説明

リニアアクチュエータ

【課題】作動精度の高いリニアアクチュエータを得ると共に、その小型化を促進する。
【解決手段】ロータ3の両端にステータユニット2A、2Bが各々配設され、ロータ3の直径を略ステータアセンブリ2の径まで拡大することができ、モータトルクを低下させることなくリニアアクチュエータ1の小型化を図ることができる。ピン11及び溝18dがステータユニット2Aと一体で構成することから、ステータユニット2Aと出力軸4との中心が確実に一致する。よって、出力軸4の直線運動方向に対する出力軸の傾きが生じることを回避し、作動精度を高めることができる。しかも、ステータユニット2Aとロータ3とが有底筒状のケース5に収容された状態で、モータとしての主要構成を全て具備するモータ部が構成されることから、出力軸4が組み込まれていない状態で、ロータ3の回転特性を評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータによりロータの回転運動を出力軸の軸方向の直線運動に変換して出力する、リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモータは制御性の良さから各種AV(オーディオ・ビジュアル)機器や各種OA(オフィス・オートメーション)機器等に用いられているが、特にPM(permanent magnet)型ステッピングモータは低価格なことから、近年、その構造を部分的に用いて、ロータの回転運動を出力軸の軸方向の直線運動に変換したアクチュエータとしても利用されている。このアクチュエータは、例えば、車輌用ヘッドライトの光軸調整装置やガス流量制御弁等に使用されている。このようなアクチュエータの一例として、図6に示される構造のリニアアクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このリニアアクチュエータは、図6に断面図で示されるように、ステッピングモータを応用した構造を有しており、ステータアセンブリ60と、ステータアセンブリ60に対して回転運動するロータ70と、ロータ70の回転運動が直線運動に変換されて直線運動する出力軸80とを備えている。
ステータアセンブリ60の内部には、巻線61が巻回されたボビン62を挟んで対向するステータヨーク63a、63bにより、1つのステータ63が構成されている。又、巻線64が巻回されたボビン65を挟んで対向するステータヨーク66a、66bにより、もう1つのステータ66が構成されている。そして、各ステータヨーク63a、63bには、複数の櫛歯状の極歯が形成され、交互に極歯が噛み合わされている。同様に、各ステータヨーク66a、66bにも、複数の櫛歯状の極歯が形成され、交互に極歯が噛み合わされている。そして、2つのステータ63、66が背中合わせに密着することで、2相のステータアセンブリ60が構成されている。
又、ロータ70は、表面に多極着磁されたロータマグネット71と、樹脂製のロータ芯材72と、雌ねじ73とで構成され、ステータアセンブリ60の内側に回転可能に収納されている。そして、ロータマグネット71の外周には、所定のギャップを介して、2つのステータ63、66の極歯が対向配置されている。
【0004】
ステータアセンブリ60の後端60b側には、エンドプレート90が配置されている。エンドプレート90は、ステータアセンブリ60のヨーク支持部材67を、樹脂68によって射出成形する際に、ヨーク支持部材67と同時に成形されるものである。又、エンドプレート90のロータ70側の面には、凹部91が形成され、凹部91には、玉軸受92が取付けられている。玉軸受92は、ロータ70が回転可能となるように、ロータ芯材72を軸支している。そして、ロータ70の中心孔に、出力軸80の後端80b側が挿入され、出力軸80の後端80b側に形成された雄ねじ81が、ロータ70に取付けられた雌ねじ73と螺合している。一方、出力軸80の先端80a側には、ストップピン82が、軸方向と直交する方向に突設されている。
【0005】
更に、ステータアセンブリ60の先端60a側には、ステータアセンブリ60に固定された円筒状のフロント部100が設けられている。フロント部100は、ステータアセンブリ60のヨーク支持部材67を樹脂68によって射出成形する際に、ヨーク支持部材67と同時に成形されるものである。そして、フロント部100の内周面には、玉軸受101が嵌入され、ロータ70が回転可能となるように、ロータ芯材72は玉軸受101によっても軸支されている。
