説明

リニアアクチュエータ

可逆電気モータ(3、11、26、27、34)が伝動装置(4、12、24、25、35)を介して非自動ロック式スピンドル(5、14、22、23、36)を駆動することにより、管状位置決め要素が軸方向に移動するように構成されたリニアアクチュエータ(3、11、26、27、34)において、管状位置決め要素の一端が、スピンドル(5、14、22、23、36)に設けられたスピンドルナット(6、15)に接続されている。当該アクチュエータは、管状位置決め要素(7、16、28、29、37)を電気モータ(3、11、26、27、34)から切り離すためのクイックリリース(9、13)を備え、前記クイックリリースは前記伝動装置(4、12、24、25、35)における電気モータ(3、11、26、27、34)から当該クイックリリース(9、13)までの部分からも管状位置決め要素を切り離し、これにより管状位置決め要素(7、16、28、29、37)にかかる負荷によりスピンドル(5、14、22、23、36)が回転するように構成されている。アクチュエータは、クイックリリース(9、13)が作動した際に、外部負荷がかかっている間の管状位置決め要素(7、16、28、29、37)の速度を制御するためのブレーキ手段をさらに備える。ブレーキ手段は遠心ブレーキ(38、60)を含んで構成されており、クイックリリース(9、13)の作動中は下降速度を自動制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載されたタイプのアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
病院用又は介護用のベッドのマットレスを支える面は、通常、背もたれ部分と足のせ部分とに分かれており、さらに中間部にも分かれている物も多い。例えばJ.Nesbit Evans & Company Ltd.による欧州特許出願公開第0498111号明細書を参照すればわかるように、背もたれ部分と足をのせる部分とは、リニアアクチュエータによって水平軸周りに個別に姿勢を調節することができるようになっている。
【0003】
例えば患者が心不全を起こした時などの緊急事態においては、リニアアクチュエータのモータ及び伝動装置を使用せずに、起こした姿勢から水平姿勢に背もたれ部分を迅速に倒すことができることが非常に重要である。これを実現するための手段として、クイック・リリースを備えた“単一アクチュエータ型”のリニアアクチュエータをベッドに備え付けることが知られている。クイックリリースは、モータ、及び、伝動装置の少なくとも一部から、アクチュエータのスピンドルを切り離すものである。このタイプのリニアアクチュエータは、例えば、Linak A/Sによる、欧州特許出願公開第0577541号明細書、欧州特許出願公開第0685662号明細書、国際公開第03/033946号明細書、及び国際公開第2006/039931号明細書によって知られている。アクチュエータのスピンドルは非自動ロック式であるため、スピンドルナットに接続された管状の位置決め要素にかかる負荷によって、スピンドルが回転し始める。この負荷によってスピンドルの回転は加速し続けるため、位置決め要素は加速しつつ終端位置まで移動する。そして、背もたれ部分は、水平姿勢になった瞬間に、何かに衝突したかのような衝撃と共に停止する。このような停止は、既に状態が悪化している患者にとって危険であり、ベッド構造体及びリニアアクチュエータに対しても過剰な負荷をかける。
【0004】
また、患者の周囲は通常雑然としているため、制御不能な状態で背もたれ部分が水平姿勢まで加速すると、この背もたれ部分と背もたれ部分を収容している上部フレーム部との間に人が挟まる危険性もある。この問題は、Linak A/Sによる欧州特許第0944788号明細書においても既に認識されている。当該特許は、クイック・リリース及びブレーキ手段を備えるリニアアクチュエータに関し、モータ及び伝動装置からスピンドルが切り離された際に、ブレーキ手段がスピンドルの速度を制御する。欧州特許第0944788号の実施形態には、ブレーキばねとして機能するコイルばねが記載されており、このコイルばねは固定接触面締め付けるように構成されている。接触面に対するコイルばねの締め付けを制御下で緩めることによって、スピンドルの速度を制御することができる。この構造は一応適切であるが、速度を一定に保つためには操作者の高度な技術が必要であり、加えて、構造が極めて複雑である。また、Dewert Antriebs - und Systemtechnik GmbHによる欧州特許第1592325号明細書に記載のように、管状位置決め要素の外側端部及びフォーク形フロント取り付け部にウォームギアを取り付けた構成も知られている。