説明

リニアモータ、部品実装装置及び部品検査装置

【課題】組立性の良いリニアモータを提供する。
【解決手段】リニアモータは、リニアモータ本体40(固定子42及び可動子44)と、リニアガイド32と、フレーム30とから構成される。フレーム30には、固定子位置決め用の突部303及びリニアガイド位置決め用の突条305と、が一体形成されている。そして、突部303に固定子42が、突条305にレール321が当接する状態で、固定子42及びリニアガイド32(可動子44が固定されたリニアガイド32)がそれぞれフレーム30に組込まれることにより、固定子42と可動子44との間に所定寸法のギャップが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ、およびこのモータを用いて部品保持部材を駆動する部品実装装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面側の磁極が交互に異なる永久磁石を一方向に配列してなる界磁子と、この界磁子に対向して配置され、コイルを巻装したコアを具備した電機子とを備え、上記コイルに対する通電制御に応じて、界磁子及び電機子のうち一方側を固定し、他方側を可動子として当該可動子を固定子に対して相対的に永久磁石の配列方向に直線的に移動させるリニアモータが一般に知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
リニアモータは、種々の産業機械に適用されており、電子部品を基板上に搬送して実装する部品実装装置においても使用されている。例えば、この部品実装装置では、部品吸着用のノズルを昇降駆動させるための駆動機構にリニアモータが適用されている。
【特許文献1】特開2005−253259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータは、界磁子と電機子との間に所定寸法のギャップを設けることが適正な推進力を発生させる上で重要となる。そのため、従来では、両者の間にシム等を挟み込んだ状態で界磁子と電機子とのギャップ調整を行った上で、両者を固定するこことが行われている。しかしながら、電機子のコアと界磁子の永久磁石との間の磁気吸引力が強い場合には、シムが変形して所望のギャップが得られなかったり、コアと永久磁石との間にシムが強固に挟み込まれてシムの抜き取りが不能になる等、ギャップを精度良く確保しながら組立てることが難しいという課題がある。従って、この点を改善することが求められる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、組立性の良いリニアモータを提供することにあり、第2の目的は、リニアモータが適用される部品実装装置や部品検査装置においてその組立性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかるリニアモータは、互いに対向するように並列に並ぶ固定子と可動子とを有し、これら固定子と可動子との間に吸引力を発生させながら前記並び方向と直交する一軸方向に前記可動子を移動させるリニアモータにおいて、前記固定子および可動子が組込まれるフレーム部材と、このフレーム部材に固定され、前記一軸方向と直交する方向への移動を規制しながら当該一軸方向に前記可動子を移動自在に案内するレールと、前記フレーム部材にそれぞれ設けられ、前記固定子を前記フレーム部材に対して前記並び方向に位置決めする第1位置決め部、及び前記レールを前記並び方向に位置決めする第2位置決め部と、を備え、前記固定子および前記レールがそれぞれ前記位置決め部により位置決めされた状態で前記フレーム部材に固定されることにより、前記固定子と可動子との間に所定寸法の隙間が形成されているものである。
【0007】
このリニアモータの構成によれば、固定子を第1位置決め部に当接させた状態でフレーム部材に固定する一方、可動子を組付けたレールを第2位置決め部に当接させた状態でフレーム部材に固定すれば、前記固定子と可動子との間に自ずと所定寸法の隙間が形成される。そのため、固定子と可動子との組付けに際して従来のようなシムを使った隙間調整を行うことなく、モータの組立を簡単、かつ速やかに行うことが可能となる。
【0008】
この構成において、前記第1位置決め部は、前記固定子における可動子側の面を当接させることにより当該固定子を前記フレーム部材に対して位置決めし、前記第2位置決め部は、前記レールにおける固定子側の面を当接させることにより前記可動子を前記フレーム部材に対して位置決めするように構成されているのが好適である。
