説明

リソグラフィ投影装置

【課題】解像度が改善された代替方法及び装置を提供する。
【解決手段】パターン化されたビームを基板に投影する投影システムと、前記投影システムの最終エレメントと前記基板との間に液体を供給するための液体供給システムと、を備えたリソグラフィ投影装置であって、前記液体供給システムは、前記投影システムの画像視野周りに形成されるリザーバに前記液体を閉じ込める疎水性表面を備える、リソグラフィ投影装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
−放射の投影ビームを供給するための放射システムと、
−投影ビームを所望のパターンに従ってパターン化するべく機能するパターン化手段を支持するための支持構造と、
−基板を保持するための基板テーブルと、
−パターン化されたビームを前記基板の目標部分に投影するための投影システムと、
−前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間に液体を供給するための液体供給システムと
を備えたリソグラフィ投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に使用されている「パターン化手段」という用語は、入射する放射ビームの断面を、基板の目標部分に生成すべきパターンに対応するパターンでパターン化するべく使用することができる手段を意味するものとして広義に解釈されたい。また、このコンテキストにおいては、「光弁」という用語を使用することも可能である。一般的には、前記パターンは、目標部分に生成されるデバイス、たとえば集積回路若しくは他のデバイス(以下を参照されたい)中の特定の機能層に対応している。このようなパターン化手段の実施例としては、以下のものが挙げられる。
(1)マスク
マスクの概念についてはリソグラフィにおいては良く知られており、バイナリ、交番移相及び減衰移相などのマスク・タイプ、及び様々なハイブリッド・マスク・タイプが含まれる。このようなマスクを放射ビーム中に配置することにより、マスクに衝突する放射をマスク上のパターンに従って選択的に透過させ(透過型マスクの場合)、或いは選択的に反射させることができる(反射型マスクの場合)。マスクの場合、支持構造は通常マスク・テーブルであり、入射する放射ビーム中の所望の位置に確実にマスクを保持することができ、且つ、必要に応じてマスクをビームに対して確実に移動させることができる。
(2)プログラム可能ミラー・アレイ
粘弾性制御層及び反射表面を有するマトリックス・アドレス指定可能表面は、このようなデバイスの実施例の1つである。このような装置の基礎をなしている基本原理は、(たとえば)反射表面のアドレス指定領域が入射光を回折光として反射し、一方、非アドレス指定領域が入射光を非回折光として反射することである。適切なフィルタを使用することにより、前記非回折光を反射ビームからフィルタ除去し、回折光のみを残すことができる。この方法によれば、マトリックス・アドレス指定可能表面のアドレス指定パターンに従ってビームがパターン化される。プログラム可能ミラー・アレイの代替実施例には、マトリックスに配列された微小ミラーが使用されている。微小ミラーの各々は、適切な局部電界を印加することによって、或いは圧電駆動手段を使用することによって、1つの軸の周りに個々に傾斜させることができる。この場合も、アドレス指定ミラーが非アドレス指定ミラーに対して異なる方向で入射する放射ビームを反射するように微小ミラーはマトリックス・アドレス指定が可能である。この方法によれば、マトリックス・アドレス指定可能ミラーのアドレス指定パターンに従って反射ビームがパターン化される。必要なマトリックス・アドレス指定は、適切な電子手段を使用して実行することができる。上で説明したいずれの状況においても、パターン化手段は、1つ又は複数のプログラム可能ミラー・アレイを備えることができる。上で参照したミラー・アレイに関する詳細な情報については、たとえば、いずれも参照により本明細書に組み込まれている米国特許US5,296,891号及びUS5,523,193号、並びにPCT特許出願WO98/38597号及びWO98/33096号を参照されたい。プログラム可能ミラー・アレイの場合、前記支持構造には、たとえば、必要に応じて固定若しくは移動させることができるフレーム若しくはテーブルとして具体化することができる。
(3)プログラム可能LCDアレイ
