説明

リチウム二次電池用正極、その作製方法、およびリチウム二次電池

【課題】オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物は、リチウムイオンの吸蔵および放出が結晶のb軸方向に一次元的に起こりやすい。そこで、リチウム含有複合酸化物の単結晶のb軸が、正極集電体表面に垂直に配向した正極を提供する。
【解決手段】リチウム含有複合酸化物粒子に酸化グラフェンを混合し、加圧する。加圧することで直方体又は略直方体の粒子がすべりやすくなる。また、b軸方向の長さがa軸およびc軸方向の長さよりも短い直方体又は略直方体の粒子を用いることで、一方向の加圧によりb軸を加圧した方向に配向させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用の正極、およびその作製方法に関する。また、リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスマートフォンやポータブルゲーム等の携帯機器の普及、および環境問題への関心の高まりに伴い、携帯機器や自動車用電源等に使用できるリチウム二次電池の容量や出力の向上が求められている。
【0003】
リチウム二次電池をはじめとする二次電池の基本的な構成は、正極と負極との間に電解質を介在させたものである。正極及び負極としては、それぞれ、集電体と、集電体上に設けられた活物質と、を有する構成が代表的である。リチウム二次電池の場合は、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる材料を、正極及び負極の活物質として用いる。
【0004】
リチウム二次電池の容量や出力特性を向上させるため、様々な面からのアプローチが図られている。正極活物質の高容量化と出力性能の向上もその一つである。
【0005】
正極活物質の材料としては、リン酸鉄リチウム(LiFePO(0<x≦1))をはじめとしたオリビン型構造のリチウム含有複合酸化物が注目されている。リン酸鉄リチウムは、コバルト(Co)等と比較して非常に安価な鉄を用いていること、鉄(Fe(II)とFe(III))の酸化還元が起こる材料としては高電位(約3.5V)を示すこと、サイクル特性が良好であること、理論容量が約170mAh/gであり、エネルギー密度にして従来のコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)といった材料を上回ること、安全性が高いこと、等の利点がある。
【0006】
オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物であるリン酸鉄リチウムは、リチウムイオンの経路が、結晶格子のb軸方向に一次元的に存在することが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2009/117871号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S. Nishimura, G. Kobayashi, K. Ohoyama, R. Kanno, M. Yashima and A. Yamada、「Experimental visualization of lithium diffusion in LixFePO4」、ネイチャー マテリアルズ(Nature Materials)、2008年、7巻、pp.707−711。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
つまりオリビン型構造のリチウム含有複合酸化物は、b軸以外の方向にはリチウムイオンの経路がなく、吸蔵および放出が起こりにくい。そのため、リチウム含有複合酸化物粒子のb軸が正極集電体表面に垂直に配向していない場合、リチウムイオンの吸蔵および放出がしにくいことがあった。
【0010】
しかしながら、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物の結晶軸の配向を制御することは困難であった。たとえば、特許文献1の図1のように、固相法で作製したリチウム含有複合酸化物の粒子は通常、略球状となる。特許文献1では、略球状のリチウム含有複合酸化物の粒子に、導電助剤としてアセチレンブラック、バインダーとしてPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を用いて作製された二次電池が開示されている。この模式図を図4に示す。
【0011】
図4(B)の正極200は、正極集電体220と、正極活物質層210を有する。正極活物質層210は、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物粒子211と、導電助剤212と、図示しないがバインダーを有している。
【0012】
導電助剤212およびバインダーは、リチウム含有複合酸化物粒子211と正極集電体220間の電子の経路を確保するため、また正極集電体220上に正極活物質層210を接着するために用いられている。しかし、アセチレンブラックやPVdFといった材料は、炭素の微粒子または一次元的なポリマーであり、摩擦係数が高い。そのためオリビン型構造のリチウム含有複合酸化物粒子211、導電助剤212およびバインダーが支え合っている。また、リチウム含有複合酸化物粒子211は略球状で、a軸、b軸、c軸いずれの方向にも同程度の長さを持つ。そのため図4(A)のように、作製工程において正極集電体220に垂直または略垂直に正極活物質層210に加圧しても、リチウム含有複合酸化物粒子211の結晶軸の方向は変化しない。
【0013】
そこで本発明では、リチウムイオンの吸蔵および放出を容易にしてより容量の大きな正極とするために、リチウム含有複合酸化物の単結晶のb軸を正極集電体表面に垂直に配向させることに注目した。
