の免疫の結果)または共投与の抗体(すなわち、受動免疫付与)に結合し得る免疫原にコンジュゲートしている。少なくとも1つの治療因子、リガンド免疫原複合体に特異的結合し得ないで、内因性免疫応答を促進または高め得る因子、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤を、リガンド免疫原コンジュゲートとともに宿主に共投与できる。
【0011】
本発明の他の実施態様において、病原性細胞集団(この病原性細胞集団のメンバーはリガンドについて接近可能結合部位を有する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、該宿主に、リガンドと免疫原との複合体を含むリガンド免疫原コンジュゲート組成物および治療因子を含む少なくとも1つの追加的組成物を投与する工程を含む。該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られているものである。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。
【0012】
本発明の他の実施態様において、病原性細胞集団(この集団はリガンドについて結合部位を発現する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、宿主に該リガンドと免疫原との複合体を含む組成物を投与すること、宿主に免疫原に対する抗体を投与すること、宿主に少なくとも1つの追加的治療因子を投与することを含む。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しない内因性免疫応答の促進物質よりなる群から選択する。
【0013】
本発明の他の実施態様において、病原性細胞集団(該集団が葉酸受容体を独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、宿主に免疫原の共有結合コンジュゲートを含む組成物を投与する工程を含む。該免疫原は、宿主動物おいて内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られているものである。葉酸またはその同族体を含むリガンドはグルタミル基を有す。免疫原との共有結合はグルタミル基のγ−カルボキシ基のみを介する。他の実施態様において、宿主に治療因子を含む少なくとも1つの追加の組成物を投与する。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様において、病原性細胞集団(該集団が葉酸受容体を独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、宿主に免疫原の共有結合コンジュゲートを含む組成物を投与する工程を含む。該免疫原は、宿主動物おいて内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られているものである。葉酸またはその同族体を含むリガンドはグルタミル基を有す。免疫原との共有結合はグルタミル基のα−カルボキシ基のみを介する。他の実施態様において、宿主に治療因子を含む少なくとも1つの追加の組成物を投与する。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。
【0015】
本発明のひとつの別の実施態様において、標的の病原性細胞集団は癌細胞集団である。他の実施態様において、標的の病原性細胞集団はウイルス感染内因性細胞である。他の実施態様において、標的の病原性細胞集団は細菌、マイコプラズマ酵母、真菌などの外因性生物体の集団である。リガンド免疫原コンジュゲートは、腫瘍細胞または病原性生物体の表面に結合し、標的の細胞集団の細胞メンバーを免疫原で「標識」し、もって標識された細胞集団に対する免疫仲介応答を起こす。受動免疫付与において宿主に投与された抗体または前存在の先天性または獲得性の免疫に由来する宿主に存在の抗体は、免疫原に結合して、内因性免疫応答を起こす。細胞結合リガンド免疫原コンジュゲートと抗体の結合は、補体仲介細胞毒性、抗体依存性の細胞仲介細胞毒性、抗体のオプソニン効果または食作用、抗体誘導受容体クラスター・シグナル伝達細胞の死または静止、細胞結合リガンド免疫原コンジュゲートに結合する抗体により促進される他の液性または細胞性免疫応答をもたらす。抗原が前もっての抗体オプソニン効果なしに免疫細胞により直接的に認識される場合、病原性細胞は直接殺される。
【0016】
外来の病原体または感染もしくは新生の外因性細胞の消失を、内因性免疫応答を促進し得る治療因子、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤を投与することによりさらに高め得る。ひとつの実施態様において、細胞毒性免疫細胞は、単離され、生体外で増やされ、宿主動物に注入される細胞毒性免疫細胞集団である。本発明の他の実施態様において、免疫促進物質を使用する。免疫促進物質は、IL−2、IL−12、IL−15などのインターロイキン、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどのIFNまたはGM−CSFであり得る。他の実施態様において、免疫促進物質は、IL−2、IL−12、IL−15などのサイトカインとIFN−α、IFN−β、IFN−γまたはGM−CSFとの組み合せ、あるいはこれらの効果的な組み合せ、あるいはサイトカインの他の効果的な組み合せを含むサイトカイン組成物であり得る。
【0017】
本発明の他の実施態様において、治療上有効な量のリガンド免疫原コンジュゲート、治療因子およびその薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。リガンド免疫原コンジュゲートは、宿主動物における病原性細胞集団に特異的に結合でき、先天性または獲得性の免疫応答、共投与された抗体による該細胞の特異的消失、または宿主における免疫細胞による該細胞の直接的な特異的消失を促進する。治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。ひとつの実施態様において、医薬組成物は、非経口的持続放出投与形態にある。他の実施態様において、治療因子は、IL−2、IL−12、IL−15などのインターロイキン、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどのIFNまたはGM−CSFよりなる群から選ばれる化合物を含む免疫促進物質またはこれらの組合せである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】肺腫瘍埋め込み体をもつマウスの生存に対する葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの効果を示す。
【図2】フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩による正常組織と腫瘍組織の影像を示す。
【図3】フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩またはフィコエリトリン標識ヤギ抗マウスIgGによる腫瘍組織の影像を示す。
【図4】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの固形腫瘍成長に対する効果を示す。
【図5】サイトカイン併用処置の効果を示す。
【図6】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの複数回注射の効果を示す。
【図7】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果を示す。
【図8】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果におけるNK細胞の関与を示す。
【図9】M109腫瘍細胞に対する細胞性免疫の発達を示す。
【図10】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIL−2投与の効果を示す。
【図11】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートおよびIL−2で処置したマウスの生存のIFN−αによる増大を示す。
【図12】葉酸塩標的の免疫治療に対するCD8+T細胞除去の効果を示す。
【図13】IL−2およびIFN−αにより高められた葉酸塩標的の免疫治療に対するGM−CSFの増加効果を示す。
【図14】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIFN−α投与の効果を示す。
【図15】葉酸塩標的の免疫治療に対する免疫原としてのジニトロフェニルの効果を示す。
【図16】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIFN−αの相乗効果を示す。
【図17】マウスの長期間生存に対する免疫原としてのジニトロフェニルと高濃度でのサイトカインの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、癌を有する宿主または病原性生物に感染した宿主の治療的処置についての方法を提供する。この方法は、病原性細胞を抗原性とし/標識とすることにより病原性細胞集団の免疫応答仲介による消失を高め、宿主免疫系によるその認識および消失をもたらす。この方法は、癌細胞または他の病原性物質に対して高い親和性結合を有するリガンド免疫原コンジュゲートを用いる。高い親和性結合は、リガンドに本来性であるか、化学的に修飾されたリガンドの使用により、またはリガンドとコンジュゲートに存在する免疫原との特定の化学的結合により、改変される(高められる)。本方法はまた、リガンド免疫原コンジュゲートと追加の治療因子を使用することによる組み合せ治療を利用して、病原性細胞集団の免疫応答仲介による消失を高める。治療因子は、内因性免疫応答を促進し得る物質、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞または抗菌剤である。
【0020】
本発明の方法を用いて、病原性細胞集団を保持する宿主動物における病原性細胞集団の内因性免疫応答仲介による消失を高める。本発明は、癌や感染性疾患などの種々の病原をもたらす病原性細胞集団に適用できる。病原性細胞集団は、腫瘍原性である癌細胞集団であり得る。これには良性腫瘍および悪性腫瘍が含まれる。また、非腫瘍原性でもあり得る。癌細胞集団は自然に、または宿主動物の生殖系に存在する変異または体細胞変異により生じる。あるいは化学的に、ウイルスにより、または放射線で誘導される。本発明を使用して、癌腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、ブルキット・リンパ腫、鼻咽頭癌腫、白血病、骨髄腫などの癌を処置できる。癌細胞集団は、限定でないが、口腔、甲状腺、内分泌器、皮膚、胃、食道、咽頭、膵臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、脳、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎、肝、肺の癌を含み得る。
【0021】
病原性細胞集団はまた、外因性病原体であるか、または外因性病原体、例えばウイルスを保持する細胞集団であり得る。本発明は、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマ、寄生虫などの病原体に適用できる。本発明で処置し得る感染性物質は、動物で病原となるすべての現技術で認識し得る感染性生物体であり、グラム陽性またはグラム陰性の球菌または桿菌などの細菌、DNAおよびRNAウイルスを含む。DNAウイルスは、限定でないが、パピロマウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスを、そしてRNAウイルスは、アレナウイルス、コロナウイルス、リノウイルス、呼吸系合胞体層ウイルス、インフルエンザウイルス、ピコルナウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルスを含む。特に興味があるのは、抗生物質耐性Streptococcus種やStaphylococcus種などの抗生物質に耐性の細菌、または抗生物質に感受性であるが抗生物質で処置後の再発感染を起こし耐性が生じるような細菌である。このような生物体を、本発明のリガンド免疫原コンジュゲートで、患者に通常投与するよりも低い量の抗生物質とともに処置して、これらの抗生物質耐性細菌株の成長を防止できる。
【0022】
本発明はまた、すべての真菌、マイコプラズマ種、寄生虫、または動物で疾患を起こす他の感染性生物体に適用できる。本発明方法で処置し得る真菌の例は、かびとして成長する真菌や酵母様の真菌、例えば、白癬、ヒストプラズマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、スポロトリコーシス症、コクシジオイドミセス症、パラコクシジオ−イドミセス症、カンジダ症などの疾患を起こす真菌を含む。
【0023】
本発明を用いて、寄生虫感染を処置できる。これには、限定でないが、体細胞条虫類、血中吸虫類、組織回虫、アメーバ、Plasmodium、Trypanosoma、Leishmania、Toxoplasma種などにより起こされる感染がある。特に興味ある寄生虫は、葉酸塩受容体を発現し葉酸塩に結合するものである。感染性生物体に高い親和性を示すリガンドについて多くの発表がある。例えば、抗生物質活性および細菌細胞壁前駆物に対する特異的結合について知られているペニシリンおよびセファロスポリンを、本発明での使用についてのリガンド免疫原コンジュゲートのためのリガンドとして同様に用い得る。本発明のリガンド免疫原コンジュゲートは、内因性病原体を保持する細胞集団を対象とする。そこでは、病原体特異的抗原が、病原体を保持する細胞集団の表面で発現され、リガンド受容体として抗原に特異的に結合するリガンドとともに働く。
【0024】
本発明の方法は、ヒト臨床医学および獣医学において使用できる。すなわち、病原性細胞集団を保持し、リガンド免疫原コンジュゲートで処置される宿主動物は、ヒトであり、また獣医学的適用では、実験動物、農業用動物、家畜、野生動物である。本発明を宿主動物に適用できる。これらの動物には、限定でないが、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)のような実験動物、ウサギ、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウサギなどの家畜、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの農業用動物、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、ゼブラ、キリン、ゴリラ、イルカ、クジラなどの野生動物がある。
【0025】
リガンド免疫原コンジュゲートを宿主動物に非経口的に、例えば、皮膚内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内に好ましくは投与する。あるいは、このコンジュゲートを宿主動物に他の医学的に有用な方法で投与する。いかなる有効量も、また持続放出投与形態を含む適当な治療用量形態を使用できる。本発明の方法は、腫瘍の外科的除去、放射線治療、化学療法、免疫療法などの生物学的治療法と併用できる。生物学的治療には、限定でないが、モノクローナル抗体治療法、免疫調節物質での処置、免疫エフェクター細胞の養子転移、造血性成長因子、サイトカインでの処置、ワクチン接種などがある。
【0026】
本発明にしたがって、リガンド免疫原コンジュゲートを、広い範囲のリガンドおよび免疫原から選択できる。リガンドは、病原性細胞上でリガンド結合をなし得るリガンド受容体を優先的に発現することにより、宿主動物における病原性細胞集団を特異的に消失せしめ得るものである。許容できるリガンドは、葉酸、その同族体、他の葉酸塩受容体結合分子、その他のビタミン、ライブラリー・スクリーニングから同定されるペプチド・リガンド、腫瘍特異的ペプチド、腫瘍特異的アプタマー、腫瘍特異的炭水化物、腫瘍特異的モノクローナルまたはポリクローナル抗体、抗体のFabまたはscFv(すなわち、単鎖可変領域)断片、例えばEphA2などの転移性癌細胞で特異的に発現され独自的に近接し得るタンパク質に対する抗体のFab断片、組み合せ的ライブラリーから誘導される小さい有機分子、成長因子、例えばEGF、FGF、インスリン、インスリン様成長因子、相同性ポリペプチド、ソマトスタチンおよびその同族体、トランスフェリン、リポタンパク質複合体、胆汁酸塩、セレクチン、ステロイドホルモン、Arg−Gly−Asp含有ペプチド、レチノイド、種々のガラクチン、γ−オピオイド受容体リガンド、コレシストキニンA受容体リガンド、アンギオテンシンAT1またはAT2受容体特異的リガンド、ペルオキシソーム増殖物質活性化受容体γリガンド、β−ラクタム抗生物質、抗菌剤を含む低有機分子、腫瘍細胞の表面または感染性生物体で優先的に発現された受容体に特異的に結合する他の分子またはこれらの分子の断片を含む。感染性生物体に結合するリガンドで興味深いのは、微生物に優先的に結合するのが知られているような分子、抗生物質などの薬剤である。
