説明

リザーバ内蔵型アクチュエータ

【課題】第1油室と第2油室との合計容積の変動が大きくても、第1油室と第2油室との合計容積の変動を吸収することができるリザーバ内蔵型アクチュエータを提供することを目的とする。
【解決手段】シリンダ2内に配設されたスタンドパイプ3が挿入される挿入孔を形成するピストン4の内周面に、スタンドパイプ3の軸方向に延びる螺旋状の第1溝42が形成され、第1溝42に嵌入する第1嵌入体61を外周面に有し、スタンドパイプ3の軸周りに回転自在な第1回転部材6と、第1回転部材6と連結され、スタンドパイプ3の軸方向に延びる第1溝42と逆巻きの螺旋状の第2溝74が形成され、スタンドパイプ3の軸周りに回転自在な第2回転部材7と、第2溝74に嵌入する第2嵌入体81を有し、スタンドパイプ3の軸方向に摺動可能な摺動部材8とを備え、リザーバRを形成する仕切板5が、該摺動部材8に連結されているリザーバ内蔵型アクチュエータ1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバを内蔵したリザーバ内蔵型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機の燃費の向上、軽量化及び整備性等の観点から、航空機における降着装置の揚降、蛇面の操作、ブレーキ操作、及び、脚ステアリング操作等を行うアクチュエータとして、EHA(Electro Hydrostatic Actuator)が提案されている。かかるEHAは、シリンダ及びピストンを有するアクチュエータの他、ポンプ、モータ等を備え、外部から油圧の供給を受けることなく、自身でモータ及びポンプ等を駆動することで、ピストンの往復運動を行う装置である。
【0003】
図7に示すように、EHA等に使用されるシリンダ11及びピストン12を有するアクチュエータ10は、シリンダ11の内側の空間部がピストンヘッド13によってピストンロッド14側の第1油室15と、ピストンヘッド13側の第2油室16とに仕切られている。第1油室15は、ピストンロッド14が内在することにより、第2油室16に比べて、シリンダ11の軸方向と直交する面の断面積が小さい。このため、ピストン12が摺動すると、第1油室15と第2油室16との合計容積が変動する。
【0004】
このような合計容積の変動を吸収するリザーバが外付けされたアクチュエータが従来より商品化されていた。しかし、リザーバが外付されたアクチュエータは、大型であるという問題があった。そこで、本出願人は、特許文献1において、アクチュエータの小型化を目的として、リザーバを内蔵したリザーバ内蔵型アクチュエータを提案している。
【0005】
かかるリザーバ内蔵型アクチュエータにおいては、シリンダ内に配設されるスタンドパイプの内側の空間部のうち、仕切板で仕切られた一方の空間部がリザーバとされている。この仕切板は、スタンドパイプの内側の空間部に配置され、スタンドパイプの内周面を摺動可能に弾性部材と連結されている。かかるリザーバ内蔵型アクチュエータにおいては、ピストンの摺動により第1油室と第2油室との合計容積が変動することで、第1油室と第2油室とに充填された油圧が変動すると、該油圧の変動によって弾性部材が伸縮して仕切板が摺動することで、リザーバの容積が変動し、第1油室15と第2油室16との合計容積の変動が吸収される。
【特許文献1】特開2007−239975号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、弾性部材は、伸縮量が大きくなればなるほど、伸縮し難くなる。このため、かかるリザーバ内蔵型アクチュエータにおいては、第1油室と第2油室との合計容積の変動が大きい場合、リザーバの容積が、第1油室と第2油室との合計容積の変動に追従して変動することが困難である。従って、かかるリザーバ内蔵型アクチュエータにおいては、第1油室と第2油室との合計容積の変動が大きい場合、第1油室と第2油室との合計容積の変動を吸収することが困難である。
【0007】