参照により本明細書に組み込まれている米国特許US5,229,872号に、このような構造の実施例の1つが記載されている。この場合の支持構造も、プログラム可能ミラー・アレイの場合と同様、たとえば、必要に応じて固定若しくは移動させることができるフレーム若しくはテーブルとして具体化することができる。
【0003】
分かり易くするために、本明細書の以下の特定の部分、とりわけ実施例の部分にはマスク及びマスク・テーブルが包含されているが、このような実施例の中で考察されている一般原理は、上で説明したパターン化手段のより広義のコンテキストの中で理解されたい。
【0004】
リソグラフィ投影装置は、たとえば集積回路(IC)の製造に使用することができる。このような場合、パターン化手段によってICの個々の層に対応する回路パターンが生成され、このパターンが、放射線感応材料(レジスト)の層で被覆された基板(シリコン・ウェハ)上の目標部分(たとえば1つ又は複数のダイが含まれている)に画像化される。通常、1枚のウェハには、投影システムを介して順次照射される目標部分に隣接する回路網全体が含まれている。マスク・テーブル上のマスクによるパターン化を使用した現在の装置には2種類のマシンがある。第1の種類のリソグラフィ投影装置では、マスク・パターン全体を1回の照射で目標部分に露光することによって目標部分の各々が照射される。このような装置は、一般にウェハ・ステッパと呼ばれている。一般にステップ・アンド・スキャン装置と呼ばれている代替装置では、マスク・パターンを投影ビームの下で所与の基準方向(「走査」方向)に連続的に走査し、且つ、基板テーブルをこの基準方向に平行に、或いは非平行に同期走査することによって目標部分の各々が照射される。通常、投影システムは、倍率係数M(通常<1)を有しているため、基板テーブルを走査する速度Vは、マスク・テーブルを走査する速度を係数M倍した速度になる。上で説明したリソグラフィ・デバイスに関する詳細な情報については、たとえば、参照により本明細書に組み込まれているUS6,046,792号を参照されたい。
【0005】
リソグラフィ投影装置を使用した製造プロセスでは、パターン(たとえばマスクのパターン)が、少なくとも一部が放射線感応材料(レジスト)の層で被覆された基板上に画像化される。この画像化ステップに先立って、プライミング、レジスト・コーティング及びソフト・ベークなどの様々な処理手順が基板に加えられる。放射線への露光後、露光後ベーク(PEB)、現像、ハード・ベーク及び画像化されたフィーチャの測定/検査などの他の処理手順が基板に加えられる。この一連の処理手順は、たとえばICなどのデバイスの個々の層をパターン化するための基本として使用されている。次に、パターン化されたこのような層に、エッチング、イオン注入(ドーピング)、メタライゼーション、酸化、化学機械研磨などの様々な処理が施される。これらの処理はすべて個々の層の仕上げを意図したものである。複数の層を必要とする場合、すべての処理手順又はそれらの変形手順を新しい層の各々に対して繰り返さなければならないが、最終的にはデバイスのアレイが基板(ウェハ)上に出現する。これらのデバイスは、次に、ダイシング又はソーイングなどの技法を使用して互いに分離され、分離された個々のデバイスがキャリアに実装され、或いはピンなどに接続される。このようなプロセスに関する詳細な情報については、たとえば、参照により本明細書に組み込まれている著書「Microchip Fabrication:A Practical Guide to Semiconductor Processing」(Peter van Zant著、第3版、McGraw Hill Publishing Co.、1997年、ISBN 0−07−067250−4)を参照されたい。
【0006】
分かり易くするために、以下、投影システムを「レンズ」と呼ぶが、この用語には、たとえば、屈折光学系、反射光学系及びカタディオプトリック系を始めとする様々なタイプの投影システムが包含されているものとして広義に解釈されたい。また、放射システムには、放射の投影ビームを導き、整形し、或いは制御するための任意の設計タイプに従って動作するコンポーネントが含まれており、以下、このようなコンポーネントについても、集合的若しくは個々に「レンズ」と呼ぶ。また、リソグラフィ装置は、場合によっては複数の基板テーブル(及び/又は複数のマスク・テーブル)を有するタイプの装置であり、このような「多重ステージ」デバイスの場合、追加テーブルを並列に使用することができ、或いは1つ又は複数の他のテーブルを露光のために使用している間、1つ又は複数のテーブルに対して予備ステップを実行することができる。たとえば、参照により本明細書に組み込まれているUS5,969,441号及びWO98/40791号に、二重ステージ・リソグラフィ装置が記載されている。
