説明

リジン混合物及びリジンを投与するための装置と方法

L−リジンと、ネコに対して嗜好性のよい基剤物質とを含む混合物が記載される。また、経口シリンジを用いてL−リジンを投与するための改良された方法および装置が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動物投薬の分野に関する。より具体的には、本発明は、改良されたL−リジン混合物に関し、かつペットにL−リジンを投与するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネコヘルペスウイルス1型(「FHV−1」)は、眼や気道を冒す可能性のあるネコの代表的なウイルス感染症である。大部分のネコは、子ネコのときに最初に感染し、顕著な数のネコが、臨床疾患の徴候を示すことなく、慢性キャリアとなる。最近の研究では、97%のネコが、FHV−1に対する抗体反応陽性であり、このうち95%で、ワクチンのみで誘導し得るものよりも高かった。FHV−1の最も代表的な徴候としては、上気道感染と結膜炎や角膜潰瘍などの眼疾患が挙げられる。
【0003】
ここ数年の間に確認されたFHV−1の処置を補助する1つの戦略は、L−リジンの経口投与である。L−リジンは、ウイルスの増殖に必要なアルギニンの競合的阻害によってヘルペスウイルスの増殖を阻害するものと仮定されている。最近の報告は、L−リジンに関するネコのメンテナンスが、眼のウイルス性フレアアップ(flareup)の間の期間がより長くなるだろうと示唆している。さらに、ウイルスの徴候が再発しても、感染は一般的により軽症であり、かつ継続時間はより短い。L−リジンは、典型的には、ネコに1日250〜1000mgの用量で投与される。
【0004】
L−リジンのサプリメントは、ヒト単純ヘルペス1(「HSV−1」)の作用を軽減するために、長年にわたってヒトに対して処方されてきた。60%から90%までの間のヒトがHSV−1を有していると推定され、その最も代表的な臨床徴候は、口の周りの発疹である。現在市販されているヒトの処置用に処方されたL−リジン製剤は、錠剤、カプセル、ジェルカプセル、粉末を包含する。
【0005】
FHV−1を処置するために、ネコの飼い主は、現在、ヒトへの摂取用に設計された市販のL−リジン製剤の1つを購入し、投与していると考えられる。このシナリオについてはいくつかの問題がある。ネコは、特に長期の場合、「錠剤の投与(pilling)」または液体の強制投与を素直に受け入れない。さらに、L−リジンと餌などの混合投薬は、特に複数のネコを有する家庭では、信頼できない投与となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、必要とされているのは、ネコ及び/又はその他のペットにL−リジンを投与するための改良された装置と方法である。また、必要とされているのは、ネコ及び/又はその他のペットに対して嗜好性のよいL−リジンと基剤物質との混合物である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
L−リジンと、ネコに対して嗜好性のよい基剤物質とを含む混合物が記載される。また、経口シリンジによりL−リジンを投与するための改良された方法と装置が記載される。
【0008】
本発明のよりよい理解は、以下の図面と共に、以下の詳細な解説から得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の記述では、説明の目的で、多くの具体的な詳細が、本発明の十分な理解を与えるために記載されている。しかしながら、本発明が、これらの具体的な詳細のいくつかがなくとも実施できることは、当業者には明らかだろう。
【0010】
一実施形態では、L−リジンは、ネコに対して嗜好性のよいことが知られている風味付のゲル、ペーストまたはその他の基剤物質中に混合されている。様々な風味付の基剤物質を、所望の効果を達成するために用いることができる。麦芽または魚の風味がネコにとって特に好適であることが見出された。しかしながら、本発明の基本原理に沿ってなおかつ種々の異なる香味料を用いることができ、これには、限定されることなく、ビーフ、チキン、レバー、ラム、ターキー、チーズ、ダック、エビ、カニ、マグロ、サーモン、シーフード、白身魚、イワシ、タラ、ナマズが包含される。
【0011】
基剤は、限定されることはないが、麦芽シロップ、コーン・シロップ、大豆油、タラ肝油、カンショ廃糖蜜、グリセリン、ゼラチンの副産物、メチルセルロース、鶏肉とマグロの副産物の消化物、紅花油、オオムギ麦芽シロップ、白色ワセリンと軽鉱油(white petrolatum & light mineral oil)及び/又はこれらの任意の組み合わせを包含する種々の物質から生成することができる。一実施形態では、以下の具体的な基剤成分が用いられる(濃度が低くなる順に列挙されている):コーン・シロップ、麦芽シロップ、大豆油、水、カンショ廃糖蜜、メチルセルロース、安息香酸ナトリウム(保存剤)。別の極めて具体的な実施形態では、嗜好性のよい基剤は、コーン・シロップ47%、麦芽シロップ30%、流動パラフィン23%からなる。しかしながら、本発明の基本原理は、いかなる特定の嗜好性のよい基剤物質の組にも、またはこれらのいかなる特定の濃度にも限定されないことに留意すべきである。
【0012】
L−リジンはまた、毛球治療薬やビタミン・サプリメントなどのその他の既知の治療薬に追加することもできる。例えば、一実施形態では、基剤物質は、嗜好性のよい化合物を含有することに加え、高いパーセンテージの流動パラフィン、グリセリン、軽鉱油、及び/又は、ネコの毛球排出を補助することが知られているその他の任意の化合物を含む。1つの具体的な実施形態では、次の成分が、以下の割合で基剤に用いられている:麦芽シロップ47%、流動パラフィン44%、グリセリン7%、アカシア2%、0.5%未満のビタミンB1。