【0009】
この構成によれば、固定子および可動子は、位置決め部材によって互いに接近する方向への変位が規制されるので、組立中に、磁気吸引力により固定子と可動子とが不意に吸着するとことが防止される。しかも、磁気吸引力により固定子及び可動子が互いに引き付け合うことで各位置決め部に固定子及び可動子が確実に当接し、その結果、自ずと所定寸法のギャップが確保されることとなる。そのため、非常に組立易いものとなる。
【0010】
なお、上記の構成において、前記可動子が、前記固定子に対向する側の表面極性が交互に異なるように前記一軸方向に複数の磁石が並ぶ界磁子からなり、前記固定子が、前記一軸方向に複数のティースが並ぶコアを有し、当該コアの前記ティースにコイルが装着された電機子からなる場合には、前記第1位置決め部として一対の位置決め部が前記一軸方向に所定間隔を隔てて設けられる一方、前記コアのティース並び方向両端に当該ティース並び方向に延設される延設部が設けられ、前記第1位置決め部は、前記コアの各延設部をそれぞれ前記一対の位置決め部に当接させることにより前記固定子を前記フレーム部材に対して位置決めするように構成されるものであるのが好適である。
【0011】
このようにコアの両端に一対の延設部を設け、これら延設部を一対の位置決め部(第1位置決め部)に当接させる構成によれば、コイル部分の外側で固定子を位置決めすることができるので、固定子と可動子との間の磁束形成に影響を与えることなく固定子を適切に位置決めすることができ、また、比較的剛性を有するコアが被位置決め部分となるため変形等を伴い難く位置決めの信頼性も高いものとなる。
【0012】
この場合、例えば前記コアが、プレート状の複数の構成部材が前記ティース並び方向と直交する方向に積層されることにより構成されるものである場合には、当該コアには、前記構成部材の積層方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔を通じて前記フレーム部材にボルトが螺合挿入されることにより前記固定子が前記フレーム部材に固定されているのが好適である。
【0013】
すなわち、具体的な固定方法としては種々の方法が適用可能であるが、プレート状の複数の構成部材が前記ティース並び方向と直交する方向に積層されるものの場合には、上記のような固定構造を用いることでコア全体の一体性を保ちつつ安定的に、かつ強固に固定子をフレーム部材に対して固定することが可能となる。
【0014】
なお、各位置決め部材は、前記フレーム部材とは別体に形成されたものであり当該フレーム部材にボルト等により固定されたものであってもよいが、位置決めの信頼性を高める上では、前記フレーム部材に一体形成されているものであるのが好適である。
【0015】
一方、本発明に係る部品実装装置は、リニアモータを有する駆動機構により昇降駆動される部品保持部材を有し、この保持部材の昇降動作に伴い部品供給位置からの部品の取出し、及び基板上への部品の実装を行う部品実装装置において、前記リニアモータとして、上記のようなリニアモータを有するものである。
【0016】
また、本発明に係る部品検査装置は、リニアモータを有する駆動機構により昇降駆動される部品保持部材を有し、この保持部材の昇降動作に伴い部品供給位置からの部品の取出し、及び所定の検査部への部品の出し入れを行う部品検査装置において、前記リニアモータとして、上記のようなリニアモータを有するものである。
【0017】
これらの装置によれば、部品保持部材の駆動機構として上記のようなリニアモータを適用しているので、結果的に、リニアモータの組立工程を含む装置全体の組立性も良いものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリニアモータによれば、固定子を第1位置決め部に当接させた状態でフレーム部材に固定し、また、可動子を組付けたレールを第2位置決め部に当接させた状態でフレーム部材に固定すれば、前記固定子と可動子との間に自ずと所定寸法の隙間が形成される。そのため、固定子と可動子との組付けに際して従来のようなシムを使った隙間調整を行う必要が無くなり、モータの組立を簡単、かつ速やかに行うことが可能となる。また、このようなリニアモータを搭載した本発明に係る部品実装装置及び部品検査装置によれば、上記の効果を享受できるため、リニアモータの組立工程を含む装置全体の組立性が向上することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明に係るリニアモータが適用される部品実装装置(本発明に係る部品実装装置)の概略構成を平面図で示している。なお、この図を含め本説明で使用する図面には、各図の方向関係を明確にするためにXYZ直角座標軸が示してある。
