説明

リサイクルタイルカーペット

【課題】生産コストが小さく、カーペット廃材のリサイクル比率を高くできると共に、反りが抑えられ、寸法安定性に優れたリサイクルタイルカーペットを提供する。
【解決手段】基布11の上面にパイル12が植設されたパイル布帛層2と、基布の下面側に積層された目止め樹脂層3と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層4とを備え、裏打ち層は、1ないし複数層のバッキング樹脂層7と、樹脂含浸繊維補強層6とを含み、少なくとも1層のバッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂含有カーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧により形成された層であって塩化ビニル樹脂含有率が5〜30質量%の樹脂層であり、目止め樹脂層は、塩化ビニル樹脂ペーストゾル等がパイル布帛層の下面に塗布されて形成され、カーペット1全体に対するリサイクル樹脂の含有割合が50質量%以上である構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をバッキング樹脂層の構成材料に用いたリサイクルタイルカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットの製造の際には裁断端材が多く発生し、一般家庭やオフィス等から廃棄処分に供されるカーペットの量も膨大なものになる。従来では、このようなカーペット廃材は、焼却処理されることが多かった。
【0003】
しかるに、塩化ビニル樹脂からなるバッキング材で裏打ちされたカーペットを焼却処理すると、有害物質が発生しやすいという問題があった。また、近年、地球環境保護の要請から、カーペット廃材を回収してリサイクル利用することが強く要請されている。このような背景から、塩化ビニル樹脂を含有するカーペット廃材をリサイクル利用した新たなカーペットが提案されている。
【0004】
例えば、塩化ビニル樹脂を裏打ちした廃タイルカーペットの裏打ち層を削り取り、その切削粉末を更に微粉砕分離し、分離された裏打ち層の微粉砕物を塩化ビニル系樹脂ペーストゾルに0.5重量%以上20重量%以下の比率で混合後、塗布ベルトにコーターで塗布した後、基布にパイルをタフトした基材を積層して基材の裏面に樹脂裏打ち層を形成してなるリサイクルタイルカーペットが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−141434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、廃タイルカーペットの裏打ち層の塩化ビニル樹脂をリサイクル利用する際に、塩化ビニル樹脂をペーストゾルにして塗布する必要があり、このペーストゾルは、粘度上昇しやすいので成形加工性が良好ではなく、製品として十分な品質を備えたものが得られ難いという問題があった。このため、ペーストゾルにしてリサイクル利用する塩化ビニル樹脂の使用量を少なくしなければならないという制約があった。即ち、廃タイルカーペットのリサイクル利用率を高くすることが困難であった。リサイクルタイルカーペットの裏打ち層に含有せしめ得るカーペット廃材の比率は最大でも20質量%が限界であり、タイルカーペット全体に対するカーペット廃材の含有比率、即ちリサイクル比率は、15質量%にも満たないものであった。このように従来技術では、カーペット廃材のリサイクル比率は小さく、回収したカーペット廃材のリサイクル利用を十全に図り得るものではなかった。
【0007】
更に、ペーストゾル塗布方式では、混合、混練等のために多大な動力を要して、カーペットの生産エネルギーコストが高いという問題もあった。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、塩化ビニル樹脂含有カーペット廃材をリサイクル利用するタイルカーペットとして、生産エネルギーコストが少なくて済み、タイルカーペット総質量に対するカーペット廃材の含有比率(リサイクル比率)を高くすることができると共に、反りが抑えられ、寸法安定性に優れたリサイクルタイルカーペットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、1ないし複数層のバッキング樹脂層と、ガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記少なくとも1層のバッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記リサイクル樹脂パウダーの散布により形成されたバッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂(前記リサイクル樹脂パウダーに限定されず、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をリサイクル利用した樹脂があれば、このようなリサイクル樹脂も包含される)の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【0011】
[2]基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、前記目止め樹脂層の下面側に積層された第1バッキング樹脂層と、該第1バッキング樹脂層の下面側に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層と、該補強層の下面側に積層された第2バッキング樹脂層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記第1バッキング樹脂層及び第2バッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記第1バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、前記第2バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂(前記リサイクル樹脂パウダーに限定されず、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をリサイクル利用した樹脂があれば、このようなリサイクル樹脂も包含される)の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【0012】
[3]基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、前記目止め樹脂層の下面側に積層されたバッキング樹脂層と、該バッキング樹脂層の下面側に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記バッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂(前記リサイクル樹脂パウダーに限定されず、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をリサイクル利用した樹脂があれば、このようなリサイクル樹脂も包含される)の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【0013】
[4]基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、前記目止め樹脂層の下面側に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層と、該補強層の下面側に積層されたバッキング樹脂層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記バッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂(前記リサイクル樹脂パウダーに限定されず、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をリサイクル利用した樹脂があれば、このようなリサイクル樹脂も包含される)の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【0014】
