説明

リチウム2次電池用負極活物質およびそれを含むリチウム2次電池

【課題】本発明は、優れたサイクル寿命特性を示すリチウム2次電池用負極活物質およびそれを含むリチウム2次電池を提供する。
【解決手段】前記負極活物質は、気孔を含む結晶質炭素物質、および前記気孔内部、結晶質炭素物質の表面またはこれら全てに分散されている非晶質性伝導性ナノ粒子を含む炭素−ナノ粒子複合体を含み、前記伝導性ナノ粒子は、X線回折分析による最も高いピークを示す結晶面の半価幅が0.35°以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、リチウム2次電池用負極活物質およびそれを含むリチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム2次電池は、有機電解液を用いて既存のアルカリ水溶液を用いた電池よりも2倍以上の高い放電電圧を示すことによって高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム2次電池の正極活物質としては、LiCoO、LiMn、LiNi1−xCo(0<x<1)などのようにリチウムがインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属からなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質としては、リチウムの挿入および脱離が可能な人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が適用されてきた。最近は安定性およびより高容量の要求に応じてSiのような非炭素系負極活物質に対する研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施態様は、サイクル寿命維持率に優れたリチウム2次電池用負極活物質を提供することにその目的がある。
【0006】
本発明の他の一実施態様は、前記負極活物質を含むリチウム2次電池を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様によれば、気孔を含む結晶質炭素物質;および前記気孔内部、結晶質炭素物質の表面またはこれら全てに分散されている非晶質性伝導性ナノ粒子を含む炭素−ナノ粒子複合体を含み、前記伝導性ナノ粒子は、X線回折分析による最も高いピークを示す結晶面の半価幅が0.35°以上であるリチウム2次電池用負極活物質が提供される。
【0008】
前記結晶質炭素物質は、天然黒鉛、人造黒鉛またはこれらの混合物を含んでも良い。
【0009】
前記結晶質炭素物質は、約15%〜約50%の気孔度を有しても良い。
【0010】
前記伝導性ナノ粒子は、シリコン(Si)、シリコン−含有合金(Si−X)(前記Xは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、錫(Sn)、錫−含有合金(Sn−X')(前記X'は、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)、鉛(Pb)、インジウム(In)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、銀(Ag)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用しても良い。前記XおよびX'は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、の(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、硫黄(S)、セレニウム(Se)、テルル(Te)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されても良い。
【0011】
前記伝導性ナノ粒子の平均粒径は、約50nm〜約200nmであっても良く、工業的に製造可能であり、電池の寿命改善効果の側面から見れば、約60nm〜約180nmが好ましい。
【0012】
本発明の一実施態様において、前記伝導性ナノ粒子の含量は、前記結晶質炭素物質100重量部に対して約5〜約25重量部で含まれることが好ましい。
【0013】
本発明の他の一実施態様による負極活物質は、前記炭素−ナノ粒子複合体を囲む非晶質炭素をさらに含んでも良い。
【0014】
前記非晶質炭素は炭素−ナノ粒子複合体の少なくとも一つの気孔内に存在したり、結晶質炭素物質の表面と伝導性ナノ粒子の間に存在しても良い。
【0015】
前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスまたはこれらの混合物を含んでも良い。
【0016】
前記非晶質炭素は、前記結晶質炭素物質100重量部に対して5〜25重量部で含まれることが好ましい。
【0017】
本発明の他の一実施態様によれば、伝導性粒子を50〜150μmの平均粒径を有するビーズを用いて24時間以上ミリングして伝導性ナノ粒子を製造し、前記伝導性ナノ粒子と気孔を含む結晶質炭素物質とを混合して複合化する工程を含む負極活物質の製造方法を提供する。
【0018】
前記ビーズは、金属酸化物ビーズ、金属窒化物ビーズ、金属炭化物ビーズまたはこれらの組み合わせより選択されても良く、またジルコニアビーズ、アルミナビーズ、シリコンナイトライドビーズ、シリコンカーバイドビーズ、シリカビーズまたはこれらの組み合わせより選択されても良い。
【0019】
本発明の他の一実施態様によれば、前記負極活物質を含む負極;正極活物質を含む正極;および非水電解質を含むリチウム2次電池が提供される。
【0020】
前記負極は、前記負極活物質と結晶質炭素物質との混合物を含んでも良い。
【0021】
前記非水電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含み、前記非水性有機溶媒は、ビニレンカーボネート、下記の化学式2のエチレンカーボネート系化合物またはこれらの組み合わせより選択される溶媒を含んでも良い。
【0022】
【化1】

