説明

リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートの製造方法

本発明は2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)及びリセドロン酸ナトリウム水溶液を用いて化学式[1]で表されるリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートの新規な製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)及びリセドロン酸ナトリウム水溶液を用いて、次の化学式[1]で表されるリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する新規な方法に関する。
【0002】
【化001】

【背景技術】
【0003】
骨粗しょう症は骨無機物の漸進的な損失を引き起こす疾患である。骨粗しょう症の治療における目的はカルシウム吸収を改善して、カルシウムの尿排泄を減少させることである。2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)のようなビスホスホネートは、骨疾患及びカルシウム代謝疾患の治療に有用である。特に、パジェット病(Paget's disease)及び異所性骨化症(heterotropic ossification)は現在、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(EHDP)及び次の化学式[2]で表されるリセドロン酸ナトリウムによって治療されている。
【0004】
【化002】

【0005】
韓国特許出願第10−2002−7009790号には、モノヒドレート(1水和物)またはヘミペンタヒドレート(2.5水和物)としてのリセドロン酸ナトリウムの選択的結晶化が記載されている。リセドロン酸ナトリウム水溶液から結晶化条件によってモノヒドレートまたはヘミペンタヒドレートの結晶形態が選択的に収得できること、及び水とイソプロパノールの比率、温度を変えることによって調節される核形成温度、及び結晶化速度によって水和物の結晶形態が決定されることが開示されている。また、前記特許出願には、ヘミペンタヒドレートが約11.9%〜約13.9%、さらに好ましくは約12.5%〜約13.2%、最も好ましくは12.9%の量の水を含有していること、及びX線回折のような、多様な手段によって特定されることが開示されている。
【0006】
しかしながら、前述した方法によってヘミペンタヒドレートを選択的に得るためには、核形成温度及び結晶化速度を調節すべきであり、そして特に精製水に加えて他の溶媒を添加しなければならないので、この方法は複雑である。
【0007】
また、韓国特許出願第10−2006−7000683号は、前記特許出願を補うため、pH調整工程を含んでいる。しかしながら、この工程は長く、そして無機酸を使用しなければならないという欠点がある。
【0008】
韓国特許出願第10−2004−7016268号は、A(ヘミペンタヒドレート)、B、BB、B1、C、D、E、F、G、またはHのような多数の水和物形態、それぞれの形態の製法、及びX線回折、熱重量測定分析(TGA)、そしてフーリエ変形赤外線分光法(FTIR)の結果を示している。しかし、前記特許は、リセドロン酸ナトリウム水溶液を還流温度に維持することが必要であって、韓国特許出願第10−2002−7009790号と同様にリセドロン酸ナトリウム水溶液の他に溶媒を加えなければならいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2002−7009790号
【特許文献2】韓国特許出願第10−2006−7000683号
【特許文献3】韓国特許出願第10−2004−7016268号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は上記の問題点を解決するために案出されたもので、反応中間体として2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)を使用し、結晶化溶媒として精製水だけを使用することを特徴とする。
【0011】
リセドロン酸ナトリウムを形成するために使用する無機塩基として、NaOH、NaHCO、NaCOが使用可能である。
【0012】
すなわち、本発明は、単に出発物質(リセドロン酸またはリセドロン酸ナトリウム無水物)、精製水、及び無機塩基だけを用いて、適当な温度で、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを選択的に製造する新規な方法に関する。
【0013】
本発明において「リセドロン酸」は、2−(3−ピリジル)-1-ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸を示し、下記の化学式[3]で表される。
【0014】
【化003】

【0015】
また、リセドロン酸は1996年12月10日付けで発行され、The Procter & Gamble Co.に譲渡された Benedictらのアメリカ特許第5,583,122号、及びIBC技術委員会(IBC Technical Services)により発刊された学会誌「”An American Conference、Bisphosphonates: Current Status and Future Prospects” The Royal College of Physicians, London, England, May 21-22, 1990」に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様では、上記及びその他の目的を、化学式[3]で表される2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)及び無機塩基を精製水に添加して50〜80℃の温度で混合物を溶解すること、結晶化するためにこの溶液を5〜30℃の温度に冷却すること、及びろ過及び真空乾燥して結晶化生成物を得ること、の工程を含んでいる、化学式[1]で表されるリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する方法を提供することによって達成できる。
【0017】
【化004】

【0018】
【化005】

【0019】
本発明の別の態様では、化学式[2]で表されるリセドロン酸ナトリウム無水物を60〜80℃の温度で精製水に溶解すること、及びこの溶液を5〜25℃に冷却すること、の工程を含んでいる、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する方法を提供する。
【0020】
【化006】

