説明

リグナンの生合成を触媒する酵素をコードする遺伝子、およびその利用

本発明は、ピノレジノールからピペリトールへの反応、およびピペリトールからセサミンへの反応を触媒する酵素、ならびに当該酵素をコードする遺伝子を提供する。本発明はさらに、上記酵素をコードする遺伝子を含むベクターおよび形質転換体、ならびに当該形質転換体を用いるタンパク質生産方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ゴマのピペリトールおよびセサミンの生合成を触媒する酵素、当該酵素をコードする遺伝子、並びに当該タンパク質および当該遺伝子の利用に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
一般的にゴマ(Sesamum indicum)として知られている植物は、ゴマ科ゴマ属(Sesamum)に属している。ゴマの原産地は中央アフリカで、6000年ほどの歴史をもつ最古の栽培油糧植物であり、ゴマは世界中で栽培されてきた。
【0003】
ゴマ種子は、約50%の脂質と、約20%のタンパク質をその成分として含む。ゴマ種子はさらに、ビタミンB1、B2、およびEなども含む。ゴマ種子は、オレイン酸とリノール酸とを主な構成要素とするトリグリセリドを脂質の主成分として含み、さらなる特徴的な成分としてセサミン、セサモリンなどのリグナンと総称される植物の二次代謝物を含む。
【0004】
このセサミンは、多様な生理活性を有することが明らかにされており、コレステロール代謝、肝機能および免疫機能の改善に有効であることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。セサミンをゴマ種子あるいはゴマ種子の絞り粕から分離精製する方法はすでに実用化されており(例えば、特許文献1、2参照)、セサミンを主成分とする、アルコール分解促進作用などを有する肝機能活性増強剤が市販されている。また、セサミン以外のゴマリグナン(セサミノール、セサモリンなど)もまた、生理活性作用を有することが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
リグナンの生合成について、当該分野において若干の知見がある(例えば、非特許文献3参照)。図1に、一般的に知られているリグナンの生合成経路の模式図を示す。リグナンは、フェニルプロパノイド化合物を出発物質として合成され、植物においては植物の生体防御機構に寄与していると考えられている。図1に示すように、コニフェリルアルコールが重合して合成されるピノレジノールが、生合成における最初のリグナンであり、ピノレジノールから各植物種に特有の生合成経路を経て、多様なリグナンが合成される。
【0006】
また、セサミンの生合成に関しては、図1に示すように、ピペリトール合成酵素が(+)−ピノレジノールを触媒し、メチレンジオキシブリッジ(図中、円で囲んだ領域)が一箇所形成する酵素学的作用によって、ピペリトールが合成される。次いで、セサミン合成酵素がこのピペリトールにメチレンジオキシブリッジをさらにもう一箇所形成することによって、セサミンが合成される。さらに、上記両者の反応を触媒する酵素がそれぞれ異なる2種類のチトクロームP450であるということが、ゴマ種子の膜画分を用いた実験で示されている(例えば、非特許文献4参照)。
【0007】
上記メチレンジオキシブリッジの形成は、アルカロイドやフラボノイドの生合成においてしばしば見られる。例えばEschscholtzia californica培養細胞の膜画分には、(S)-scoulerineおよび(S)-cheilanthifolineにメチレンジオキシブリッジを形成することによって、それぞれ(S)-cheilanthifolineおよび(S)-stylopineを生成する反応を触媒するチトクロームP450が存在することが知られている(例えば、非特許文献5参照)。
【0008】
また、ヒヨコマメ(Cicer arietinum)の培養細胞の膜画分には、カリコシン(calycosin)およびプラテンセイン(pratensein)にメチレンジオキシブリッジを形成することによって、それぞれシュードパプティゲニンおよび5’−ヒドキシシュードパプティゲニンを生成する反応を触媒する酵素が存在し、その酵素がチトクロームP450であるということが報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
【0009】
また、Linum flavumの培養細胞におけるデオキシポドフィロトキシン(deoxypodophyllotoxin)6-水酸化酵素がチトクロームP450であるということが示唆されている(例えば、非特許文献7参照)。
【0010】
また、(S)-tetrahydrocolimbamineにメチレンジオキシブリッジを形成することによって(S)-tetrahydroberberineを合成する、ベンジルイソキノリンアルカロイドであるベルベリンの生合成に関与する酵素は、やはりチトクロームP450であり、これをコードする遺伝子がCoptis japonicaからクローニングされている(例えば、非特許文献8参照)。
【0011】
上述のような種々の反応を触媒するチトクロームP450は、多様な分子種からなるスーパーファミリーを形成しており、そのアミノ酸配列の相同性によって分類される。概ね同一性が40%以上であるものをファミリー、55%以上であるものをサブファミリーとして分類し、ファミリーは数字で、サブファミリーはアルファベットで示される(例えば、非特許文献9参照)。各ファミリーおよびその相互関係については、図3に系統樹として示す。例えば、上述したベルベリンの生合成に関わるチトクロームP450は「CYP719」に属するとみなされている。
【0012】
チトクロームP450は、1つの植物種において数百分子種存在する。しかし、図4に示すように、これらのうち生化学的な機能または生理的な機能が同定されているチトクロームP450分子種は少数である。
【0013】
ゴマ由来のチトクロームP450としては、本発明に関係するセサミンやピペリトールの合成反応とは直接的には関係しないが、p-coumarate 3-hydroxylaseをコードする遺伝子 (AY065995) がクローニングされている。
【0014】
他の生物種におけるチトクロームP450遺伝子のクローニングとその機能解析は、以下のようにいくつかの報告がある。
【0015】
例えば、
・ペチュニア由来のフラボノイド3’,5’水酸化酵素(F3’,5’H)遺伝子(例えば、非特許文献10参照);
・フラボノイド3’−水酸化酵素(F3’H:CYP75B)遺伝子(例えば、非特許文献11参照);
・カンゾウ由来の(2S)−フラバノン 2−水酸化酵素(F2H:CYP93B1)(例えば、非特許文献12参照);
・2−ヒドロキシ−イソフラバノン合成酵素(IFS:CYP93C2)(例えば、非特許文献13参照);
・イソフラボン 2’−水酸化酵素(I2’H:CYP81E1)(例えば、非特許文献14参照)
をコードする遺伝子がクローニングされている。
【0016】
また、フラボン合成酵素II(FNSII,CYP93B3)(例えば、非特許文献15参照)をコードする遺伝子が、I2’Hを用いてキンギョソウからクローニングされている。
【0017】
また、CYP81ファミリーに属するチトクロームP450のアミノ酸配列は、「http://drnelson.utmem.edu/CytochromeP450.html」に数多く記載されている。それらの機能としては、Helianthus tuberosus由来のCYP81B1が脂肪酸の水酸化反応を触媒すること(非特許文献16)、前述のI2’HがCPY81Eに属することが知られている。
【0018】
しかし、これら列挙したチトクロームP450は、メチレンジオキシブリッジ形成には関与しない。
【0019】
リグナンの生合成に関わる酵素の遺伝子としては、レンギョウ(Forsythia intermedia)などにおけるピノレジノールの合成に関与するdirigent proteinが、報告されている(例えば、非特許文献17、特許文献3参照)。また、レンギョウのピノレジノール−ラリシレジノール還元酵素の遺伝子(非特許文献18、特許文献3)、およびThuja plicataのピノレジノール−ラリシレジノール還元酵素の遺伝子(非特許文献19)が報告されている。組換えセコイソラリシレシノールデヒドロゲナーゼおよびその使用方法についても報告されている(特許文献4、非特許文献20)。
〔特許文献1〕
特開2001−139579公報(公開日:2001年5月22日)
〔特許文献2〕
特開平10−7676号公報(公開日:平成10(1998)年1月13日)
〔特許文献3〕
特表2001−507931公報(公表日:2001年6月19日)
〔特許文献4〕
特表2002−512790公報(公表日:2002年5月8日)
〔非特許文献1〕
並木満夫著 「ゴマ その科学と機能性」丸善プラネット社出版
〔非特許文献2〕
日本農芸化学会誌 76 805-813 2002
〔非特許文献3〕
Lignans: biosynthesis and function, Comprehensive natural products chemistry vol 1. 640-713, 1999
〔非特許文献4〕
Phytochemisity, 49, 387, 1998
〔非特許文献5〕
Phytochemisity, 30, 2953, 1991
〔非特許文献6〕
Phytochemisity, 41, 457, 1996
〔非特許文献7〕
Planta, 214, 288, 2001
〔非特許文献8〕
J Biol Chem. 2003, May 5 [Epub ahead of print].