本発明は、第1油室と第2油室との合計容積の変動が大きくても、第1油室と第2油室との合計容積の変動を吸収することができるリザーバ内蔵型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリンダと、前記シリンダの内側の空間部に該シリンダの軸方向に沿って配設されるスタンドパイプと、前記スタンドパイプの軸方向の一端部から、前記スタンドパイプが摺動可能に挿入される筒状の挿入孔を有するピストンと、前記スタンドパイプの内側の空間部を前記スタンドパイプの軸方向に仕切る仕切板とを備え、前記スタンドパイプの内側の空間部のうち、前記仕切板に対して前記スタンドパイプの軸方向の他端部側の空間部がリザーバとして使用されるリザーバ内蔵型アクチュエータであって、前記挿入孔を形成する前記ピストンの内周面には、前記スタンドパイプの軸方向に延びる螺旋状の第1溝が形成され、更に、前記挿入孔内において、前記スタンドパイプに対して前記スタンドパイプの軸方向の一端部側に位置し、前記第1溝に嵌入する第1嵌入体を外周面に有し、前記スタンドパイプの軸周りに回転自在な第1回転部材と、前記第1回転部材に連結されると共に、前記スタンドパイプの内側の空間部に位置し、前記スタンドパイプの軸方向に延びる前記第1溝と逆巻きの螺旋状の第2溝が外周面に形成され、前記スタンドパイプの軸周りに回転自在な第2回転部材と、前記第2溝に嵌入する第2嵌入体を有し、前記スタンドパイプの内周面を該スタンドパイプの軸方向に摺動可能に前記スタンドパイプに支持される摺動部材とを備え、前記仕切板は、前記摺動部材に対して前記スタンドパイプの軸方向の他端部側に位置すると共に、前記摺動部材に連結されて、前記スタンドパイプの軸方向に摺動自在に支持されることを特徴とするリザーバ内蔵型アクチュエータを提供する。
【0009】
本発明に係るリザーバ内蔵型アクチュエータにおいては、スタンドパイプの軸方向の一端部からスタンドパイプがピストンの挿入孔に挿入される。よって、ピストンにより2つに仕切られたシリンダの内側の2つの室(シリンダの内側の空間部)のうち、スタンドパイプの軸方向の他端部側の第2油室にはスタンドパイプが内在し、第2油室と反対側の第1油室にはピストンが内在している。ピストンは、スタンドパイプを挿入する挿入孔を有している。よって、ピストンの外径はスタンドパイプの外径より大きい。このため、第1油室は、第2油室に比べて、スタンドパイプ(シリンダ)の軸方向と直交する面の断面積が小さい。このため、ピストンがスタンドパイプの軸方向の他端部側へ摺動すると、第1油室と第2油室との合計容積が減少する。一方、ピストンがスタンドパイプの軸方向の一端部側に摺動すると、第1油室と第2油室との合計容積が増大する。
【0010】
第1回転部材は、ピストンの内周面に形成された第1溝に嵌入する第1嵌入体を有し、スタンドパイプの軸周りに回転自在である。従って、ピストンがスタンドパイプの軸方向に摺動すると、第1回転部材は、スタンドパイプの軸周りにピストンの摺動距離に応じた量だけ回転する。第2回転部材は、第1回転部材に連結され、スタンドパイプの軸周りに回転自在とされている。よって、第2回転部材は、第1回転部材と同じ方向に、同じ量だけスタンドパイプの軸周りに回転する。更に、第2回転部材には、スタンドパイプの軸方向に延びる第1溝と逆巻きの螺旋状の第2溝が形成されている。この第2溝には、第2嵌入体が嵌入している。この第2嵌入体は、スタンドパイプの軸方向に摺動自在な摺動部材に有されている。よって、摺動部材は、ピストンがスタンドパイプの軸方向に摺動すると、ピストンの摺動距離に応じた距離だけ、ピストンの摺動方向と反対方向に摺動する。この摺動部材には、スタンドパイプの軸方向に摺動自在な仕切板が連結されている。よって、仕切板は、ピストンがスタンドパイプの軸方向に摺動すると、摺動部材の摺動に連動して、ピストンの摺動距離に応じた距離だけ、ピストンの摺動方向と反対方向に摺動する。リザーバとして使用される空間部は、仕切板に対してスタンドパイプの軸方向の他端部側の空間部である。よって、リザーバは、仕切板がスタンドパイプの軸方向の一端部側に摺動すると、仕切板の摺動距離に応じた分だけ容積が増大する。即ち、リザーバは、ピストンがスタンドパイプの軸方向の他端部側に摺動して、第1油室と第2油室との合計容積が減少すると、減少した分だけ容積が増大する。逆に、リザーバは、ピストンがスタンドパイプの軸方向の一端部側に摺動して、第1油室と第2油室との合計容積が増大すると、増大した分だけ容積が減少する。
【0011】
以上のように、リザーバの容積は、仕切板が連結された摺動部材の摺動によって変動する。この摺動部材は、ピストンの摺動距離に応じた距離だけ摺動する。このため、リザーバの容積は、従来のリザーバ内蔵型アクチュエータのように弾性部材の伸縮量によって制限されることなく、第1油室と第2油室との合計容積の変動が大きくても、第1油室と第2油室との合計容積の変動に追従して変動することができる。よって、本発明に係るリザーバ内蔵型アクチュエータは、第1油室と第2油室との合計容積の変動が大きくても、第1油室と第2油室との合計容積の変動を吸収することができる。
