説明

リチウムポリマー電池の製造方法

【課題】 ゲル電解質をリチウムポリマー電池に適用する際に、ゲル電解質の重合時および初期充電時に発生するガスによる特性低下を防ぐ、リチウムポリマー電池の製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも正極、セパレータ、負極と、溶媒と架橋型高分子と重合開始剤と化1で示される有機化合物とを含有するゲル電解質とを外装し、第一の充電工程で化1で示される有機化合物または環状ジスルホン酸エステルを含有するゲル電解質とを外装体に注入し硬化させる工程および、前記化1で示される有機化合物または環状ジスルホン酸エステルが分解される電圧以上、満充電電圧未満まで充電する第一の充電工程および、前記第一の充電工程後に外装体を開封して発生ガスを除去する工程および、外装体を封口する工程および、満充電まで充電する第二の充電工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムポリマー電池の製造方法に関し、特にゲル電解質に電池特性を向上させる有機化合物を含有させたリチウムポリマー電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムポリマー電池は、薄型化が可能であること、形状選択の自由度の高さ、電解液を用いないことに依る安全性の高さなどから、モバイル機器用の電源などとして注目されている。最近では、用いられるモバイル機器の機能の増加に伴い高エネルギー化と、それに伴う電池特性の改善が技術開発の目標となっている。
【0003】
こうした中で重要な技術課題のひとつとしてサイクル特性の改善が挙げられる。サイクル特性については、用いるポリマー材料等を種々工夫することにより改善はなされてきた。特許文献1では、物理架橋型ポリマーと化学架橋型ゲル電解質を混合することによる改善が提案されている。特許文献2では、用いるセパレータ表面を改質することによりプレゲル溶液の含浸性についての改善が提案されている。非特許文献1においては、ゲル電解質を用いた二次電池について、電極材料(たとえば負極材料に高価であるが電池の膨れ抑制効果のある人造黒鉛(塊状黒鉛)を使用)、電池の形状などの検討が行われ、電池の膨れ抑制やサイクル特性の改善について記されている。また、電解液に加える添加剤および充電方法により電池特性の向上を図る提案もなされている。特許文献3においては、初回充電(初期充電ともいう)時に主溶媒が分解せず添加剤が分解する電圧で保持することで添加剤による被膜を効率よく作製することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−100406号公報
【特許文献2】特開2003−257490号公報
【特許文献3】特開2001−325988号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】金村聖志監修、ポリマーバッテリーの最新技術II、p.242−247、シーエムシー出版(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、初期充電時には添加剤の分解によりガスが発生する。リチウムポリマー電池においては電解質が固体であるため電解液を用いた二次電池よりも発生ガスの影響が大きく、サイクル特性が劣るという欠点があった。また、過酸化物を用いて重合する類のリチウムポリマー電池の場合、重合時の過酸化物の分解によってもガスが発生する。そのため、ゲル電解質重合後や初期充電後のガス抜き工程の追加、もしくは開封状態での初期充電などが行われている。
【0007】
本発明者等は先に一般的に使用される添加剤よりも低電圧で分解し良好な被膜を作製する添加剤を提案している。(特願2007−195663号)ゲル電解質を用いたリチウムポリマー電池においては、ゲル電解質の材質だけでなく、電極材料、電池形状、電池作製条件、電解液材料などの選択が極めて重要である。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものである。本発明の課題は、ゲル電解質をリチウムポリマー電池に適用する際に、ゲル電解質の重合時および初期充電時に発生するガスによる特性低下に対して、簡便な方法でリチウムポリマー電池の特性、特にサイクル特性を向上させるリチウムポリマー電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のリチウムポリマー電池の製造方法は、少なくとも正極と、負極と、溶媒と架橋型高分子と重合開始剤と前記溶媒よりも低電圧で分解される化1で示される有機化合物または環状ジスルホン酸エステルを含有するゲル電解質とを外装体に封入する工程および、前記化1で示される有機化合物または環状ジスルホン酸エステルが分解される電圧以上、満充電電圧未満まで充電する第一の充電工程および、前記第一の充電工程後に外装体を開封して発生ガスを除去する工程および、外装体を封口する工程および、満充電まで充電する第二の充電工程を有することを特徴とする。
【0010】
【化1】