ウォームギアは円錐形要素を駆動し、この円錐形要素は、これに対応して設けられた固定の円錐形ブレーキ要素に接続されている。円錐形ブレーキ要素は、ウォームギアによって駆動される上記円錐形要素と係合している状態では、ばね付勢されている。操作ハンドルを用いて円錐形ブレーキ要素を引き出すことによって、円錐形ブレーキ要素をウォームギアに設けられた上記円錐形要素との係合から解除することができる。このようにして係合を解除すると、管状位置決め要素が回転し始め、その結果スピンドルナットがスピンドル上で内方に回転し始める。円錐形ブレーキ要素をウォームギア側の円錐形要素から引き出す度合いに応じて、管状位置決め要素の戻り速度を制御することができる。
【0005】
管状位置決め要素を具備しないアクチュエータも知られているが、このようなアクチュエータではスピンドルナットが位置決め要素として構成されており、当該位置決め要素はアクチュエータが組み込まれる構造物に接続される。このようなアクチュエータは、例えばDietmar Kochによる国際公開第96/12123号明細書に開示されている。このタイプのアクチュエータは、通常、アームチェアやリクライニングチェアに用いられる。
【0006】
家庭用ベッドに用いるモータードライブは、80年代の終わりに開発されており、このようなベッドでは、共通ハウジングの両端にリニアアクチュエータが内蔵されている。モータードライブは、背もたれ部分及び足のせ部分のそれぞれのピボットシャフトに対して設けられている。これらのピボットシャフトは、それぞれハウジング内に延びるアームを備えている。アームはハウジング内でスピンドルナットに当接しており、当該スピンドルナットが摺動要素を構成している。このようなデュアルリニアアクチュエータは、介護用ベッドにも使用できるよう開発されてきた。このようなデュアルリニアアクチュエータは、例えば、Eckhard Dewertによる国際公開第89/10715号明細書、Niko Gesellschaft fur Antriebstechnik mbHによる独国特許公開第3842078号明細書、及び、Linak A/Sによる国際公開第2007/112745号明細書によって知られている。また、このようなデュアルアクチュエータにクイックリリースを備えたものは、Dewert Antriebs- und Systemtechnik GmbH Co. による独国実用新案第29612493号明細書に記載されている。
【0007】
本発明の目的は、モータ及び伝動装置から切り離された際の管状位置決め要素の戻り又は収縮を制御するための新たな手段を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0498111号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0577541号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0685662号明細書
【特許文献4】国際公開第03/033946号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/039931号明細書
【特許文献6】欧州特許第0944788号明細書
【特許文献7】欧州特許第1592325号明細書
【特許文献8】国際公開第96/12123号明細書
【特許文献9】国際公開第89/10715号明細書
【特許文献10】独国特許公開第3842078号明細書
【特許文献11】国際公開第2007/112745号明細書
【特許文献12】独国実用新案第29612493号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明によるリニアアクチュエータは、クイックリリースが作動した際にスピンドルに接続される遠心ブレーキとして構成されるブレーキ手段を備えることを特徴とする。あるいは、クイックリリースが作動した際に管状位置決め要素に接続される遠心ブレーキとして構成されるブレーキ手段を備えることを特徴とする。これにより、クイックリリースが作動した際に戻り速度を自動制御できる構成とすることができる。換言すれば、速度の制御を操作者の技量に委ねる必要がない。原則として、クイックリリースをその作動位置でロック可能とし、患者の緊急事態の際には操作者が何らかの処置を施すことができるようにしてもよい。背もたれ部分が水平姿勢になると、クイックリリースの作動が自動的に解除され、スピンドル又は管状位置決め要素が再び接続され、アクチュエータが通常動作を行える状態となるようにしてもよい。
【0010】