【0014】
本発明は、リチウム含有複合酸化物の単結晶のb軸が、正極集電体表面に垂直に配向した正極を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、リチウム含有複合酸化物粒子に酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを混合することとした。さらに、リチウム含有複合酸化物粒子として、b軸方向の長さがa軸方向およびc軸方向の長さよりも短い直方体又は略直方体の単結晶を用いることとした。
【0016】
酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンはシート状であり、特に多層の場合は低摩擦性であることが知られている。そのため、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを、リチウム含有複合酸化物粒子に混合すると、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンは粒子を被覆する。するとこれらの混合物を加圧した際、直方体又は略直方体であるリチウム含有複合酸化物粒子が酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン上をすべりやすくなる。さらに、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを還元すると高い導電性を示すため、導電助剤としての機能を有する。また還元された酸化グラフェンまたは還元された多層酸化グラフェンはシート状でリチウム含有複合酸化物粒子を被覆しているため、バインダーとしての機能も有する。そのため、還元された酸化グラフェンまたは還元された多層酸化グラフェンを用いると導電助剤およびバインダーが不要、またはこれらの割合を低下させることができ、リチウム含有複合酸化物の割合を高めることができる。
【0017】
またリチウム含有複合酸化物粒子としてb軸方向の長さがa軸およびc軸方向の長さよりも短い、直方体又は略直方体の単結晶を用いるため、加圧によってb軸を配向させることができる。たとえば正極集電体表面に垂直または略垂直に加圧することにより、b軸を正極集電体表面に垂直に配向させることができる。
【0018】
本発明の一態様は、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物の直方体又は略直方体の粒子と、酸化グラフェンまたは2乃至100の多層酸化グラフェンと、の混合物を、正極集電体表面に垂直または略垂直に加圧することにより、正極活物質層を作製する工程を有する、リチウム二次電池用正極の作製方法である。
【0019】
また、本発明の一態様は、正極集電体と、正極集電体上の正極活物質層と、を有し、正極活物質層は、b軸が正極集電体表面に垂直に配向した、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物の直方体又は略直方体の単結晶と、還元された酸化グラフェンまたは2乃至100の還元された多層酸化グラフェンと、の混合物を含む、リチウム二次電池用正極である。
【0020】
また、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物は、リン酸鉄リチウムであってもよい。
【0021】
また、正極活物質層は、X線回折スペクトルにおけるオリビン型構造のリチウム含有複合酸化物の(020)面と(101)面の回折ピーク強度比(I(020)/I(101))が、4.5以上5.5以下であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様により、リチウム含有複合酸化物の単結晶のb軸が、正極集電体表面に垂直に配向した正極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一態様の正極を説明するための断面図。
【図2】本発明の一態様のリチウム二次電池を説明するための平面図および断面図。
【図3】リチウム二次電池の応用の形態を説明するための図。
【図4】正極の従来例を説明するための断面図。
【図5】本発明の一態様の正極に用いるリン酸鉄リチウム粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図6】本発明の一態様の正極のXRD測定結果。
【図7】参照例のXRD測定結果。
【図8】本発明の一態様の正極を用いたリチウム二次電池の充放電特性。
【図9】従来の正極を用いたリチウム二次電池の充放電特性。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書などにおいて開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
なお、図面などにおいて示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため開示する発明は、必ずしも、図面などに開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0026】
また、本明細書等において「配向する」とは、複数の単結晶の粒子同士の結晶軸の方向が揃っていることをいう。「複数の単結晶の粒子同士の結晶軸の方向が揃う」という場合、複数の粒子の全ての結晶軸が揃っている必要はない。ある結晶軸に揃っている複数の単結晶の粒子が、他の向きに揃っている複数の単結晶の粒子よりも多ければよい。また全ての粒子が単結晶である必要はない。配向はXRD(X‐ray diffraction、X線回折)法等で解析することができる。またXRD等のピーク強度比で配向度を解析することができる。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である正極100とその作製方法の一例について、図1を用いて説明する。