【0023】
(前記化学式2で、RおよびRは、互いに同一または相異し、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)および炭素数1〜5のフルオロアルキル基からなる群より選択され、前記RとRのうちの少なくとも一つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)および炭素数1〜5のフルオロアルキル基からなる群より選択されるが、但し、RとRが全て水素ではない。)
【0024】
前記ビニレンカーボネート、下記の化学式2のエチレンカーボネート系化合物またはこれらの組み合わせより選択される溶媒は、非水性有機溶媒総量に対して約15〜約30体積%で含まれても良い。
【0025】
その他本発明の実施態様の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0026】
本発明による前記リチウム2次電池用負極活物質は、優れたサイクル寿命特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施態様による負極活物質を概略的に示した図面である。
【図2】本発明の他の一実施態様による負極活物質を概略的に示した図面である。
【図3】本発明の一実施態様によるリチウム2次電池の構造を概略的に示した図面である。
【図4】本発明の実施例1による負極活物質の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施態様について詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであり、これにより本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇により定義される。
【0029】
本発明の一実施態様による負極活物質は、結晶質炭素物質の気孔内部、結晶質炭素物質の表面またはこれら全てに分散されている伝導性ナノ粒子を含む結晶質炭素物質−伝導性ナノ粒子の複合体である。本明細書における結晶質炭素物質は、少なくとも2つ以上の炭素粒子の塊(agglomerate)を意味する。本明細書における前記伝導性ナノ粒子は、Liと電気化学的に合金を作ることができる物質を全て含む。また、Liと電気化学的に反応する電位は、物質に応じて変わり、低い電位でLiイオンと電気化学的に反応する物質が好ましい。
【0030】
前記負極活物質の構造を図1と図2に概略的に示したが、本発明の一実施態様による負極活物質の構造がこれに限定されるのではない。
【0031】
図1を参照すれば、本発明の一実施態様による負極活物質100は、気孔103を含む結晶質炭素物質105;および前記気孔103内部に分散されている伝導性ナノ粒子107を含む炭素−ナノ粒子複合体を含み、前記伝導性ナノ粒子107は、X線回折分析による(111)面の半価幅が0.35°以上である。
【0032】
図2は、伝導性ナノ粒子107が結晶質炭素物質105の気孔103の内部には存在せずに表面にのみ存在する負極活物質200の概略図である。
【0033】
前記気孔103を含む結晶質炭素物質105は、充放電時に伝導性ナノ粒子107が体積膨張が発生する時、これを吸収することができる緩衝役割を果たすことができ、負極活物質100、200の電気伝導性を向上させることができる。
【0034】
結晶質炭素物質105は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーションまたはデインターカレーションを行うことができる天然黒鉛、人造黒鉛またはこれらの混合物を含んでも良い。
【0035】
結晶質炭素物質105が黒鉛である場合、通常球形で形成されるが、麟片状(鱗形)黒鉛または塊状黒鉛の微粉を凝集させて製造する。この場合、前記黒鉛微粉の凝集は凝集装置を通じて行われるが、黒鉛微粉を所定の高さで落下させて黒鉛微粉の端部が壁面に衝突し、屈曲しながら黒鉛微粉が凝集するようにできる。
【0036】
結晶質炭素物質105の微粉は、約1μm〜約5μmの粒子サイズを有するものを使用する。粒子サイズが約1μmよりも小さければ、気孔103の気孔度が約15%よりも小さく形成されるため、十分な膨張緩衝効果を得ることができず、粒子サイズが約5μmよりも大きければ、気孔103の気孔度が約50%よりも大きく形成されるため、結晶質炭素物質105の十分な強度を得ることができない。
【0037】
この時、結晶質炭素物質105は完全な球形である必要はなく、円錘形、円筒形などで形成されても関係ない。
【0038】
一方、結晶質炭素物質105の凝集処理は、紛砕機を利用して麟片状黒鉛を気流により装置の壁面に衝突させる方法で麟片状黒鉛の端部を畳んだり曲げながら行われ得る。
【0039】
前記結晶質炭素物質105の微粉の凝集工程中に前記結晶質炭素物質の内部には気孔103が形成され得る。また、このような気孔103は発泡剤(blow agent)を用いて形成しても良い。前記気孔103は、結晶質炭素物質の内部に形成される閉気孔103aおよび/または開気孔103bを含んでも良い。前記気孔103は、3次元ネットワーク形態を成しても良い。このような結晶質炭素物質105の内部に存在する気孔103は、充放電時に前記Siナノ粒子のような伝導性ナノ粒子107の体積膨張が発生時、体積膨張に対する緩衝効果がさらに増加させることができる。
【0040】
前記気孔103は、前記結晶質炭素物質の体積対比約15%〜約50%の気孔度を有するように形成されても良い。前記気孔度が前記範囲にある場合、十分な機械的強度を維持しながら体積膨張の緩衝効果を得ることができる。
【0041】
前記気孔103の内部または結晶質炭素物質105の表面に伝導性ナノ粒子107が存在しても良い。
【0042】
前記伝導性ナノ粒子107の(111)面でのCuKα線を用いたX線回折分析による最も高いピークを示す結晶面の半価幅は、0.35°以上である場合、伝導性ナノ粒子107が非晶質性を有することを示し、ピークが存在しないことも含む。例えば、Siナノ粒子の場合、(111)面で最も高いピークを示し、(111)面の半価幅が0.35°以上で示される。前記半価幅が0.35°未満である場合には、サイクル寿命を向上させ難い。