[5]前記第2バッキング樹脂層の厚さは、前記第1バッキング樹脂層の厚さより大きい又は同一である前項2に記載のリサイクルタイルカーペット。
【0015】
[6]前記第2バッキング樹脂層の厚さは、前記第1バッキング樹脂層の厚さの2倍〜3倍に設定されている前項2に記載のリサイクルタイルカーペット。
【0016】
[7]前記リサイクル樹脂パウダーの90質量%以上は、粒子径が1500μm以下であり、前記リサイクル樹脂パウダーにおける繊維含有率が10質量%以下であり、前記リサイクル樹脂パウダーの比重が1.9以下である前項1〜6のいずれか1項に記載のリサイクルタイルカーペット。
【0017】
[8]前記補強層に含浸される樹脂として、樹脂ラテックス、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが用いられた前項1〜7のいずれか1項に記載のリサイクルタイルカーペット。
【0018】
[9]カーペット廃材を粉砕して得られた、塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%のリサイクル樹脂パウダーを走行するベルト上に散布した後、該ベルト上に散布されたパウダーを140℃〜180℃に加熱し、この加熱状態で加圧することによって、バッキング樹脂層用シートを得ることを特徴とするリサイクルタイルカーペットのバッキング樹脂層用シートの製造方法。
【0019】
[10]前記リサイクル樹脂パウダーを前記ベルト上に散布量300g/m2〜4000g/m2で散布する前項9に記載のリサイクルタイルカーペットのバッキング樹脂層用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
[1]〜[4]の発明では、塩化ビニル樹脂含有カーペット廃材をリサイクル利用したタイルカーペットが提供される。少なくとも1層のバッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成されていて、従来のペーストゾル塗布方式ではなく粉砕物散布方式によりバッキング樹脂層が形成されているから、生産エネルギーコストが少なくて済むと共に、タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂(前記リサイクル樹脂パウダーに限定されず、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をリサイクル利用した樹脂(例えばカレンダー成形バッキング樹脂層等)があれば、このようなリサイクル樹脂も包含される)の含有割合を50質量%以上にすることができる。また、裏打ち層は、ガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層(樹脂が含浸されている)を含むから、反りが抑制されると共に寸法安定性に優れたリサイクルタイルカーペットが提供される。更に、目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、かつ目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であるから、耐ファズ性(耐毛羽立ち性)に優れている。
【0021】
[2]の発明では、裏打ち層は、目止め樹脂層の下面側に積層された第1バッキング樹脂層と、該第1バッキング樹脂層の下面側に積層された前記特定構成の樹脂含浸補強層と、該補強層の下面側に積層された第2バッキング樹脂層とを含む構成であるから、タイルカーペットの反りをより十分に抑制することができる。
【0022】
[5]の発明では、上記[2]の発明において、第2バッキング樹脂層の厚さは、第1バッキング樹脂層の厚さより大きい又は同一である構成が採用されているから、反りが十分に抑制される。
【0023】
[6]の発明では、上記[2]の発明において、第2バッキング樹脂層の厚さは、第1バッキング樹脂層の厚さの2倍〜3倍に設定された構成が採用されているから、反りが十分に抑制されるし、熱による縮みの大きいパイル布帛層を用いた場合であっても反りが十分に抑制されるという効果が得られる。
【0024】
[7]の発明では、リサイクル樹脂パウダーの90質量%以上は、粒子径が1500μm以下であるから、パウダーを均一に散布できる。また、リサイクル樹脂パウダーにおける繊維含有率が10質量%以下であるから、加工性に優れる。また、リサイクル樹脂パウダーの比重が1.9以下であるから、軽量かつ強度に優れた製品とすることができる。
【0025】
[8]の発明では、この樹脂含浸繊維補強層とこれに接する他の構成層との接着強度を向上させることができる。
【0026】
[9]の発明では、リサイクル樹脂パウダーの散布方式によりバッキング樹脂層用シートを形成しているから、リサイクルタイルカーペットのバッキング樹脂層用シートを低エネルギーコストで製造することができる。また、リサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%と低い含有率であるから、180℃以下の低温度での加熱加圧により、強度に優れると共に寸法安定性を有したバッキング樹脂層用シートを製造できる。
【0027】
[10]の発明では、リサイクル樹脂パウダーを散布量300g/m2〜4000g/m2で散布するから、強度をより高めると共に寸法安定性をより向上させたバッキング樹脂層用シートを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のリサイクルタイルカーペットの一例(第1実施形態)を示す断面図である。
【図2】本発明のリサイクルタイルカーペットの他の例(第2実施形態)を示す断面図である。
【図3】本発明のリサイクルタイルカーペットの更に他の例(第3実施形態)を示す断面図である。
【図4】本発明のリサイクルタイルカーペットの更に他の例(第4実施形態)を示す断面図である。
【図5】本発明のリサイクルタイルカーペットの更に他の例(第5実施形態)を示す断面図である。
【図6】本発明のリサイクルタイルカーペットの更に他の例(第6実施形態)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係るリサイクルタイルカーペットの一実施形態(第1実施形態)を図1に示す。本発明のリサイクルタイルカーペット1は、基布11の上面にパイル12が植設されてなるパイル布帛層2と、該パイル布帛層2の下面に積層された目止め樹脂層3と、該目止め樹脂層3の下面側に積層された裏打ち層4とを備える。
【0030】
本発明において、前記裏打ち層4は、1ないし複数層のバッキング樹脂層7、8、9と、ガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6とを少なくとも含む。前記補強層6には樹脂が含浸されている。即ち、前記繊維補強層6は、樹脂含浸繊維補強層である。
【0031】
前記バッキング樹脂層のうち少なくとも1層のバッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された再生バッキング樹脂層である。前記リサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂の含有率は質量平均で5質量%〜30質量%に設定される。従って、パウダー散布により形成された前記再生バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率は5質量%〜30質量%になっている。
【0032】
前記目止め樹脂層3は、下記(a)、(b)及び(c)からなる群より選ばれるいずれかの樹脂が、前記パイル布帛層2の下面に塗布されて形成されたものである。
(a)樹脂ラテックス、
(b)塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部を超えて200質量部以下含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル、