【0028】
本発明の一態様の正極100では、作製工程において正極活物質層110に酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを混合する。図1(B)に本発明の一態様である正極100を示す。正極100は、正極集電体120と、正極活物質層110を有する。正極活物質層110は、オリビン型リチウム含有複合酸化物粒子111と、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン112を有している。なおリチウム含有複合酸化物粒子111中の矢印113は結晶軸のb軸方向を示す。
【0029】
酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンは、アセチレンブラックやPVdFといった材料と比較して摩擦係数が低い。そのため図1(A)のように正極集電体120の表面に垂直または略垂直に正極活物質層110を加圧すると、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン112に接するリチウム含有複合酸化物粒子111がすべりやすい。
【0030】
さらに、本発明の一態様では、リチウム含有複合酸化物粒子111として、b軸方向の長さがa軸方向およびc軸方向の長さよりも短い、直方体又は略直方体の単結晶を用いることとした。このような粒子を酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンと混合して加圧することで、正極活物質層110の厚さ方向である正極集電体120の表面に垂直にb軸が配向しやすくなる。b軸が正極集電体120の表面に垂直に配向することで、リチウムイオンの吸蔵および放出が容易となる。
【0031】
なお、図1では正極100の作製方法を説明するため、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン112を図示しているが、後の工程で酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを還元してもよい。そのため還元された酸化グラフェンまたは還元された多層酸化グラフェンを有する正極100としてもよい。
【0032】
また、図1の正極活物質層110は、オリビン型リチウム含有複合酸化物粒子111と酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン112に加えて、導電助剤、バインダー等を含んでいてもよい。
【0033】
<リチウム含有複合酸化物粒子の作製>
以降に、本発明の一態様である正極100の作製方法について図1を用いて詳述する。まず、b軸方向の長さがa軸方向およびc軸方向の長さよりも短い、直方体又は略直方体の単結晶リチウム含有複合酸化物粒子111を作製する。
【0034】
なお本明細書において、直方体および略直方体は、厳密な意味での直方体である必要はなく、b軸方向の長さがa軸方向およびc軸方向の長さよりも短い形状であればよい。そのため例えば、直方体から角がとれた形状、表面に凹凸を有する形状であってもよい。また、扁平な多角柱状、板状等であってもよい。
【0035】
リチウム含有複合酸化物粒子111としては、LiMPO(0<x≦1)(M=Fe、Mn、Co、Ni)で示される材料を用いることができる。特にリン酸鉄リチウム(LiFePO(0<x≦1))は、安価で資源量の豊富な鉄を用いているため好ましい。本実施の形態ではリン酸鉄リチウムを用いることとする。
【0036】
上記のようなリチウム含有複合酸化物粒子111の直方体又は略直方体の単結晶粒を作製する方法としては、ゾルゲル法、水熱法等を用いることができる。特に水熱法は、合成時のpH、原料の濃度、反応時間、反応温度、添加物などの調整をすることで、生成される粒子の形状や粒子径を制御することが可能であるため好ましい。
【0037】
水熱法によりb軸方向の長さがa軸およびc軸方向の長さよりも短い、直方体又は略直方体のリン酸鉄リチウム単結晶を合成するには、たとえば、リン酸鉄リチウムの原料を水に0.3mol/L懸濁し、オートクレーブにて150℃、15時間、0.4MPa処理すればよい。
【0038】
<酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンの作製>
酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン112の作製方法は特に限定されないが、たとえばグラファイトを酸化処理し、酸化グラファイトとした後、溶液中で超音波により薄片化することで作製することができる。
【0039】
なお本明細書において、グラフェンとは、sp結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、2乃至100積み重なったグラフェンを多層グラフェンという。多層グラフェンには、30原子%以下の炭素以外の元素が含まれていてもよい。また15原子%以下の炭素と水素以外の元素が含まれていてもよい。また酸化されたグラフェンまたは多層グラフェンを、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンという。また、グラフェンの端の一部がカルボキシル基(−COOH)等で終端されたものと言うこともできる。
【0040】
また、グラフェンまたは多層グラフェンを、グラフェンネットと言ってもよい。グラファイトの一層が炭素の6員環の連続であるのに対して、グラフェンネットの一層を構成するのは、炭素の6員環に限られない。グラフェンネットの一層の中には、例えば8員環、9員環又はそれ以上の環員数の炭素環が存在することがある。