【0043】
前記伝導性ナノ粒子107の平均粒径は、約50nm〜約200nmであっても良く、好ましくは約60nm〜約180nmであっても良い。伝導性ナノ粒子107の平均粒径が前記範囲に含まれる場合、充放電時に発生する体積膨張を抑制することができ、充放電時に粒子破砕による伝導性経路(conductive path)の断絶を防ぐことができる。
【0044】
数μm単位の伝導性粒子は、電池で充放電を反復的に進行すれば、粒子破壊による伝導性経路の断絶が発生し、サイクルによる容量減少が深刻に現れる。しかしながら、本発明の一実施態様でのように、伝導性粒子をナノ粒子化すると同時に非晶質化すれば、充放電時に発生し得る伝導性経路の断絶を防ぐことができ、これによって電池の寿命特性を向上させることができる。
【0045】
前記伝導性ナノ粒子107としては、シリコン(Si)、シリコン−含有合金(Si−X)(前記Xは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、錫(Sn)、錫−含有合金(Sn−X')(前記X'は、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)、鉛(Pb)、インジウム(In)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、銀(Ag)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用しても良い。前記元素XおよびX'は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、硫黄(S)、セレニウム(Se)、テルル(Te)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されても良い。
【0046】
本発明の一実施態様において、前記伝導性ナノ粒子107は前記結晶質炭素物質105の100重量部に対して約5〜約25重量部で含まれることが好ましい。前記伝導性ナノ粒子107の含量が前記範囲にあれば、重量当り容量特性を結晶質炭素物質に比べて約1.5〜約3倍増加させることができる。
【0047】
前記負極活物質100は、前記伝導性ナノ粒子107と結晶質炭素物質105との複合体を少なくとも一部分囲む非晶質炭素109をさらに含んでも良い。非晶質炭素109は伝導性ナノ粒子107が配置される気孔103の内部空間を満たすように形成される。
【0048】
前記非晶質炭素109は、ソフトカーボン(soft carbon、低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスまたはこれらの混合物であっても良い。
【0049】
本発明の一実施態様に含まれる負極活物質100に含まれる非晶質炭素109は、複数の伝導性ナノ粒子107の間、そして伝導性ナノ粒子107と結晶質炭素物質105の気孔表面とが離隔されるように形成されても良い。つまり、非晶質炭素109は複数の伝導性ナノ粒子107が結晶質炭素物質105の気孔表面と直接的に接触しないように複数の伝導性ナノ粒子107を実質的に囲んでも良い。前記「実質的に囲む」ということは、大部分の伝導性ナノ粒子107が気孔壁と接触しないように囲むことを意味する。したがって、充放電の反復による伝導性ナノ粒子107の体積膨張が顕著に抑制され得る。
【0050】
前記伝導性ナノ粒子107は、前記結晶質炭素物質105の外部表面にさらに配置され、非晶質炭素109が前記伝導性ナノ粒子107と結晶質炭素物質105の上に存在しても良く、例えば伝導性ナノ粒子107と結晶質炭素物質105をカバーしても良い。
【0051】
前記非晶質炭素109は、結晶質炭素物質105の100重量部に対して5〜25重量部で存在しても良い。非晶質炭素109の含量が前記範囲にある場合、複数の伝導性ナノ粒子107と気孔103の内部表面とが互いに十分に離隔されるようにできる。
【0052】
前記負極活物質100、200の平均粒径は、約5〜約40μmで形成される。このように製造された負極活物質は結晶質炭素物質と混合して使用されても良い。このような結晶質炭素物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛またはこれらの組み合わせを混合しても良い。前記負極活物質100、200に使用された結晶質炭素物質が天然黒鉛である場合、混合される結晶質炭素物質は人造黒鉛であることが好ましい。
【0053】
本発明の一実施態様による負極活物質は、次の工程で製造されても良い。
【0054】
まず、伝導性粒子を約50μm〜約150μmの平均粒径を有するビーズ(beads)を利用して24時間以上ミリングして非晶質伝導性ナノ粒子を製造する。
【0055】
前記ビーズとしては、金属酸化物ビーズ、金属窒化物ビーズまたは金属炭化物ビーズを使用しても良く、具体的な例としては、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、シリコンナイトライドビーズ、シリコンカーバイドビーズ、シリカビーズなどを使用しても良いが、これに限定されない。前記ビーズのビッカース硬度(vickers hardness、荷重(Load):500g)が約8〜約25GPaであることが好ましく、約10〜23GPaであることがより好ましい。前記ミリング工程は、約24時間〜約400時間実施することが好ましい。このようにビーズでミリング処理された伝導性ナノ粒子の平均粒径は、約50nm〜約200nmであっても良く、好ましくは約60nm〜約180nmであっても良く、CuKα線を用いたX線回折分析による最も高いピークを示す結晶面の半価幅が0.35°以上で非晶質性を示す。
【0056】
得られた伝導性ナノ粒子と結晶質炭素物質を溶媒中で混合する。この時、溶媒としては、非水性溶媒が使用されても良く、具体的な例としては、アルコール、トルエン、ベンゼンまたはこれらの組み合わせを使用しても良い。
【0057】