(c)無機充填剤を含有せず、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル。
【0033】
前記目止め樹脂層3の形成量は200g/m2〜800g/m2に設定されている。
【0034】
本発明のリサイクルタイルカーペット1では、塩化ビニル樹脂含有カーペット廃材をリサイクル利用しているから、環境保護に貢献できる。また、少なくとも1層のバッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成されていて、従来のペーストゾル塗布方式ではなく粉砕物(パウダー)散布方式によりバッキング樹脂層が形成されているから、生産エネルギーコストが少なくて済む。また、裏打ち層4は、ガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6(樹脂が含浸されている)を含むから、反りが抑制されると共に、寸法安定性、形状安定性に優れたリサイクルタイルカーペットが提供される。更に、目止め樹脂層3は、前記(a)、(b)及び(c)からなる群より選ばれるいずれかの樹脂が、パイル布帛層2の下面に塗布されて形成されたものであり、かつ目止め樹脂層3の形成量が200g/m2〜800g/m2であるから、耐ファズ性(耐毛羽立ち性)に優れている。
【0035】
本発明では、タイルカーペット1全体に対するリサイクル樹脂(前記リサイクル樹脂パウダーに限定されず、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をリサイクル利用した樹脂(例えばカーペット廃材のペレットをカレンダー成形したカレンダー成形バッキング樹脂層等)があれば、このようなリサイクル樹脂も包含される)の含有割合は50質量%以上になるように設定される(通常、50質量%〜85質量%に設定される)。これによりタイルカーペット1の総質量に対するカーペット廃材の含有比率(即ちリサイクル比率)の大きいリサイクルタイルカーペット1が提供される。本発明では、少なくとも1層のバッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された構成を採用するので、低エネルギーで、このような50質量%以上という高いリサイクル比率を実現することが可能になったものである。
【0036】
(第1実施形態)
図1に示すリサイクルタイルカーペット1では、裏打ち層4は、目止め樹脂層3の下面に積層された第1バッキング樹脂層7と、該第1バッキング樹脂層7の下面に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6と、該補強層6の下面に積層された第2バッキング樹脂層8と、該第2バッキング樹脂層8の下面に積層されたカレンダー成形バッキング樹脂層31とからなる。前記補強層6には樹脂が含浸されている。この含浸樹脂により補強層6と第1バッキング樹脂層7とが接着されると共に補強層6と第2バッキング樹脂層8とが接着されている。
【0037】
前記第1バッキング樹脂層7及び第2バッキング樹脂層8は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層である。また、前記カレンダー成形バッキング樹脂層31は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をカレンダー成形によりシート化した樹脂層である。
【0038】
(第2実施形態)
本発明のリサイクルタイルカーペット1の第2実施形態を図2に示す。図2のタイルカーペット1では、裏打ち層4は、目止め樹脂層3の下面に積層されたバッキング樹脂層9と、該バッキング樹脂層9の下面に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6と、該補強層6の下面に積層されたカレンダー成形バッキング樹脂層31とからなる。前記補強層6には樹脂が含浸されている。この含浸樹脂により補強層6とバッキング樹脂層9とが接着されると共に補強層6とカレンダー成形バッキング樹脂層31とが接着されている。
【0039】
前記バッキング樹脂層9は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層である。また、前記カレンダー成形バッキング樹脂層31は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をカレンダー成形によりシート化した樹脂層である。なお、裏打ち層4以外の構成は、図1と同一であるので、同一部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0040】
(第3実施形態)
本発明のリサイクルタイルカーペット1の第3実施形態を図3に示す。図3のタイルカーペット1では、裏打ち層4は、目止め樹脂層3の下面に積層された第1バッキング樹脂層7と、該第1バッキング樹脂層7の下面に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6と、該補強層6の下面に積層された第2バッキング樹脂層8とからなる。前記補強層6には樹脂が含浸されている。この含浸樹脂により補強層6と第1バッキング樹脂層7とが接着されると共に補強層6と第2バッキング樹脂層8とが接着されている。
【0041】
前記第1バッキング樹脂層7及び第2バッキング樹脂層8は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層である。なお、裏打ち層4以外の構成は、図1と同一であるので、同一部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0042】
(第4実施形態)
本発明のリサイクルタイルカーペット1の第4実施形態を図4に示す。図4のタイルカーペット1では、裏打ち層4は、目止め樹脂層3の下面に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6と、該補強層6の下面に積層されたバッキング樹脂層9と、該バッキング樹脂層9の下面に積層されたカレンダー成形バッキング樹脂層31とからなる。前記補強層6には樹脂が含浸されている。この含浸樹脂により補強層6と目止め樹脂層3とが接着されると共に補強層6とバッキング樹脂層9とが接着されている。
【0043】
前記バッキング樹脂層9は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層である。また、前記カレンダー成形バッキング樹脂層31は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をカレンダー成形によりシート化した樹脂層である。なお、裏打ち層4以外の構成は、図1と同一であるので、同一部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0044】
(第5実施形態)
本発明のリサイクルタイルカーペット1の第5実施形態を図5に示す。図5のタイルカーペット1では、裏打ち層4は、目止め樹脂層3の下面に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6と、該補強層6の下面に積層されたバッキング樹脂層9とからなる。前記補強層6には樹脂が含浸されている。この含浸樹脂により補強層6と目止め樹脂層3とが接着されると共に補強層6とバッキング樹脂層9とが接着されている。
【0045】
前記バッキング樹脂層9は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層である。なお、裏打ち層4以外の構成は、図1と同一であるので、同一部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0046】
(第6実施形態)