【0011】
但し、化1において、Zはハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、ポリフルオロアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数4〜20の環状炭化水素、またはXR5(ここでXは酸素原子、硫黄原子または、NR6を表し、R6は水素原子または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基を表し、R5は置換もしくは無置換の炭素数4〜20の環状炭化水素を表す)を表す。nは0〜4の整数を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子または、A1がNR7でA2がNR8(ここでR7とR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基または置換もしくは無置換の炭素数4〜20の環状炭化水素を表す。また、R7とR8はお互いに結合して環構造を形成しても良い。)を表す。Lはメチレン基又は単結合を表す。Mは、ホウ素又はリンを表す。B1およびB2はそれぞれ独立にカルボニル基、置換もしくは無置換のアルキレン基又はポリフルオロアルキレン基を表す。mは、1〜3の整数を表す(ただし、Mがホウ素のとき2m+n=4、Mがリンのとき2m+n=6である。)
【0012】
また、本発明のリチウムポリマー電池の製造方法は、化1で示される有機化合物の最低空軌道エネルギー(LUMO)が、−1.5(eV)以上0(eV)以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のリチウムポリマー電池の製造方法は、環状ジスルホン酸エステルが、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートおよびプロピレンメタンジスルホネートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のリチウムポリマー電池の製造方法は、前記第一の充電工程における到達電圧は、放電下限電圧以上とすることが好ましい。
【0015】
また、本発明のリチウムポリマー電池の製造方法は、前記ゲル電解質が溶媒と架橋型高分子と重合開始剤と0.1〜3.0質量%のビニレンカーボネートまたはその誘導体と0.1〜3.0質量%の化2もしくは化3で示される有機化合物、または、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、プロピレンメタンジスルホネートから選ばれる少なくとも一種を含有するとよい。
【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
また、本発明のリチウムポリマー電池の製造方法は、正極が活物質としてマンガン酸リチウム又はコバルト酸リチウムを含有し、架橋型高分子が、アクリル系高分子から構成され、重合開始剤が、過酸化物から構成され、溶媒が少なくとも鎖状カーボネートおよび環状カーボネートを含有し、負極が活物質として黒鉛を含有し、外装材がラミネート材からなることが好ましい。
【0019】
重合開始剤を使用する類のリチウムポリマー電池においては、初期充電時における添加剤の分解によるガス発生の他に、ポリマーの重合時に重合開始剤からもガスが発生する。電解質が固体であることより、そのガスによる微少な電極間ギャップの影響が通常の電解液を使用した電池と比較すると大きくなる。そのため、重合後の工程においてガス抜きが必要となる。通常の電解液を使用した電池においても、発生ガスの影響を取り除くため、開封状態での初期充電・初期充電後満充電状態でのセル開封などが行われている。この工程では発火の可能性が否定できず、安全面で大きな問題がある。本発明にあるように、ポリマー重合後、初期充電時に添加剤が分解する電圧を越える程度まで充電を行った後にガス抜きを行うことにより、1工程で重合時および初期充電時の添加剤分解によるガスを簡便に取り除くことが可能であり、また、充電容量が非常に少ないため、開封時に発火する危険性も非常に小さくすることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、少なくとも正極と、負極と、溶媒と架橋型高分子と重合開始剤と溶媒よりも低電圧で分解される化1で示される有機化合物、または環状ジスルホン酸エステルを含有するゲル電解質とを外装体に封入する工程および、化1で示される有機化合物、または環状ジスルホン酸エステルが分解される電圧まで充電する第一の充電工程および、外装体を開封して発生ガスを除去する工程および、外装体を封口する工程および、満充電まで充電する第二の充電工程を有することにより、製造工程上問題のある開封状態での充電や満充電状態での外装体の開封をすることなくゲル電解質重合時の発生ガスおよび初期充電時の添加剤の分解ガスの除去を一工程で簡便に行うことが出来る。