【0007】
投影システムの最終エレメントと基板の間の空間を充填するべく、比較的屈折率の大きい液体中、たとえば水中に、リソグラフィ投影装置内の基板を浸す方法が提案されている。この方法のポイントは、液体中では露光放射線の波長がより短くなるため、より小さいフィーチャを画像化することができることである。(また、液体の効果は、システムの有効NAが大きくなることにあると見なすことができる。)
【0008】
しかしながら、基板又は基板と基板テーブルを液体槽に浸す(たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているUS4,509,852号を参照されたい)ことは、走査露光の間、加速しなければならない大量の液体が存在していることを意味しており、そのためにはモータを追加するか、或いはより強力なモータが必要であり、また、液体の攪乱により、望ましくない予測不可能な影響がもたらされることになる。
【0009】
提案されている解決法の1つは、液体供給システムの場合、基板の局部領域上及び投影システムの最終エレメントと基板の間に液体を提供することである(基板の表面積は、通常、投影システムの最終エレメントの表面積より広い)。参照によりその全体が本明細書に組み込まれているWO99/49504号に、そのために提案されている方法の1つが開示されている。図2及び3に示すように、液体は、好ましくは基板が最終エレメントに対して移動する方向に沿って、少なくとも1つの入口INによって基板に供給され、投影システムの下を通過した後、少なくとも1つの出口OUTによって除去される。つまり、基板が最終エレメントの下を−X方向に走査される際に、最終エレメントの+X側で液体が供給され、−X側で除去される。図2は、入口INを介して液体が供給され、最終エレメントのもう一方の側で、低圧源に接続された出口OUTによって除去される構造を略図で示したものである。図2に示す図解では、液体は、必ずしもそれには限定されないが、基板が最終エレメントに対して移動する方向に沿って供給されている。最終エレメントの周りには、様々な配向及び数の入口及び出口を配置することが可能である。図3はその実施例の1つを示したもので、両側に出口を備えた4組の入口が、最終エレメントの周りに一定のパターンで提供され、液体リザーバを形成している。
【0010】
提案されているもう1つの解決法は、欧州特許出願第03252955.4号に開示されているように、投影システムの最終エレメントと基板テーブルの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って展開したシール部材を備えた液体供給システムを提供することである。このシール部材は、投影システムに対して実質的にXY平面内に静止しており、シール部材と基板の表面の間にシールが形成される。このシールは、ガス・シールなどの非接触シールであることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらのいずれの提案もいくつかの問題を抱えている。たとえば、レジストの化学的性質に対する液浸液の影響が未知であり、また、レジストのガス流出は、液浸液中に気泡が発生する原因になっている。液浸液中の気泡によって光の進路が変化し、ひいては露光の一様性が妨害されることになる。また、保護対策が施されている場合であっても、投影装置と基板の間の液浸液を介した結合による機械的な外乱の問題は、依然として深刻である。
【0012】
リソグラフィ装置の解像度を改善するための代替方法は、L.P.Ghislainらが「Near−Field Photolithography with Solid Immersion Lens」(App.Phys Lett 74、501〜503頁(1999年))の中で記述しているように、屈折率の大きい固体液浸レンズを投影システムと基板の間に提供することである。投影ビームが固体液浸レンズに集束し、エバネッセント・フィールド(ニア・フィールド動作モード)を使用して、極めて薄い空気(若しくは他のガス)間隙を通ってレジストまで放射が伝搬する。固体レンズと基板の間の間隔は十分に狭い(つまり、放射の波長未満である)ため、光子の一部が間隙の両端間を透過して基板が露光される。この提案は、明らかに基板と固体レンズの間の極めて微小な間隙を利用しており、したがって基板と固体レンズが衝突する可能性が高い。
【0013】