【0027】
本発明はまた、受容体などの細胞表面タンパク質の結晶構造に基づいて特定の受容体の結合ポケットに適合するように設計された抗菌剤などの分子であるリガンドに適用できる。その場合、該受容体は、腫瘍の表面、細胞、ウイルス、マイコプラズマ、真菌、寄生虫などの病原体で優先的に発現されるものである。本発明の好ましい実施態様において、腫瘍細胞の表面で優先的に発現される腫瘍抗原などの分子に結合するリガンドを使用できる。
【0028】
受容体などのタンパク質が病原性細胞集団上で優先的に発現されている受容体に特異的に結合し得るすべての分子についての受容体を含み得る。例えば、成長因子、ビタミン、オピオイドペプチドを含むペプチド、ホルモン、抗体、炭水化物、小さい有機物質を含む。結合部位は、微生物上で優先的に存在する既知のいかなる分子、例えば抗生物質などの薬剤についての結合部位である。例えば、対象結合部位は、ペニシリンなどのβ−ラクタム抗生物質についての細菌細胞壁における結合部位、またはウイルス表面に独自的に存在する抗ウイルス剤についての結合部位である。本発明はまた、受容体の結晶構造に基づいて受容体の結合部位に適合するように設計された抗菌剤などのリガンドに適用できる。その場合、該受容体は、病原体細胞または生物体の表面で優先的に発現されるものである。腫瘍特異的抗原は本発明方法においてリガンドについての結合部位として機能し得ると考える。リガンド免疫原コンジュゲートについての結合部位として機能し得る腫瘍特異的抗原の例は、EphA2などのエフリン・ファミリータンパク質の細胞外エピトープである。EphA2発現は正常細胞における細胞−細胞接合に限定されるが、EphA2は転移腫瘍細胞において全細胞表面に分布する。転移腫瘍細胞上のEphA2は、例えば免疫原にコンジュゲートした抗体のFab断片に結合のために接近し得、一方、このタンパク質は正常細胞上のFab断片に結合のための接近をなし得ないので、転移性癌細胞に特異的リガンド免疫原コンジュゲートが分かる。本発明はさらに、リガンド免疫原コンジュゲートの組み合せ使用を含み、獲得性または先天性の免疫応答または共投与の抗体による消失のために病原性細胞の標的化を最大にする。
【0029】
本発明での使用のために許容される免疫原は、宿主動物において抗体産生を起こし得る免疫原、宿主動物において以前から抗体産生を起こし前存在の免疫性をもたらす免疫原、または先天性免疫系の部分を構成する免疫原である。あるいは、免疫原に対する抗体を宿主動物に投与して受動免疫をつくる。本発明における使用に適する免疫原は、抗原または抗原性タンパク質であって、これらに対する前存在性の免疫性が、ポリオウイルス、破傷風、チフス、風疹、はしか、流行性耳下腺炎、百日せき、結核、インフルエンザの抗原、α−ガラクトシル基などの通常計画されるワクチン接種またはその自然曝露により生じるものである。そのような場合、リガンド免疫原コンジュゲートを用いて、外来性細胞または病原性生物体の消失のために、宿主動物における病原性細胞集団に対する前もって獲得された液性または細胞性の免疫をつくる。他の適当な免疫原は、非天然の抗原やハプテン(例えば、フルオレセインイソチオシアネートまたはジニトロフェニル)および先天性免疫が存在する抗原(例えば、スーパー抗原およびムラミルジペプチド)に対する免疫付与によって宿主動物が新しい免疫性を発達させるような抗原および抗原性ペプチドを含む。
【0030】
本発明のリガンドおよび免疫原は、複合体形成について既知の方法を用いて、コンジュゲートできる。これは、リガンドの免疫原に対する共有結合、イオン結合または水素結合を含み、直接的に、または2価リンカーなどの連結基を介して間接的に行い得る。コンジュゲートの典型的な形成は、複合体の各々の構成要素上の酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、ヒドラド基の間でのアミド、エステルまたはイミノ結合の形成を介してリガンドを免疫原に共有結合せしめることによる。本発明の好ましい実施態様において、リガンドは葉酸、その同族体または他の葉酸塩の受容体結合分子であり、葉酸塩リガンドの免疫原との結合はトリフルオロ酢酸無水物を用いプテロイルアジド中間体を介する葉酸のγ−エステルをつくる方法による。この好ましい方法により、葉酸塩のグルタミン酸のγ−カルボキシ基を介してのみ免疫原にコンジュゲートされた葉酸塩リガンドを合成でき、そこではγ−コンジュゲートが葉酸塩受容体に高い親和性で結合しており、α−コンジュゲートとγ−コンジュゲートの混合物との形成を回避できる。あるいは、純粋のα−コンジュゲートを、γ−カルボキシ基が選択的に遮断された中間体から作り得る。α−コンジュゲートの形成に続いて、当分野でよく知られている有機合成法を用いてγ−カルボキシ基の遮断を解く。特に他のビタミン類を、本発明におけるコンジュゲートをつくるためのリガンドとして用い得る。例えば、リガンド免疫原コンジュゲートを、葉酸と同様にビオチンおよびリボフラビンで作り得る(参照、米国特許5,108,921、5,416,016、5,635,382:出典明示により本明細書の一部とする)。
【0031】
本発明のリガンド免疫原コンジュゲートは、病原性細胞集団の内因性免疫応答による消失を高める。内因性免疫応答には、液性応答、細胞仲介免疫応答、宿主動物に対する内因性の他のすべての免疫応答があり、補体仲介細胞分解、抗体依存性細胞仲介細胞毒性(ADCC)、食作用に導く抗体オプソニン効果、アポトーシス、抗増殖または分化のシグナル伝達をもたらす抗体結合での受容体のクラスター化、分配された抗原/ハプテンの直接的免疫細胞認識を含む。内因性免疫応答が、免疫細胞の増加または移動などのプロセスを調節するサイトカインの分泌を用いることも考え得る。内因性免疫応答は、B細胞、ヘルパーおよび細胞毒性T細胞を含むT細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、LAK細胞などの免疫細胞型の関与を含み得る。
【0032】
液性応答は、通常計画されるワクチン接種、または天然抗原や非天然の抗原もしくはハプテン(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)で新規の免疫性を誘導する非天然抗原をもつ活性免疫付与などのプロセスにより誘導される応答である。活性免疫付与は、新しい免疫性を誘導するために、通常のワクチン接種外で計画された非天然の抗原またはハプテンの複数注射を含む。液性応答は、宿主動物がα−ガラクトシル基に対する免疫性などの天然にすでに存在する免疫性を有するような先天性免疫からも生じる。あるいは、受動免疫を、宿主動物に抗体を投与して作り得る。例えば、血清から集められた天然の抗体またはヒト化された抗体を含む遺伝子処理されまたはされていないモノクローナル抗体を投与する。受動免疫を起こすための抗体試薬の特定量の使用、および受動的に投与された抗体が免疫原に働くようなリガンド免疫原コンジュゲートの使用は、患者の前存在抗体力価が治療的に有用でない場合に使用される試薬の標準的セットの利点を提供する。受動的に投与される抗体は、リガンド免疫原コンジュゲートとともに「共投与」できる。共投与は、リガンド免疫原コンジュゲートの投与の前、同時、後での抗体の投与と定義する。
【0033】
前存在の抗体、誘導された抗体または受動的に投与された抗体は、リガンド免疫原コンジュゲートの、その侵略の細胞または生物体との優先的結合によって、腫瘍細胞または感染生物体に再動し、病原体細胞が補体仲介分解、ADCC、抗体依存性食作用、受容体の抗体クラスター化により殺されると考える。細胞毒性プロセスは、細胞仲介免疫などの他の型の免疫応答、および第2次応答も含み得る。この応答は、刺激された抗原提示細胞が、不必要な細胞および存在する天然腫瘍抗原または外来病原体の抗原を、抗原を保持する細胞または生物体の消失のために免疫系に食するときに生じる。
【0034】
治療因子を含む少なくとも1つの追加の組成物を、併用してまたは上記詳細の方法の補助として宿主に投与し、病原性細胞集団の内因性免疫応答による消失を高め得る。また1以上の追加の治療因子を投与できる。治療因子は、内因性免疫応答を促進し得る化合物、化学療法剤、抗菌剤、投与されたリガンド免疫原複合体の効力を補い得る他の治療因子から選択できる。本発明方法において、上記のコンジュゲートに加えて内因性免疫応答を促進し得る化合物または組成物を宿主に投与できる。それには、限定でないが、サイトカインまたは免疫細胞成長因子、例えば、インターロイキン1−18、幹細胞因子、塩基性FGF、EGF、G−CSF、GM−CSF、FLK−2リガンド、HILDA、MIP−1α、TGFα、TGFβ、M−CSF、IFNα、IFNβ、IFNγ、溶性CD23、LIFおよびこれらの組み合わせがある。
【0035】
これらのサイトカインの治療上有効な組み合せも使用できる。好ましい実施態様において、例えば、治療上有効な量のIL−2を、例えば複数回毎日療法において約5000〜500,000IU/用量/日で、およびIFN−αを、例えば複数回毎日療法において約7500〜150,000IU/用量/日で、葉酸結合のフルオレセインイソチオシアネートともに使用して、病原性細胞集団を保持する宿主動物における病原性細胞を無くする。他の好ましい実施態様においてIL−12およびIFN−αを治療上有効な量で用い、また別の好ましい実施態様においてIL−15およびIFN−αを治療上有効な量で用いる。別の好ましい実施態様においてIL−2、IFN−αまたはIFN−γをGM−CSFと併用する。好ましくは、IL−2、IL−12、IL−15、IFN−α、IFN−γ、GM−CSFなどの治療因子およびその組み合せは、ナチュラルキラー細胞および/またはT細胞を活性化する。あるいは、治療因子およびその組み合せは、インターロイキンのインターフェロンおよびGM−CSFとの組合せを含み、マクロファージ、B細胞、好中球、LAK細胞などの他の免疫エフェクター細胞を活性化し得る。本発明はまた、他のインターロイキンおよびインターフェロンの組合せを含むサイトカインおよびコロニー刺激因子の他の有効な組合せについての使用を含む。
【0036】
細胞毒性自体であり、腫瘍の透過性を高めるように働き、本発明方法での使用に適している化学療法剤は、下記のものを含む。アドレノコルチコイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、エストロゲン、サイトシン・アラビノシドなどの抗代謝物質、プリン同族体、ピリミジン同族体、メトトレキセート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチンおよび他の白金化合物、タモキシフェン、タキソール、シクロホスファミド、植物アルカロイド、プレドニソン、ヒドロキシウレア、テニポシド、マイトマイシンやブレオマイシンなどの抗生物質、ナイトロゲンマスタード、ニトロスレア、ビンクリスチン、ビンブラスチン、炎症性および炎症様物質、および当分野で認められている化学療法剤。本コンジュゲートの投与の補助として投与できる治療物質は、下記のものを含む。ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファンピン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド、ゲンタミシン、アムホテリシンB、アシクロビル、トリフルリジン、ガンシクロビル、ジドブジン、アマンタジン、リバビリン、および当分野で認められている抗菌化合物。
【0037】
病原性細胞集団の消失は、腫瘍塊または病原生物体の減少および消失を含み、治療的応答となるものである。腫瘍の場合、原発性の腫瘍細胞または原発性腫瘍から転移したか分離しつつある細胞の消失であり得る。外科的除去、放射線治療、化学療法、生物学的治療法などを含む治療手段により腫瘍の除去がなされた後に、腫瘍の再発を防ぐための予防的処置も本発明は含む。予防的処置は、複数回毎日療法での処置などのリガンド免疫原コンジュゲートによる最初の処置、および/または最初の処置に続く追加または連続の処置であり得る。
【0038】
本発明はまた、内因性免疫応答または共投与抗体による特異的消失のため宿主動物における病原性細胞集団を「標識」するのに効果的な量のリガンド免疫原コンジュゲートを含む医薬組成物に関する。この組成物はさらに、病原性細胞集団の消失を高めるのに有効な量の追加の因子を含む。それは、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。医薬組成物は、治療上有効な量のリガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を含有する。この因子は、IL−2、IL−12、IL−15などのサイトカイン、IL−2、IL−12、IL−15を含むサイトカインの組み合せ、IFN−αやIFN−γなどのインターフェロン、インターフェロンの組合せ、インターロイキン、GM−CSFなどのコロニー刺激因子を含み得る。
【0039】
リガンド免疫原コンジュゲートの一日単位用量は、宿主の状態、処置される病状、コンジュゲートの分子量、投与経路と組織分布、放射線療法などの他の治療処置との併用の可能性によって、大きく変り得る。患者に投与される有効な量は、体表面積、体重、患者の状態についての医師の判断が基になる。有効量は、約1ng/kg〜約1mg/kg、さらに好ましくは約1μg/kg〜約500μg/kg、最も好ましくは約1μg/kg〜約100μg/kgの範囲にあり得る。
【0040】
腫瘍細胞または感染生物体に対する既存の抗体を再動するために、または免疫原に対する液性応答を誘導するために、リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を投与する効果的な療法を使用できる。例えば、リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を単回用量で投与でき、または分けて複数回毎日療法として投与できる。さらに、いくぶん変えた療法、例えば毎週1ないし3日の療法を毎日の処置の代替として使用できる。本発明の目的からして、このような中間的なまたはいくぶん変えた療法は、毎日の処置と等価であり、本発明の範囲内にある。本発明の好ましい実施態様において、宿主をリガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子の複数回注射で処置して、病原性細胞集団を消失せしめる。ひとつの実施態様において、宿主にリガンド免疫原コンジュゲートを複数回(好ましくは約2回から約50回まで)、例えば12−72時間の間隔または48−72時間の間隔で注射する。リガンド免疫原コンジュゲートの追加の注射を患者に最初の注射後に日または月の間隔をおいて行うことができる。追加の注射は疾患の再発を防止する。あるいは、リガンド免疫原コンジュゲートの最初の注射が疾患の再発を防止できる。
【0041】
治療因子を宿主動物に、リガンド免疫原コンジュゲートの前、同時、後に投与でき、治療因子は、コンジュゲートを含有する同じ組成物の一部として、またはリガンド免疫原コンジュゲートと異なる組成物の一部として投与できる。治療因子を治療上有効な用量で含有するいかなる治療組成物も本発明において使用できる。さらに、2以上のリガンド免疫原コンジュゲートを使用し得る。例えば、フルオレセインイソチオシアネートおよびジニトロフェニルの両方で予め免疫付与し、次いで共投与プロトコールにおける同一または相違のリガンドに連結しているフルオレセインイソチオシアネートおよびジニトロフェニルで処置し得る。化学療法剤および抗菌剤の場合、併用治療におけるリガンド免疫原コンジュゲートとともに最適に次ぐ用量で投与して、宿主動物による化学療法剤および抗菌剤に対する抵抗性の発達を回避できる。
【0042】
リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子は、好ましくは非経口的に注射し、かかる注射は、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、鞘内の注射であり得る。リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子は、遅速ポンプを用いての配送もできる。非経口用量形態の例は、活性物質の等張塩類水溶液を含み、5%グルコースまたは液体アルコール、グリコール、エステル、アミドなどの周知の薬学的に許容される液体担体である。本発明の非経口用量形態は、リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を含む再製可能な凍結乾燥物であり得る。この好ましい実施態様おいて、いくつかの当分野で既知のいくつかの持続放出用量形態で投与できる。例えば、米国特許4,713,249、5,266,333、5,417,982(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のバイオ分解性炭水化物マトリクスである。