【0041】
<正極の作製>
次に、リチウム含有複合酸化物粒子111および酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン112を混合し、スラリーを作製する。
【0042】
該スラリーを正極集電体120に塗布して乾燥させ、正極集電体120上に正極活物質層110を形成する。なお、図1では正極集電体120の片面に正極活物質層110を形成しているが、両面に形成してもよい。
【0043】
さらに正極活物質層110を、正極集電体120の表面に垂直または略垂直に加圧する(図1(A))。加圧の方法は、正極活物質層110を略一方向に加圧できる方法であればよい。たとえばロールプレス機を用いて行うことができる。
【0044】
加圧により、正極活物質層110のリチウム含有複合酸化物粒子が酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン上をすべり、リチウム含有複合酸化物粒子をb軸が正極集電体120の表面に垂直になるよう配向させることができる(図1(B))。
【0045】
その後、正極活物質層110中の酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを還元し、グラフェンまたは多層グラフェンとする。還元は、たとえば焼成により行うことができる。
【0046】
上記の還元により、リチウム含有複合酸化物粒子111が還元された酸化グラフェンまたは還元された多層酸化グラフェンに覆われた構造となる。
【0047】
その後、正極集電体120および正極活物質層110を所望の形に加工し、正極100とする。このようにして、本発明の一態様である正極100を作製することができる。
【0048】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るリチウム二次電池151とその作製方法の一例について、図2を用いて説明する。
【0049】
本発明の一態様に係るリチウム二次電池151は、少なくとも、正極、負極、電解液を有する。当該正極は、実施の形態1に記載の正極100である。
【0050】
電解液は、塩を含む非水溶液又は塩を含む水溶液である。当該塩は、キャリアイオンであるリチウムイオンを含む塩であればよい。
【0051】
図2(A)に示すリチウム二次電池151は、外装部材153の内部に蓄電セル155を有する。また、蓄電セル155に接続する端子部157、159を有する。外装部材153は、ラミネートフィルム、高分子フィルム、金属フィルム、金属ケース、プラスチックケース等を用いることができる。
【0052】
図2(B)は、図2(A)に示すリチウム二次電池151のX−Y線における断面を示す図である。図2(B)に示すように、蓄電セル155は、負極163と、正極165と、負極163及び正極165の間に設けられるセパレータ167と、外装部材153中を満たす電解液169とを有する。
【0053】
正極165は、実施の形態1に記載の正極100である。正極集電体175は、端子部157と接続される。また負極集電体171は、端子部159と接続される。また端子部157および端子部159は、それぞれ一部が外装部材153の外側に導出されている。
【0054】
負極163は、負極集電体171及び負極活物質層173を有する。負極活物質層173は、負極集電体171の一方又は両方の面に形成される。また、負極活物質層173にはバインダー及び導電助剤が含まれていてもよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、リチウム二次電池151の外部形態として、密封された薄型リチウム二次電池を示しているが、これに限定されない。リチウム二次電池151の外部形態として、ボタン型リチウム二次電池、円筒型リチウム二次電池、角型リチウム二次電池など様々な形状を用いることができる。また、本実施の形態では、正極、負極、及びセパレータが積層された構造を示したが、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0056】
負極集電体171には、チタン、アルミ又はステンレスなどの導電材料を箔状、板状又は網状などの形状したものを用いる。また、基板上に成膜することにより設けられた導電層を剥離して負極集電体171として用いることもできる。
【0057】
負極活物質層173としては、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵および放出することのできる材料を用いる。たとえば、リチウム、アルミニウム、炭素系材料、スズ、酸化スズ、シリコン、酸化シリコン、炭化シリコン、シリコン合金、またはゲルマニウムなどを用いることができる。又は、リチウム、アルミニウム、炭素系材料、スズ、酸化スズ、シリコン、酸化シリコン、炭化シリコン、シリコン合金、及びゲルマニウムから選択される一以上を含む化合物でもよい。なお、リチウムイオンの吸蔵および放出が可能な炭素系材料としては、粉末状若しくは繊維状の黒鉛等を用いることができる。また、シリコン、シリコン合金、ゲルマニウム、リチウム、アルミニウム、及びスズの方が、炭素系材料に比べてリチウムイオンを吸蔵できる容量が大きい。それゆえ、負極活物質層173に用いる材料の量を低減することができ、コストの節減、及びリチウム二次電池151の小型化が可能になる。
【0058】
また、負極活物質層173は、上記列挙した材料を印刷法、インクジェット法、CVD等により、凹凸状に形成したものでもよい。または、上記列挙した材料を塗布法、スパッタリング法、真空蒸着法などで膜状に設けた後、当該膜状の材料を部分的に除去して、表面を凹凸状に形成したものでもよい。
【0059】
