説明

リニアガイド

【課題】潤滑剤を供給するための貫通穴を案内レールに設ける必要なしに、取付け姿勢に関わらず転動路へ適切に潤滑剤を供給することができるリニアガイドを提供することを目的とする。
【解決手段】転動路15aないし15dへ潤滑剤を吐出する吐出口32aないし32dを有する門型の主路31と、主路31の各直線部へ潤滑剤を供給する連絡路30a、30b、30cと、連絡路30a、30b、30bに潤滑剤を供給する副路29と、副路29に潤滑剤を供給する注入口26a、26b、26cと、を有し、油路を部分的に遮断することにより、連絡路30a、30b、30cのうちいずれか1つから主路31へ潤滑剤を供給することができるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤供給機構を備えたリニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置や半導体製造装置等において直線的に運動する物体を低摩擦で支持する直動案内装置として、リニアガイドが知られている。リニアガイドとしては、例えば、以下のようなものがある。すなわち、案内レールと、その案内レールを跨いで案内レールの長手方向に相対移動可能に遊嵌したスライダとからなり、そのスライダは、スライダ本体と、スライダが案内レール上を滑走する際に先頭又は後尾となる両端部にエンドキャップとを備えており、多数の転動体が、スライダ内を循環しながら案内レールとスライダとの間の転動路を転動することにより、案内レールとスライダとの滑らかな相対移動を実現するものである。
【0003】
このようなリニアガイドにおいて、転動体の転動路に潤滑剤を供給する機構として、案内レールと平行なエンドキャップの側面にグリースニップル用に一対のニップル穴が穿設され、一対のニップル穴は油供給路によって連結され、該油供給路は前記エンドキャップの中心線上に設けられた短い上下方向の連絡路を介して前記油路の下側に設けられた油路に連通され、該油路の両先端はそれぞれ前記案内レールの両側に設けられた転動体の方向転換路に開口されているものがある(特許文献1参照)。また、このような潤滑剤の供給機構に油路の開閉手段を設け、案内レールにその両側に配置された転動路を連通させる貫通連絡孔を設けることで、案内レールの両側の転動路うち一方が上側に他方が下側に位置するようにリニアガイドが設置された場合であっても、下側の転動路への油路を遮断して上側の転動路に潤滑剤を供給することで、下側の転動路への潤滑剤の過剰供給を防止しつつ、貫通連絡孔を通して下側の転動路にも潤滑剤を供給することができるものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−73518号公報
【特許文献2】実開平6−43345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る潤滑剤供給機構では、案内レールの両側の転動路のうち一方が上側に他方が下側に配置されるようにリニアガイドが設定される場合(壁掛け姿勢)等において、給油口から給油すると、重力によって潤滑剤が上に上がらず、下側の油出口に多量の油が供給され、最悪の場合、上側の転走面にて潤滑不良を生じ、破損に到る恐れがある。また、特許文献2に係る潤滑剤供給機構では、案内レールに両側の転動路を連通させる貫通穴を加工しなければならず、手間がかかるといった問題がある。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明は、取付け姿勢に関わらず転動路へ適切に潤滑剤を供給することができるリニアガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明では、案内レールと、該案内レール上を滑走可能に跨架されたスライダと、を有し、該スライダは、前記案内レールとの間に転動体の転動路を形成するスライダ本体と、該スライダ本体の滑走方向の前後に固設され、前記案内レールの両側でそれぞれ前記転動体を反転させる湾曲路を有するエンドキャップと、を備え、該エンドキャップに、潤滑剤を注入する注入口と、該注入口から前記湾曲路までを繋