【0012】
尚、第1油室及び第2油室に充填される油の体積は熱膨張等により変動する。しかし、上述のように、リザーバの容積が、第1油室と第2油室との合計容積の変動のみに追従して変動する構成では、油の体積の変動を吸収することができない。航空機等に使用されるアクチュエータ等は使用環境の温度変化が大きいため、熱膨張等による油の体積の変動を吸収できることが好ましい。
【0013】
油の体積の変動を吸収できる好ましい構成として、前記スタンドパイプの軸方向に弾性を有する弾性部材を備え、前記仕切板は、前記弾性部材を介して前記摺動部材と連結されている構成を挙げることができる。
【0014】
かかる好ましい構成においては、仕切板は、スタンドパイプの軸方向に弾性を有する弾性部材を介して摺動部材と連結されている。このため、仕切板は、ピストンの摺動が無くても摺動することができる。即ち、リザーバの容積は、ピストンの摺動が無くても変動することができる。このため、リザーバは、第1油室と第2油室との合計容積の変動だけでなく、第1油室及び第2油室に充填される油の体積の変動を吸収することができる。また、かかる好ましい構成においては、第1油室と第2油室との合計体積の変動を摺動部材の摺動によって吸収し、油の体積の変動を弾性部材の伸縮によって吸収する。このため、弾性部材の伸縮のみによってリザーバの容積が変動する従来のリザーバ内蔵型アクチュエータに比べて、弾性部材の伸縮量が小さい。よって、弾性部材は、油の体積の変動に追従して伸縮し易く、油の体積の変動は、弾性部材の伸縮によって、十分に吸収することができる。よって、かかる好ましい構成のリザーバ内蔵型アクチュエータは、航空機等に使用されるアクチュエータ等、使用環境の温度変化が大きいアクチュエータとして使用しても、十分に使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、第1油室と第2油室との合計容積の変動が大きくても、第1油室と第2油室との合計容積の変動を吸収することができるリザーバ内蔵型アクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータ1の断面、及び、該リザーバ内蔵型アクチュエータ1に取り付けられる油圧回路100を示す図である。図1に示すように、リザーバ内蔵型アクチュエータ1は、シリンダ2と、スタンドパイプ3と、ピストン4と、仕切板5とを備える。
【0017】
シリンダ2は、軸方向が図1の矢印X方向に向いた円筒状に形成されている。このシリンダ2の外壁部21のうち、シリンダ2の軸方向の一端部側には、スタンドパイプ3及びピストン4が挿通される貫通孔22が形成されている。
【0018】
スタンドパイプ3は、円筒状に形成され、シリンダ2の内側の空間部23にシリンダ2の軸方向に沿って配設されている。スタンドパイプ3は、シリンダ2の貫通孔22を貫通し、軸方向の一端部32がシリンダ2の外部に突き出ている。また、スタンドパイプ3の軸方向の他端部33は、シリンダ2のシリンダボトム24に埋まっている。このように、軸方向の一端部32がシリンダ2の外部に突き出、軸方向の他端部33がシリンダボトム24に埋まっていることで、スタンドパイプ3の内側の空間部31と、シリンダ2の外壁部21及びスタンドパイプ3の外周面で仕切られた空間部との間は、油の移動が直接不可能なように遮断されている。
【0019】
ピストン4は、スタンドパイプ3の軸方向の一端部32から、スタンドパイプ3が摺動可能に挿入される円筒状の挿入孔41を有している。ピストン4は、シリンダ2の貫通孔22を貫通していると共に、挿入孔41にスタンドパイプ3がスタンドパイプ3の軸方向に摺動可能に挿入されている。この挿入孔41を形成するピストン4の内周面には、スタンドパイプ3の軸方向に延びる螺旋状の第1溝42が形成されている。更に、このピストン4は、シリンダ2の内側の空間部23をスタンドパイプ3の軸方向の一端部側の第1油室25とスタンドパイプ3の軸方向の他端部側の第2油室26とに仕切るピストンヘッド43を有している。第1油室25にはピストン4が内在し、第2油室26にはスタンドパイプ3が内在している。ピストン4は、スタンドパイプ3を挿入する挿入孔41を有している。よって、ピストン4の外径はスタンドパイプ3の外径より大きい。このため、第1油室25は、第2油室26に比べて、スタンドパイプ3の軸方向と直交する面の断面積が小さい。よって、第1油室25と第2油室26との合計容積は、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側(図1の矢印X1方向)に摺動すると、減少する。一方、第1油室25と第2油室26との合計容積は、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側(図1の矢印X2方向)に摺動すると、増大する。