【0021】
本発明の更に別の態様では、リセドロン酸ナトリウム無水物を30〜40℃の大気温度及び60〜90%の相対湿度に、4〜20時間露呈する工程を含んでいる、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する方法を提供する。
【0022】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及びその他の利点は、添付の図面を併用して以下の詳細な説明から明確に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明によって製造されたリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートのX線粉末回折を示した図である。
【図2】図2は、本発明によって製造されたリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートのTGA曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)及びリセドロン酸ナトリウム水溶液を用いて、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する方法に関する。リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートの製造方法は非常に単純で穏和な条件で実施される。従って、この方法を工業的な生産に容易に適用することができる。
【0025】
本発明に係るリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートの製造方法は次の工程:
精製水に2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)と無機塩基を添加して、上昇させた温度で混合物を溶解すること;
この溶液を冷却して結晶化すること;及び
結晶化した生成物をろ過及び真空乾燥すること:
を含んでいる。
【0026】
添加工程において、無機塩基はNaOH、NaHCO、NaCOなどを1当量使用する。溶解温度が50〜80℃であり、冷却工程における冷却温度が5〜30℃であり、そして冷却時間が2〜5時間であることが好ましい。
【0027】
本発明の他の態様では、リセドロン酸ナトリウム無水物を精製水に、適当に上昇させた温度で溶解させてから、この溶液を冷却して、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する。溶解温度が50〜80℃であり、冷却温度が5〜25℃であり、そして冷却時間が2〜5時間であることが好ましい。
【0028】
さらに他の態様では、リセドロン酸ナトリウム無水物を60〜90%の相対湿度に露出して、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する。大気温度が30〜40℃であって、露出時間が4〜20時間であることが望ましい。
【0029】
本発明によって製造されたリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートは結晶状であり、11.9〜13.9%の範囲で水を含有している。
【0030】
図1は下記実施例1〜3で製造されたリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートのX線粉末回折を示したもので、8.95、12.20、及び24.55°の2θ値におけるX線ピークが記録されている。
【0031】
図2は下記の実施例1〜3で製造されたリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートのTGA曲線を示したもので、曲線が全体重量損失12〜14%に対する複数の重量損失ステップを示している。
【0032】
X線粉末回折データは粉末回折法で得た。X線粉末回折データは固体状態検出器を備えたRIGAKU DMAX2200を用いて当該技術分野で公知の方法で得た。リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートのX線回折パターンは8.95、12.20、及び24.55°の2θ値におけるX線ピークと、12.90、13.50、15.70、19.75、22.85、27.80、28.10、31.00、及び36.50°2θ値における別のピークを特徴とする。
【0033】
TGA重量損失は重量損失曲線の屈曲点において最大約200℃〜220℃の温度範囲にわたって重量損失を計算して測定する。熱重量測定分析(TGA)は温度の関数としてサンプルの重量変化を測定する当該技術分野で公知の熱分析方法である。この方法は、例えば分解及び脱溶媒化の測定に特に適している。図2のTGAの結果はTA Instrument及び TGA 2950HRを使って得た。サンプルサイズは約20〜約40mgであった。加熱速度を10℃/分にして25℃〜250℃に加熱しつつサンプルを分析した。流速40ml/分の窒素気体でオーブンをパージした。TGA曲線は全体重量損失12〜14%に対する複数の重量損失ステップを示しているが、これは韓国特許出願第10−2002−7009790号において報告された11.9〜13.9%水分含量の値に当て嵌まる。
【0034】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、下記の実施例は本発明をさらに具体的に説明するだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0035】
リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートの製造
精製水60mlに、2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)10.0g、及び水酸化ナトリウム1.41gを加え、65℃に加温して溶解した。溶解後、得られた溶液を3時間25℃に冷却して結晶化した。得られた結晶をろ過して、真空乾燥すると、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレート8.0g(理論値の64.7%)が得られた(TGAによるLOD=13.2%)
【実施例2】
【0036】
リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートの製造
精製水120mlに、リセドロン酸ナトリウム無水物20.0gを加えて、80℃に加温して溶解した。溶解後、得られた溶液を25℃に冷却して結晶化した。得られた結晶をろ過して、真空乾燥すると、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレート15.5g(理論値の67.5%)が得られた(TGAによるLOD=13.3%)。
【実施例3】
【0037】
リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートの製造
リセドロン酸ナトリウム無水物10.0gを85%に調節された相対湿度と35℃の大気温度に6時間露出すると、リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレート11.5g(理論値の100%)が得られた(TGAによるLOD=13.4%)。
【0038】
本発明の好ましい態様を説明の目的で開示しているが、添付の特許請求の範囲に開示されているような本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、多くの修正、付加及び置換が可能であるということを当業者は理解できるだろう。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)及びリセドロン酸ナトリウム水溶液を用いてリセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートを製造する新規な方法に関する。リセドロン酸ナトリウムヘミペンタヒドレートは、改善された収率、低い製造コスト、及び非常に少ない製造廃棄物を有する環境に優しい製造方法を用いて製造される。従って、工業的な大量生産において有利であって、特に、有機溶媒を用いずに製造が行われるので、生成物中の残留溶媒が顕著に改善されている非常に純度の高い生成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程:
化学式[3]
【化007】

で表される2−(3−ピリジル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸(リセドロン酸)及び無機塩基を精製水に加えて、混合物を50〜80℃の温度で溶解すること;
この溶液を5〜30℃に冷却して結晶化すること;及び
ろ過及び真空乾燥して結晶化生成物を得ること:
を含有してなる、化学式[1]
【化008】

で表されるリセドロン酸ナトリウム ヘミペンタヒドレートの製造方法。
【請求項2】
無機塩基がNaOH、NaHCO、又はNaCOである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶解温度が60〜70℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程:
化学式[2]
【化009】

で表されるリセドロン酸ナトリウム無水物を、60〜80℃の温度で精製水に溶解すること;及び
この溶液を5〜25℃の温度に冷却すること:
を含有してなる、リセドロン酸ナトリウム ヘミペンタヒドレートの製造方法。
【請求項5】
リセドロン酸ナトリウム無水物を、30〜40℃の大気温度及び60〜90%の相対湿度に4〜20時間露出することを含有してなる、リセドロン酸ナトリウム ヘミペンタヒドレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513470(P2010−513470A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542626(P2009−542626)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005165
【国際公開番号】WO2008/075831
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508273120)ドンウ シンテック カンパニー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】