ぐ油路と、該油路から前記湾曲路それぞれへ潤滑剤を吐出する吐出口とを形成したリニアガイドにおいて、前記油路は、前記注入口に繋がった副路と、該副路の両端部近傍から延びる一対の端部連絡路と、該一対の端部連絡路を結ぶ前記副路の部分から延びる中間連絡路と、前記一対の端部連絡路と前記中間連絡路とに繋がった主路と、を有し、該主路は、前記一対の端部連絡路それぞれに繋がり、前記吐出口を備える一対の供給路と、該供給路と前記中間連絡路とに繋がり、前記一対の供給路と延びる方向を異にして前記一対の供給路を連通する連通路と、を有し、前記端部連絡路が繋がっている前記供給路の部分は、前記供給路と前記連通路とが繋がる接続部を除く、該接続部と前記吐出口とを結ぶ部分であり、 前記中間連絡路が繋がっている前記連通路の部分は、前記接続部を除く、前記一対の供給路を結ぶ前記連通路の部分であり、前記潤滑剤を任意の一の前記連絡路から前記主路へ供給するように前記油路を開閉する開閉機構を有することを特徴とするリニアガイドを提供する。
【0008】
好ましくは、前記開閉機構は、前記エンドキャップ本体の前記スライダ本体側の面に形成され、前記油路を構成する溝部と、該エンドキャップ本体と前記スライダ本体との間に遊嵌され、前記エンドキャップ本体側へ突出して前記油路を部分的に開閉する凸部を複数有する略板状の操作部と、前記凸部が前記油路から退避した際に前記凸部を収容する凸部収容溝部と、を有し、使用者が前記操作部を操作することにより、前記複数の凸部のうちいずれか一つが前記油路から退避して前記突部収容溝部に収容され、他の前記突起部が前記油路を部分的に開閉する機構である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、潤滑剤を供給するための貫通穴を案内レールに設ける必要なしに、取付け姿勢に関わらず転動路へ適切に潤滑剤を供給することが可能なリニアガイドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願の第1実施形態に係るリニアガイドを示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】本願の第1実施形態に係るリニアガイドのエンドキャップを示す平面図及び断面図である。(a)操作部を取り外したエンドキャップをスライダ本体側から見た平面図である。(b)(a)に示すA−A断面図である。(c)(a)に示すB−B断面図である。(d)操作部をスライダ本体側から見た平面図である。(e)(d)に示す操作部を図面に向かって右側から見た側面図である。
【図3】本願の第1実施形態に係るリニアガイドにおいて、中央の連絡路を開放した場合にエンドキャップ内を流れる潤滑剤の流れを示す平面図である。
【図4】本願の第1実施形態に係るリニアガイドにおいて、左右いずれかの連絡路を開放した場合にエンドキャップ内を流れる潤滑剤の流れを示す平面図である。(a)図面に向かって左側の連絡路を開放した場合を示している。(b)図面に向かって右側の連絡路を開放した場合を示している。
【図5】案内レールの両側の転動路のうち一方が上側に他方が下側に配置されるようにリニアガイドを設置した場合にエンドキャップ内を流れる潤滑剤の流れを示す平面図である。(a)従来例に係るエンドキャップを示している。(b)本願の実施形態に係るエンドキャップを示している。
【図6】本願の第2実施形態に係るリニアガイドのエンドキャップ本体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本願の第1実施形態に係るリニアガイドを図1ないし図5を参照しつつ説明する。図1は、本願の第1実施形態に係るリニアガイド装置1を示す一部切り欠き斜視図である。
【0012】