【0013】
本混合物に用いられているL−リジンは、例えば、L−リジン粉末(例えば、純度78〜99%で、85%<1mmの顆粒サイズを有するもの)などの、粗製形態のL−リジンであってもよい。一実施形態では、本混合物に用いられているL−リジンは、2,6−ジアミノヘキサン酸一塩酸塩(C6H14N202.HCL)である。様々な形態のL−リジンを、本発明の原理に沿って用いることができる。
【0014】
種々の異なる濃度のL−リジンを本混合物に用いることができる。一実施形態では、L−リジンは、最初に水に500mg/mlの濃度で溶解されている。L−リジン/水溶液を、次に、嗜好性のよい基剤物質と1:1の比(すなわち、溶液50%と嗜好性のよい基剤50%)で混合し、結果として250mg/mlのL−リジン濃度がもたらされる。現在推奨されているL−リジンの投与量が1日250〜1000mgであることを考えると、2回の2mlの用量を毎日投与することができる。あるいは、単回の4mlの用量を投与することもできる(ネコが4mlの用量を進んで摂取してくれる場合)。しかしながら、本発明の基本原理が、いかなる特定のL−リジンの濃度またはいかなる特定の投与量にも限定されないことに留意すべきである。例えば、水に溶解できる最大量までの任意の濃度(例えば、20℃で64.2g/水100ml、またはおよそ650mg/ml)を用いてもよい。さらに、L−リジン溶液を、その後、嗜好性のよい基剤に、所望のL−リジン濃度及び/又は最終混合物の所望の粘稠度に基づいて、種々の異なる比(例えば、2:1、3:1、1:2、...など)で加えてもよい。稠
【0015】
一実施形態では、L−リジンを含有している混合物は、図1に図示されているような経口シリンジ100により包装され及び/又は投与される。経口シリンジ100は、L−リジン/基剤混合物を貯蔵するための貯蔵チャンバー104と、チャンバー104と協調的に連動して、特定の量のL−リジン混合物を、チャンバー104の投薬端106を通して押し出すプランジャー101とを備えている。操作時に、ネコは、L−リジン混合物を、チャンバー104の投薬端106を通して押し出されたときになめる。経口シリンジ100が使用されていないときは、キャップ105が、チャンバー104の投薬端106上に固定的にはめ込まれる。
【0016】
一実施形態では、「用量ダイヤル(dial-a-dose)」経口シリンジと呼ばれる、特殊な種類の経口シリンジが、L−リジン混合物を投与するのに用いられる。図1に図示するとおり、この種類のシリンジのプランジャー101は、L−リジン混合物の特定の量を選択するための用量ダイヤル・ノブ102を備えている。用量ダイヤル・ノブ102の内側面は、プランジャー101の表面に刻まれた一連の溝107とかみ合うトラックを備えている。用量ダイヤル・ノブ102が時計回りの方向に回転させられると、プランジャー101に沿って長手方向に投薬チャンバー106に向かって移動し、用量ダイヤル・ノブ102が反時計回りの方向に回転させらられると、プランジャー101に沿って長手方向に、投薬チャンバー106から離れるように移動する。
【0017】
操作時、使用者は用量ダイヤル・ノブ102を反時計回りに回し、用量ダイヤル・ノブ102をプランジャー101に沿って、投薬チャンバー104から離れるように移動させる。プランジャー上の体積マーク103は、ダイヤル・ノブ102がプランジャーに沿って移動した距離に関連しているL−リジン混合物の体積を示す。ダイヤル・ノブ102が所望の体積マーク(例えば、ネコについては、500mgのL−リジンを示すもの)に位置したら、使用者は次に、プランジャーをチャンバー内に押し込み、所望の量のL−リジンを投薬することができる。正しい量のL−リジンが投薬されたら、用量ダイヤル・ノブ102を投薬チャンバー104に直接隣接して位置させる。これにより、プランジャーが投薬チャンバー104内にさらに押し込まれるのを防止する。
【0018】
前記の解説を通じて、説明の目的で、数多くの具体的な詳細を、本発明の十分な理解を提供するために記載した。しかしながら、本発明が、これらの具体的な詳細のいくつかがなくとも実施できることは、当業者には明らかだろう。例えば、上記の実施形態はネコの処置に焦点を当てているが、本発明は、種々の他の動物を処置するために用いてもよい。さらに、上記の実施形態は、嗜好性のよい基剤を生成するために用いられる具体的な成分、およびL−リジンの具体的な濃度に言及しているが、本発明の基本原理は、いかなる嗜好性のよい基剤組成物にも、またはいかなる特定のL−リジン濃度にも限定されない。最後に、上記の実施形態は、L−リジンを用量ダイヤル経口シリンジにより投薬することに焦点を当てているが、種々の代替的な投薬機構を利用することができる。したがって、本発明の範囲および精神は請求項に関して判断されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】L−リジンを、ネコまたはその他のペットに経口的に投与するための装置の一実施形態を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−リジンと、
ネコに対して嗜好性のよい基剤物質とを含む混合物。
【請求項2】
基剤物質が麦芽シロップを含む請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