前記伝導性ナノ粒子は、毛細管現象により結晶質炭素物質の気孔内部に分散されて存在しても良い。また、前記結晶質炭素物質の気孔内部に入らずに結晶質炭素物質の表面に存在しても良い。前記得られた生成物に非晶質炭素の前駆体を溶媒中で添加し、この混合物を熱処理する。前記非晶質炭素の前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用しても良い。
【0058】
本発明の一実施態様による製造工程において、結晶質炭素物質、伝導性ナノ粒子および非晶質炭素の前駆体の混合比率は、最終生成物で結晶質炭素物質の含量は約70重量%〜約90重量%となり、伝導性ナノ粒子が約5〜約15重量%となり、非晶質炭素の含量が負極活物質全体重量に対して約5重量%〜約15重量%範囲となるように調節すれば良く、特別に限定する必要はない。
【0059】
前記熱処理は、約600℃〜約1200℃で実施しても良い。この熱処理により前記非晶質炭素の前駆体が炭化して非晶質炭素に転換されながら、前記結晶質炭素物質と、この結晶質炭素物質の表面に存在する伝導性ナノ粒子を全て囲みながらコーティング層を形成する。
【0060】
本発明の一実施態様による負極活物質は、リチウム2次電池に有用に使用され得る。
【0061】
本発明の他の一実施態様によるリチウム2次電池は、前記負極活物質を含む負極、正極活物質を含む正極および非水電解質を含む。
【0062】
前記負極は、集電体および前記集電体の上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質を含む。前記負極活物質層で負極活物質の含量は、負極活物質全体重量に対して約95〜約99重量%であっても良い。
【0063】
前記負極活物質層はまたバインダーを含み、選択的に導電材をさらに含んでも良い。前記負極活物質層でバインダーの含量は、負極活物質全体重量に対して約1〜約5重量%であっても良い。また、導電材をさらに含む場合には、負極活物質を約90〜約98重量%、バインダーを約1〜約5重量%、そして導電材を約1〜約5重量%使用しても良い。
【0064】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用しても良い。
【0065】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
前記水溶性バインダーとしては、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレンと炭素数が2〜8のオレフィン共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含んでも良い。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用しても良い。前記アルカリ金属としては、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはリチウム(Li)を使用しても良い。このような増粘剤使用含量は、バインダー100重量部に対して約0.1〜約3重量部であっても良い。
【0068】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用しても良い。
【0069】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用しても良い。
【0070】
前記正極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用しても良い。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせより選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを使用しても良い。より具体的な例としては、下記の化学式のうちのいずれか一つで表される化合物を使用しても良い。Li1−b(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5);Li1−b2−c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);Li1−b2−c(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);Li2−b4−c(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiNi1−b−cCoα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiNi1−b−cCo2−αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1−b−cCo2−α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1−b−cMnα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiNi1−b−cMn2−αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1−b−cMn2−α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);LiNiCoMn(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1);LiNiG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiCoG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn1−b(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn1−gPO(0.90≦a≦1.8、0≦g≦0.5);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiZO;LiNiVO;Li(3−f)(PO(0≦f≦2);Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);またはLiFePO