【0020】
同図に示すように、部品実装装置の基台10上には、基板搬送機構としてコンベア12が配置されており、このコンベア12によりプリント基板P(以下、単に基板Pという)が同図右側から左側に搬送されて所定の作業位置(同図に示す基板Pの位置)に搬入されるようになっている。作業位置の下方領域には、実装作業中に基板Pをバックアップピンにより支持する基板支持装置11が配置されている。
【0021】
前記コンベア12の両側(図1では上下両側)にはそれぞれフィーダ設置領域13が設けられており、これらフィーダ設置領域13には、例えばテープフィーダ14等の部品供給装置がコンベア12に沿って並列に配置されている。各テープフィーダ14は、集積回路(IC)、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の小片状のチップ部品を所定間隔で収納、保持したテープが巻回されたリールを保持しており、このリールから前記テープを繰り出すことによりフィーダ先端の部品供給位置に部品を供給し、ヘッドユニット15により部品をピックアップさせるように構成されている。
【0022】
前記基台10の上方には部品実装用の前記ヘッドユニット15が設けられている。このヘッドユニット15は、前記テープフィーダ14から部品を吸着して基板P上に搬送すると共に、基板P上の所定位置に実装するもので、所定領域内でX軸方向(コンベア12による基板Pの搬送方向)及び水平面上でこれと直交するY軸方向にそれぞれ移動可能とされている。すなわち、ヘッドユニット15は、X軸方向に延びるヘッドユニット支持部材18に移動可能に支持されている。また、このヘッドユニット支持部材18は、その両端部がY軸方向に延びる固定レール17に支持され、この固定レール17に沿ってY軸方向に移動可能となっている。そして、X軸サーボモータ20によりボールねじ軸21を介してヘッドユニット15がX軸方向に駆動される一方、Y軸サーボモータ22によりボールねじ軸23を介してヘッドユニット支持部材18がY軸方向に駆動されるようになっている。
【0023】
ヘッドユニット15には、図2に示すように、部品を保持して搬送するための複数のヘッド16が搭載されており、当実施形態では、合計10個のヘッド16がX軸方向に列状に配置されている。各ヘッド16は、Z軸方向(上下方向)に延びる駆動シャフト34を有しており、この駆動シャフト34の先端(下端)には部品吸着用のノズル35が取付けられている。ノズル35は、駆動シャフト34の内部通路及び図略の切換弁等を介して負圧発生装置に接続されており、部品吸着時には、吸着ノズル先端に前記負圧発生装置から負圧吸引力が与えられることにより部品の吸着、保持が可能となっている。この当実施形態では、この駆動シャフト34及びノズル35が本発明に係る部品保持部材に相当する。
【0024】
ノズル35(駆動シャフト34)は、ヘッドユニット15に対して昇降(Z軸方向の移動)およびノズル中心軸(R軸)回りの回転が可能とされ、昇降駆動機構および回転駆動機構によりそれぞれ駆動されるようになっている。これらの駆動機構のうち昇降駆動機構は各ヘッド16に各々組み込まれている。なお、昇降駆動機構を含む各ヘッド16の構成、及びノズル35の回転駆動機構の構成については、後に説明する。
【0025】
ヘッドユニット15には、基板撮像ユニット24が搭載されている。この基板撮像ユニット24は、CCD等の撮像素子をもつエリアカメラおよび照明装置等からなり、ヘッドユニット15に対して下向きの姿勢で固定され、作業位置に搬入される基板P上の各種マークを撮像可能となっている。
【0026】
なお、前記基台10上には、図1に示すように、ヘッドユニット15の各ヘッド16(ノズル35)に吸着された部品を撮像するための部品撮像ユニット25が設けられている。この部品撮像ユニット25も、前記基板撮像ユニット24と同様にエリアカメラおよび照明装置等から構成されており、基台10上に上向きの姿勢で固定されている。これにより、部品吸着後、ヘッドユニット15が部品撮像ユニット25上方に配置された際に、各ヘッド16にて吸着された部品を部品撮像ユニット25により撮像可能となっている。
