説明

リチウム電池の溶融処理方法

【課題】特に危険なリチウム電池を分別することにより、許容範囲で管理しながら安全に廃棄処理することができるリチウム電池の溶融処理方法を提供すること。
【解決手段】リチウム電池を製鋼用電気炉に挿入して溶融処理するリチウム電池の溶融処理方法において、ERリチウム電池を他の種類のリチウム電池と分別し、該分別したERリチウム電池を所定の重量ずつ製鋼用電気炉に挿入して溶融処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄リチウム電池の溶融処理方法に関し、特に危険なリチウム電池を分別することにより、許容範囲で管理しながら安全に廃棄処理することができるリチウム電池の溶融処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池類の廃棄については、以前は一般的なマンガン電池がほとんどであったが、近年のCO2削減、周辺機器のモバイル化などの要因により新エネルギーの開発が急速に進み、電池業界においても様々な素材を用いた電池が開発されている。
なかでも、金属リチウムを負極に使用したリチウム電池は、起電力が大きく長寿命のため、その開発・生産量も飛躍的に増え続けており、それに伴いリチウム電池の廃棄量も増大している。
【0003】
ところで、金属リチウムは、空気や水と急激に反応し水素ガスを発生させることから、発火や爆発を起こす。
この金属リチウムを使用したリチウム電池も、短絡等による発熱で内部組織が破壊され発火・爆発に至る可能性も十分あり、保管・運搬・処理には特別な注意を払い、取り扱わなければならない。
【0004】
乾電池や乾電池類は、製鋼用電気炉に挿入し溶融することにより廃棄処理するようにしていたが、この一般の乾電池廃棄物の中にリチウム電池の混入が多数見受けられるようになり、電炉処理の際に、炎の吹き上げや破裂したリチウム電池の電炉前作業場への飛び出しが頻発している。
このため、製鋼用電気炉への挿入を1回につき35kg以下としたが、この状況でも吹き上げや飛び出しが続いている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のリチウム電池の溶融処理方法が有する問題点に鑑み、特に危険なリチウム電池を分別することにより、許容範囲で管理しながら安全に廃棄処理することができるリチウム電池の溶融処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のリチウム電池の溶融処理方法は、リチウム電池を製鋼用電気炉に挿入して溶融処理するリチウム電池の溶融処理方法において、ERリチウム電池を他の種類のリチウム電池と分別し、該分別したERリチウム電池を所定の重量ずつ製鋼用電気炉に挿入して溶融処理することを特徴とする。
【0007】
この場合において、ERリチウム電池を10kg以下を1単位として製鋼用電気炉に挿入することができる。
【発明の効果】
【0008】
リチウム電池は、正極の材料の違いでER・CR・BRなどの種類があり、このうちERリチウム電池は正極に液体の塩化チオニルを使用しており、この液体の塩化チオニルは、空気に触れると白煙を発生するとともに、水と反応し有毒な亜硫酸ガスと塩化水素になるため、製鋼用電気炉の溶融処理において非常に危険なものと判明した。
本発明のリチウム電池の溶融処理方法によれば、リチウム電池を製鋼用電気炉に挿入して溶融処理するリチウム電池の溶融処理方法において、ERリチウム電池を他の種類のリチウム電池と分別し、該分別したERリチウム電池を所定の重量ずつ製鋼用電気炉に挿入して溶融処理することから、前記危険なERリチウム電池を分別し、許容範囲で管理しながら安全に廃棄処理することができる。
【0009】
この場合、ERリチウム電池を10kg以下を1単位として製鋼用電気炉に挿入することにより、許容範囲で安全かつ効率的にERリチウム電池を廃棄処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のリチウム電池の溶融処理方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図2に、本発明のリチウム電池の溶融処理方法の一実施例を示す。
このリチウム電池の溶融処理方法は、リチウム電池を製鋼用電気炉に挿入して溶融処理するに際し、予め、ERリチウム電池を他の種類のリチウム電池と分別し、該分別したERリチウム電池を所定の重量ずつ製鋼用電気炉に挿入して溶融処理するものである。
【0012】
リチウム電池には、リチウム一次電池(円筒形、コイン・ボタン型)、リチウム二次電池(充電式)、リチウムイオン電池などがある。
これらのリチウム電池において、正極の材料の違いでER・CR・BRなどの種類があり、このうちERリチウム電池は正極に液体の塩化チオニルを使用している。
この液体の塩化チオニルは、空気に触れると白煙を発生するとともに、水と反応し有毒な亜硫酸ガスと塩化水素になるため、製鋼用電気炉の溶融処理において非常に危険である。
【0013】
ER・CR・BRの判別は、通常、ラベルの表示に従うが、廃棄物として回収されるリチウム電池にはラベルのないものが混入している場合がある。
このような場合に、な種類の不明なリチウム電池は、ERリチウム電池といっしょにして、他の種類のリチウム電池と分別する。
ERリチウム電池及び種類の不明なリチウム電池は、所定の重量、具体的には、10kg以下、より好ましくは、6kg以下(本実施例においては、約6kg)を1単位として1つの金属缶に収容し、この金属缶を1単位ずつスクラップ等の原材料と共に製鋼用電気炉に挿入するようにする。
また、ERリチウム電池ではない種類の電池と事前確認できたものに関しては、本実施例においては、35kg以下を1単位として1つの金属缶に収容し、この金属缶を1単位ずつスクラップ等の原材料と共に製鋼用電気炉に挿入するようにする。
【0014】
かくして、本実施例のリチウム電池の溶融処理方法によれば、リチウム電池を製鋼用電気炉に挿入して溶融処理するに際し、ERリチウム電池及び種類の不明なリチウム電池を他の種類のリチウム電池と分別し、該分別したERリチウム電池及び種類の不明なリチウム電池を所定の重量ずつ製鋼用電気炉に挿入して溶融処理することから、前記した危険なERリチウム電池を分別し、許容範囲で管理しながら安全に廃棄処理することができる。
この場合、ERリチウム電池及び種類が不明なリチウム電池を10kg以下(本実施例においては、約6kg)を1単位として製鋼用電気炉に挿入することにより、許容範囲で安全かつ効率的にERリチウム電池を廃棄処理することができる。
【0015】
以上、本発明のリチウム電池の溶融処理方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のリチウム電池の溶融処理方法は、特に危険なリチウム電池を分別することにより、許容範囲で管理しながら安全に廃棄処理するという特性を有していることから、ERリチウム電池が含まれるリチウム電池の溶融処理の用途に広く好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池を製鋼用電気炉に挿入して溶融処理するリチウム電池の溶融処理方法において、ERリチウム電池を他の種類のリチウム電池と分別し、該分別したERリチウム電池を所定の重量ずつ製鋼用電気炉に挿入して溶融処理することを特徴とするリチウム電池の溶融処理方法。
【請求項2】
ERリチウム電池を10kg以下を1単位として製鋼用電気炉に挿入することを特徴とする請求項1記載のリチウム電池の溶融処理方法。

【公開番号】特開2009−11968(P2009−11968A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178563(P2007−178563)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(599049657)ニッポウ興産株式会社 (5)
【Fターム(参考)】