説明

リザーバ

【課題】有底のリザーバ穴が設けられるハウジングと、有底円筒状に形成されるとともにその端壁を臨ませるリザーバ室をハウジングとの間に形成してリザーバ穴に摺動可能に嵌合されるリザーバピストンと、リザーバ穴の開口端部に装着されるリテーナと、リテーナおよびリザーバピストン間に設けられる弾性部材とを備え、リザーバ室に通じる通路がハウジングに設けられるリザーバにおいて、リザーバピストンを成形するための成形型の簡素化を図るとともに成形性を高め、通路の径および配置の設計上の自由度を高める。
【解決手段】リザーバピストン38の端壁38a外面が、リザーバ穴36の閉塞端側に向けて膨らむとともに中心部を頂点とする球面状に形成され、通路50が、端壁38aの外面の中心部からオフセットした位置でリザーバ室37に通じるようにしてハウジング15に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバに関し、特に、有底のリザーバ穴が設けられるハウジングと、前記リザーバ穴の閉塞端に対向する端壁を有して有底円筒状に形成されるとともに前記端壁を臨ませるリザーバ室をハウジングとの間に形成して前記リザーバ穴に摺動可能に嵌合されるリザーバピストンと、前記リザーバ穴の開口端部に装着されるリテーナと、前記リザーバ室の容積を減少させる方向に前記リザーバピストンを付勢するばね力を発揮して前記リテーナおよび前記リザーバピストン間に設けられる弾性部材とを備え、前記リザーバ室に通じる通路が前記ハウジングに設けられるリザーバの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ液圧制御装置に用いられるリザーバにおいて、リザーバピストンの端壁がリザーバ穴の閉塞端に張り付くことに起因してリザーバピストンのストローク時にロス荷重が生じることを抑制し、リザーバピストンの応答性を高めるために、特許文献1で開示されたリザーバではリザーバピストンの端壁外面に複数の円形突部が突設され、特許文献2で開示されたリザーバでは、放射状に延びる複数のリブがリザーバピストンの端壁外面に突設されている。
【特許文献1】特開2000−185637号公報
【特許文献2】特開2002−200972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、リザーバピストンは型成形されるものであるが、上記従来のリザーバのように、リザーバピストンの端壁外面に突部やリブが設けられる構成では、リザーバピストンの端壁形状が複雑となり、成形型も複雑とならざるを得ず、成形性も優れているとは言い難い。しかもリザーバ室に通じるようにしてハウジングに設けられる通路のリザーバ室丙の開口端を前記突部やリブが完全に塞いでしまうと、リザーバ室からのエア抜き性が阻害されるので、突部やリブに対する通路の相対配置、ならびに突部やリブの寸法および通路の径の設定に制約が生じ、設計上の自由度が狭められてしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、リザーバピストンを成形するための成形型の簡素化を図るとともに成形性を高めた上で、通路の径および配置の設計上の自由度を高め得るようにしたリザーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、有底のリザーバ穴が設けられるハウジングと、前記リザーバ穴の閉塞端に対向する端壁を有して有底円筒状に形成されるとともに前記端壁を臨ませるリザーバ室をハウジングとの間に形成して前記リザーバ穴に摺動可能に嵌合されるリザーバピストンと、前記リザーバ穴の開口端部に装着されるリテーナと、前記リザーバ室の容積を減少させる方向に前記リザーバピストンを付勢するばね力を発揮して前記リテーナおよび前記リザーバピストン間に設けられる弾性部材とを備え、前記リザーバ室に通じる通路が前記ハウジングに設けられるリザーバにおいて、前記リザーバピストンの端壁外面が、前記リザーバ穴の閉塞端側に向けて膨らむとともに中心部を頂点とする球面状に形成され、前記通路が、前記端壁の外面の中心部からオフセットした位置で前記リザーバ室に通じるようにして前記ハウジングに設けられることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記通路が前記リザーバ室の上部に通じる位置でリザーバ穴の閉塞端に開口するようにして前記ハウジングに設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、リザーバピストンの端壁外面の中心部だけがリザーバ穴の閉塞端に当接することになり、リザーバピストンの端壁がリザーバ穴の閉塞端に張り付くことに起因してリザーバピストンのストローク時にロス荷重が生じることを抑制し、リザーバピストンの応答性を高めることができる。