リチウムニッケルコバルト複合酸化物その製法及び二次電池用正極活物質
【課題】充放電サイクル特性に優れ、サイクル数の増加によっても従来のLiNiO2に匹敵し得る高い電池容量を維持し、高温時でのサイクル性(安定性)の改善された二次電池用正極活物質を提供する。
【解決手段】一般式(I):LiyNi1−xCox1Mx2О2(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)で示される複合酸化物。
【解決手段】一般式(I):LiyNi1−xCox1Mx2О2(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)で示される複合酸化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度で結晶化度が高く、しかも電池容量が高く、充放電サイクル数の増加によっても容量の低下が少ない、構造が安定なリチウムニッケルコバルト複合酸化物、その製法及び二次電池用正極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、携帯化に伴い、ニッケル/カドミ電池、ニッケル水素電池に代わり、軽量で高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池の需要が高まっている。このリチウムイオン二次電池の正極活物質としては、リチウムイオンをインターカレート、デインターカレートすることができる層状化合物であるLiNiO2、LiCoO2が知られている。その中でもLiNiO2は、LiCoO2より高電気容量であるため期待されている。
【0003】
しかしながら、LiNiO2は充放電におけるサイクル特性、貯蔵安定性、高温時の安定性等に問題があり、実用化に至っていない。実際に正極活物質として使用されているのは、LiCoO2だけである。
【0004】
上記LiNiO2の欠点を改善して、リチウム二次電池の正極活物質として利用しようという試みは、種々行われているが、未だ上記欠点を全て解決したものは実現していない。
【0005】
即ち、LiNiO2では、多くのリチウムイオンが脱離すると(充電時)、二次元構造であるため構造が不安定となり、このためリチウムイオン二次電池のサイクル性、貯蔵安定性、高温時の安定性が悪いことが知られている(例えば、非特許文献1及び2参照)。この欠点を解消して、構造安定性を確立するために、例えばNiの一部を他の成分(Co、Mn、Fe、Ti、V等)で置き換え構造を安定化する試みが多数行われているが、実際的には乾式で混合・焼成する製造法であるため、完全に固溶した高純度の結晶が工業的規模では得られにくい。
【0006】
又、LiNiO2或いはこれに他の成分を固溶したものの粒子の形状や大きさ等の諸物性を制御しようとする試みもなされているが、満足な成果が得られていない。例えば特開平5−151998号公報では粒子径分布について、10%累積径が3〜15μm、50%累積径が8〜35μm、90%累積径が30〜80μmであるように特定することで改善を試みているが、正極活物質を粉砕してこのような粒子分布径に調整することは非常にむずかしく実際的な方法ではない。
【0007】
通常、LiNiO2はLi成分(LiOH、Li2CO3、LiNO3等)と、Ni成分(水酸化物、炭酸化物等)とを乾式で混合した後反応させるために、長時間高温焼成する必要があり、その結果結晶成長は進むが、その反面リチウムの揮散があったり、NiOの副生が生じて純度の低下を来す。従って、この乾式法ではどうしても一次粒子径が小さいものでは高純度のものができにくく、他方一次粒子径が大きいものでは構造的に格子欠陥が多く、純度も低下してしまう。よって、結晶化度が高く且つ純度が高いという物性を保持しながら粒度を適宜設定することは不可能であった。
【0008】
【非特許文献1】J.Elctrochem.Soc.,140[7]p.1862−1870(1993)
【非特許文献2】Solid State Ionics,69,p.265−270(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来のLiNiO2やその複合酸化物の欠点を改善した、つまり高純度で結晶化度が高く、しかも電池容量が高く、充放電サイクル数の増加によっても容量の低下が少ない、構造が安定な新規なリチウムニッケルコバルト複合酸化物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、従来の乾式法とは異なる湿式法を経由する方法によって球状で二次粒子および一次粒子径の大きさを自在に設定できる該リチウムニッケルコバルト複合酸化物の製法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物を有効成分として含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、後述する湿式法を経由する方法によって創製される下記一般式(I):
【0013】
LiyNi1−xCox1Mx2O2 (I)
【0014】
(式中、MはAl、Fe、MnおよびBからなる群から選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、x1+x2=x、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、MがAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種の場合はx2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがBとAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種の場合は、x2は0<x2≦0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)で示される複合酸化物が、上記課題に合致することを見出した。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物は、上記従来のLiNiO2やその複合酸化物の欠点を改善した、つまり高純度で結晶化度が高く、しかも電池容量が高く、充放電サイクル数の増加によっても容量の低下が少なく、構造が安定である。また、本発明の他のリチウムニッケルコバルト複合酸化物の製法は、従来の乾式法とは異なる湿式法を経由する方法によって球状で二次粒子および一次粒子径の大きさを自在に設定できる該リチウムニッケルコバルト複合酸化物の製法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の新規な複合酸化物は以下の特徴を有する。
【0017】
第一の特徴は、上記一般式(I)表示の組成である。LiNiO2の高い電池容量を維持しながら、その欠点であるサイクル性(サイクル数増加に伴う放電容量の劣化)、高温時での安定性を改善したことであり、しかも高価なCoの使用を最小限に抑え、経済性も実現した。
【0018】
第二の特徴は、X線回折で、結晶化度が大きく且つ純度が高いことである。即ちX線回折のミラー指数hklにおける(003)面及び(104)面での回折ピーク比(003)/(104)が1.2以上であり、(006)面及び(101)面での回折ピーク比(006)/(101)が0.13以下、全(Ni+Co)に対する(Ni3++Co3+)が99%以上、BET比表面積が0.1〜2m2/g、平均二次粒径Dが5〜100μm、粒度分布の10%が0.5D以上、90%が2D以下、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して表面に凸凹のある球状二次粒子であって、この球状二次粒子を構成する一次粒子径が、SEMで観察して長径の粒径が0.2〜30μmの範囲の内にあり、且つその長径の平均粒径が0.3〜30μmである、高純度な複合酸化物である。
【0019】
通常LiNiO2やその複合酸化物において、Niの一部を他の成分で固溶させようとすると、従来の乾式法では均一固溶が難しく、添加量に比例して均一固溶が低下するため、電気容量が低下するのは勿論のこと、サイクル性の改善、耐熱性、耐電解液性等も不充分であった。
【0020】
本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物は、Al、Fe、Mn及びBからなる群より選択された少なくとも1種を固溶させているにも拘わらず、高純度の複合酸化物とすることができる。特に後記実施例に示すようにCoとAl及び/又はBは併用で効率良く層間の距離を短縮させることが実現できるため、リチウムイオンの出入りによるNiの構造不安定性を解消することができる。本発明の最大の特徴は、リチウムニッケル酸化物にCoおよびAl、Fe、Mn及びBからなる群より選択された少なくとも1種を少量且つ均一に固溶させることである。
【0021】
このような本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物は、後述する湿式法により高純度且つ結晶性の高い組成物として得ることができる。
【0022】
第三の特徴は、均一な一次粒子を得ることができることと、二次粒子の粒子形状、粒子の大きさを自在に調整できる点である。
【0023】
一次粒子の大きさに着目した場合、一般的にLiMO2で表される層状化合物においては、リチウムイオンの出入りを考えれば一次粒子の大きさが重要である。
即ち、一次粒子が細かい程固体内部のイオン伝導度が良く、且つ外部とのリチウムイオンの出入りがし易い。
【0024】
一方、結晶化度という点からは小さな一次粒子では結晶が充分に発達せず、必然的に純度の低いものになる。又、一次粒子が小さいと、貯蔵安定性が貧弱であり、そのため吸湿して良好な電池特性を安定して出せない。更には、高温下での耐熱性、電解液との反応性等という観点からは、一次粒子が大きいことが望ましい。本発明者らは鋭意検討した結果、後述する湿式法ー噴霧(または凍結)乾燥法−プレス成形焼成法等を組み合わせることにより、一次粒子の長径の粒径が0.2〜30μm、好ましくは1〜20μmまでの所望の範囲の粒径を有する均一な一次粒子の複合酸化物を製造することに成功した。
【0025】
特に、噴霧乾燥−焼成法を用いることにより、一次粒子、二次粒子共に均一なものが調製できる。一次粒子は、SEMで観察して長径の粒径が0.2〜30μm、好ましくは1〜20μmの範囲内にあり、且つその長径の平均粒径が0.3〜30μmである。噴霧乾燥ー焼成法により球状とされた球状二次粒子の平均粒径Dが5〜300μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜20μm、粒度分布の10%が0.5D以上、90%が2D以下と粒度の揃った粒子で且つSEM観察で分かるように表面が凸凹のある球状二次粒子である。
【0026】
又、この球状二次粒子のSEMで観察した粒子径比(長径/短径)は、焼成後解砕した際に僅かに粒子径比の大きなものが含まれることがあっても、通常は最大で1.5以下、平均で1.2以下の範囲におさまり、その90%以上が1.3以下に分布している球形の揃った粒子である。
【0027】
この様な物性から本発明の球状品、好ましくは噴霧乾燥ー焼成工程により得られる球状品は最密充填に適しているばかりでなく、例えば電池に使用した場合は、電解液、導電剤等との接触面積が大きくなり、外部とのリチウムイオンの出入りということからも有利であることが分かる。
【0028】
この球状二次粒子の粒度は、5〜100μmまで所望により設定できるが、電池材料として使用する場合は、加工性から平均粒径が5〜30μm程度のものが望ましい。
【0029】
又、BET比表面積が0.1〜2m2/g以下であり、電池材料として使用した場合、電解液の粘度を上げることがないので、誘電率の低下を引き起こさない。
【0030】
又、一次粒子の長径の平均粒径を1μm以上30μm程度にまでしたい場合は、上記噴霧(または凍結)乾燥品をプレス成形すればより簡便に得ることができる。
【0031】
この一次粒子の大きなものは、高純度且つ結晶性が高いという物性を保持しており、高温安定性等が優れており、特に過酷な条件下での使用が想定されるリチウムイオン二次電池の正極活物質として好適に使用される。又、プレス成形をするため嵩密度が高くなり、この嵩密度が高いことは電池容量の向上にとってプラスである。
【0032】
本発明の上記一般式(I)で示される複合酸化物の製造方法を以下詳細に述べる。前記一般式(I)で示される複合酸化物を製造するに際して、(1)MがAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種である場合、(2)MがBである場合、(3)MがBとAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種との組み合わせである場合にわけて、それぞれ、次の方法が適用される。
【0033】
即ち、(1)前記一般式(I)
【0034】
LiyNi1−xCox1Mx2O2(I)
【0035】
(MがAl、FeおよびMnからなる群から選択された少なくとも1種を示す)で表される複合酸化物の製法においては、一般式(II)
【0036】
Ni1−xCox1Mx2(OH)2(1−x+x1)+3x2−nz(An−)z・mH2O (II)
【0037】
(但し、MはAl、Fe及びMnらなる群より選択された少なくとも1種であり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で表される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することにより製造することができる。
【0038】
(2)前記一般式(I)
【0039】
LiyNi1−xCox1Mx2O2 (I)
【0040】
(但し、MがBを示す)で表される複合酸化物の製法においては、一般式(III)
【0041】
Ni1−xCox1(OH)2(1−x+x1)−nz(An−)z・mH2O (III)
【0042】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1、上記x、x1、とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)を水媒体中で添加し、次にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することにより製造できる。
【0043】
(3)前記一般式(I)
【0044】
LiyNi1−xCox1Mx2O2(I)
【0045】
(但し、MがBとAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種との組み合わせを示す)で表される複合酸化物の製法においては、一般式(IV)