したがって本発明の目的は、解像度が改善された代替方法及び装置を提供することである。この代替方法及び装置により、液体若しくは固体レンズが存在することによる欠点の一部が必ず軽減される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的及び他の目的は、本発明による、冒頭の段落に明記されている、前記液体供給システムが、使用中、液体によって占有されていない空間が前記液体と前記基板の間に存在するようになされたことを特徴とするリソグラフィ装置によって達成される。
【0015】
液体と基板の間の接触に起因する、レジストの化学的性質に対する影響及びレジストのガス放出などの問題を回避することができる。同様に、液体と基板の間に衝突が生じたとしても、その影響は、固体レンズと基板の間の衝突ほど深刻ではない。システム内を液体が分散することになるが、基板が永久的に損傷することは考えられず、また、リソグラフィ装置に大掛かりな修復作業が必要であることは考えられない。衝突の際に分散する液体を収集するための構造を容易に設けることができる。
【0016】
液体供給システムは、液体の位置、量、形状、流量或いは他のあらゆる特性を制御するためのエレメントを備えることができる。
【0017】
液体と基板の間の間隔は、放射の波長未満であることが好ましく、また、100nm未満であることが好ましい。液体と基板の間の間隔は、注意深く監視しなければならない。間隔が広すぎると、十分な放射が基板まで透過しなくなる。また、透過する光の量の変動を回避するためには、可能な限り液体と基板の間の間隔を一様にしなければならない。同様に、投影システム全体の焦点面に影響するため、液体の深さを監視しなければならない。液体と基板の間の間隔及び液体の深さは、あらゆる変動を補償することができるよう、いずれも慎重に調整しなければならない。
【0018】
誤った不適当な放射の屈折を防止するためには、基板に最も近い液体の表面は、実質的に基板と平行でなければならない。
【0019】
水を閉じ込めて液体レンズを形成するために、液体供給システムは、疎水性表面を備えている。この疎水性表面は、その形状が実質的に環状であり、環の中心に液体レンズが形状されることが好ましい。また、液体の形状を画定するための放射透過性親水性表面が存在していることが好ましい。この親水性表面は、環状疎水性表面の中心の孔を塞ぐことが好ましい。また、金属製の電極を使用して液体の形状(直径を含む)を調整することも可能である。
【0020】
容易に使用することができるよう、リソグラフィ装置は、基板テーブルが投影システムの上方で垂直になるように構成されることが好ましい。
【0021】
本発明の他の態様によれば、
−少なくとも一部が放射線感応材料の層で被覆された基板を提供するステップと、
−放射システムを使用して放射の投影ビームを提供するステップと、
−投影ビームの断面をパターン化するためにパターン化手段を使用するステップと、
−前記投影ステップで使用される投影システムの最終エレメントと前記基板の間に液体を提供するステップと、
−パターン化された放射のビームを放射線感応材料の層の目標部分に投影するステップと
を含むデバイス製造方法であって、
前記液体が液体レンズを形成すること、及び前記投影ビームが、前記液体レンズを透過した後、前記基板を露光する前に空間を通過することを特徴とするデバイス製造方法が提供される。
【0022】
本明細書においては、本発明による装置のとりわけICの製造における使用が参照されているが、本発明による装置は、他の多くの可能アプリケーションを有していることを明確に理解されたい。たとえば、本発明による装置は、集積光学系、磁気領域メモリのための誘導及び検出パターン、液晶表示パネル、薄膜磁気ヘッド等の製造に使用することができる。このような代替アプリケーションのコンテキストにおいては、本明細書における「レチクル」、「ウェハ」或いは「ダイ」という用語の使用はすべて、それぞれより一般的な「マスク」、「基板」及び「目標部分」という用語に置換されているものと見なすべきであることは当業者には理解されよう。
【0023】
本明細書においては、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外放射(たとえば波長が365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nmの放射)を含むあらゆるタイプの電磁放射を包含するべく使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例によるリソグラフィ投影装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による液体供給システムを示す図である。