リニアガイド装置1は、案内レール2と、案内レール2を跨いで案内レール2の長手方向に相対移動可能に遊嵌したスライダ3とから構成されている。案内レール2は金属製で、細長い略四角柱状をしており、上下方向に貫通したレール取付け穴4が形成してあり、案内レール等をテーブル等に固定することができる。案内レール2には、断面が略円弧状のレール側転動溝6a、6b、6c、6dを両側面に2本ずつ配している。下側に設けられたレール側転動溝6b、6dの底部には逃げ溝7a、7bが形成されている。スライダ3は、金属製のスライダ本体8と、スライダが案内レール2の上を滑走する際に先頭又は後尾となる両端部に着脱可能に固設された合成樹脂製のエンドキャップ9a、9bと、そのさらに外側にねじ止めされた合成樹脂製のサイドシール10a、10bと、サイドシール10a、10bからエンドキャップ9a、9bまで貫通した雌ねじ部にそれぞれ螺合されたグリースニップル11と、エンドキャップ9a、9bの案内レールと平行な両側面にそれぞれ取り付けられたグリースニップル41と、から成る。
【0013】
スライダ本体8は、胴部12と、その下面から案内レール2を跨ぐように下方へ延在する脚部13a、13bとから形成されている。脚部13a、13bの案内レール2に対向する面には、レール側転動溝6a、6b、6c、6dに対向するスライダ側転動溝がそれぞれ2本ずつ、計4本形成されており、レール側転動溝6aないし6dとともにボール5が転動する転動路14a、14b、14c、14d(14aのみ図示)をそれぞれ構成している。転動路14aないし14dは、エンドキャップ9a、9bのそれぞれに形成された円弧状の湾曲路15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15h(15a、15bのみ図示)によってスライダ本体8の内部に形成された案内レールと平行な直線状の循環路16a、16b、16c、16d(16aのみ図示)に連結されており、これらはそれぞれ全体として環状路17a、17b、17c、17d(17a、17bのみ図示)を形成している。環状路17aないし17dには多数のボール5が転動可能に収容されている。環状路17a、17cを構成する上側の転動路14a、14cには、ボール5の脱落を防ぐ枠型保持器21が設けられており、環状路17b、17dを構成する下側の転動路14b、14dにはボール5の脱落を防ぐ棒型保持器18a、18b(18aのみ図示)がそれぞれ設けられている。棒型保持器18a、18bは、その両端部がエンドキャップ9a、9bにそれぞれ支持されており、その他の部分は案内レール2に形成された逃げ溝7a、7bに収容されている。エンドキャップ9a、9bには、グリースニップル11から湾曲路15aないし15hまで潤滑剤の油路19が形成されている。サイドシール10a、10bには、案内レールの断面形状に対応した形状のシールリップ20がそれぞれ形成されている。
【0014】
環状路17a、17bに収容された多数のボール5のうち転動路14aないし14dに位置するボール5は、スライダ3を案内レール2に支持し、案内レール2とスライダ3とが相対移動する際に転動して、案内レール2とスライダ3の滑らかな相対移動を実現している。これらのボール5は、やがてエンドキャップ9a、9b内に入り、後続のボール5に押されることでエンドキャップ9a、9b内部の湾曲路15aないし15hで反転してスライダ本体8内部の循環路16aないし16dを通って、反対側のエンドキャップ9a、9bに入り、エンドキャップ9a、9b内部の湾曲路15aないし15hによって再度反転して、案内レール2側の転動路14aないし14dに戻るという循環がなされる。
【0015】
図2(a)は、エンドキャップ9aをスライダ本体8から取外し、エンドキャップ9aから図2(d)に示す後述の操作部22を取り外して、スライダ本体8側からエンドキャップ本体23を見た平面図を示している。図2(a)はエンドキャップ9aの大部分を構成する略逆U字状のエンドキャップ本体23と、エンドキャップ本体23とスライダ本体8の間に配置され、転動体が反転する湾曲路15aないし15dのスライダ本体8側の内周面を構成する湾曲路構成部品25aと、転動体が反転する湾曲路15c、15dのスライダ本体8側の内周面を構成する湾曲路構成部品25bとを示している。なお、エンドキャップ9bもエンドキャップ9aと同様の構成をしている。
【0016】