本発明のリサイクルタイルカーペット1の第6実施形態を図6に示す。図6のタイルカーペット1では、裏打ち層4は、目止め樹脂層3の下面に積層されたカレンダー成形バッキング樹脂層31と、該カレンダー成形バッキング樹脂層31の下面に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層6と、該補強層6の下面に積層されたバッキング樹脂層9とからなる。前記補強層6には樹脂が含浸されている。この含浸樹脂により補強層6とカレンダー成形バッキング樹脂層31とが接着されると共に補強層6とバッキング樹脂層9とが接着されている。
【0047】
前記バッキング樹脂層9は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層である。また、前記カレンダー成形バッキング樹脂層31は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をカレンダー成形によりシート化した樹脂層である。なお、裏打ち層4以外の構成は、図1と同一であるので、同一部材については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0048】
上記第1〜6実施形態で示したとおり、本発明の裏打ち層4において、バッキング樹脂層7、8、9と、補強層6との相互の配置関係(上下の配置位置)は、特に限定されない。また、バッキング樹脂層7、8、9と、補強層6との間に他の層(例えばカレンダー成形バッキング樹脂層31等)が積層一体化された構成を採用することもできる。
【0049】
本発明において、前記パイル布帛層2は、基布11の上面にパイル12が植設されてなるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、タフテッドカーペット、織カーペット、編カーペット、電着カーペット等が挙げられる。
【0050】
前記基布11としては、どのようなものでも使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは麻、綿、羊毛等の天然繊維などの繊維からなる糸を製編織した布地の他、前記各種の繊維や糸を、ニードリング等により機械的に接結したり、或いは接着剤等により化学的に接結した不織布等が挙げられる。
【0051】
前記パイル12としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維等の繊維からなるものを好適に使用でき、その他に、麻、綿、羊毛等の天然繊維からなるもの等を使用できる。前記パイル層の形成手段も、特に限定されるものではなく、例えば、モケット等のように経パイル織、緯パイル織等の製織によりパイル層を形成する手段、タフティングマシン等によりパイル糸を植毛してパイル層を形成する手段、編機によりパイル層を形成する手段、接着剤を用いてパイル糸を接着してパイル層を形成する手段等が挙げられる。パイル形態も特に限定されず、例えば、カットパイル、ループパイル等いずれの形態であってもよい。
【0052】
前記目止め樹脂層3は、1)樹脂ラテックスが前記パイル布帛層2の下面に塗布されて形成されたものであり、又は2)塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部を超えて200質量部以下含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが前記パイル布帛層2の下面に塗布されて形成されたものであり、或いは3)無機充填剤を含有せず、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが前記パイル布帛層2の下面に塗布されて形成されたものである。前記樹脂ラテックスとしては、特に限定されるものではないが、SBR樹脂(スチレン−ブタジエン共重合体)ラテックス又は/及びEVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂)ラテックスを用いるのが好ましい。
【0053】
前記目止め樹脂層3の形成量(固着量)は、200g/m2〜800g/m2の範囲に設定される。200g/m2未満では耐ファズ性が低下するし、800g/m2を超えると、キュア又は乾燥エネルギーが増大してコストが増大するし、リサイクル比率が低下するという問題がある。中でも、前記目止め樹脂層3の形成量は、250g/m2〜650g/m2であるのが好ましい。
【0054】
前記塩化ビニル樹脂ペーストゾルを用いる場合において、塩化ビニル樹脂100質量部に対する無機充填剤の含有量が200質量部を超えると耐ファズ性が低下する。また、塩化ビニル樹脂ペーストゾルの粘度が500mPa・s未満では、基布に樹脂が染み込み過ぎて加工性が低下し、粘度が10000mPa・sを超えると耐ファズ性が低下する。中でも、粘度が1000mPa・s〜6000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルを用いるのが好ましい。
【0055】
前記無機充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0056】
前記バッキング樹脂層7、8、9は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層である。前記塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーペット製造時の裁断端材、一般家庭やオフィス等から廃棄されたカーペット等が挙げられ、中でも、塩化ビニル樹脂が裏打ちされたカーペット(タイルカーペット等)が好適に用いられる。
【0057】
前記塩化ビニル樹脂が裏打ちされたカーペットから裏打ち層(塩化ビニル樹脂)を採取、粉砕してリサイクル樹脂パウダーを得る手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ビニル樹脂からなる裏打ち層をカーペット廃材から剥離し、この剥離廃材を粉砕機を用いて粉砕し(例えば特開2003−47878号公報に記載の粉砕手法を採用できる)、得られた粉砕物を風力振動分級法で樹脂分と繊維分に分離し、この分離された樹脂分をさらに微粉化する(例えば特開2006−326152号公報に記載の微粉化手法を採用できる)手法等が挙げられる。
【0058】
前記粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーとしては、カーペット廃材を構成していたパイルの繊維、不織布の繊維等の繊維分を含有していてもよい。
【0059】
前記リサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂の含有率は、質量平均で5質量%〜30質量%である必要がある。5質量%未満では、樹脂成分が不足することにより加熱溶融しても十分な強度を有する裏打ち層4の形成が困難になる。30質量%を超えると、樹脂分が多くなることで高温で溶融しなくてはならないために塩化ビニル樹脂の分解が起こる可能性があり、分解が生じた場合にはタイルカーペットの寸法安定性が低下する。また、30質量%を超えると、高温での溶融を要するので、加工時に多大なエネルギーを要する。中でも、前記リサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂の含有率は、質量平均で10質量%〜20質量%であるのが好ましい。なお、前記粉砕して得られた多数個のリサイクル樹脂パウダーは、各パウダーによって塩化ビニル樹脂含有率が異なるので、これら使用に供した多数個のリサイクル樹脂パウダーの質量平均で(数平均ではなく)前記塩化ビニル樹脂含有率の範囲を規定している。従って、前記リサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された各バッキング樹脂層7、8、9における塩化ビニル樹脂含有率は、5質量%〜30質量%になっている。中でも、前記リサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された各バッキング樹脂層7、8、9における塩化ビニル樹脂含有率は、10質量%〜20質量%であるのが好ましい。
【0060】