なお、負極集電体171を用いず、上記列挙した負極活物質層173に適用できる材料単体を負極として用いてもよい。
【0060】
また、負極活物質層173がグラフェン、多層グラフェン、還元された酸化グラフェンまたは還元された多層酸化グラフェンを含んでいてもよい。たとえば、負極活物質を包むようにグラフェン、多層グラフェン、還元された酸化グラフェンまたは還元された多層酸化グラフェンが設けられていてもよい。このようにすることで、リチウムイオンの吸蔵および放出が負極活物質層173に与える影響を抑制することができる。当該影響とは、負極活物質層173が膨張又は収縮することで、負極活物質層173が微粉化又は剥離すること等である。また多層グラフェンはリチウムイオンを吸蔵および放出することができるため、負極がリチウムイオンを吸蔵できる容量を大きくすることができる。
【0061】
電解液169には、リチウムイオンを有する塩を用いる。例えば、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSONなどのリチウム塩を用いることができる。
【0062】
また、電解液169は、塩を含む非水溶液とすることが好ましい。つまり、電解液169の溶媒は、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランなどが挙げられ、これらの一又は複数を用いることができる。さらに、非プロトン性有機溶媒として、一のイオン液体又は複数のイオン液体を用いてもよい。イオン液体は、難燃性及び難揮発性であることから、リチウム二次電池151の内部温度が上昇した際にリチウム二次電池151の破裂又は発火などを抑制でき、安全性を高めることが可能となる。
【0063】
また、電解液169として、塩を含み、且つゲル化された高分子材料を用いることで、漏液性を含めた安全性が高まり、リチウム二次電池151の薄型化及び軽量化が可能となる。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド又はフッ素系ポリマーなどがある。
【0064】
さらに、電解液169としては、LiPOなどの固体電解質を用いることができる。
【0065】
また、リチウム二次電池151はセパレータを有することが好ましい。セパレータ167として、絶縁性の多孔体を用いることができる。例えば、紙、ガラス繊維、セラミックス、またはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。ただし、電解液169に溶解しない材料を選ぶ必要がある。
【0066】
リチウム二次電池は、メモリー効果が小さく、エネルギー密度が高く、充放電容量が大きい。また、出力電圧が高い。そのため、従来の二次電池と比較して、同じ容量でも小型化及び軽量化が可能である。また、充放電の繰り返しによる劣化が少なく、長期間の使用が可能である。本発明の一態様に係る正極を用いることで、さらに大容量のリチウム二次電池とすることができる。
【0067】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態又は実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0068】
(実施の形態3)
本発明の一態様に係るリチウム二次電池は、電力により駆動する様々な電気機器の電源として用いることができる。
【0069】
本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いた電気機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、タブレット型端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫や透析装置等の医療用電気機器などが挙げられる。また、リチウム二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
【0070】
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うためのリチウム二次電池(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができるリチウム二次電池(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うためのリチウム二次電池(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることができる。
【0071】
図3に、上記電気機器の具体的な構成を示す。図3において、表示装置1000は、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1004を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装置1000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体1001、表示部1002、スピーカー部1003、リチウム二次電池1004等を有する。本発明の一態様に係るリチウム二次電池1004は、筐体1001の内部に設けられている。表示装置1000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、リチウム二次電池1004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1004を無停電電源として用いることで、表示装置1000の利用が可能となる。
【0072】
表示部1002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0073】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0074】