しかもリザーバピストンの端壁外面の中心部だけを避けて通路を配置することで、通路のリザーバ室への開口端をリザーバピストンで塞ぐことがないようにして、リザーバ室からのエア抜き性を高めることができ、また前記端壁外面の形状を簡素化し、リザーバピストンを成形するための成形型の簡素化を図るとともに成形性を高めることが可能であり、さらにリザーバピストンの端壁の強度を高めることができる。
【0008】
また請求項2記載の発明によれば、リザーバ室からのエア抜き性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すものであり、図1は四輪乗用車両用ブレーキ装置のブレーキ液圧回路図、図2はブレーキ液圧制御装置の正面図、図3は図2の3矢視平面図、図4は図2の4−4線断面図、図5は図2の5−5線断面図、図6は図5における入口弁および出口弁付近の拡大図、図7は図5におけるリザーバの拡大図である。
【0011】
先ず図1において、タンデム型のマスタシリンダMは、車両運転者がブレーキペダルPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する第1および第2出力ポート1A、1Bを備えており、左前輪用車輪ブレーキ2A、右後輪用車輪ブレーキ2B、右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび左後輪用車輪ブレーキ2Dと、前記第1および第2出力ポート1A,1Bに個別に接続された第1および第2出力液圧路3A,3Bとの間にブレーキ液圧制御装置4が設けられる。
【0012】
ブレーキ液圧制御装置4は、左前輪用車輪ブレーキ2A、右後輪用車輪ブレーキ2B、右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび左後輪用車輪ブレーキ2Dに個別に対応した常開型である電磁駆動式の第1、第2、第3および第4入口弁5A,5B,5C,5Dと、前記各車輪ブレーキ2A〜2Dに個別に対応した常閉型である電磁駆動式の第1、第2、第3および第4出口弁6A,6B,6C,6Dと、前記各入口弁5A〜5Dにそれぞれ並列に接続される第1、第2、第3および第4チェック弁7A,7B,7C,7Dと、第1および第2出力液圧路3A,3Bにそれぞれ個別に対応した第1および第2リザーバ8A,8Bと、第1および第2リザーバ8A,8Bに吸入側が接続されるプランジャ型の第1および第2戻しポンプ9A,9Bと、両ポンプ9A,9Bを駆動する共通一個の電動モータ10と、第1および第2ポンプ9A,9Bの吐出側に接続される第1および第2ダンパ11A,11Bと、第1および第2出力液圧路3A,3Bと第1および第2ダンパ11A,11B間にそれぞれ介裝される第1および第2オリフィス12A,12Bとを備える。
【0013】
第1入口弁5Aは、第1出力液圧路3Aおよび左前輪用車輪ブレーキ2A間に設けられ、第2入口弁5Bは、第1出力液圧路3Aおよび右後輪用車輪ブレーキ2B間に設けられ、第3入口弁5Cは、第2出力液圧路3Bおよび右前輪用車輪ブレーキ2C間に設けられ、第4入口弁5Dは、第2出力液圧路3Bおよび左後輪用車輪ブレーキ2D間に設けられる。
【0014】
また第1〜第4チェック弁7A〜7Dは、対応する車輪ブレーキ2A〜2DからマスタシリンダMへのブレーキ液の流れを許容するようにして、各入口弁5A〜5Dに並列に接続される。
【0015】
第1出口弁6Aは、左前輪用車輪ブレーキ2Aおよび第1リザーバ8A間に設けられ、第2出口弁6Bは、右後輪用車輪ブレーキ2Bおよび第1リザーバ8A間に設けられ、第3出口弁6Cは、右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび第2リザーバ8B間に設けられ、第4出口弁6Dは、左後輪用車輪ブレーキ2Dおよび第2リザーバ8B間に設けられる。
【0016】