【0006】
又、ステータアセンブリ60の先端60a側には、ハウジング110が取付けられており、ハウジング110の中心孔111から、出力軸80の先端80aが突出している。そして、ハウジング110の内周面には、出力軸80の長手方向に沿う溝112が形成され、溝112にストップピン82が収納されている。従って、ロータ70が回転すると、溝112によってストップピン82の回転が規制されるため、出力軸80が溝112をガイドとして軸方向に直線運動する。
なお、以上の構造において、玉軸受101は出力軸80をロータに通さない状態で、フロント部100に取付けることができることから、出力軸80の未装着状態で、ロータ70の回転特性を評価することが可能である。
【0007】
【特許文献1】特開2004−260950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、図6に示される従来のアクチュエータにおいては、ハウジング110の中心孔111において、出力軸80が移動自在に支持される構成のため、ハウジング110の中心孔111の中心位置を、ステータアセンブリ60の中心に一致させる必要がある。この際、互いに別部品であるハウジング110と、ステータアセンブリ60とが、ステータアセンブリ60の先端60a側で固定される構成のため、ハウジング110の中心孔111の中心位置を、ステータアセンブリ60の中心に一致させることが難しく、ハウジング110の中心と、ステータアセンブリ60の中心が一致しない場合、出力軸80が本来の直線運動方向に対して傾いた状態で、直線運動してしまうという問題が生じる。
【0009】
又、アクチュエータの小型化の要求に対して、従来のアクチュエータ構造では、ステータアセンブリ60の外径が小径化すると、ロータ70(ロータマグネット71)の外径も小径となり、ロータマグネット71の外径が小径化するとモータのトルクが著しく低下してしまうことから、アクチュエータの小型化が難しいという問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出力軸の傾きが生じることなく、作動精度の高いリニアアクチュエータを得ると共に、その小型化を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のリニアアクチュエータは、ロータの回転運動が直線運動に変換されて軸方向に駆動される出力軸を備えるリニアアクチュエータであって、ステータユニットと前記ロータとが有底筒状のケースに収容された状態で、モータとしての主要構成を全て具備するモータ部が構成されることで、出力軸がない状態でロータの回転特性を評価することができ、リニアアクチュエータの作動精度を安定させるものである。
又、前記ステータユニットの貫通孔の壁面には、軸方向へと延びて少なくともその一端が前記貫通孔の端部に開放された溝が形成され、前記出力軸の前記溝と重合する位置には、軸方向と直交するようにピンが突設され、該ピンが、一方のステータユニットの貫通孔の溝に収容された状態で、前記出力軸が前記ロータの中心部に組み込まれる。従って、ステータユニットと出力軸との中心が確実に一致し、出力軸の直線運動方向に対する出力軸の傾きが生じることを回避し、作動精度の高いリニアアクチュエータを構成することができる。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。なお、各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。よって、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0011】
(1)ロータの回転運動が直線運動に変換されて軸方向に駆動される出力軸を備えるリニアアクチュエータであって、
前記ロータは、外周にロータマグネットが配されると共に、中心部には該ロータの回転運動を前記出力軸の直線運動に変換する変換部を備え、
前記ロータの両端には、コイルを巻回したボビンの収容部と、該ボビンの収容部の中央を軸方向に貫通する貫通孔と、前記収容部と軸方向に隣接する位置に円筒状に配置された複数の極歯によって形成される円筒状の空間とを含み、該円筒状の空間に前記ロータが回転自在に収容される一対のステータユニットが配置され、