〔非特許文献9〕
Nelson et al. Pharmacogenetics 6, 1-42, 1996
〔非特許文献10〕
Nature 366 276-279, 1993
〔非特許文献11〕
Plant J. 19, 441-451, 1999
〔非特許文献12〕
FEBS Letters, 431,287, 1998
〔非特許文献13〕
Plant Physiology, 121, 821, 1999
〔非特許文献14〕
Biochemical and Biophysical Research Communications, 251, 67, 1998
〔非特許文献15〕
Plant and Cell Physiology, 40, 1182, 1999
〔非特許文献16〕
J. Biol. Chem. 273, 7260, 1998
〔非特許文献17〕
Plant Physiol. 123, 453, 2000
〔非特許文献18〕
J. Biol. Chem. 271, 29473, 1996
〔非特許文献19〕
J. Biol. Chem. 271, 618, 1999
〔非特許文献20〕
J. Biol. Chem. 2001 Apr 20;276(16):12614-23, Epub 2001 Jan 18。
【0020】
上述したように、セサミンは多様な生理活性を有し、様々の改善効果を有する物質であることが明らかにされている。しかしながら、従来のセサミンの生産方法は、上述したようなゴマ種子から得る方法しか存在しない。従って、セサミンの生産はゴマ種子に依存し、その結果、セサミンの生産量の拡大および/または生産コストの削減は困難である。
【0021】
このような課題を解決するためには、遺伝子工学手法を用いることが好ましい。しかし、ゴマ種子においてセサミンの生合成に関与することが明らかとなった上記2種のチトクロームP450について、これらの酵素は未だ精製されておらず、これらをコードする遺伝子も未だクローニングされていない。さらに、他の生物種においてメチレンジオキシブリッジを形成する上記チトクロームP450についても、これらの酵素は未だ精製されておらず、これらをコードする遺伝子も未だクローニングされていない。また、上述したような他のチトクロームP450に関しても、これらの酵素は未だ精製されておらず、これらをコードする遺伝子も未だクローニングされていない。さらに、クローニングされた他の生物種におけるリグナンの生合成酵素は、セサミンおよび/またはピペリトールの合成に関与する酵素ではなかった。
【0022】
ゴマ種子由来の遺伝子としてクローニングされた遺伝子がいくつか存在する。例えば、種子の貯蔵タンパク質であるグロブリンとしてAF240004、AF240005、AF240006など、脂質の合成や貯蔵に関わる遺伝子としてはオレオシン(J Biochem. 122:819-24. 1997)、アシルキャリアータンパク質不飽和化酵素(Plant Cell Physiol. 1996 37,201-5)、ステロレオシン(Plant Physiol. 2002 128:1200-11)、脂肪酸不飽和化酵素(Plant Sci. 161 935-941 (2001))など。しかし、これらはリグナン合成に関与する遺伝子ではない。
【0023】
このように、リグナン合成に関与する酵素をコードする遺伝子は、未だ明らかになっていない。従って、このような酵素および当該酵素をコードする遺伝子の同定が強く望まれていた。
【0024】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、リグナンの水酸基とメチル基からメチレンジオキシブリッジを形成する反応を触媒する酵素、好ましくはピノレジノールからピペリトールへの反応および/またはピペリトールからセサミンへの反応を触媒する酵素の遺伝子を同定し、得られたゴマ由来酵素の遺伝子を用いて、組換え生物などからセサミンおよび/またはピペリトールを生産する方法を実現することである。
【0025】
〔発明の開示〕
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ゴマ種子cDNAライブラリーからゴマ種子チトクロームP450遺伝子群(以下、SiP遺伝子)を取得し、これらを酵母において発現させた。そして、その組換え酵母からミクロソーム画分を回収し、ピノレジノールまたはピペリトールと反応させ、それぞれからピペリトールまたはセサミンが生成されるかどうかをHPLC分析によって調べた。その結果、ピノレジノールからピペリトールへの反応、およびピペリトールからセサミンへの反応を触媒するタンパク質およびその遺伝子を同定し、本発明を完成させるに至った。
【0026】
すなわち、本発明は産業上有用な物質または方法として、下記1)〜21)の発明を含むものである。
【0027】
1)ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子(ピノレジノールからピペリトール、および/またはピペリトールからセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子)。
【0028】
2)ピノレジノールおよび/またはピペリトールにメチレンジオキシブリッジを形成する反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子。
【0029】
3)ピペリトールおよび/もしくはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードし、かつ以下(a)もしくは(b)からなる遺伝子:
(a)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列の1個またはそれ以上のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/もしくは付加によって改変されているアミノ酸配列。
【0030】
4)ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードし、かつ配列番号1、64または78に示されるアミノ酸配列に対して50%以上の相同性を有するアミノ酸からなる遺伝子。
【0031】
5)配列番号2、65または79に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。
【0032】
6)ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードし、かつ以下の(a)〜(c)のいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子:
(a)配列番号2、65もしくは79に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号1、64もしくは78に示されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;あるいは
(c)(a)または(b)に示されるポリヌクレオチドの断片。
【0033】
7)ゴマ由来である、上記1)〜6)のいずれか1つに記載の遺伝子。
【0034】
8)上記1)〜7)のいずれか1つに記載の遺伝子によりコードされるタンパク質。
【0035】
9)ピペリトールおよび/もしくはセサミンの生合成を触媒し、かつ以下(a)または(b)からなるタンパク質:
(a)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列の1個またはそれ以上のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/もしくは付加によって改変されているアミノ酸配列。
【0036】
10)上記8)または9)に記載のタンパク質を認識する抗体。
【0037】
11)上記1)〜7)のいずれか1つに記載の遺伝子を含有する組換え発現ベクター。
【0038】
12)上記1)〜7)のいずれか1つに記載の遺伝子を含有する組換え発現ベクターを含む形質転換体。
【0039】
13)上記12)に記載の形質転換体を培養または生育させる工程、ならびに該形質転換体からピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質を得る工程を包含するタンパク質の生産方法。
【0040】
14)上記1)〜7)のいずれか1つに記載の遺伝子が導入された植物もしくは該植物の子孫またはこれらの組織。
【0041】
15)上記1)〜7)のいずれか1つに記載の遺伝子、あるいは8)または9)に記載のタンパク質を用いる工程を包含する、ピペリトールおよび/またはセサミンの生産方法。
【0042】
16)上記1)〜7)のいずれかに記載の遺伝子を用いる工程を包含する、リグナン高含有の形質転換体を生産する方法。
【0043】
17)上記1)〜7)のいずれかに記載の遺伝子を用いる工程を包含する、ピペリトールおよび/またはセサミン高含有の植物体を生産する方法。
【0044】
18)上記1)〜7)のいずれかに記載の遺伝子を用いる工程を包含する、リグナン低含有の形質転換体を生産する方法。
【0045】
19)上記1)〜7)のいずれかに記載の遺伝子を用いる工程を包含する、ピペリトールおよび/またはセサミン低含有の植物体を生産する方法。
【0046】
20)上記1)〜7)のいずれかに記載の遺伝子を用いる工程を包含する、ゴマを育種する方法。
【0047】
21)ポリヌクレオチドプローブを備えている遺伝子検出器具であって、該プローブの塩基配列が、上記1)〜7)のいずれか1つに記載の遺伝子における少なくとも一部分の塩基配列またはその相補配列からなる、遺伝子検出器具。
【0048】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、ゴマリグナンの一般的な合成経路を模式的に示す図である。1:コニフェリルアルコール;2:ピノレジノール;3:ピペリトール合成酵素;4:ピペリトール;5:セサミン合成酵素;6:セサミン。
【0049】
図2a〜図2fは、SiP189遺伝子がコードする酵素の活性を測定したHPLCの結果を示す図である。
【0050】
図3は、チトクロームP450のコードするアミノ酸の一次構造解析から得られる樹系図である。
【0051】
図4は、SiP189遺伝子がコードするタンパク質との相同性検索の結果を示す図である。
【0052】
図5は、SiP189遺伝子のサザン解析の結果を示す図である。
【0053】
図6a〜図6dは、SrSiP189遺伝子がコードするタンパク質の活性を測定したHPLC分析の結果を示す図である。
【0054】
図7は、形質転換タバコにおけるSiP遺伝子の発現解析の結果を示す図である。
【0055】
図8a〜図8dは、植物細胞内におけるSiPタンパク質の機能解析の結果を示す図である。
【0056】
図9A〜図9Hは、発現調節エレメントについてSiP189遺伝子のプロモーター領域を解析した結果を示す図である。
【0057】
図10は、SiP189遺伝子のプロモーター領域に存在する発現調節エレメントを示す図である。
【0058】
図11A〜図11Hは、発現調節エレメントについてSrSiP189遺伝子のプロモーター領域を解析した結果を示す図である。
【0059】
図12A〜図12Cは、SiP189遺伝子とSrSiP遺伝子との間での相同性の比較を示す図である。
【0060】
〔発明を実施するための最良の形態〕
本発明の実施の形態について以下に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0061】
(1)本発明に係る遺伝子および該遺伝子がコードするタンパク質の構造
本発明に係る遺伝子は、ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする。ここでいう「ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成」とは、ピノレジノールからピペリトール、および/またはピペリトールからセサミンの生合成をいい、より詳細には、ピノレジノールおよび/またはピペリトールに対してメチレンジオキシブリッジを形成する反応いう。本実施の形態では、本発明に係る遺伝子として、ゴマ種子由来のピペリトールおよびセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子SiP189(配列番号2に示す塩基配列)を挙げて説明する。なお本願では、オープンリーディングフレーム領域を、開始コドンから終止コドン直前までの領域とする。
【0062】
(1−1)本発明に係る遺伝子
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
【0063】
本発明の遺伝子としては、例えば、配列番号1、64または78に示されるアミノ酸配列をコードするものが挙げられる。しかしながら、複数個のアミノ酸の付加、欠失および/または他のアミノ酸との置換によって修飾されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、もとのタンパク質と同様の酵素活性を維持し得ることが知られている。すなわち本発明には、ピペリトールおよびセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子である限り、(a)配列番号1、64または78に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、(b)上記アミノ酸配列において、1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。このような遺伝子として、例えば、配列番号2、65または79に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)として有する遺伝子が挙げられる。なお、後述する実施例でも説明するが、本発明に係る遺伝子は、チトクロームP450タンパク質をコードする遺伝子とも換言することができる。
