説明

リチウムイオン二次電池及びその製造方法

【課題】高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を含んでいても、セパレータを破損することなく、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】第1集電体に設けられた複数の略平行な凸状の線状第1活物質部と、を有する第1電極、第2集電体上に設けられた複数の略平行な凸状の線状第2活物質部と、を有する第2電極、及び、第1電極と第2電極との間に位置するセパレータ、を含み、第1電極及び第2電極は、線状第1活物質部と線状第2活物質部とが対向するように積層されており、第1集電体及び第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、線状第1活物質部と線状第2活物質部とが交差する位置関係で、第1電極と第2電極とが重ねられていること、チウムイオン二次電池

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からリチウムイオン二次電池は、軽量、大容量かつ高速充放電可能であるため、現在、ノートパソコンや携帯電話等のモバイル機器や自動車等の分野において広く普及しており、更なる大容量化及び高速充放電特性向上のために、様々な研究がなされている。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池としては、例えば特許文献1(特開2008−288214号公報)の図3に開示されているように、正極活物質層と金属箔とで構成された正極と、負極活物質層と金属箔とで構成された負極と、をセパレータを介して積層し、セパレータに電解液を含浸させた構成を有するセパレータタイプのものが知られている。
【0004】
一方、例えば特許文献2(特開2011−70788号公報)に開示されているように、セパレータを含まず、正極、電解質層及び負極が積層された構成を有する全固体タイプのリチウムイオン二次電池も知られている。
【0005】
ここで、リチウムイオン二次電池の大容量化及び高速充放電特性向上にとっては、正極活物質及び負極活物質と電解質との反応が律速となるため、正極と負極との間隔をできるだけ狭くすることや正極及び負極の電極面積をできるだけ大きくすることが重要であり、この点に着目して、上記特許文献2においては、凹凸構造を有する活物質層(ライン状に塗布された高アスペクト比の凸状の活物質部)を含む3次元構造の電極を有する全固体電池の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−288214号公報
【特許文献2】特開2011−70788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1におけるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池において、大容量化及び高速充放電特性のために、上記特許文献2において提案されているような凹凸構造を有する活物質層を採用すると、例えば、隣接する凸状の負極活物質部の間の凹部分に、対向する凸状の正極活物質部が入り込み、セパレータを破損してしまうおそれがある。セパレータが破損すると、正極活物質部と負極活物質部とが短絡して電池機能が失われてしまうおそれがある。
【0008】
即ち、上記特許文献2において提案されている全固体タイプのリチウムイオン二次電池の凹凸構造を有する活物質層を、上記特許文献1に開示されているようなセパレータタイプのリチウムイオン二次電池にそのまま採用することは、困難であった。
【0009】
以上の問題点に鑑み、本発明の目的は、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を含んでいても、セパレータを破損することなく、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明者らは、
第1集電体と、前記第1集電体の面上に設けられた複数の互いに略平行な凸状の線状第1活物質部と、を有する第1電極、
第2集電体と、前記第2集電体の面上に設けられた複数の互いに略平行な凸状の線状第2活物質部と、を有する第2電極、及び
前記第1電極と前記第2電極との間に位置するセパレータ、
を含み、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが対向するように積層されており、
前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが交差する位置関係で、前記第1電極と前記第2電極とが重ねられていること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池を提供する。
【0011】
このような構成を有する本発明のリチウムイオン二次電池によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を具備していても、凸状の線状第1活物質部が、対向する凸状の線状第2活物質部間に入り込むことがなく、セパレータの破損を効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0012】
上記本発明のリチウムイオン二次電池においては、
前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と複数の前記線状第2活物質部とが交差する位置関係で、前記第1電極と前記第2電極とが重ねられていること、が好ましい。