前記ステータユニットと前記ロータとが有底筒状のケースに収容された状態で、モータとしての主要構成を全て具備するモータ部が構成され、
なおかつ、前記ステータユニットの貫通孔の壁面には、軸方向へと延びて少なくともその一端が前記貫通孔の端部に開放された溝が形成され、前記出力軸の前記溝と重合する位置には、軸方向と直交するようにピンが突設され、
該ピンが、一方のステータユニットの貫通孔の溝に収容された状態で、前記出力軸が前記ロータの中心部に組み込まれてなるリニアアクチュエータ(請求項1)。
【0012】
本項に記載のリニアアクチュエータは、ロータの両端にステータユニットが各々配設された構成のため、ロータ径を略ステータ径まで拡大することができ、その結果として、モータトルクを低下させることなくアクチュエータの小型化を図ることができる。又、ピン及びステータユニットの貫通孔の壁面に形成された溝は、出力軸の回転止めとして機能するものであるが、かかるピン及び溝がステータユニットの内部(貫通孔)と一体的に構成することから、ステータユニットと出力軸との中心が確実に一致する。よって、出力軸の直線運動方向に対する出力軸の傾きが生じることを回避し、作動精度の高いリニアアクチュエータを構成することができる。
しかも、ステータユニットとロータとが有底筒状のケースに収容された状態で、モータとしての主要構成を全て具備するモータ部が構成されることから、出力軸が組み込まれていない状態でロータの回転特性を評価することができ、リニアアクチュエータの作動精度を安定させることができる。
【0013】
(2)前記出力軸が前記ロータの中心部に組み込まれ、前記ピンが前記ステータユニットの貫通孔に形成された溝に収容された状態で、前記貫通孔の先端に装着され、前記出力軸を軸方向に摺動案内する円筒状の軸受を備えることを特徴とするリニアアクチュエータ(請求項2)。
本項に記載のリニアアクチュエータは、出力軸がロータの中心部に組み込まれ、ピンが、ステータユニットの貫通孔に形成された溝に収容された状態で、円筒状の軸受によってステータユニットの貫通孔に形成された溝の先端が閉じられる。そして、溝からのピンの脱落が阻止されると共に、出力軸が円筒状の軸受によって確実に摺動案内される。
【0014】
(3)前記有底筒状のケースの開放端が、前記出力軸の貫通孔を備える蓋によって塞がれてなるリニアアクチュエータ(請求項3)。
本項に記載のリニアアクチュエータは、有底筒状のケースの開放端が、出力軸の貫通孔を備える蓋によって塞がれることで、出力軸の直線運動が阻害されること無く、有底筒状のケース内部にステータユニットとロータとが密閉される。
【0015】
(4)前記ステータユニットは内ヨークと、外ヨークと、前記内ヨーク及び前記外ヨークの間に収容されたコイルとを含み、前記内ヨークは、円板部と、該円板部の外周縁から軸方向に伸長する複数の極歯と、前記円板部の中央に形成された円筒突起部とを備え、前記外ヨークは、円板部と、該円板部の外周縁から軸方向に伸長する複数の極歯と、前記円板部の中央に形成された円筒突起部とを備え、前記内ヨークの極歯と前記外ヨークの極歯が交互に噛み合うことにより、前記円筒状の空間が形成され、かつ、前記内ヨークの円筒突起部及び前記外ヨークの円筒突起部が、互いに機械的及び磁気的に結合されてなるリニアアクチュエータ(請求項4)。
【0016】
本項に記載のリニアアクチュエータは、内ヨークと、外ヨークとが組み合わされて構成されるものであることから、ステータユニットへのコイルの装着が容易となる。又、内ヨークの極歯と外ヨークの極歯が交互に噛み合うことにより、ロータを回転自在に収容する円筒状の空間が形成され、コイルが発生する磁束が極歯を介してロータに作用し、ロータが回転駆動される。しかも、内ヨークと外ヨークとが、各々の円筒突起部によって、互いに機械的及び磁気的に結合されることにより、内ヨークと外ヨークを結合する別部品が不要となり、部品点数の増加を回避することができる。
【0017】
(5)前記(4)項において、前記内ヨークの極歯と前記外ヨークの極歯とが樹脂で覆われ、かつ、該樹脂によって前記貫通孔を備えるボス部が形成されてなるリニアアクチュエータ(請求項5)。
本項に記載のリニアアクチュエータは、内ヨークの極歯と外ヨークの極歯とが樹脂で覆われ、かつ、該樹脂によって前記貫通孔を備えるボス部が形成されてなるものであり、樹脂モールドによって、内ヨークの極歯と外ヨークの極歯とボス部とを一体成形することで、必要な形状を容易に得ることが可能となる。