このとき、1段階目の第一の充電工程において、所定電圧で一定時間保持する必要はなく、通常の初期充電工程を所定電圧で中断して、外装体を開封して発生ガスを除去する工程を追加するのみで十分効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】リチウムポリマー電池の正極の構成を説明する図。
【図2】リチウムポリマー電池の負極の構成を説明する図。
【図3】リチウムポリマー電池の巻回後の電池要素の構成を説明する断面図。
【図4】リチウムポリマー電池の外装工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のリチウムポリマー電池の製造方法で使用される正極は、アルミニウム箔等の金属からなる集電体に正極活物質層を塗布、乾燥したものを圧縮し成型したものであり、負極は、銅箔等の金属からなる集電体に負極活物質を塗布、乾燥したものを圧縮し成型したものである。セパレータは、不織布、ポリオレフィン微多孔膜などリチウムポリマー電池で一般的に使用されるものであれば特に限定はされない。正極と負極をセパレータを介して積み重ねて積層体を製作し、あるいは正極と負極をセパレータを介して扁平に巻回した後成型した巻回体を製作し、積層体あるいは巻回体をラミネート材等の外装材に入れた後、ゲル電解質を注入し処理することによりリチウムポリマー電池を作製する。
【0023】
ゲル電解質に含まれるゲル化成分として、たとえば熱重合可能な重合基を一分子あたり2個以上有するモノマー、またはオリゴマー、共重合オリゴマーなどが挙げられる。このゲル化成分としては、アクリル系高分子を形成する、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、プロピレンジアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、トリプロピレンジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどの2官能アクリレート、また、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどの3官能アクリレート、また、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの4官能アクリレート、および、上記メタクリレートモノマーなどが挙げられる。これらの他に、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレートなどのモノマー、これらの共重合体オリゴマーやアクリロニトリルとの共重合体オリゴマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどの、可塑剤に溶解させ、ゲル化させることのできるポリマーも使用できる。
【0025】
ゲル成分としては、上述のモノマー、オリゴマー、またはポリマーに限定されるものではなく、ゲル化可能なものであれば、使用できる。また、ゲル化には一種類のモノマー、オリゴマーまたはポリマーに限定されるものではなく、必要に応じて2〜数種のゲル化成分を混合しても使用できる。
【0026】
ゲル電解質に含まれる溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステルなどの非プロトン性有機溶媒を一種又は二種以上を混合して使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
ゲル電解質に含ませる化1で示される有機化合物は、化2、化3で示される有機化合物の他、化合物番号1〜6として表1に示される有機化合物があげられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。