【図3】図2に示す液体供給システムの代替図である。
【図4】本発明の一実施例によるリソグラフィ投影装置の詳細図である。
【図5】本発明によるリソグラフィ投影装置の代替実施例の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について、単なる実施例にすぎないが、添付の略図を参照して説明する。
【0026】
図において、対応する参照記号は、対応する部品を表している。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の特定の実施例によるリソグラフィ投影装置を略図で示したものである。この装置は、
−放射(たとえばUV放射)の投影ビームPBを供給するための放射システムEx、IL(この特定の実施例の場合、放射システムは放射源LAをさらに備えている)と、
−マスクMA(たとえばレチクル)を保持するためのマスク・ホルダを備えた、アイテムPLに対してマスクを正確に位置決めするための第1の位置決め手段に接続された第1の対物テーブル(マスク・テーブル)MTと、
−基板W(たとえばレジスト被覆シリコン・ウェハ)を保持するための基板ホルダを備えた、アイテムPLに対して基板を正確に位置決めするための第2の位置決め手段に接続された第2の対物テーブル(基板テーブル)WTと、
−マスクMAの照射部分を基板Wの目標部分C(たとえば1つ又は複数のダイが含まれている)に画像化するための投影システム(「レンズ」)PL(たとえば屈折レンズ系)と
を備えている。
図に示すように、この装置は透過型(たとえば透過型マスクを有する)タイプの装置である。しかし、一般的にはたとえば反射型(たとえば反射型マスクを備えた)タイプの装置であっても良い。別法としては、この装置は、上で参照したタイプのプログラム可能ミラー・アレイなどの他の種類のパターン化手段を使用することもできる。
【0028】
放射源LA(たとえばレーザ生成源即ち放電プラズマ源)は、放射のビームを生成している。このビームは、照明システム(イルミネータ)ILに直接供給されるか、或いはたとえばビーム・エキスパンダExなどの条件付け手段を介して供給される。イルミネータILは、ビーム中の強度分布の外部及び/又は内部ラジアル・エクステント(一般に、それぞれσ−外部及びσ−内部と呼ばれている)を設定するための調整手段AMを備えることができる。また、イルミネータILは、通常、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の様々なコンポーネントを備えている。この方法によれば、マスクMAに衝突するビームPBの断面に、所望する一様な強度分布を持たせることができる。
【0029】
図1に関して、放射源LAをリソグラフィ投影装置のハウジング内に配置し(放射源LAがたとえば水銀灯の場合にしばしば見られるように)、且つ、リソグラフィ投影装置から離して配置することにより、放射源LAが生成する放射ビームをリソグラフィ投影装置に供給する(たとえば適切な誘導ミラーを使用して)ことができることに留意されたい。この後者のシナリオは、放射源LAがエキシマ・レーザの場合にしばしば見られるシナリオである。本発明及び特許請求の範囲には、これらのシナリオの両方が包含されている。
【0030】
次に、ビームPBが、マスク・テーブルMT上に保持されているマスクMAによって遮断される。マスクMAを透過したビームPBは、ビームPBを基板Wの目標部分Cに集束させるレンズPLを通過する。基板テーブルWTは、第2の位置決め手段(及び干渉測定手段IF)を使用して正確に移動させることができ、それによりたとえば異なる目標部分CをビームPBの光路中に配置することができる。同様に、第1の位置決め手段を使用して、たとえばマスク・ライブラリからマスクMAを機械的に検索した後、或いは走査中に、マスクMAをビームPBの光路に対して正確に配置することができる。通常、対物テーブルMT及びWTの移動は、図1には明確に示されていないが、長ストローク・モジュール(粗位置決め)及び短ストローク・モジュール(精密位置決め)を使用して実現されているが、ウェハ・ステッパ(ステップ・アンド・スキャン装置ではなく)の場合、マスク・テーブルMTは、短ストローク・アクチュエータに接続するだけで良く、或いは固定することも可能である。
【0031】
図に示す装置は、2つの異なるモードで使用することができる。