【0018】
(6)前記ロータユニットの両端に配設された一対のステータユニットが、同一構造であるリニアアクチュエータ(請求項6)。
本項に記載のリニアアクチュエータは、一対のステータユニットは同一構造となっていることから、部品の共通化が図られ、部品点数の増加を回避することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明はこのように構成したので、出力軸の傾きが生じることなく、作動精度の高いリニアアクチュエータを得ると共に、その小型化を促進することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係るの断面図、図2は図1の平面図であり、図3は図1におけるステータの平面図、図4は図3のA−A断面図、図5は図4の底面図である。
本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータ1は、図1に示されるように、ステータアセンブリ2と、ステータアセンブリ2に対して回転運動するロータ3と、ロータ3の回転運動が直線運動に変換されることにより、軸方向へと移動する棒状の出力軸4と、ステータアセンブリ2及びロータ3を収容するケース5とを備えている。
又、ステータアセンブリ2は、ロータ3の軸方向の一方側に配置されたステータユニット2Aと、ロータ3の軸方向の他方側に配置されたステータユニット2Bとからなるものであり、すなわち、ステータユニット2A、2Bがロータ3の両端に各々配設された構造となっている。そして、ステータユニット2A、2Bは、全くの同一構造である。
【0022】
ロータ3は、多極着磁された円筒状のロータマグネット6が、樹脂製のロータ芯材8の外周に固定され、かつ、ロータ芯材8の中心部に、回転運動を直線運動に変換する変換部を構成する雌ねじ部7が設けられている。更に、ロータマグネット6の軸方向の両端面には、ロータマグネット6の欠け防止とバックヨークを兼ねたマグネットストッパー9が設けられている。又、ロータ芯材8の両端面には、ロータ3を回転自在に保持するための軸受10、10が装着されている。
ロータ芯材8はロータマグネット6とのインサートモールド時に形成され、インサートモールドに用いられる樹脂材料としては、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂が挙げられる。なお、雌ねじ部7はインサートモールド時にロータ芯材8の内周面に直接形成した構成であっても良く、あるいは、市販のナットを、インサートモールドによってロータ芯材8と一体成形したものであっても良い。
【0023】
又、出力軸4の一方側端部から所定の範囲の外周面には、雄ねじ4aが形成されている。そして、出力軸4の雄ねじ4aとロータ3の雌ねじ部7とで、ロータ3の回転運動を直線運動に変換する変換部が構成されている。従って、出力軸4の雄ねじ4aの設置範囲は、出力軸4に求められる直線運動のストロークに基づき定められる。
更に出力軸4の中間部には、軸方向と直交するピン11が突設されている。ピン11は、出力軸4に形成された穴に圧入されることによって、出力軸4を貫通した状態で(すなわち、ピン11はその両側が出力軸4の外周から突出するように)固定されている。なお、ピン11は、後述するステータユニット2Aの溝18dと重合する位置に設けられている。
【0024】
ステータユニット2Aは、図4に示されるように、ボビン12に所定のターン数を巻回したコイル13と、コイル13の外周を覆うカバーリング14と、内ヨーク15と、外ヨーク16とから構成されており、図4に示されるように、ボビン12の収容部Sbと、ボビン12の収容部Sbの中央を軸方向に貫通する貫通孔18eと、収容部Sbと軸方向に隣接する位置に円筒状に配置された複数の極歯15b、16b(図1参照)によって形成される円筒状の空間Srとを含むものである。
【0025】
ボビン12はコイル13が巻回される巻芯部の両端にフランジが一体に形成され、一方のフランジには端子12aが一体に形成され、端子12aには端子ピン17が植設されている。端子ピン17は略H字の形状を有しており、端子ピン17の一方側が端子12aに植設され、他方側が長短の端子ピン17a、17bとなっている。ここで、短い端子ピン17aは、コイル13のリード部を絡げる端子ピンであり、長い端子ピン17bは、給電用の端子ピンとして機能するものである。そして、短い端子ピン17aへとコイル13のリード部が絡げられた後、プラズマ溶接にて接合されている。