前記リサイクル樹脂パウダーの平均粒子径は500μm〜1200μmであるのが好ましい。500μm以上であることで製造時のパウダーの舞い上がりを防止できて良好な作業環境を維持できると共に、1200μm以下であることで、均一な散布ができて空隙を少なくし、加工性を向上させることができる。
【0061】
前記リサイクル樹脂パウダーの90質量%以上(100質量%を含む)のものは、粒子径が1500μm以下であるのが好ましく、この場合には均一な散布ができて空隙を少なくし、加工性を向上させることができる。また、前記リサイクル樹脂パウダーにおける繊維含有率が10質量%以下(繊維を含有しない繊維含有率0質量%を含む)であるのが好ましく、この場合には繊維のかたまりが少なく加工性を向上できる利点がある。前記リサイクル樹脂パウダーの比重は1.6〜1.9であるのが好ましい。
【0062】
前記各バッキング樹脂層7、8、9の形成量は、いずれにおいても300g/m2〜4000g/m2に設定されるのが好ましい。300g/m2以上であることで、十分な強度及び十分な寸法安定性を備えたバッキング樹脂層7、8、9を形成できると共に、4000g/m2以下であることでコスト低減及び軽量化を図ることができる。中でも、前記各バッキング樹脂層7、8、9の形成量は、いずれにおいても400g/m2〜3500g/m2に設定されるのがより好ましい。
【0063】
前記補強層6は、主に、本発明のリサイクルタイルカーペット1の形状安定性及び寸法安定性を向上させる役割を果たす。前記補強層6としては、ガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布が用いられる。このような構成の不織布又は織布は、高い強度及び耐熱性を備えていて、経時変化が少なく、樹脂層との接触面積も大であるので、タイルカーペット1の形状と寸法を安定化することができる。中でも、タイルカーペット1の形状と寸法を十分に安定化できる点で、ガラス繊維からなる不織布が好適である。
【0064】
前記補強層6の目付け量(含浸樹脂の量を含まない)は、15g/m2〜60g/m2であるのが好ましい。15g/m2以上であることでタイルカーペット1の形状安定性及び寸法安定性を十分に確保できると共に60g/m2以下であることで補強層6とバッキング樹脂層との間の層間剥離を防止できる。
【0065】
前記補強層6には樹脂が含浸されている。前記補強層6の厚さ方向の全体にわたって樹脂が含浸されているのが望ましい。このように補強層6の内部まで樹脂を含浸させることにより、前記補強層(ガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布)6の組織がさらに強固になると共に、前記補強層とバッキング樹脂層とが強く一体化されるものとなり、タイルカーペット1の形状と寸法をより安定化できる上に、反りも十分に防止することができ、またチェアーキャスター等によるハードな摩耗を多数回繰り返しても十分な寸法安定性を呈する(耐久性のある寸法安定性が得られる)。
【0066】
前記補強層6に含浸させる樹脂としては、下記(d)、(e)及び(f)からなる群より選ばれるいずれかの樹脂を用いるのが好ましい。
(d)樹脂ラテックス、
(e)塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部を超えて200質量部以下含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル、
(f)無機充填剤を含有せず、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル。
この場合には接着性及び加工性を向上させることができる。前記樹脂の含浸固着量(固形分量)は、100g/m2〜300g/m2に設定するのが好ましい。前記樹脂ラテックスとしては、特に限定されるものではないが、SBR樹脂ラテックス又は/及びEVA樹脂ラテックスを用いるのが好ましい。
【0067】
中でも、前記特定構成の塩化ビニル樹脂ペーストゾルを補強層6に含浸させるのがより好ましく、この場合には大きな熱エネルギーを要する乾燥工程を必要としないから、経済的に有利である。前記粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルを用いれば、ドクターコーティング塗布法等により、100g/m2〜1000g/m2の低量塗布が可能となる。
【0068】
図1、3に示すリサイクルタイルカーペット1において、第2バッキング樹脂層8の厚さは、第1バッキング樹脂層7の厚さより大きいか又は同一であるのが好ましく、この場合には反りが十分に抑制される。中でも、第2バッキング樹脂層8の厚さは、第1バッキング樹脂層7の厚さの2倍〜3倍に設定されているのが特に好ましい。
【0069】
次に、前記リサイクルタイルカーペット1の製造方法について一例を挙げて説明する。まず、カーペット廃材を粉砕して得られた、塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%のリサイクル樹脂パウダーをパウダー散布加工機のスキャッターに投入する。この時、必要に応じて、可塑剤、滑剤、充填剤、顔料等を混合することもできる。次いで、スキャッターからリサイクル樹脂パウダーを、走行する離型性ベルト上に散布した後、該ベルト上に散布されたパウダーを140℃〜180℃に加熱して溶融し、この加熱状態で加圧ロール等を用いて加圧することによってシート状に成形して、バッキング樹脂層用シートを得る。リサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%と低い含有率であるので、180℃以下の低い温度での加熱加圧により、十分な強度を有すると共にタイルカーペット1に安定した寸法安定性を付与できるバッキング樹脂層9を形成できる。
【0070】
前記リサイクル樹脂パウダーの散布量は、300g/m2〜4000g/m2に設定するのが好ましい。300g/m2以上であることで、十分な強度を備え、十分な寸法安定性のあるバッキング樹脂層を形成できると共に、4000g/m2以下であることで大きな熱エネルギーを要することなくリサイクル樹脂パウダーを溶融させてバッキング樹脂層を形成することができる。中でも、前記リサイクル樹脂パウダーの散布量は、400g/m2〜3500g/m2に設定するのがより好ましい。
【0071】
前記スキャッターは、その下側の散布口において、表面にゴルフボールのようなディンプル(窪み)が多数形成されたローラーが配置されており、該ローラーを回転させることによりディンプルに入り込んだ樹脂パウダーを散布口から下方に散布する装置であり、このスキャッターに貯留された樹脂パウダーを所望の一定量で散布することができる。
【0072】
次に、前記バッキング樹脂層9の上に樹脂含浸補強層6を重ね合わせた後、加圧ロール等で加圧することによって圧着して積層物を得る。
【0073】
一方、前記パイル布帛層2の裏面(パイルが植設されていない面)に粘度500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウム等の無機充填剤を0質量部を超えて200質量部以下含有する、又は無機充填剤を含有しない)を200g/m2〜800g/m2塗布した後、このパイル布帛2を加熱することによってペーストゾルを硬化させて目止め樹脂層3を形成する。次に、前記積層物の樹脂含浸補強層6の上に、このパイル布帛2を目止め樹脂層3を下側にして重ね合わせて120℃〜160℃の温度で一対のロール間で挟圧して熱圧着した後、正方形形状等の所定形状に裁断することによって、リサイクルタイルカーペット1(図5参照)を得る。
【0074】
なお、上記製造方法はその一例を示したものに過ぎず、本発明のリサイクルタイルカーペット1は、上記製造方法で製造されるものに特に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0076】
<使用材料>
(パイル布帛層)
目付90g/m2のポリエステル繊維製不織布(基布)に、ナイロン繊維からなるパイル糸がループパイルとしてタフティングされたもの(パイル目付610g/m2)。
(補強層)