【0027】
次に、ヘッドユニット15および各ヘッド16の具体的な構成について説明する。
【0028】
前記ヘッドユニット15には上記の通り10個のヘッド16が搭載されている。各ヘッド16は、X軸方向に扁平なユニット化された部材であり、図2に示すように、X軸方向に10個並べた状態で一体にヘッドユニット15に対して固定されている。
【0029】
図3〜図5は、前記ヘッド16の具体的な構成を示しており、図3は側面図(図2のIII−IIIに沿った矢視図)で、図4は正面図で、図5は分解斜視図でそれぞれヘッド16を示している。なお、図5では、駆動シャフト34等、一部の部品は便宜上省略されている。
【0030】
前記ヘッド16は、概略的には、前記ノズル35を下端部に備える前記駆動シャフト34と、この駆動シャフト34とノズル35等をZ軸方向に駆動するリニアモータと、ノズル35等に対して上向きの付勢力を付与するリターンスプリング48とから構成されている。リニアモータは、前記駆動シャフト34をZ軸方向に案内するリニアガイド32と、固定子42及び可動子44からなるリニアモータ本体40と、フレーム30(本発明に係るフレーム部材に相当する)とから構成されており、このフレーム30に、前記駆動シャフト34やリターンスプリング48が組込まれることにより、ヘッド16がユニット化されている。そして、リニアモータによりノズル35(駆動シャフト34)をZ軸方向に駆動すると共に、リニアモータの停止時には、リターンスプリング48の付勢力によりノズル35を上方位置に保持するように構成されている。
【0031】
詳細に説明すると、前記フレーム30は、ベースプレート301の周囲一部分に側壁部302を備えたX軸方向に扁平な皿形の部材で、表面処理を施したアルミ合金等により構成されている。
【0032】
リニアモータ本体40は、上記の通り固定子42と可動子44とを有している。固定子42は、櫛型のコア421にコイル422が装着された固定子本体、及びこの固定子本体とは別体の一対のサブティース423,423により構成されている。固定子本体及びサブティース423,423は各々ベースプレート301にボルトで固定されており、図3に示すように、サブティース423,423は、固定子本体の前記コイル422の両端に並ぶようにベースプレート301に固定されている。これらサブティース423,423は、モータ駆動時に固定子両端の磁束形成を補うことにより所謂コギング力を低減するものである。なお、当実施形態では、サブティース423,423は、固定子本体とは別体に設けられているが、勿論、固定子本体(コア421)に一体的に設けられていてもよい。
【0033】
可動子44は、固定子42に対してY軸方向に横並びに設けられている。可動子44は、Z軸方向に延びる断面コ字型のスライドベース441を有しており、このスライドベース441の側面(固定子42との対向面)にヨーク443を介して複数の永久磁石442が配列された構成となっている。具体的には、固定子42側がN極、可動子44側がS極の永久磁石442と、固定子42側がS極、可動子44側がN極の永久磁石442とがZ軸方向に交互に配列されている。そして、この可動子44がリニアガイド32の後記スライダ322に固定されることにより、当該可動子44がZ軸方向に移動可能となっている。
【0034】
リニアガイド32は、Z軸方向に延びるレール321と、このレール321に対してZ軸方向にスライド自在に、かつZ軸方向と直交する方向への移動不能に装着される複数のスライダ322,322とから構成されており、前記レール321がベースプレート301にボルトで固定されることによりフレーム30に組み込まれている。そして、このリニアガイド32の各スライダ322,322に対してリニアモータ本体40の前記可動子44(スライドベース441)が固定されている。これにより図外のリニア駆動制御部から前記リニアモータ本体40の固定子42に所定の駆動信号が与えられると、その駆動信号に応じた方向及び速度で可動子44がZ軸方向に駆動される構成となっている。
【0035】
なお、固定子42と可動子44は、これらの間(正確には櫛形のコア421の可動子側端部と永久磁石442の固定子側表面との間)に所定のギャップが形成された状態でフレーム30に固定されている。
【0036】