【0046】
Ni1−xCox1Nx3(OH)2(1−x+x1)+3x3−nz(An−)z・mH2O (IV)
【0047】
(式中、NはAl、Fe及びMnの中の少なくとも1種であり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することにより製造することができる。
【0048】
水溶性リチウム化合物及び上記一般式(II)、(III)又は(IV)で表される塩基性金属塩(以下、これらの塩基性金属塩を一括して単に「塩基性金属塩」という)
としては、焼成時に揮散する陰イオンを含むものが使用される。
【0049】
リチウム化合物としては、例えば、LiOH、LiNO3、Li2CO3又はこれらの水和物等の中から1種又は2種以上を選択することができる。
【0050】
硼素化合物としては、硼酸、四硼酸リチウム等が好適に使用できる。
【0051】
塩基性金属塩におけるAn−しては、例えば、NO32−、Cl−、Br−、CH3COO−、CO32−、SO42−等で示されるアニオンから選択することができる。
【0052】
これらの化合物において収率、反応性、資源の有効利用及び酸化促進効果等の観点からリチウム化合物としてはLiOHを、硼素化合物としては硼酸、又塩基性金属塩としては、アニオンが硝酸イオンである組み合わせが電池特性の観点から特に好ましい。
【0053】
本発明において用いる塩基性金属塩としては、一次粒子の粒度がシェーラー(Scherrer)法で測定して0.1μm以下の細かな粒子である特定組成の塩基性塩が好ましい。
【0054】
又、この細かな粒子は、BET比表面積が10m2/g以上、好ましくは40m2/g以上、より望ましくは100m2/g以上のものが良い。なお、BET比表面積に関しては、水液中の塩基性金属塩を乾燥して測定する際、乾燥時に微粒子である一次粒子が凝集し、この凝集体のBET比表面積を測定していることになり、凝集が強固な場合は窒素ガスが入り込まず小さな値となる。従って、実際に水液中でリチウム化合物と反応する塩基性金属塩の比表面積は、より大きな値を示し、反応性の高い表面となっているが、上記実状より10m2以上とした。
【0055】
この特定組成の塩基性金属塩は層状構造をしており、化学組成及び結晶構造がMがAl、Fe及びMnの中の少なくとも1種の場合はNi1−xCox1Mx2の水酸化物、MがBである場合はNi1−xCox1の水酸化物、MがBとAl、Fe及びMnの中の少なくとも1種の場合はNi1−xCox1Nx3の水酸化物に近いものであり、しかも微結晶で表面が活性に富んでいる。LiOH等のリチウム化合物を加えると、極めて良好なLiyNi1−xCox1Mx2O2の前駆物質を形成する。
【0056】
この様な特定組成の塩基性金属塩を用いた場合のみ、本発明の高純度で結晶の完全度の高いLiyNi1−xCox1Mx2O2が得られる。上記水酸化物はリチウム化合物との反応性が塩基性金属塩に劣り、逆に、塩基性金属塩において、アニオン量が多くなると、層状構造から外れるてくるとともに、焼成時にアニオンがLiyNi1−xCox1Mx2O2の生成に対して阻害的に作用し、高純度で結晶の完全度の高い目的化合物を得ることができない。
【0057】
ここで用いる塩基性金属塩は、Ni1−xCox1Mx2塩、Ni1−xCox1塩あるいはNi1−xCox1Nx3塩に対して、約0.7〜0.95当量、好ましくは約0.8〜0.95当量のアルカリを約80℃以下の反応条件下で加えて反応させることにより、製造することができる。ここで用いるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の水酸化物、アミン類等である。なお、この塩基性金属塩は合成後20〜70℃で0.1〜10時間熟成すると更に好ましい。次いで、水洗により副生成物を取り除き、リチウム化合物そしてBを含む複合酸化物を製造する場合にはさらに硼素化合物を加える。
【0058】
この様な反応によって得られたスラリーの乾燥は、好ましくは噴霧または凍結乾燥法が望ましい。瞬時に乾燥でき且つ球状物を得ることができる噴霧乾燥法は、球状造粒性、組成物の均一性(乾燥時間のかかる乾燥法では、表面にリチウムが移行し、不均一な組成物となる)の観点から好適である。
【0059】
焼成は、600〜800℃、好ましくは700〜750℃の温度範囲で行い、酸化雰囲気下(酸素流通下)、約4時間以上で行う。好ましくは4〜72時間、より望ましくは、約4〜20時間程度が良い。焼成時間が72時間以上であればコストアップとなるばかりでなく、リチウムの揮散に伴い、(Ni+Co)の3価の割合が却って低くなり、純度の悪いものとなる。
【0060】
この焼成に関する技術では、乾式法等の既知の技術では、2価から3価になりがたいNiに対して、少なくとも20時間の焼成が要求されていたことからみると、これより短い焼成時間でも実施し得る本発明の製法は極めて経済的であり優位である。
【0061】
第二の製法は、一次粒子を大きくし、更に嵩密度を高くする場合に有利なプレス成形法である。
【0062】
上記噴霧乾燥法又は凍結乾燥法で得た乾燥品をプレス成形後焼成することにより、一次粒子が1μm〜30μmの範囲で自在に設定でき、嵩密度が高く、且つ結晶化度と純度が高い複合酸化物を得ることができる。
【0063】
噴霧乾燥品である球状物は、流動性、成形性、充填性に優れた粉体であり、そのまま常法に従いプレス成形するのに良好な材料である。
【0064】
成形圧は、プレス機、仕込み量等により異なり、特に限定されるものではないが、通常500〜3000kg/cm2程度が好適である。
【0065】
プレス成形機は、打錠機、ブリケットマシン、ローラコンパクター等好適に使用できるがプレスできるものであれば良く、特に制限はない。
【0066】
プレス品の密度は、1〜4g/cc、好ましくは2〜3g/cc程度が好適である。
プレス成形は、分子間移動距離が短くなり、焼成時の結晶成長を促進するという点では極めて有用である。従って、プレス成形に供する材料は必ずしも噴霧乾燥品の球状物である必要はなく、凍結乾燥品でも同様に使用することができる。
【0067】
このプレス成形品は、そのまま焼成される。焼成温度は、通常600〜900℃、好ましくは700〜800℃で、酸素気流下、4時間以上、好ましくは10〜72時間で行う。焼成時間が長い程一次粒子は大きくなるので、焼成時間は所望の一次粒子の大きさによって決まる。
【0068】
短時間で得るためには、予備焼成と後焼成の2回焼成を施す方法を用いれば良い。先ず、前述の製造方法で得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥し、そのまま酸化雰囲気下で約600〜900℃で、0.5時間以上(好ましくは0.5〜4時間)予備焼成し、次いで得られた予備焼成品を、必要ならば粉砕した後、プレス成形後、更に酸化雰囲気下で約600〜900℃で約1時間以上(好ましくは4〜48時間)で後焼成する製造方法である。この方法を使用すれば、焼成に要する総時間を短くすることができる。
【0069】
このようにして得られた本発明の上記一般式(I)表示の複合酸化物は、後記実施例から明らかなよう100回目の充放電サイクル経過後も160〜180mAh/gの高容量化が図られると共に高温度のサイクル性(安定性)が改善された二次電池の正極活物質として有効に利用できる。
【実施例】
【0070】
以下の実施例により本発明について詳しく説明する。
【0071】
実施例1:
Ni:Coモル比=80:19となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。攪拌下、反応槽にこの混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を定量ポンプを用いて添加を行い、反応温度25℃でpH8.0を維持するように水酸化ナトリウム水溶液の液量を調整しながら連続反応を行った。滞留時間は平均10分で行った。反応生成物は連続反応で反応槽からオーバフローしてくるものを受け容器に溜め、必要量溜まったところで反応を終了した。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.19(OH)1.833(NO3)0.147・0.16H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:19:1に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.19B0.01O2であった。
【0072】
実施例2:
Ni:Coモル比=80:19.5となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.195(OH)1.86(NO3)0.130・0.22H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:19.5:0.5に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.195B0.005O2であった。
【0073】
実施例3:
Ni:Coモル比=80:18となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.18(OH)1.79(NO3)0.17・0.3H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:18:2に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.18B0.02O2であった。
【0074】
実施例4:
Ni:Coモル比=80:15となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.15(OH)1.76(NO3)0.14・0.25H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:Bモル比=80:15:5に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.15B0.05O2であった。
【0075】
比較例1:
Ni:Coモル比=80:10となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.01(OH)1.68(NO3)0.12・0.19H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:10:10に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.10B0.10O2であった。
【0076】
比較例2:
Ni:Coモル比=80:20となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.2(OH)1.87(NO3)0.13・0.14H2Oであった)、水に懸濁させて、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。
焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.20O2であった。
【0077】
比較例3(実施例1に対応する乾式法):
水酸化リチウム1.00モル、水酸化ニッケル0.80モル、水酸化コバルト0.19モル及び硼酸0.01モルを乳鉢で充分乾式混合粉砕した後、直径14×厚さ2mmの大きさにペレット化し、これを酸素雰囲気中で750℃、48時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.19B0.01O2であった。
【0078】
上記実施例1〜4、比較例1〜2で得た複合酸化物の粉末X線回折図を図1に示す。同図より明らかなように、いずれの製法においても副生物のピークは認められず、均一に固溶した層状構造を有していることが分かる。
【0079】
図2および図3にそれぞれ実施例1、実施例4で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)を示す。写真の下方に示した―線の単位はいずれも10μmである。
【0080】
又、上記実施例1〜4および後述する実施例5〜12の連続反応で得られた塩基性金属塩のX線回折で求めた結晶粒子径を表1に示す。いずれも0.1μ以下であり、細かな一次粒子径をもつ塩基性金属塩が生成されていることが分かる。
【0081】
【表1】
【0082】
更にこれら複合酸化物の(Ni+Co)の3価の割合、BET比表面積、粉末X線回折より得られるピーク強度比(003)/(104)、(006)/(101)、レーザ式マイクロトラックで測定した二次粒子の平均径、及びSEM写真観察より得た一次粒子径の長径等の物性を表2に示す。(Ni+Co)の3価の割合は試験例2、BET比表面積は試験例3に従って測定を行った。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示す結果から、一般式(I)においてMが硼素の場合、硼素の添加量(含有量)が10mol%である比較例1の複合酸化物は3価の割合が低く、粉末X線回折で得られるピーク強度比も(003)/(104)は1.2以下、(006)/(101)は0.13以上を示し結晶化度の低いものであることから、一般式(I)においてMが硼素の場合、x2の数値が0<x2≦0.05のものがより好ましい。
【0085】
その他の物性については、いずれの実施例、比較例1〜2とも湿式ー噴霧乾燥法を用いて製造しているため同じような物性を示している。
【0086】
更に、上記実施例1〜4及び比較例1〜3の各複合酸化物を用いて電池テスト(充放電テスト)を試験例4に従って行い、初期放電容量(mAh/g)、100回目の放電容量(mAh/g)及び100回目の減衰率(%)の結果を表3に示す。乾式法で得られた比較例3と比較するといずれもサイクル特性の改善と初期放電容量の改善が認められた。
【0087】
【表3】
【0088】
表3より、硼素を含む実施例1〜4の複合酸化物は硼素を含まない比較例2と比較していずれもサイクル特性の改善が認められ、更に硼素が0.05〜2mol%含有している実施例1〜3の複合酸化物では初期放電容量の改善も認められる。
【0089】
実施例5:
Ni:Co:Alモル比=8:1:1となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液とを反応pH8.0、反応温度25℃、強攪拌の条件下で連続的に添加し、得られた反応液を濾過、水洗後、水に懸濁させることにより、Ni0.80Co0.10Al0.10(OH)1.7(NO3)0.40スラリーを得た。この懸濁液のNi+Co+Alに対し原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1.05に相当する量の3.0mol/l水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉にて酸素雰囲気中で750℃で10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.797Co0.101Al0.102O2粉体を得た。
【0090】
実施例6:
Ni:Co:Alモル比=16:3:1となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液とを反応pH8.0、反応温度25℃、強攪拌の条件下で連続的に添加し、得られた反応液を濾過、水洗後、水に懸濁させることにより、Ni0.80Co0.15Al0.05(OH)1.7(NO3)0.35スラリーを得た。
【0091】
この懸濁液の(Ni+Co+Al)に対し原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1.05に相当する量の3.0mol/l水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルを静的圧縮機を用い2t/cm2の圧で成形しφ14、厚み2mmのペレット状とした。これをアルミナ製ボートに入れ、管状炉にて酸素雰囲気中で750℃で48時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.785Co0.161Al0.054O2粉体を得た。
【0092】
実施例7:
Ni:Co:Alモル比=16:3:1となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液とを反応pH8.0、反応温度25℃、強攪拌の条件下で連続的に添加し、得られた反応液を濾過、水洗後、水に懸濁させることにより、Ni0.80Co0.15Al0.05(OH)1.7(NO3)0.35スラリーを得た。
【0093】
この懸濁液の(Ni+Co+Al)に対し原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1.05に相当する量の3.0mol/l水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、凍結乾燥により乾燥を行った。得られた乾燥ゲルを静的圧縮機を用い2t/cm2の圧で成形しφ14、厚み2mmのペレット状とした。
【0094】
これをアルミナ製ボートに入れ、管状炉にて酸素雰囲気中で750℃で48時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.798Co0.151Al0.051O2粉体を得た。
【0095】
上記実施例5,6,7で得た複合酸化物の粉末X線回折図をそれぞれ図4,5,6に示す。これより明らかなように、いずれの製法においても副生物のピークは認められず、均一に固溶した層状構造を有していることが分かる。
【0096】
更にこれら複合酸化物の(Ni+Co)の3価の割合、BET比表面積、粉末X線回折より得られるピーク強度比(003)/(104)、(006)/(101)及び嵩密度等の物性を表4、更に複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真を実施例5については図7(×30000倍)に、実施例6については図8(×30000倍)に、実施例7については図9(×10000倍)に示す。なお、写真の下方に示した一線の単位はいずれも1μmである。(Ni+Co)の3価の割合は試験例2、BET比表面積は試験例3に従って測定を行った。
【0097】
【表4】
【0098】
表4から明らかなように(Ni+Co)の3価の割合はほぼ100%であり、粉末X線回折で得られるピーク強度比も(003)/(104)は1.2以上、(006)/(101)は0.13以下であり、充分に結晶化度の高いものである。更に、SEM写真よりプレス成形を施した実施例6及び7は一次粒子が充分に成長しており、嵩密度も充分に高くなっていることが分かる。
【0099】
実施例8:
Ni:Co:Alモル比=790:165:25となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH10.0となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.79Co0.165Al0.025(OH)1.845(NO3)0.14・0.2H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Co、Alに対しモル比でNi:Co:Al:B=790:165:25:20に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.790Co0.165Al0.025B0.020O2粉体を得た。
【0100】
実施例9:
Ni:Co:Alモル比=790:140:50となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.75となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.79Co0.14Al0.05(OH)1.86(NO3)0.15・0.24H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Co、Alに対しモル比でNi:Co:Al:B=790:140:50:20に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で775℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.790Co0.140Al0.050B0.020O2粉体を得た。
【0101】
実施例10:
Ni:Co:Alモル比=790:90:100となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.5となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.79Co0.09Al0.10(OH)1.92(NO3)0.14・0.18H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Co、Alに対しモル比でNi:Co:Al:B=790:90:100:20に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で775℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.790Co0.090Al0.100B0.020O2粉体を得た。
【0102】
実施例11:
Ni:Co:Al:Feモル比=800:100:50:50となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウム及び硝酸鉄の混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.5となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。
【0103】
得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.01Al0.05Fe0.05(OH)1.96(NO3)0.14・0.18H2Oであった)、水に懸濁させスラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+Fe)
=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で725℃、15時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.800Co0.100Al0.050Fe0.050O2粉体を得た。
【0104】
実施例12:
Ni:Co:Mnモル比=800:150:50なるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸マンガンの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.0となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し、水に懸濁させスラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Mn)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.800Co0.150Mn0.050O2粉体を得た。
【0105】
比較例4(実施例5に対応する乾式法):
水酸化リチウム1.00モル、水酸化ニッケル0.80モル、水酸化コバルト0.10モル及び水酸化アルミニウム0.01モルを乳鉢で充分乾式混合粉砕した後、直径14×厚さ2mmの大きさにペレット化し、これを酸素雰囲気中で750℃、48時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.10Al0.10O2であった。
【0106】
比較例5(実施例8に対応する乾式法):
水酸化リチウム1.00モル、水酸化ニッケル0.79モル、水酸化コバルト0.165モル、水酸化アルミニウム0.025モル及び硼酸0.02モルを乳鉢で充分乾式混合粉砕した後、直径14×厚さ2mmの大きさにペレット化し、これを酸素雰囲気中で750℃、48時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.79Co0.165Al0.025B0.02O2であった。
【0107】
上記実施例8〜11で得た複合酸化物の粉末X線回折図を図10〜13に示す。これより明らかなように、いずれの製法においても副生物のピークは認められず、均一に固溶した層状構造を有していることが分かる。
【0108】
更にこれら複合酸化物の(Ni+Co)の3価の割合、BET比表面積、粉末X線回折より得られるピーク強度比(003)/(104)、(006)/(101)等の物性を表5に示す。更に複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真を実施例8については図14(×1500倍)に、実施例10については図15(×1500倍)に、実施例11については図16(×1500倍)に示す。なお、写真の下方に示した一線の単位はいずれも10μmである。(Ni+Co)の3価の割合は試験例2、BET比表面積は試験例3に従って測定を行った。
【0109】
【表5】
【0110】
表5より明らかなように、いずれの実施例も請求項で示す範囲に充分に対応した物性値を示しており、結晶化度の高いものが得られている。
【0111】
更に、上記実施例5〜11及び比較例4〜5の各複合酸化物を用いて電池テスト(充放電テスト)を試験例4に従って行い、初期放電容量(mAh/g)、100回目の放電容量(mAh/g)及び100回目の減衰率(%)の結果を表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
表6より、リチウムニッケルコバルト複合酸化物のAl含量が増加し、Co含量が低下すると表3の比較例2と比較し初期放電容量が低下する傾向が認められる。硼素添加によりサイクル特性の改善が認められる。更に、Fe添加はAl添加より初期放電容量を低下させる傾向が大きいことが分かる。しかし、本発明のものは乾式法に係る比較例4,5と比較して初期放電容量、サイクル特性ともに優れている。
【0114】
上記結果より、Al添加は高価なCoの使用量を減少させるという点で意味があるが、電池性能の面からマイナスという結果となった。
【0115】
しかし、リチウムイオン二次電池材料では、従来用いられた正極材料の熱安定性に問題があったが、本発明で得られた複合酸化物では良好な熱安定性改善効果を奏する。
【0116】
正極材料の熱安定性の指標としては、充電状態の正極材料の示差熱測定を行い、酸素脱離に伴う発熱温度を調べる方法がある。そこで、試験例5に従って本発明で得られた複合酸化物の熱安定性について行った試験結果を表7に示す。
【0117】
【表7】
【0118】
表7より、比較例2と比較してリチウムニッケルコバルト複合酸化物にAlが置換することにより酸素脱離に伴う発熱温度が上昇し、更に実施例6及び7のように一次粒子が大きいものも発熱温度が上昇し、正極材料の熱安定性が改善されていることが分かる。
【0119】
以上により、本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物、特にAl及び/又はBを完全に固溶したものは電池性能として満足する二次電池用正極活物質である。
【0120】
試験例1(シェーラー法):
結晶に歪みがなくて結晶子の大きさが均一で、回折線の幅の拡がりが結晶子の大きさだけに基づくと仮定し、下記式(1)より結晶子の大きさを求める方法である。
【0121】
Dhkl=(kλ)/(βcosθ)・・・(式1)
【0122】
式中、Dhkl(オングストローム)は、(hkl)面に垂直方向の結晶子の大きさ、λ(オングストローム)はX線の波長、β(rad)は回折線幅、θ(°)は回折角、kは定数を示す。
【0123】
試験例2((Ni+Co)の3価の測定法):
(Ni+Co)の3価の割合とは、全(Ni+Co)に対する3価の(Ni+Co)の割合を百分率で示した値であり、酸化還元滴定により測定する。試料0.2gを0.25MのFeSO4−3.6N硫酸溶液に溶解し、濃燐酸2mlを加えた後、0.1Nの過マンガン酸カリウムで滴定する。同様に空試験を行い、下記式より試料中の3価の(Ni+Co)の%を求める。式においてfは0.1Nの過マンガン酸カリウム溶液のファクター、X0は空試験滴定量(ml)、Xは滴定量(ml)、mは試料量(g)、AはNiの含量(%)、BはCoの含量(%)である。
【0124】
試料中の(Ni+Co)の3価の割合(%)=10f(X0−X)/m(A/5.871+B/5.893)
【0125】
試験例3(BET比表面積測定法):
試料を窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスの流動下において加熱脱気し、MONOSORB(ユアサアイオニクス(株)製)を用いてBET1点連続流動法により測定する。
【0126】
試験例4(電池テスト法):