目付量が35g/m2のガラス繊維からなる不織布に粘度1500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルをドクターコーティング塗布法により300g/m2塗布して150℃で3分間加熱キュアして得た樹脂含浸補強層(不織布の厚さ方向の全体にわたって樹脂が含浸されている)。
(リサイクル樹脂パウダーA)
塩化ビニル樹脂が裏打ちされたカーペット廃材から裏打ち層(塩化ビニル樹脂)を剥離し、この剥離廃材を粉砕機を用いて粉砕し、得られた粉砕物を風力振動分級法で樹脂分と繊維分に分離し、この分離された樹脂分をさらに微粉化することによって得た平均粒子経が850μmのリサイクル樹脂パウダーA。このリサイクル樹脂パウダーAの92質量%は、粒子径が1500μm以下であり、リサイクル樹脂パウダーAにおける繊維含有率は2質量%であり、リサイクル樹脂パウダーAの比重は1.78である。このリサイクル樹脂パウダーAにおける塩化ビニル樹脂含有率の分布は8〜24質量%であり、質量平均では18質量%である。
(リサイクル樹脂パウダーB)
塩化ビニル樹脂が裏打ちされたカーペット廃材から裏打ち層(塩化ビニル樹脂)を剥離し、この剥離廃材を粉砕機を用いて粉砕し、得られた粉砕物を風力振動分級法で樹脂分と繊維分に分離し、この分離された樹脂分をさらに微粉化することによって得た平均粒子経が700μmのリサイクル樹脂パウダーB。このリサイクル樹脂パウダーBの96質量%は、粒子径が1500μm以下であり、リサイクル樹脂パウダーBにおける繊維含有率は2質量%であり、リサイクル樹脂パウダーBの比重は1.75である。このリサイクル樹脂パウダーBにおける塩化ビニル樹脂含有率の分布は18〜24質量%であり、質量平均では20質量%である。
【0077】
なお、上記リサイクル樹脂パウダーの粒度分布データ(例えば「パウダーの92質量%は粒子径が1500μm以下である」等)は、日機装株式会社製のMICROTRAC粒度分析計を用いて湿式測定法で測定して得られた粒度分布に基づいて求めた値である。前記湿式測定法は、粉体(パウダー)を水に分散し、流れる粉体群にレーザー光を照射し、その前方散乱光により粒度分析を行う手法である。
【0078】
また、上記リサイクル樹脂パウダーの平均粒子経は、上記日機装株式会社製のMICROTRAC粒度分析計を用いて求められる面積基準平均粒子径である。
【0079】
また、リサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂含有率の分布は、次のようにして求めたものである。即ち、各リサイクル樹脂パウダーをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し、遠心分離した後、可溶分をメタノールで再沈させ、不溶分を乾燥させてその質量を測定することによって各パウダーの塩化ビニル樹脂含有率を求める、このような操作を任意に選んだ10サンプル(パウダー約100gを1サンプルとする)について行い、その最小値と最大値からリサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂含有率の分布を算出した。リサイクル樹脂パウダーにおける塩化ビニル樹脂含有率の質量平均値は、上記10サンプルについての平均値である。
【0080】
<実施例1>
パウダー散布加工機に上記リサイクル樹脂パウダーAを投入し、該散布加工機のスキャッターからリサイクル樹脂パウダーAを、移動している無端離型性ベルトの上に散布量3500g/m2で散布し、次いで加熱装置により170℃に加熱してリサイクル樹脂パウダーAを加熱溶融せしめた後、その上面側から水冷式の冷却加圧ロールで加圧することによってシート化して、バッキング樹脂層9を形成した。前記バッキング樹脂層9における塩化ビニル樹脂含有率は18質量%であった。次に、このバッキング樹脂層9の上に上記樹脂含浸補強層6を重ね合わせた後、表面を150℃に加熱し、水冷式の冷却加圧ロールで加圧して圧着して積層物を得た。
【0081】
一方、上記パイル布帛層2の裏面(パイルが植設されていない面)に粘度2500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを100質量部含有する)を500g/m2塗布した後、このパイル布帛2を150℃で3分間加熱キュアすることで目止め樹脂層3を形成し、続いて前記積層物の樹脂含浸補強層6の上面を150℃に加熱しておいて該樹脂含浸補強層6の上に、このパイル布帛2を目止め樹脂層3を下側(この下面も150℃に加熱している)にして重ね合わせて一対のロール間で挟圧して熱圧着した後、500mm×500mmの正方形形状に裁断することによって、図5に示すリサイクルタイルカーペット1を得た。
【0082】
<実施例2>
上記リサイクル樹脂パウダーBをバンバリ混練機に投入して混練した後、カレンダー成形機を用いて厚さ1.2mmの長尺シート(カレンダー成形バッキング樹脂層31)に成形した。
【0083】
次に、パウダー散布加工機に上記リサイクル樹脂パウダーAを投入し、該散布加工機のスキャッターからリサイクル樹脂パウダーAを、無端離型性ベルトの上面に載置された状態で該離型性ベルトと共に水平方向に搬送されている前記長尺シート31の上に、散布量1500g/m2で散布し、次いで加熱装置により170℃に加熱してリサイクル樹脂パウダーAを加熱溶融せしめた後、その上面側から水冷式の冷却加圧ロールで加圧することによって、バッキング樹脂層9を形成した。前記バッキング樹脂層9における塩化ビニル樹脂含有率は18質量%であった。次に、このバッキング樹脂層9の上に上記樹脂含浸補強層6を重ね合わせた後、表面を150℃に加熱し、水冷式の冷却加圧ロールで加圧して圧着して積層物を得た。
【0084】
一方、上記パイル布帛層2の裏面(パイルが植設されていない面)に粘度2500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを100質量部含有する)を500g/m2塗布した後、このパイル布帛2を150℃で3分間加熱キュアすることで目止め樹脂層3を形成し、続いて前記積層物の樹脂含浸補強層6の上面を150℃に加熱しておいて該樹脂含浸補強層6の上に、このパイル布帛2を目止め樹脂層3を下側(この下面も150℃に加熱している)にして重ね合わせて一対のロール間で挟圧して熱圧着した後、500mm×500mmの正方形形状に裁断することによって、図4に示すリサイクルタイルカーペット1を得た。
【0085】
<実施例3>
上記リサイクル樹脂パウダーBをバンバリ混練機に投入して混練した後、カレンダー成形機を用いて厚さ1.2mmの長尺シート(カレンダー成形バッキング樹脂層31)に成形した。
【0086】
次に、パウダー散布加工機のスキャッターに上記リサイクル樹脂パウダーAを投入し、該スキャッターからリサイクル樹脂パウダーAを、無端離型性ベルトの上面に載置された状態で該離型性ベルトと共に水平方向に搬送されている前記長尺シート31の上に、散布量500g/m2で散布し、次いで加熱装置により170℃に加熱してリサイクル樹脂パウダーAを加熱溶融せしめた後、その上面側から水冷式の冷却加圧ロールで加圧することによって、第2バッキング樹脂層8を形成した。次に、この第2バッキング樹脂層8の上に上記樹脂含浸補強層6を重ね合わせた後、この樹脂含浸補強層6の上に更にスキャッターからリサイクル樹脂パウダーAを散布量500g/m2で散布し、次いで加熱装置により170℃に加熱してリサイクル樹脂パウダーAを加熱溶融せしめた後、その上面側から水冷式の冷却加圧ロールで加圧して圧着して、バッキング樹脂層31/第2バッキング樹脂層8/樹脂含浸補強層6/第1バッキング樹脂層7がこの順に積層一体化された積層物を得た。前記第1バッキング樹脂層7における塩化ビニル樹脂含有率は18質量%であり、前記第2バッキング樹脂層8における塩化ビニル樹脂含有率は18質量%であった。
【0087】