【0020】
仕切板5は、スタンドパイプ3の内側の空間部31をスタンドパイプ3の軸方向に仕切る板である。この仕切板5は、スタンドパイプの内側の空間部31に位置し、スタンドパイプ3に対して、スタンドパイプ3の軸方向に摺動自在である。スタンドパイプ3の内側の空間部31のうち、仕切板5に対してスタンドパイプ3の軸方向の他端部側の空間部31がリザーバRとして使用される。リザーバRと、第1油室25と、第2油室26とは、それぞれが油圧回路100によって油の移動が可能なように接続されている。
【0021】
更に、図1に示すように、本実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータ1は、第1回転部材6と、第2回転部材7と、摺動部材8と、弾性部材9とを備えている。図2は、第1回転部材6と、第2回転部材7と、摺動部材8と、弾性部材9との構成の詳細を示す図であり、図2(a)は、リザーバ内蔵型アクチュエータ1の拡大断面図を示し、図2(b)は、第2回転部材7の外観図を示す。
【0022】
図2(a)に示すように、第1回転部材6は、ピストン4の挿入孔41内において、スタンドパイプ3に対してスタンドパイプ3の軸方向の一端部側に位置している。更に、第1回転部材6は、第1溝42に嵌入する第1嵌入体61を外周面に有し、スタンドパイプ3の軸周りに回転自在とされている。第1回転部材6は、円柱状の本体部分62を有し、該本体部分62は、スタンドパイプ3と同軸となるように配置されている。この本体部分62は、スタンドパイプ3の軸周りに回転自在である。第1嵌入体61は、本体部分62の外周面に固定されている。よって、第1嵌入体61もスタンドパイプ3の軸周りに回転自在である。尚、第1嵌入体61は、本体部分62の外周面に転動可能に固定されたものであっても、転動不能に固定されたものであってもよい。
【0023】
第2回転部材7は、第1回転部材6に連結されると共に、スタンドパイプ3の内側の空間部31に位置している。即ち、第2回転部材7は、第1回転部材6に対してスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に位置している。この第2回転部材7は、第1回転部材6の本体部分62と連結されている大径部71と、大径部71と連結され、大径部71のスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に位置する小径部72とを有している。大径部71と小径部72とは、それぞれ円柱状に形成され、大径部71と小径部72とはスタンドパイプ3と同軸となるように配置されている。大径部71は、スタンドパイプ3に取り付けられたベアリング73によって、スタンドパイプ3の軸周りに回動自在に支持されている。小径部72には、図2(b)に示すように、スタンドパイプ3の軸方向に延びる第1溝42と逆巻きの螺旋状の第2溝74が外周面に形成されている。尚、第1回転部材6と第2回転部材7とは、別体であってもよいし、一体的に形成されたものであってもよい。
【0024】
摺動部材8は、図2(a)に示すように、スタンドパイプ3の内側の空間部31に位置し、第2溝74に嵌入する第2嵌入体81を有している。この摺動部材8は、スタンドパイプ3の内周面を該スタンドパイプ3の軸方向に摺動可能にスタンドパイプ3に支持されている。この摺動部材8は、スタンドパイプ3の径方向中央部に小径部72が挿通される貫通孔82が形成され、該貫通孔82を形成する摺動部材8の内周面に、第2嵌入体81が固定されている。第2嵌入体81は、摺動部材8の内周面に転動可能に固定されたものであっても、転動不能に固定されたものであってもよい。このような摺動部材8に対して、上述の仕切板5がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に位置している。仕切板5と摺動部材8とは、スタンドパイプ3の軸方向に弾性を有する弾性部材9を介して連結されている。この弾性部材9には、例えば、コイルバネを使用することができる。