図3において、据え付け型の照明装置1100は、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1103を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置1100は、筐体1101、光源1102、リチウム二次電池1103等を有する。図3では、リチウム二次電池1103が、筐体1101及び光源1102が据え付けられた天井1104の内部に設けられている場合を例示しているが、リチウム二次電池1103は、筐体1101の内部に設けられていても良い。照明装置1100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、リチウム二次電池1103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1103を無停電電源として用いることで、照明装置1100の利用が可能となる。
【0075】
なお、図3では天井1104に設けられた据え付け型の照明装置1100を例示しているが、本発明の一態様に係るリチウム二次電池は、天井1104以外、例えば側壁1105、床1106、窓1107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0076】
また、光源1102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0077】
図3において、室内機1200及び室外機1204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1203を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機1200は、筐体1201、送風口1202、リチウム二次電池1203等を有する。図3では、リチウム二次電池1203が、室内機1200に設けられている場合を例示しているが、リチウム二次電池1203は室外機1204に設けられていても良い。或いは、室内機1200と室外機1204の両方に、リチウム二次電池1203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、リチウム二次電池1203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機1200と室外機1204の両方にリチウム二次電池1203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0078】
なお、図3では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることもできる。
【0079】
図3において、電気冷凍冷蔵庫1300は、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1304を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫1300は、筐体1301、冷蔵室用扉1302、冷凍室用扉1303、リチウム二次電池1304等を有する。図3では、リチウム二次電池1304が、筐体1301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫1300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、リチウム二次電池1304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫1300の利用が可能となる。
【0080】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0081】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、リチウム二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫1300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉1302、冷凍室用扉1303の開閉が行われない夜間において、リチウム二次電池1304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉1302、冷凍室用扉1303の開閉が行われる昼間において、リチウム二次電池1304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0082】
図3において、タブレット型端末1400は、本発明の一態様に係るリチウム二次電池1403を用いた電気機器の一例である。具体的に、タブレット型端末1400は、筐体1401、筐体1402、リチウム二次電池1403等を有する。筐体1401および筐体1402はそれぞれタッチパネル機能を有する表示部を有し、指等の接触により表示部の表示内容を操作することができる。またタブレット型端末1400は、筐体1401および筐体1402の表示部を内側にして折りたたむことができ、小型化させるとともに表示部を保護することが可能である。本発明の一態様に係るリチウム二次電池1403を用いることで、タブレット型端末1400の小型化および長時間のモバイル使用が可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態又は実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0084】