【実施例】
【0043】
実施例1
肺腫瘍埋め込み体をもつマウスの生存に対する葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの効果
6から8週齢雌Balb/cマウス(20〜22g)を、市販のアジュバント(例えば、フロイントアジュバントまたはTiter MaxTM−Gold)を用いるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ウシ血清アルブミン(BSA)を複数部位に皮下注射して、免疫付加した。抗FITC抗体力価がすべてのマウスで高いことを確認した後(マウスの血清サンプルについてのELISAアッセイによる)、各マウスに、5x105M109細胞、葉酸塩受容体を高レベルで発現する同系肺癌細胞を腹腔内注射した。癌部分を固着し成長にまかせた。癌細胞埋め込み4日および7日後に、すべてのマウスに、リン酸塩緩衝液(PBS)またはγ−カルボキシ連結エチレンジアミン・ブリッジを介して葉酸にコンジュゲートしている特定量のFITCのいずれかを腹腔内に注射した。注射した葉酸塩−FITCの濃度は、0(対照PBS)、4.5、45、450、4500nmモル/kgである。8匹に各濃度の葉酸塩−FITCを投与し、合計で40匹に注射した。免疫系を刺激するために、5000IUの組換えヒトIL−2を5日間(8から12日目)すべてのマウスに注射した。この免疫治療の効果を、葉酸塩−FITC処置マウスを対照マウスと比べて時間関数での生存を調べることで評価した。
【0044】
図1に示すように、葉酸塩−FITC処置マウスの生存の中央値は用量依存性であって、対照マウスの生存の中央値が腫瘍埋め込み後23日であるのに対し、コンジュゲートの用量を増加すると葉酸塩−FITC処置マウスの生存が長くなった。少量45nモル/kgの葉酸塩−FITCがマウスの長期間生存を促進するが、より高い量が比例的に大きい効果を有する。葉酸塩−FITCは腫瘍に集中するが、いくぶんの葉酸塩−FITCが腎組織に存在した(しかし、他の正常組織では匹敵するようなレベルでない)。腎および正常臓器における毒性は、資格ある獣医病理学者による剖検で認めなかった。
【0045】
実施例2
フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩による正常組織と腫瘍組織の影像
マウスに24JK−FBP腫瘍細胞を注射した以外は、実施例1と同様の方法である。葉酸塩−FITCを注射した後すぐにマウスを殺し、組織を薄切片にし、腫瘍を含む特定の組織、腎、肝、筋肉の組織について葉酸塩−FITCの所在を、共焦点蛍光顕微鏡を用いるFITC免疫蛍光で調べた。図2は、種々の組織切片を比較した顕微鏡写真を対照の蛍光顕微鏡写真とともに示す。葉酸塩−FITCは、腫瘍組織および葉酸受容体が非常に豊富である腎近位管細胞に特に局在していた。
【0046】
実施例3
フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩またはフィコエリトリン標識ヤギ抗マウスIgGによる腫瘍組織の影像
M109細胞を用いた以外は、実施例2と同様の方法である。FITC蛍光(緑の影像)、フィコエリトリン(PE)蛍光(赤の影像)により組織を調べた。PE蛍光のために、蛍光標識をヤギ抗マウスIgGに結合せしめ、内因性マウス抗FITC抗体の、腫瘍細胞に蓄積する葉酸塩−FITCコンジュゲートとの結合を調べた。葉酸塩−FITCで処理および未処理の腫瘍組織を比較し、両タイプのサンプルを、実施例2に記載ように位相差顕微鏡で調べた。FITC蛍光によると、腫瘍細胞への葉酸塩−FITCの局在がある(図3)。PE蛍光によると、内因性マウス抗FITC抗体が腫瘍細胞に局在の葉酸塩−FITCコンジュゲートに結合する。別の試験(示さず)によると、腎を含む正常細胞へのIgGなどの結合はない。腎組織に局在の葉酸塩−FITCへの抗体の結合がないことは、葉酸塩受容体が腎近位管細胞の先端膜にあると、抗体が腎領域に接近しないことから来る。位相差影像(変位像)は、処置および未処置の腫瘍組織の形態を示し、処置サンプルにおいて細胞死がある。
【0047】
実施例4
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの固形腫瘍成長に対する効果
FITCでの免疫付与の前に1x106M109細胞を各マウスの肩に皮下注射(0日目)した以外は、実施例1と同様の方法である。腫瘍細胞埋め込み後の葉酸塩−FITCによる免疫付与には、48時間間隔で6回(7、9、11、13、15、17日目)、1500nモル/kgの葉酸塩−FITCを腹腔内投与した。次いで肩の固形腫瘍を測定し、腫瘍の大きさの増加%を決めた。図4に表す腫瘍成長曲線によると、葉酸塩−FITCとIL−2との併用で処置されたマウスにおいて、固形腫瘍の成長が有意に阻止された。
【0048】
実施例5
サイトカイン併用処置の効果
5000IUの組換えヒトIL−2(8〜12日目の5日間)を、IFN−α(5日間2.5x104U/日注射)、IL−12(5日間0.5μg/日注射)またはTNF−α(8、10、12日目に3回、0.5μg/日注射)のいずれかとともに、腫瘍細胞埋め込み後の4および7日目での1500nモル/kgの葉酸塩−FITCまたはアミノフルオレセインとの投与に続き、マウスに与えた。他は実施例1の方法と同様である。さらに、長期間生存データを得るのに要する時間を短くするために、腫瘍細胞を肝の近くに腹腔内埋め込みをした。従って、腫瘍保持マウスの生存期間は、実施例1の場合に比して一般的に短い。図5に示す結果によると、マウスの長期間生存を促進するのに、IL−2単独は、IL−2とIL−12またはIL−2とTNF−αの併用処置に比して、より効果的である。一方、IL−2とIFN−αの併用処置は、マウスの長期間生存を促進するのに、IL−2単独よりも効果的である。対照としてアミノフルオレセインを種々のサイトカインの組合せとともに注射した。この化合物は葉酸塩と結合しないので、腫瘍細胞に対する抗フルオレセイン抗体を再標的としないからである。
【0049】
実施例6
葉酸塩フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの複数回注射の効果
48時間間隔で6回(腫瘍細胞埋め込み後の7、9、11、13、15、17日目)、1500nモル/kgの葉酸塩−FITCを腹腔内投与した以外は、実施例1と同様の方法である。結果を示す図6によると、葉酸塩−FITCの複数回注射が葉酸塩−FITCとIL−2で処置したマウスの長期間生存を、腫瘍細胞埋め込み後4および7日目に与えた葉酸塩−FITCの2注射に比して改善した。
【0050】
実施例7
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果
1500nモル/kgの葉酸塩−FITCをIL−2と併用、葉酸塩−FITCまたはIL−2の単独をマウスに注射した以外は、実施例1と同様の方法である。さらに、腫瘍細胞を実施例5に記載のように腹腔内に埋め込んだ。この実験によって(参照、図7)、葉酸塩−FITCとIL−2が腫瘍保持マウスの長期間生存を促進するのに相乗的に作用するかどうかを調べた。対照群(n=8)およびIL−2、葉酸塩−FITC、葉酸塩−FITC+IL−2での処置群についての生存時間の中間値は、それぞれ18、19、22、42日であった。図7に示す結果によると、腫瘍保持マウスの長期間生存を促進する葉酸塩−FITCとIL−2の能力は強く相乗的であり、低量のIL−2単独は葉酸塩−FITCを欠くとマウスの生存に負の作用であり、葉酸塩−FITCは小さい作用に過ぎなかった。
【0051】
実施例8
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果におけるNK細胞の関与
ポリクローナルウサギ抗マウスNK細胞抗体(anti−asialo GM1;Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Richmond,Va.)で、葉酸塩−FITCおよびIL−2と組み合せて、1群のマウスを処置した以外は、実施例7に記載の方法と同様に行った。NK細胞を除去するために、腫瘍埋め込み後1、4、9、14日目に0.2mlの1:10稀釈の抗体保存液を各マウスに注射した。対照群(n=8)および葉酸塩−FITC+IL−2または葉酸塩−FITC+IL−2+α−NKAbでの処置群についての生存時間の中間値は、それぞれ18、42、18.5日であった。図8に示す結果によると、NK細胞は、葉酸塩−FITCとIL−2との併用処置による腫瘍保持マウスの長期間生存についての相乗的上昇を仲介する。
【0052】
実施例9
M109腫瘍細胞に対する細胞性免疫の発達
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込みし、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)、IL−2(250,000IU/回)、IFN−α(25,000U/回)を共注射した。加えて、最初の腫瘍細胞の埋め込み後65日目に5x105M109細胞を、最初の腫瘍細胞の埋め込み後96日目に5x106M109細胞を、最初の腫瘍細胞の埋め込み後127日目に5x105Line1細胞(Balb/c 自発的肺腫瘍)をマウスに注射した。
【0053】
図9に示すように、5x105M109細胞を注射した対照マウスの生存期間の中間値は18.5日であった。5x106M109細胞を注射した対照マウスの生存期間の中間値は18日であった。5x105Line1細胞を注射した対照マウスの生存期間の中間値は23.5日であった。5x105M109細胞を注射し、IL−2およびIFN−αと併用の葉酸塩−FITCで処理し、62日目に5x105M109細胞を注射し、96日目に5x106M109細胞を注射し、127目に5x105Line1細胞を注射したマウスの生存期間の中間値は、192日以上であった。
【0054】
図9に示す結果によると、IL−2およびIFN−αと併用の葉酸塩−FITCで処置されたマウスにおいて長い持続的な細胞型特異的細胞性免疫が発達している。この長い持続的免疫は、M109細胞を埋め込み、葉酸塩標的免疫治療を与えたマウスにおいて、その後のM109細胞注射によって病気が再発するのを防止する。Line1細胞の最終注射後のマウスの生存期間は、M109細胞におけるよりも低いレベルでのLine1細胞おける葉酸塩受容体の存在によるのであろう。M109細胞とLine1細胞に共通する腫瘍抗原の存在で、Line1細胞と密接な関係をもち得るM109特異的細胞性免疫応答が生じる。
【0055】
実施例10
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIL−2投与の効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込み、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)およびIL−2を5x103IU(1x)、0.5x105IU(10x)、2.5x105IU(50x)、5x105IU(100x)で共注射した。これ以外は実施例1に記載の方法と同様である。加えて、FITC標識BSAよりもFITC標識鍵穴リンピット・ヘモシアニンで免疫付与した。図10に示すように、M109細胞を埋め込み、葉酸塩−FITCで処置したマウスの生存期間の中央値が、5x103IU以上にIL−2を増やすと、増加した。一方、対照マウス(M109細胞を注射し、PBSで処置したマウス)とIL−2単独で処置したマウスとの間には、生存期間の中央値に有意な差異を認めなかった。
【0056】
実施例11
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートおよびIL−2で処置したマウスの生存のIFN−αによる増大
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込み、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回)、または葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回)とIFN−α(25,000U/回)を共注射した。これ以外は実施例1に記載の方法と同様である。追加群のマウスに葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを共注射したが、PBS−FITCで予め免疫付与しなかった。図11に示すように、PBS処置の対照マウスの生存期間の中間値は18.5日であり、葉酸塩−FITCとIL−2を共注射したマウスの生存期間の中間値は20.5日であり、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを共注射したマウスの生存期間の中間値は60日より大きく、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを共注射し、予め免疫付与しなかったマウスの生存期間の中間値は24.3日であった。葉酸塩−FITCとIL−2を共注射したマウスの生存期間の中間値は、対照マウスの場合と有意の差異がなかった。なぜなら、マウスに5000IUのIL−2を注射し、そして実施例10に記載のように、5000IU以上のIL−2用量を、7、8、9、11、14日に葉酸塩−FITCで処置したマウス生存期間の中間値の増加に必要とするからである。図11に示す結果によると、IFN−αは、腫瘍細胞を埋め込んだマウスの葉酸塩−FITCとIL−2による処置の結果として起きる生存期間の中間値の増加をさらに高めた。
【0057】
実施例12
葉酸塩標的の免疫治療に対するCD8+T細胞除去の効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込み、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回)とIFN−α(25,000U/回)を共注射した。これ以外は実施例1に記載の方法と同様である。追加群のマウスにアミノフルオレセイン(1500nモル/kg)とIL−2とIFN−αまたは葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αと抗CD8+T細胞抗体(腹水の形態で、2、3、7、11、15日目)を共注射した。図12に示すように、抗CD8+T細胞抗体は、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αで処置したマウスの生存期間中間値の増加を阻止した。CD8+T細胞が葉酸塩標的の免疫治療による細胞性免疫応答の活性化において、役割を演じていることがわかる。対照としてアミノフルオレセインをIL−2、IFN−αサイトカインの組合せとともに注射した。この化合物は葉酸塩と結合しないので、腫瘍細胞に対する抗フルオレセイン抗体を再標的としないからである。図12に示すように、IL−2とIFN−αとアミノフルオレセインは、M109細胞を埋め込んだマウスの生存期間の中間値の増加について葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αよりも効果が低い。
【0058】
実施例13
IL−2およびIFN−αにより高められた葉酸塩標的の免疫治療に対するGM−CSFの増加効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。加えて、図13に示すように、マウスにIL−2(5000IU/回)、IFN−α(25,000U/回)、GM−CSF(3000U/回)を含む複数のサイトカインを注射した。サイトカインは、1500nモル/kgの葉酸塩−FITCをM109細胞埋め込み後4および7日目に注射した後、続けて5日間8〜12日目に共注射した。図13に示す結果によると、PBSで処置したマウスの生存期間の中間値は19日であり、IL−2とIFN−αとGM−CSF(葉酸塩−FITCなし)を注射したマウスの生存期間の中間値は22日であり、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを注射したマウスの生存期間の中間値は38日であり、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αとGM−CSFを注射したマウスの生存期間の中間値は57.5日より大きかった。結果によると、GM−CSFは、IL−2とIFN−αで処置したマウスにおいて葉酸塩標的の腫瘍細胞を殺すのをさらに増加する。PBSとIL−2とIFN−αとGM−CSFを注射したマウスの生存期間の中間値は、対照マウスと有意な差異がなく、葉酸塩−FITCによる腫瘍特異的免疫応答の標的化の重要性を示している。
【0059】
実施例14