このような第1〜第4入口弁5A〜5Dおよび第1〜第4出口弁6A〜6Dは、各車輪がロックを生じる可能性のない通常ブレーキ時には、マスタシリンダMおよび車輪ブレーキ2A〜2D間を連通するとともに車輪ブレーキ2A〜2Dおよびリザーバ8A,8B間を遮断する状態に制御される。すなわち各入口弁5A〜5Dが消磁、開弁状態とされるとともに各出口弁6A〜6Dが消磁、閉弁状態とされ、マスタシリンダMの第1出力ポート1Aから出力されるブレーキ液圧は、第1入口弁5Aを介して左前輪用車輪ブレーキ2Aに作用するとともに、第2入口弁5Bを介して右後輪用車輪ブレーキ2Bに作用する。またマスタシリンダMの第2出力ポート1Bから出力されるブレーキ液圧は、第3入口弁5Cを介して右前輪用車輪ブレーキ2Cに作用するとともに、第4入口弁5Dを介して左後輪用車輪ブレーキ2Dに作用する。
【0017】
上記ブレーキ中に車輪がロック状態に入りそうになったときには、第1〜第4入口弁5A〜5Dおよび第1〜第4出口弁6A〜6Dが、マスタシリンダMおよび車輪ブレーキ2A〜2D間を遮断するとともに車輪ブレーキ2A〜2Dおよびリザーバ8A,8B間を連通する状態に制御される。すなわち第1〜第4入口弁5A〜5Dのうちロック状態に入りそうになった車輪に対応する入口弁が励磁、閉弁されるとともに、第1〜第4出口弁6A〜6Dのうち上記車輪に対応する出口弁が励磁、開弁される。これにより、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧の一部が第1リザーバ8Aまたは第2リザーバ8Bに吸収され、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧が減圧されることになる。
【0018】
またブレーキ液圧を一定に保持する際には、第1〜第4入口弁5A〜5Dおよび第1〜第4出口弁6A〜6Dが、車輪ブレーキ2A〜2DをマスタシリンダMおよびリザーバ8A,8Bから遮断する状態に制御される。すなわち入口弁5A〜5Dが励磁、閉弁されるとともに、出口弁6A〜6Dが消磁、閉弁されることになる。さらにブレーキ液圧を増圧する際には、入口弁5A〜5Dが消磁、開弁状態とされるともに、出口弁6A〜6Dが消磁、閉弁状態とされればよい。
【0019】
このように第1〜第4入口弁5A〜5Dおよび第1〜第4出口弁6A〜6Dの通電を制御することにより、車輪をロックさせることなく、効率良く制動することができる。
【0020】
ところで、前記電動モータ10は上述のようなアンチロックブレーキ制御中に作動せしめられる。この電動モータ10の作動に伴って第1および第2戻しポンプ9A,9Bが駆動されるので、第1および第2リザーバ8A,8Bに吸収されたブレーキ液は、第1および第2戻しポンプ9A,9Bに吸入され、次いで第1および第2ダンパ11A,11B側へ吐出され、第1および第2オリフィス12A,12Bを経て第1および第2出力液圧路3A,3Bに還流される。このようなブレーキ液の還流によって、第1および第2リザーバ8A,8Bのブレーキ液の吸収によるブレーキペダルPの踏み込み量の増加を防ぐことができる。しかも第1および第2戻しポンプ9A,9Bの吐出圧の脈動は第1および第2ダンパ11A,11B、ならびに第1および第2オリフィス12A,12Bの協働作用により減衰されるため、上記還流によってブレーキペダルPの操作フィーリングが阻害されることはない。
【0021】
図2〜図5において、ブレーキ液圧制御装置4は、相互に反対側に臨む第1および第2取付け面15a,15bを有して、たとえばアルミニウム合金等によりブロック状に形成されるハウジング15を備えるものであり、このハウジング15に、第1〜第4入口弁5A〜5D、第1〜第4出口弁6A〜6D、第1〜第4チェック弁7A〜7D、第1および第2リザーバ8A,8B、第1および第2戻しポンプ9A,9B、第1および第2ダンパ11A,11B、ならびに第1および第2オリフィス12A,12Bが配設される。
【0022】
またハウジング15の第1取付け面15aには、合成樹脂から成るカバー16が無端状の第1シール部材13を介して取付けられ、カバー16とは反対側でハウジング15の第2取付け面15bには、電動モータ10のモータケース17が無端状の第2シール部材14を介して取付けられる。
【0023】
図6を併せて参照して、第1〜第4入口弁5A〜5Dは、弁部18に電磁駆動部19がそれぞれ連設されて成り、ハウジング15の第1取付け面15aに開口するようにして該ハウジング15の上部に設けられる4つの有底の装着孔20…に各弁部18…が収容され、各電磁駆動部19…はハウジング15の第1取付け面15aから突出する。
【0024】