本実施例では、本発明の一態様であるリチウム二次電池用正極を実際に作製し、正極活物質層の配向と電池特性の評価を行った結果について、図5乃至図9を用いて説明する。
【0085】
<リチウム含有複合酸化物の作製>
本実施例ではオリビン型構造のリチウム含有複合酸化物として、水熱法で合成したリン酸鉄リチウムを用いた。
【0086】
リン酸鉄リチウムの原料として、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)、塩化鉄(II)四水和物(FeCl・4HO)およびリン酸二水素アンモニウム(NHPO)を用いた。
【0087】
LiOH・HO:FeCl・4HO:NHPO=2:1:1[mol数比]となるよう秤量した。本実施例では、LiOH・HOを0.06mol、FeCl・4HOを0.03mol、NHPOを0.03mol秤量した。
【0088】
以降は窒素雰囲気下で実験を行った。まず、上記の原料をそれぞれ、脱酸素した水30mlに溶解させた。脱酸素は、水をあらかじめ窒素でバブリングすることにより行った。
【0089】
次に、リン酸二水素アンモニウム溶液をスターラーで攪拌しながら、水酸化リチウム溶液を徐々に加え、リン酸リチウム(LiPO)が沈殿した溶液を調整した。
【0090】
次に、塩化鉄(II)の溶液をスターラーで攪拌しながら、リン酸リチウムを懸濁させた溶液を徐々に加え、リン酸鉄リチウムの前駆体を含む懸濁液を調整した。その後、脱酸素した水を加えて全量を100mlとした。
【0091】
次に、上記の前駆体を含む懸濁液を、フッ素樹脂内筒を有する水熱合成用反応容器(ミニリアクターMS型 MS200−C(オーエムラボテック社製))に入れ、攪拌しながら約150℃、約0.4MPaで、15時間、水熱反応させた。
【0092】
反応後、得られたリン酸鉄リチウムを濾過で回収し、純水で10回洗浄した。洗浄後、減圧下で50℃、12時間以上乾燥させた。
【0093】
図5に得られたリン酸鉄リチウムの走査型顕微鏡写真を示す。観察は、加速電圧10.0kV、倍率は100,000倍で行った。図5のように、扁平な直方体、もしくは扁平な多角柱状の粒子が多数観察された。このリン酸鉄リチウムを正極に用いた。
【0094】
<酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンの作製>
まず、グラファイトを酸化処理し、酸化グラファイトとした。酸化グラファイトを溶液中で超音波により酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンに薄片化した。これを乾燥させ、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンの粉末とした。
【0095】
<正極の作製>
リン酸鉄リチウムと酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを、97.5:2.5[重量比]の割合で混合し粉砕した。本実施例ではリン酸鉄リチウム0.1380g、酸化グラフェンを0.0072g用いた。粉砕では溶媒にエタノールを使用し、ボールミルを用い、1mmのボールで400rpm、4時間行った。その後エタノールを蒸発させて乾燥させた。
【0096】
乾燥させたリン酸鉄リチウムと、酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンの混合物に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を混合してスラリーとした。本実施例では、NMPを0.478g混合した。
【0097】
正極集電体にはアルミ箔を用いた。スラリーをアルミ正極集電体上に100μm程度の膜厚で塗工し、真空乾燥機を用いて120℃で乾燥させ、正極活物質層とした。乾燥後、アルミ正極集電体と正極活物質層を、ロールプレス機で加圧した。
【0098】
その後、焼成を行い、正極活物質層中の酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェンを還元し、還元された酸化グラフェンまたは還元された多層酸化グラフェンとした。焼成はガラスチューブオーブンを用い、ダイヤフラムポンプによる減圧下で200℃で1時間行った後、300℃に昇温して10時間行った。
【0099】
その後、アルミ正極集電体と正極活物質層を直径12mmの円形に打ち抜き、正極とした。
【0100】
<正極のXRD解析>
図6に上記のように作製した正極のXRD測定結果を示す。また、図7に参照例として、固相法により合成したリン酸鉄リチウム粒子のXRD測定結果を示す。横軸は回折角(2θ)、縦軸は回折強度である。
【0101】
リン酸鉄リチウムのXRDスペクトルにおいてb軸に垂直な(020)面のピークは回折角29.7°付近、b軸に垂直でない(101)面のピークは回折角20.8°付近、b軸に垂直でない(301)面のピークは回折角32.2°付近に現れることが知られている。(Anna S Andersson et al.,Lithium extraction/insertion in LiFePO: an X−ray diffraction and Mossbauer spectroscopy study, Solid State Ionics, volume 130, pp.41−52 (2000))
【0102】
図6の正極は、b軸に垂直な(020)面とb軸に垂直でない(101)面の回折ピーク強度比(I(020)/I(101))が、4.60であった。またb軸に垂直な(020)面とb軸に垂直でない(301)面の回折ピーク強度比(I(020)/I(301))が、4.01であった。
【0103】
図7のリン酸鉄リチウム粒子は、b軸に垂直な(020)面とb軸に垂直でない(101)面の回折ピーク強度比(I(020)/I(101))が、0.93であった。またb軸に垂直な(020)面とb軸に垂直でない(301)面の回折ピーク強度比(I(020)/I(301))が、2.25であった。