【0028】
【表1】

【0029】
またゲル電解質に含ませる環状ジスルホン酸エステルは、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートおよびプロピレンメタンジスルホネートがあげられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
負極活物質として、特に、鱗片状黒鉛を用いる場合、人造黒鉛とは異なり活性な部位を有しており、充放電を行うたびにガス発生をまねき、電池膨れ、容量低下を引き起こすことから、電解液のみから構成される電池ではこの対策として、一般的にビニレンカーボネート(以下VC)、1,3−プロパンスルトン(以下PS)などを用いている。例えばPSの最低空軌道エネルギー(LUMO)は0.07eVであり、PSが溶媒分子であるEC(LUMO:1.18eV)やDEC(LUMO:1.26eV)よりも先に分解し皮膜を形成することが考えられる。その結果溶媒分子の分解が抑制され、ガス発生による電池の膨れの抑制やレート特性改善が期待できる。本発明の系のようにポリマーゲル中に分散させた場合には、ゲルが高抵抗であるため上記VC、PSは負極電極上で分解皮膜が形成されにくい。(最低空軌道エネルギー(LUMO):PS(0.07(eV))、VC:0.09(eV))。そのため、PSやVCよりもよりLUMOの小さい分子の添加剤が望ましく、−1.5(eV)以上0(eV)以下のものが最適である。たとえば化1で示される有機化合物はリチウムイオン二次電池の電極上での分解皮膜を形成すると考えられている。例えば化2で示される有機化合物の最低空軌道エネルギー(LUMO)は−1.21eVであり、化2で示される有機化合物が溶媒分子であるEC(LUMO:1.18eV)やDEC(LUMO:1.26eV)よりも先に分解し皮膜を形成することが考えられる。その結果溶媒分子の分解が抑制され、ガス発生による電池の膨れの抑制やレート特性改善が期待できる。また、化3で示される有機化合物の最低空軌道エネルギー(LUMO)は−0.24eVである。また、例えば正極にマンガン酸リチウムを含む場合には化2または化3で示される有機化合物の添加によってゲル中に溶出したMnが負極表面に吸着することを防止し、結果として抵抗上昇によるレート特性の低下の抑制やサイクル特性向上に有効であると考えられる。
【0031】
本発明においては、ゲル電解質に更にVCまたはその誘導体を適宜含有させることにより化1で示される有機化合物、または環状ジスルホン酸エステルにより形成された皮膜の安定化させるのに有効である。VCは特に、正極にコバルト酸リチウムを用いた場合に効果が大きく、含有するVCの濃度は、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、特に好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0032】
これらのゲル電解質中に含まれる化1、または環状ジスルホン酸エステルで示される有機化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、正極活物質としてマンガン酸リチウムを含む正極を使用した二次電池の場合には、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、更に好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下が特に好ましい。0.1質量%未満では電極表面に十分な皮膜が形成されず、サイクル特性やレート特性の改善効果が小さい。5.0質量%を越えると、抵抗が高くなってレート特性が悪くなる。
【0033】
正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いる場合には、ゲル電解質中に含まれる化2、化3、また環状ジスルホン酸エステルで示される有機化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、0.5質量%以上〜5.0質量%以下が好ましい。0.5質量%未満では電極表面に十分な皮膜が形成されず、サイクル特性やレート特性の改善効果が小さい。5.0質量%を越えると、抵抗が高くなってレート特性が悪くなる。
【0034】
ゲル電解質に含まれる支持塩としては、特に限定されないがLiPF6、LiBF4、LiAsPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22など一般的にリチウムポリマー電池に用いられる電解質が使用できる。
【0035】
本発明において、必要に応じて、熱重合開始剤としてベンゾイン類、パーオキサイド類などが使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また正極活物質として、例えば、LiCoO2、LiNi1-xCox2、LiMn24、LiNixMn2-x4(0≦X≦1)などの複合酸化物が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
負極活物質として、例えば、黒鉛、非晶質炭素、シリコン、シリコン酸化物、金属リチウムおよびその合金などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
セパレータとして、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、フッ素樹脂等の多孔性フィルムなどが使用できるが、これに限定されるものではない。
【0039】
本発明において、第一の充電工程における充電電圧は、その電池の放電下限電圧以上であれば特に限定されないが、放電下限電圧が通常3.0VのCo系もしくはMn系の正極を使用した場合は、好ましくは3.2〜3.6V程度である。
【実施例】
【0040】
実施例により本発明を図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
図1はリチウムポリマー電池の正極の構成を説明する図であり、図2はリチウムポリマー電池の負極の構成を説明する図であり、図3はリチウムポリマー電池の巻回後の電池要素の構成を説明する図であり、図4はリチウムポリマー電池の外装工程を説明する図である。
【0042】
(実施例1)
先ず、図1により正極の作製について説明する。LiMn24を85質量%、導電補助材としてアセチレンブラックを7質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン8質量%とを混合したものに、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して正極スラリーを作製した。これをドクターブレード法により集電体となる厚さ20μmのAl箔2の両面にロールプレス処理後の厚さが160μmになるように塗布し、正極活物質塗布部3を形成した。なお、両端部にはいずれの面にも正極活物質が塗布されていない正極活物質非塗布部4を設け、続いて正極活物質片面塗布部5が設けられた一方の正極活物質非塗布部4に正極導電タブ6を設け正極1とした。
【0043】
次に、図2により負極の作製について説明する。黒鉛90質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン10質量%とを混合し、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して負極スラリーを作製した。これを集電体となる厚さ10μmのCu箔8の両面にロールプレス処理後の厚さが120μmになるように塗布し、負極活物質塗布部9を形成した。なお、両端部の一方の端面には片面のみ負極活物質片面塗布部10と負極活物質が塗布されていない負極活物質非塗布部11を設け、負極導電タブ12を取り付けて負極7とした。