【0013】
このような構成を有する本発明のリチウムイオン二次電池によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を具備していても、凸状の線状第1活物質部が、対向する凸状の線状第2活物質部間に入り込むことがなく、また、積層した状態で押圧されても複数点において線状第1活物質部と線状第2活物質部とが接し得るためセパレータにかかる力が分散され易く、したがってセパレータの破損をより効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を確実に実現することができる。
【0014】
また、上記本発明のリチウムイオン二次電池においては、
前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが略直交する位置関係で、前記第1電極と前記第2電極とが重ねられていること、
が好ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明のリチウムイオン二次電池によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を具備していても、凸状の線状第1活物質部が、対向する凸状の線状第2活物質部間に入り込むことがなく、また、積層した状態で押圧されても最大限の複数点において線状第1活物質部と線状第2活物質部とが接し得るためセパレータにかかる力が分散され易いという効果を最も顕著に生かすことができ、したがってセパレータの破損をより効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を確実に実現することができる。
【0016】
また、本発明は上記本発明のリチウム二次電池を製造する方法にも関し、具体的には、本発明は、
第1集電体の面上に複数の互いに略平行な凸状の線状第1活物質部を形成して第1電極を得る第1電極形成工程、
第2集電体の面上に複数の互いに略平行な凸状の線状第2活物質部を形成して第2電極を得る第2電極形成工程、
前記第1活物質部と前記第2活物質部とが対向するように、セパレータを介在させて前記第1電極と前記第2電極とを積層して積層体を得る積層体形成工程、
を含み、
前記積層体形成工程において、前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部が前記線状第2活物質部と交差する位置関係となるように、前記第1電極と前記第2電極とを積層すること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法である。
【0017】
このような構成を有する本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を具備していても、凸状の線状第1活物質部が、対向する凸状の線状第2活物質部間に入り込むことがなく、セパレータの破損を効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0018】
上記本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法においては、
前記積層体形成工程において、前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部が複数の前記線状第2活物質部と交差する位置関係となるように、
前記第1電極と前記第2電極とを積層すること、
が好ましい。
【0019】
このような構成を有する本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を具備していても、凸状の線状第1活物質部が、対向する凸状の線状第2活物質部間に入り込むことがなく、また、複数点において線状第1活物質部と線状第2活物質部とが接し得るためセパレータにかかる力が分散され易く、したがってセパレータの破損をより効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0020】
また、上記本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法においては、
前記積層体形成工程において、前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが略直交する位置関係となるように、前記第1電極と前記第2電極とを積層すること、
が好ましい。
【0021】
このような構成を有する本発明のリチウムイオン二次電池によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を具備していても、凸状の線状第1活物質部が、対向する凸状の線状第2活物質部間に入り込むことがなく、また、最大限の複数点において線状第1活物質部と線状第2活物質部とが接し得るためセパレータにかかる力が分散され易いという効果を最も顕著に生かすことができ、したがってセパレータの破損をより効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する活物質部で構成された活物質層を含んでいても、セパレータを破損することなく、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態の概略縦断面図である。
【図2】図1に示すリチウムイオン二次電池1において、矢印Zの方向から投影してみえる凸状の線状負極活物質部12aと凸状の線状正極活物質部16aとの位置関係を示す概略図である。