【0025】
以上に説明した、リザーバ内蔵型アクチュエータ1において、ピストン4が摺動することによって、第1油室25と第2油室26との合計容積が変動した場合のリザーバRの容積の変動について説明する。
【0026】
図3は、ピストン4がスタンドパイプ3の他端部側に摺動しているときにおけるリザーバ内蔵型アクチュエータ1の断面、及び、油圧回路100における油の流れを示す図である。図3に示すように、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側(図3の矢印X1方向)に摺動し、第1油室25と第2油室26との合計容積が減少するときは、油圧回路100を介して、第2油室26に充填された油が第1油室25及びリザーバRに流れ込む。このように、ピストン4をスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に摺動させる場合、コントローラCは、モータ111を駆動して、ポンプ112の第2ポート112bが吸入口に、ポンプ112の第1ポート112aが吐出口になるようにポンプ112を作動させると共に、図3に示すように、電磁弁110の状態を第1状態に切り替える。この第1状態とは、第1油室25、第2油室26、及び、リザーバRのそれぞれが、他と連通していない状態をいう。電磁弁110が第1状態のときにポンプ112が作動すると、第2油室26に充填された油は、配管113を介してポンプ112に流れ込み、ポンプ112の第1ポート112aから分岐点114を介して、配管115に流れ出る。該油は、配管115の分岐点116において、チェックバルブ117を介して第1油室25に流れ込むものと、パイロットチェックバルブ119のパイロットラインとなる配管118に流れ込むものとに別れる。配管118に油が流れると、パイロットチェックバルブ119が開放され、配管113内を流れる油がパイロットチェックバルブ119を通過することが可能となる。これにより、第2油室26から配管113に流れ出た油は、ポンプ112及びチェックバルブ117等を経由して第1油室25に流れ込むものと、パイロットチェックバルブ119を通過するものとに分かれる。パイロットチェックバルブ119を通過した油は、分岐点120、配管121、及び、分岐点122を介して、リザーバRに接続された配管123に流れ込み、該配管123からリザーバRに流れ込む。このように、第2油室26から第1油室25及びリザーバRに油が流れ込むと、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に摺動する。ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に摺動すると、第1油室25と第2油室26との合計容積が減少するため、リザーバRには、第2油室26から流れ出た油のうち、第1油室25と第2油室26との合計容積の減少した分が流れ込む。
【0027】
このようにピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に摺動すると、図2(a)に示すように、第1嵌入体61が第1溝41に嵌入していることにより、第1回転部材6は、スタンドパイプ3の軸周りの矢印Y1方向に、ピストン4の摺動距離に応じた量だけ回転する。第2回転部材7は、第1回転部材6に連結され、スタンドパイプ3の軸周りに回転自在とされている。よって、第2回転部材7は、第1回転部材6と同じ方向に、同じ量だけスタンドパイプ3の軸周りに回転する。第2回転部材7に形成された第2溝74は、スタンドパイプ3の軸方向に延びる第1溝42と逆巻きの螺旋状である。よって、第2溝74に第2嵌入体81が嵌入している摺動部材8は、第2回転部材7がスタンドパイプ3の軸周りの矢印Y1方向に回転すると、図3に示すように、スタンドパイプ3の軸方向の一端部側(図3の矢印X2方向)にピストン4の摺動距離に応じた距離だけ摺動する。即ち、摺動部材8は、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に摺動すると、スタンドパイプ3の軸方向の一端部側にピストン4の摺動距離に応じた距離だけ摺動する。