しかも前記弁部18…の先端部および装着孔20…の閉塞端との間には、入力室21…が形成される。一方、ハウジング15の第2取付け面15bにおいて電動モータ10から外れた上部両側には、マスタシリンダMの第1出力ポート1Aに連なる第1出力液圧路3Aが接続される第1入口ポート23Aを有する第1接続ボス22Aと、マスタシリンダMの第2出力ポート1Bに連なる第2出力液圧路3Bが接続される第2入口ポート23Bを有する第2接続ボス22Bとが突設されており、第1および第2入口弁5A,5Bの入力室21…は第1入口ポート23Aに共通に連通され、第3および第4入口弁5C,5Dの入力室21…は第2入口ポート23Bに共通に連通される。
【0025】
また前記各弁部18…の中間部と、各装着孔20…の内面との間には環状室24…が形成されており、この環状室24…および前記入力室21…間で弁部18…の外周には、環状室24…から入力室21…へのブレーキ液の流通を許容するチェック弁7A〜7Dの機能を果たすカップシールが装着孔20…の内面に弾発的に接触するようにして装着され、チェック弁7A〜7Dとともに前記環状室24…を挟む位置で弁部18…の外周には、装着孔20…の内面に弾発的に接触するOリング25…が装着される。
【0026】
ハウジング15の上部側面には、左前輪用車輪ブレーキ2A、右後輪用車輪ブレーキ2B、右前輪用車輪ブレーキ2Cおよび左後輪用車輪ブレーキ2Dに個別に接続される出口ポート26A,26B,26C,26Dが各入口弁5A〜5Dに対応して設けられており、各入口弁5A〜5Dの環状室24…が前記各出口ポート26A〜26Dにそれぞれ連通される。
【0027】
而して電磁駆動部19…の非通電状態で各弁部18…は環状室24…および入力室21…間を連通しており、マスタシリンダMの出力液圧が各車輪ブレーキ2A〜2Dに作用する。また電磁駆動部19…に通電すると、各弁部18…は環状室24…および入力室21…間を遮断し、マスタシリンダMの出力液圧が各車輪ブレーキ2A〜2Dに作用することはない。
【0028】
第1〜第4出口弁6A〜6Dは、弁部28に電磁駆動部29がそれぞれ連設されて成るものであり、ハウジング15の第1取付け面15aに開口するようにして該ハウジング15の上部に設けられる4つの有底の装着孔30…に各弁部28…が収容され、各電磁駆動部29…はハウジング15の第1取付け面15aから突出する。
【0029】
しかも第1〜第4入口弁5A〜5Dの弁部18…を収容する装着孔20…が横方向に並んでハウジング15の上部に設けられるのに対し、第1〜第4出口弁6A〜6Dの弁部28…を収容する装着孔30…は、前記各装着孔20…の下方で横方向に並んでハウジング15に設けられており、第1〜第4入口弁5A〜5Dおよび第1〜第4出口弁6A〜6Dは上下に並列してハウジング15に配設されることになる。
【0030】
前記弁部28…の先端部および装着孔30…の閉塞端との間には、解放室31…が形成される。また各弁部28…の中間部と、各装着孔30…の内面との間には、ハウジング15に設けられた連通孔32…を介して各入口弁5A〜5Dの環状室24…に通じる環状室33…が形成され、該環状室33…を挟む位置で弁部28…の外周には、装着孔30…の内面に弾発的に接触するOリング34,35がそれぞれ装着される。
【0031】
而して電磁駆動部29…の通電状態で各弁部28…は環状室33…および解放室31…間を連通しており、各車輪ブレーキ2A〜2Dの液圧が解放室31…側に解放される。また電磁駆動部29…を非通電状態とすると、各弁部28…は環状室33…および解放室31…間を遮断し、各車輪ブレーキ2A〜2Dの液圧が解放室31…側に解放されることはない。
【0032】
第1リザーバ8Aは、第1および第2入口弁5A,5B間ならびに第1および第2出口弁6A,6B間に対応する位置でハウジング15の下部に配設され、第2リザーバ8Bは、第2および第3入口弁5C,5D間ならびに第3および第4出口弁6C,6D間に対応する位置でハウジング15の下部に配設される。
【0033】
図5に特に注目して、第1および第2リザーバ8A,8Bに対応する部分でハウジング15には、第1取付け面15aからカバー16側に突出するように隆起する一対の筒状部15c…が一体に設けられる。
【0034】
図7を併せて参照して、第1リザーバ8Aは、筒状部15cの内面で少なくとも一部が形成されるようにしてハウジング15に設けられる有底のリザーバ穴36と、第1および第2出口弁6A,6Bの解放室31…に共通に通じるリザーバ室37をリザーバ穴36の閉塞端との間に形成するようにしてリザーバ穴36に摺動可能に嵌合されるリザーバピストン38と、リザーバ穴36の開口端部に装着されるリテーナ39と、リザーバピストン38およびリテーナ39間に縮設される弾性部材としてのコイルばね40とから成る。