さらに発展させた形態として、遠心ブレーキの作用をより高めるため、遠心ブレーキとスピンドル又は管状位置決め要素との接続線上に、遠心ブレーキの回転を増すためのギアを設けてもよい。好ましくは、当該ギアは、クイックリリースが作動した際に接続されるようにする。
【0011】
特にコンパクトな実施形態として、ドライブは遊星歯車機構を含んで構成され、伝動装置はウォームギアを含んで構成され、ウォーム歯車は遊星歯車機構の歯付きリムを含んで構成される。スピンドルを遊星歯車ホルダーに接続する一方、太陽歯車を遠心ブレーキ及びクイックリリースに接続し、これにより通常動作中は太陽歯車が回転不能とされるように構成する。
【0012】
本発明によるリニアアクチュエータを以下の添付図面を参照して具体的に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】クイックリリースを備えた公知のリニアアクチュエータを示す図である。
【図2】本発明によるアクチュエータの概略構成図である。
【図3】デュアルアクチュエータの底部カバーを取り除いた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明による、デュアルアクチュエータ用のアクチュエータの構造を示す図である。
【図5】遠心ブレーキユニットの分解図である。
【図6】図5に示した遠心ブレーキユニットの回転部品を示す図である。
【図7】図5に示した遠心ブレーキユニットの遊星歯車機構を示す図である。
【図8−11】遠心ブレーキの別の実施形態を示す図である。
【図12】遊星歯車機構の別の実施形態を示す図である。
【図13】本発明によるアクチュエータの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1からわかるように、アクチュエータ1は、主要部品として、ハウジング2に収容された可逆電気モータ3を備え、当該モータは、ウォームギア4を介して、スピンドルナット6を備えたスピンドル5を駆動する。スピンドルナットには、内管である管状位置決め要素7が取り付けられており、この管状位置決め要素7を外管8が囲んでいる。管状位置決め要素7の端部には、アクチュエータ1を取り付けるための取り付け用ブラケット83が設けられている。本願が対象とするアクチュエータ1は、クイックリリース9を備えており、Linak A/S による欧州特許公開第0685662号明細書でも論じられたものであり、当該明細書の内容は本願に含まれる。また、リニアアクチュエータ用のクイックリリースの別の実施形態は、Linak A/S による国際公開第2006/039931号でも論じられている。
【0015】
図2は、本発明によるリニアアクチュエータ10の概略を示す。アクチュエータ10は、可逆低電圧DCモータ11、伝動装置12、クイックリリース13、スピンドルナット15を備えたスピンドル14、及び、管状位置決め要素(内管)16を有する。管状位置決め要素16の端部には、アクチュエータ10を取り付けるための取り付け用ブラケット84が設けられている。スピンドル14は、ギア装置17を介して遠心ブレーキ18に接続されている。ギア装置17はスピンドルの回転を加速させて遠心ブレーキ18に伝えるためのものである。ギア装置17は、単純な歯車であってもよいし、遊星歯車機構などのより複雑なギア装置であってもよい。
【0016】
図3は、介護用ベッドまたは家庭用ベッドのデュアルアクチュエータ80の内部を示している。デュアルアクチュエータ80は、両端にリニアアクチュエータ20、21がそれぞれ設けられた共通ハウジング19を有する。ハウジング19は、2つの部分、すなわち、ハウジング状の上側部分と、図示しない底部カバーとしての下側部分とを含む。アクチュエータ20、21はスピンドル22、23を備えており、これらのスピンドルは、伝動装置24、25を介して、可逆低電圧DCモータ26、27によって駆動される。スピンドル22、23上では、ブロック状の位置決め要素28、29として構成されたスピンドルナットが、ハウジング19内でガイドされる。ハウジング19の上側には、背もたれ部分用のピボットシャフト及び足置き部分用のピボットシャフトをそれぞれ受容するための横断凹部30、31が設けられている。これらの凹部には、側方に変位可能なカバー81を外してアクセスすることができる。図では、ハウジングの一端部に装着されたカバー81だけが示されている。ピボットシャフトにはアーム32、33が設けられている。これらのアームは、ここでは爪状に形成されており、スピンドル22、23を両側に位置し、各位置決め要素28、29の一端に接している。このような構造は、概して、例えばLinak A/Sによる国際公開第2007/112745号明細書によって知られている。
【0017】