【0064】
ここで、「1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加された」とは、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh,Gene 152,271-275(1995)他)等の公知の変異タンパク質作製法を用いて、置換、欠失、挿入、および/または付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されることを意味する。したがって、上記(b)のタンパク質をコードする遺伝子は、上記(a)のタンパク質の変異タンパク質をコードする遺伝子である。また、本明細書中で使用される場合、「変異タンパク質」は、主として公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異タンパク質を意味するが、天然から単離精製された同様の変異タンパク質であってもよい。
【0065】
なお、本発明に係る遺伝子は、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖のDNAまたはRNAであり得る。アンチセンス鎖は、プローブとしてまたはアンチセンス薬剤として利用することができる。DNAには、クローニング技術もしくは化学合成技術、またはこれらの組み合わせを用いて得られるcDNAまたはゲノムDNAなどが含まれる。さらに、本発明に係る遺伝子は、上記(a)または(b)のアミノ酸をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含んでもよい。
【0066】
さらに、本発明に係る遺伝子は、配列番号1、64または78に示されるアミノ酸配列に対して、20%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%または70%以上の相同性を有するタンパク質であって、かつピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子も含み、かかる遺伝子もリグナン量の制御または植物育種に利用することができる。なお、本明細書中で使用される場合、「相同性」とは、アミノ酸配列中に占める同じ配列の割合であり、この値が高いほど両者は近縁な関係であるといえる。
【0067】
さらに、本発明に係る遺伝子は、配列番号2、65または79に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号1、64または78に示されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド、あるいはこれらのポリヌクレオチドの断片であり得、例えば、6個以上のアミノ酸をコードする塩基配列(すなわち、18個の塩基)からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97%の同一性が配列間に存在するときにのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。具体的には、例えば、5×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし得る条件を挙げることができる。
【0068】
上記ハイブリダイゼーションは、J.Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual,2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)などに記載されている公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、および/または塩濃度が低いほど、ストリンジェンシーは高くなる(ハイブリダイズし難くなる)。なお、適切なハイブリダイゼーション温度は、塩基配列やその塩基配列の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとした場合には50℃以下の温度が好ましい。
【0069】
上記のハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子としては、天然由来の遺伝子(例えば、植物由来の遺伝子(例えば、コケ科植物由来の遺伝子))が挙げられるが、植物以外由来の遺伝子であってもよい。また、上記のハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子はcDNAであってもよく、ゲノムDNAであってもよい。
【0070】
(1−2)本発明に係るタンパク質
本発明に係るタンパク質は、上記(1−1)欄に記載した本発明に係る遺伝子にコードされるタンパク質であればよい。このようなタンパク質であれば、ピノレジノールからピペリトール、またはピペリトールからセサミンの生合成を触媒する。なお、本発明には、ピノレジノールまたはピペリトールに対してメチレンジオキシブリッジを形成する反応を触媒するタンパク質も含まれる。かかるタンパク質として、例えば、上述の(a)配列番号1、64または78に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、または(b)上記アミノ酸配列において、1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒する作用を有するタンパク質を挙げられる。
【0071】
本発明に係るタンパク質は、上記(1−1)欄に記載した本発明に係る遺伝子を宿主細胞に導入して、そのタンパク質を細胞内で発現させた状態であってもよいし、細胞または組織などから単離精製された状態であってもよい。また、本発明に係るタンパク質は、他のタンパク質との融合タンパク質であってもよい。さらに本発明に係るタンパク質は、化学合成されたものであってもよい。
【0072】
なお、本発明に係るタンパク質は、アミノ酸がペプチド結合してなるポリペプチドであればよいが、これに限定されず、ポリペプチド以外の構造を含む複合タンパク質であってもよく、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。ポリペプチドが付加される場合としては、例えば、HisやMyc、Flag等の種々のエピトープトープが本発明に係るタンパク質にタグ化されるような場合が挙げられる。
【0073】
(2)本発明に係る遺伝子およびタンパク質の取得方法
本発明に係る遺伝子およびタンパク質の取得方法(生産方法)は特に限定されるものではないが、代表的な方法として次に示す各方法を挙げることができる。
【0074】
(2−1)遺伝子の取得方法
天然の塩基配列を有する遺伝子について、本発明に係る遺伝子は、後述する実施例に具体的に示すように、例えば、cDNAライブラリーのスクリーニングによって取得され得る。
【0075】
あるいは、本発明に係る遺伝子は、PCR等の増幅手段を取得され得る。例えば、本発明に係る遺伝子のcDNA配列のうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)に基づいてプライマーを設計し、これらのプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCRを行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明に係る遺伝子を含むDNA断片を大量に取得し得る。
【0076】
また、所望の配列を有するポリヌクレオチドは、遺伝子配列情報に基づいて、公知の化学合成を用いて合成されてもよい。
【0077】
修飾されたアミノ酸配列を有する酵素をコードするDNAについては、生来の塩基配列を有するDNAに対して、常用の部位特異的変異誘発法またはPCR法を適用して合成することができる。例えば、修飾を導入すべきDNA断片を生来のcDNAまたはゲノムDNAの制限酵素処理によって得て、これを鋳型にして、所望の変異を導入したプライマーを用いて部位特異的変異誘発またはPCR法を実施し、所望の修飾を導入したDNA断片を得る。その後、この変異を導入したDNA断片のDNA断片を、目的酵素をコードするポリヌクレオチド(DNA)から、このDNA断片と対応する領域を除いたポリヌクレオチドと連結すればよい。あるいは、短縮されたアミノ酸配列からなる酵素をコードするDNAを得るには、例えば、目的とするアミノ酸配列より長いアミノ酸配列(例えば、全長アミノ酸配列)をコードするDNAを所望の制限酵素により切断することによって得ることができる。得られたDNA断片が目的とするアミノ酸配列の全体をコードしていない場合は、不足部分の配列からなるDNA断片を合成して連結すればよい。
【0078】
また、得られた遺伝子を大腸菌または酵母での遺伝子発現系を用いてコードされるタンパク質を発現させる。このタンパク質の酵素活性を測定することによって、得られた遺伝子がピノレジノールからピペリトール、またはピペリトールからセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子であることを確認することができる。さらに、当該遺伝子を細胞内に導入することによって、当該遺伝子の産物である、ピノレジノールからピペリトールの生合成またはピペリトールからセサミンの生合成を触媒するタンパク質を得ることができる。
【0079】
あるいは、配列番号1、64または78に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体を用いて他の生物のピペリトールおよびセサミン合成酵素遺伝子をクローン化することもできる。
【0080】
(2−2)タンパク質の取得方法
本発明に係るタンパク質を取得する方法(生産方法)としては、本発明に係るタンパク質を発現する細胞、組織などから単純精製する方法が挙げられるが、これに限定されない。なお、本発明に係るタンパク質を発現する細胞または組織は、自然発生型のものでもよく、例えば、組換えバキュロウイルスに感染した細胞、組織であってもよい。精製方法は、限定されないが、上述したように本発明に係る遺伝子を含む発現ベクターによって形質転換された宿主を、培養、栽培または飼育した後、常法に従って、例えば、濾過、遠心分離、細胞の破砕(細胞融解)、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等によって、培養物から目的とするタンパク質を回収および/または精製すればよい。
【0081】
また、本発明に係るタンパク質を取得する方法としては、遺伝子組換え技術等を用いる方法が挙げられる。この場合、例えば、本発明に係る遺伝子をベクターなどに組み込んだ後、公知の方法を用いて発現可能に宿主細胞に導入し、細胞内で翻訳されて得られる上記タンパク質を精製する方法などを用いることができる。遺伝子の導入(形質転換)または遺伝子の発現等の具体的な方法については後述する。
【0082】
あるいは、配列番号1、64または78に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に対する抗体を用いても、ピペリトールおよびセサミン合成酵素のタンパク質を得ることができる。さらにこの抗体を用いて、他の生物のピペリトールおよびセサミンの生合成を触媒するタンパク質および当該タンパク質をコードする遺伝子をクローニングすることもできる。
【0083】
なお、このように宿主に外来遺伝子を導入する場合、宿主、および外来遺伝子を発現させるために宿主内で機能するプロモーターを組み入れた発現ベクターとしては様々なものが存在するが、目的に応じたものを適宜選択すればよい。産生されたタンパク質を精製する方法は、用いた宿主または目的のタンパク質の性質によって異なるが、タグ等の利用することによって比較的容易に目的のタンパク質を精製することができる。
【0084】
変異タンパク質を作製する方法についても、特に限定されない。例えば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh,Gene 152,271-275(1995)他)またはPCR法を利用して塩基配列に点変異を導入し変異タンパク質を作製する方法、あるいはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の変異タンパク質作製法を用いることができる。これら方法を用いることによって、上記(a)のタンパク質をコードするcDNAの塩基配列において、1またはそれ以上の塩基が置換、欠失、挿入、および/または付加されるように改変を加えることによって作製することができる。また、変異タンパク質の作製には、市販のキットを利用してもよい。
【0085】
また、本発明に係るタンパク質は、取得方法が上述に限定されることなく、例えば、市販されているペプチド合成器等を用いて化学合成されてもよい。またその他の例としては、無細胞系のタンパク質合成液(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 78, 5598―5602 (1981)、J.Biol.Chem.、253, 3753―3756 (1978)など)を利用して、本発明に係る遺伝子から本発明に係るタンパク質を合成してもよい。
【0086】
(3)本発明に係る抗体