リチウムニッケル複合酸化物を88重量%、導電剤としてアセチレンブラック6.0重量%、結合剤としてテトラフルオロエチレン6.0重量%の混合比で混合し、次いでステンレスメッシュ上に圧縮成形を行い直径18mmのペレットを得、200℃で2時間以上乾燥し正極材料とする。負極材料には圧延リチウム金属シートをステンレス基盤上に圧着したものを用い、隔膜にはポリプロピレン製多孔質膜(セルガード2502)とグラスフィルターろ紙を用いる。電解液には1MLiClO4を溶解させたエチレンカーボネート/ジメチルメトキシエタン(1:1)を用い、試験用セル(半解放型セル)の組立から仕上げまでをアルゴン置換したドライボックス中で行う。このリチウム電池を0.4mA/cm2の定電流密度にて、3.0〜4.3Vの間で充放電を行う。
【0127】
試験例5(熱安定性試験法):
試験例3で示される方法で電池を作製し、0.4mA/cm2の定電流密度にて4.4Vまで充電を行う。充電終了後、電池を分解し正極を取り出し、正極を電解液で洗浄後、真空乾燥を行う。乾燥した正極材料を示差熱測定装置にて窒素流通下、昇温速度2℃/分で測定を行い酸素脱離に伴う発熱ピーク温度を測定する。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように本発明によれば、一般式(I)LiyNi1−xCox1Mx2O2(I)で示される新規な複合酸化物であって、充放電サイクル特性に優れ、サイクル数の増加によっても従来のLiNiO2に匹敵し得る高い電池容量を維持し、高温時でのサイクル性(安定性)の改善された二次電池用正極活物質を提供することができる。また、Mで示される金属の導入により高価なCoの使用量を最小限に抑えることができるので、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】実施例1〜4、比較例1〜2で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図2】実施例1で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図3】実施例4で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図4】実施例5で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図5】実施例6で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図6】実施例7で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図7】実施例5で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×30000倍)である。
【図8】実施例6で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×3000倍)である。
【図9】実施例7で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×10000倍)である。
【図10】実施例8で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図11】実施例9で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図12】実施例10で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図13】実施例11で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図14】実施例8で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図15】実施例10で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図16】実施例11で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度で結晶化度が高く、しかも電池容量が高く、充放電サイクル数の増加によっても容量の低下が少ない、構造が安定なリチウムニッケルコバルト複合酸化物、その製法及び二次電池用正極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、携帯化に伴い、ニッケル/カドミ電池、ニッケル水素電池に代わり、軽量で高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池の需要が高まっている。このリチウムイオン二次電池の正極活物質としては、リチウムイオンをインターカレート、デインターカレートすることができる層状化合物であるLiNiO2、LiCoO2が知られている。その中でもLiNiO2は、LiCoO2より高電気容量であるため期待されている。
【0003】
しかしながら、LiNiO2は充放電におけるサイクル特性、貯蔵安定性、高温時の安定性等に問題があり、実用化に至っていない。実際に正極活物質として使用されているのは、LiCoO2だけである。
【0004】
上記LiNiO2の欠点を改善して、リチウム二次電池の正極活物質として利用しようという試みは、種々行われているが、未だ上記欠点を全て解決したものは実現していない。
【0005】
即ち、LiNiO2では、多くのリチウムイオンが脱離すると(充電時)、二次元構造であるため構造が不安定となり、このためリチウムイオン二次電池のサイクル性、貯蔵安定性、高温時の安定性が悪いことが知られている(例えば、非特許文献1及び2参照)。この欠点を解消して、構造安定性を確立するために、例えばNiの一部を他の成分(Co、Mn、Fe、Ti、V等)で置き換え構造を安定化する試みが多数行われているが、実際的には乾式で混合・焼成する製造法であるため、完全に固溶した高純度の結晶が工業的規模では得られにくい。
【0006】
又、LiNiO2或いはこれに他の成分を固溶したものの粒子の形状や大きさ等の諸物性を制御しようとする試みもなされているが、満足な成果が得られていない。例えば特開平5−151998号公報では粒子径分布について、10%累積径が3〜15μm、50%累積径が8〜35μm、90%累積径が30〜80μmであるように特定することで改善を試みているが、正極活物質を粉砕してこのような粒子分布径に調整することは非常にむずかしく実際的な方法ではない。
【0007】
通常、LiNiO2はLi成分(LiOH、Li2CO3、LiNO3等)と、Ni成分(水酸化物、炭酸化物等)とを乾式で混合した後反応させるために、長時間高温焼成する必要があり、その結果結晶成長は進むが、その反面リチウムの揮散があったり、NiOの副生が生じて純度の低下を来す。従って、この乾式法ではどうしても一次粒子径が小さいものでは高純度のものができにくく、他方一次粒子径が大きいものでは構造的に格子欠陥が多く、純度も低下してしまう。よって、結晶化度が高く且つ純度が高いという物性を保持しながら粒度を適宜設定することは不可能であった。
【0008】
【非特許文献1】J.Elctrochem.Soc.,140[7]p.1862−1870(1993)
【非特許文献2】Solid State Ionics,69,p.265−270(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来のLiNiO2やその複合酸化物の欠点を改善した、つまり高純度で結晶化度が高く、しかも電池容量が高く、充放電サイクル数の増加によっても容量の低下が少ない、構造が安定な新規なリチウムニッケルコバルト複合酸化物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、従来の乾式法とは異なる湿式法を経由する方法によって球状で二次粒子および一次粒子径の大きさを自在に設定できる該リチウムニッケルコバルト複合酸化物の製法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、該リチウムニッケルコバルト複合酸化物を有効成分として含有するリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、後述する湿式法を経由する方法によって創製される下記一般式(I):
【0013】
LiyNi1−xCox1Mx2O2 (I)
【0014】
(式中、MはAl、Fe、MnおよびBからなる群から選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、x1+x2=x、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、MがAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種の場合はx2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがBとAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種の場合は、x2は0<x2≦0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)で示される複合酸化物が、上記課題に合致することを見出した。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物は、上記従来のLiNiO2やその複合酸化物の欠点を改善した、つまり高純度で結晶化度が高く、しかも電池容量が高く、充放電サイクル数の増加によっても容量の低下が少なく、構造が安定である。また、本発明の他のリチウムニッケルコバルト複合酸化物の製法は、従来の乾式法とは異なる湿式法を経由する方法によって球状で二次粒子および一次粒子径の大きさを自在に設定できる該リチウムニッケルコバルト複合酸化物の製法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の新規な複合酸化物は以下の特徴を有する。
【0017】
第一の特徴は、上記一般式(I)表示の組成である。LiNiO2の高い電池容量を維持しながら、その欠点であるサイクル性(サイクル数増加に伴う放電容量の劣化)、高温時での安定性を改善したことであり、しかも高価なCoの使用を最小限に抑え、経済性も実現した。
【0018】
第二の特徴は、X線回折で、結晶化度が大きく且つ純度が高いことである。即ちX線回折のミラー指数hklにおける(003)面及び(104)面での回折ピーク比(003)/(104)が1.2以上であり、(006)面及び(101)面での回折ピーク比(006)/(101)が0.13以下、全(Ni+Co)に対する(Ni3++Co3+)が99%以上、BET比表面積が0.1〜2m2/g、平均二次粒径Dが5〜100μm、粒度分布の10%が0.5D以上、90%が2D以下、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して表面に凸凹のある球状二次粒子であって、この球状二次粒子を構成する一次粒子径が、SEMで観察して長径の粒径が0.2〜30μmの範囲の内にあり、且つその長径の平均粒径が0.3〜30μmである、高純度な複合酸化物である。
【0019】
通常LiNiO2やその複合酸化物において、Niの一部を他の成分で固溶させようとすると、従来の乾式法では均一固溶が難しく、添加量に比例して均一固溶が低下するため、電気容量が低下するのは勿論のこと、サイクル性の改善、耐熱性、耐電解液性等も不充分であった。
【0020】
本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物は、Al、Fe、Mn及びBからなる群より選択された少なくとも1種を固溶させているにも拘わらず、高純度の複合酸化物とすることができる。特に後記実施例に示すようにCoとAl及び/又はBは併用で効率良く層間の距離を短縮させることが実現できるため、リチウムイオンの出入りによるNiの構造不安定性を解消することができる。本発明の最大の特徴は、リチウムニッケル酸化物にCoおよびAl、Fe、Mn及びBからなる群より選択された少なくとも1種を少量且つ均一に固溶させることである。
【0021】
このような本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物は、後述する湿式法により高純度且つ結晶性の高い組成物として得ることができる。
【0022】
第三の特徴は、均一な一次粒子を得ることができることと、二次粒子の粒子形状、粒子の大きさを自在に調整できる点である。
【0023】
一次粒子の大きさに着目した場合、一般的にLiMO2で表される層状化合物においては、リチウムイオンの出入りを考えれば一次粒子の大きさが重要である。
即ち、一次粒子が細かい程固体内部のイオン伝導度が良く、且つ外部とのリチウムイオンの出入りがし易い。
【0024】
一方、結晶化度という点からは小さな一次粒子では結晶が充分に発達せず、必然的に純度の低いものになる。又、一次粒子が小さいと、貯蔵安定性が貧弱であり、そのため吸湿して良好な電池特性を安定して出せない。更には、高温下での耐熱性、電解液との反応性等という観点からは、一次粒子が大きいことが望ましい。本発明者らは鋭意検討した結果、後述する湿式法ー噴霧(または凍結)乾燥法−プレス成形焼成法等を組み合わせることにより、一次粒子の長径の粒径が0.2〜30μm、好ましくは1〜20μmまでの所望の範囲の粒径を有する均一な一次粒子の複合酸化物を製造することに成功した。
【0025】
特に、噴霧乾燥−焼成法を用いることにより、一次粒子、二次粒子共に均一なものが調製できる。一次粒子は、SEMで観察して長径の粒径が0.2〜30μm、好ましくは1〜20μmの範囲内にあり、且つその長径の平均粒径が0.3〜30μmである。噴霧乾燥ー焼成法により球状とされた球状二次粒子の平均粒径Dが5〜300μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜20μm、粒度分布の10%が0.5D以上、90%が2D以下と粒度の揃った粒子で且つSEM観察で分かるように表面が凸凹のある球状二次粒子である。
【0026】
又、この球状二次粒子のSEMで観察した粒子径比(長径/短径)は、焼成後解砕した際に僅かに粒子径比の大きなものが含まれることがあっても、通常は最大で1.5以下、平均で1.2以下の範囲におさまり、その90%以上が1.3以下に分布している球形の揃った粒子である。
【0027】
この様な物性から本発明の球状品、好ましくは噴霧乾燥ー焼成工程により得られる球状品は最密充填に適しているばかりでなく、例えば電池に使用した場合は、電解液、導電剤等との接触面積が大きくなり、外部とのリチウムイオンの出入りということからも有利であることが分かる。
【0028】