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIFN−α投与の効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIFN−αを1.5x105IU/回(6x)、7.5x104IU/回(3x)、2.5x104IU/回(1x)、7.5x103IU/回(0.3x)で共注射した。加えて、FITC標識BSAよりもFITC標識鍵穴リンピット・ヘモシアニンで免疫付与した。マウスに葉酸塩−FITCとIFN−αを、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に注射した。図14に示すように、M109細胞を埋め込み、葉酸塩−FITCで処置したマウスの生存期間の中央値が、0.8x104IU以上にIFN−αを増やすと、増加した。
【0060】
実施例15
葉酸塩標的の免疫治療に対する免疫原としてのジニトロフェニルの効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、ジニトロフェニル(DNP)(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回/日)とIFN−α(2.5x104IU/日)または葉酸塩−ジニトロフェニル(DNP)(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回/日)とIFN−α(2.5x104IU/日)を共注射した。加えて、DNP標識鍵穴リンピット・ヘモシアニン(KLH)でマウスに免疫付与した。図15に示すように、葉酸塩−DNPとIL−2とIFN−αで処置したマウスの生存期間の中央値が、対照マウス(PBMで処置)およびDNPとIL−2とIFN−αで処置したマウスに比べて増加した。すなわち、DNPは葉酸塩標的の免疫治療についての効果的な免疫原でもある。
【0061】
実施例16
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIFN−αの相乗効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)、IFN−α単独(7.5x104IU/日)、葉酸塩−FITC単独(1500nモル/kg)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIFN−α(7.5x104IU/日)を共注射した。加えて、FITC標識BSAよりもFITC標識鍵穴リンピット・ヘモシアニン(KLH)でマウス(5匹/群)に免疫付与した。図16に示すように、PBS(対照)、IFN−α、葉酸塩−FITC、葉酸塩−FITCとIFN−αで処置したマウスの生存期間の中央値が、それぞれ17、17、23、33であった。この結果からして、IFN−αは、IL−2と同様に、葉酸塩−FITCと相乗的に作用し、腫瘍保持マウスの長期間生存を促進する。
【0062】
実施例17
マウスの長期間生存に対する免疫原としてのジニトロフェニルと高濃度でのサイトカインの効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、PBSとIL−2(2.5x104IU/日)とIFN−α(7.5x104IU/日)または葉酸塩−ジニトロフェニル(DNP)(1500nモル/kg)とIL−2(2.5x104IU/日)とIFN−α(7.5x104IU/日)を共注射した。加えて、DNP標識鍵穴リンピット・ヘモシアニン(KLH)でマウスに免疫付与した。図17に示すように、葉酸塩−DNPとIL−2とIFN−αで処置したマウスの生存期間の中央値が、対照マウス(PBSで処置)およびPBSとIL−2とIFN−αで処置したマウスに比して増加した。葉酸塩−DNPとIL−2とIFN−α(IL−2およびIFN−αの濃度は、それぞれ2.5x104IU/日および7.5x104IU/日)で処置したマウスは完全に緩解した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性細胞集団の存在を特徴とする疾患の処置における使用のための方法および医薬組成物に関する。特に、細胞標的リガンド免疫原複合体を疾患宿主に、好ましくは免疫系促進物質などの治療因子と組み合せて投与し、病原性細胞に対する宿主の免疫応答を高めおよび/または再導する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の免疫系は、腫瘍細胞、他の病原性細胞、侵入する外来病原体を認識し、消失せしめる手段を提供する。免疫系は強い防衛線を普通提供するが、多くの場合に、癌細胞、他の病原性細胞、感染性物質が宿主の免疫応答を免れ、随伴的な宿主病原性をもち増殖または持続する。化学療法剤および放射線治療法が開発され、複製される腫瘍を消失せしめている。しかし、現在用いられている化学療法剤および放射線治療法の大部分は、そのすべてではないが、有害な副作用を持っている。すなわち、これらは、癌細胞の破壊に働くだけでなく、造血系細胞などの正常な宿主細胞にも作用する。さらに、化学療法剤は、宿主の薬物抵抗性が生じる場合には限定的な効力しか有しない。
【0003】
外来病原体も宿主中で有効な免疫応答を免れて増殖でき、あるいは宿主の免疫系が薬物治療または他の健康上の問題で傷められている。多くの治療化合物が開発されているが、多くの病原体がこの治療に対して抵抗性であり、また抵抗性をつくる。治療物質に対する抵抗性を発達させる癌細胞および感染性生物体の能力、および現在使用されている抗癌剤の有害な副作用からして、低い宿主毒性をもつ病原性細胞集団に特異的な新しい治療法を開発する必要性がある。
【0004】
研究者は、このような細胞に特異的に細胞毒性化合物を標的とすることにより癌細胞を破壊する治療プロトコールを開発してきた。これらのプロトコールは、癌細胞に独特の受容体または癌細胞により過剰に発現された受容体に結合するリガンドにコンジュゲートするトキシンを用いて、トキシンの正常細胞への配送を少なくしようとする。この方法を用いて、病原性細胞上の特殊な受容体に対する抗体からなるある種の免疫トキシンが開発されており、抗体はリシン、シュードモナス属エキソトキシン、ジフテリアトキシン、腫瘍壊死因子などのトキシンに結合している。これらの免疫トキシンは、抗体により認識された特異的受容体を保持する腫瘍細胞を標的とする(Olsnes,S.,Immunol.Today,10,291−295,1989;Melby,E.L.,Cancer Res.,58(8),1755−1760,1993;Better,M.D.,PCT公開WO91/07418,公開1991年5月30日)。
【0005】
宿主中の癌細胞または外来病原体の集団を選択的に標的とする他の方法は、病原性細胞に対する宿主の応答を高め、もって独立的な宿主毒性も示すことのある化合物の投与の必要性を回避することである。免疫療法について報告されているひとつの戦略は、抗体、例えば遺伝子学的に処理された多重的抗体を腫瘍細胞の表面に結合し、細胞表面上の抗体の定常領域を表示し、もって種々の免疫系仲介プロセスによって腫瘍細胞が殺されるのを誘発することである(De Vita,V.T.,Biologic Therapy of Cancer,2d ed.Philadelphia,Lippincott,1995;Soulillou,J.P.,米国特許5,672,486)。しかし、この方法は、腫瘍特異的抗原を明確にするのが難しく複雑である。宿主の免疫能力に基づく他の方法は、腫瘍表面に対する抗T細胞受容体抗体または抗Fc受容体抗体を標的にし、免疫細胞の腫瘍との直接結合を誘導する(Kranz.D.M.,米国特許5,547,668)。ワクチンを基とする方法も報告されている。これは、サイトカインに融合した抗原を含有するワクチンを基とし、ワクチン抗原の免疫原性を修飾するサイトカインを有し、もって病原体物質に対する免疫応答を刺激する(Pillai,S.,PCT公開WO91/11146,公開1991年2月7日)。この方法は、報告された免疫応答の間接的調節によっている。望ましくない細胞集団を殺すための別の方法は、IL−2または抗原に結合した抗胸腺細胞グロブリンのFab断片を利用する。しかし、報告された実験データからすると、この方法は、標的にされた細胞集団の50%のみを消失せしめるようであり、インビボで非特異的な細胞を殺す(すなわち、T細胞でない末梢血のリンパ球の50%)(Pouletty,P.,PCT公開WO97/37690,公開1997年10月16日)。このように、宿主における病原性細胞集団を特徴とする疾患状態の処置を目的とする治療について大きい必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第91/07418号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,672,486号明細書
【特許文献3】米国特許第5,547,668号明細書
【特許文献4】国際公開第91/11146号パンフレット
【特許文献5】国際公開第97/37690号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Olsnes,S.,Immunol.Today,10,291−295,1989
【非特許文献2】Melby,E.L.,Cancer Res.,58(8),1755−1760,1993
【非特許文献3】De Vita,V.T.,Biologic Therapy of Cancer,2d ed.Philadelphia,Lippincott,1995
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、病原性細胞集団に対する宿主の免疫系の認識および応答を増加することにより、宿主中の病原性細胞集団を消失せしめる方法に関する。効果的には、細胞性病原体の抗原性を増加して、内因性免疫応答の仲介で病原性細胞集団の消失を高める。この方法は細胞毒性または抗菌性治療剤の使用を避けるか、最小とする。本方法は、リガンド免疫原コンジュゲートの投与を含む。リガンドは、リガンド結合部分を特に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現するような病原性細胞集団に、インビボで特異的に結合できる。また、リガンドコンジュゲート免疫原は、抗体産生を誘発でき、より好ましくは、宿主動物において内因性または共投与の外因性の抗体により認識され得る。病原性細胞の免疫系仲介消失は、病原性細胞が独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現するような受容体やトランスポーターなどの表面提示タンパク質との免疫原コンジュゲートリガンドの結合により導かれる。病原性細胞が独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現するような表面提示タンパク質は、非病原性細胞上では存在しないか、少量でのみ存在する受容体であって、病原性細胞の選択的消失について手段を提供する。少なくとも1つの追加の治療因子、例えば、免疫系促進物質、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤を、宿主に共投与して、治療効率を高める。
【0009】
ひとつの実施態様において、本方法は、標的の病原性細胞集団上で独特的に発現されるか、優先的に発現されるか、過剰に発現される細胞表面タンパク質に、インビボで高い親和性特異的結合力をもつリガンドを投与する工程を含む。このリガンドは、宿主動物中にすでに存在しまたは誘発され得る先天性または獲得性の免疫に対する免疫原にコンジュゲートしている。選択的に、内因性免疫応答活性物質または細胞毒性化合物である治療因子の少なくとも1つを共投与する。
【0010】
好ましいひとつの実施態様において、本方法は、リガンド免疫原コンジュゲート組成物を投与することを含む。その場合、リガンドは葉酸または他の葉酸塩の受容体結合リガンドである。リガンドは共有結合などにより、宿主動物における抗体応答を誘発し得る免疫原に、さらに好ましくは、宿主動物における前存在の内因性抗体(先天性または獲得性の免疫の結果)または共投与の抗体(すなわち、受動免疫付与)に結合し得る免疫原にコンジュゲートしている。少なくとも1つの治療因子、リガンド免疫原複合体に特異的結合し得ないで、内因性免疫応答を促進または高め得る因子、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤を、リガンド免疫原コンジュゲートとともに宿主に共投与できる。
【0011】
本発明の他の実施態様において、病原性細胞集団(この病原性細胞集団のメンバーはリガンドについて接近可能結合部位を有する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、該宿主に、リガンドと免疫原との複合体を含むリガンド免疫原コンジュゲート組成物および治療因子を含む少なくとも1つの追加的組成物を投与する工程を含む。該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られているものである。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。
【0012】
本発明の他の実施態様において、病原性細胞集団(この集団はリガンドについて結合部位を発現する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、宿主に該リガンドと免疫原との複合体を含む組成物を投与すること、宿主に免疫原に対する抗体を投与すること、宿主に少なくとも1つの追加的治療因子を投与することを含む。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しない内因性免疫応答の促進物質よりなる群から選択する。
【0013】
本発明の他の実施態様において、病原性細胞集団(該集団が葉酸受容体を独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、宿主に免疫原の共有結合コンジュゲートを含む組成物を投与する工程を含む。該免疫原は、宿主動物おいて内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られているものである。葉酸またはその同族体を含むリガンドはグルタミル基を有す。免疫原との共有結合はグルタミル基のγ−カルボキシ基のみを介する。他の実施態様において、宿主に治療因子を含む少なくとも1つの追加の組成物を投与する。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。
【0014】
本発明のさらに別の実施態様において、病原性細胞集団(該集団が葉酸受容体を独特的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物において該集団の、内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法を提供する。この方法は、宿主に免疫原の共有結合コンジュゲートを含む組成物を投与する工程を含む。該免疫原は、宿主動物おいて内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られているものである。葉酸またはその同族体を含むリガンドはグルタミル基を有す。免疫原との共有結合はグルタミル基のα−カルボキシ基のみを介する。他の実施態様において、宿主に治療因子を含む少なくとも1つの追加の組成物を投与する。該因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。
【0015】
本発明のひとつの別の実施態様において、標的の病原性細胞集団は癌細胞集団である。他の実施態様において、標的の病原性細胞集団はウイルス感染内因性細胞である。他の実施態様において、標的の病原性細胞集団は細菌、マイコプラズマ酵母、真菌などの外因性生物体の集団である。リガンド免疫原コンジュゲートは、腫瘍細胞または病原性生物体の表面に結合し、標的の細胞集団の細胞メンバーを免疫原で「標識」し、もって標識された細胞集団に対する免疫仲介応答を起こす。受動免疫付与において宿主に投与された抗体または前存在の先天性または獲得性の免疫に由来する宿主に存在の抗体は、免疫原に結合して、内因性免疫応答を起こす。細胞結合リガンド免疫原コンジュゲートと抗体の結合は、補体仲介細胞毒性、抗体依存性の細胞仲介細胞毒性、抗体のオプソニン効果または食作用、抗体誘導受容体クラスター・シグナル伝達細胞の死または静止、細胞結合リガンド免疫原コンジュゲートに結合する抗体により促進される他の液性または細胞性免疫応答をもたらす。抗原が前もっての抗体オプソニン効果なしに免疫細胞により直接的に認識される場合、病原性細胞は直接殺される。
【0016】