【図3】図1に示すリチウムイオン二次電池1について、ノズルディスペンス法により線状負極活物質部12a(負極活物質層12)を形成する様子を示す模式図である。
【図4】本発明のリチウムイオン二次電池の第一の変形態様において、図2と同様に図1における矢印Zの方向から投影してみえる線状負極活物質部22aと線状正極活物質部26aとの位置関係を示す概略図である。
【図5】本発明のリチウムイオン二次電池の第二の変形態様において、図2と同様に図1における矢印Zの方向から投影してみえる線状負極活物質部32aと線状正極活物質部36aとの位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に本明細書においては、X、Y及びZ座標方向を図1及び図2に示すように定義する。
【0025】
本実施形態では、図1に示す構造のリチウムイオン二次電池に代表させて本発明を説明する。図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態の概略縦断面図である。また、図2は、図1に示すリチウムイオン二次電池1において、矢印Zの方向から投影してみえる凸状の線状負極活物質部12aと凸状の線状正極活物質部16aとの位置関係を示す概略図である。
【0026】
また、詳細は後述するが、図3は、図1に示すリチウムイオン二次電池1について、ノズルディスペンス法により凸状負極活物質部12a(負極活物質層12)を形成する様子を示す模式図であり、図4及び図5は、それぞれ図1に示すリチウムイオン二次電池の第一及び第二の変形態様において、図2と同様に図1における矢印Zの方向から投影してみえる線状負極活物質部22a、32aと線状正極活物質部26a、36aとの位置関係を示す概略図である。
【0027】
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、図1に示すように、負極(第1電極)Aと、セパレータ20と、正極(第2電極)Cと、が積層された構成を有し、負極Aと正極Cとの間に電解液が充填されて電解液層14が形成されているとともに、セパレータ20にも電解液が含浸されている。
【0028】
負極Aは、略矩形状の負極集電体(第1集電体)10と、線状負極活物質部(線状第1活物質部)12aからなる負極活物質層(第1活物質層)12と、で構成され、正極Cは、略矩形状の正極集電体(第2集電体)18と、線状正極活物質部(線状第2活物質部)16aからなる正極活物質層(第2活物質層)16と、で構成されており、負極集電体10と正極集電体18とは、線状負極活物質部12aと線状正極活物質部16aとが対向するように、積層されている。
【0029】
ここで、図2に示すように、負極Aの負極集電体10の面上には、スペースをおいて互いに略平行に複数の凸状の線状負極活物質部12aが設けられて負極活物質層12を構成しており、正極Cの正極集電体18の面上には、スペースをおいて略平行に複数の凸状の線状正極活物質部16aが設けられて正極活物質層16を構成している。即ち、本実施形態における線状負極活物質部12a及び線状正極活物質部16aは、いわゆるラインアンドスペースのパターン形状を有するように形成されている。
【0030】
そして、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、負極集電体10及び正極集電体18の面に対して略垂直な方向(即ち、矢印Zの方向)から線状負極活物質部12a及び線状正極活物質部16aを投影させてみた場合に、線状負極活物質部12aと線状正極活物質部16aとが、部分Cにおいて角度αで交差している点に特徴を有する。
即ち、負極集電体10上において、負極活物質層12を構成する複数本の凸状の線状負極活物質部12aは、図2に示すように、負極集電体10上において矢印Yの方向に対して角度αで交差して延びるように、間隔をおいて形成されている。これに対し、正極集電体18上において、正極活物質層16を構成する複数本の凸状の線状正極活物質部16aは、図2に示すように、矢印Yの方向に沿って延びるように、間隔をおいて形成されている。
【0031】
このような構成を有する本実施形態のリチウムイオン二次電池1によれば、それぞれ凸状の線状負極活物質部12a及び凸状の線状正極活物質部16aで構成された高アスペクト比の凹凸構造を有する負極活物質層12及び正極活物質層16を具備していても、線状負極活物質部12aは対向する線状正極活物質部16aの間に入り込むことがなく、積層による応力がセパレータ20にかかりにくい。逆に、線状正極活物質部16aが対向する負極活物質部12aの間に入り込むこともなく、積層による応力がセパレータ20にもかかりにくい。
【0032】
したがって、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、線状負極活物質部12a及び線状正極活物質部16aがセパレータ20を突き破る等して破損することを効果的に防止することのできる構成を有しており、大容量で高速充放電特性に優れ信頼性を有する。
【0033】
なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池1においては、線状負極活物質部12a及び線状正極活物質部16aの幅及び間隔(スペース)は、本発明の構成を実現しかつ効果を損なわない範囲で適宜選択することができるが、例えば、幅は100〜150μm程度で、スペースは50〜90μm程度であればよい。このような範囲であれば、線状負極活物質部12a及び線状正極活物質部16aを高アスペクト比とし易い。