なお、ボビン12及びカバーリング14は、例えば、液晶ポリマー等の樹脂材料にて形成される。
【0026】
コイル13の外周を覆うカバーリング14は、外周に端子カバー部14aが一体に形成されており、コイル13の外周にカバーリング14が装着された状態で、カバーリング14の端子カバー部14aによって、ボビン12の端子12aの上面及び両側面が覆われ、給電用の長い端子ピン17bはカバーリング14の端子カバー部14aの端部から突出する。一方、コイル13のリード部を絡げた短い端子ピン17aは端子カバー部14aから突出しない構成となっている。端子カバー部14aの内周面に形成された溝14bは、コイル13のリード部を端子ピン17aに絡げる時の案内溝として機能すると共に、カバーリング14装着時の損傷を防止するための逃げ溝として機能する。
【0027】
内ヨーク15は、円板部15aの外周縁から軸方向に伸長する複数の櫛歯状の極歯15bを備え、円板部15aの中央には極歯15bと反対方向に伸びる円筒突起部15cが形成されている。又、外ヨーク16は、円板部16aの外周縁から軸方向に伸長する複数の櫛歯状の極歯16bを備え、円板部16aの中央には極歯16bと同じ方向に伸びる円筒突起部16cが形成されている。そして、内ヨーク15の極歯15bと外ヨーク16の極歯16bが交互に噛み合うことにより、円筒状の空間Sr(図4参照)が形成される。又、コイル13が巻回されたボビン12は、内ヨーク15と外ヨーク16との間に形成された円環状の空間である、収容部Sb(図4参照)に収容されている。
なお、内ヨーク15及び外ヨーク16は、例えば、電気亜鉛めっき鋼板、珪素鋼板、電磁軟鉄等の軟磁性板により形成されるものである。
【0028】
さて、上記ステータユニット2Aは、次のような手順で作製されるものである。
まず、内ヨーク15と外ヨーク16との間に、コイル13の外周にカバーリング14を装着したボビン12を収容する。そして、外ヨーク16の円筒突起部16cを、内ヨーク15の円筒突起部15cの内周に圧入して、内ヨーク15と外ヨーク16を機械的及び磁気的に結合したステータユニットサブアッセンブリを作製する。
このとき、外ヨーク16の極歯16bと、内ヨーク15の極歯15bとを交互に噛み合わせ、外ヨーク16の極歯16bと内ヨーク15の極歯15bとが、電気角で180度のずれが生じるように、外ヨーク16と内ヨーク15とを配置する。
【0029】
次に、ステータユニットサブアッセンブリを、図示しない金型内の所定の位置にセットし、樹脂モールドによって一体成形する。樹脂モールドに用いる樹脂材料としては、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂が挙げられる。この樹脂モールド工程において、図4に示されるように、外ヨーク16の極歯16bと内ヨーク15の極歯15bは樹脂で覆われる。又、極歯15b、16bの間にも樹脂が充填され、それと共に、端面に配置された位置決め手段20の凸部20aと凹部20bとが、各々複数、同時に成形される。又、これと同時に、ステータユニットサブアッセンブリの軸方向中央には、極歯15b、16bとは軸方向の反対側へと突出するように、円筒状のボス部18が成形されている。更に、ボス部18の一方端には凹部18cが形成され、ボス部18の内周面には、先端が凹部18cに開放され、基端がボス部18の他方端18bの手前まで軸方向に伸長する、一対の溝18dも同時に形成される。
【0030】
又、外ヨーク16の円板部16aの上面には樹脂モールド時に複数のリブ19が形成され、このリブ19は、外ヨーク16の極歯16bと内ヨーク15の極歯15bの間に充填される樹脂と、ボス部18とに対し、連続的に一体成形されている。そして、リブ19によってステータユニットの強度を向上できると共に、外ヨーク16の円板部16aの上面を、隣接するリブ19の間から部分的に露出させることとなり、コイル13による発熱を効率よく放熱することが可能となる。
なお、前述のごとく、ステータユニット2Bの構成は、ステータユニット2Aの構成と同じ形状、構成のため、その説明は省略する。
【0031】