基剤物質がコーン・シロップを含む請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
基剤物質が大豆油を含む請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
基剤物質がタラ肝油を含む請求項1に記載の混合物。
【請求項6】
基剤物質がカンショ廃糖蜜を含む請求項1に記載の混合物。
【請求項7】
L−リジンの濃度が、250から2000mg/mlの間である請求項1に記載の混合物。
【請求項8】
基剤物質が、ネコの毛球排出を補助する成分をさらに含む請求項1に記載の混合物。
【請求項9】
基剤物質が流動パラフィン、グリセリン、または軽鉱油を含む請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
基剤物質が麦芽シロップ、流動パラフィン、グリセリンを含む請求項1に記載の混合物。
【請求項11】
基剤物質が1種または複数種のビタミンを含む請求項1に記載の混合物。
【請求項12】
嗜好性のよいL−リジン混合物を生成するために、L−リジンを、ネコに対して嗜好性のよいことが知られている基剤物質と組み合わせることを含む方法。
【請求項13】
基剤物質が麦芽シロップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基剤物質がコーン・シロップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
基剤物質が大豆油を含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
基剤物質がタラ肝油を含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
基剤物質がカンショ廃糖蜜を含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
L−リジンが、基剤物質と250〜2000mg/mlの濃度で組み合わせられる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
基剤物質が、ネコの毛球排出を補助する成分をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
基剤物質が流動パラフィン、グリセリン、または軽鉱油を含む請求項8に記載の方法。
【請求項21】
基剤物質が麦芽シロップ、流動パラフィン、グリセリンを含む請求項12に記載の方法。
【請求項22】
基剤物質が1種または複数種のビタミンを含む請求項12に記載の方法。
【請求項23】
L−リジンとネコに対して嗜好性のよい物質とを含む混合物を投薬するために経口シリンジを用いることを含む方法。
【請求項24】
投薬チャンバーとプランジャーを有する経口シリンジ、及び
投薬チャンバー内に入れられた、L−リジンとネコに対して嗜好性のよい1種または複数種の物質とを含む混合物、
を備えた装置。
【請求項25】
経口シリンジが、用量ダイヤル経口シリンジである請求項24に記載の装置。
【請求項26】
混合物中のL−リジンの濃度が250〜2000mg/mlである請求項24に記載の装置。
【請求項27】
ネコに対して嗜好性のよい物質が麦芽シロップを含む請求項24に記載の装置。
【請求項28】
ネコに対して嗜好性のよい物質がコーン・シロップを含む請求項24に記載の装置。
【請求項29】
ネコに対して嗜好性のよい物質が大豆油を含む請求項24に記載の装置。
【請求項30】
ネコに対して嗜好性のよい物質がタラ肝油を含む請求項24に記載の装置。
【請求項31】
ネコに対して嗜好性のよい物質がカンショ廃糖蜜を含む請求項24に記載の装置。
【請求項32】
ネコの毛球排出を補助するために混合物に添加された物質をさらに含む請求項24に記載の装置。
【請求項33】
毛球排出を補助するため物質が、流動パラフィン、グリセリン、または軽鉱油を含む請求項32に記載の装置。
【請求項34】
混合物に添加された1種または複数種のビタミンをさらに含む請求項24に記載の装置。
【請求項35】
L−リジン溶液を生成するために、L−リジンを特定の濃度で水に溶解させることと、
L−リジン溶液を、特定の比で、ネコに対して嗜好性のよい基剤物質と混合することを含む方法。
【請求項36】
特定の濃度が200および650mg/mlの間である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
特定の濃度が500mg/mlである請求項35に記載の方法。
【請求項38】
特定の比が、3:1 L−リジン:基剤および1:3 L−リジン:基剤の間である請求項36に記載の方法。
【請求項39】
ネコに対して嗜好性のよい基剤物質が麦芽シロップを含む請求項35に記載の方法。
【請求項40】
基剤物質がコーン・シロップを含む請求項35に記載の方法。
【請求項41】
基剤物質が大豆油を含む請求項35に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−514008(P2006−514008A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552085(P2004−552085)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035996
【国際公開番号】WO2004/043453
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505168425)
【Fターム(参考)】