【0034】
また、線状負極活物質部12a及び線状正極活物質部16aの高さも、本発明の構成を実現しかつ効果を損なわない範囲で適宜選択することができるが、例えば、それぞれ50〜100μm程度であればよい。このような範囲であれば、線状負極活物質部12a及び線状正極活物質部16aの抵抗が上がり過ぎることがなく、充放電容量の低下をより確実に防止できる。
【0035】
ここで、負極集電体10としては、本発明の属する技術分野において公知の材料を用いることができるが、例えばアルミニウム箔等の金属膜であればよい。また、図示しないが、この負極集電体10は、絶縁性の基材の表面に形成されていてもよい。このような基材としては絶縁性材料で形成された平板状部材を用いればよく、かかる絶縁性材料としては、例えば樹脂、ガラス又はセラミックス等が挙げられる。また、基材は可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0036】
線状負極活物質部12aに含まれる負極活物質としては、本願発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物、各種合金材料等が挙げられる。これらのなかでも、容量密度の大きさ等を考慮すると、酸化物、炭素材料、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物等が好ましい。酸化物としては、例えば、式:LiTi12で表されるチタン酸リチウム等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、各種天然黒鉛(グラファイト)、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素等が挙げられる。珪素化合物としては、例えば、珪素含有合金、珪素含有無機化合物、珪素含有有機化合物、固溶体等が挙げられる。珪素化合物の具体例としては、例えば、SiO(0.05<a<1.95)で表される酸化珪素、珪素とFe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn及びTiから選ばれる少なくとも1種の元素とを含む合金、珪素、酸化珪素又は合金に含まれる珪素の一部がB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素で置換された珪素化合物又は珪素含有合金、これらの固溶体等が挙げられる。錫化合物としては、例えば、SnO(0<b<2)、SnO、SnSiO、NiSn、MgSn等が挙げられる。負極活物質は1種を単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、線状負極活物質部12aは、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、本発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体等の有機導電性材料等が挙げられる。導電剤は1種を単独で使用でき又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、上記のように、負極集電体10と負極活物質層12とで構成される負極Aに対向して、正極活物質層16と正極集電体18とで構成される正極Cが積層され、負極Aと正極Cとの間に電解液層14及びセパレータ20を有する構成を有している。したがって、本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、負極Aと正極Cとの間に気密性のある空間を有し、当該空間に電解液が充填されて電解液層14が形成され、セパレータ20にも電解液が含浸された構成を有している。
【0039】
セパレータ20としては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独又は併用することができる。セパレータ20を構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
【0040】
また、セパレータ20には、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。
【0041】
電解液層14を構成する電解液には、リチウム塩と有機溶媒とを含む従来公知の電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)及びリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)等が挙げられる。また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネート等が挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
【0042】
正極集電体18上には、負極集電体10上の凸状の線状負極活物部12aからなる負極活物質層12と同様にして、正極活物質材料を含む凸状の線状正極活物質部16aからなる正極活物質層16が設けられている。ただし、本実施形態のリチウムイオン二次電池1においては、上記のように、線状負極活物質部12aと線状正極活物質部16aとは、角度αで交差するように配置されている。
【0043】