1.ステップ・モード:マスク・テーブルMTが基本的に静止状態に維持され、マスク画像全体が目標部分Cに1回の照射で投影される(即ち単一「フラッシュ」)。次に、基板テーブルWTがx及び/又はy方向にシフトされ、異なる目標部分CがビームPBによって照射される。
2.走査モード:所与の目標部分Cが単一「フラッシュ」で露光されない点を除き、ステップ・モードと基本的に同じシナリオが適用される。走査モードでは、マスク・テーブルMTを所与の方向(いわゆる「走査方向」、たとえばy方向)に速度νで移動させることができるため、投影ビームPBでマスク画像を走査し、且つ、基板テーブルWTを同時に同じ方向又は逆方向に、速度V=Mνで移動させることができる。MはレンズPLの倍率である(通常、M=1/4若しくはM=1/5)。この方法によれば、解像度を犠牲にすることなく、比較的大きい目標部分Cを露光することができる。
【0032】
図4及び5に示すように、基板テーブルWTは、投影システムPLの上方に位置している(以下で考察するよう、必ずしもこの限りではない)。ダクト17を介して投影システムPLと基板テーブルWTの間の空間に液体を供給するべく高精度液体供給システム18が提供されている。液体の屈折率はnであり、液体レンズ10即ちリザーバを形成している。液体レンズ10は、投影システムPLの画像視野の周りに形成されているため、基板の表面と投影システムPLの最終エレメントの間の空間に液体が閉じ込められる。
【0033】
液体レンズ10内に液体を閉じ込める疎水性材料22の帯(たとえば被覆)が液体供給システム18に接着されている。また、基板の表面に向かって配置されている投影システムPLの表面は、放射透過性親水性材料23(たとえば被覆)を備えており、液体レンズを投影システムに確実に接着している。特定の疎水性材料及び親水性材料の選択は液体によって決まる。たとえば液体に実質的に水を使用する場合、親水性材料にはガラスが適しており、疎水性材料にはテフロン(登録商標)が適していることが分かっている。また、他の要素、たとえば表面粗さの程度などを使用して材料の疎水性品質を改善することも可能である。
【0034】
液体センサ24は、液体レンズ10の深さをセンスしている。また、高精度液体供給システム18は、投影レンズと基板の間の空間を実質的に充填し、且つ、投影放射の波長未満の間隙が基板Wと液体レンズ10の間に存在するよう、十分な液体を提供している。液体センサ24は、液体レンズ10の深さが不十分である場合、高精度液体供給システム18によってより多くの液体を液体レンズ10に提供することができ、また、液体レンズ10の深さが深すぎる場合、出口14を使用して(或いは複数のダクト17のうちの1つを出口として使用することも可能である)液体レンズ10から液体を除去することができるフィードバック・システムの一部を形成している。液体センサ24は、液体レンズ10内からの光をセンスし、且つ、液体レンズの表面での内部反射を利用することによって動作しており、それにより液体レンズの深さを決定している。投影システムPLと基板Wの間の間隔は、その設定が可能であるか或いは容易に測定することができるため、投影システムPLと基板Wの間の全体の間隔から液体レンズ10の深さを単純に減算することによって液体レンズ10と基板Wの間の間隙を計算することができる。別法としては、たとえば基板テーブルWT上の電極と投影システムPLの間のキャパシタンスを測定することによってこれらの間隔を測定することも可能である。
【0035】
したがって、液体レンズ10を介して放射が投影され、基板Wと基板の表面に向かって配置されている液体レンズ10の表面の間にエバネッセント・フィールドが形成される。したがってシステムの解像度がn分の一に改善される。
【0036】
放射の誤った屈折を防止するためには、液体レンズ10は、広く、且つ、平らな表面を有していることが好ましい。疎水性材料の下方の電極28(金属製であることが好ましい)を帯電させることにより、液体レンズの形状(形態及び大きさ)を適切に調整することができる。たとえば直径が大きくなるように液体レンズ10を調整し、それにより広く、且つ、平らな領域を中心部分に提供することができる。
【0037】
疎水性材料22及び/又は親水性材料23の代替若しくは追加として、ガス・シール16を使用して液体レンズ内に液体を閉じ込めることも可能である。図5に示すように、ガス・シールは、高精度液体供給システム18と基板Wの間隙に入口15を介して加圧下で提供され、且つ、出口14を介して取り出されるガス、たとえば空気或いはNであることが好ましい合成空気若しくは他の不活性ガスによって形成されている。ガス入口15の超過圧力、出口14の真空レベル及び間隙の幾何学は、液体を閉じ込める内側へ向かう高速空気流が存在するようになされている。