【0104】
図6および図7から、本発明の一態様の正極は、参照用のリン酸鉄リチウム粒子と比較して、b軸に垂直な(020)面のピークが相対的に高く、(101)面や(301)面をはじめとするb軸に垂直でない面のピークが相対的に低くなっていることが明らかとなった。すなわち、本発明の一態様の正極では、正極活物質層中のリン酸鉄リチウム単結晶の粒子のb軸は、正極集電体表面に垂直に配向していることが明らかとなった。
【0105】
<比較例の正極の作製>
従来例の正極として、還元された酸化グラフェンに代えて、導電助剤としてアセチレンブラック、バインダーとしてPVdFを用いた正極を作製した。混合の割合は、リン酸鉄リチウム:アセチレンブラック:PVdF=85:8:7とした。上記の他は本発明の一態様の正極と同様に作製した。
【0106】
<電池特性>
上記のb軸が正極集電体表面に垂直に配向した正極について、電池特性の評価を行った。
【0107】
電池特性の評価のために、作用極として上記のように作製した正極を用い、対極としてLi金属を用いてセルを作製した。セパレータにはポリプロピレン(PP)、電解液には1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)をエチレンカーボネート(EC)溶液とジエチルカーボネート(DEC)の混合液(体積比1:1)に溶かしたものを用いた。
【0108】
図8に本発明の一態様の正極、図9に従来例の正極の充放電特性を示す。縦軸に電圧を、横軸に容量を示す。
【0109】
図8および図9から、本発明の一態様の正極は、従来例と比較して、充電容量および放電容量が向上することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0110】
100 正極
110 正極活物質層
111 リチウム含有複合酸化物粒子
112 酸化グラフェンまたは多層酸化グラフェン
113 矢印
120 正極集電体
151 リチウム二次電池
153 外装部材
155 蓄電セル
157 端子部
159 端子部
163 負極
165 正極
167 セパレータ
169 電解液
171 負極集電体
173 負極活物質層
175 正極集電体
200 正極
210 正極活物質層
211 リチウム含有複合酸化物粒子
212 導電助剤
220 正極集電体
1000 表示装置
1001 筐体
1002 表示部
1003 スピーカー部
1004 リチウム二次電池
1100 照明装置
1101 筐体
1102 光源
1103 リチウム二次電池
1104 天井
1105 側壁
1106 床
1107 窓
1200 室内機
1201 筐体
1202 送風口
1203 リチウム二次電池
1204 室外機
1300 電気冷凍冷蔵庫
1301 筐体
1302 冷蔵室用扉
1303 冷凍室用扉
1304 リチウム二次電池
1400 タブレット型端末
1401 筐体
1402 筐体
1403 リチウム二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物の直方体又は略直方体の粒子と、
酸化グラフェンまたは2乃至100の多層酸化グラフェンと、の混合物を、
正極集電体表面に垂直または略垂直に加圧することにより、正極活物質層を作製する工程を有する、
リチウム二次電池用正極の作製方法。
【請求項2】
前記オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物は、リン酸鉄リチウムである、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極の作製方法。
【請求項3】
正極集電体と、前記正極集電体上の正極活物質層と、を有し、
前記正極活物質層は、
b軸が前記正極集電体表面に垂直に配向した、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物の直方体又は略直方体の粒子と、
還元された酸化グラフェンまたは2乃至100の還元された多層酸化グラフェンと、を含む、
リチウム二次電池用正極。
【請求項4】
前記オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物は、リン酸鉄リチウムである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項5】
前記正極活物質層は、
X線回折測定における前記オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物の(020)面と(101)面の回折ピーク強度比(I(020)/I(101))が、4.5以上5.5以下である、
請求項3または請求項4に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項6】
前記オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物は、
b軸方向の長さがa軸およびc軸方向の長さよりも短い直方体又は略直方体の粒子である、
請求項3乃至5に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6に記載の正極と、
負極と、
電解液と、を有する、
リチウム二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−69677(P2013−69677A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−192846(P2012−192846)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】