図4は、図3に示したタイプのデュアルアクチュエータ80におけるリニアアクチュエータ20、21に本発明を適用した例を示している。上述したように、リニアアクチュエータ20、21は、可逆低電圧DCモータ34、伝動装置35、及びスピンドル36を有しており、スピンドルは位置決め要素37として構成されたスピンドルナットを備えている。スピンドル36から伝動装置35を切り離す機能を有するクイックリリース82が、伝動装置35に付随して設けられている。スピンドル36は遠心ブレーキユニット38に接続可能である。遠心ブレーキユニットは、スピンドル36の回転を加速させて遠心ブレーキユニット38に伝えるためのギア装置(符号なし)を含む。ギア装置は単純な歯車であってもよいし、遊星歯車機構などのより複雑なギア装置であってもよい。
【0018】
図4の遠心ブレーキユニット38の具体例を、図5に分解斜視図で示す。遠心ブレーキユニット38は、筒状ハウジング39、ボトムピース40、及びフロントピース41を含む。筒状ハウジング39の一部は、遠心ブレーキユニットの回転部分、すなわちロータ42及びブレーキブロック43、44、45、46を収容するドラムとして用いられる。筒状ハウジング39の残りの部分は、遊星歯車機構47を収容している(詳細は図7を参照)。遊星歯車機構47の各遊星歯車48、49、50(図7参照)の軸は、一端が軸ハウジング51に固定されており、他端がエンドピース52に固定されている。軸ハウジング51はボス53を含み、このボスにベアリング54の内側ベアリングブッシュが固定されている。ベアリング54の外側ベアリングブッシュは、フロントピース41の内側に、例えば圧入によって固定されている。軸ハウジング51の端面55は、ワッシャー56を介して、アクチュエータのスピンドルに固定されている。遊星歯車機構47は、内歯付きリム57を含み、このリムが筒状ハウジング39の内側に固定されている。
【0019】
太陽歯車58は、軸(図示せず)を介してロータ42に接続されている。当該軸は、ロータ側端部において、ボトムピース40に形成された穴(符号なし)の内部に挿入されている。遠心ブレーキユニット38は、アクチュエータ20、21のクイックリリースの作動によって、アクチュエータのスピンドル22、23、36の回転を制動する。この動作は次のように行われる。まず、クイックリリースが作動すると、スピンドルが伝動装置24、25、35から切り離される。すると、位置決め要素(スピンドルナット)28、29、37にかかる負荷によって、スピンドル22、23、36が回転し始め、これにより位置決め要素(スピンドルナット)28、29、37が伝動装置24、25、35に向かって動き始める。スピンドル22、23、36の回転は遊星歯車48、49、50の回転に直接変換され、これにより太陽歯車57を介してロータ42を回転させる。遊星歯車機構47の伝動作用により、太陽歯車57の回転速度はスピンドル22、23、36よりも速くなる。ブレーキブロック43、44、45、46は、ロータの回転に従って回動し、回転速度が増すにつれて遠心力の作用を受けて径方向外側に変位する。ブレーキブロック43、44、45、46の外側部分が筒状ハウジング39の内側部分に当たると、接触面において摩擦が発生し、その結果、ロータ42、ひいてはスピンドル22、23、36の回転にブレーキが作用する。ブレーキブロック43、44、45、46に作用する遠心力は、スピンドル22、23、36の回転速度が増すとともに大きくなり、従ってブレーキブロック43、44、45、46と筒状ハウジング39の内側部分との接触面での摩擦も大きくなる。位置決め要素28、29、37がその終端位置に達すると、スピンドルの回転が止まる。
【0020】
遠心力がもたらすことができる最大の制動作用は、アクチュエータに作用する最大負荷に基づいて求めることができ、これに基づいて最大の戻り速度を決定することができる。当然のことながら、位置決め要素の戻り動作がブレーキによって妨げられるようなことがあってはならない。各ブレーキブロックの外側に形成された凹部92(図を明瞭にするため、ブレーキブロック43の凹部のみに符号を付す)にゴムリング(図示せず)を設けることによって、ブレーキによる位置決め要素の戻り動作の妨げを防ぐことができる。ゴムリングは、ブレーキブロック43、44、45、46を、実質的にロータ42に固定する。ゴムリングを設けることにより、ブレーキブロック43、44、45、46に作用する遠心力が所定の大きさを超えない限り、ブレーキ作用が働かないようにすることができる。これに代わる方法として、ロータ42と各ブレーキブロック43、44、45、46とを、ばねによって摺動接続させてもよい。
【0021】