詳しく説明すると、前記ベースプレート301には、固定子位置決め用の基準面304を有する一対の突部303,303(本発明の第1位置決め部に相当する)が一体形成されており、他方、固定子42の前記コア421の両端にはティース並び方向に延設される延設部421a,421aが一体に形成されている。そして、各突部303,303の基準面304に対し、コア421の各延設部421aが前記可動子44側とは反対側(図3では左側)から突き当てられ、この状態でコア421に形成される貫通孔を介してボルト425がベースプレート301のねじ孔301aに螺合挿入されている。これにより前記固定子42がY軸方向に位置決めされた状態でフレーム30に組付けられている。
【0037】
また、前記ベースプレート301には、可動子位置決め用の突条305(本発明の第2位置決め部に相当する)が一体形成されており、この突条305に対し、前記レール321が前記固定子42側とは反対側(図3では右側)から突き当てられ、この状態で、当該レール321に形成される貫通孔を介してボルト325がベースプレート301のねじ孔301bに螺合挿入されている。これによりリニアガイド32を介して前記可動子44がY軸方向に位置決めされた状態でフレーム30に組付けられている。なお、レール321をベースプレート301に組付けた後に前記可動子44をスライダ322の定められた位置に組付けてもよいし、予め前記可動子44をスライダ322に組付けてからレール321をベースプレート301に組付けてもよい。
【0038】
このように、前記固定子42及び可動子44がそれぞれY軸方向に位置決めされた状態でフレーム30に組付けられることにより、固定子42と可動子44との間に所定寸法のギャップが形成されている。なお、図中符合323は、スライダ322のZ軸方向の移動を規制するストッパであり、また符合324は、前記可動子44(スライドベース441)のZ軸方向の移動を規制するストッパであり、それぞれベースプレート301にボルトで固定されている。
【0039】
上記のように構成されたリニアモータの前記可動子44に対して駆動シャフト34が取付けられている。詳しくは、前記スライドベース441の下端部分に、前記固定子42の下方位置に向かってY軸方向に延びる取付アーム37が固定され、この取付アーム37の下面にシャフト支持部材36を介して駆動シャフト34が取付けられている。
【0040】
駆動シャフト34は、中空軸からなり、シャフト支持部材36に対してR軸回りに回転自在に支持されると共に、このシャフト支持部材36に設けられる負圧導入用のポート361及び図外の負圧通路を介して前記負圧発生装置に接続されている。
【0041】
駆動シャフト34は、図示されないスプライン等機構により、軸方向に変位可能に、かつシャフト中心回り(R軸回り)に回転自在に、前記ヘッドユニット15に保持されている。
【0042】
そして、リニアモータ本体40の前記固定子42を挟んでリニアガイド32とは反対側の位置にリターンスプリング48が配設されている。このリターンスプリング48は、前記フレーム30の上端部分と前記取付アーム37とに亘って装着されており、これにより取付アーム37及びシャフト支持部材36を介して前記駆動シャフト34に上向きの付勢力が付与されている。
【0043】
なお、ヘッド16には、可動子44及び駆動シャフト34(ノズル35)の位置を検出するための位置検出サンサとして磁気センサ45が組込まれている。すなわち、図5に示すように、リニアモータ本体40の前記可動子44には、磁気的に目盛りを記録したプレート状の磁気スケール46がスライドベース441に沿って固定されている。一方、フレーム30には、前記ベースプレート301に設けられたセンサ支持部306に、MRセンサやホールセンサ等の磁気センサ45が取付けられており、この磁気センサ45により磁気スケール46を読み取ることにより、可動子44及び駆動シャフト34(ノズル35)の位置が検出可能となっている。なお、図中符合451は、磁気センサ45の制御基板等を被うカバー部材である。
【0044】
このように構成された10個のヘッド16が互いにX軸方向に重装され、前記ヘッドユニット15に対してその前面側(ヘッドユニット支持部材18側とは反対側)にリターンスプリング48が位置する状態で一体に固定されている。詳しくは、前記フレーム30のうちリニアガイド32等の組付け面側に一対の位置決めピン310,310が突設される一方、他面側にはこれに対応する図外の位置決め孔が穿設されており、これら位置決めピン310,310が隣接するヘッド16の位置決め孔に挿入されることによって各ヘッド16が互いに位置決めされた状態でX軸方向に重装されている。そして、この重装されたヘッド16群に対してそのX軸方向外側から各々取付用フレーム15bが重装され、各フレーム30に形成される貫通孔312を通じて取付用フレーム15b及びヘッド16群がボルト151,ナット152により一体に締結された上で、両取付用フレーム15bがヘッドユニット15の本体フレーム15aに対して位置決め固定されている。これによって10個のヘッド16が一体に前記ヘッドユニット15に固定されている。