エンドキャップ本体23は、潤滑剤を注入する注入口26a、26b、26cを有している。注入口26a、26cは、エンドキャップ本体23の左右の側面から内側へ向けて穿設されており、本来スライダ本体8側から見た平面図には現れないため破線で示している。注入口26bは、エンドキャップ本体23の上部中央を図2(a)の奥から手前へ向けて穿設されている。本第1実施形態においては、図1に示すように注入口26bにはグリースニップル11を、注入口26a、26cにはグリースニップル41(1つのみ図示)をそれぞれ取付けているが、図2においてはグリースニップルの表示を省略している。
【0017】
エンドキャップ本体23は、左右の下部に湾曲路15aないし15dのサイドシール10a側の内周面を構成する溝部を有している。エンドキャップ本体23の上部には、スライダ本体8に当接する面から凹んだ凹部27が形成されている。凹部27は、スライダ本体8との間で操作部22を収容する部分であり、後述する副路や主路等の溝部を除いては平滑な底面を有しており、その深さを操作部22の厚さよりも僅かに浅くしている。凹部27の平面形状は、操作部22の形状に合わせて形成されており、後述する操作部22のつまみ部28a、28b、28cを収容するつまみ用溝部27a、27b、27cが形成されている。つまみ用溝部27a、27cの図2(a)上下方向の幅は、つまみ部28a、28cの図2(d)上下方向の太さとほぼ同一である。一方、つまみ用溝27bの図2(a)左右方向の幅はつまみ部28bの図2(d)左右方向の太さよりも大きくなっており、後述するのように操作部22を左右にスライドさせることができるようにしている。
【0018】
エンドキャップ本体23には、湾曲路15aないし15dへ潤滑剤を供給するために注入口26aないし26cから湾曲路構成部品25a、25bに形成された吐出口32aないし32dまで連通した油路19が形成されている。油路19は、注入口26a、26b、26cから注入された潤滑油が最初に流れる略逆U字状の副路29と、副路29の両端部下側から内側へ向かって延びる連絡路30a、30cと、副路29の中央部から下方へ延びる連絡路30bと、連絡路30a、30b、30cと繋がった略逆U字状の主路31と、を有している。注入口26a、26cと副路29とは、図2(a)の奥行き方向に形成された油路によって繋がっている。主路31の下方へ延びる部分には、湾曲路15aないし15dに対応して、図面の奥行き方向へ貫通する吐出口32aないし32dがそれぞれ形成されている。
【0019】
エンドキャップ本体23において、副路29の両端部の近傍には、図2(d)、(e)に示す操作部22の凸部34a、34bが収容される凸部収容溝33a、33bがそれぞれ副路29から延びて形成されている。凸部収容溝33a、33bの図2(a)上下方向の幅は、操作部22の凸部34a、34bの図2(d)上下方向の幅とほぼ同一である。後述のように、凸部34a、34bは、副路29の図2(a)上下方向に延びる溝部の左右方向の幅の2倍とほぼ同じ図2(d)左右方向の幅を有しており、操作部22をエンドキャップ本体23の中央に配置した場合に、凸部34aの右側半分及び凸部34bの左側半分が、それぞれ副路29を塞ぐように配置されている(図3参照)。凸部収容溝33a、33bは、凸部34a、34bの図2(d)左右方向の幅のほぼ2倍の図2(a)左右方向の幅を有しており、操作部22をエンドキャップ本体23の中央に配置した状態において、凸部34a、34bのそれぞれの両側に、副路29の図2(a)上下方向に延びる部分の左右方向の幅とほぼ同一の左右方向の幅を有する空間が確保されるように配置されている(図3参照)。これにより、操作部22を中央から右側へ最大限スライドさせれば副路29の右側に延びる油路が開放され、操作部22を左側へ最大限スライドさせれば副路29の図2(a)上下方向に伸びる左側の油路が開放されることとなる。
【0020】