この球状二次粒子の粒度は、5〜100μmまで所望により設定できるが、電池材料として使用する場合は、加工性から平均粒径が5〜30μm程度のものが望ましい。
【0029】
又、BET比表面積が0.1〜2m2/g以下であり、電池材料として使用した場合、電解液の粘度を上げることがないので、誘電率の低下を引き起こさない。
【0030】
又、一次粒子の長径の平均粒径を1μm以上30μm程度にまでしたい場合は、上記噴霧(または凍結)乾燥品をプレス成形すればより簡便に得ることができる。
【0031】
この一次粒子の大きなものは、高純度且つ結晶性が高いという物性を保持しており、高温安定性等が優れており、特に過酷な条件下での使用が想定されるリチウムイオン二次電池の正極活物質として好適に使用される。又、プレス成形をするため嵩密度が高くなり、この嵩密度が高いことは電池容量の向上にとってプラスである。
【0032】
本発明の上記一般式(I)で示される複合酸化物の製造方法を以下詳細に述べる。前記一般式(I)で示される複合酸化物を製造するに際して、(1)MがAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種である場合、(2)MがBである場合、(3)MがBとAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種との組み合わせである場合にわけて、それぞれ、次の方法が適用される。
【0033】
即ち、(1)前記一般式(I)
【0034】
LiyNi1−xCox1Mx2O2(I)
【0035】
(MがAl、FeおよびMnからなる群から選択された少なくとも1種を示す)で表される複合酸化物の製法においては、一般式(II)
【0036】
Ni1−xCox1Mx2(OH)2(1−x+x1)+3x2−nz(An−)z・mH2O (II)
【0037】
(但し、MはAl、Fe及びMnらなる群より選択された少なくとも1種であり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で表される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することにより製造することができる。
【0038】
(2)前記一般式(I)
【0039】
LiyNi1−xCox1Mx2O2 (I)
【0040】
(但し、MがBを示す)で表される複合酸化物の製法においては、一般式(III)
【0041】
Ni1−xCox1(OH)2(1−x+x1)−nz(An−)z・mH2O (III)
【0042】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1、上記x、x1、とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)を水媒体中で添加し、次にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することにより製造できる。
【0043】
(3)前記一般式(I)
【0044】
LiyNi1−xCox1Mx2O2(I)
【0045】
(但し、MがBとAl、FeおよびMnの中の少なくとも1種との組み合わせを示す)で表される複合酸化物の製法においては、一般式(IV)
【0046】
Ni1−xCox1Nx3(OH)2(1−x+x1)+3x3−nz(An−)z・mH2O (IV)
【0047】
(式中、NはAl、Fe及びMnの中の少なくとも1種であり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することにより製造することができる。
【0048】
水溶性リチウム化合物及び上記一般式(II)、(III)又は(IV)で表される塩基性金属塩(以下、これらの塩基性金属塩を一括して単に「塩基性金属塩」という)
としては、焼成時に揮散する陰イオンを含むものが使用される。
【0049】
リチウム化合物としては、例えば、LiOH、LiNO3、Li2CO3又はこれらの水和物等の中から1種又は2種以上を選択することができる。
【0050】
硼素化合物としては、硼酸、四硼酸リチウム等が好適に使用できる。
【0051】
塩基性金属塩におけるAn−しては、例えば、NO32−、Cl−、Br−、CH3COO−、CO32−、SO42−等で示されるアニオンから選択することができる。
【0052】
これらの化合物において収率、反応性、資源の有効利用及び酸化促進効果等の観点からリチウム化合物としてはLiOHを、硼素化合物としては硼酸、又塩基性金属塩としては、アニオンが硝酸イオンである組み合わせが電池特性の観点から特に好ましい。
【0053】
本発明において用いる塩基性金属塩としては、一次粒子の粒度がシェーラー(Scherrer)法で測定して0.1μm以下の細かな粒子である特定組成の塩基性塩が好ましい。
【0054】
又、この細かな粒子は、BET比表面積が10m2/g以上、好ましくは40m2/g以上、より望ましくは100m2/g以上のものが良い。なお、BET比表面積に関しては、水液中の塩基性金属塩を乾燥して測定する際、乾燥時に微粒子である一次粒子が凝集し、この凝集体のBET比表面積を測定していることになり、凝集が強固な場合は窒素ガスが入り込まず小さな値となる。従って、実際に水液中でリチウム化合物と反応する塩基性金属塩の比表面積は、より大きな値を示し、反応性の高い表面となっているが、上記実状より10m2以上とした。
【0055】
この特定組成の塩基性金属塩は層状構造をしており、化学組成及び結晶構造がMがAl、Fe及びMnの中の少なくとも1種の場合はNi1−xCox1Mx2の水酸化物、MがBである場合はNi1−xCox1の水酸化物、MがBとAl、Fe及びMnの中の少なくとも1種の場合はNi1−xCox1Nx3の水酸化物に近いものであり、しかも微結晶で表面が活性に富んでいる。LiOH等のリチウム化合物を加えると、極めて良好なLiyNi1−xCox1Mx2O2の前駆物質を形成する。
【0056】
この様な特定組成の塩基性金属塩を用いた場合のみ、本発明の高純度で結晶の完全度の高いLiyNi1−xCox1Mx2O2が得られる。上記水酸化物はリチウム化合物との反応性が塩基性金属塩に劣り、逆に、塩基性金属塩において、アニオン量が多くなると、層状構造から外れるてくるとともに、焼成時にアニオンがLiyNi1−xCox1Mx2O2の生成に対して阻害的に作用し、高純度で結晶の完全度の高い目的化合物を得ることができない。
【0057】
ここで用いる塩基性金属塩は、Ni1−xCox1Mx2塩、Ni1−xCox1塩あるいはNi1−xCox1Nx3塩に対して、約0.7〜0.95当量、好ましくは約0.8〜0.95当量のアルカリを約80℃以下の反応条件下で加えて反応させることにより、製造することができる。ここで用いるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の水酸化物、アミン類等である。なお、この塩基性金属塩は合成後20〜70℃で0.1〜10時間熟成すると更に好ましい。次いで、水洗により副生成物を取り除き、リチウム化合物そしてBを含む複合酸化物を製造する場合にはさらに硼素化合物を加える。
【0058】
この様な反応によって得られたスラリーの乾燥は、好ましくは噴霧または凍結乾燥法が望ましい。瞬時に乾燥でき且つ球状物を得ることができる噴霧乾燥法は、球状造粒性、組成物の均一性(乾燥時間のかかる乾燥法では、表面にリチウムが移行し、不均一な組成物となる)の観点から好適である。
【0059】
焼成は、600〜800℃、好ましくは700〜750℃の温度範囲で行い、酸化雰囲気下(酸素流通下)、約4時間以上で行う。好ましくは4〜72時間、より望ましくは、約4〜20時間程度が良い。焼成時間が72時間以上であればコストアップとなるばかりでなく、リチウムの揮散に伴い、(Ni+Co)の3価の割合が却って低くなり、純度の悪いものとなる。
【0060】
この焼成に関する技術では、乾式法等の既知の技術では、2価から3価になりがたいNiに対して、少なくとも20時間の焼成が要求されていたことからみると、これより短い焼成時間でも実施し得る本発明の製法は極めて経済的であり優位である。
【0061】
第二の製法は、一次粒子を大きくし、更に嵩密度を高くする場合に有利なプレス成形法である。
【0062】
上記噴霧乾燥法又は凍結乾燥法で得た乾燥品をプレス成形後焼成することにより、一次粒子が1μm〜30μmの範囲で自在に設定でき、嵩密度が高く、且つ結晶化度と純度が高い複合酸化物を得ることができる。
【0063】
噴霧乾燥品である球状物は、流動性、成形性、充填性に優れた粉体であり、そのまま常法に従いプレス成形するのに良好な材料である。
【0064】
成形圧は、プレス機、仕込み量等により異なり、特に限定されるものではないが、通常500〜3000kg/cm2程度が好適である。
【0065】
プレス成形機は、打錠機、ブリケットマシン、ローラコンパクター等好適に使用できるがプレスできるものであれば良く、特に制限はない。
【0066】
プレス品の密度は、1〜4g/cc、好ましくは2〜3g/cc程度が好適である。
プレス成形は、分子間移動距離が短くなり、焼成時の結晶成長を促進するという点では極めて有用である。従って、プレス成形に供する材料は必ずしも噴霧乾燥品の球状物である必要はなく、凍結乾燥品でも同様に使用することができる。
【0067】
このプレス成形品は、そのまま焼成される。焼成温度は、通常600〜900℃、好ましくは700〜800℃で、酸素気流下、4時間以上、好ましくは10〜72時間で行う。焼成時間が長い程一次粒子は大きくなるので、焼成時間は所望の一次粒子の大きさによって決まる。
【0068】
短時間で得るためには、予備焼成と後焼成の2回焼成を施す方法を用いれば良い。先ず、前述の製造方法で得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥し、そのまま酸化雰囲気下で約600〜900℃で、0.5時間以上(好ましくは0.5〜4時間)予備焼成し、次いで得られた予備焼成品を、必要ならば粉砕した後、プレス成形後、更に酸化雰囲気下で約600〜900℃で約1時間以上(好ましくは4〜48時間)で後焼成する製造方法である。この方法を使用すれば、焼成に要する総時間を短くすることができる。
【0069】
このようにして得られた本発明の上記一般式(I)表示の複合酸化物は、後記実施例から明らかなよう100回目の充放電サイクル経過後も160〜180mAh/gの高容量化が図られると共に高温度のサイクル性(安定性)が改善された二次電池の正極活物質として有効に利用できる。
【実施例】
【0070】
以下の実施例により本発明について詳しく説明する。
【0071】
実施例1:
Ni:Coモル比=80:19となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。攪拌下、反応槽にこの混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を定量ポンプを用いて添加を行い、反応温度25℃でpH8.0を維持するように水酸化ナトリウム水溶液の液量を調整しながら連続反応を行った。滞留時間は平均10分で行った。反応生成物は連続反応で反応槽からオーバフローしてくるものを受け容器に溜め、必要量溜まったところで反応を終了した。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.19(OH)1.833(NO3)0.147・0.16H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:19:1に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.19B0.01O2であった。
【0072】
実施例2:
Ni:Coモル比=80:19.5となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.195(OH)1.86(NO3)0.130・0.22H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:19.5:0.5に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.195B0.005O2であった。
【0073】
実施例3:
Ni:Coモル比=80:18となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.18(OH)1.79(NO3)0.17・0.3H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:18:2に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.18B0.02O2であった。
【0074】
実施例4:
Ni:Coモル比=80:15となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.15(OH)1.76(NO3)0.14・0.25H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:Bモル比=80:15:5に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.15B0.05O2であった。
【0075】
比較例1:
Ni:Coモル比=80:10となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.01(OH)1.68(NO3)0.12・0.19H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Coに対してモル比でNi:Co:B=80:10:10に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.10B0.10O2であった。
【0076】
比較例2:
Ni:Coモル比=80:20となるように2.0Mの硝酸ニッケルと硝酸コバルトの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を実施例1に準じて反応pH8.0となるように同時添加を行い、反応温度25℃、滞留時間10分で連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.2(OH)1.87(NO3)0.13・0.14H2Oであった)、水に懸濁させて、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co)=1.05のモル比に相当する量の3.0Mの水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成した。
焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.20O2であった。
【0077】
比較例3(実施例1に対応する乾式法):
水酸化リチウム1.00モル、水酸化ニッケル0.80モル、水酸化コバルト0.19モル及び硼酸0.01モルを乳鉢で充分乾式混合粉砕した後、直径14×厚さ2mmの大きさにペレット化し、これを酸素雰囲気中で750℃、48時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.19B0.01O2であった。
【0078】
上記実施例1〜4、比較例1〜2で得た複合酸化物の粉末X線回折図を図1に示す。同図より明らかなように、いずれの製法においても副生物のピークは認められず、均一に固溶した層状構造を有していることが分かる。
【0079】
図2および図3にそれぞれ実施例1、実施例4で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)を示す。写真の下方に示した―線の単位はいずれも10μmである。
【0080】
又、上記実施例1〜4および後述する実施例5〜12の連続反応で得られた塩基性金属塩のX線回折で求めた結晶粒子径を表1に示す。いずれも0.1μ以下であり、細かな一次粒子径をもつ塩基性金属塩が生成されていることが分かる。
【0081】
【表1】
【0082】
更にこれら複合酸化物の(Ni+Co)の3価の割合、BET比表面積、粉末X線回折より得られるピーク強度比(003)/(104)、(006)/(101)、レーザ式マイクロトラックで測定した二次粒子の平均径、及びSEM写真観察より得た一次粒子径の長径等の物性を表2に示す。(Ni+Co)の3価の割合は試験例2、BET比表面積は試験例3に従って測定を行った。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示す結果から、一般式(I)においてMが硼素の場合、硼素の添加量(含有量)が10mol%である比較例1の複合酸化物は3価の割合が低く、粉末X線回折で得られるピーク強度比も(003)/(104)は1.2以下、(006)/(101)は0.13以上を示し結晶化度の低いものであることから、一般式(I)においてMが硼素の場合、x2の数値が0<x2≦0.05のものがより好ましい。
【0085】
その他の物性については、いずれの実施例、比較例1〜2とも湿式ー噴霧乾燥法を用いて製造しているため同じような物性を示している。
【0086】
更に、上記実施例1〜4及び比較例1〜3の各複合酸化物を用いて電池テスト(充放電テスト)を試験例4に従って行い、初期放電容量(mAh/g)、100回目の放電容量(mAh/g)及び100回目の減衰率(%)の結果を表3に示す。乾式法で得られた比較例3と比較するといずれもサイクル特性の改善と初期放電容量の改善が認められた。
【0087】
【表3】
【0088】
表3より、硼素を含む実施例1〜4の複合酸化物は硼素を含まない比較例2と比較していずれもサイクル特性の改善が認められ、更に硼素が0.05〜2mol%含有している実施例1〜3の複合酸化物では初期放電容量の改善も認められる。
【0089】
実施例5:
Ni:Co:Alモル比=8:1:1となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液とを反応pH8.0、反応温度25℃、強攪拌の条件下で連続的に添加し、得られた反応液を濾過、水洗後、水に懸濁させることにより、Ni0.80Co0.10Al0.10(OH)1.7(NO3)0.40スラリーを得た。この懸濁液のNi+Co+Alに対し原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1.05に相当する量の3.0mol/l水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉にて酸素雰囲気中で750℃で10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.797Co0.101Al0.102O2粉体を得た。
【0090】
実施例6:
Ni:Co:Alモル比=16:3:1となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液とを反応pH8.0、反応温度25℃、強攪拌の条件下で連続的に添加し、得られた反応液を濾過、水洗後、水に懸濁させることにより、Ni0.80Co0.15Al0.05(OH)1.7(NO3)0.35スラリーを得た。
【0091】
この懸濁液の(Ni+Co+Al)に対し原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1.05に相当する量の3.0mol/l水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルを静的圧縮機を用い2t/cm2の圧で成形しφ14、厚み2mmのペレット状とした。これをアルミナ製ボートに入れ、管状炉にて酸素雰囲気中で750℃で48時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.785Co0.161Al0.054O2粉体を得た。
【0092】
実施例7:
Ni:Co:Alモル比=16:3:1となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液とを反応pH8.0、反応温度25℃、強攪拌の条件下で連続的に添加し、得られた反応液を濾過、水洗後、水に懸濁させることにより、Ni0.80Co0.15Al0.05(OH)1.7(NO3)0.35スラリーを得た。
【0093】
この懸濁液の(Ni+Co+Al)に対し原子比がLi/(Ni+Co+Al)=1.05に相当する量の3.0mol/l水酸化リチウム水溶液を滴下し反応させた後、凍結乾燥により乾燥を行った。得られた乾燥ゲルを静的圧縮機を用い2t/cm2の圧で成形しφ14、厚み2mmのペレット状とした。
【0094】
これをアルミナ製ボートに入れ、管状炉にて酸素雰囲気中で750℃で48時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.798Co0.151Al0.051O2粉体を得た。
【0095】
上記実施例5,6,7で得た複合酸化物の粉末X線回折図をそれぞれ図4,5,6に示す。これより明らかなように、いずれの製法においても副生物のピークは認められず、均一に固溶した層状構造を有していることが分かる。
【0096】
更にこれら複合酸化物の(Ni+Co)の3価の割合、BET比表面積、粉末X線回折より得られるピーク強度比(003)/(104)、(006)/(101)及び嵩密度等の物性を表4、更に複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真を実施例5については図7(×30000倍)に、実施例6については図8(×30000倍)に、実施例7については図9(×10000倍)に示す。なお、写真の下方に示した一線の単位はいずれも1μmである。(Ni+Co)の3価の割合は試験例2、BET比表面積は試験例3に従って測定を行った。
【0097】
【表4】
【0098】
表4から明らかなように(Ni+Co)の3価の割合はほぼ100%であり、粉末X線回折で得られるピーク強度比も(003)/(104)は1.2以上、(006)/(101)は0.13以下であり、充分に結晶化度の高いものである。更に、SEM写真よりプレス成形を施した実施例6及び7は一次粒子が充分に成長しており、嵩密度も充分に高くなっていることが分かる。
【0099】
実施例8:
Ni:Co:Alモル比=790:165:25となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH10.0となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.79Co0.165Al0.025(OH)1.845(NO3)0.14・0.2H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Co、Alに対しモル比でNi:Co:Al:B=790:165:25:20に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.790Co0.165Al0.025B0.020O2粉体を得た。
【0100】
実施例9:
Ni:Co:Alモル比=790:140:50となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.75となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.79Co0.14Al0.05(OH)1.86(NO3)0.15・0.24H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Co、Alに対しモル比でNi:Co:Al:B=790:140:50:20に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で775℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.790Co0.140Al0.050B0.020O2粉体を得た。
【0101】
実施例10:
Ni:Co:Alモル比=790:90:100となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.5となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.79Co0.09Al0.10(OH)1.92(NO3)0.14・0.18H2Oであった)、水に懸濁させた後、前記Ni、Co、Alに対しモル比でNi:Co:Al:B=790:90:100:20に相当する量の硼酸を添加し、スラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+B)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で775℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.790Co0.090Al0.100B0.020O2粉体を得た。
【0102】
実施例11:
Ni:Co:Al:Feモル比=800:100:50:50となるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸アルミニウム及び硝酸鉄の混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.5となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。
【0103】
得られた反応生成物を濾過、水洗し(なお、一部を乾燥したものの組成は、Ni0.8Co0.01Al0.05Fe0.05(OH)1.96(NO3)0.14・0.18H2Oであった)、水に懸濁させスラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Al+Fe)
=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で725℃、15時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.800Co0.100Al0.050Fe0.050O2粉体を得た。
【0104】
実施例12:
Ni:Co:Mnモル比=800:150:50なるように2.0mol/lの硝酸ニッケルと硝酸コバルト、硝酸マンガンの混合水溶液を調製した。この混合水溶液と1.0mol/lの水酸化ナトリウム溶液を反応pH9.0となるように、反応温度25℃、強攪拌下で同時添加を行い連続反応を行った。得られた反応生成物を濾過、水洗し、水に懸濁させスラリーとした。このスラリーにLi/(Ni+Co+Mn)=1.05のモル比に相当する量の3.0M水酸化リチウム水溶液を滴下した後、噴霧乾燥を行った。得られた乾燥ゲルをアルミナ製ボートに入れ、管状炉(山田電気製TF−630型)にて酸素流通下で750℃、10時間焼成し、乳鉢で解砕し、LiNi0.800Co0.150Mn0.050O2粉体を得た。
【0105】
比較例4(実施例5に対応する乾式法):
水酸化リチウム1.00モル、水酸化ニッケル0.80モル、水酸化コバルト0.10モル及び水酸化アルミニウム0.01モルを乳鉢で充分乾式混合粉砕した後、直径14×厚さ2mmの大きさにペレット化し、これを酸素雰囲気中で750℃、48時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.80Co0.10Al0.10O2であった。
【0106】
比較例5(実施例8に対応する乾式法):
水酸化リチウム1.00モル、水酸化ニッケル0.79モル、水酸化コバルト0.165モル、水酸化アルミニウム0.025モル及び硼酸0.02モルを乳鉢で充分乾式混合粉砕した後、直径14×厚さ2mmの大きさにペレット化し、これを酸素雰囲気中で750℃、48時間焼成した。焼成物の化学組成はLiNi0.79Co0.165Al0.025B0.02O2であった。
【0107】
上記実施例8〜11で得た複合酸化物の粉末X線回折図を図10〜13に示す。これより明らかなように、いずれの製法においても副生物のピークは認められず、均一に固溶した層状構造を有していることが分かる。
【0108】
更にこれら複合酸化物の(Ni+Co)の3価の割合、BET比表面積、粉末X線回折より得られるピーク強度比(003)/(104)、(006)/(101)等の物性を表5に示す。更に複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真を実施例8については図14(×1500倍)に、実施例10については図15(×1500倍)に、実施例11については図16(×1500倍)に示す。なお、写真の下方に示した一線の単位はいずれも10μmである。(Ni+Co)の3価の割合は試験例2、BET比表面積は試験例3に従って測定を行った。
【0109】
【表5】
【0110】
表5より明らかなように、いずれの実施例も請求項で示す範囲に充分に対応した物性値を示しており、結晶化度の高いものが得られている。
【0111】
更に、上記実施例5〜11及び比較例4〜5の各複合酸化物を用いて電池テスト(充放電テスト)を試験例4に従って行い、初期放電容量(mAh/g)、100回目の放電容量(mAh/g)及び100回目の減衰率(%)の結果を表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