正極集電体18としては、本発明の属する技術分野において公知の材料を用いることができるが、例えば銅箔等の金属膜であればよい。また、負極集電体10と同様に、正極集電体18は、絶縁性の基材の表面に形成されていてもよい。このような基材としては絶縁性材料で形成された平板状部材を用いればよく、かかる絶縁性材料としては、例えば樹脂、ガラス又はセラミックス等が挙げられる。また、基材は可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0044】
線状正極活物質部16aが含む正極活物質(粉末)としては、例えば、リチウム含有複合金属酸化物、カルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。ここで、異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、Mg等が好ましい。異種元素は1種でも又は2種以上でもよい。これらのなかでも、リチウム含有複合金属酸化物を好ましく使用できる。リチウム含有複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMn、LiMn2−y、LiMPO、LiMPOF(前記各式中、例えば、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種。0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)、LiMeO(式中、Me=MxMyMz;Me及びMは遷移金属、x+y+z=1)等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物の具体例としては、例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNi0.8Co0.15Al0.05等が挙げられる。ここで、上記各式中リチウムのモル比を示すx値は、充放電により増減する。また、カルコゲン化合物としては、例えば二硫化チタン、二硫化モリブデン等が挙げられる。正極活物質は1種を単独で使用でき2種以上を併用してもよい。正極活物質層16には、負極活物質層12に関して上記に記載した導電助剤を含めてもよい。
【0045】
上記のように、負極集電体10、負極活物質層12、電解液層14、セパレータ20、電解液層14、正極活物質層16及び正極集電体18によって、本実施形態のリチウムイオン二次電池1が形成されている。
【0046】
なお、このリチウムイオン電池二次電池1には、図示しないが、適宜タブ電極が設けられていてもよく、また、複数のリチウムイオン電池二次電池1を直列及び/又は並列に接続してリチウムイオン二次電池装置を構成することもできる。
【0047】
このような構造を有する本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、薄型で折り曲げ可能に構成することもできる。また、負極活物質層12及び正極活物質層16を図示したような凹凸を有する立体的構造として、その体積に対する表面積を大きくしているので、負極活物質層12及び正極活物質層16それぞれと電解質液14との接触面積を大きく確保でき、高効率・高出力が得られる。このように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は小型で高性能とすることが可能である。
【0048】
次に、上記した本実施形態における電極及びリチウムイオン二次電池1を製造する方法について説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池1を製造する際には、まず、負極集電体10において、図3に示すように、図1及び図2における矢印Yの方向に対して角度αで交差する矢印Yの方向に沿って、線状負極活物質部12aを形成して負極活物質層12を有する負極Aを作製する(第1電極形成工程)。正極集電体18においては、図1及び図2における矢印Yの方向に沿って、線状正極活物質部16aを形成して正極活物質層16を有する正極Cを作製する(第2電極形成工程)。
【0049】
ついで、上記の負極Aと正極Cとを、図1に示すように、線状負極物質部12aと線状正極活物質部16aとが対向するように、セパレータ20を介在させて、負極Aと正極Cとを積層する。このとき、図1における矢印Zからみて、負極集電体10の外周と正極集電体18の外周部とは一致するように、負極A及び正極Cを積層する(積層体形成工程)。
【0050】
そして、例えば、封止材等を用いる従来の方法で負極Aと正極Cとの間に気密性のある密閉空間を形成し、ここに電解液を充填して電解液層14を形成するとともに、セパレータ20にも電解液を含浸させ、本実施形態のリチウムイオン二次電池1を作製する。
【0051】
第1電極形成工程において、線状負極活物部12aは、(ア)負極活物質を含む負極活物質材料を線状に吐出するノズルを負極集電体10に対して相対移動させ、負極集電体10上に負極活物質材料からなる複数本の凸状の線状負極活物質部12aを形成する塗布工程(即ち、ノズルディスペンス法を用いた塗布工程)、及び、(イ)線状負極活物質部12aを乾燥させる乾燥工程により形成することができる。
【0052】
上記(ア)の塗布工程では、図3の(a)に示すように、負極集電体10の主面上(即ち、矢印Xの方向と矢印Yの方向とで規定されるXY平面上)において、矢印Yの方向に対して角度αの角度を有する矢印Yの方向に線状負極集電体10を搬送させる。これにより、ノズル40を負極集電体10に対して相対移動させる。搬送される負極集電体10の表面には、ノズル40から、ペースト状の負極活物質材料が凸状の線状負極活物質部12aを形成するように吐出される。本実施形態においては、ノズル40の位置は固定されており、負極集電体10が搬送されることにより、ノズル40が負極集電体10に対して相対移動される。