エンドキャップ本体23において、中央凸部収容溝36が連絡路30bから延びて形成されている。中央凸部収容溝36の図2(a)上下方向の幅は、図2(d)に示す操作部22の中央凸部37の図2(d)上下方向の幅とほぼ同一である。中央凸部収容溝36は、連絡路30bから左右に同じ長さに延びており、中央凸部収容溝36の左右それぞれの図2(a)左右方向の寸法は、連絡路30bの左右方向の幅の約2倍である。なお、連絡路30bの図2(a)左右方向の幅は、副路29の図2(a)上下方向に延びる部分の左右方向の幅と同一である。図2(d)に示すように、操作部22の中央凸部37は、その中央に上下に貫通した隙間を有しており、その隙間の左右に、図2(d)左右方向の幅を連絡路30bの図2(a)左右方向の幅とほぼ同じ幅の2つの突起部がそれぞれ形成されている。これにより、リニアガイド1において、操作部22をスライダ本体9aの中央部に配置した場合には、連絡路30bが開放され、操作部22を左右いずれかの向きに最大限スライドさせた場合には、連絡路30bが遮断されることとなる。
【0021】
図2(b)は、図2(a)に示すA−A断面を示している。副路29と、凹部27の底部に形成された主路31の部分とは、同じ深さを有しているが、湾曲路構成部品25a、25bに形成された主路31の部分は、これらよりも浅い溝部としている。図2(b)には示されていないが、凸部収容溝33a、33b、中央凸部収容溝36も副路29と凹部27に形成された主路31の部分と同じ深さを有している。図2(b)において、エンドキャップ本体23の図面に向かって左側がスライダ本体8に面する側である。スライダ本体8のエンドキャップ本体23側の面は、ねじ穴や循環路16aないし16d等を除いては平面状に形成されており、エンドキャップ本体23のスライダ本体8に当接する部分も平面状に形成されている。図2(b)において、左側の面からは、円筒突起部35a、35bが円筒状に突出している。これと同様に図2(a)の向かって右側の湾曲路15c、15dにおいても、円筒突起部35c、35dが突出している。円筒突起部35aないし35dは、エンドキャップ9aをスライダ本体8に取付けた際に、循環路16aないし16dの端部に挿入される部分である。円筒突起部35a、35bの内周面の径と、循環路16aないし16dの内周面の径はほぼ同じであるが、円筒突起部35aないし35dを受け入れる循環路16aないし16dの端部は、円筒突起部35a、35bの肉厚の分、径を大きくしてある。
【0022】
主路31は、エンドキャップ本体23の形状に合わせた略逆U字状をしており、主に、凹部27のスライダ本体8側の面と、湾曲路構成部品25aとに溝状に形成されている。主路31のうち、凹部27に形成された部分と湾曲路構成部品25aに形成された部分とは、図2(b)に示す凹部27の下側の側面に図2(b)左右方向に形成された溝部によって繋がれている。以上のように、油路19は、エンドキャップ本体23において、溝状に形成されているが、操作部22が凹部27内に収容され、エンドキャップ9aとしてスライダ本体8に取付けられることにより、これらの溝部と、操作部22のエンドキャップ本体23側の面及びスライダ本体8のエンドキャップ9a側の面とで、トンネル状の油路19が形成されることとなる。
【0023】
図2(c)は、図2(a)に示すB−B断面を示している。注入口26bはグリースニップルが取付けられる穴部である。
【0024】
図2(d)は、操作部22をスライダ本体8側から見た平面図である。操作部22は、長方形状の操作部本体38と、上側の長辺部中央から上方へ延在した棒状のつまみ部28bと、左右の短辺部上端からそれぞれ左右へ延在した棒状のつまみ部28a、28cと、操作部本体38のエンドキャップ本体23側の面の図2(d)左右方向の両端部からエンドキャップ本体23へ向かって突出した凸部34a、34bと、操作部本体38の中央付近でエンドキャップ本体23側へ突出した中央凸部37とから形成されている。図2(d)において、凸部34a、34b及び中央凸部37は、操作部本体38の奥側に位置し、本来スライダ本体8側から見た平面図には表れない部分であるが、説明のため、黒く塗りつぶして示している。
【0025】