よって、摺動部材8に連結された仕切板5も、スタンドパイプ3の軸方向の一端部側にピストン4の摺動距離に応じた距離だけ摺動する。図3に示すように、仕切板5がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側に摺動すると、リザーバRの容積が増大する。このように、リザーバRの容積は、弾性部材9の伸縮でなく、仕切板5が連結された摺動部材8の摺動によって変動するため、リザーバRの容積の変動は、弾性部材9の伸縮量によって制限されることがない。従って、リザーバRの容積は、ピストン4の摺動によって、第1油室25と第2油室26との合計容積が減少した分だけ増大する。よって、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側に摺動した場合、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動が大きくても、リザーバRによって、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動が吸収される。
【0028】
図4は、ピストン4がスタンドパイプ3の一端部側に摺動しているときにおけるリザーバ内蔵型アクチュエータ1の断面、及び、油圧回路100における油の流れを示す図である。図4に示すように、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側(図4の矢印X2方向)に摺動するときは、油圧回路100を介して、第1油室25及びリザーバRに充填された油が第2油室26に流れ込む。このように、ピストン4をスタンドパイプ3の軸方向の一端部側に摺動させる場合、コントローラCは、モータ111を駆動して、ポンプ112の第1ポート112aが吸入口に、ポンプ112の第2ポート112bが吐出口になるようにポンプ112を作動させると共に、図4に示すように、電磁弁110の状態を第1状態に切り替える。電磁弁110が第1状態のときにポンプ112が作動すると、リザーバRに充填された油は、配管123、チェックバルブ124、及び、分岐点114を介して、ポンプ112に流れ込み、ポンプ112の第2ポート112bから配管113に流れ出る。配管113に流れ出ると、該油は、分岐点125において、第2油室26に流れ込むものと、パイロットチェックバルブ127のパイロットラインとなる配管126に流れ込むものとに別れる。配管126に油が流れると、パイロットチェックバルブ127が開放される。これにより、第1油室25に充填された油は、分岐点128を介して、パイロットチェックバルブ127に流れ込み、該パイロットチェックバルブ127を通過して、分岐点120、及び、配管121を介して、分岐点122に到達する。分岐点122に到達すると、該油は、リザーバRから流れ出た油と同様に、配管123、チェックバルブ124、分岐点114、ポンプ112、及び、配管113を介して第2油室26に流れ込む。このように、第1油室25及びリザーバRから第2油室26に油が流れ込むと、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側(図4の矢印X2方向)に摺動する。ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側に摺動すると、第1油室25と第2油室26との合計容積が増大するため、第1油室25と第2油室26との合計容積の増大した分だけリザーバRから第2油室26に油が流れ込む。
【0029】
図4に示すように、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側に摺動し、第1油室25と第2油室26との合計容積が増大すると、図3の場合とは逆に、仕切板5は、スタンドパイプの軸方向の他端部側(図4の矢印X1方向)に移動する。よって、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側に摺動すると、リザーバRの容積Rは減少する。上述のように、リザーバRの容積は、仕切板5が連結された摺動部材8の摺動によって変動する。よって、ピストン4がスタンドパイプ3の軸方向の一端部側に摺動した場合も、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動が大きくても、リザーバRによって、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動が吸収される。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータ1は、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動が大きくても、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動を吸収することができる。