又、本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータ1は、次の手順によって作製されるものである。
まず、ステータユニット2Bのボス部18の他方端18bに、一方の軸受10(図1)の内輪を嵌合させ、ロータ3を軸受10の外輪に嵌合させる。そして、アルミ合金により構成され、一方の端面が開放された有底筒状のケース5の、外周に形成された切欠部5a(図1)に、ステータユニット2Bの端子12aを挿通させ、ケース5の底部の凹部5b(図1)にステータユニット2Bのボス部18の一方端18aを嵌め込んで、ステータユニット2Bとロータ3とを、ケース5内に収容する。
【0032】
次に、ステータユニット2Aのボス部18の他方端18bに、他方の軸受10(図1)の内輪を嵌合させ、ケース5の切欠部5a(図1)に、ステータユニット2Aの端子12aを挿通させてステータユニット2Aをケース5内に収容する。そして、ロータ3のロータ芯材8を軸受10の外輪に嵌合させると共に、ステータユニット2Aとステータユニット2Bの対向面に形成された凸部20a及び凹部20b(図4、図5)同士を嵌合させることで、ステータユニット2Aとステータユニット2Bとの位置合わせが行われると共に、両者が接合される。この位置合わせはステータユニット2Aとステータユニット2Bが90度の位相差となるように設定されている。
さらに、ロータ3の両端にステータユニット2Aとステータユニット2Bが配置された状態で、ケース5内に収容される。このとき、ステータユニット2Aの端子12aとステータユニット2Bの端子12aは、ケース5の切欠部5a内において、カバーリング14の端子カバー部14aに覆われていない面同士が、互いに対向して配置される。
【0033】
ここで、樹脂モールドしたステータユニット2A、ステータユニット2B各々の外径は、ケース5の内径に略等しいため、ステータユニット2Aとステータユニット2Bは、ケース5内に嵌合した状態で収容される。これにより、出力軸4は未だ組み込まれていないが、ロータ3が軸受10、10により回転自在に支持され、モータとしての主要構成を全て具備するモータ部が形成されることになる。
そこで、リニアアクチュエータ1に出力軸4が組み込まれていない状態で、端子ピン17bからコイル13に電流を流し、ステータユニット2A、ステータユニット2Bを各々励磁してロータ3を回転させ、ロータ3が回転することにより発生する音から、ロータ3の回転特性を評価することができる。そして、異常音が発生するような個体は不良品と評価され、例えば、ケース5からロータ3を取り出し、別のロータ3と交換する等の作業が施されることにより、モータ部は良品として再生処理される。
【0034】
以上のごとく、リニアアクチュエータ1に出力軸4が組み込まれていない状態で、ロータ3の回転特性評価を終了した後、出力軸4の雄ねじ4aが形成された一端部側を、ステータユニット2A、ロータ3、ステータユニット2Bへと挿通させる。そして、出力軸4に挿入したピン11が、ステータユニット2Aの溝18dと重合して溝18dに収納されるようにして、ロータ3の中心部に出力軸4を組み込む。
【0035】
更に、ステータユニット2Aのボス部18の一方端18aに形成された凹部18cに、ストッパ機能を兼ねた円筒状の軸受22を装着して、溝18dの先端を閉じ、ピン11の溝18dからの脱落を阻止する。その後、鉄系の金属材からなる蓋21を、出力軸の貫通孔21dに出力軸4を挿通しつつケース5の開口に取付け、円筒状の軸受22を押圧する。そして、ケース5の端面5cを、蓋21の外周縁に形成された複数の凹部21aに加締めて、蓋21をケース5に固定することにより、ケース5の開放端が塞がれ、ステータユニット2A、2B及びロータ3がケース5内に密閉される。
図2に示されるように、蓋21には、ステー21cが一体に形成され、ステー21cには、リニアアクチュエータ1を筐体に取付けるための、ねじ等の固定手段を挿通する孔21bが形成されている。以上により、出力軸4が組み込まれたリニアアクチュエータ1が完成する。
【0036】
なお、円筒状の軸受22は、出力軸4と接触するため摺動性の良い材料にて形成することが好ましく、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂等が好適である。