【0071】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Xは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Dは、O、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Eは、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Tは、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Qは、Ti、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Zは、Cr、V、Fe、Sc、Yおよびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0072】
もちろん、この化合物表面にコーティング層を有するものを使用しても良く、または前記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して使用しても良い。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含んでも良い。これらコーティング層を形成する化合物は、非晶質または結晶質であっても良い。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用しても良い。コーティング層形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法)などでコーティングすることができれば如何なるコーティング方法を用いても関係なく、これについては当該分野に従事する者によく理解され得る内容であるので、詳しい説明は省略する。
【0073】
前記正極活物質層で前記正極活物質の含量は、正極活物質層全体重量に対して約90〜約98重量%であっても良い。
【0074】
前記正極活物質層はまた、バインダーおよび導電材を含む。この時、前記バインダーおよび導電材の含量は、正極活物質層全体重量に対してそれぞれ約1〜約5重量%であっても良い。
【0075】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用しても良いが、これに限定されない。
【0076】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用しても良い。
【0077】
前記電流集電体としては、アルミニウム(Al)を使用しても良いが、これに限定されない。
【0078】
前記負極と正極は、活物質、導電材およびバインダーを溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としては、N−メチルピロリドンなどを使用しても良いが、これに限定されない。また、負極に水溶性バインダーを使用する場合、負極活物質組成物の製造時に使用される溶媒として水を使用しても良い。
【0079】
本発明の非水系電解質2次電池において、非水電解質は非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0080】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。
【0081】
非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非陽子性溶媒を使用しても良い。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用されても良く、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、メチルプロピオン酸塩、エチルプロピオン酸塩、γ−ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用されても良い。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用されても良く、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用されても良い。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用されても良く、前記非陽子性溶媒としては、R−CN(Rは、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合方向環またはエーテル結合を含んでも良い)などのニトリル類ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類スルホラン(sulfolane)類などが使用されても良い。
【0082】
前記非水性有機溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用されても良く、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には幅広く理解され得る。
【0083】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用することが好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1〜約1:9の体積比で混合して使用することが電解液の性能が優秀に示され得る。
【0084】
本発明の非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでも良い。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、約1:1〜約30:1の体積比で混合されても良い。