【0045】
ヘッドユニット15に固定された各ヘッド16の駆動シャフト34は、図2に示すように、本体フレーム15aに設けられる保持部15cにより保持されている。さらに、駆動シャフト34は前記保持部15cに回転自在に支持され、図外の駆動ベルト等により、前記本体フレーム15aに固定された駆動モータ(回転型モータ)26,26の駆動プーリ(図示省略)に連結されており、これによって上記回転駆動機構が構成されている。
【0046】
上記のように構成された部品実装装置では、次のようにして部品の実装が行われる。
【0047】
まず、ヘッドユニット15がフィーダ設置領域13に移動して各ヘッド19による部品の吸着が行われる。具体的には、所定のヘッド16がテープフィーダ14の上方に配置された後、リニアモータにより駆動シャフト34が昇降駆動され、これによりノズル35が下降してテープ内の部品を吸着して取出す。この際、可能な場合には、複数のヘッド16により同時に部品の取出しが行われる。部品の吸着が完了すると、所定の経路に沿ってヘッドユニット15が部品撮像ユニット25の上方を経由してから基板P上に移動する。この移動中に、各ヘッド16(ノズル35)による部品の吸着状態が画像認識されて実装時の補正量が演算される。そして、ヘッドユニット15が基板P上の最初の実装位置に到達すると、リニアモータにより駆動シャフト34が昇降駆動され基板P上に部品が実装され、以降、ヘッドユニット15が順次実装位置に移動することにより基板P上に残りの吸着部品が実装されることとなる。
【0048】
以上のような本発明に係る部品実装では、リニアモータ式の駆動機構によりノズル35(駆動シャフト34)を昇降駆動するようにヘッド16が構成されているが、各ヘッド16を構成する上記リニアモータは、上記の通り、固定子42(固定子本体)を突部303,303に当接させる一方、例えば予め可動子44を組付けたリニアガイド32(レール321)を突条305に当接させた状態でフレーム30に固定すれば、固定子42と可動子44との間に自ずと所定寸法のギャップが形成される構成となっている。詳しくは、固定子42及び可動子44を突部303及び突条305に当接させ、コア421と永久磁石442との磁気吸引力を利用して引き付け合わせながらこれら固定子42及び可動子44を固定することで、自ずと所定寸法のギャップが形成される。そのため、フレーム30に対する固定子42及び可動子44の組付け作業に際し、従来のようなシムによる隙間調整を行うことなく所定寸法の上記ギャップを適切に確保することができ、従って、リニアモータの組立、つまり当該実施形態においてはヘッド16の組立を簡単に、かつ速やかに行うことができる。
【0049】
しかも、上記リニアモータは、Y軸方向において可動子44側とは反対側から突部303,303に固定子42を当接させて当該固定子42を位置決めし、他方、固定子42側とは反対側からレール321を突条305に当接させて可動子44を位置決めする構成となっているので、互いに接近する方向への固定子42及び可動子44の変位が自ずと規制される。従って、組立中にコア421と永久磁石442との磁気吸引力によって固定子42と可動子44とが不意に吸着してしまうことを防止でき、より組立易いものとなる。
【0050】
そして、この部品実装装置では、上記の通りヘッドユニット15には10個のヘッド16が搭載されているため、上記の通りヘッド16(リニアモータ)の組立性が良好である分、リニアモータの組立工程を含む装置全体の組立性も良いものとなる。また、各ヘッド16間の上記ギャップのバラツキを抑えることもできるので、各ヘッド16間でより等しいノズル昇降動作を行わせることが可能となる。従って、各ヘッド16の動作のバラツキに起因した不具合、例えば、共通の制御プログラムに従って各ヘッド16を駆動制御しながらも一部のヘッド16のノズル昇降動作にずれが生じて部品の吸着不良や実装不良が生じ易くなるといった不都合を未然に回避することができるという利点もある。