本発明に係る抗体は、上記(1−2)欄に記載した本発明に係るタンパク質(例えば、上記(a)もしくは(b)のタンパク質、またはこれらのフラグメント)を抗原として、公知の方法によって得られる抗体(ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)である。公知の方法としては、例えば、文献(Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988))、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」」に記載されている方法が挙げられる。得られた抗体は、本発明に係るタンパク質の検出および/または測定などに利用できる。
【0087】
(4)本発明に係る組換えベクター
本発明に係る組換え発現ベクターは、上記(1−1)欄に記載した本発明に係る遺伝子(例えば、上記(a)または(b)のタンパク質をコードする遺伝子)を含有する。本発明に係る組換え発現ベクターとしては、例えば、cDNAが挿入された組換え発現ベクターが挙げられる。組換え発現ベクターの作製において、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどが使用可能であるがこれらに限定されない。また、組換え発現ベクターの作製方法は、公知の方法を用いればよい。
【0088】
ベクターとしては、限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが挙げられる。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるためのプロモーター配列を適宜選択し、このプロモーター配列と本発明に係る遺伝子とをプラスミド等に組み込んだ発現ベクターを用いればよい。
【0089】
本発明に係る遺伝子が宿主細胞に導入されたか否か、さらにはコードされるタンパク質が宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認するためには、種々のマーカーが使用され得る。マーカー(例えば、用いる宿主細胞中で欠失している遺伝子)と本発明に係る遺伝子とを含むプラスミド等を発現ベクターとして宿主細胞に導入する。この発現ベクターを導入した宿主細胞において、マーカーが発現しているか否かによって、本発明に係る遺伝子の導入を確認することができる。あるいは、本発明に係るタンパク質を融合タンパク質として宿主細胞中に発現させてもよい。例えば、本発明に係るタンパク質をオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)との融合タンパク質として発現させて、GFPをマーカーとして用いてもよい。
【0090】
上記宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を用いることができる。具体的には、原核生物宿主としては、細菌(例えばエシェリヒア(Escherichia)属に属する細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli))またはバシルス(Bacillus)属微生物(例えばバシルス.スブシルス(Bacillus subtilis)))などを用いることができる。真核生物宿主としては、下等真核生物(例えば、真核性微生物(例えば、真菌である酵母または糸状菌))を用いることができる。酵母としては、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属微生物(例えば、サッカロミセス.セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))等が挙げられ、また糸状菌としてはアスペルギルス(Aspergillus)属微生物(例えば、アスペルギルス.オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス.ニガー(Aspergillus niger))およびペニシリウム(Penicillium)属微生物が挙げられる。さらに、動物細胞または植物細胞を宿主細胞として使用することができる。植物細胞としては、ゴマ科植物、イネ科植物など種々の植物細胞が宿主細胞として利用可能であり、また動物細胞としては、マウス、ハムスター、サル、ヒト等の細胞系が宿主細胞として利用可能である。さらに昆虫細胞(例えば、カイコ細胞、またはカイコの成虫それ自体)も利用可能である。
【0091】
本発明に係る組換え発現ベクターは、目的の宿主細胞の種類に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有する。細菌用発現ベクターのプロモーターとしては、常用のプロモーター(例えば、trcプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター等)が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーター、PH05プロモーター等が使用され、糸状菌用プロモーターとしては、例えば、アミラーゼプロモーター、trpCプロモーター等が使用される。また動物細胞宿主用プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)が使用される。発現ベクターの作製は、制限酵素および/またはリガーゼ等を用いて常法に従って行うことができる。また、発現ベクターによる宿主の形質転換もまた、常法に従って行うことができる。
【0092】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換方法は、特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法等の公知の方法を用いて行なうことができる。
【0093】
(5)本発明に係る形質転換体
本発明に係る形質転換体は、上記(1−1)欄に記載した本発明に係る遺伝子(例えば、上記(a)または(b)のタンパク質をコードする遺伝子)が導入された形質転換体である。ここで、「遺伝子が導入された」とは、公知の遺伝子操作技術によって、目的の細胞(宿主細胞)内に導入されることを意味する。また、本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」は、細胞、組織または器官のみならず、生物個体を包含することが意図される。
【0094】
本発明に係る形質転換体は、上述の(4)欄に記載した本発明に係る組換え発現ベクターを用いて作製(生産)され得る。また、形質転換の対象となる生物もまた、特に限定されるものではなく、上記で例示した各種微生物や植物を用いることができる。また、プロモーターやベクターを適宜選択すれば、動物または昆虫も形質転換の対象とすることが可能である。
【0095】
好ましい実施形態において、ゴマを使用して、本発明に係る形質転換体を作製することができる。ゴマの形質転換体の作製方法としては、例えば、T.Asamizu:Transformation of sesame plants using MAT vector system:introduction of fatty acid desaturase genes.Sesame Newsletter 16:22〜25(2002)に記載されるような公知の方法が挙げられる。
【0096】
また、本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」は、本発明に係る遺伝子が導入された植物もしくはこれと同じ性質を有する該植物の子孫またはそれらの組織も含まれることが意図される。
【0097】
(6)本発明に係る遺伝子検出器具
本発明に係る遺伝子検出器具は、本発明に係る遺伝子における少なくとも一部分の塩基配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドをプローブとして備える。本発明に係る遺伝子検出器具は、種々の条件下において、本発明に係る遺伝子の発現パターンの検出および/または測定などに利用することができる。
【0098】
本発明に係る遺伝子検出器具としては、例えば、本発明の遺伝子と特異的にハイブリダイズする上記プローブを基板(担体)上に固定化したDNAチップが挙げられる。本明細書中で使用される場合、「DNAチップ」は、主として、合成したオリゴヌクレオチドをプローブに用いる合成型DNAチップが意図されるが、PCR産物などのcDNAをプローブとして用いる貼り付け型DNAマイクロアレイもまた「DNAチップ」に包含される。
【0099】
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、化学合成されてもよい。
【0100】
プローブとして用いるポリヌクレオチドの塩基配列は、cDNA配列の中から特徴的な配列を特定する公知の方法(例えば、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)法(Science 276:1268, 1997; Cell 88:243, 1997; Science 270:484, 1995; Nature 389:300, 1997; 米国特許第5,695,937 号)等)によって決定することができる。
【0101】
なお、DNAチップの製造には、公知の方法を採用すればよい。例えば、合成オリゴヌクレオチドを使用する場合には、フォトリソグラフィー技術と固相法DNA合成技術との組み合わせによって、基板上で該オリゴヌクレオチドを合成すればよい。一方、オリゴヌクレオチドとしてcDNAを用いる場合には、アレイ機を用いて基板上に貼り付ければよい。
【0102】
また、一般的なDNAチップと同様、パーフェクトマッチプローブ(オリゴヌクレオチド)と、該パーフェクトマッチプローブにおいて一塩基置換されたミスマッチプローブとを配置することによって、遺伝子の検出精度をより向上させてもよい。さらに、異なる遺伝子を同時に検出するために、複数種のオリゴヌクレオチドを同一の基板上に固定したDNAチップを構成してもよい。
【0103】
(7)本発明に係る遺伝子およびタンパク質等の利用方法(有用性)
本明細書において、主にゴマのピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する酵素について述べてきたが、本発明は、ゴマ由来遺伝子のみに限定されるものではなく、ピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する酵素の利用に関するものでもある。ピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する酵素の起源としては、植物でも動物でも微生物であってもよく、ピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する酵素活性を有していれば同様にリグナン量の制御へ利用できる。さらに本発明は、ピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する酵素をコードする遺伝子を導入することによって得られる、リグナン量が調節された植物もしくはその子孫またはこれらの組織に関するものであり、その形態は切り花であってもよい。本発明で得たピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する酵素をコードする遺伝子を用いると、ピペリトールまたはセサミンを生成したり、ピペリトールまたはセサミンの生成を抑制したりできる。現在の技術水準をもってすれば、植物に遺伝子を導入し、その遺伝子を構成的あるいは組織特異的に発現させることは可能であるし、またアンチセンス法、コサプレッション法およびRNAi法などによって目的の遺伝子の発現を抑制することも可能である。形質転換可能な植物の例としては、ゴマ、イネ、レンギョウ、タバコ、シロイヌナズナ、ミヤコグサ、オオムギ、小麦、ナタネ、ポテト、トマト、ポプラ、バナナ、ユーカリ、サツマイモ、ダイズ、アルファルファ、ルーピン、トウモロコシ、カリフラワー、バラ、キク、カーネーション、金魚草、シクラメン、ラン、トルコギキョウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソウ、カランコエ、ユリ、ペラルゴニウム、ゼラニウム、ペチュニア、トレニア、チューリップ、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0104】
また、本発明は、上記(5)に記載の形質転換体を培養または生育させ、該形質転換体からピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質を取得する工程を包含するタンパク質の生産方法を提供する。上記の方法に従えば、ピペリトールまたはセサミンを生合成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を簡便かつ大量に生産することができる。なお、本方法は、上記の工程を包含すればよく、その他の具体的な条件(例えば、宿主の種類、使用する材料、条件など)は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。
【0105】