又、本発明の実施の形態では、ケース5はアルミ合金であるが、これに限定されるものではなく、非磁性材であれば勿論良い。又、耐食性を必要とする環境下で使用する場合には、蓋21及びケース5には、非磁性のステンレス鋼(例えば、オーステナイト系のステンレス鋼)が用いられることが望ましい。
【0037】
以上の構造を有するリニアアクチュエータ1は、ピンと11ステータユニット2Aの貫通孔18eの壁面に形成された溝18dとが、出力軸4の回転止めとして機能する。そして、ロータ3が回転することで雌ねじ部7も回転し、雌ねじ7の回転運動は、出力軸4の雄ねじ部4aを介して出力軸4の直線運動に変換される。そして、出力軸4の引き込み限度位置は、ボス部18の貫通孔18eに形成された一対の溝18dの基端位置によって定められ、出力軸4突出限度位置は、溝18dの先端を塞ぐ円筒状の軸受22によって定められるものである。
【0038】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。
まず、本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータ1は、ロータ3の両端にステータユニット2A、2Bが各々配設された構成のため、ロータ3の直径を略ステータアセンブリ2の径まで拡大することができ、その結果として、モータトルクを低下させることなくリニアアクチュエータ1の小型化を図ることができる。又、ピン11及びステータユニット2Aの貫通孔18eの壁面に形成された溝18dは、出力軸4の回転止めとして機能するものであるが、かかるピン11及び溝18dがステータユニット2Aと一体的に構成することから、ステータユニット2Aと出力軸4との中心が確実に一致する。よって、出力軸4の直線運動方向に対する出力軸4の傾きが生じることを回避し、作動精度の高いリニアアクチュエータ1を構成することができる。
しかも、ステータユニット2Aとロータ3とが有底筒状のケース5に収容された状態で、モータとしての主要構成を全て具備するモータ部が構成されることから、出力軸4が組み込まれていない状態で、ロータ3の回転特性を評価することができ、リニアアクチュエータ1の作動精度を安定させることができる。
【0039】
又、出力軸4がロータ3の中心部に組み込まれ、ピン11が、ステータユニット2Aの貫通孔18eに形成された溝18dに収容された状態で、円筒状の軸受22によってステータユニット2Aの貫通孔18eに形成された溝18dの先端が閉じられる。そして、溝18dからのピン11の脱落が、円筒状の軸受22によって阻止されると共に、出力軸4が円筒状の軸受22によって確実に摺動案内される。
又、有底筒状のケース5の開放端が、出力軸4の貫通孔21dを備える蓋21によって塞がれることで、出力軸4の直線運動が阻害されること無く、有底筒状のケース5の内部にステータユニット2A、2Bとロータ3とが密閉される。
【0040】
又、内ヨーク15と、外ヨーク16とが組み合わされて構成されるものであることから、ステータユニット2A、2Bへのコイルの装着が容易となる。又、内ヨーク15の極歯15bと外ヨーク16の極歯16bが交互に噛み合うことにより、ロータ2を回転自在に収容する円筒状の空間Srが形成され、コイル13が発生する磁束が極歯15b、16bを介してロータ3のロータマグネット6に作用し、ロータ3が回転駆動される。しかも、内ヨーク15と外ヨーク16とが、各々の円筒突起部15c、16cによって、互いに機械的及び磁気的に結合されることにより、内ヨーク15と外ヨーク16を結合する別部品が不要となり、部品点数の増加を回避することができる。
【0041】
しかも、内ヨーク15の極歯15bと外ヨーク16の極歯16bとが樹脂で覆われ、かつ、樹脂によって貫通孔18eを備えるボス部18が形成されてなるものであり、樹脂モールドによって、内ヨーク15の極歯15bと外ヨーク16の極歯16bとボス部18とを一体成形することで、必要な形状を容易に得ることが可能となる。
更には、一対のステータユニット2A、2Bは同一構造となっていることから、部品の共通化が図られ、部品点数の増加を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータの断面図である。
【図2】図1に示されるリニアアクチュエータの平面図である。
【図3】図1に示されるリニアアクチュエータの、ステータの平面図である。
【図4】図3のA−A線における断面図である。