【0051】
なお、以上説明した部品実装装置は、本発明に係るリニアモータが適用される部品実装装置(本発明に係る部品実装装置)の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態のリニアモータでは、コア421のティース並び方向両端に延設部421aを一体形成し、両延設部421aをベースプレート301に形成された一対の突部303,303にそれぞれ当接させることにより固定子42をフレーム30に対して位置決めしているが、例えばベースプレート301に位置決め用の凹部を形成する一方、コア421のうち当該ベースプレート301への重ね合わせ面に凸部を設け、当該凸部を前記凹部に嵌合させることにより固定子42を位置決めするように構成してもよい。但し、上記実施形態のような位置決め構造によれば、コイル422の外側の部分で固定子42を位置決めすることができるので、固定子42と可動子44との間の磁束形成に影響を与えることなく固定子42を適切に位置決めすることができ、また、比較的剛性を有するコア421が被位置決め部分となるため変形等を伴い難く位置決めの信頼性も高いものになるという利点がある。
【0053】
また、上記実施形態のリニアモータでは、固定子42を、突部303に対して可動子44側とは反対側から当接させ、またレール321を、突条305に対して固定子42側とは反対側から当接させることにより、固定子42及び可動子44を位置決めする構成となっているが、勿論、位置決め部に対する固定子42及びレール321(リニアガイド32)の当付け方向は、固定子42及び可動子44を適切に位置決めできれば、特に限定されるものではない。
【0054】
また、実施形態の説明中では言及していないが、固定子42のコア421は、当実施形態では、プレート状の複数の構成部材が前記ティース並び方向と直交する方向(X軸方向)に積層された構造を有している。そのため、コア全体の一体性を保ちつつ安定的に、かつ強固に固定子42をフレーム30に対して固定する観点から、コア421に、前記積層方向(X軸方向)に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔を介してボルト425がベースプレート301のねじ孔301aに螺合挿入されることによりフレーム30に前記固定子42が固定される構成となっている。従って、コア421が一体形成されたブロック状のものであるような場合には、例えばコア421の延設部421aにY軸方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を介してボルトを前記突部303に螺合挿入することにより、フレーム30に対して前記固定子42を固定するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態のリニアモータでは、位置決め部としてフレーム30に突部303及び突条305が一体形成されているが、例えば突部303及び突条305は、フレーム30とは別体に設けられたものであり、ボルト等の固定手段により突条305に固定されるものであってもよい。但し、位置決めの信頼性の観点から、実施形態のようにフレーム30に一体形成されている方が望ましい。
【0056】
また、上記実施形態では、部品実装装置を例に本発明の適用について説明したが、本発明の適用対象は部品実装機に限定されるものではなく、例えば、部品を保持可能な部品保持部材が搭載された移動可能なヘッドユニットを備え、リニアモータを有する駆動機構により部品保持部材をヘッドユニットに対して昇降駆動することにより部品供給部からの部品の取出し、及び所定の検査部への部品の出し入れを行うように構成された部品検査装置についても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るリニアモータが適用される部品実装装置(本発明に係る部品実装装置)の概略構成を示す平面図である。
【図2】ヘッドユニットの具体的な構成を示す正面図である。
【図3】ヘッドユニットに搭載されるヘッドの構成を示す側面図(図2のIII−III線に沿った矢視図)である。
【図4】ヘッドの構成を示す正面図である。
【図5】ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図6】ヘッドユニットに対する各ヘッドの組付け方を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