また、本発明に係る遺伝子または本発明に係るタンパク質は、ピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する、ピペリトールおよび/またはセサミンの生産方法にも利用することができる。上記の方法に従えば、ピペリトールおよび/またはセサミンを簡便かつ大量に生産することができ、ピペリトールおよび/またはセサミンを含有する食品(特に健康食品)または医薬品などの製造に利用することができる。なお、「遺伝子またはタンパク質を用いて」とは、in vivo、in vitro、ex vivoなど種々の条件下で遺伝子またはタンパク質を用いることが意図される。ピペリトールおよび/またはセサミンの生産方法としては、例えば、上記遺伝子を植物細胞に導入し、得られた形質転換植物の生体内でピペリトールおよび/またはセサミンを生合成させる方法、生体外において本発明に係るタンパク質とピペリトールまたはセサミンの前駆体とを反応させて、ピペリトールおよび/またはセサミンを生合成する方法、またはバイオリアクターなどを用いてピペリトールおよび/またはセサミンを生産する方法などが挙げられる。なお、遺伝子はそのまま使用しても生合成酵素活性を有しないため、一旦、当該遺伝子によってコードされるタンパク質が発現された状態で使用することが好ましい。
【0106】
また、本発明に係る遺伝子を用いることによって、リグナン高含有の形質転換体またはリグナン低含有の形質転換体を生産する方法も本発明に含まれる。これらの方法に従えば、簡便かつ容易にリグナンの含有量を調節した形質転換体を生産することができ、形質転換体からリグナンを取り出したり、形質転換体自体を食品、医薬品またはこれらの前駆物質として利用することができる。
【0107】
また、本明細書中で使用される場合、「ピペリトールおよび/またはセサミン高含有の植物体」とは、ピペリトールおよび/またはセサミンの含有量が多い植物体のことをいい、「ピペリトールおよび/またはセサミン低含有の植物体」とは、ピペリトールおよび/またはセサミンの含有量が少ない植物体のことをいう。
【0108】
また、本発明に係る遺伝子は、ゴマを育種する方法にも利用可能である。この方法に従えば、例えば、本発明に係る遺伝子をゴマに導入して、ピペリトールおよび/またはセサミンの含有量が多いゴマを育種することができる。したがって、かかる形質転換ゴマの種子から、ピペリトールまたはセサミンを多く含む脂質を採取することができる。
【0109】
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0110】
〔実施例〕
以下実施例に従って、発明の詳細を述べる。分子生物学的手法はとくに断らない限り、Molecular Cloning (Sambrookら)に従った。
【0111】
〔実施例1:レンギョウからリグナンの調製〕
乾燥したレンギョウの葉60gを3Lの水中で30分間煮沸した後、抽出液をろ紙(circle; 300mm 東京ろし会社)を用いて濾過した。エバポレーターを用いて分注した濾液の溶媒の体積を減らした後に凍結乾燥(30/N)し、抽出物凍結乾燥サンプル(21.6837g)を得た。
【0112】
この抽出物凍結乾燥サンプル7gを100mlの水に再溶解させ、超音波を用いて均一化した。ダイアイオンHP−20樹脂(三菱化学)400mlを充填したカラムを、50%アセトン800mlで洗浄した後、2Lの水で平衡化した。上記の均一化したサンプルを、このカラムを用いて粗精製した。具体的には、カラムに上記サンプルをロードした後、800mlの水で洗浄し、次に50%メタノール800mlで一次溶出、引き続き100%メタノール800mlで二次溶出した。
【0113】
上記一次溶出サンプルおよび二次溶出サンプルについて、以下の条件を用いてHPLC解析を行い、リグナンの存在を確認した。移動相には、A液(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA))と、B液(0.1%TFA、90%アセトニトリル)を用い、カラムにはDevelosil C30-UG-5(野村化学、4.6mm×150mm)を用いた。A60%、B40%の混合液でカラムを平衡化(20分間)した後、A60%、B40%→A10%、B90%の直線濃度勾配を用いて、流速0.6ml/分にて15分間にわたって溶出し、A10%、B90%で10分間溶出した。吸収波長287nmにてタンパク質を検出し、1分間毎に分画した(粗分画分析)。SPD−10AV(島津製作所)を用いて、各画分について220nmから400nmまでスペクトルを測定し、リグナン特有の2つの吸収極大(230nmおよび280nm)を持つ物質を探索した。その結果、リグナンの吸収極大を持つ物質は、主に二次溶出液内に含まれていることがわかった。
【0114】
次に、リグナンを分離するために以下の条件で分画を行った(本分画)。二次溶出液をエバポレーターで濃縮した後に、凍結乾燥した(乾燥重量1.0325g)。このこの抽出物凍結乾燥サンプル1gを、1mlのジメチルスルフォキシド(DMSO)に超音波を用いて溶解させた後、6mlのB30%溶液に超音波を用いて溶解した。この溶解液を、1,5000rpmで遠心分離した後、その上清約6mlをカラム(Develosil ODS-UG-15/30; C-18(野村化学、50mm×500mm))にロードした。移動相には、A液(0.05%TFA)、B液(0.05%TFA、90%アセトニトリル)を用いた。流速32ml/分にて、A70%、B30%を用いて20分平衡化した後にサンプルをロードし、A70%、B30%→A10%、B90%の直線濃度勾配を用いて60分間にわたって溶出した後、A10%、B90%を用いて30分間溶出した。吸収波長280nmにて検出を行い、1分間毎に溶出液を分画した(32ml)(検出器:115UV detector. Gilson社)。最終的に280nmに吸収を持つピークを有する画分を8つ得た。得られた8つの画分をエバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥した。これらの画分について、上記粗分画分析と同様の条件でHPLC分析した。この8種のリグナン特有の吸収スペクトルを示す画分のうち、単一のリグナンと思われる画分についてのH NMR解析によって、ピノレジノールを同定した。最終的に49.7mgのピノレジノールが得られた。
【0115】
〔実施例2:ゴマ種子のリグナン分析〕
栽培されているゴマの鞘から未熟なゴマ種子を回収し、凍結乾燥した後、アセトンを用いてリグナン成分を抽出した。アセトン抽出液の調製方法については以下の通りである。
【0116】
粉砕したゴマ種子の凍結乾燥物(約100mg)を1mlのアセトンに溶解し、アセトン抽出液を得た。このアセトン抽出液100μlを乾燥させた後、20μl DMSOに再度溶解し、80μlの0.1%TFAを含む50%アセトニトリルを加えた。次に、この溶液をMillex-LHフィルター(ミリポア社、0.45μm/4mm)を用いて濾過し、HPLC分析用のサンプルとした。このサンプルについてHPLC分析を行った結果、標品(control)のゴマリグナンであるピペリトール(保持時間約12分)、セサミン(保持時間約16分)およびセサモリン(保持時間約18分)と保持時間が一致するリグナンの存在を確認した。
【0117】
さらにゴマ種子を若い順に成長段階に沿って4ステージに分けた。
【0118】
ステージ1:種子鞘が1.5cm以下
ステージ2:種子鞘が1.5〜2cm、
ステージ3:種子鞘が2cm以上で鞘色が黄緑色
ステージ4:種子鞘が2cm以上で鞘色が濃緑色。
【0119】
これらを上記の条件を用いて同様にHPLC分析した結果、ピペリトール、セサミンおよびセサモリンの蓄積を、ステージ3およびステージ4で確認した。
【0120】
以上の結果は、本実施例で用いたゴマ品種においてピペリトールおよびセサミンを生成する酵素、および当該酵素をコードする遺伝子が存在することを示した。
【0121】
〔実施例3:ゴマcDNAライブラリーの作製〕
実施例2で用いたゴマの種子から製造業者が推奨する方法に従ってRNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社)を用いてトータルRNAを抽出し、引き続いてオリゴテックス−MAG mRNA精製キット(TaKaRa)を用いてポリA(+)RNA5μgを得た。このポリA(+)RNAを鋳型として、製造業者が推奨する方法に従ってZAP Express cDNA Synthesis Kit and ZAP Express cDNA Gigapack3 Gold Cloning Kit(ストラタジーン社)を用いて、cDNAライブラリーを作製した。作製したライブラリーは1×107pfu/mlであった。
【0122】
〔実施例4:ゴマ由来リグナン生合成酵素遺伝子のクローニング〕
ゲノム配列が明らかとなっているシロイヌナズナのチトクロームP450遺伝子の配列をプローブとして用いて、上記cDNAライブラリー約30万pfuをスクリーニングした。
【0123】
具体的には、シロイヌナズナチトクロームP450遺伝子群を一次配列に基づいて系統分類し(図3を参照)、CYP90A、CYP72B、CYP71B、CYP84A、CYP96A、CYP710A、CYP86A、CYP74、CYP75B、CYP79F、CYP81D、CYP705A、およびCYP83Aからなる13種のシロイヌナズナチトクロームP450遺伝子をゴマ種子ライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして用いた。配列番号5〜30のプライマーを用いて増幅することによって、プローブにDIG標識を導入した。PCR条件は以下のとおりである。RNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社)を用いてシロイヌナズナからtotalRNAを抽出した後、totalRNA1μgを鋳型として逆転写反応を行い、cDNAを得た。cDNA合成を、製造業者が推奨する条件に従って、SuperScriptTMFirst-Strand Synthesis System for RT-PCR(インヴィトロジェン社)を利用して行なった。PCR反応液(50μl)は、シロイヌナズナのゲノムDNA1μl、1×Taq buffer(TaKaRa)、0.2mM dNTPs、プライマー(配列番号5〜30を各々0.4pmol/μl)、およびrTaq polymerase 2.5Uからなる。94℃で5分間反応させた後、94℃で1分間、53℃で1分間、72℃で2分間の反応を28サイクル行った。プローブにDIG標識を導入する際にも同PCR条件で行った。スクリーニングおよび陽性クローンの検出を、DIG−DNAラベリング&デテクションキット(ロシュ社)を用いて行なった。
【0124】
陽性クローンの検出を、製造業者が推奨する方法を基本として、下記のような低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で行った。すなわち、ハイブリダイゼーションバッファー(5×SSC、30%ホルムアミド、50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)、1%SDS、2%ブロッキング試薬(ロシュ社)、0.1%ラウロイルサルコシン、80μg/mlサケ精子DNAを含む)を用いて、37℃で2時間プレハイブリダイゼーションを行った後、DIG標識した混合プローブを加え、さらに一晩保持した。メンブレンを、1%SDSを含む5×SSC洗浄液中にて、58℃で1時間洗浄した。
【0125】
二次スクリーニングの後、独立した96個の陽性クローンが得られた。引き続いてcDNAライブラリー合成キット製造業者が推奨する方法を用いてこれらの96個のクローンをpBK−CMVプラスミド(ストラタジーン社)に挿入し、インサート領域の5’末端および3’末端のヌクレオチド配列を、それぞれM13RVプライマーおよびM13M4(‐20)プライマーを用いて決定した。その結果、46クローンがチトクロームP450様の配列を有していた。インサート領域の全ヌクレオチド配列を決定した。その結果、得られたクローンを、SiP168、SiP189、SiP236、SiP249、およびSiP288の独立した5種類のP450ホモログ(Sesamum indicum P450;SiP)に分類した。次に、ゴマの葉および種子から調製したRNAを逆転写して得たcDNAを鋳型に用いて、これら5種のSiP遺伝子に特異的なプライマー(配列番号31〜40)に用いるRT−PCRを行った。その結果、これら5種のSiP遺伝子は、種子において発現することがわかった。なお上記のRT−PCRにおいて用いたPCR反応液(25μl)は、各cDNA 1μl、1×Ex-Taq buffer(TaKaRa)、0.2mM dNTPs、プライマー各0.2pmol/μl、およびEx-Taq polymerase 1.25Uからなる 。94℃で3分間反応させた後、94℃で1分間、53℃で1分間、72℃で2分間の反応を26サイクル行った。発現量を比較するためのゴマ内部標準遺伝子として、Ribosomal 18SRNA(AJ236041)を採用した。増幅プライマーとして、配列番号3および4からなるプライマーを用いた。
【0126】
〔実施例5:SiP遺伝子発現ベクターを含む形質転換体の作製〕
上記5種のSip遺伝子のうち、SiP249(pSPB2031)およびSiP288(pSPB2034)は全てのオープンリーディングフレーム(ORF)をコードすると考えられた(配列番号53〜56)。pSPB2031をBamHIおよびXhoIによって消化して得たcDNAを含む約1.8kbのDNA断片を、酵母発現ベクターpYE22m(Holton, T. A et al., Nature 366, 276-279. 1993)のBamHI部位およびSalI部位に挿入して、pSPB2046を得た。酵母発現ベクターpYE22mのマルチクローニングサイトはglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase遺伝子(GAPDH)プロモーターとGAPDHターミネーターとの間に挟まれており、このマルチクローニングサイトに挿入されたインサートは、酵母内においてGAPDHプロモーターの制御下で構成的に発現される。なお、このベクターに関する選択マーカーはトリプトファンである。一方、pSPB2034をBamHIおよびXhoIによって消化して得たcDNAを含む約1.8kbDNA断片を、酵母発現ベクターpYE22mのBamHI部位およびSalI部位に挿入して、pSPB2047を得た。引き続き、2種の酵母発現ベクターを用いて常法に従って酵母INVsc株(インヴィトロジェン社)を形質転換して、それぞれINVsc/pYE22m/SiP249およびINVsc/pYE22m/SiP288を得た。