【0035】
リテーナ39は、リザーバ穴36の開口端部に嵌合されており、該リテーナ39のリザーバ穴36からの抜け出しを阻止する止め輪41がリザーバ穴36の開口端部内面に装着される。
【0036】
リザーバピストン38は、リザーバ穴36の閉塞端に対向する端壁38aを有して合成樹脂により有底円筒状に形成されるものであり、端壁38aをリザーバ室37に臨ませるようにしてリザーバ穴36に摺動可能に嵌合される。しかも前記端壁38aの外面は、リザーバ穴36の閉塞端側に向けて膨らむとともに中心部を頂点とする球面状に形成される。
【0037】
前記端壁38a寄りの部分でリザーバピストン38の内側面には、前記コイルばね40の外周位置を規制する外周規制突条42,42…が、周方向に等間隔をあけた複数箇所たとえば5箇所に一体に突設される。しかも各外周規制突条42,42…の端壁38aとは反対側の端面42a…は、コイルばね40をリザーバピストン38内に挿入する際のガイド機能を果すべく、リザーバピストン38の半径方向内方に向かうにつれて端壁38aに近づくように傾斜した斜面に形成される。
【0038】
またリザーバピストン38の外面には、第1環状ランド部43と、第1環状ランド部43よりもリザーバ室37側に間隔をあけた位置に配置されて第1環状ランド部43との間に環状凹部45を形成する第2環状ランド部44とが一体に設けられる。
【0039】
第1環状ランド部43の外周には環状の装着溝46が設けられており、リザーバ穴36の内側面に摺接する環状のシール部材たとえばOリング47が該装着溝46に装着される。また第2環状ランド部44の外周には、環状凹部45をリザーバ室37に通じさせる連通路48をリザーバ穴36の内側面との間にそれぞれ形成するたとえば3つの切欠き48…が、リザーバピストン38の周方向に等間隔をあけて設けられる。
【0040】
このようにリザーバピストン38の軸方向に間隔をあけた第1および第2環状ランド部43,44がリザーバピストン38の外面に設けられることにより、リザーバ穴36内でのリザーバピストン38の倒れを防止することができ、第1および第2環状ランド部43,44間の環状凹部45によりリザーバピストン38の軽量化をより一層図ることができる。しかも環状凹部45をリザーバ室37に通じさせる連通路48…が第2環状ランド部44とリザーバ穴36の内側面との間に形成されるので、環状凹部45にエアが溜まるのを防止することができる。
【0041】
ハウジング15には、前記リザーバ室37に通じる通路50が、前記端壁38aの外面の中心部からオフセットした位置でリザーバ室37に通じるようにして設けられる。この通路50は、上端を解放室31に連通せしめるようにして上下に延びてハウジング15に設けられるとともに下端部が球状の閉塞部材52で閉じられたブレーキ液通路51の中間部に通じるようにして水平に延びるものであり、この実施例では、リザーバ室37の上部に通じる位置でリザーバ穴36の閉塞端に開口するようにしてハウジング15に設けられる。
【0042】
また前記通路50の連通部および前記解放室37間で、前記ブレーキ液通路51の途中を横断するようにして第1ポンプ9Aがハウジング15に配設されており、前記ブレーキ液通路51は第1ポンプ9Aの吸入側に接続されることになる。
【0043】
また第2リザーバ8Bは、第3および第4出口弁6C,6Dの解放室31…に共通に通じるリザーバ室37を有するようにして、前記リザーバ8Bと基本的に同一の構造に構成される。
【0044】
第1および第2ダンパ11A,11Bは、前記第1および第2リザーバ8A,8Bにおけるリザーバ穴36…の閉塞端と、ハウジング15の第2取付け面15bとの間で該ハウジング15に配設される。
【0045】
カバー16は、前記第1〜第4入口弁5A〜5Dにおける電磁駆動部19…、前記第1〜第4出口弁6A〜6Dにおける電磁駆動部29…、ならびに各電磁駆動部19…,29…および電動モータ10を制御する電子制御ユニット54を収納するともに、第1および第2リザーバ8A,8Bの一部を構成する筒状部15cを突入せしめた収納室55を、ハウジング15の第1取付け面15aとの間に形成するようにしてハウジング15の第1取付け面15aに締結される。
【0046】
電子制御ユニット54は、電気回路がプリントされる長方形状の電子基板56に半導体チップ(図示せず)等が搭載されて成るものであり、この電子基板56が前記カバー16締結される。カバー16には、ハウジング15から側方にはみだす突出部16aが一体に形成されており、該突出部16aにはコネクタハウジング57が設けられる。