【0044】
図3により電池要素の作製について説明する。膜厚12μm、気孔率35%のポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ13を二枚溶着して切断した部分を巻回装置の巻き芯に固定し巻きとり、正極1、および負極7の先端を導入する。正極1および負極7は両面に電極活物質層が形成されている側を先端側として、負極は二枚のセパレータの間に、正極電極はセパレータの上面にそれぞれ配置して巻き芯を回転させ巻回し、電池要素(以下ジェリーロール(J/R)と表記)を形成した。
【0045】
このJ/Rを図4に示すようにエンボス加工したラミネート外装体に収容し、ラミネート外装体の辺を折り返し、ゲル電解質注液用の部分を残して熱融着を行った。
【0046】
ゲル電解質となるプレゲル溶液は、エチレンカーボネート(EC)30質量%とジエチルカーボネート(DEC)58質量%に、リチウム塩としてLiPF612質量%からなる電解液に対して、化2で示される有機化合物を1質量%、ゲル化剤としてトリエチレングリコールジアクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートをそれぞれ3.8質量%、1質量%を加え、よく混合した後に、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシピバレートを0.5質量%混合することで作製した。
【0047】
次に、プレゲル溶液を注液部分から注液し真空含浸を行い、リチウムポリマー電池を得た。この電池の放電下限電圧は3.0Vである。
【0048】
得られたリチウムポリマー電池を、第一の充電工程として、電池電圧3.2Vまで充電(充電電流:0.2C、CC充電)し、一度開封した後に再度真空封止を行い、第二の充電工程として電池電圧4.2Vまで充電(充電電流:0.2C、CC−CV充電、充電時間:6.5時間)した。その後0.2Cで電池電圧3.0VまでCC放電し、そのときの放電容量を初期容量とした。
【0049】
得られたリチウムポリマー電池のレート特性は、電池電圧4.2Vまで充電された電池を0.2Cで電池電圧3.0Vまで放電し得られた放電容量を100とし、放電レート(1C)で放電し得られた放電容量との比で表2に示した。
【0050】
得られたリチウムポリマー電池のサイクル後の電池体積変化率は、初期充電後の電池体積を1とし、サイクル後の電池体積との比として表2に示した。なお、サイクルの条件は、充電:上限電圧4.2V、電流:1C、時間2.5H、放電:下限電圧3.0V、電流:1Cいずれも20℃で実施した。容量維持率は1サイクル目の放電容量(1C)に対する100サイクル目の放電容量(1C)の割合で示した。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例2)
第一の充電工程の充電電圧を3.0Vとする以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0053】
(実施例3)
第一の充電工程の充電電圧を3.4Vとする以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0054】
(実施例4)
第一の充電工程の充電電圧を3.6Vとする以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0055】
(実施例5)
第一の充電工程の充電電圧を3.8Vとする以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0056】
(実施例6)
第一の充電工程の充電電圧を2.8Vとする以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0057】
(比較例1)
第一の充電工程を行わず、4.2Vまで初期充電を行った後に満充電状態でガス除去工程を行った以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0058】
(比較例2)
第一の充電工程およびガス除去工程を行わなかった以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0059】
本発明のリチウムポリマー電池において、表2の実施例1〜5、比較例1に示すように、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電を行わず満充電状態でガス抜きを行った電池と同等の特性を示すことが分かった。これにより、より安全な状態で工程を進めることが出来る。また、表2の実施例6、比較例1より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下の場合は、やや特性が劣るものの、比較的良好な特性を示すことが分かった。
【0060】
また、本発明のリチウムポリマー電池において、表2の実施例1〜5、比較例2に示すように、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。また、表2の実施例6、比較例2より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下においても、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。
【0061】
(実施例7)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0062】
(実施例8)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例2と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0063】
(実施例9)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例3と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0064】
(実施例10)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例4と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0065】
(実施例11)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例5と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0066】
(実施例12)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例6と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0067】
(比較例3)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、比較例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0068】
(比較例4)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、比較例2と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0069】
実施例7〜12および比較例3、4についてのレート特性、容量維持率、電池体積変化率について表3に示した。
【0070】
【表3】