操作部本体38は、平面視において、エンドキャップ本体23に形成された凹部27よりも一回り小さい長方形状をしている。つまみ部28bは、操作部22をエンドキャップ本体23に取付けた際に、端部が、エンドキャップ本体23の上側の面とほぼ同一平面上に位置する長さとしている。一方つまみ部28a、28cは、操作部22をエンドキャップ本体23の中央に取付けた際に、エンドキャップ本体23の両側の側面から突出し、操作部22を左右のいずれかに最大限スライドさせた際に、一方のつまみ部が大きく突出し、他方のつまみ部がエンドキャップ本体23の側面とほぼ同一平面上に位置する長さとしている。つまり、つまみ部28a及び28cは、エンドキャップ本体23の中央に操作部22を配置した際に、図2(a)に示す連絡路30b及び副路29の図2(a)上下方向に延びる部分の左右方向の幅と同じ寸法だけエンドキャップ本体23の側面から、突出する長さを有している。
【0026】
中央凸部37は、図2(a)に示す連絡路30bの図2(a)左右方向の幅と同じ幅の空間を隔てて配置された2つの突起部から構成されており、当該2つの突起部は、それぞれ図2(a)に示す連絡路30bの左右方向の幅とほぼ同じ左右方向の幅を有している。したがって、中央凸部37は、操作部22をエンドキャップ本体23の中央に配置した状態においては、左右の突起部が中央凸部収容溝36に収容され、操作部22を左右のいずれかに最大限スライドさせた状態においては、いずれかの突起部が連絡路30bを塞ぐこととなる。
【0027】
一方、凸部34aは、図2(a)に示す副路29の図2(a)上下方向に延びる部分の左右方向の幅の約2倍の図2(d)左右方向の幅を有しており、操作部22をエンドキャップ本体23の中央に配置した状態において、凸部34aの右半分が副路29を塞ぐ位置に配置されており、凸部34aの左端は、操作部本体38の左端とほぼ同一平面上に位置している。凸部34bも突部34aと同様に副路29の図2(a)上下方向に延びる油路の左右方向の幅の約2倍の図2(d)左右方向の幅を有しており、操作部22をエンドキャップ本体23の中央に配置した状態において、凸部34bの左半分が副路29を塞ぐ位置に配置されており、凸部34bの右端は、操作部本体38の右端とほぼ同一平面上に位置している。エンドキャップ本体23、湾曲路構成部品25a、25b及び操作部22は、いずれも合成樹脂から成形することができる。
【0028】
図2(e)は、操作部22を図2(d)に向かって右側から見た側面図を示している。中央凸部37及び凸部34a、34bは、いずれも、副路29及び連絡路30bを構成する溝部の深さとほぼ同じ寸法だけ操作部本体38のエンドキャップ本体23側の面から突出している。
【0029】
次に、エンドキャップ9aの使用方法について説明する。図3は、操作部22をエンドキャップ本体23の中央に配置した状態における潤滑剤の流れを示している。操作部22の輪郭を破線で示し、凸部34a、34b及び中央凸部37を黒色で塗りつぶして示している。この状態においては、中央の連絡路30bは開放されており、副路29の両端付近は遮断されている。したがって、注入口26a、26b、26cのいずれの注入口から潤滑剤を注入しても、潤滑剤は副路29から中央の連絡路30bを通って主路31へ流入し、主路31を通って吐出口32aないし32dからそれぞれ湾曲路15aないし15dに吐出される。リニアガイド1を案内レール2の両側の転動路14a、14bと転動路14c、14dとが水平に配置されるように設置した場合には、このように、潤滑剤を中央の連絡路30bを通して主路31に供給することが好ましい。これにより、連絡路30bから主路31に流入した潤滑剤は、左右の主路31にほぼ等しい量に分配され、吐出口32aないし32dから湾曲路15aないし15dへそれぞれ吐出される。なお、図3ないし図6においては、図2(a)に示す湾曲路構成部品25a、25bを省略し、湾曲路構成部品25a、25bに形成された主路31のみを示している。
【0030】
図4は、操作部22をスライドさせた場合の潤滑剤の流れを示したエンドキャップ9aの平面図である。図4(a)は、操作部22を図面に向かって左側へ最大限スライドさせた状態を示している。操作部22のスライドは、つまみ部28a、28b、28cをつまんで引っ張ったり、押し込んだりすることで行うことができる。この状態においては、副路29の図面に向かって左側の図4(a)上下方向に延びる部分が開放されており、中央の連絡路30b及び副路29の右側の図4(a)上下方向に延びる部分は遮断されている。したがって、使用者が注入口26a、26b、26cのいずれの注入口から潤滑剤を注入しても、副路29から左側の連絡路30aを通じて主路31へ潤滑剤が流入し、潤滑剤は主路31を通って吐出口32aないし32dからそれぞれ湾曲路15aないし15dへ吐出される。使用者は、操作部のつまみ部28aが図面に向かって左側に大きく突出していること、つまみ部28bが左側に移動していること、及び、つまみ部28cが突出していないことから、左側の連絡路30aを通じて潤滑剤が主路31に供給されていることを認識することができる。