【0085】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記の化学式1の芳香族炭化水素系化合物が使用されても良い。
【0086】
【化2】

【0087】
(前記化学式1で、R〜Rは、互いに同一または相異し、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。)
【0088】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,2,3−トリヨードベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3−ジフルオロトルエン、2,4−ジフルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、2,3,4−トリフルオロトルエン、2,3,5−トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,3,4−トリクロロトルエン、2,3,5−トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3−ジヨードトルエン、2,4−ジヨードトルエン、2,5−ジヨードトルエン、2,3,4−トリヨードトルエン、2,3,5−トリヨードトルエン、キシレンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0089】
前記非水電解質は、電池寿命を向上させるために、ビニレンカーボネート、下記の化学式2のエチレンカーボネート系化合物またはこれらの組み合わせより選択される溶媒を更に含んでも良い。
【0090】
【化3】

【0091】
(前記化学式2で、RおよびRは、互いに同一または相異し、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)および炭素数1〜5のフルオロアルキル基からなる群より選択され、前記RとRのうちの少なくとも一つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)および炭素数1〜5のフルオロアルキル基からなる群より選択されるが、但し、RとRが全て水素ではない。)
【0092】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0093】
前記寿命特性を向上させるために使用される溶媒は、非水電解質溶媒総量に対して約15〜約30体積%の量で使用することが好ましく、この場合、寿命特性をさらに向上させることができる。
【0094】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム2次電池の作動を可能とし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiCSO、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは、自然数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C(リチウムビス(オキザレート)ボレート(lithium bis(oxalato)borate;LiBOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は、0.1〜2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な電導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0095】
リチウム2次電池の種類に応じて正極と負極との間にセパレータが存在しても良い。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜が使用されても良く、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜が使用され得ることはもちろんである。
【0096】
図3に本発明のリチウム2次電池の代表的な構造を概略的に示した。図3に示したように、前記リチウム2次電池1は、正極3、負極2および前記正極3と負極2との間に存在するセパレータ4に含浸された電解液を含む電池容器5と、前記電池容器5を封入する封入部材6とを含む。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の好適な実施例および比較例を記載する。しかしながら、下記の実施例は本発明の好適な一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0098】
〔実施例1〕
Si粒子を粒径が100μmであるジルコニアビーズを使用して150時間粉砕して平均粒径(D50)が120nmであるSiナノ粒子を製造した。前記Siナノ粒子に対してCuKα線を用いたX線回折分析した結果、(111)面の半価幅が0.50°であった。前記X線回折分析は、Bruker社のX線回折装備(model D8 advance)を使用してCu−Ka波長(1.5418Å)のX線を用いてスキャン速度0.2°/minで測定した。また、X−ray tubeの電圧および電流は、それぞれ40KVおよび40mAであり、発散スリット(divergence slit)、反散乱スリット(anti−scatter slit)、受光スリット(receiving slit)の条件は、それぞれ0.5°、0.5°、そして0.2mmとして測定した。
【0099】
平均粒径3μmの麟片状天然黒鉛微細粒子をロータリーミル(rotary mill)でミリングして平均粒径15μmの球形化天然黒鉛を含む結晶質炭素物質を製造した。このミリング工程で前記微細粒子が互いに凝集されながら、製造された結晶質炭素物質内部に閉気孔および開気孔形態の気孔が形成された。この時、凝集過程で結晶質炭素物質の内部に形成される気孔度は15%で形成した。
【0100】
前記Siナノ粒子をアルコールに添加してSiナノ粒子分散液を製造した後、前記Siナノ粒子分散液に前記結晶質炭素物質を浸漬させた。Siナノ粒子と結晶質炭素物質は15:100の重量比で存在した。