図6は、図5の遠心ブレーキユニットにおける、ロータ42、ブレーキブロック43、44、45、46及び筒状ハウジング39を含むすべての回転部材を示している。ロータ42は4本のアームを含み、これらのアーム上で各ブレーキブロック43、44、45、46が摺動するようになっている。ブレーキブロックの特徴及び個数、ならびにそれらに対応するロータの構成は、所望のブレーキ作用が得られるように、適宜変更可能である。
【0022】
図7は、図5の遠心ブレーキユニット38の遊星歯車機構47を示している。遊星歯車機構は、歯付きリム57、3つの遊星歯車48、49、50、及び太陽歯車58を有している。図5を参照して述べたように、遊星歯車機構は軸ハウジング51及びエンドピース52をさらに含む。
【0023】
アクチュエータの通常動作中も作動できるように、遠心ブレーキを常時接続しておくことも可能である。しかし、そのような常時接続は、エネルギーの面から考えて適切ではない。速度自体はブレーキ要素を作動させない程度の低さであるとしても、ブレーキを運転状態に維持するためには、少ないにしてもある程度のエネルギーを必要とするからである。
【0024】
図8は、別の実施形態に基づく遠心ブレーキ60を示している。当該遠心ブレーキは、ベアリングを収容する固定ハウジング61を含み、ベアリング内にロータ62が配置されている。ロータはアクチュエータのスピンドルに接続されている。ロータ62のボス部の両側には、同一の2つの三又ドライブプレート63、64が、中心軸心がロータ62の回転軸心と一致するように固定されている。図8、9、10、11は同じものを示すが、図9及び図10ではドライブプレート63が省略されている。図8及び図10ではドライブプレート63によってドライブプレート64が隠れており、ドライブプレート64が最もよく見えるのは図11である。2つのドライブプレート63、64は同じなので、ドライブプレート63のみについて言及するが、その技術的特徴はドライブプレート64についても同じである。ドライブプレート63のアーム部65、66、67とドライブプレート64のアーム部65、66、67との間で且つこれらのアームの端部付近において、ブレーキレバー68、69、70とフライウェイト71、72、73とが対をなし、ピン74、75、76によって相互にヒンジ接続されている。各ピン74、75、76は、2つのドライブプレート63、64に形成された穴に装着されている。ヒンジ接続によって対を形成しているブレーキレバー68、69、70及びフライウェイト71、72、73は、その両側において、接続ロッド77、78、79によって接続されている。接続ロッド77、78、79の一端はブレーキレバー68、69、70にヒンジ接続され、他端はフライウェイト71、72、73にヒンジ接続されている。なお、ドライブプレート64側の接続ロッドは図示していない。
【0025】
クイックリリースが作動していない時は、ドライブプレート63、64と接続ロッド77、78、79との間でブレーキレバー68、69、70に取り付けられたゴム要素(図示せず)によって、フライウェイトはロータ62のボス部に対して押圧保持される。
【0026】
クイックリリースが作動し、スピンドルがモータ及び伝動装置から切り離されると、位置決め要素にかかる負荷によってスピンドルが回転し始め、これにより遠心ブレーキ62のロータが回転し始める。すると、図10及び図11に示すように、フライウェイト71、72、73が外側に投げ出されブレーキのハウジングの内側に接触し、ブレーキがかかる。スピンドルの速度が増すにつれて、フライウェイト71、72、73は、より大きな遠心力で投げ出され、ブレーキ61のハウジングに接触し、接触面での摩擦によって、より強力にブレーキがかかる。回転動作中は、接続ロッド77、78、79はアングルレバーアーム(angle lever arm)として働き、摩擦を増大させる。このように、接続ロッド77、78、79によってより大きなブレーキ作用が得られる構成とすれば、ギアを介して遠心ブレーキをスピンドルに接続する必要はない。
【0027】
図12は、遊星歯車機構85の概略図である。遊星歯車機構85は、太陽歯車86、遊星歯車87、遊星歯車ホルダー88、89、及び、内歯を有する外歯付きリム90を含む。アクチュエータの伝動装置はウォームギア装置として構成されており、ウォームギア装置のウォーム91は、モータのドライブシャフトの延長部分である。ウォームギア装置のウォーム歯車は、遊星歯車機構85の歯付きリム90を兼ねており、当該リムは外側ウォーム歯を有する。スピンドル(図示せず)は、その端部で遊星歯車ホルダー88、89に接続されている。太陽歯車86は遠心ブレーキ及びクイックリリースに接続されており、これにより通常動作中は太陽歯車86は固定されている。通常動作中は、モータがウォーム91を介して歯付きリム90を駆動する。