【0053】
ペースト状の負極活物質材料は、上記負極活物質と、上記導電助剤と、結着材と、溶剤等と、を常法により攪拌・混合(混練)して得られる混合物で構成され、ノズル40から吐出できる範囲で種々の粘度を有すればよい。本実施形態においては、例えば、せん断速度1s−1で、下限10Pa・s、上限10000Pa・s程度であるのが好ましい。なお、各成分は溶剤に溶解していても分散していてもよい(一部が溶解して残部が分散している場合も含む。)。
【0054】
また、上記塗布工程に用いる負極活物質材料の固形分割合は、負極活物質材料がノズル40から吐出できるように種々の固形分割合を有することができるが、前記混合物の湿潤点における固形分割合よりも小さな固形分割合を有しており、例えば60質量%であるのが好ましい。
【0055】
これらの粘度及び固形分割合は、負極活物質、導電助剤、結着材及び溶剤等の成分の種類や配合量、寸法又は形状等によっても異なるが、上記負極活物質と、上記導電助剤と、結着材と、溶剤等と、を常法により攪拌・混合(混練)する際の混練時間の長さによって、調整することができる。
【0056】
結着剤としては、本発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリヘキサフルオロプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエン共重合体、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエン等から選ばれるモノマー化合物の共重合体を結着剤として用いてもよい。結着剤は1種を単独で使用でき又は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
溶剤としては、電解液層14に含まれる六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等を分解しないように、水を除く有機溶媒を用いるのが好ましい。かかる有機溶媒としては、本発明の技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。有機溶媒は1種を単独で使用でき又は2種以上を混合して使用できる。
【0058】
ここで、図3の(a)は、負極活物質層12を構成する線状負極活物質部12aをノズルディスペンス法によって形成する様子を模式的に示す側面図(即ち、搬送される負極集電体10の主面に対して略平行なX方向からみた場合にみえる図)であり、図3の(b)は、負極活物質層12を構成する線状負極活物質部12aをノズルディスペンス法によって形成する様子を模式的に示す斜視図である。
【0059】
このノズルディスペンス法では、塗布液である負極活物質材料を吐出するための吐出口が複数設けられたノズル40を、負極集電体10上方に配置し、その吐出口から一定量の負極活物質材料を吐出させながら、負極集電体10をノズル40に対して相対的に矢印Yの方向に一定速度で搬送させる。こうすることで、負極集電体10上には、Y方向に沿って負極活物質材料からなる複数本の凸状の線状負極物質活部12aが形成されてストライプ状のラインアンドスペースのパターン形状となるように塗布される。
【0060】
ノズル40に複数の吐出口を設けることにより、複数本の凸状の線状負極活物質部12aが形成されてストライプ状とすることができ、負極集電体10の搬送を続けることにより、負極集電体10の全面に延びる凸状の線状負極活物質部12aをストライプ状に形成することができる。
【0061】
上記のように形成された負極活物質材料からなる複数本の凸状の線状負極物質活部12aは、まだ溶剤等を含むいわば塗布膜の状態であるため、線状負極物質活部12aが設けられた負極集電体10は、例えば乾燥手段である送風機等の下側領域を通り抜けるように搬送され、ドライエアーによって乾燥工程が実施される。これにより、負極集電体10と、負極集電体10の表面に形成された線状負極物質活部12aからなる負極活物質層12と、を含む負極Aが得られる。
【0062】
乾燥工程の乾燥温度及び乾燥時間は、当業者であれば適宜選択することができる。乾燥温度は、線状負極物質活部12aを乾燥させてその形状を固定させ得る範囲であればよく、例えば5℃〜150℃の範囲内、好ましくは常温(23℃)〜80℃の範囲内の温度であればよい。また、乾燥時間は、負極集電体10の搬送速度によって制御することもできる。
【0063】
次に、正極集電体18上への正極活物質層16の形成も、負極集電体10上への負極活物質層12の形成と同様にして実施することができ、これにより正極Cを得ることができる。ただし、本実施形態においては、上記のように、線状負極活物質部12aと線状正極活物質部16aとが角度αを有しているため、略矩形の正極集電体18の対向する2辺に平行な方向にノズルが搬送するように、正極集電体18とノズルとを相対移動させる。
【0064】
上記のようにして得られた負極Aと正極Cとを、負極活物質層12と正極活物質層16とを気密性のある空間にセパレータ20を介して対向させた状態で積層し、セパレータ20及び当該空間に電解液を充填して電解液層14を形成し、本実施形態のリチウムイオン二次電池1を作成する。
【0065】
≪第一変形態様≫