【0101】
次に、得られた生成物と石油系ピッチを混合し、900℃で3時間熱処理して負極活物質を製造した。この熱処理工程により石油ピッチが炭化して非晶質炭素に転換されながら、結晶質炭素物質内部の閉気孔および開気孔に挿入され、結晶質炭素物質表面にシェルで形成された。非晶質炭素の含量は、負極活物質総量に対して10重量%で形成されるようにした。前記負極活物質、スチレン−ブタジエンラバー(SBR)バインダーおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)増粘剤97:2:1重量比で水で混合して負極活物質スラリーを製造した。この負極活物質スラリーをCu箔電流集電体に塗布した後、圧延して負極を製造した。
【0102】
LiCoO、ポリフッ化ビニリデンバインダーおよびカーボンブラックを96:3:3の重量比で混合して正極活物質スラリーを製造し、これをAl箔電流集電体に塗布した後、圧延して正極を製造した。
【0103】
前記負極、正極および非水電解質を使用して通常の工程で角型電池を製造した。前記非水電解質としては、1.5MのLiPFが溶解されたエチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(5:25:35:35体積比)を使用した。
【0104】
〔実施例2〕
Si粒子を粒径が100μmであるジルコニアビーズを使用して80時間粉砕して平均粒径(D50)が140nmであるSiナノ粒子を製造した。前記Siナノ粒子に対して実施例1と同様な方法でX線回折分析した結果、(111)面の半価幅が0.45°であった。前記製造されたSiナノ粒子を使用して実施例1と同様な方法で角型電池を製造した。
【0105】
〔実施例3〕
Si粒子を粒径が100μmであるジルコニアビーズを使用して60時間粉砕して平均粒径(D50)が160nmであるSiナノ粒子を製造した。前記Siナノ粒子に対して実施例1と同様な方法でX線回折分析した結果、(111)面の半価幅が0.40°であった。前記製造されたSiナノ粒子を使用して実施例1と同様な方法で角型電池を製造した。
【0106】
〔実施例4〕
Si粒子を粒径が100μmであるジルコニアビーズを使用して40時間粉砕して平均粒径(D50)が180nmであるSiナノ粒子を製造した。前記Siナノ粒子に対して実施例1と同様な方法でX線回折分析した結果、(111)面の半価幅が0.35°であった。前記製造されたSiナノ粒子を使用して実施例1と同様な方法で角型電池を製造した。
【0107】
〔実施例5〕
実施例1の負極活物質に人造黒鉛を1:4の重量比で混合して負極活物質スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様な方法で角型電池を製造した。
【0108】
〔比較例1〕
Si粒子を粒径が250μmであるジルコニアビーズを使用して40時間粉砕して平均粒径(D50)が160nmであるSiナノ粒子を製造した。前記Siナノ粒子に対して実施例1と同様な方法でX線回折分析した結果、(111)面の半価幅が0.30°であった。
【0109】
前記製造されたSiナノ粒子を使用して実施例1と同様な方法で角型電池を製造した。
【0110】
〔比較例2〕
Si粒子を粒径が500μmであるジルコニアビーズを使用して40時間粉砕して平均粒径(D50)が160nmであるSiナノ粒子を製造した。前記Siナノ粒子に対して実施例1と同様な方法でX線回折分析した結果、(111)面の半価幅が0.28°であった。
【0111】
前記製造されたSiナノ粒子を使用して実施例1と同様な方法で角型電池を製造した。図4は、本発明の実施例1による負極活物質の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。図4でSiナノ粒子が黒鉛の気孔内部または表面に存在することが分かる。
【0112】
実施例1〜4および比較例1および2による角型電池を1Cで充電し、充電終止電圧を4.35V、放電終止電圧を2.5Vとして1C放電して充放電試験を行った。その結果を以下の表1に示した。
【0113】
【表1】

【0114】
表1に示したように、実施例1〜4の電池が比較例1および2に比べて優れた寿命特性を示すことが分かる。
【0115】
非水電解質の溶媒組成による電池の寿命特性を評価するために、下記表2のように電解液溶媒組成を変化させて角型電池を製造した。また、比較のために比較例2で使用された0.28°の半価幅を有するSiナノ粒子を含む負極活物質を使用し、FECを除いた電解質を使用した比較例3による電池も製作した。このように製造された実施例1、実施例6〜11および比較例3の電池を1Cで充電し、充電終止電圧を4.35V、放電終止電圧を2.5Vとして1C放電して電池寿命維持率を評価した。その結果を表2に記載する。
【0116】
【表2】

【0117】
前記表2から分かるように、FECの含量が15体積%〜30体積%の範囲で含まれる実施例1および実施例6〜8の電池の寿命特性が、前記範囲を外れるようにFECを含む実施例9および10並びにFECを含まない実施例11および比較例3の電池に比べて優れていることが分かる。
【0118】
以上で、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0119】
100、200 負極活物質
103 気孔
103a 閉気孔
103b 開気孔
105 結晶質炭素物質
107 伝導性ナノ粒子
109 非晶質炭素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気孔を含む結晶質炭素物質;および
前記気孔内部、結晶質炭素物質の表面またはこれら全てに分散されている非晶質性伝導性ナノ粒子を含む炭素−ナノ粒子複合体を含み、