これにより、遊星歯車87を介して遊星歯車ホルダー88、89が回転し、その結果スピンドルが回転する。この間、太陽歯車86はクイックリリースによって固定されている。クイックリリースが作動すると、太陽歯車86が可動状態となる。すると、スピンドルにかかる負荷によって、遊星歯車ホルダー88、89、ひいては遊星歯車87が回転駆動される。ウォームギアは自動ロック式であるため、歯付きリム90は静止し、遊星歯車87が太陽歯車86を回転させる。太陽歯車86は遠心ブレーキを駆動し、これによりスピンドルが減速する。遊星歯車機構における1:3でのギアリング(加速)によって、遠心ブレーキのロータはスピンドルに比べて比較的高速で回転駆動されるため、適切なブレーキ作用が得られる。通常動作中は遊星歯車機構85は1.5で減速を行う。
【0028】
図13は、本発明に基づくリニアアクチュエータ93の概略図である。当該リニアアクチュエータは、可逆低電圧DCモータ94、伝動装置95、スピンドルナット98を備えたスピンドル97、及び、管状位置決め要素(内管)99を含んでいる。管状位置決め要素99の外側端部には、アクチュエータ93を取り付けるための取り付け部品100が設けられている。また、取り付け部品100と管状位置決め要素99との間には、ギア沿う出願101を介して遠心ブレーキ102に接続されたクイックリリース96が設けられている。アクチュエータ93の通常動作中は、取り付け部品100は管状位置決め要素99に固定されている。クイックリリース96が作動すると、管状位置決め要素99は取り付け部品100から切り離され、例えばベアリング接続(図示せず)を介して、取り付け部品に対して回転自在となる。取り付け部品100に作用する圧縮負荷が管状位置決め要素99に伝達され、これにより管状位置決め要素が内側方向に回転移動する。なお、アクチュエータのスピンドル97は、管状位置決め要素99のこの回転動作中は固定されている。管状位置決め要素99の回転に対しては、当該要素に接続された遠心ブレーキ102によるブレーキが作用する。このブレーキ作用は、遠心ブレーキ102をギア装置101に接続することによって大きくすることができる。ギア装置は、例えば本願明細書に記載されたタイプの遊星歯車機構であってもよい。このようにして、管状位置決め要素99の回転速度を制御することができる。従って、管状位置決め要素99を所望の速度で内側方向に移動させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆電気モータ(3、11、26、27、34)が伝動装置(4、12、24、25、35)を介して非自動ロック式スピンドル(5、14、22、23、36)を駆動することにより、回転不能に保持された位置決め要素(7、16、28、29、37)が軸方向に移動するよう構成されたリニアアクチュエータであって、
前記位置決め要素は、前記スピンドル(5、14、22、23、36)に設けられたスピンドルナット(6、15)に接続されているか、又は、当該スピンドルナットと一体に設けられており、
前記アクチュエータは、前記位置決め要素(7、16、28、29、37)を前記電気モータ(3、11、26、27、34)から切り離すためのクイックリリース(9、13)をさらに含み、前記クイックリリース(9、13)は、前記伝動装置(4、12、24、25、35)における前記電気モータ(3、11、26、27、34)から当該クイックリリース(9、13)まで延びる部分からも前記位置決め要素を切り離し、これにより前記位置決め要素(7、16、28、29、37)にかかる負荷により前記スピンドル(5、14、22、23、36)が回転するよう構成されており、
前記アクチュエータは、前記クイックリリース(9、13)が作動した際に、外部からの前記負荷下における前記位置決め要素(7、16、28、29、37)の速度を制御するためのブレーキ手段をさらに備え、
前記ブレーキ手段は、前記クイックリリース(9、13)が作動した際に前記スピンドル(5、14、22、23、36)に接続される遠心ブレーキ(38、60)を含むことを特徴とする、リニアアクチュエータ。
【請求項2】
可逆電気モータ(94)が伝動装置(95)を介してスピンドル(97)を駆動することにより、管状位置決め要素(99)が軸方向に移動するよう構成されたリニアアクチュエータ(93)であって、
前記管状位置決め要素の一端は、前記スピンドル(97)に設けられたスピンドルナット(98)に接続されており、
前記アクチュエータは、前記管状位置決め要素(99)の外側端部と取り付け部品との間に設けられた、前記管状位置決め要素(99)を前記取り付け部品(100)から切り離すためのクイックリリース(96)をさらに備え、これにより前記管状位置決め要素(99)が自身にかかる負荷によって回転するよう構成されており、