【0031】
尚、ピストン4の摺動距離、即ち、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動量に対するリザーバRの容積の変動量の割合は、第1溝42に対する第2溝74のピッチの割合によって定まる。よって、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動量とリザーバRの容積の変動量とを等しくするには、第2溝74のピッチは、下記式で表される大きさとされる。
=P/A
(P:第2溝74のピッチ、P:第1溝42のピッチ、A:第1油室25のスタンドパイプ3の軸方向と直交する面の断面積と第2油室26のスタンドパイプ3の軸方向と直交する面の断面積との差、A:リザーバRのスタンドパイプ3の軸方向と直交する面の断面積)
【0032】
また、本実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータ1は、弾性部材9を介して仕切板5が摺動部材8と連結されている。このため、仕切板5は、ピストン4の摺動が無くてもスタンドパイプ3の軸方向に摺動することができる。即ち、リザーバRの容積は、ピストン4の摺動が無くても変動することができる。このため、リザーバRは、第1油室25及び第2油室26に充填される油の体積の変動を、弾性部材9の伸縮によって吸収することができる。
【0033】
油の体積の変動の吸収は、ピストン4の摺動が行われていないときに行われる。ピストン4の摺動が行われていないときは、コントローラCは、電磁弁110を図5に示す第2状態とする。電磁弁110の第2状態とは、第1油室25、第2油室26、及び、リザーバRが互いに電磁弁110を介して連通されている状態をいう。例えば、第1油室25、第2油室26、及び、リザーバRに充填された油の温度が低下すると、該油は収縮する。油が収縮すると、第1油室25、第2油室26、及び、リザーバRの油圧が低下する。リザーバRの油圧が低下すると、弾性部材9によって仕切板5がスタンドパイプ3の軸方向の他端部側(図5の矢印X1方向)に押し出され、リザーバRの容積は減少する。第2状態においては、第1油室25、第2油室26、及び、リザーバRが互いに連通しているので、リザーバRの容積が減少すると、リザーバRの油は配管123に押し出され、押し出された油が電磁弁110を介して第1油室25又は第2油室26に流れ込む。これにより、第1油室25及び第2油室26にリザーバRから油が流れ込む。
【0034】
一方、例えば、第1油室25、第2油室26、及び、リザーバRに充填された油が熱膨張すると、図6に示すように、第1油室25、第2油室26、及び、リザーバRの油圧が上昇する。リザーバRの油圧が上昇すると、油によって仕切板5が弾性部材9の弾性力に抗してスタンドパイプ3の軸方向の一端部側(図6の矢印X2方向)に押し込まれる。これにより、リザーバRの容積が増大し、第1油室25及び第2油室26からリザーバRに油が流れ込む。
【0035】
このように、本実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータ1は、第1油室25と第2油室26との合計容積の変動だけでなく、第1油室25及び第2油室26に充填される油の体積の変動も吸収することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータ1においては、第1油室25と第2油室26との合計体積の変動を摺動部材8の摺動によって吸収し、油の体積の変動を弾性部材9の伸縮によって吸収する。このため、弾性部材9の伸縮のみによってリザーバRの容積が変動する従来のリザーバ内蔵型アクチュエータに比べて、弾性部材9の伸縮量が小さい。よって、弾性部材9は、油の体積の変動に追従して伸縮し易く、油の体積の変動を、十分に吸収することができる。よって、本実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータ1は、航空機等に使用されるアクチュエータ等、使用環境の温度変化が大きいアクチュエータとして使用しても、十分に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータの断面、及び、該リザーバ内蔵型アクチュエータに取り付けられる油圧回路を示す図である。
