説明

リニア誘導位置センサ

リニア位置センサは、電気エネルギ源によって励起されるとき電磁放射線を発生させ、かつ第1の方向に巻かれた送信器コイルを有する。受信器コイルは、送信器コイル内に含まれている。受信器コイルは、第1の方向に巻かれた第1のループと逆の方向に巻かれた第2のループとの両方を含む。結合器素子は、送信器コイルに対して第1の方向に沿って線状に移動し、これは、送信器コイルと受信器コイルとの間の誘導結合を結合器素子の線形位置の関数として変動させることによって、送信器コイルによって励起されたときの受信器コイルからの電気出力信号を変動させる。受信器コイルの第1および第2のループは、互いに第1の方向に沿って線状に配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2008年4月15日に出願された米国仮特許出願連続番号第61/045,014号および2009年4月8日に出願された米国特許出願連続番号第12/420,328号の優先権を主張し、これらの両出願は、この明細書中に引用により援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
I.発明の分野
この発明は、概して位置センサに関し、より具体的には、リニア誘導位置センサに関する。
【0003】
II.関連技術の説明
現在の自動車両は、典型的に、複数の異なる位置センサを含み、この位置センサは、このセンサの位置を示す電気信号を発生させる。位置センサの中には、センサ素子の回転位置を表わす電気信号出力を発生させるものもあり、センサ素子の線形位置を表わす電気出力信号を発生させるリニアセンサである位置センサもある。
【0004】
以前より知られているセンサの多くは、プリント回路板の上に形成され、2.4メガヘルツ交流源などの高周波交流源で電気的に励起される励振器コイルすなわち送信器コイルを含む。受信器コイルは、励振器コイルが電圧を受信器コイルに誘起するように、励振器コイルに極めて接近して位置決めされており、励振器コイルの内部内に位置決めされていることが多い。
【0005】
典型的に、励振器コイルは、単一の方向に巻かれており、プリント回路板上に形成された複数のループを含み、受信器コイルは、プリント回路板上に形成されており、2つ以上の逆に巻かれたループを含む。以前より知られているリニア誘導位置センサにおいて、金属材料で構築された結合器素子は、受信器コイルと励振器コイルとの両方に対して第1の方向に沿って線状に移動可能である。この連結器素子が、励振器コイルと受信器コイルとの間の誘導結合と干渉する量は、結合器素子が第1の方向に沿って励振器コイルおよび受信器コイルの一方の端部から励振器コイルおよび受信器コイルの他方の端部まで移動されるにつれて、受信器コイルの互いに逆に巻かれた複数のループ間で線形に変動する。するとこれにより、受信器コイルの電圧出力が、線形に、結合器素子の移動と同期して理想的に変動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの以前より知られているリニア誘導位置センサのための受信器コイルは、受信器コイルのループが結合器素子の運動の方向のみならず結合器素子の運動に垂直の方向にも互いに並んで位置決めされているように設計されている。これにより、誘導センサの総製造コストが不利に増加し、また励振器コイルおよび受信器コイルに対する結合器素子の傾きによって引き起されることがある出力信号のエラーが増加する。
【0007】
本発明の概要
この発明は、以前より知られているリニアセンサの上記の不利点を解消するリニア誘導位置センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
端的には、この発明のセンサは、高周波交流源などの電気エネルギ源によって励起されるとき電磁放射線を発生させる送信器コイルを含む。送信器コイルは、単一の方向に巻かれており、好ましい実施例においては、プリント回路板上に形成されている。
【0009】
受信器コイルも、送信器コイルの内部内に含まれている。この受信器コイルもプリント回路板上に形成されており、第1の方向に巻かれた第1のループと、第1の方向と逆の第2の方向の方向に巻かれた第2のループとを含む。
【0010】
結合器素子は、第1の方向に沿って送信器コイルおよび受信器コイルに対して線状に移動可能である。結合器素子は、送信器コイルと受信器コイルとの間の誘導結合を結合器素子の線形位置の関数として変動させる金属材料で構築されている。そうする際、結合器素子は、送信器コイルによって励起されるときの受信器コイルからの電気出力信号を結合器素子の位置の関数として変動させる。
【0011】