【0127】
一方、SiP168、SiP189、SiP236についてはオープンリーディングフレームが不完全であったので、製造業者の推奨する方法に従ってGeneRacerキット(インヴィトロジェン社)を用いて5’領域を増幅し、完全なオープンリーディングフレームを含む配列を得た(配列番号1〜2、57〜60)。増幅用プライマーとして、配列番号41〜46からなるプライマーを用いた。
【0128】
次に、3種のSiP遺伝子の完全長オープンリーディングフレームをクローン化するために、以下の制限酵素サイトを付加したプライマーとして、ゴマ種子由来cDNAを鋳型として用いてPCR増幅した。なお、PCR条件は次のとおりである。PCR反応液(50μl)は、鋳型ゴマ種子由来cDNA 1μl、1×KOD plus buffer(TOYOBO)、0.2mM dNTPs、プライマー(配列番号47〜52)各0.4pmol/μl、1mM MgSO4、KOD plus DNA polymerase 1Uからなる 。94℃で5分間反応させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間の反応を30サイクル行った。完全長SiPを含むこの増幅断片を、pCR-blunt II TOPOベクター(インヴィトロジェン社)のマルチクローニングサイトに挿入して、TOPO-SiP168(pSPB2064)、TOPO-SiP189(pSPB2055)、およびTOPO-SiP236(pSPB2048)を得た。
【0129】
pSPB2064、pSPB2055、およびpSPB2048を増幅した際に用いたプライマーに付加した制限酵素サイトを消化して得た約1.5kbのcDNAを含むDNA断片と、pYE22mベクターをBamHIおよびSalIを用いて消化して得たDNA断片約8.3kbとを連結することによって、pYE22m/SiP168(pSPB2052)、pYE22m/SiP189(pSPB2053)、およびpYE22m/SiP236(pSPB2049)を得た。
【0130】
引き続いて、これら3種の酵母発現ベクターを用いて酵母INVsc株(インヴィトロジェン社)を形質転換し、INVsc/pYE22m/SiP168、INVsc/pYE22m/SiP189、およびINVsc/pYE22m/SiP236を得た。
【0131】
〔実施例6:形質転換体におけるゴマリグナンの生合成〕
前述のINVsc/pYE22m/SiP249、INVsc/pYE22m/SiP288に加え、INVsc/pYE22m/SiP168、INVsc/pYE22m/SiP189、およびINVsc/pYE22m/SiP236を、以下に組成を有するYNBDglc培地400mL(0.67 % Yeast Nitrogen Base、2 %Glucose、20 mg/Lのトリプトファンを除く各種アミノ酸)中にて30℃で、36時間培養した。公知の超遠心分離法(Holton, T. A et al., Nature 366, 276-279. 1993)に従って、これらの形質転換酵母培養液からミクロソーム画分を回収した。
【0132】
ミクロソーム沈殿を、サスペンジョン緩衝液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、20%グリセロール、0.3μl/mlメルカプトエタノール)1mlに縣濁して、ミクロソーム溶液を得た。このミクロソーム溶液240μlに、1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)を30μl、50mM NADPHを6μl、267μMピノレジノールまたはピペリトールを24μl加えて、30℃で1時間反応させた。この酵素反応液に0.1% TFAを含む100%アセトニトリルを等量加えた(最終濃度50%アセトニトリル溶液)。次に、この溶液を遠心分離(15000rpm、3分、4℃)し、その上清150μlをMillex-LHフィルター(ミリポア社、0.45μm/4mm)を用いて精製し、実施例1の粗分画分析と同様の条件でHPLC分析を行った。
【0133】
INVsc/pYE22m/SiP189について行ったHPLC分析の結果を、以下に示す。ピノレジノール(図2(a):保持時間約8分)が、INVsc/pYE22m/SiP189において、それぞれ保持時間約12分と約16分の新たなリグナン様の吸収スペクトルを有する2つの生成物に変化した(図2(b))。さらに、ピペリトール(図2(d):保持時間約12分)が、INVsc/pYE22m/SiP189によって保持時間約16分の新たなリグナン様の吸収スペクトルを有する生成物に変化した(図2(e))。これらは、保持時間からそれぞれピペリトール(保持時間約12分)とセサミン(保持時間約16分)であると考えられた。
【0134】
引き続いて、これら2つのピーク(保持時間約12分と約16分)について、LC−MS/MS分析(LCはWaters 2790,ウォーターズ社、MSはQUATRO micro, マイクロマス社)によって分子量およびフラグメントパターンを比較したところ、分子量標準品と一致した。従って、SiP189による2つの生成物は、ピペリトールおよびセサミンであることがわかった。LC−MS/MS解析の条件は次の通りである。LCには、Develosil C30-UG-5(野村化学、2.0×50mm)を用い、移動相には、A液をHO、B液をメタノール、C液を10mM CHCOONHとして用い、溶出を、10%C液を用いて流速0.25ml/min.にて行った。この条件下で、ピペリトールは8.4分、セサミンは10.1分の時点で検出される。MSは、測定モードPOSITIVEで行った。これにより、SiP189はピノレジノールからピペリトールを経てセサミンを合成する酵素をコードすることが明らかになった。また、ピノレジノールからピペリトール、ピペリトールからセサミンを合成する反応は別の酵素が触媒すると考えられていたが、本発明で得た遺伝子がコードする単一の酵素が両方の反応を触媒することがわかった。
【0135】
また、上記酵素反応液にNADPHを加えない反応系を用いた解析の結果から、INVsc/pYE22m/SiP189のピペリトール生成活性はNADPH依存的であることがわかった(図2(b)・(c))。このことは、セサミン生成活性についても同様であった(図2(e)・(f))。また、NADPHが存在する場合と比べて、NADPHが存在しない場合では、ピペリトール生成活性およびセサミン生成活性はそれぞれ約14%と約18%に減少した。
【0136】
次に、INVsc/pYE22m/SiP189のミクロソーム画分を一酸化炭素によって還元した後、吸収スペクトルを分光光度計(日立U-3000P Spectrophotometer)を用いて測定した。その結果、このミクロソーム画分は、コントロール形質転換酵母であるINVsc/pYE22mと比較して、450nmにおける吸収を示した。このことから、INVsc/pYE22m/SiP189のミクロソーム画分内においてチトクロームP450タンパク質が生成されていることがわかった。
【0137】
実施例2において示したように生長段階別に4ステージに分離したゴマ種子から、実施例2と同様の方法でRNAを抽出し、SiP189を増幅する配列番号49と50のプライマーセットおよびSi18SrRNAを増幅する配列番号3および4のプライマーセットを用いてRT−PCRを行った。PCR反応液(25μl)は、各cDNA 1μl、1×Ex-Taq buffer(TaKaRa)、0.2mM dNTPs、プライマー各0.2pmol/μl、Ex-Taq polymerase 1.25Uからなる 。94℃で3分反応させた後、94℃で1分、53℃で1分、72℃で2分の反応を26サイクル行った。その結果、種子におけるセサミンの蓄積が顕著化してくる種子ステージ4においてSiP189が強く発現することを確認した。生長段階に依存したリグナン蓄積と、生成活性を有するSiP189の遺伝子発現の時期とが一致することから、ゴマ種子内でピペリトールおよびセサミンを生成する酵素遺伝子がSiP189であることが示された。
【0138】
以上の結果から、SiP189遺伝子はピノレジノールからピペリトールおよびピペリトールからセサミンを生成する反応を触媒するチトクロームP450をコードすることが明らかとなった。図3中、SiP189を矢印で示す。図3より、SiP189はチトクロームP450スーパーファミリーのCYP81ファミリーに属していることがわかる。
【0139】
本遺伝子を利用することによって、ゴマまたは他の植物もしくは生物を用いて、あるいはバイオリアクターなどの系を用いて、セサミンおよびピペリトールを合成することが可能になった。
【0140】
〔実施例7:栽培種ゴマSesamum indicumにおけるSiP189遺伝子のゲノミック解析〕
S. indicumゲノム内でのSiP189遺伝子のコピー数を明らかにするために、ゲノミックサザン解析を行った。
【0141】
製造業者が推奨する方法に従って、Nucleon Phytopure for Plant Extraction Kit(アマシャム社)を用いてS. indicumの葉(真瀬金品種)からゲノミックDNAを抽出した。抽出したゲノミックDNA10μgを、それぞれEcoRI、NcoI、およびXbaIの3種の制限酵素で完全に消化し、アガロースゲル電気泳動によってゲノミックDNAを分離した。0.25M HClを用いてアガロースゲルを15分間加水分解し、その後1.5M NaClと0.5M NaOHとを含む液を用いて30分間変性させ、1.5M NaClとTris−HCl(pH7.5)とを含む溶液を用いて中和した。その後、20×SSC中にて、ゲノミックDNAをメンブレン(Hybribond-N、アマシャム社)に転写した。メンブレンに転写したゲノミックDNAを、UV照射によってメンブレンに結合させた。このメンブレンを、7%SDS、50%ホルムアミド、5×SSC、2%ブロッキングリージェント、0.1%ラウロイルサルコシン、および50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)を含むハイブリダイゼーションバッファー(高SDSバッファー、ロシュ社)中にて、42℃で1時間プレハイブリダイゼーションした。
【0142】
ハイブリダイゼーションプローブには、SiP189のcDNAの開始メチオニン部位から約900bpのORF領域を用いた。この領域を、配列番号61(Bam-SST-FW2)のプライマーおよび配列番号62(SiP189-Nco-RV)のプライマーを用いるPCRによってDIG標識を導入した。PCR反応液は、SiP189のcDNAを含むプラスミド(pSPB2055)を1ng、1×PCRバッファー、1×DIG−dNTP mixture(PCR DIG Labeling Mix、ロシュ社)、0.2pmol/μl各プライマー、およびrTaq polymerase 1U(タカラバイオ社)からなる。PCR反応を、95℃で30秒、53℃で30秒、72℃で1分の反応を30サイクルの条件にて行った。
【0143】
セファデックスG−50クイックスピンカラム(ベーリンガー社)を用いて精製したPCR産物を熱変成した後直ちに氷上に置き、これをハイブリダイゼーションプローブとして、プレハイブリダイゼーション液に10μl加え、42℃で一晩インキュベートした。
【0144】
メンブレンの洗浄を、0.1%SDSを含む0.2×SSC溶液中にて、65℃で30分間、2回行った(高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)。ハイブリダイゼーションシグナルを、DIGアプリケーションマニュアル(ロシュ社)に従って、DIG−ラベリング&デテクションキット(ロシュ社)を用いて得た。
【0145】
図5に検出結果を示す。図5に示すように、上記3種の制限酵素処理において、SiP189遺伝子がすべて単一のバンドとして検出された。この結果から、S. indicumゲノム内にSiP189は単一の遺伝子として存在し、SiP189と相同性の高い遺伝子が存在しないことが示された。すなわち、ゴマ植物内においてピペリトールおよびセサミンを生成する活性はSiP189によるものであると考えられる。
【0146】
〔実施例8:アフリカゴマSesamum radiatumからのSiP189様遺伝子の単離〕
アフリカゴマSesamum radiatumはアフリカに現存するゴマ植物であり、細胞遺伝学解析によれば染色体数は2n=64であり、S. indicum(2n=26)とは細胞遺伝学的に異なる系統である(参考文献、並木満夫、小林貞作「ゴマの科学」朝倉書店)。しかし、S. radiatum種子においてもリグナン含量に関する解析が報告されており、セサミンが蓄積していることが明らかとなっている(参考文献、Bedigian, D., et al. Biochemical Systematics and Ecology 13, 133-139. 1985)。したがって、S. radiatumのゲノム中に、S. indicumのSiP189に対応する酵素をコードする遺伝子(SrSiP189)が存在すると考えられる。さらに、このS. radiatumの有する遺伝子(SrSiP189)は、SiP189と配列相同性の高い遺伝子であることが期待される。