【0071】
(実施例13)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0072】
(実施例14)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例2と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0073】
(実施例15)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例3と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0074】
(実施例16)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例4と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0075】
(実施例17)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例5と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0076】
(実施例18)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例6と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0077】
(比較例5)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、比較例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0078】
(比較例6)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、比較例2と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0079】
実施例13〜18および比較例5、6についてのレート特性、容量維持率、電池体積変化率について表4に示した。
【0080】
【表4】

【0081】
本発明のリチウムポリマー電池において、表3の実施例7〜11、比較例3に示すように、化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いた場合においても、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電を行わず満充電状態でガス抜きを行った電池と同等の特性を示すことが分かった。また、表3の実施例12、比較例3より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下の場合は、やや特性が劣るものの、比較的良好な特性を示すことが分かった。
【0082】
さらに、本発明のリチウムポリマー電池において、表4の実施例13〜17、比較例5に示すように、化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いた場合においても、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。また、表4の実施例18、比較例6より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下においても、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。
【0083】
(実施例19)
正極活物質にコバルト酸リチウムを用いた本実施例における正極は次のように作製した。LiCoO2を87質量%、導電補助材としてアセチレンブラックを5質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン8質量%を混合したものに、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して正極スラリーを作製した。それ以外は実施例1と同様に正極、負極を作製し電池を作製した。また、プレゲル溶液は、VC:0.5質量%、化2で示される有機化合物の質量を1.0質量%とした以外は実施例1と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0084】
(実施例20)
第一の充電工程の充電電圧を3.0Vとする以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0085】
(実施例21)
第一の充電工程の充電電圧を3.4Vとする以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0086】
(実施例22)
第一の充電工程の充電電圧を3.6Vとする以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0087】
(実施例23)
第一の充電工程の充電電圧を3.8Vとする以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0088】
(実施例24)
第一の充電工程の充電電圧を2.8Vとする以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0089】
(比較例7)
二段階充電を行わず、4.2Vまで初期充電を行った後に満充電状態でガス抜き工程を行った以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0090】
(比較例8)
二段階充電およびガス抜き工程を行わなかった以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0091】
実施例19〜24および比較例7、8についてのレート特性、容量維持率、電池体積変化率について表5に示した。


【0092】
【表5】

【0093】
本発明のリチウムポリマー電池において、表5の実施例19〜23、比較例7に示すように、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電を行わず満充電状態でガス抜きを行った電池と同等の特性を示すことが分かった。これにより、より安全な状態で工程を進めることが出来る。また、表5の実施例24、比較例7より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下の場合は、やや特性が劣るものの、比較的良好な特性を示すことが分かった。
【0094】
また、本発明のリチウムポリマー電池において、表5の実施例19〜23、比較例8に示すように、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。また、表5の実施例24、比較例8より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下においても、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。
【0095】
(実施例25)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0096】
(実施例26)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例20と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0097】
(実施例27)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例21と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0098】
(実施例28)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例22と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0099】
(実施例29)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例23と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0100】
(実施例30)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、実施例24と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0101】
(比較例9)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、比較例7と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0102】
(比較例10)
化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いる以外、比較例8と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0103】
実施例25〜30および比較例9、10についてのレート特性、容量維持率、電池体積変化率について表6に示した。
【0104】
【表6】

【0105】
(実施例31)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例19と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0106】
(実施例32)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例20と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0107】
(実施例33)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例21と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0108】
(実施例34)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例22と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0109】
(実施例35)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例23と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0110】
(実施例36)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、実施例24と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0111】
(比較例12)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、比較例7と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0112】
(比較例13)
化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いる以外、比較例8と同様に電池を作製し、評価を行った。
【0113】
実施例31〜36および比較例12、13についてのレート特性、容量維持率、電池体積変化率について表7に示した。
【0114】
【表7】