表6より、リチウムニッケルコバルト複合酸化物のAl含量が増加し、Co含量が低下すると表3の比較例2と比較し初期放電容量が低下する傾向が認められる。硼素添加によりサイクル特性の改善が認められる。更に、Fe添加はAl添加より初期放電容量を低下させる傾向が大きいことが分かる。しかし、本発明のものは乾式法に係る比較例4,5と比較して初期放電容量、サイクル特性ともに優れている。
【0114】
上記結果より、Al添加は高価なCoの使用量を減少させるという点で意味があるが、電池性能の面からマイナスという結果となった。
【0115】
しかし、リチウムイオン二次電池材料では、従来用いられた正極材料の熱安定性に問題があったが、本発明で得られた複合酸化物では良好な熱安定性改善効果を奏する。
【0116】
正極材料の熱安定性の指標としては、充電状態の正極材料の示差熱測定を行い、酸素脱離に伴う発熱温度を調べる方法がある。そこで、試験例5に従って本発明で得られた複合酸化物の熱安定性について行った試験結果を表7に示す。
【0117】
【表7】
【0118】
表7より、比較例2と比較してリチウムニッケルコバルト複合酸化物にAlが置換することにより酸素脱離に伴う発熱温度が上昇し、更に実施例6及び7のように一次粒子が大きいものも発熱温度が上昇し、正極材料の熱安定性が改善されていることが分かる。
【0119】
以上により、本発明のリチウムニッケルコバルト複合酸化物、特にAl及び/又はBを完全に固溶したものは電池性能として満足する二次電池用正極活物質である。
【0120】
試験例1(シェーラー法):
結晶に歪みがなくて結晶子の大きさが均一で、回折線の幅の拡がりが結晶子の大きさだけに基づくと仮定し、下記式(1)より結晶子の大きさを求める方法である。
【0121】
Dhkl=(kλ)/(βcosθ)・・・(式1)
【0122】
式中、Dhkl(オングストローム)は、(hkl)面に垂直方向の結晶子の大きさ、λ(オングストローム)はX線の波長、β(rad)は回折線幅、θ(°)は回折角、kは定数を示す。
【0123】
試験例2((Ni+Co)の3価の測定法):
(Ni+Co)の3価の割合とは、全(Ni+Co)に対する3価の(Ni+Co)の割合を百分率で示した値であり、酸化還元滴定により測定する。試料0.2gを0.25MのFeSO4−3.6N硫酸溶液に溶解し、濃燐酸2mlを加えた後、0.1Nの過マンガン酸カリウムで滴定する。同様に空試験を行い、下記式より試料中の3価の(Ni+Co)の%を求める。式においてfは0.1Nの過マンガン酸カリウム溶液のファクター、X0は空試験滴定量(ml)、Xは滴定量(ml)、mは試料量(g)、AはNiの含量(%)、BはCoの含量(%)である。
【0124】
試料中の(Ni+Co)の3価の割合(%)=10f(X0−X)/m(A/5.871+B/5.893)
【0125】
試験例3(BET比表面積測定法):
試料を窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスの流動下において加熱脱気し、MONOSORB(ユアサアイオニクス(株)製)を用いてBET1点連続流動法により測定する。
【0126】
試験例4(電池テスト法):
リチウムニッケル複合酸化物を88重量%、導電剤としてアセチレンブラック6.0重量%、結合剤としてテトラフルオロエチレン6.0重量%の混合比で混合し、次いでステンレスメッシュ上に圧縮成形を行い直径18mmのペレットを得、200℃で2時間以上乾燥し正極材料とする。負極材料には圧延リチウム金属シートをステンレス基盤上に圧着したものを用い、隔膜にはポリプロピレン製多孔質膜(セルガード2502)とグラスフィルターろ紙を用いる。電解液には1MLiClO4を溶解させたエチレンカーボネート/ジメチルメトキシエタン(1:1)を用い、試験用セル(半解放型セル)の組立から仕上げまでをアルゴン置換したドライボックス中で行う。このリチウム電池を0.4mA/cm2の定電流密度にて、3.0〜4.3Vの間で充放電を行う。
【0127】
試験例5(熱安定性試験法):
試験例3で示される方法で電池を作製し、0.4mA/cm2の定電流密度にて4.4Vまで充電を行う。充電終了後、電池を分解し正極を取り出し、正極を電解液で洗浄後、真空乾燥を行う。乾燥した正極材料を示差熱測定装置にて窒素流通下、昇温速度2℃/分で測定を行い酸素脱離に伴う発熱ピーク温度を測定する。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように本発明によれば、一般式(I)LiyNi1−xCox1Mx2O2(I)で示される新規な複合酸化物であって、充放電サイクル特性に優れ、サイクル数の増加によっても従来のLiNiO2に匹敵し得る高い電池容量を維持し、高温時でのサイクル性(安定性)の改善された二次電池用正極活物質を提供することができる。また、Mで示される金属の導入により高価なCoの使用量を最小限に抑えることができるので、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】実施例1〜4、比較例1〜2で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図2】実施例1で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図3】実施例4で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図4】実施例5で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図5】実施例6で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図6】実施例7で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図7】実施例5で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×30000倍)である。
【図8】実施例6で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×3000倍)である。
【図9】実施例7で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×10000倍)である。
【図10】実施例8で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図11】実施例9で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図12】実施例10で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図13】実施例11で得た複合酸化物の粉末X線回折図である。
【図14】実施例8で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図15】実施例10で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【図16】実施例11で得た複合酸化物の一次粒子を示すSEM写真(×1500倍)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される複合酸化物。
【化1】
(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)
【請求項2】
一般式(I)で示され、X線回折のミラー指数hklにおける(003)面及び(104)面での回折ピーク比(003)/(104)が1.2以上、(006)面及び(101)面での回折ピーク比(006)/(101)が0.13以下、全(Ni+Co)に対する3価の(Ni+Co)の割合が99%以上、BET比表面積が0.1〜2m2/g、平均二次粒径Dが5〜100μm、粒度分布の10%が0.5D以上、90%が2D以下、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して表面に凸凹のある球状二次粒子であって、この球状二次粒子を構成する一次粒子径が、SEMで観察して長径の粒径が0.2〜30μmの範囲内にあり、且つその長径の平均粒径が0.3〜30μmであることを特徴とする複合酸化物。
【化2】
(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)
【請求項3】
一般式(I)で示され、X線回折のミラー指数hklにおける(003)面及び(104)面での回折ピーク比(003)/(104)が1.2以上、(006)面及び(101)面での回折ピーク比(006)/(101)が0.13以下、全(Ni+Co)に対する3価の(Ni+Co)の割合が99%以上、BET比表面積が0.1〜2m2/g、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した一次粒子の平均長径が1.0〜30μmであることを特徴とする複合酸化物。
【化3】
(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)
【請求項4】
前記MがAl及びBである請求項1〜3記載の複合酸化物。
【請求項5】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(II)で示される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化4】
(式中、MはAlを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化5】
(式中、MはAlであり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項6】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(III)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1、上記x、x1とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)を水媒体中で添加し、yで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化6】
(式中、MはBを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.1、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化7】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項7】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(IV)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化8】
(式中、MはBとAlとの組み合わせを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化9】
(式中、NはAlであり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項8】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(II)で示される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をプレス成形後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化10】
(式中、MはAlを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化11】
(式中、MはAlであり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項9】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(III)を水媒体中で添加し、yで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をプレス成形後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化12】
(式中、MはBを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.1、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化13】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1上記x、x1、とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)
【請求項10】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(IV)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をプレス成形後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化14】
(式中、MはBとAlとの組み合わせを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化15】
(式中、NはAlであり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項11】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(II)で示される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をそのまま酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約0.5時間以上で予備焼成し、次いで得られた予備焼成品をプレス成形し、更に酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約1時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化16】
(式中、MはAlを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化17】