外来の病原体または感染もしくは新生の外因性細胞の消失を、内因性免疫応答を促進し得る治療因子、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤を投与することによりさらに高め得る。ひとつの実施態様において、細胞毒性免疫細胞は、単離され、生体外で増やされ、宿主動物に注入される細胞毒性免疫細胞集団である。本発明の他の実施態様において、免疫促進物質を使用する。免疫促進物質は、IL−2、IL−12、IL−15などのインターロイキン、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどのIFNまたはGM−CSFであり得る。他の実施態様において、免疫促進物質は、IL−2、IL−12、IL−15などのサイトカインとIFN−α、IFN−β、IFN−γまたはGM−CSFとの組み合せ、あるいはこれらの効果的な組み合せ、あるいはサイトカインの他の効果的な組み合せを含むサイトカイン組成物であり得る。
【0017】
本発明の他の実施態様において、治療上有効な量のリガンド免疫原コンジュゲート、治療因子およびその薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。リガンド免疫原コンジュゲートは、宿主動物における病原性細胞集団に特異的に結合でき、先天性または獲得性の免疫応答、共投与された抗体による該細胞の特異的消失、または宿主における免疫細胞による該細胞の直接的な特異的消失を促進する。治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞、抗菌剤、リガンド免疫原複合体に特異的結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。ひとつの実施態様において、医薬組成物は、非経口的持続放出投与形態にある。他の実施態様において、治療因子は、IL−2、IL−12、IL−15などのインターロイキン、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどのIFNまたはGM−CSFよりなる群から選ばれる化合物を含む免疫促進物質またはこれらの組合せである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】肺腫瘍埋め込み体をもつマウスの生存に対する葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの効果を示す。
【図2】フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩による正常組織と腫瘍組織の影像を示す。
【図3】フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩またはフィコエリトリン標識ヤギ抗マウスIgGによる腫瘍組織の影像を示す。
【図4】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの固形腫瘍成長に対する効果を示す。
【図5】サイトカイン併用処置の効果を示す。
【図6】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの複数回注射の効果を示す。
【図7】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果を示す。
【図8】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果におけるNK細胞の関与を示す。
【図9】M109腫瘍細胞に対する細胞性免疫の発達を示す。
【図10】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIL−2投与の効果を示す。
【図11】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートおよびIL−2で処置したマウスの生存のIFN−αによる増大を示す。
【図12】葉酸塩標的の免疫治療に対するCD8+T細胞除去の効果を示す。
【図13】IL−2およびIFN−αにより高められた葉酸塩標的の免疫治療に対するGM−CSFの増加効果を示す。
【図14】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIFN−α投与の効果を示す。
【図15】葉酸塩標的の免疫治療に対する免疫原としてのジニトロフェニルの効果を示す。
【図16】葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIFN−αの相乗効果を示す。
【図17】マウスの長期間生存に対する免疫原としてのジニトロフェニルと高濃度でのサイトカインの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、癌を有する宿主または病原性生物に感染した宿主の治療的処置についての方法を提供する。この方法は、病原性細胞を抗原性とし/標識とすることにより病原性細胞集団の免疫応答仲介による消失を高め、宿主免疫系によるその認識および消失をもたらす。この方法は、癌細胞または他の病原性物質に対して高い親和性結合を有するリガンド免疫原コンジュゲートを用いる。高い親和性結合は、リガンドに本来性であるか、化学的に修飾されたリガンドの使用により、またはリガンドとコンジュゲートに存在する免疫原との特定の化学的結合により、改変される(高められる)。本方法はまた、リガンド免疫原コンジュゲートと追加の治療因子を使用することによる組み合せ治療を利用して、病原性細胞集団の免疫応答仲介による消失を高める。治療因子は、内因性免疫応答を促進し得る物質、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、細胞毒性免疫細胞または抗菌剤である。
【0020】
本発明の方法を用いて、病原性細胞集団を保持する宿主動物における病原性細胞集団の内因性免疫応答仲介による消失を高める。本発明は、癌や感染性疾患などの種々の病原をもたらす病原性細胞集団に適用できる。病原性細胞集団は、腫瘍原性である癌細胞集団であり得る。これには良性腫瘍および悪性腫瘍が含まれる。また、非腫瘍原性でもあり得る。癌細胞集団は自然に、または宿主動物の生殖系に存在する変異または体細胞変異により生じる。あるいは化学的に、ウイルスにより、または放射線で誘導される。本発明を使用して、癌腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、ブルキット・リンパ腫、鼻咽頭癌腫、白血病、骨髄腫などの癌を処置できる。癌細胞集団は、限定でないが、口腔、甲状腺、内分泌器、皮膚、胃、食道、咽頭、膵臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、脳、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎、肝、肺の癌を含み得る。
【0021】
病原性細胞集団はまた、外因性病原体であるか、または外因性病原体、例えばウイルスを保持する細胞集団であり得る。本発明は、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマ、寄生虫などの病原体に適用できる。本発明で処置し得る感染性物質は、動物で病原となるすべての現技術で認識し得る感染性生物体であり、グラム陽性またはグラム陰性の球菌または桿菌などの細菌、DNAおよびRNAウイルスを含む。DNAウイルスは、限定でないが、パピロマウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスを、そしてRNAウイルスは、アレナウイルス、コロナウイルス、リノウイルス、呼吸系合胞体層ウイルス、インフルエンザウイルス、ピコルナウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルスを含む。特に興味があるのは、抗生物質耐性Streptococcus種やStaphylococcus種などの抗生物質に耐性の細菌、または抗生物質に感受性であるが抗生物質で処置後の再発感染を起こし耐性が生じるような細菌である。このような生物体を、本発明のリガンド免疫原コンジュゲートで、患者に通常投与するよりも低い量の抗生物質とともに処置して、これらの抗生物質耐性細菌株の成長を防止できる。
【0022】
本発明はまた、すべての真菌、マイコプラズマ種、寄生虫、または動物で疾患を起こす他の感染性生物体に適用できる。本発明方法で処置し得る真菌の例は、かびとして成長する真菌や酵母様の真菌、例えば、白癬、ヒストプラズマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、スポロトリコーシス症、コクシジオイドミセス症、パラコクシジオ−イドミセス症、カンジダ症などの疾患を起こす真菌を含む。
【0023】
本発明を用いて、寄生虫感染を処置できる。これには、限定でないが、体細胞条虫類、血中吸虫類、組織回虫、アメーバ、Plasmodium、Trypanosoma、Leishmania、Toxoplasma種などにより起こされる感染がある。特に興味ある寄生虫は、葉酸塩受容体を発現し葉酸塩に結合するものである。感染性生物体に高い親和性を示すリガンドについて多くの発表がある。例えば、抗生物質活性および細菌細胞壁前駆物に対する特異的結合について知られているペニシリンおよびセファロスポリンを、本発明での使用についてのリガンド免疫原コンジュゲートのためのリガンドとして同様に用い得る。本発明のリガンド免疫原コンジュゲートは、内因性病原体を保持する細胞集団を対象とする。そこでは、病原体特異的抗原が、病原体を保持する細胞集団の表面で発現され、リガンド受容体として抗原に特異的に結合するリガンドとともに働く。
【0024】
本発明の方法は、ヒト臨床医学および獣医学において使用できる。すなわち、病原性細胞集団を保持し、リガンド免疫原コンジュゲートで処置される宿主動物は、ヒトであり、また獣医学的適用では、実験動物、農業用動物、家畜、野生動物である。本発明を宿主動物に適用できる。これらの動物には、限定でないが、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)のような実験動物、ウサギ、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウサギなどの家畜、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの農業用動物、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、ゼブラ、キリン、ゴリラ、イルカ、クジラなどの野生動物がある。
【0025】
リガンド免疫原コンジュゲートを宿主動物に非経口的に、例えば、皮膚内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内に好ましくは投与する。あるいは、このコンジュゲートを宿主動物に他の医学的に有用な方法で投与する。いかなる有効量も、また持続放出投与形態を含む適当な治療用量形態を使用できる。本発明の方法は、腫瘍の外科的除去、放射線治療、化学療法、免疫療法などの生物学的治療法と併用できる。生物学的治療には、限定でないが、モノクローナル抗体治療法、免疫調節物質での処置、免疫エフェクター細胞の養子転移、造血性成長因子、サイトカインでの処置、ワクチン接種などがある。
【0026】
本発明にしたがって、リガンド免疫原コンジュゲートを、広い範囲のリガンドおよび免疫原から選択できる。リガンドは、病原性細胞上でリガンド結合をなし得るリガンド受容体を優先的に発現することにより、宿主動物における病原性細胞集団を特異的に消失せしめ得るものである。許容できるリガンドは、葉酸、その同族体、他の葉酸塩受容体結合分子、その他のビタミン、ライブラリー・スクリーニングから同定されるペプチド・リガンド、腫瘍特異的ペプチド、腫瘍特異的アプタマー、腫瘍特異的炭水化物、腫瘍特異的モノクローナルまたはポリクローナル抗体、抗体のFabまたはscFv(すなわち、単鎖可変領域)断片、例えばEphA2などの転移性癌細胞で特異的に発現され独自的に近接し得るタンパク質に対する抗体のFab断片、組み合せ的ライブラリーから誘導される小さい有機分子、成長因子、例えばEGF、FGF、インスリン、インスリン様成長因子、相同性ポリペプチド、ソマトスタチンおよびその同族体、トランスフェリン、リポタンパク質複合体、胆汁酸塩、セレクチン、ステロイドホルモン、Arg−Gly−Asp含有ペプチド、レチノイド、種々のガラクチン、γ−オピオイド受容体リガンド、コレシストキニンA受容体リガンド、アンギオテンシンAT1またはAT2受容体特異的リガンド、ペルオキシソーム増殖物質活性化受容体γリガンド、β−ラクタム抗生物質、抗菌剤を含む低有機分子、腫瘍細胞の表面または感染性生物体で優先的に発現された受容体に特異的に結合する他の分子またはこれらの分子の断片を含む。感染性生物体に結合するリガンドで興味深いのは、微生物に優先的に結合するのが知られているような分子、抗生物質などの薬剤である。
【0027】
本発明はまた、受容体などの細胞表面タンパク質の結晶構造に基づいて特定の受容体の結合ポケットに適合するように設計された抗菌剤などの分子であるリガンドに適用できる。その場合、該受容体は、腫瘍の表面、細胞、ウイルス、マイコプラズマ、真菌、寄生虫などの病原体で優先的に発現されるものである。本発明の好ましい実施態様において、腫瘍細胞の表面で優先的に発現される腫瘍抗原などの分子に結合するリガンドを使用できる。
【0028】
受容体などのタンパク質が病原性細胞集団上で優先的に発現されている受容体に特異的に結合し得るすべての分子についての受容体を含み得る。例えば、成長因子、ビタミン、オピオイドペプチドを含むペプチド、ホルモン、抗体、炭水化物、小さい有機物質を含む。結合部位は、微生物上で優先的に存在する既知のいかなる分子、例えば抗生物質などの薬剤についての結合部位である。例えば、対象結合部位は、ペニシリンなどのβ−ラクタム抗生物質についての細菌細胞壁における結合部位、またはウイルス表面に独自的に存在する抗ウイルス剤についての結合部位である。本発明はまた、受容体の結晶構造に基づいて受容体の結合部位に適合するように設計された抗菌剤などのリガンドに適用できる。その場合、該受容体は、病原体細胞または生物体の表面で優先的に発現されるものである。腫瘍特異的抗原は本発明方法においてリガンドについての結合部位として機能し得ると考える。リガンド免疫原コンジュゲートについての結合部位として機能し得る腫瘍特異的抗原の例は、EphA2などのエフリン・ファミリータンパク質の細胞外エピトープである。EphA2発現は正常細胞における細胞−細胞接合に限定されるが、EphA2は転移腫瘍細胞において全細胞表面に分布する。転移腫瘍細胞上のEphA2は、例えば免疫原にコンジュゲートした抗体のFab断片に結合のために接近し得、一方、このタンパク質は正常細胞上のFab断片に結合のための接近をなし得ないので、転移性癌細胞に特異的リガンド免疫原コンジュゲートが分かる。本発明はさらに、リガンド免疫原コンジュゲートの組み合せ使用を含み、獲得性または先天性の免疫応答または共投与の抗体による消失のために病原性細胞の標的化を最大にする。
【0029】
本発明での使用のために許容される免疫原は、宿主動物において抗体産生を起こし得る免疫原、宿主動物において以前から抗体産生を起こし前存在の免疫性をもたらす免疫原、または先天性免疫系の部分を構成する免疫原である。あるいは、免疫原に対する抗体を宿主動物に投与して受動免疫をつくる。本発明における使用に適する免疫原は、抗原または抗原性タンパク質であって、これらに対する前存在性の免疫性が、ポリオウイルス、破傷風、チフス、風疹、はしか、流行性耳下腺炎、百日せき、結核、インフルエンザの抗原、α−ガラクトシル基などの通常計画されるワクチン接種またはその自然曝露により生じるものである。そのような場合、リガンド免疫原コンジュゲートを用いて、外来性細胞または病原性生物体の消失のために、宿主動物における病原性細胞集団に対する前もって獲得された液性または細胞性の免疫をつくる。他の適当な免疫原は、非天然の抗原やハプテン(例えば、フルオレセインイソチオシアネートまたはジニトロフェニル)および先天性免疫が存在する抗原(例えば、スーパー抗原およびムラミルジペプチド)に対する免疫付与によって宿主動物が新しい免疫性を発達させるような抗原および抗原性ペプチドを含む。
【0030】
本発明のリガンドおよび免疫原は、複合体形成について既知の方法を用いて、コンジュゲートできる。これは、リガンドの免疫原に対する共有結合、イオン結合または水素結合を含み、直接的に、または2価リンカーなどの連結基を介して間接的に行い得る。コンジュゲートの典型的な形成は、複合体の各々の構成要素上の酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、ヒドラド基の間でのアミド、エステルまたはイミノ結合の形成を介してリガンドを免疫原に共有結合せしめることによる。本発明の好ましい実施態様において、リガンドは葉酸、その同族体または他の葉酸塩の受容体結合分子であり、葉酸塩リガンドの免疫原との結合はトリフルオロ酢酸無水物を用いプテロイルアジド中間体を介する葉酸のγ−エステルをつくる方法による。この好ましい方法により、葉酸塩のグルタミン酸のγ−カルボキシ基を介してのみ免疫原にコンジュゲートされた葉酸塩リガンドを合成でき、そこではγ−コンジュゲートが葉酸塩受容体に高い親和性で結合しており、α−コンジュゲートとγ−コンジュゲートの混合物との形成を回避できる。あるいは、純粋のα−コンジュゲートを、γ−カルボキシ基が選択的に遮断された中間体から作り得る。α−コンジュゲートの形成に続いて、当分野でよく知られている有機合成法を用いてγ−カルボキシ基の遮断を解く。特に他のビタミン類を、本発明におけるコンジュゲートをつくるためのリガンドとして用い得る。例えば、リガンド免疫原コンジュゲートを、葉酸と同様にビオチンおよびリボフラビンで作り得る(参照、米国特許5,108,921、5,416,016、5,635,382:出典明示により本明細書の一部とする)。