前記アクチュエータは、前記クイックリリース(96)が作動した際に、外部からの前記負荷下における前記管状位置決め要素(99)の速度を制御するためのブレーキ手段をさらに備え、
前記ブレーキ手段は、前記クイックリリース(96)が作動した際に前記管状位置決め要素(99)に接続される遠心ブレーキ(102)を含むことを特徴とする、リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記遠心ブレーキ(38、60)と、前記スピンドル(5、14、22、23、36)又は前記管状位置決め要素との駆動接続線上に、前記遠心ブレーキ(38、60)の回転を増すためのギア装置(17、47)が設けられている、請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ギア装置(17、47)は、前記クイックリリース(9、13)が作動した際に接続される、請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ギア装置は、太陽歯車(86)、遊星歯車(87)、遊星歯車ホルダー(88、89)、及び外歯付きリム(90)を含む遊星歯車機構(85)であり、
前記伝動装置はウォームギア装置であり、前記ウォームギア装置のウォーム(91)はモータシャフトの延長部分に設けられており、前記ウォームギア装置のウォーム歯車は前記歯付きリム(90)として構成されており、前記歯付きリムは外側ウォーム歯を有しており、
前記スピンドルは前記遊星歯車ホルダー(88、89)に接続されており、
前記太陽歯車(86)は、前記遠心ブレーキ(38、60)及び前記クイックリリースに接続されていることにより、通常動作中は前記太陽歯車(86)は固定されている、請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のリニアアクチュエータ用の遠心ブレーキであって、
ブレーキ面として機能する壁面を有する筒状空洞部を含む固定ドラム(61)と、
ロータ(62)と、
前記ロータ(62)に固定された少なくとも1つのドライブプレート(62、63)と、
前記固定ドラム(61)の前記筒状空洞部に配置され、前記ドライブプレート(62、63)に対して揺動可能にヒンジ接続された少なくとも1つのフライウェイト(71、72、73)と、
前記少なくとも1つのフライウェイトと共に前記ドライブプレート(62、63)にヒンジ接続された少なくとも1つのブレーキレバー(68、69、70)と、
前記ブレーキレバーに一端が枢動可能に接続された少なくとも1つの接続ロッド(65、66、67)とを備え、
前記フライウェイト(71、72、73)及び前記ブレーキレバー(68、69、70)が投げ出されて前記固定ドラムの前記筒状空洞部の前記壁面に当接する際には、前記ブレーキレバー(68、69、70)、接続ロッド(65、66、67)、及びフライウェイト(71、72、73)の相互作用によって、前記壁面に対する前記フライウェイト(71、72、73)及び前記ブレーキレバー(68、69、70)の押圧が増すように構成されている、遠心ブレーキ。
【請求項7】
前記フライウェイト(71、72、73)及び前記ブレーキレバー(68、69、70)は、前記固定ドラムの前記筒状空洞部の前記壁面において、前記ドライブプレート(62、63)にヒンジ接続されている、請求項6に記載の遠心ブレーキ。
【請求項8】
前記フライウェイト(71、72、73)、前記ブレーキレバー(68、69、70)、及び前記接続ロッド(65、66、67)をそれぞれ3つずつ備え、
前記フライウェイト及び前記ブレーキレバーが投げ出されて前記固定ドラムの前記筒状空洞部の前記壁面に当接した状態では、前記フライウェイト(71、72、73)の外側部分と、前記ブレーキレバー(68、69、70)の外側部分とで、前記壁面の全周または略全周が覆われるよう構成されている、請求項6または7に記載の遠心ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−513073(P2013−513073A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541321(P2012−541321)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/DK2010/000166
【国際公開番号】WO2011/066836
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(594167956)リナック エー/エス (27)
【Fターム(参考)】