【図2】図2は、第1回転部材と、第2回転部材と、摺動部材と、弾性部材との構成の詳細を示す拡大図であり、図2(a)は、実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータの拡大断面図を示し、図2(b)は、第2回転部材の外観図を示す。
【図3】図3は、ピストンがスタンドパイプの他端部側に摺動しているときにおける実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータの断面、及び、油圧回路における油の流れを示す図である。
【図4】図4は、ピストンがスタンドパイプの一端部側に摺動しているときにおける実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータの断面、及び、油圧回路における油の流れを示す図である。
【図5】図5は、油が収縮しているときにおける実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータの断面、及び、油圧回路における油の流れを示す図である。
【図6】図6は、油が膨張しているときにおける実施形態に係るリザーバ内蔵型アクチュエータの断面、及び、油圧回路における油の流れを示す図である。
【図7】図7は、従来のアクチュエータの断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…リザーバ内蔵型アクチュエータ、2…シリンダ、3…スタンドパイプ、4…ピストン、41…挿入孔、42…第1溝、5…仕切板、6…第1回転部材、61…第1嵌入体、7…第2回転部材、74…第2溝、8…摺動部材、81…第2嵌入体、9…弾性部材、R…リザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダの内側の空間部に該シリンダの軸方向に沿って配設されるスタンドパイプと、
前記スタンドパイプの軸方向の一端部から、前記スタンドパイプが摺動可能に挿入される筒状の挿入孔を有するピストンと、
前記スタンドパイプの内側の空間部を前記スタンドパイプの軸方向に仕切る仕切板とを備え、
前記スタンドパイプの内側の空間部のうち、前記仕切板に対して前記スタンドパイプの軸方向の他端部側の空間部がリザーバとして使用されるリザーバ内蔵型アクチュエータであって、
前記挿入孔を形成する前記ピストンの内周面には、前記スタンドパイプの軸方向に延びる螺旋状の第1溝が形成され、
更に、
前記挿入孔内において、前記スタンドパイプに対して前記スタンドパイプの軸方向の一端部側に位置し、前記第1溝に嵌入する第1嵌入体を外周面に有し、前記スタンドパイプの軸周りに回転自在な第1回転部材と、
前記第1回転部材に連結されると共に、前記スタンドパイプの内側の空間部に位置し、前記スタンドパイプの軸方向に延びる前記第1溝と逆巻きの螺旋状の第2溝が外周面に形成され、前記スタンドパイプの軸周りに回転自在な第2回転部材と、
前記第2溝に嵌入する第2嵌入体を有し、前記スタンドパイプの内周面を該スタンドパイプの軸方向に摺動可能に前記スタンドパイプに支持される摺動部材とを備え、
前記仕切板は、前記摺動部材に対して前記スタンドパイプの軸方向の他端部側に位置すると共に、前記摺動部材に連結されて、前記スタンドパイプの軸方向に摺動自在に支持されることを特徴とするリザーバ内蔵型アクチュエータ。
【請求項2】
前記スタンドパイプの軸方向に弾性を有する弾性部材を備え、
前記仕切板は、前記弾性部材を介して前記摺動部材と連結されていることを特徴とする請求項1に記載のリザーバ内蔵型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−228792(P2009−228792A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74935(P2008−74935)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】