【0031】
図4(b)は、操作部22を図面に向かって右側へ最大限スライドさせた状態を示している。上記の左側へスライドさせた場合と同様に、潤滑剤は右側の連絡路30cから主路31へ供給され、使用者は、つまみ部28a、28b、28cによって、潤滑剤が右側の連絡路30cから供給されていることを認識することができる。
【0032】
図5(a)において、従来例に係るリニアガイドを案内レールの両側の転動路のうち一方が上側に他方が下側に配置されるように設置した場合のエンドキャップ本体50の平面図を示している。従来例に係るリニアガイドにおいては、副路52から主路53に潤滑剤を供給する供給路として、エンドキャップ中央に配置された連絡路51しか備えていないため、図5(a)に示すように、リニアガイドを転動路のうち一方が上側に他方が下側に配置されるように設置した場合も、潤滑剤を連絡路51を通して主路53に供給するしかない。そうすると、主路53のうち、連絡路51よりも上側に位置する油路は、重力の影響によって潤滑剤が供給され難くなり、逆に、連絡路51よりも下側に位置する油路には、重力の影響によって潤滑剤が過剰に供給されることとなる。したがって、潤滑剤を適切に分配した効率的な供給をすることができず、上側に位置する転動路において、潤滑不具合となる恐れがある。
【0033】
これに対して、本第1実施形態によれば、図5(b)に示すように、操作部22を上側にスライドさせることで、上側に配置された連絡路30aを通じて主路31に潤滑剤を供給することができる。操作部本体38は、凹部27の深さよりも僅かに厚い厚みを有しているため、操作部22は、凹部27の底面とスライダ本体8の端面とによって挟まれ、摩擦により支持される。連絡路30aを通過した潤滑剤は、主路31において左右にほぼ同じ量に分配され、上側に配置された湾曲路15a、15bと、下側に配置された湾曲路15c、15dのそれぞれにほぼ同じ量の潤滑剤が供給される。湾曲路15aないし15dへの供給量は、吐出口32aないし32dの開口の大きさを変えることで調整することもできる。なお、潤滑剤を注入する注入口は、注入口26a、26b又は26cのいずれであってもよい。連絡路30aより低い位置にある注入口26b又は26cから潤滑剤を注入した場合であっても、連絡路30b及び30cは遮断されているため、副路29が潤滑剤で満たされれば、副路の上側の油路を通って連絡路30aから主路31へ潤滑剤が供給される。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本願の第2実施形態に係るリニアガイドを、図6を参照しつつ説明する。図6は、本第2実施形態に係るリニアガイドのエンドキャップ本体60を示す平面図である。本第2実施形態に係るリニアガイドの構成は、上記第1実施形態に係るリニアガイドの構成と基本的に共通しているが、油路を所望の位置で開閉する手段において、上記第1実施形態と異なる。すなわち、本第2実施形態においては、副路62の端部近傍に油路を開閉する止栓61a、61cがそれぞれ設けられ、副路の中央部と主路の中央部とを結ぶ連絡路にも油路を開閉する止栓61bが設けられており、上記第1実施形態の操作部22や凹部27に当たる部分は有していない。
【0035】
止栓61a、61b、61cは、それぞれエンドキャップ本体60と、サイドシール(図1の符号10a、10b参照)とを貫通して設けられた止栓用穴に嵌入されており、サイドシールから突出した止栓61aないし61cのつまみを押し込むことで油路を遮断し、一部を引き出すことで油路を開放することができる。これにより、本第2実施形態においても、リニアガイドの取付け姿勢に応じて、副路62から主路63へ潤滑剤を供給する連絡路を選択することを可能としている。図6においては、中央の止栓61bを開放し、左右の止栓61a及び61cを遮断した場合の潤滑剤の流れを示している。