【0038】
液体レンズ10が十分に小さい場合、図1に示す、基板テーブルWTの上方に投影システムPLを備えたリソグラフィ装置を使用することができる。表面張力及び粘着力によって重力の力が補償され、液体レンズ10は、液体レンズ10と基板Wの間に空間を残して投影システムPLに粘着した状態を維持する。
【0039】
以上、本発明の特定の実施例について説明したが、説明した以外の方法で本発明を実践することができることは理解されよう。以上の説明は、本発明を制限することを意図したものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射の投影ビームを提供するための放射システムと、
前記投影ビームを所望のパターンに従ってパターン化するべく機能するパターン化手段を支持するための支持構造と、
基板を保持するための基板テーブルと、
パターン化されたビームを前記基板の目標部分に投影するための投影システムと、
前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間に液体を供給するための液体供給システムとを備えたリソグラフィ投影装置であって、
前記液体供給システムが、使用中、液体によって占有されていない空間が前記液体と前記基板の間に存在するようになされたことを特徴とするリソグラフィ投影装置。
【請求項2】
前記液体と前記基板の間の間隔が前記放射の波長未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体と前記基板の間の前記間隔が100nm未満である、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記基板に最も近い前記液体の表面の大部分が前記基板と実質的に平行である、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記液体供給システムが、前記液体の形状を画定するための疎水性表面を備えた、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記疎水性表面の形状が環状である、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記液体の形状を画定するための放射透過性親水性表面をさらに備えた、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記放射透過性親水性表面が円形であり、環状疎水性表面の中心の孔を塞ぐことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
使用中、前記基板テーブルが前記投影システムの上方に垂直に位置する、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記液体の形状を調整するための電極を備えた、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも一部が放射線感応材料の層で被覆された基板を提供するステップと、
放射システムを使用して放射の投影ビームを提供するステップと、
前記投影ビームの断面をパターン化するためにパターン化手段を使用するステップと、
前記投影ステップで使用される投影システムの最終エレメントと前記基板の間に液体を提供するステップと、
パターン化された放射のビームを放射線感応材料の層の目標部分に投影するステップとを含むデバイス製造方法であって、
前記液体が液体レンズを形成すること、及び前記投影ビームが、前記液体レンズを透過した後、前記基板を露光する前に空間を通過することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70000(P2012−70000A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−278754(P2011−278754)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【分割の表示】特願2010−57575(P2010−57575)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】