【0115】
本発明のリチウムポリマー電池において、表6の実施例25〜29、比較例10に示すように、化2で示される有機化合物の代わりに化3で示される有機化合物を用いた場合においても、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電を行わず満充電状態でガス抜きを行った電池と同等の特性を示すことが分かった。また、表6の実施例30、比較例10より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下の場合は、やや特性が劣るものの、比較的良好な特性を示すことが分かった。
【0116】
また、本発明のリチウムポリマー電池において、表6の実施例25〜29、比較例11に示すように、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。また、表6の実施例30、比較例11より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下においても、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。
【0117】
さらに、本発明のリチウムポリマー電池において、表7の実施例31〜35、比較例12に示すように、化2で示される有機化合物の代わりにメチレンメタンジスルホネートを用いた場合においても、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。また、表7の実施例36、比較例13より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下においても、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。
【0118】
また、本発明のリチウムポリマー電池において、表7の実施例31〜35、比較例13に示すように、第一段階の充電電圧を放電下限電圧以上に設定し、ガス抜き工程を行うことにより、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。また、表5の実施例36、比較例13より、第一段階の充電電圧が放電下限電圧以下においても、二段階充電およびガス抜きを行わない電池よりも特性が良好であることが分かった。
【符号の説明】
【0119】
1 正極
2 Al箔
3 正極活物質塗布部
4 正極活物質非塗布部
5 正極活物質片面塗布部
6 正極導電タブ
7 負極
8 Cu箔
9 負極活物質塗布部
10 負極活物質片面塗布部
11 負極活物質非塗布部
12 負極導電タブ
13 セパレータ
14 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも正極と、負極と、溶媒と架橋型高分子と重合開始剤と前記溶媒よりも低電圧で分解される化1で示される有機化合物、または環状ジスルホン酸エステルを含有するゲル電解質とを外装体に封入する工程および、前記化1で示される有機化合物または環状ジスルホン酸エステルが分解される電圧以上、満充電電圧未満まで充電する第一の充電工程および、前記第一の充電工程後に外装体を開封して発生ガスを除去する工程および、外装体を封口する工程および、満充電まで充電する第二の充電工程を有することを特徴とするリチウムポリマー電池の製造方法。
(但し、化1において、Zはハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、ポリフルオロアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数4〜20の環状炭化水素、またはXR5(ここでXは酸素原子、硫黄原子またはNR6を表し、R6は水素原子または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基を表し、R5は置換もしくは無置換の炭素数4〜20の環状炭化水素を表す)を表す。nは0〜4の整数を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子または、A1がNR7でA2がNR8(ここでR7とR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のポリフルオロアルキル基または置換もしくは無置換の炭素数4〜20の環状炭化水素を表す。また、R7とR8はお互いに結合して環構造を形成しても良い)を表す。Lはメチレン基又は単結合を表す。Mは、ホウ素又はリンを表す。B1およびB2はそれぞれ独立にカルボニル基、置換もしくは無置換のアルキレン基又はポリフルオロアルキレン基を表す。mは、1〜3の整数を表す(ただし、Mがホウ素のとき2m+n=4、Mがリンのとき2m+n=6である))
【化1】

【請求項2】
前記化1で示される有機化合物の最低空軌道エネルギー(LUMO)が、−1.5(eV)以上0(eV)以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項3】
前記環状ジスルホン酸エステルが、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートおよびプロピレンメタンジスルホネートから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項4】
前記第一の充電工程における到達電圧は、放電下限電圧以上とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項5】
前記ゲル電解質が溶媒と架橋型高分子と重合開始剤と0.1〜3.0質量%のビニレンカーボネートまたはその誘導体と0.1〜3.0質量%の化2もしくは化3で示される有機化合物、または、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、プロピレンメタンジスルホネートから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【化2】

【化3】

【請求項6】
前記正極が活物質としてマンガン酸リチウム又はコバルト酸リチウムを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項7】
前記正極がコバルト酸リチウムを含有し、前記ゲル電解質がビニレンカーボネートまたはその誘導体を含有する溶媒と架橋型高分子と重合開始剤と0.1〜2.0質量%の化2もしくは化3で示される有機化合物、または、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、プロピレンメタンジスルホネートから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項8】
前記架橋型高分子が、アクリル系高分子から構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項9】
前記重合開始剤が、過酸化物から構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒が少なくとも鎖状カーボネートおよび環状カーボネートを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項11】
前記負極が活物質として黒鉛を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。
【請求項12】
前記外装体がラミネート材からなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のリチウムポリマー電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−48113(P2013−48113A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257491(P2012−257491)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2007−315330(P2007−315330)の分割
【原出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【Fターム(参考)】