【0031】
本発明のリガンド免疫原コンジュゲートは、病原性細胞集団の内因性免疫応答による消失を高める。内因性免疫応答には、液性応答、細胞仲介免疫応答、宿主動物に対する内因性の他のすべての免疫応答があり、補体仲介細胞分解、抗体依存性細胞仲介細胞毒性(ADCC)、食作用に導く抗体オプソニン効果、アポトーシス、抗増殖または分化のシグナル伝達をもたらす抗体結合での受容体のクラスター化、分配された抗原/ハプテンの直接的免疫細胞認識を含む。内因性免疫応答が、免疫細胞の増加または移動などのプロセスを調節するサイトカインの分泌を用いることも考え得る。内因性免疫応答は、B細胞、ヘルパーおよび細胞毒性T細胞を含むT細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、LAK細胞などの免疫細胞型の関与を含み得る。
【0032】
液性応答は、通常計画されるワクチン接種、または天然抗原や非天然の抗原もしくはハプテン(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)で新規の免疫性を誘導する非天然抗原をもつ活性免疫付与などのプロセスにより誘導される応答である。活性免疫付与は、新しい免疫性を誘導するために、通常のワクチン接種外で計画された非天然の抗原またはハプテンの複数注射を含む。液性応答は、宿主動物がα−ガラクトシル基に対する免疫性などの天然にすでに存在する免疫性を有するような先天性免疫からも生じる。あるいは、受動免疫を、宿主動物に抗体を投与して作り得る。例えば、血清から集められた天然の抗体またはヒト化された抗体を含む遺伝子処理されまたはされていないモノクローナル抗体を投与する。受動免疫を起こすための抗体試薬の特定量の使用、および受動的に投与された抗体が免疫原に働くようなリガンド免疫原コンジュゲートの使用は、患者の前存在抗体力価が治療的に有用でない場合に使用される試薬の標準的セットの利点を提供する。受動的に投与される抗体は、リガンド免疫原コンジュゲートとともに「共投与」できる。共投与は、リガンド免疫原コンジュゲートの投与の前、同時、後での抗体の投与と定義する。
【0033】
前存在の抗体、誘導された抗体または受動的に投与された抗体は、リガンド免疫原コンジュゲートの、その侵略の細胞または生物体との優先的結合によって、腫瘍細胞または感染生物体に再動し、病原体細胞が補体仲介分解、ADCC、抗体依存性食作用、受容体の抗体クラスター化により殺されると考える。細胞毒性プロセスは、細胞仲介免疫などの他の型の免疫応答、および第2次応答も含み得る。この応答は、刺激された抗原提示細胞が、不必要な細胞および存在する天然腫瘍抗原または外来病原体の抗原を、抗原を保持する細胞または生物体の消失のために免疫系に食するときに生じる。
【0034】
治療因子を含む少なくとも1つの追加の組成物を、併用してまたは上記詳細の方法の補助として宿主に投与し、病原性細胞集団の内因性免疫応答による消失を高め得る。また1以上の追加の治療因子を投与できる。治療因子は、内因性免疫応答を促進し得る化合物、化学療法剤、抗菌剤、投与されたリガンド免疫原複合体の効力を補い得る他の治療因子から選択できる。本発明方法において、上記のコンジュゲートに加えて内因性免疫応答を促進し得る化合物または組成物を宿主に投与できる。それには、限定でないが、サイトカインまたは免疫細胞成長因子、例えば、インターロイキン1−18、幹細胞因子、塩基性FGF、EGF、G−CSF、GM−CSF、FLK−2リガンド、HILDA、MIP−1α、TGFα、TGFβ、M−CSF、IFNα、IFNβ、IFNγ、溶性CD23、LIFおよびこれらの組み合わせがある。
【0035】
これらのサイトカインの治療上有効な組み合せも使用できる。好ましい実施態様において、例えば、治療上有効な量のIL−2を、例えば複数回毎日療法において約5000〜500,000IU/用量/日で、およびIFN−αを、例えば複数回毎日療法において約7500〜150,000IU/用量/日で、葉酸結合のフルオレセインイソチオシアネートともに使用して、病原性細胞集団を保持する宿主動物における病原性細胞を無くする。他の好ましい実施態様においてIL−12およびIFN−αを治療上有効な量で用い、また別の好ましい実施態様においてIL−15およびIFN−αを治療上有効な量で用いる。別の好ましい実施態様においてIL−2、IFN−αまたはIFN−γをGM−CSFと併用する。好ましくは、IL−2、IL−12、IL−15、IFN−α、IFN−γ、GM−CSFなどの治療因子およびその組み合せは、ナチュラルキラー細胞および/またはT細胞を活性化する。あるいは、治療因子およびその組み合せは、インターロイキンのインターフェロンおよびGM−CSFとの組合せを含み、マクロファージ、B細胞、好中球、LAK細胞などの他の免疫エフェクター細胞を活性化し得る。本発明はまた、他のインターロイキンおよびインターフェロンの組合せを含むサイトカインおよびコロニー刺激因子の他の有効な組合せについての使用を含む。
【0036】
細胞毒性自体であり、腫瘍の透過性を高めるように働き、本発明方法での使用に適している化学療法剤は、下記のものを含む。アドレノコルチコイド、アルキル化剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、エストロゲン、サイトシン・アラビノシドなどの抗代謝物質、プリン同族体、ピリミジン同族体、メトトレキセート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチンおよび他の白金化合物、タモキシフェン、タキソール、シクロホスファミド、植物アルカロイド、プレドニソン、ヒドロキシウレア、テニポシド、マイトマイシンやブレオマイシンなどの抗生物質、ナイトロゲンマスタード、ニトロスレア、ビンクリスチン、ビンブラスチン、炎症性および炎症様物質、および当分野で認められている化学療法剤。本コンジュゲートの投与の補助として投与できる治療物質は、下記のものを含む。ペニシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リファンピン、クロラムフェニコール、アミノグリコシド、ゲンタミシン、アムホテリシンB、アシクロビル、トリフルリジン、ガンシクロビル、ジドブジン、アマンタジン、リバビリン、および当分野で認められている抗菌化合物。
【0037】
病原性細胞集団の消失は、腫瘍塊または病原生物体の減少および消失を含み、治療的応答となるものである。腫瘍の場合、原発性の腫瘍細胞または原発性腫瘍から転移したか分離しつつある細胞の消失であり得る。外科的除去、放射線治療、化学療法、生物学的治療法などを含む治療手段により腫瘍の除去がなされた後に、腫瘍の再発を防ぐための予防的処置も本発明は含む。予防的処置は、複数回毎日療法での処置などのリガンド免疫原コンジュゲートによる最初の処置、および/または最初の処置に続く追加または連続の処置であり得る。
【0038】
本発明はまた、内因性免疫応答または共投与抗体による特異的消失のため宿主動物における病原性細胞集団を「標識」するのに効果的な量のリガンド免疫原コンジュゲートを含む医薬組成物に関する。この組成物はさらに、病原性細胞集団の消失を高めるのに有効な量の追加の因子を含む。それは、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選択する。医薬組成物は、治療上有効な量のリガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を含有する。この因子は、IL−2、IL−12、IL−15などのサイトカイン、IL−2、IL−12、IL−15を含むサイトカインの組み合せ、IFN−αやIFN−γなどのインターフェロン、インターフェロンの組合せ、インターロイキン、GM−CSFなどのコロニー刺激因子を含み得る。
【0039】
リガンド免疫原コンジュゲートの一日単位用量は、宿主の状態、処置される病状、コンジュゲートの分子量、投与経路と組織分布、放射線療法などの他の治療処置との併用の可能性によって、大きく変り得る。患者に投与される有効な量は、体表面積、体重、患者の状態についての医師の判断が基になる。有効量は、約1ng/kg〜約1mg/kg、さらに好ましくは約1μg/kg〜約500μg/kg、最も好ましくは約1μg/kg〜約100μg/kgの範囲にあり得る。
【0040】
腫瘍細胞または感染生物体に対する既存の抗体を再動するために、または免疫原に対する液性応答を誘導するために、リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を投与する効果的な療法を使用できる。例えば、リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を単回用量で投与でき、または分けて複数回毎日療法として投与できる。さらに、いくぶん変えた療法、例えば毎週1ないし3日の療法を毎日の処置の代替として使用できる。本発明の目的からして、このような中間的なまたはいくぶん変えた療法は、毎日の処置と等価であり、本発明の範囲内にある。本発明の好ましい実施態様において、宿主をリガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子の複数回注射で処置して、病原性細胞集団を消失せしめる。ひとつの実施態様において、宿主にリガンド免疫原コンジュゲートを複数回(好ましくは約2回から約50回まで)、例えば12−72時間の間隔または48−72時間の間隔で注射する。リガンド免疫原コンジュゲートの追加の注射を患者に最初の注射後に日または月の間隔をおいて行うことができる。追加の注射は疾患の再発を防止する。あるいは、リガンド免疫原コンジュゲートの最初の注射が疾患の再発を防止できる。
【0041】
治療因子を宿主動物に、リガンド免疫原コンジュゲートの前、同時、後に投与でき、治療因子は、コンジュゲートを含有する同じ組成物の一部として、またはリガンド免疫原コンジュゲートと異なる組成物の一部として投与できる。治療因子を治療上有効な用量で含有するいかなる治療組成物も本発明において使用できる。さらに、2以上のリガンド免疫原コンジュゲートを使用し得る。例えば、フルオレセインイソチオシアネートおよびジニトロフェニルの両方で予め免疫付与し、次いで共投与プロトコールにおける同一または相違のリガンドに連結しているフルオレセインイソチオシアネートおよびジニトロフェニルで処置し得る。化学療法剤および抗菌剤の場合、併用治療におけるリガンド免疫原コンジュゲートとともに最適に次ぐ用量で投与して、宿主動物による化学療法剤および抗菌剤に対する抵抗性の発達を回避できる。
【0042】
リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子は、好ましくは非経口的に注射し、かかる注射は、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、鞘内の注射であり得る。リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子は、遅速ポンプを用いての配送もできる。非経口用量形態の例は、活性物質の等張塩類水溶液を含み、5%グルコースまたは液体アルコール、グリコール、エステル、アミドなどの周知の薬学的に許容される液体担体である。本発明の非経口用量形態は、リガンド免疫原コンジュゲートおよび治療因子を含む再製可能な凍結乾燥物であり得る。この好ましい実施態様おいて、いくつかの当分野で既知のいくつかの持続放出用量形態で投与できる。例えば、米国特許4,713,249、5,266,333、5,417,982(出典明示により本明細書の一部とする)に記載のバイオ分解性炭水化物マトリクスである。
【実施例】
【0043】
実施例1
肺腫瘍埋め込み体をもつマウスの生存に対する葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの効果
6から8週齢雌Balb/cマウス(20〜22g)を、市販のアジュバント(例えば、フロイントアジュバントまたはTiter MaxTM−Gold)を用いるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ウシ血清アルブミン(BSA)を複数部位に皮下注射して、免疫付加した。抗FITC抗体力価がすべてのマウスで高いことを確認した後(マウスの血清サンプルについてのELISAアッセイによる)、各マウスに、5x105M109細胞、葉酸塩受容体を高レベルで発現する同系肺癌細胞を腹腔内注射した。癌部分を固着し成長にまかせた。癌細胞埋め込み4日および7日後に、すべてのマウスに、リン酸塩緩衝液(PBS)またはγ−カルボキシ連結エチレンジアミン・ブリッジを介して葉酸にコンジュゲートしている特定量のFITCのいずれかを腹腔内に注射した。注射した葉酸塩−FITCの濃度は、0(対照PBS)、4.5、45、450、4500nmモル/kgである。8匹に各濃度の葉酸塩−FITCを投与し、合計で40匹に注射した。免疫系を刺激するために、5000IUの組換えヒトIL−2を5日間(8から12日目)すべてのマウスに注射した。この免疫治療の効果を、葉酸塩−FITC処置マウスを対照マウスと比べて時間関数での生存を調べることで評価した。
【0044】
図1に示すように、葉酸塩−FITC処置マウスの生存の中央値は用量依存性であって、対照マウスの生存の中央値が腫瘍埋め込み後23日であるのに対し、コンジュゲートの用量を増加すると葉酸塩−FITC処置マウスの生存が長くなった。少量45nモル/kgの葉酸塩−FITCがマウスの長期間生存を促進するが、より高い量が比例的に大きい効果を有する。葉酸塩−FITCは腫瘍に集中するが、いくぶんの葉酸塩−FITCが腎組織に存在した(しかし、他の正常組織では匹敵するようなレベルでない)。腎および正常臓器における毒性は、資格ある獣医病理学者による剖検で認めなかった。
【0045】
実施例2
フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩による正常組織と腫瘍組織の影像
マウスに24JK−FBP腫瘍細胞を注射した以外は、実施例1と同様の方法である。葉酸塩−FITCを注射した後すぐにマウスを殺し、組織を薄切片にし、腫瘍を含む特定の組織、腎、肝、筋肉の組織について葉酸塩−FITCの所在を、共焦点蛍光顕微鏡を用いるFITC免疫蛍光で調べた。図2は、種々の組織切片を比較した顕微鏡写真を対照の蛍光顕微鏡写真とともに示す。葉酸塩−FITCは、腫瘍組織および葉酸受容体が非常に豊富である腎近位管細胞に特に局在していた。
【0046】
実施例3
フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートした葉酸塩またはフィコエリトリン標識ヤギ抗マウスIgGによる腫瘍組織の影像
M109細胞を用いた以外は、実施例2と同様の方法である。FITC蛍光(緑の影像)、フィコエリトリン(PE)蛍光(赤の影像)により組織を調べた。PE蛍光のために、蛍光標識をヤギ抗マウスIgGに結合せしめ、内因性マウス抗FITC抗体の、腫瘍細胞に蓄積する葉酸塩−FITCコンジュゲートとの結合を調べた。葉酸塩−FITCで処理および未処理の腫瘍組織を比較し、両タイプのサンプルを、実施例2に記載ように位相差顕微鏡で調べた。FITC蛍光によると、腫瘍細胞への葉酸塩−FITCの局在がある(図3)。PE蛍光によると、内因性マウス抗FITC抗体が腫瘍細胞に局在の葉酸塩−FITCコンジュゲートに結合する。別の試験(示さず)によると、腎を含む正常細胞へのIgGなどの結合はない。腎組織に局在の葉酸塩−FITCへの抗体の結合がないことは、葉酸塩受容体が腎近位管細胞の先端膜にあると、抗体が腎領域に接近しないことから来る。位相差影像(変位像)は、処置および未処置の腫瘍組織の形態を示し、処置サンプルにおいて細胞死がある。
【0047】
実施例4
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの固形腫瘍成長に対する効果
FITCでの免疫付与の前に1x106M109細胞を各マウスの肩に皮下注射(0日目)した以外は、実施例1と同様の方法である。腫瘍細胞埋め込み後の葉酸塩−FITCによる免疫付与には、48時間間隔で6回(7、9、11、13、15、17日目)、1500nモル/kgの葉酸塩−FITCを腹腔内投与した。次いで肩の固形腫瘍を測定し、腫瘍の大きさの増加%を決めた。図4に表す腫瘍成長曲線によると、葉酸塩−FITCとIL−2との併用で処置されたマウスにおいて、固形腫瘍の成長が有意に阻止された。