【0047】
次にこの実施例の作用について説明すると、ブレーキ液圧制御装置4の一部を構成する第1および第2リザーバ8A,8Bにおいて、リザーバピストン38の端壁38a外面が、リザーバ穴36の閉塞端側に向けて膨らむとともに中心部を頂点とする球面状に形成されるので、リザーバピストン38の端壁38a外面の中心部だけがリザーバ穴36の閉塞端に当接することになり、リザーバピストン38の端壁38aがリザーバ穴36の閉塞端に張り付くことに起因してリザーバピストン38のストローク時にロス荷重が生じることを抑制し、リザーバピストン38の応答性を高めることができる。また前記端壁38a外面の形状を簡素化し、リザーバピストン38を成形するための成形型の簡素化を図るとともに成形性を高めることが可能であり、さらにリザーバピストン38の端壁38aの強度を高めることができる。すなわち端壁38aに作用する軸方向外力に対する剛性を高めることを可能とするとともに作用した応力を分散することで応力集中を避けることができる。
【0048】
しかも前記端壁38aの外面の中心部からオフセットした位置でリザーバ室37に通じるようにして通路50がハウジング15に設けられるので、リザーバピストン38の端壁38a外面の中心部だけを避けて通路50を配置することで、通路50のリザーバ室37への開口端をリザーバピストン38で塞ぐことがないようにして、リザーバ室37からのエア抜き性を高めることができる。
【0049】
特に、通路50がリザーバ室37の上部に通じる位置でリザーバ穴36の閉塞端に開口するようにしてハウジング15に設けられることにより、リザーバ室37からのエア抜き性をより一層高めることができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0051】
たとえば上記実施例では、リザーバピストン38を合成樹脂製としたが、金属製のリザーバピストンを備えるリザーバにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】四輪乗用車両用ブレーキ装置のブレーキ液圧回路図である。
【図2】ブレーキ液圧制御装置の正面図である。
【図3】図2の3矢視平面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図5における入口弁および出口弁付近の拡大図である。
【図7】図5におけるリザーバの拡大図である。
【符号の説明】
【0053】
15・・・ハウジング
8A,8B・・・リザーバ
36・・・リザーバ穴
37・・・リザーバ室
38・・・リザーバピストン
38a・・・端壁
39・・・リテーナ
40・・・弾性部材としてのコイルばね
50・・・通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底のリザーバ穴(36)が設けられるハウジング(15)と、前記リザーバ穴(36)の閉塞端に対向する端壁(38a)を有して有底円筒状に形成されるとともに前記端壁(38a)を臨ませるリザーバ室(37)をハウジング(15)との間に形成して前記リザーバ穴(36)に摺動可能に嵌合されるリザーバピストン(38)と、前記リザーバ穴(36)の開口端部に装着されるリテーナ(39)と、前記リザーバ室(37)の容積を減少させる方向に前記リザーバピストン(38)を付勢するばね力を発揮して前記リテーナ(39)および前記リザーバピストン(38)間に設けられる弾性部材(40)とを備え、前記リザーバ室(37)に通じる通路(50)が前記ハウジング(15)に設けられるリザーバにおいて、前記リザーバピストン(38)の端壁(38a)外面が、前記リザーバ穴(36)の閉塞端側に向けて膨らむとともに中心部を頂点とする球面状に形成され、前記通路(50)が、前記端壁(38a)の外面の中心部からオフセットした位置で前記リザーバ室(37)に通じるようにして前記ハウジング(15)に設けられることを特徴とするリザーバ。
【請求項2】
前記通路(50)が前記リザーバ室(37)の上部に通じる位置でリザーバ穴(36)の閉塞端に開口するようにして前記ハウジング(15)に設けられることを特徴とする請求項1記載のリザーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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