一方、上記パイル布帛層2の裏面(パイルが植設されていない面)に粘度2500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを100質量部含有する)を500g/m2塗布した後、このパイル布帛2を150℃で3分間加熱キュアすることで目止め樹脂層3を形成し、続いて前記積層物の樹脂含浸補強層6の上面を150℃に加熱しておいて該樹脂含浸補強層6の上に、このパイル布帛2を目止め樹脂層3を下側(この下面も150℃に加熱している)にして重ね合わせて一対のロール間で挟圧して熱圧着した後、500mm×500mmの正方形形状に裁断することによって、図1に示すリサイクルタイルカーペット1を得た。
【0088】
<実施例4>
パイル布帛層2の裏面に粘度1800mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを100質量部含有する)を500g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、図5に示すリサイクルタイルカーペット1を得た。
【0089】
<実施例5>
パイル布帛層2の裏面に粘度1000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを100質量部含有する)を500g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、図5に示すリサイクルタイルカーペット1を得た。
【0090】
<実施例6>
パイル布帛層2の裏面に粘度3500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを180質量部含有する)を500g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、図5に示すリサイクルタイルカーペット1を得た。
【0091】
<実施例7>
パイル布帛層2の裏面に粘度1000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを80質量部含有する)を500g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、図5に示すリサイクルタイルカーペット1を得た。
【0092】
<比較例1>
塩化ビニル樹脂が裏打ちされたカーペット廃材から剥離した塩化ビニル樹脂裏打ち層(リサイクル廃材)を10質量%含有せしめた塩化ビニル樹脂ペーストゾル(可塑剤90質量部、塩化ビニル樹脂100質量部、炭酸カルシウム400質量部を配合)を、無端離型性ベルトの上に1.3mmの厚さでコーティングし、次いでその上面に目付量が35g/m2のガラス繊維不織布を重ね合わせた後、さらにこの上に、塩化ビニル樹脂が裏打ちされたカーペット廃材から剥離した塩化ビニル樹脂裏打ち層(リサイクル廃材)を10質量%含有せしめた塩化ビニル樹脂ペーストゾル(可塑剤90質量部、塩化ビニル樹脂100質量部、炭酸カルシウム400質量部を配合)を1.3mmの厚さでコーティングした。更に、この上に、上記パイル布帛層2を重ね合わせて一対のロール間で加圧した後、160℃で加熱キュアし、次いで500mm×500mmの正方形形状に裁断することによって、リサイクルタイルカーペットを得た。
【0093】
<比較例2>
パイル布帛層2の裏面に粘度25000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを120質量部含有する)を500g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、リサイクルタイルカーペットを得た。
【0094】
<比較例3>
パイル布帛層2の裏面に粘度4500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを300質量部含有する)を500g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、リサイクルタイルカーペットを得た。
【0095】
<比較例4>
パイル布帛層2の裏面に粘度2500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを100質量部含有する)を70g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、リサイクルタイルカーペットを得た。
【0096】
<比較例5>
パイル布帛層2の裏面に粘度2500mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾル(塩化ビニル樹脂100質量部に対し炭酸カルシウムを100質量部含有する)を900g/m2塗布した以外は、実施例1と同様にして、リサイクルタイルカーペットを得た。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
なお、表1、2中の「カーペット全体に対するリサイクル比率」は、タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂(塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材をリサイクル利用した樹脂)の含有割合(質量%)を示すものである。即ち、「カーペット全体に対するリサイクル比率」は、例えば、実施例1のリサイクルタイルカーペット(図5)では、タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂パウダーAの含有割合(質量%)であり、実施例2のリサイクルタイルカーペット(図4)では、タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂パウダーA(パウダー散布されるもの)及びリサイクル樹脂パウダーB(散布ではなくカレンダー成形されるもの)の合計含有割合(質量%)であり、また実施例3のリサイクルタイルカーペット(図1)では、タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂パウダーA(パウダー散布されるもの)及びリサイクル樹脂パウダーB(散布ではなくカレンダー成形されるもの)の合計含有割合(質量%)である。
【0100】
上記のようにして得られた各リサイクルタイルカーペットについて下記評価法により性能評価を行った。これらの結果を表1、2に示す。
【0101】
<寸法安定性評価法>
(A法)
JIS L4406−2000に準拠してタイルカーペットの寸法安定性を評価した。即ち、20℃65RH%の条件下で予めリサイクルタイルカーペットの縦の長さ及び横の長さを測定して試験前の値を求めた後、リサイクルタイルカーペットを60℃の温度で2時間放置し、次いで水道水に2時間浸漬し、その後、60℃の温度で24時間放置した後、20℃65RH%の条件下に24時間放置してからこの条件下においてタイルカーペットの縦の長さ及び横の長さを測定し、試験前の値に対する縦の長さの変化率(%)及び試験前の値に対する横の長さの変化率(%)を求めた。3サンプルについて評価を行い、これら6つの変化率(%)の数値の平均値を寸法変化率(%)とした。このA法による評価では寸法変化率0.10%以下を合格とした。
(B法)
20℃65RH%の条件下で予めリサイクルタイルカーペットの縦の長さ及び横の長さを測定して試験前の値を求めた後、荷重90kgを載せたチェアーキャスターをリサイクルタイルカーペットの上に配置し、この状態でチェアーキャスターを同じ位置で2000回転させた後、20℃65RH%の条件下に24時間放置してからこの条件下においてタイルカーペットの縦の長さ及び横の長さを測定し、試験前の値に対する縦の長さの変化率(%)及び試験前の値に対する横の長さの変化率(%)を求めた。3サンプルについて評価を行い、これら6つの変化率(%)の数値の平均値を寸法変化率(%)とした。このB法による評価でも寸法変化率0.15%以下を合格とした。
【0102】
<反り量評価法>
JIS L4406−2000に準拠してタイルカーペットの反り量(mm)を測定した。即ち、各リサイクルタイルカーペットを(20±2)℃、(65±2)RH%の標準状態の環境に24時間放置した後、該タイルカーペットを水平な試験台の上に載置し、タイルカーペットの四隅と試験台上面との隙間の間隔を測定し、その平均値を反り量(mm)とした。反り量0.5mm以下を合格とした。