【0048】
実施例5
サイトカイン併用処置の効果
5000IUの組換えヒトIL−2(8〜12日目の5日間)を、IFN−α(5日間2.5x104U/日注射)、IL−12(5日間0.5μg/日注射)またはTNF−α(8、10、12日目に3回、0.5μg/日注射)のいずれかとともに、腫瘍細胞埋め込み後の4および7日目での1500nモル/kgの葉酸塩−FITCまたはアミノフルオレセインとの投与に続き、マウスに与えた。他は実施例1の方法と同様である。さらに、長期間生存データを得るのに要する時間を短くするために、腫瘍細胞を肝の近くに腹腔内埋め込みをした。従って、腫瘍保持マウスの生存期間は、実施例1の場合に比して一般的に短い。図5に示す結果によると、マウスの長期間生存を促進するのに、IL−2単独は、IL−2とIL−12またはIL−2とTNF−αの併用処置に比して、より効果的である。一方、IL−2とIFN−αの併用処置は、マウスの長期間生存を促進するのに、IL−2単独よりも効果的である。対照としてアミノフルオレセインを種々のサイトカインの組合せとともに注射した。この化合物は葉酸塩と結合しないので、腫瘍細胞に対する抗フルオレセイン抗体を再標的としないからである。
【0049】
実施例6
葉酸塩フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートの複数回注射の効果
48時間間隔で6回(腫瘍細胞埋め込み後の7、9、11、13、15、17日目)、1500nモル/kgの葉酸塩−FITCを腹腔内投与した以外は、実施例1と同様の方法である。結果を示す図6によると、葉酸塩−FITCの複数回注射が葉酸塩−FITCとIL−2で処置したマウスの長期間生存を、腫瘍細胞埋め込み後4および7日目に与えた葉酸塩−FITCの2注射に比して改善した。
【0050】
実施例7
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果
1500nモル/kgの葉酸塩−FITCをIL−2と併用、葉酸塩−FITCまたはIL−2の単独をマウスに注射した以外は、実施例1と同様の方法である。さらに、腫瘍細胞を実施例5に記載のように腹腔内に埋め込んだ。この実験によって(参照、図7)、葉酸塩−FITCとIL−2が腫瘍保持マウスの長期間生存を促進するのに相乗的に作用するかどうかを調べた。対照群(n=8)およびIL−2、葉酸塩−FITC、葉酸塩−FITC+IL−2での処置群についての生存時間の中間値は、それぞれ18、19、22、42日であった。図7に示す結果によると、腫瘍保持マウスの長期間生存を促進する葉酸塩−FITCとIL−2の能力は強く相乗的であり、低量のIL−2単独は葉酸塩−FITCを欠くとマウスの生存に負の作用であり、葉酸塩−FITCは小さい作用に過ぎなかった。
【0051】
実施例8
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIL−2との相乗効果におけるNK細胞の関与
ポリクローナルウサギ抗マウスNK細胞抗体(anti−asialo GM1;Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Richmond,Va.)で、葉酸塩−FITCおよびIL−2と組み合せて、1群のマウスを処置した以外は、実施例7に記載の方法と同様に行った。NK細胞を除去するために、腫瘍埋め込み後1、4、9、14日目に0.2mlの1:10稀釈の抗体保存液を各マウスに注射した。対照群(n=8)および葉酸塩−FITC+IL−2または葉酸塩−FITC+IL−2+α−NKAbでの処置群についての生存時間の中間値は、それぞれ18、42、18.5日であった。図8に示す結果によると、NK細胞は、葉酸塩−FITCとIL−2との併用処置による腫瘍保持マウスの長期間生存についての相乗的上昇を仲介する。
【0052】
実施例9
M109腫瘍細胞に対する細胞性免疫の発達
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込みし、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)、IL−2(250,000IU/回)、IFN−α(25,000U/回)を共注射した。加えて、最初の腫瘍細胞の埋め込み後65日目に5x105M109細胞を、最初の腫瘍細胞の埋め込み後96日目に5x106M109細胞を、最初の腫瘍細胞の埋め込み後127日目に5x105Line1細胞(Balb/c 自発的肺腫瘍)をマウスに注射した。
【0053】
図9に示すように、5x105M109細胞を注射した対照マウスの生存期間の中間値は18.5日であった。5x106M109細胞を注射した対照マウスの生存期間の中間値は18日であった。5x105Line1細胞を注射した対照マウスの生存期間の中間値は23.5日であった。5x105M109細胞を注射し、IL−2およびIFN−αと併用の葉酸塩−FITCで処理し、62日目に5x105M109細胞を注射し、96日目に5x106M109細胞を注射し、127目に5x105Line1細胞を注射したマウスの生存期間の中間値は、192日以上であった。
【0054】
図9に示す結果によると、IL−2およびIFN−αと併用の葉酸塩−FITCで処置されたマウスにおいて長い持続的な細胞型特異的細胞性免疫が発達している。この長い持続的免疫は、M109細胞を埋め込み、葉酸塩標的免疫治療を与えたマウスにおいて、その後のM109細胞注射によって病気が再発するのを防止する。Line1細胞の最終注射後のマウスの生存期間は、M109細胞におけるよりも低いレベルでのLine1細胞おける葉酸塩受容体の存在によるのであろう。M109細胞とLine1細胞に共通する腫瘍抗原の存在で、Line1細胞と密接な関係をもち得るM109特異的細胞性免疫応答が生じる。
【0055】
実施例10
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIL−2投与の効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込み、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)およびIL−2を5x103IU(1x)、0.5x105IU(10x)、2.5x105IU(50x)、5x105IU(100x)で共注射した。これ以外は実施例1に記載の方法と同様である。加えて、FITC標識BSAよりもFITC標識鍵穴リンピット・ヘモシアニンで免疫付与した。図10に示すように、M109細胞を埋め込み、葉酸塩−FITCで処置したマウスの生存期間の中央値が、5x103IU以上にIL−2を増やすと、増加した。一方、対照マウス(M109細胞を注射し、PBSで処置したマウス)とIL−2単独で処置したマウスとの間には、生存期間の中央値に有意な差異を認めなかった。
【0056】
実施例11
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートおよびIL−2で処置したマウスの生存のIFN−αによる増大
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込み、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回)、または葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回)とIFN−α(25,000U/回)を共注射した。これ以外は実施例1に記載の方法と同様である。追加群のマウスに葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを共注射したが、PBS−FITCで予め免疫付与しなかった。図11に示すように、PBS処置の対照マウスの生存期間の中間値は18.5日であり、葉酸塩−FITCとIL−2を共注射したマウスの生存期間の中間値は20.5日であり、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを共注射したマウスの生存期間の中間値は60日より大きく、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを共注射し、予め免疫付与しなかったマウスの生存期間の中間値は24.3日であった。葉酸塩−FITCとIL−2を共注射したマウスの生存期間の中間値は、対照マウスの場合と有意の差異がなかった。なぜなら、マウスに5000IUのIL−2を注射し、そして実施例10に記載のように、5000IU以上のIL−2用量を、7、8、9、11、14日に葉酸塩−FITCで処置したマウス生存期間の中間値の増加に必要とするからである。図11に示す結果によると、IFN−αは、腫瘍細胞を埋め込んだマウスの葉酸塩−FITCとIL−2による処置の結果として起きる生存期間の中間値の増加をさらに高めた。
【0057】
実施例12
葉酸塩標的の免疫治療に対するCD8+T細胞除去の効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込み、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回)とIFN−α(25,000U/回)を共注射した。これ以外は実施例1に記載の方法と同様である。追加群のマウスにアミノフルオレセイン(1500nモル/kg)とIL−2とIFN−αまたは葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αと抗CD8+T細胞抗体(腹水の形態で、2、3、7、11、15日目)を共注射した。図12に示すように、抗CD8+T細胞抗体は、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αで処置したマウスの生存期間中間値の増加を阻止した。CD8+T細胞が葉酸塩標的の免疫治療による細胞性免疫応答の活性化において、役割を演じていることがわかる。対照としてアミノフルオレセインをIL−2、IFN−αサイトカインの組合せとともに注射した。この化合物は葉酸塩と結合しないので、腫瘍細胞に対する抗フルオレセイン抗体を再標的としないからである。図12に示すように、IL−2とIFN−αとアミノフルオレセインは、M109細胞を埋め込んだマウスの生存期間の中間値の増加について葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αよりも効果が低い。
【0058】
実施例13
IL−2およびIFN−αにより高められた葉酸塩標的の免疫治療に対するGM−CSFの増加効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。加えて、図13に示すように、マウスにIL−2(5000IU/回)、IFN−α(25,000U/回)、GM−CSF(3000U/回)を含む複数のサイトカインを注射した。サイトカインは、1500nモル/kgの葉酸塩−FITCをM109細胞埋め込み後4および7日目に注射した後、続けて5日間8〜12日目に共注射した。図13に示す結果によると、PBSで処置したマウスの生存期間の中間値は19日であり、IL−2とIFN−αとGM−CSF(葉酸塩−FITCなし)を注射したマウスの生存期間の中間値は22日であり、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αを注射したマウスの生存期間の中間値は38日であり、葉酸塩−FITCとIL−2とIFN−αとGM−CSFを注射したマウスの生存期間の中間値は57.5日より大きかった。結果によると、GM−CSFは、IL−2とIFN−αで処置したマウスにおいて葉酸塩標的の腫瘍細胞を殺すのをさらに増加する。PBSとIL−2とIFN−αとGM−CSFを注射したマウスの生存期間の中間値は、対照マウスと有意な差異がなく、葉酸塩−FITCによる腫瘍特異的免疫応答の標的化の重要性を示している。
【0059】
実施例14
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートで処置したマウスの生存に対するIFN−α投与の効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。マウスにPBS(対照)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIFN−αを1.5x105IU/回(6x)、7.5x104IU/回(3x)、2.5x104IU/回(1x)、7.5x103IU/回(0.3x)で共注射した。加えて、FITC標識BSAよりもFITC標識鍵穴リンピット・ヘモシアニンで免疫付与した。マウスに葉酸塩−FITCとIFN−αを、腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に注射した。図14に示すように、M109細胞を埋め込み、葉酸塩−FITCで処置したマウスの生存期間の中央値が、0.8x104IU以上にIFN−αを増やすと、増加した。
【0060】
実施例15
葉酸塩標的の免疫治療に対する免疫原としてのジニトロフェニルの効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、ジニトロフェニル(DNP)(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回/日)とIFN−α(2.5x104IU/日)または葉酸塩−ジニトロフェニル(DNP)(1500nモル/kg)とIL−2(5000IU/回/日)とIFN−α(2.5x104IU/日)を共注射した。加えて、DNP標識鍵穴リンピット・ヘモシアニン(KLH)でマウスに免疫付与した。図15に示すように、葉酸塩−DNPとIL−2とIFN−αで処置したマウスの生存期間の中央値が、対照マウス(PBMで処置)およびDNPとIL−2とIFN−αで処置したマウスに比べて増加した。すなわち、DNPは葉酸塩標的の免疫治療についての効果的な免疫原でもある。
【0061】
実施例16
葉酸塩−フルオレセインイソチオシアネート・コンジュゲートとIFN−αの相乗効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)、IFN−α単独(7.5x104IU/日)、葉酸塩−FITC単独(1500nモル/kg)を注射するか、葉酸塩−FITC(1500nモル/kg)とIFN−α(7.5x104IU/日)を共注射した。加えて、FITC標識BSAよりもFITC標識鍵穴リンピット・ヘモシアニン(KLH)でマウス(5匹/群)に免疫付与した。図16に示すように、PBS(対照)、IFN−α、葉酸塩−FITC、葉酸塩−FITCとIFN−αで処置したマウスの生存期間の中央値が、それぞれ17、17、23、33であった。この結果からして、IFN−αは、IL−2と同様に、葉酸塩−FITCと相乗的に作用し、腫瘍保持マウスの長期間生存を促進する。
【0062】
実施例17
マウスの長期間生存に対する免疫原としてのジニトロフェニルと高濃度でのサイトカインの効果
腫瘍細胞を実施例5に記載の場所に腹腔内埋め込む以外は実施例1に記載の方法と同様である。腫瘍細胞の埋め込み後7、8、9、11、14日に、マウスにPBS(対照)を注射するか、PBSとIL−2(2.5x104IU/日)とIFN−α(7.5x104IU/日)または葉酸塩−ジニトロフェニル(DNP)(1500nモル/kg)とIL−2(2.5x104IU/日)とIFN−α(7.5x104IU/日)を共注射した。加えて、DNP標識鍵穴リンピット・ヘモシアニン(KLH)でマウスに免疫付与した。図17に示すように、葉酸塩−DNPとIL−2とIFN−αで処置したマウスの生存期間の中央値が、対照マウス(PBSで処置)およびPBSとIL−2とIFN−αで処置したマウスに比して増加した。葉酸塩−DNPとIL−2とIFN−α(IL−2およびIFN−αの濃度は、それぞれ2.5x104IU/日および7.5x104IU/日)で処置したマウスは完全に緩解した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原性細胞集団(該細胞集団のメンバーはリガンドについての接近可能な結合部位を有する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
リガンドと免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)との複合体を含むリガンド免疫原コンジュゲート組成物;
治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を含む少なくとも1つの追加の組成物、
を投与する工程を含む方法。
【請求項2】
病原性細胞集団が癌細胞集団である、請求項1の方法。
【請求項3】