【0147】
S. radiatumの種子から実施例4と同様にcDNAを調製した。このcDNA1μlを鋳型として、(配列番号61(Bam-SST-FW2)および配列番号63(GR-SST-RV1))をプライマーとして用いて、実施例4と同様の方法でRT−PCR反応を行った。これらのプライマーを、SiP189の配列に基づいて完全長ORFを含む可能性のある断片を増幅するように設計した。RT−PCRの結果、SrSiP189を含むと思われる約1.5kbの増幅断片を得た。この断片をpCR-blunt II TOPOベクター(インヴィトロジェン社)に挿入して、pSPB2068を得た。挿入した断片のヌクレオチド配列を決定した。その結果、S. indicum由来のSiP189と比較して、DNAレベルで96%の配列同一性、アミノ酸レベルで95%の配列同一性を示した(配列番号64にSrSiP189のアミノ酸配列を示し、配列番号65にSrSiP189のヌクレオチド配列を示す)。実施例4に従って、前述のプライマー(配列番号61および配列番号63)を用い、S. radiatumの種子および葉から調製したcDNAを鋳型としてRT−PCRを実施した。その結果、SrSiP189の発現は種子で強く発現し、葉においてはほとんど発現していないことが分かった。このRT−PCRによる発現解析からSrSiP189は種子において機能することが示された。
【0148】
〔実施例9:アフリカゴマSesamum radiatumにおけるSrSiP189遺伝子の機能解析〕
SrSiP189の有する生化学的機能を明らかにするために、酵母にて組換えSrSiP189タンパク質を発現させて、この組換えSrSiP189タンパク質の有するリグナン生合成活性を調べた。まず、pSPB2068を制限酵素BamHIおよびXhoIを用いて消化し、得られた約1.5kbの完全長SrSiP189のcDNAを含む断片を、酵母発現ベクターpYE22mのBamHI部位およびSalI部位に挿入して、pSPB2069を得た。形質転換酵母からのミクロソームの調製およびリグナン生合成活性の測定を、実施例6と同様に実施した。図6はHPLC分析による測定結果を示したものである。図6に示すように、組換えSrSiP189タンパク質は、S. indicum由来のSiP189と同様にNADPH依存的にピノレジノールをピペリトールへ変換する活性およびピペリトールをセサミンへ変換する活性を有していた(図6(a)および図6(b))。NADPHを含まない酵素反応液中においては、ピペリトール生成活性が16.9%、セサミン生成活性が8.4%にそれぞれ低下した(図6(c)および図6(d))。これらのことから、SrSiP189はS. radiatumにおけるSiP189のカウンターパート遺伝子であることが明らかとなった。
【0149】
以上の結果から、SiP189様配列を保有する遺伝子が種を超えて存在し、この遺伝子がピノレジノールからピペリトールへ変換する活性およびピペリトールからセサミンへ変換する活性を有する酵素をコードすることが明らかとなった。
【0150】
本発明について、多くの方法において同様に改変され得ることは明らかである。このような改変は、本発明の精神および範囲を逸脱するものとしてみなされるべきではなく、当業者にとって明らかであるこのような改変の全ては、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0151】
〔実施例10:植物細胞内におけるSiP189タンパク質の機能解析〕
植物細胞内におけるSiP189タンパク質の生化学的な機能を明らかにするために、SiP189遺伝子を用いてタバコ(N.tabaccum)を形質転換した。
【0152】
SiP189を含むpSPB2055をBamHIおよびXhoIによって消化して、SiP189のORFを含む約1.5kbのDNA断片を得た。この断片を植物形質転換用バイナリーベクターであるpSPB176のBamHI部位およびSalI部位に連結して、バイナリーベクターpSPB2057を得た。pSPB176のマルチクローニングサイトは、CaMV35SプロモーターとNOSターミネーターとの間にあり、この部位に挿入されたインサートは、植物細胞内においてCaMV35Sプロモーターの制御下で構成的に過剰発現する。
【0153】
引き続いて、公知の方法(下西ら、新・生物化学実験のてびき3.化学同人(122〜124頁))に従って、pSPB2057を用いてアグロバクテリウム(菌株:Aglo)を形質転換し、このpSPB2057を有する形質転換体アグロバクテリウムをタバコリーフディスクに感染させた。
【0154】
得られた形質転換体13系統の葉から実施例2と同様の方法を用いてcDNAを調整し、配列番号49および配列番号50に示される塩基配列からなるプライマーを用いて実施例4と同様の方法に従ってRT−PCRを行なった。内部標準遺伝子としてのタバコのユビキチン遺伝子(NtUBQアクセッション番号:U66264)を、配列番号66および配列番号67に示されるヌクレオチド配列からなるプライマー(それぞれNtUBQ−FWおよびNtUBQ−RW)を用いて増幅した。その結果、系統6、系統7および系統12において、高発現のSiP189遺伝子を確認した(図7)。
【0155】
以下の操作を、氷上または4℃で操作を行った。形質転換体(系統6、系統7および系統12)、ならびに非形質転換体の葉約15gを液体窒素中にて乳鉢を用いて粉砕し、30mlのホモジナイズバッファー(0.1M リン酸カリウムバッファー,pH7.0、0.5Mマンニトール、5mM EDTA、42mM メルカプトエタノール、50mM アスコルビン酸ナトリウム、0.1% BSA、1mM PMSF、1%PVPP)に溶解させた。
【0156】
粉砕溶液を10,000×gで20分間遠心分離して得た上清を、ミラクロースでろ過した。このろ液を100,000×gで90分間超遠心分離して、粗抽出ミクロソーム画分を得た。このミクロソーム画分(240μl)を用いて、実施例4と同様の方法に従ってピペリトールと酵素反応を行い、生成物をHPLC分析した。
【0157】
HPLC分析の結果、SiP189を過剰発現しているタバコ由来のミクロソームにおいて、280nmの吸収を有する保持時間約17分のピークが観察された。このピークは非形質転換体においては観察されず、酵素反応液中のNADPHの存在に依存した。このピークはセサミン標品の保持時間と一致したので、SiP189は植物細胞内でセサミン生合成活性を有するタンパク質として機能することが示された(図8)。
【0158】
〔実施例11:SiP189遺伝子の発現調節領域の同定〕
SiP189遺伝子の転写調節に関する知見を得るために、SiP189遺伝子の5’−非コード領域を単離し、配列決定し、そして解析した。λBlueSTARTM Vector system(NOVAGEN社)を用いて、ゴマ(S.indicum)のゲノムDNAからゲノムライブラリーを作製した。
【0159】
ゴマゲノムDNA200μgを制限酵素Sau3AIを用いて断片サイズが約20kbになるように部分消化し、次いで、10℃にてショ糖密度勾配遠心分離(10%〜40%)を25000rpmで24時間行った(SW28ローター、Beckman社)。遠心分離したサンプルをAUTOMATIC LIQUID CHARGER(Advantec社)およびMicro Tube Pump(EYELA社)を用いて1mlずつ分画した。分画したサンプルについて、パルスフィールド電気泳動によって断片サイズを確認した。パルスフィールドゲル電気泳動は、1%Agarose NA(Amersham bioscience社)、0.5×TBEからなるゲルを用いて、0.5×TBEバッファー内にて、120°/1秒−1秒で6V/cmの条件下で行なった(CHEF MAPPER、Invitrogen社)。この約20kbの平均断片サイズを有する断片を含む画分を用いて、製造業者の推奨する方法に従ってゲノムライブラリーを作製した。作製したライブラリーは、1.5×10pfu/500μlの力価を有した。配列番号68および配列番号69に示される塩基配列からなるプライマー(それぞれ、SiP189−bam−FWおよびSiP189−nco−RV)によって増幅したSiP189遺伝子のORF領域約850bpをプローブに用いて、このゲノムライブラリー(500,000クローン)をスクリーニングした。
【0160】
AlkaPhos Direct Labeling and Detection system(Amersham bioscience社)を製造業者が推奨する方法に従って用いて、プローブの標識および検出を行なった。ハイブリダイゼーションの条件は以下の通りである。
プローブ:5ng/ml hybridization buffer
プレハイブリダイゼーション:55℃で1時間
ハイブリダイゼーション:55℃で一晩
洗浄:55℃で30分を2回。
【0161】
3次スクリーニング後、9種の陽性クローンを単離し、その中から挿入物サイズが約12kbのgSiP189−#6を得た。
【0162】
次に、配列番号68および配列番号69に示されるヌクレオチド配列からなるプライマー、ファージアームプライマーであるSTAR−LF1(配列番号70)およびSTAR−LR1(配列番号71)を用いてPCRを行い、gSiP189−#6内のプローブの挿入方向および位置関係を決定した。
【0163】
その結果、PCR解析は、gSiP189−#6が、5kb以上のSiP189 5’非コード領域を含むことを示した。よって、このgSiP189−#6の全塩基について配列決定を行なった。
【0164】
gSiP189−#6をテンプレートとするLA−PCRによって挿入断片を増幅した。LA−PCRの反応液は、陽性クローンSMバッファー懸濁液1μl、1×LAバッファー(TaKaRa)、各プライマー50pmol、0.4mM dNTP、2mM MgCl2、2.5unit LA−Taq polymeraseからなる。96℃で5分間反応させた後、98℃で10秒間、55℃で10秒間、68℃で10分間の反応を30サイクル行い、最後に72℃で15分間維持した。
【0165】
得られた増幅断片を物理的に切断した後、約1〜2kbの範囲の長さを有するDNA断片を分画し、これらの断片の末端を平滑化した。末端平滑化した断片をpUC118(TaKaRa社)のHincII部位に挿入して、ショットガンライブラリーを作製した。このライブラリーは、2.8×10cfu/μlの力価を有した。
【0166】
このgSiP189−#6由来のショットガンライブラリーを用いて、エレクトロポレーション法によって大腸菌DH10B株(Invitrogen者)を形質転換し、192個のコロニーを無作為に拾い上げ、TempliPhi DNA Sequencing Template Amplification kit(Amersham bioscience社)を用いてDNAを調製した。DYEnamic ET dye terminator kit(Amersham Bioscience社)を用いて、調製したDNAをM13−47(F)プライマー(配列番号72)およびRV−M(R)プライマー(配列番号73)によって増幅した。
【0167】
この増幅産物をClean SEQ(Agecourt社)を用いて精製し、MegaBASE4000(Amersham Bioscience社)によって配列決定した。得られた配列データをPHRAP(CAP4)によってアセンブリし、SiP189遺伝子の開始メチオニン部位から上流約13kbの配列を含むコンティグ配列を得た。
【0168】
このSiP189遺伝子5’領域の調節cis−エレメントを同定するために、SiP189遺伝子の開始メチオニン部位から上流約3kbの配列(配列番号74)に対して、PLACE解析を行った(http://www.dna.affrc.go.jp/PLACE/)。PLACE解析の結果から、SiP189遺伝子の開始メチオニン部位から上流約3kbの範囲内に特定の転写因子ファミリーの結合部位および特定のシグナルに応答する調節cis−エレメントが多数同定され、これらがSiP189遺伝子の発現に影響を与えていることが示された(図9および10)。
【0169】
引き続き、ピペリトールおよびセサミンを合成するアフリカゴマ由来の酵素の遺伝子であるSrSiP189遺伝子の発現調節領域を単離した。アフリカゴマゲノムDNAをテンプレートとして、配列番号75および配列番号76に示される塩基配列からなるプライマー(それぞれ、gSST−FW1およびgSST−RV2)を用いてPCR増幅した。これらのプライマーを、配列番号74に示されるSiP189のゲノム配列に従って設計した。
【0170】
反応溶液は、ゲノムDNA 1μl(50ng)、1×Ex−Taq buffer(TakaRa)、0.2mM dNTPs、プライマー各0.2pmol/μl、Ex−Taq polymerase 1.25Uからなる。94℃で5分間反応させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で4分間の反応を30サイクル行い、最後に72℃で4分間維持した。得られた増幅断片を電気泳動して、約3kbの断片を得た。得られた断片を、製造者が推奨する方法に従ってpCR−TOPO−XL vector(インヴィトロジェン社)のマルチクローニングサイトに挿入して、pSPB2664を得た。pSPB2644に挿入した断片の全ヌクレオチド配列をプライマーウォーキング法によって決定した。その結果、SrSiP189遺伝子の調節cis−エレメントを含むと思われるゲノムSrSiP189遺伝子の5’側約2.8kbの断片を取得した(配列番号77)。SiP189遺伝子と同様にPLACE解析を行った結果、特定の転写因子ファミリーの結合部位および特異的シグナルに応答するエレメントを多数同定した(図11)。