前記伝導性ナノ粒子は、X線回折分析による最も高いピークを示す結晶面の半価幅が0.35°以上である、リチウム2次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記結晶質炭素物質は、天然黒鉛、人造黒鉛またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記気孔は、前記結晶質炭素物質の体積対比15%〜50%の気孔度を有するように形成されたものである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記伝導性ナノ粒子は、シリコン(Si)、シリコン−含有合金(Si−X)(前記Xは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、錫(Sn)、錫−含有合金(Sn−X')(前記X'は、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)、鉛(Pb)、インジウム(In)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、銀(Ag)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記伝導性ナノ粒子は、X線回折分析による(111)面の半価幅が0.35°以上のシリコンナノ粒子である、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記伝導性ナノ粒子の平均粒径は、50nm〜200nmの範囲にあるものである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項7】
前記伝導性ナノ粒子の含量は、結晶質炭素物質100重量部に対して5〜25重量部である、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項8】
前記負極活物質は、前記炭素−ナノ粒子複合体を囲む非晶質炭素をさらに含むものである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項9】
前記非晶質炭素は炭素−ナノ粒子複合体の少なくとも一つの気孔内に存在する、請求項8に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項10】
前記非晶質炭素は結晶質炭素物質の表面と伝導性ナノ粒子の間に存在する、請求項9に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項11】
前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスまたはこれらの混合物を含むものである、請求項8に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項12】
前記非晶質炭素は、結晶質炭素物質100重量部に対して5〜15重量部である、請求項8に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項13】
前記結晶質炭素物質は、1〜15μmの粒子サイズを有するものである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項14】
前記負極活物質は、5〜40μmの粒子サイズを有するものである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項15】
伝導性粒子を50〜150μmの平均粒径を有するビーズを用いて24時間以上ミリングして伝導性ナノ粒子を製造し、
前記伝導性ナノ粒子と気孔を含む結晶質炭素物質とを混合して複合化する工程を含む、負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記ビーズは、金属窒化物ビーズ、金属炭化物ビーズまたはこれらの組み合わせより選択される、請求項15に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記ビーズは、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、シリコンカーバイドビーズ、シリカビーズまたはこれらの組み合わせより選択されるものである、請求項15に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜請求項14のうちのいずれか一項による負極活物質を含む負極;
正極活物質を含む正極;および
非水電解質;
を含む、リチウム2次電池。
【請求項19】
前記負極は、前記負極活物質と結晶質炭素物質との混合物を含む、請求項18に記載のリチウム2次電池。
【請求項20】
前記非水電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含み、
前記非水性有機溶媒は、ビニレンカーボネート、下記の化学式2のエチレンカーボネート系化合物またはこれらの組み合わせより選択される溶媒を含む、請求項18に記載のリチウム2次電池。
【化1】

(前記化学式2で、RおよびRは、互いに同一または相異し、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)および炭素数1〜5のフルオロアルキル基からなる群より選択され、前記RとRのうちの少なくとも一つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)および炭素数1〜5のフルオロアルキル基からなる群より選択されるが、但し、RとRが全て水素ではない。)
【請求項21】
前記ビニレンカーボネート、前記化学式2のエチレンカーボネート系化合物またはこれらの組み合わせより選択される溶媒は、非水性有機溶媒総量に対して15〜30体積%で含まれる、請求項20に記載のリチウム2次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243571(P2011−243571A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108161(P2011−108161)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】