(式中、MはAlであり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項12】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(III)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1上記x、x1、とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)を水媒体中で添加し、yで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をそのまま酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約0.5時間以上で予備焼成し、次いで得られた予備焼成品をプレス成形し、更に酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約1時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化18】
(式中、MはBを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.1、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化19】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項13】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(IV)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾後、乾燥物をそのまま酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約0.5時間以上で予備焼成し、次いで得られた予備焼成品をプレス成形し、更に酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約1時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化20】
(式中、MはBとAlとの組み合わせを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化21】
(式中、NはAlであり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項14】
請求項1、2、3又は4記載の複合酸化物を有効成分として含有することを特徴とする二次電池用正極活物質。
【請求項1】
一般式(I)で示される複合酸化物。
【化1】
(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)
【請求項2】
一般式(I)で示され、X線回折のミラー指数hklにおける(003)面及び(104)面での回折ピーク比(003)/(104)が1.2以上、(006)面及び(101)面での回折ピーク比(006)/(101)が0.13以下、全(Ni+Co)に対する3価の(Ni+Co)の割合が99%以上、BET比表面積が0.1〜2m2/g、平均二次粒径Dが5〜100μm、粒度分布の10%が0.5D以上、90%が2D以下、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して表面に凸凹のある球状二次粒子であって、この球状二次粒子を構成する一次粒子径が、SEMで観察して長径の粒径が0.2〜30μmの範囲内にあり、且つその長径の平均粒径が0.3〜30μmであることを特徴とする複合酸化物。
【化2】
(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)
【請求項3】
一般式(I)で示され、X線回折のミラー指数hklにおける(003)面及び(104)面での回折ピーク比(003)/(104)が1.2以上、(006)面及び(101)面での回折ピーク比(006)/(101)が0.13以下、全(Ni+Co)に対する3価の(Ni+Co)の割合が99%以上、BET比表面積が0.1〜2m2/g、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した一次粒子の平均長径が1.0〜30μmであることを特徴とする複合酸化物。
【化3】
(式中、MはAl及びBからなる群より選択された少なくとも1種であり、yは0.9≦y≦1.3、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、MがAlの場合は、x2は0<x2≦0.3、MがBの場合は、x2は0<x2<0.1、MがB及びAlの場合は、x2は0<x2<0.3を示すが、Bの占める割合は0から0.1の範囲である)
【請求項4】
前記MがAl及びBである請求項1〜3記載の複合酸化物。
【請求項5】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(II)で示される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化4】
(式中、MはAlを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化5】
(式中、MはAlであり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項6】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(III)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1、上記x、x1とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)を水媒体中で添加し、yで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化6】
(式中、MはBを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.1、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化7】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項7】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(IV)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上で焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化8】
(式中、MはBとAlとの組み合わせを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化9】
(式中、NはAlであり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項8】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(II)で示される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をプレス成形後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化10】
(式中、MはAlを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化11】
(式中、MはAlであり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項9】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(III)を水媒体中で添加し、yで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をプレス成形後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化12】
(式中、MはBを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.1、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化13】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1上記x、x1、とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)
【請求項10】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(IV)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をプレス成形後、酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約4時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化14】
(式中、MはBとAlとの組み合わせを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化15】
(式中、NはAlであり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項11】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(II)で示される塩基性金属塩にyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をそのまま酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約0.5時間以上で予備焼成し、次いで得られた予備焼成品をプレス成形し、更に酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約1時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化16】
(式中、MはAlを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化17】
(式中、MはAlであり、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x2は0<x2≦0.3、x1+x2=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項12】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(III)で示される塩基性金属塩にx2モル%の硼素を含有する硼素化合物(x2は0<x2<0.1上記x、x1、とx2は、x2=x−x1の関係が成立する)を水媒体中で添加し、yで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾燥後、乾燥物をそのまま酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約0.5時間以上で予備焼成し、次いで得られた予備焼成品をプレス成形し、更に酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約1時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化18】
(式中、MはBを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.1、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化19】
(式中、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項13】
一般式(I)で示される複合酸化物の製造において、一般式(IV)で示される塩基性金属塩にx4モル%の硼素を含有する硼素化合物(x4は0<x4<0.1、x4、x3、x2とはx4+x3=x2の関係が成立する)とyで示すLi原子モル数に相当する量のリチウム化合物を水媒体中で添加し、得られたスラリーを噴霧又は凍結乾後、乾燥物をそのまま酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約0.5時間以上で予備焼成し、次いで得られた予備焼成品をプレス成形し、更に酸化雰囲気下で約600℃〜900℃、約1時間以上焼成することを特徴とする複合酸化物の製造方法。
【化20】
(式中、MはBとAlとの組み合わせを示し、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x1+x2=x、x2は0<x2<0.5、yは0.9≦y≦1.3を示す)
【化21】
(式中、NはAlであり、この場合の一般式(I)のMはBとNを含みBの含量をx4とすると、xは0<x≦0.5、x1は0<x1<0.5、x3は0<x3≦0.3−x4、x1+x3+x4=x、An−はn価(n=1〜3)のアニオン、z及びmはそれぞれ、0.03≦z≦0.3、0≦m<2の範囲を満足する正の数を示す)
【請求項14】
請求項1、2、3又は4記載の複合酸化物を有効成分として含有することを特徴とする二次電池用正極活物質。
【図1】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−37749(P2008−37749A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228862(P2007−228862)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【分割の表示】特願平10−509595の分割
【原出願日】平成9年8月11日(1997.8.11)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【分割の表示】特願平10−509595の分割
【原出願日】平成9年8月11日(1997.8.11)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】
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