15 ヘッドユニット
16 ヘッド
30 フレーム
32 リニアガイド
34 駆動シャフト
35 ノズル
40 リニアモータ本体
42 固定子
44 可動子
321 レール
322 スライダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するように並列に並ぶ固定子と可動子とを有し、これら固定子と可動子との間に吸引力を発生させながら前記並び方向と直交する一軸方向に前記可動子を移動させるリニアモータにおいて、
前記固定子および可動子が組込まれるフレーム部材と、
このフレーム部材に固定され、前記一軸方向と直交する方向への移動を規制しながら当該一軸方向に前記可動子を移動自在に案内するレールと、
前記フレーム部材にそれぞれ設けられ、前記固定子を前記フレーム部材に対して前記並び方向に位置決めする第1位置決め部、及び前記レールを前記並び方向に位置決めする第2位置決め部と、を備え、
前記固定子および前記レールがそれぞれ前記位置決め部により位置決めされた状態で前記フレーム部材に固定されることにより、前記固定子と可動子との間に所定寸法の隙間が形成されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアモータにおいて、
前記第1位置決め部は、前記固定子における可動子側の面を当接させることにより当該固定子を前記フレーム部材に対して位置決めし、前記第2位置決め部は、前記レールにおける固定子側の面を当接させることにより前記可動子を前記フレーム部材に対して位置決めすることを特徴とするリニアモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のリニアモータにおいて、
前記可動子は、前記固定子に対向する側の表面極性が交互に異なるように前記一軸方向に複数の磁石が並ぶ界磁子からなり、前記固定子は、前記一軸方向に複数のティースが並ぶコアを有し、当該コアの前記ティースにコイルが装着された電機子からなるものであり、
前記第1位置決め部として一対の位置決め部が前記一軸方向に所定間隔を隔てて設けられる一方、前記コアのティース並び方向両端に当該ティース並び方向に延設される延設部が設けられ、前記第1位置決め部は、前記コアの各延設部をそれぞれ前記一対の位置決め部に当接させることにより前記固定子を前記フレーム部材に対して位置決めすることを特徴とするリニアモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のリニアモータにおいて、
前記コアは、プレート状の複数の構成部材が前記ティース並び方向と直交する方向に積層されることにより構成されるものであり、当該コアには、前記構成部材の積層方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔を通じて前記フレーム部材にボルトが螺合挿入されることにより前記固定子が前記フレーム部材に固定されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のリニアモータにおいて、
前記各位置決め部は、前記フレーム部材に一体形成されていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項6】
リニアモータを有する駆動機構により昇降駆動される部品保持部材を有し、この部品保持部材の昇降動作に伴い部品供給位置からの部品の取出し、及び基板上への部品の実装を行う部品実装装置において、
前記リニアモータとして、請求項1乃至5の何れか一項に記載のリニアモータを有することを特徴とする部品実装装置。
【請求項7】
リニアモータを有する駆動機構により昇降駆動される部品保持部材を有し、この部品保持部材の昇降動作に伴い部品供給位置からの部品の取出し、及び所定の検査部への部品の出し入れを行う部品検査装置において、
前記リニアモータとして、請求項1乃至5の何れか一項に記載のリニアモータを有することを特徴とする部品検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−171681(P2009−171681A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4642(P2008−4642)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】