【0103】
<耐ファズ性(耐毛羽立ち性)評価法>
リサイクルタイルカーペットのパイル布帛層の上に摩耗輪を載せて300gの荷重を加えた状態で摩耗輪を同一円周上を周回するように20周分回転移動させた後、その摩耗させた箇所を目視して下記判定基準に基づいて5級から1級までの5段階で判定し、4級以上を合格とした。
(判定基準)
「5級」…パイル形態が試験前とほとんど変化が認められない
「4級」…毛羽が僅かに認められるだけである
「3級」…毛羽が試料の同一円周上に認められる
「2級」…毛羽が繊維束状に発生していてパイル形態に顕著な変化が認められる
「1級」…パイルの原形を留めていないもの。
【0104】
<生産合理性評価法>
工程数の多少及び使用エネルギー量の大小を総合的に判断して、生産の負荷が小さいものを「○」とし、生産の負荷が大きいものを「×」とした。
【0105】
表から明らかなように、本発明の実施例1〜7のリサイクルタイルカーペットは、生産エネルギーコストが小さく、またタイルカーペット全体に対するカーペット廃材の含有比率(リサイクル比率)が大きいものであると共に、耐ファズ性が良好であり、反りが抑制され、寸法安定性にも優れている。
【0106】
これに対し、比較例1のリサイクルタイルカーペットは、リサイクル塩化ビニル樹脂ペーストゾルを用いてこれを塗布することによりバッキング樹脂層を形成しているために、カーペットの生産エネルギーコストが高く生産合理性に劣っていたし、リサイクル比率は低いものであった(成形加工性の観点からリサイクル比率を高くして製造するのは困難であった)。また、比較例2〜4のリサイクルタイルカーペットは、耐ファズ性に劣っていた。また、比較例5のリサイクルタイルカーペットは、工程数が多くなるし使用エネルギー量も大きいので生産合理性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係るリサイクルタイルカーペットは、例えば、一般家庭、オフィス等の床面などに敷設して使用される。
【符号の説明】
【0108】
1…リサイクルタイルカーペット
2…パイル布帛層
3…目止め樹脂層
4…裏打ち層
6…補強層
7…第1バッキング樹脂層(パウダー散布)
8…第2バッキング樹脂層(パウダー散布)
9…バッキング樹脂層(パウダー散布)
11…基布
12…パイル
31…バッキング樹脂層(カレンダー成形)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、1ないし複数層のバッキング樹脂層と、ガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記少なくとも1層のバッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記リサイクル樹脂パウダーの散布により形成されたバッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【請求項2】
基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、前記目止め樹脂層の下面側に積層された第1バッキング樹脂層と、該第1バッキング樹脂層の下面側に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層と、該補強層の下面側に積層された第2バッキング樹脂層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記第1バッキング樹脂層及び第2バッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記第1バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、前記第2バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【請求項3】
基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、前記目止め樹脂層の下面側に積層されたバッキング樹脂層と、該バッキング樹脂層の下面側に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記バッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【請求項4】
基布の上面にパイルが植設されてなるパイル布帛層と、該パイル布帛層の下面に積層された目止め樹脂層と、該目止め樹脂層の下面側に積層された裏打ち層とを備えたタイルカーペットであって、
前記裏打ち層は、前記目止め樹脂層の下面側に積層された補強層であってガラス繊維及びポリエステル繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維で構成された不織布又は織布からなる補強層と、該補強層の下面側に積層されたバッキング樹脂層とを含み、
前記補強層は、樹脂が含浸され、
前記バッキング樹脂層は、塩化ビニル樹脂を含有してなるカーペット廃材を粉砕して得られたリサイクル樹脂パウダーを散布して加熱加圧することにより形成された層であり、前記バッキング樹脂層における塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%であり、
前記目止め樹脂層は、樹脂ラテックスが、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが、前記パイル布帛層の下面に塗布されて形成されたものであり、
前記目止め樹脂層の形成量が200g/m2〜800g/m2であり、
タイルカーペット全体に対するリサイクル樹脂の含有割合が50質量%以上であることを特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【請求項5】
前記第2バッキング樹脂層の厚さは、前記第1バッキング樹脂層の厚さより大きい又は同一である請求項2に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項6】
前記第2バッキング樹脂層の厚さは、前記第1バッキング樹脂層の厚さの2倍〜3倍に設定されている請求項2に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項7】
前記リサイクル樹脂パウダーの90質量%以上は、粒子径が1500μm以下であり、前記リサイクル樹脂パウダーにおける繊維含有率が10質量%以下であり、前記リサイクル樹脂パウダーの比重が1.9以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項8】
前記補強層に含浸される樹脂として、樹脂ラテックス、又は塩化ビニル樹脂100質量部に対して無機充填剤を0質量部〜200質量部含有し、粘度が500mPa・s〜10000mPa・sの塩化ビニル樹脂ペーストゾルが用いられた請求項1〜7のいずれか1項に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項9】
カーペット廃材を粉砕して得られた、塩化ビニル樹脂含有率が5質量%〜30質量%のリサイクル樹脂パウダーを走行するベルト上に散布した後、該ベルト上に散布されたパウダーを140℃〜180℃に加熱し、この加熱状態で加圧することによって、バッキング樹脂層用シートを得ることを特徴とするリサイクルタイルカーペットのバッキング樹脂層用シートの製造方法。
【請求項10】
前記リサイクル樹脂パウダーを前記ベルト上に散布量300g/m2〜4000g/m2で散布する請求項9に記載のリサイクルタイルカーペットのバッキング樹脂層用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200323(P2012−200323A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65618(P2011−65618)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】