【0171】
次いで、栽培ゴマ(S.indicum)由来のSiP189遺伝子とアフリカゴマ(S.radiatum)由来のSrSiP189遺伝子の間で、DNAレベルの配列相一性をClustal−W解析(MacVector ver.7.2.2、Symantech社)を用いて求めた。その結果、両遺伝子は、5’−非コード領域約3kbの領域において、78%の配列同一性を示した。また、両遺伝子のORF間における配列同一性は非常に高い(96%)ことが分かった(図12)。以上の結果は、SiP189およびSrSiP189はタンパク質の機能は高く保存されているが、両遺伝子の発現パターンについては差異があるという知見を支持する。RT−PCR解析に加えて、これらのcis−エレメント解析は、2つのリグナン生合成遺伝子(S. indicum 由来のSiP189およびS. radiatum由来のSrSiP189)が同一の転写調節下ではないことを支持する。
【0172】
〔実施例12:アフリカゴマSesamum alatumにおけるSiP189様遺伝子の単離〕
S.alatumは,形態学的にも栽培種S.indicumとは大きく異なるアフリカゴマ野生種である(並木ら、ゴマの科学、朝倉書店)。染色体数はS.indicumと同じ2n=26であるが、その地理的にはアフリカのナイジェリア、スーダンおよびモザンビークで確認されている。
【0173】
実施例8においてアフリカゴマS.radiatumからSrSiP189遺伝子を単離した方法と同様にS.alatumからのSiP189のカウンターパート遺伝子(SaSiP189)の単離を行った。
【0174】
PCRの鋳型として、S.alatumの種子ステージ4のcDNAを用いた。配列番号61および配列番号63のプライマーを用いたPCRで増幅された約1.5kbの増幅断片をpCR−blunt II TOPO(Invitrogen)にサブクローニングし、挿入断片の塩基配列をプライマーウォーキングにより決定した。配列番号78にSaSiP189のアミノ酸配列を示し、配列番号79にSaSiP189のヌクレオチド配列を示す。
【0175】
得られたSaSiP189は、SiP189とDNAレベルで90%配列同一性と示し、アミノ酸レベルで86%の配列同一性を示した。これらの結果は、リグナン生合成酵素遺伝子SiP189が、地理的隔離や、形態学的、細胞遺伝学的な違いを超えて、高く保存されている遺伝子であることを示す。
【0176】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【0177】
〔産業上の利用の可能性〕
セサミンは、多様な生理活性が明らかにされ、様々な改善効果をもつ物質であることが既に知られており、本発明によって、ピノレジノールからピペリトールを、またはピペリトールからセサミンの生合成を触媒する酵素の遺伝子が同定されたことから、この同定されたゴマ由来チトクロームP450遺伝子(SiP遺伝子)を用いて、セサミンおよびピペリトールを組換え生物などにより生産することを実現できるため、セサミンの生産量の拡大および生産コストの削減という効果を奏する。
【0178】
以上のように、本発明に係るゴマ種子由来のSiP189遺伝子およびSrSiP189遺伝子はピノレジノールからピペリトールおよびピペリトールからセサミンを生成する反応を触媒するチトクロームP450をコードする遺伝子である。古来から貴重な食品であり、健康に良い食品の代表として知られているゴマの種子、または該種子から得た油、ゴマ種子からの抽出物は今後益々注目されると期待される。その中でもセサミンはその生理活性が注目されている。従って、本発明により同定されたSiP189遺伝子およびSrSiP189遺伝子は、これまでゴマ種子から生産する方法しかなかったセサミンの生産手段に利用することが可能であり、生産量の拡大が大いに期待できる。
【0179】
したがって、本発明は、農業、食品産業、医薬品産業、およびこれらの関連産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】図1は、ゴマリグナンの一般的な合成経路を模式的に示す図である。1:コニフェリルアルコール;2:ピノレジノール;3:ピペリトール合成酵素;4:ピペリトール;5:セサミン合成酵素;6:セサミン。
【図2】図2a〜図2fは、SiP189遺伝子がコードする酵素の活性を測定したHPLCの結果を示す図である。
【図3】図3は、チトクロームP450のコードするアミノ酸の一次構造解析から得られる樹系図である。
【図4】図4は、SiP189遺伝子がコードするタンパク質との相同性検索の結果を示す図である。
【図5】図5は、SiP189遺伝子のサザン解析の結果を示す図である。
【図6】図6a〜図6dは、SrSiP189遺伝子がコードするタンパク質の活性を測定したHPLC分析の結果を示す図である。
【図7】図7は、形質転換タバコにおけるSiP遺伝子の発現解析の結果を示す図である。
【図8】図8a〜図8dは、植物細胞内におけるSiPタンパク質の機能解析の結果を示す図である。
【図9】図9A〜図9Hは、発現調節エレメントについてSiP189遺伝子のプロモーター領域を解析した結果を示す図である。
【図10】図10は、SiP189遺伝子のプロモーター領域に存在する発現調節エレメントを示す図である。
【図11】図11A〜図11Hは、発現調節エレメントについてSrSiP189遺伝子のプロモーター領域を解析した結果を示す図である。
【図12】図12A〜図12Cは、SiP189遺伝子とSrSiP遺伝子との間での相同性の比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項2】
ピノレジノールおよび/またはピペリトールにメチレンジオキシブリッジを形成する反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
ピペリトールおよび/もしくはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードし、かつ以下(a)もしくは(b)からなる遺伝子:
(a)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列の1個またはそれ以上のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/もしくは付加によって改変されているアミノ酸配列。
【請求項4】
ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードし、かつ配列番号1、64または78に示されるアミノ酸配列に対して50%以上の相同性を有するアミノ酸からなる遺伝子。
【請求項5】
配列番号2、65または79に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。
【請求項6】
ピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質をコードし、かつ以下の(a)〜(c)のいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子:
(a)配列番号2、65もしくは79に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列番号1、64もしくは78に示されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;あるいは
(c)(a)または(b)に示されるポリヌクレオチドの断片。
【請求項7】
ゴマ由来である請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子によりコードされるタンパク質。
【請求項9】
ピペリトールおよび/もしくはセサミンの生合成を触媒し、かつ以下(a)または(b)からなるタンパク質:
(a)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号1、64もしくは78に示されるアミノ酸配列の1個またはそれ以上のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/もしくは付加によって改変されているアミノ酸配列。
【請求項10】
請求項8または9に記載のタンパク質を認識する抗体。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子を含有する組換え発現ベクター。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子を含有する組換え発現ベクターを含む形質転換体。
【請求項13】
請求項12に記載の形質転換体を培養または生育させる工程、ならびに該形質転換体からピペリトールおよび/またはセサミンの生合成を触媒するタンパク質を得る工程を包含するタンパク質の生産方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子が導入された植物もしくは該植物の子孫またはこれらの組織。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子、あるいは請求項8または9に記載のタンパク質を用いる工程を包含する、ピペリトールおよび/またはセサミンの生産方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子を用いる工程を包含する、リグナン高含有の形質転換体を生産する方法。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子を用いる工程を包含する、ピペリトールおよび/またはセサミン高含有の植物体を生産する方法。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子を用いる工程を包含する、リグナン低含有の形質転換体を生産する方法。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子を用いる工程を包含する、ピペリトールおよび/またはセサミン低含有の植物体を生産する方法。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子を用いる工程を包含する、ゴマを育種する方法。
【請求項21】
ポリヌクレオチドプローブを備えている遺伝子検出器具であって、該プローブの塩基配列が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子における少なくとも一部分の塩基配列またはその相補配列からなる、遺伝子検出器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(A)】
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【図9(B)】
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【図9(C)】
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【図9(D)】
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【図9(E)】
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【図9(F)】
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【図9(G)】
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【図9(H)】
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【図10】
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【図11(A)】
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【図11(B)】
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【図11(C)】
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【図11(D)】
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【図11(E)】
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【図11(F)】
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【図11(G)】
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【図11(H)】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−507201(P2007−507201A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515447(P2006−515447)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014696
【国際公開番号】WO2005/030944
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】