【0036】
以上のように、本発明によれば、潤滑剤を供給するための貫通穴を案内レールに設ける必要なしに、取付け姿勢に関わらず転動路へ適切に潤滑剤を供給することが可能なリニアガイドを提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 リニアガイド装置
2 案内レール
3 スライダ
4 案内レール取付け穴
5 ボール
6a、6b、6c、6d レール側転動溝
7a、7b 逃げ溝
8 スライダ本体
9a、9b エンドキャップ
10a、10b サイドシール
11、41グリースニップル
12 胴部
13a、13b 脚部
14a 転動路
15a、15b、15c、15d 湾曲路
16a 循環路
17a、17b 環状路
18a 棒型保持器
19 油路
20 シールリップ
21 枠型保持器
23、50、60 エンドキャップ本体
25a、25b 湾曲路構成部品
26a、26b、26c 注入口
27a、27b、27c つまみ用溝
28a、28b、28c つまみ部
29、52、62 副路
30a、30b、30c、51 連絡路
31、53、63 主路
32a、32b、32c、32d 吐出口
33a、33b 凸部収容溝
34a、34b 凸部
35a、35b、35c、35d 円筒突起部
36 中央凸部収容溝
37 中央凸部
38 操作部本体
61a、61b、61c 止栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、
該案内レール上を滑走可能に跨架されたスライダと、を有し、
該スライダは、前記案内レールとの間に転動体の転動路を形成するスライダ本体と、該スライダ本体の滑走方向の前後に固設され、前記案内レールの両側でそれぞれ前記転動体を反転させる湾曲路を有するエンドキャップと、を備え、
該エンドキャップに、潤滑剤を注入する注入口と、該注入口から前記湾曲路までを繋ぐ油路と、該油路から前記湾曲路それぞれへ潤滑剤を吐出する吐出口とを形成したリニアガイドにおいて、
前記油路は、前記注入口に繋がった副路と、該副路の両端部近傍から延びる一対の端部連絡路と、該一対の端部連絡路を結ぶ前記副路の部分から延びる中間連絡路と、前記一対の端部連絡路と前記中間連絡路とに繋がった主路と、を有し、
該主路は、前記一対の端部連絡路それぞれに繋がり、前記吐出口を備える一対の供給路と、該供給路と前記中間連絡路とに繋がり、前記一対の供給路と延びる方向を異にして前記一対の供給路を連通する連通路と、を有し、
前記端部連絡路が繋がっている前記供給路の部分は、前記供給路と前記連通路とが繋がる接続部を除く、該接続部と前記吐出口とを結ぶ部分であり、
前記中間連絡路が繋がっている前記連通路の部分は、前記接続部を除く、前記一対の供給路を結ぶ前記連通路の部分であり、
前記潤滑剤を任意の一の前記連絡路から前記主路へ供給するように前記油路を開閉する開閉機構を有することを特徴とするリニアガイド。
【請求項2】
前記開閉機構は、
前記エンドキャップ本体の前記スライダ本体側の面に形成され、前記油路を構成する溝部と、
該エンドキャップ本体と前記スライダ本体との間に遊嵌され、前記エンドキャップ本体側へ突出して前記油路を部分的に開閉する凸部を複数有する略板状の操作部と、
前記凸部が前記油路から退避した際に前記凸部を収容する凸部収容溝部と、を有し、
使用者が前記操作部を操作することにより、前記複数の凸部のうちいずれか一つが前記油路から退避して前記突部収容溝部に収容され、他の前記突起部が前記油路を部分的に開閉する機構であることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87785(P2013−87785A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225802(P2011−225802)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】