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、図1における矢印Zの方向から投影してみえた場合に、1つの線状負極活物質部12aが1箇所において線状正極活物質部16aと交差する場合について説明したが、1つの線状負極活物質部が複数箇所において線状正極活物質部と交差していてもよい。
【0066】
図4は、上記実施形態のリチウムイオン二次電池1の第一の変形態様に係るリチウムイオン二次電池2おいて、図2と同様に図1における矢印Zの方向から投影してみえる線状負極活物質部22aと線状正極活物質部36aとの位置関係を示す概略図である。
【0067】
この第二変形態様においては、負極集電体10上において、負極活物質層12を構成する複数本の凸状の線状負極活物質部22aが、図4に示すように、負極集電体10上において矢印Yの方向に対して角度α(>α)で交差して延びるように、間隔をおいて形成されている。これに対し、正極集電体18上において、正極活物質層16を構成する複数本の凸状の線状正極活物質部26aは、図4に示すように、矢印Yの方向に沿って延びるように、間隔をおいて形成されている。これにより、1つの線状負極活物質部22aが部分C及び部分Cの2箇所において線状正極活物質部26aと交差している。
【0068】
このような構成を有するリチウムイオン二次電池2によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する線状負極活物質部22a及び線状正極活物質部26aで構成された負極活物質層及び正極活物質層を具備していても、積層した状態で、凸状の線状負極活物質部22aが、対向する凸状の線状正極活物質部26aの間に入り込むことがない。
【0069】
また、積層した状態で押圧されても、部分C及び部分Cの2箇所において線状負極活物質部22aと線状正極活物質部26aとが接し得るためセパレータ20にかかる力が分散され易く、したがってセパレータ20の破損をより効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池2とすることができる。このようなリチウムイオン二次電池2も上記実施形態1のリチウムイオン二次電池1と同様にして作製することができる。
【0070】
≪第二変形態様≫
また、例えば、上記実施形態及び第一変形態様においては、図1における矢印Zの方向から投影してみえた場合に、それぞれ図2及び図4に示すように、1つの線状負極活物質部12a、22aが1箇所及び2箇所において線状正極活物質部16a、26aと交差する場合について説明したが、線状負極活物質部が線状正極活物質部と略直交していてもよい。
【0071】
図5は、上記実施形態のリチウムイオン二次電池1の第二の変形態様に係るリチウムイオン二次電池3おいて、図2と同様に図1における矢印Zの方向から投影してみえる線状負極活物質部32aと線状正極活物質部36aとの位置関係を示す概略図である。
【0072】
この第三変形態様においては、負極集電体10上において、負極活物質層12を構成する複数本の凸状の線状負極活物質部22aが、図5に示すように、負極集電体10上において矢印Yの方向に対して角度α(=90°>α>α)で交差(略直交)して矢印Xの方向に延びるように、X方向に間隔をおいて形成されている。これに対し、正極集電体18上において、正極活物質層16を構成する複数本の凸状の線状正極活物質部36aは、図5に示すように、矢印Yの方向に沿って延びるように、間隔をおいて形成されている。これにより、1つの線状負極活物質部22aが部分C及び部分Cの2箇所において線状正極活物質部26aと交差している。
【0073】
このような構成を有するリチウムイオン二次電池3によれば、高アスペクト比の凹凸構造を有する線状負極活物質部32a及び線状正極活物質部36aで構成された負極活物質層及び正極活物質層を具備していても、積層した状態で、凸状の線状負極活物質部32aが、対向する凸状の線状正極活物質部36aの間に入り込むことがない。
【0074】
また、積層した状態で押圧されても部分C、部分C、部分C、部分C及び部分Cn(図示せず)の複数箇所において線状負極活物質部32aと線状正極活物質部36aとが接し得るため、セパレータ20にかかる力が分散され易く、したがってセパレータ20の破損をより効果的に防止でき、大容量で高速充放電特性に優れるセパレータタイプのリチウムイオン二次電池3とすることができる。なお、第二変形態様においては、線状負極活物質部32aと線状正極活物質部36aとの交差点は最大限となる。このようなリチウムイオン二次電池3も上記実施形態1のリチウムイオン二次電池1と同様にして作製することができる。
【0075】
このような実施形態及び変形態様以外にも、本発明のリチウムイオン二次電池及びその製造方法は本発明の技術的思想の範囲内で、種々の形態を採り得る。
【0076】
例えば、上記実施形態においては、略矩形の負極集電体10に、図3に示すように、図1及び図2における矢印Yの方向に対して角度αで交差する方向に沿って、線状負極活物質部12aを形成して負極Aを作製し、また、略矩形の正極集電体18に、図1及び図2における矢印Yの方向に沿って、線状正極活物質部16aを形成して正極Cを作製し、ついで、負極Aと正極Cとを、図1に示すように、線状負極物質部12aと線状正極活物質部16aとが対向するように、負極Aと正極Cとを積層し、このとき、図1における矢印Zからみて、負極集電体10の外周と正極集電体18の外周部とは一致するように、負極A及び正極Cを積層した。
【0077】