【図5】図3、図4に示されたステータの底面図である。
【図6】従来のリニアアクチュエータの断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:リニアアクチュエータ、2:ステータアッセンブリ、 2A、2B:ステータユニット、3:ロータ、4:出力軸、4a:雄ねじ、5:ケース、6:ロータマグネット、7:雌ねじ部、11:ピン、12:ボビン、13:コイル、15:内ヨーク、15a:円板部、15b:極歯、15c:円筒突起部、16:外ヨーク、16a:円板部、16b:極歯、16c:円筒突起部、18:ボス部、18d:溝、18e:貫通孔、21:蓋、21d:出力軸の貫通孔、22:円筒状の軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転運動が直線運動に変換されて軸方向に駆動される出力軸を備えるリニアアクチュエータであって、
前記ロータは、外周にロータマグネットが配されると共に、中心部には該ロータの回転運動を前記出力軸の直線運動に変換する変換部を備え、
前記ロータの両端には、コイルを巻回したボビンの収容部と、該ボビンの収容部の中央を軸方向に貫通する貫通孔と、前記収容部と軸方向に隣接する位置に円筒状に配置された複数の極歯によって形成される円筒状の空間とを含み、該円筒状の空間に前記ロータが回転自在に収容される一対のステータユニットが配置され、
前記ステータユニットと前記ロータとが有底筒状のケースに収容された状態で、モータとしての主要構成を全て具備するモータ部が構成され、
なおかつ、前記ステータユニットの貫通孔の壁面には、軸方向へと延びて少なくともその一端が前記貫通孔の端部に開放された溝が形成され、前記出力軸の前記溝と重合する位置には、軸方向と直交するようにピンが突設され、
該ピンが、一方のステータユニットの貫通孔の溝に収容された状態で、前記出力軸が前記ロータの中心部に組み込まれてなることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記出力軸が前記ロータの中心部に組み込まれ、前記ピンが前記ステータユニットの貫通孔に形成された溝に収容された状態で、前記貫通孔の先端に装着され、前記出力軸を軸方向に摺動案内する円筒状の軸受を備えることを特徴とする請求項1記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記有底筒状のケースの開放端が、前記出力軸の貫通孔を備える蓋によって塞がれてなることを特徴とする請求項1又は2記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ステータユニットは内ヨークと、外ヨークと、前記内ヨーク及び前記外ヨークの間に収容されたコイルとを含み、
前記内ヨークは、円板部と、該円板部の外周縁から軸方向に伸長する複数の極歯と、前記円板部の中央に形成された円筒突起部とを備え、
前記外ヨークは、円板部と、該円板部の外周縁から軸方向に伸長する複数の極歯と、前記円板部の中央に形成された円筒突起部とを備え、
前記内ヨークの極歯と前記外ヨークの極歯が交互に噛み合うことにより、前記円筒状の空間が形成され、かつ、前記内ヨークの円筒突起部及び前記外ヨークの円筒突起部が、互いに機械的及び磁気的に結合されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記内ヨークの極歯と前記外ヨークの極歯とが樹脂で覆われ、かつ、該樹脂によって前記貫通孔を備えるボス部が形成されてなることを特徴とする請求項4記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ロータユニットの両端に配設された一対のステータユニットが、同一構造であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−172921(P2008−172921A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3378(P2007−3378)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504257302)ミネベアモータ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】