癌細胞集団が腫瘍原性である、請求項2の方法。
【請求項4】
病原性細胞集団が外因性病原体および外因性病原体を保持する内因性細胞集団である、請求項1の方法。
【請求項5】
外因性病原体が、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマ、寄生虫よりなる群から選ばれる、請求項4の方法。
【請求項6】
リガンドが、細胞膜受容体に特異的に結合し得るビタミンである、請求項1の方法。
【請求項7】
リガンドが、葉酸または他の葉酸塩の受容体結合リガンドよりなる群から選ばれる、請求項6の方法。
【請求項8】
リガンドが、共有結合、イオン結合または水素結合を含む結合を介して免疫原に化学的に複合している、請求項1の方法。
【請求項9】
リガンドが、リガンドのグルタミルγ-カルボキシ基のみを介して免疫原に共有結合するグルタミル部分を有する葉酸同族体である、請求項8の方法。
【請求項10】
リガンドが、リガンドのグルタミルα-カルボキシ基のみを介して免疫原に共有結合するグルタミル部分を有する葉酸同族体である、請求項8の方法。
【請求項11】
免疫原とリガンドとの共有結合が、免疫原との直接的共有結合によるか、または2価リンカーを介する共有結合よるものである、請求項9または10の方法。
【請求項12】
リガンドが、受容体に結合し得る小さい有機分子であり、該受容体が、該病原性細胞集団の表面で独自的に発現されるか、優先的に発現されるか、過剰に発現される、請求項1の方法。
【請求項13】
低有機分子が抗菌剤である、請求項12の方法。
【請求項14】
リガンドがβ-ラクタム抗生物質である、請求項1の方法。
【請求項15】
リガンド結合部位が、転移性癌細胞上で独自的に発現されるか、優先的に発現されるか、過剰に発現される抗原である、請求項1の方法。
【請求項16】
リガンド結合部位が、EphA2である、請求項15の方法。
【請求項17】
免疫原が、20,000ダルトン以下の分子量を有する有機分子である、請求項1の方法。
【請求項18】
有機分子がフルオレセインまたはジニトロフェニルである、請求項17の方法。
【請求項19】
免疫原がα-ガラクトシル基である、請求項1の方法。
【請求項20】
抗体が該宿主に外因性であり、該コンジュゲート組成物と共投与される、請求項1の方法。
【請求項21】
治療因子がサイトカインを含む、請求項1の方法。
【請求項22】
治療因子がIL-2、IL-12、IL-15またはこれらの組合せを含む、請求項21の方法。
【請求項23】
治療因子がIL-2、IL-12、IL-15またはこれらの組合せを、IFN-αまたはIFN-γと組み合せて含む、請求項21の方法。
【請求項24】
治療因子がIL-2、IL-12、IL-15またはこれらの組合せを、IFN-α、IFN-γまたはこれらの組合せおよびGM-CSFと組み合せて含む、請求項21の方法。
【請求項25】
治療因子が少なくとも1つのNK細胞またはT細胞の促進物質を含む、請求項21の方法。
【請求項26】
リガンド免疫原コンジュゲート組成物が複数回注射で投与される、請求項1の方法。
【請求項27】
宿主動物が免疫原に自然に予め曝露されており、宿主動物が免疫原に対する内因性抗体の存在により証明されるような該免疫原に対する既存の免疫性を有する、請求項1の方法。
【請求項28】
宿主動物が免疫原に、宿主動物の該免疫原に対する免疫応答を起動するような非天然のプロセスにより予め曝露されている、請求項1の方法。
【請求項29】
免疫応答を起動するような非天然のプロセスが、ワクチン接種である、請求項28の方法。
【請求項30】
免疫応答を起動するような非天然のプロセスが、活性免疫付与である、請求項28の方法。
【請求項31】
内因性免疫応答が液性免疫応答を含む、請求項1の方法。
【請求項32】
液性応答が獲得性免疫応答である、請求項31の方法。
【請求項33】
液性応答が先天性免疫応答である、請求項31の方法。
【請求項34】
獲得性免疫応答が、宿主動物にワクチン組成物を投与することにより誘導される、請求項32の方法。
【請求項35】
内因性免疫応答が細胞仲介免疫応答を含む、請求項1の方法。
【請求項36】
内因性免疫応答が液性および細胞仲介の免疫応答を含む、請求項1の方法。
【請求項37】
病原性細胞集団(該細胞集団はリガンドについて結合部位を発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、下記の工程:
宿主にリガンドと免疫原との複合体を含む組成物を投与すること;
宿主に免疫原に対する抗体を投与すること;
該宿主に、少なくとも1つの追加の治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を投与すること、
を含む方法。
【請求項38】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のγ-カルボキシ基のみを介する)、
を投与する工程を含む方法。
【請求項39】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体の結合部位を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のα-カルボキシ基のみを介する)、
を投与する工程を含む方法。
【請求項40】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体の結合部位を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のγ-カルボキシ基のみを介する);
治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を含む少なくとも1つの追加の組成物、
を投与する工程を含む方法。
【請求項41】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のα-カルボキシ基のみを介する);
治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を含む少なくとも1つの追加の組成物、
を投与する工程を含む方法。
【請求項42】
治療的に有効量のリガンド免疫原コンジュゲート(コンジュゲートは、獲得性または先天性免疫応答、共投与の抗体により、または宿主中の免疫細胞により直接的に、病原性細胞集団の特異的消失のために、宿主動物における該細胞集団に特異的に結合し得る)、治療因子(治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選ばれる)およびこれらの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項43】
非経口的持続放出用量形態における、請求項42の医薬組成物。
【請求項44】
治療因子が免疫促進物質である、請求項42の医薬組成物。
【請求項45】
免疫促進物質が、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-γ、GM-CSFよりなる群から選ばれる化合物またはこれらの組合せを含む、請求項44の医薬組成物。
【請求項1】
病原性細胞集団(該細胞集団のメンバーはリガンドについての接近可能な結合部位を有する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
リガンドと免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)との複合体を含むリガンド免疫原コンジュゲート組成物;
治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を含む少なくとも1つの追加の組成物、
を投与する工程を含む方法。
【請求項2】
病原性細胞集団が癌細胞集団である、請求項1の方法。
【請求項3】
癌細胞集団が腫瘍原性である、請求項2の方法。
【請求項4】
病原性細胞集団が外因性病原体および外因性病原体を保持する内因性細胞集団である、請求項1の方法。
【請求項5】
外因性病原体が、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマ、寄生虫よりなる群から選ばれる、請求項4の方法。
【請求項6】
リガンドが、細胞膜受容体に特異的に結合し得るビタミンである、請求項1の方法。
【請求項7】
リガンドが、葉酸または他の葉酸塩の受容体結合リガンドよりなる群から選ばれる、請求項6の方法。
【請求項8】
リガンドが、共有結合、イオン結合または水素結合を含む結合を介して免疫原に化学的に複合している、請求項1の方法。
【請求項9】
リガンドが、リガンドのグルタミルγ-カルボキシ基のみを介して免疫原に共有結合するグルタミル部分を有する葉酸同族体である、請求項8の方法。
【請求項10】
リガンドが、リガンドのグルタミルα-カルボキシ基のみを介して免疫原に共有結合するグルタミル部分を有する葉酸同族体である、請求項8の方法。
【請求項11】
免疫原とリガンドとの共有結合が、免疫原との直接的共有結合によるか、または2価リンカーを介する共有結合よるものである、請求項9または10の方法。
【請求項12】
リガンドが、受容体に結合し得る小さい有機分子であり、該受容体が、該病原性細胞集団の表面で独自的に発現されるか、優先的に発現されるか、過剰に発現される、請求項1の方法。
【請求項13】
低有機分子が抗菌剤である、請求項12の方法。
【請求項14】
リガンドがβ-ラクタム抗生物質である、請求項1の方法。
【請求項15】
リガンド結合部位が、転移性癌細胞上で独自的に発現されるか、優先的に発現されるか、過剰に発現される抗原である、請求項1の方法。
【請求項16】
リガンド結合部位が、EphA2である、請求項15の方法。
【請求項17】
免疫原が、20,000ダルトン以下の分子量を有する有機分子である、請求項1の方法。
【請求項18】
有機分子がフルオレセインまたはジニトロフェニルである、請求項17の方法。
【請求項19】
免疫原がα-ガラクトシル基である、請求項1の方法。
【請求項20】
抗体が該宿主に外因性であり、該コンジュゲート組成物と共投与される、請求項1の方法。
【請求項21】
治療因子がサイトカインを含む、請求項1の方法。
【請求項22】
治療因子がIL-2、IL-12、IL-15またはこれらの組合せを含む、請求項21の方法。
【請求項23】
治療因子がIL-2、IL-12、IL-15またはこれらの組合せを、IFN-αまたはIFN-γと組み合せて含む、請求項21の方法。
【請求項24】
治療因子がIL-2、IL-12、IL-15またはこれらの組合せを、IFN-α、IFN-γまたはこれらの組合せおよびGM-CSFと組み合せて含む、請求項21の方法。
【請求項25】
治療因子が少なくとも1つのNK細胞またはT細胞の促進物質を含む、請求項21の方法。
【請求項26】
リガンド免疫原コンジュゲート組成物が複数回注射で投与される、請求項1の方法。
【請求項27】
宿主動物が免疫原に自然に予め曝露されており、宿主動物が免疫原に対する内因性抗体の存在により証明されるような該免疫原に対する既存の免疫性を有する、請求項1の方法。
【請求項28】
宿主動物が免疫原に、宿主動物の該免疫原に対する免疫応答を起動するような非天然のプロセスにより予め曝露されている、請求項1の方法。
【請求項29】
免疫応答を起動するような非天然のプロセスが、ワクチン接種である、請求項28の方法。
【請求項30】
免疫応答を起動するような非天然のプロセスが、活性免疫付与である、請求項28の方法。
【請求項31】
内因性免疫応答が液性免疫応答を含む、請求項1の方法。
【請求項32】
液性応答が獲得性免疫応答である、請求項31の方法。
【請求項33】
液性応答が先天性免疫応答である、請求項31の方法。
【請求項34】
獲得性免疫応答が、宿主動物にワクチン組成物を投与することにより誘導される、請求項32の方法。
【請求項35】
内因性免疫応答が細胞仲介免疫応答を含む、請求項1の方法。
【請求項36】
内因性免疫応答が液性および細胞仲介の免疫応答を含む、請求項1の方法。
【請求項37】
病原性細胞集団(該細胞集団はリガンドについて結合部位を発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、下記の工程:
宿主にリガンドと免疫原との複合体を含む組成物を投与すること;
宿主に免疫原に対する抗体を投与すること;
該宿主に、少なくとも1つの追加の治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を投与すること、
を含む方法。
【請求項38】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のγ-カルボキシ基のみを介する)、
を投与する工程を含む方法。
【請求項39】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体の結合部位を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のα-カルボキシ基のみを介する)、
を投与する工程を含む方法。
【請求項40】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体の結合部位を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のγ-カルボキシ基のみを介する);
治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を含む少なくとも1つの追加の組成物、
を投与する工程を含む方法。
【請求項41】
病原性細胞集団(該細胞集団は葉酸受容体を独自的に発現するか、優先的に発現するか、過剰に発現する)を保持する宿主動物における該細胞集団の内因性免疫応答仲介による特異的消失を高める方法であって、該宿主に下記のもの:
免疫原(該免疫原は、宿主動物において内因性または外因性の抗体により認識されることが知られているか、または宿主動物において免疫細胞により直接的に認識されることが知られている)の共有結合コンジュゲートを含む組成物;
グルタミル基を有する葉酸またはその同族体を含むリガンド(免疫原との共有結合はグルタミル基のα-カルボキシ基のみを介する);
治療因子(該治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物)を含む少なくとも1つの追加の組成物、
を投与する工程を含む方法。
【請求項42】
治療的に有効量のリガンド免疫原コンジュゲート(コンジュゲートは、獲得性または先天性免疫応答、共投与の抗体により、または宿主中の免疫細胞により直接的に、病原性細胞集団の特異的消失のために、宿主動物における該細胞集団に特異的に結合し得る)、治療因子(治療因子は、殺細胞物質、腫瘍透過エンハンサー、化学療法剤、抗菌剤、細胞毒性免疫細胞、リガンド免疫原コンジュゲートに結合しないで内因性免疫応答を促進し得る化合物よりなる群から選ばれる)およびこれらの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項43】
非経口的持続放出用量形態における、請求項42の医薬組成物。
【請求項44】
治療因子が免疫促進物質である、請求項42の医薬組成物。
【請求項45】
免疫促進物質が、IL-2、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-γ、GM-CSFよりなる群から選ばれる化合物またはこれらの組合せを含む、請求項44の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−92097(P2012−92097A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−225070(P2011−225070)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2001−572124(P2001−572124)の分割
【原出願日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願人】(399026502)パーデュー・リサーチ・ファウンデイション (2)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225070(P2011−225070)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2001−572124(P2001−572124)の分割
【原出願日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願人】(399026502)パーデュー・リサーチ・ファウンデイション (2)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
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