これに対し、例えば、負極集電体及び正極集電体において、同じ方向に延びるようにそれぞれ線状負極活物質部及び線状正極活物質部を形成して負極及び正極を作製して、負極集電体及び正極集電体の面に対して略垂直からみて線状負極活物質部と線状正極活物質部とが交差するように負極及び正極を回転させて積層してもよい。この場合、負極集電体及び正極集電体の形状は、この回転の角度を予め決定しておき、当該角度に応じて予め決定して揃えておけばよい。
【0078】
また、本発明のリチウムイオン二次電池における線状負極活物質部及び線状正極活物質部の寸法や間隔は、上記実施形態及び変形態様に限定されるものではなく、適宜調整することが可能である。
【0079】
また、上記実施形態及び変形態様においては、線状負極活物質部及び線状正極活物質部のいずれもが、それぞれ負極集電体及び正極集電体上において一定のスペースをおいて形成されている場合について説明したが、線状負極活物質部及び線状正極活物質部の基底部分(即ち、負極集電体及び正極集電体に面する部分)においては、隣接する線状負極活物質部同士又は線状正極活物質部同士が連続していてもよい。
【0080】
なお、上記実施形態及び変形態様では、凹凸構造を有する必要のある線状負極活物質部及び線状正極活物質部の形成にはノズルディスペンス法による塗布を適用しているので、種々のパターンを短時間で形成することができる。また、微細パターンの作成にもノズルディスペンス法を好適に適用することが可能である。
【0081】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、各工程において適用する塗布方法は上記に限定されるものではなく、当該工程の目的に適うものであれば他の塗布方法を適用してもよい。また、例えば、上記の実施形態及び変形態様における電解液層は、セパレータを用いるのであれば、ゲル状の電解質層としてもよい。その場合、スピンコート法やスプレーコート法によって電解質材料を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1・・・リチウムイオン二次電池、
10・・・負極集電体、
12・・・負極活物質層、
12a、22a、32a・・・線状負極活物質部、
14・・・電解液層、
16・・・正極活物質層、
16a、26a、36a・・・線状正極活物質部、
18・・・正極集電体、
20・・・負極、
40・・・ノズル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体と、前記第1集電体の面上に設けられた複数の互いに略平行な凸状の線状第1活物質部と、を有する第1電極、
第2集電体と、前記第2集電体の面上に設けられた複数の互いに略平行な凸状の線状第2活物質部と、を有する第2電極、及び
前記第1電極と前記第2電極との間に位置するセパレータ、
を含み、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが対向するように積層されており、
前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが交差する位置関係で、前記第1電極と前記第2電極とが重ねられていること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と複数の前記線状第2活物質部とが交差する位置関係で、前記第1電極と前記第2電極とが重ねられていること、
を特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが略直交する位置関係で、前記第1電極と前記第2電極とが重ねられていること、
を特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
第1集電体の面上に複数の互いに略平行な凸状の線状第1活物質部を形成して第1電極を得る第1電極形成工程、
第2集電体の面上に複数の互いに略平行な凸状の線状第2活物質部を形成して第2電極を得る第2電極形成工程、
前記第1活物質部と前記第2活物質部とが対向するように、セパレータを介在させて前記第1電極と前記第2電極とを積層して積層体を得る積層体形成工程、
を含み、
前記積層体形成工程において、前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部が前記線状第2活物質部と交差する位置関係となるように、前記第1電極と前記第2電極とを積層すること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記積層体形成工程において、前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部が複数の前記線状第2活物質部と交差する位置関係となるように、前記第1電極と前記第2電極とを積層すること、
を特徴とする請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記積層体形成工程において、前記第1集電体及び前記第2集電体の面に対して略垂直な方向からみた場合に、前記線状第1活物質部と前記線状第2活物質部とが略直交する位置関係となるように、前記第1電極と前記第2電極とを積層すること、
を特徴とする請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−58426(P2013−58426A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196770(P2011−196770)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】