以前より知られている受信器コイルとは異なり、受信器コイルの第1および第2のループは、互いに第1の方向、すなわち結合器素子の移動の方向に沿って、隣接して線状に配列されている。そのような構成は、受信器コイルの製造を単純化するのみならず、結合器素子の傾きによって引き起されるエラーの量を減少もさせる。
【0012】
結合器素子の傾きによって引き起される、受信器コイルからの信号中のエラーをさらに削減するために、結合器素子は、結合器素子が受信器コイルおよび送信器コイルの最上部と底部との両方を覆うように、任意選択的にU字型である。しがたって、結合器素子の傾きによって引き起される、送信器コイルおよび受信器コイルの最上部での誘導結合のいかなる増加も、送信器コイルおよび受信器コイルの底部で結合が減少することによって相殺され、逆もまた同様である。
【0013】
図面の簡単な説明
この発明は、以下の詳細な説明を添付の図面に関連して読むとよりよく理解されるであろう。図中、類似する参照文字は、いくつかの図を通じて類似する部分を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1の実施例を説明する平面図である。
【図2】図1と類似するがセンサのコイルに関連して用いられる結合素子を説明する図である。
【図3】センサとともに用いられる代替的な結合器素子の図である。
【図4】図1に類似するがその変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施例の詳細な説明
まず図1を参照して、多ループ送信器コイル12を有する改良されたリニア誘導センサ10が示されている。送信器コイル12のループは、すべて、同じ方向にまかれており、送信器コイルは、高周波交流源14によって励起される。たとえば、自動車用途については、交流源14の周波数は、典型的に、約2.4メガヘルツの範囲内である。
【0016】
基準コイル16も、基準コイル16の一部がセンサ10の各端部18および20の周りに巻かれるように設けられている。基準コイル16は、温度、環境要素などを周知の方法で補償するための手段を提供する。
【0017】
受信器コイル22は、送信器コイル12の内部内に部分的にか全体的にかのいずれかで含まれ得る。受信器コイル22は、蝶ネクタイの形態をしており、線状に配列され隣接する2つの部分24および26を含む。その上、受信器コイル22のこれらの部分24および26は、互いに逆に巻かれている。
【0018】
受信器コイル22の逆に巻かれた部分24および26は、実質的に互いに同じ大きさであり、互いに同じ送信器コイル12からの相対的な間隔を有する。その結果、図1に示されるように、交流源による送信器コイル12の励起の際、受信器コイル22の第1の部分24に送信器コイル12によって誘起される電圧が受信器コイル22の逆に巻かれた部分26によって相殺されるため、受信器コイル22の出力28は、電圧ゼロを示すであろう。
【0019】
次に図2を参照して、センサ10から有意な出力信号を提供するために、金属材料で構築された結合器素子30は、矢印32によって示される方向にセンサ10に沿って線状に移動可能である。結合器素子30は、その位置に応じて、送信器コイル12と受信器コイル22との間の誘導結合と、変動可能に干渉する。その結果、結合器素子30がセンサ10に沿って移動するにつれて、送信器コイル12と受信器コイル22の逆に巻かれた部分24および26との間の誘導結合は変動し、したがって出力28での受信器コイル22からの出力電圧を、結合器素子30のセンサ10に対する線形位置に比例する量だけ変動させる。
【0020】
実施の際、送信器コイル12、受信器コイル22および基準コイル16は、すべてプリント回路板上に形成されている。受信器コイル22の蝶ネクタイ構成により、プリント回路板製造の複雑さが減少され、したがって総コストが削減されるが、動作性能は損失されない。
【0021】
次に図3を参照して、結合器の一方の脚部32がセンサ10のためのプリント回路板の最上部に位置決めされ、かつ他方の脚部34がセンサ10のためのプリント回路板の底部に位置決めされるように、断面形状がおおむねU字型である改良された結合器素子30が示されている。脚部32および34は両方とも、センサ10の送信器コイル12と受信器コイル22との間の誘導結合を引起す。しかしながら、結合器は、これに代えて平坦な通常の形状を有しても良い。
【0022】
しかしながら、U字型結合器素子30の利点は、結合器素子30のセンサプリント回路板に対するいかなる傾きまたは空隙変動も、自動的に補償されるという点である。たとえば、センサ10のためのプリント回路板と第1の脚部32との間の空隙が増加する、したがって結合器素子30の誘導結合を減少させるにつれて、センサ10と結合器素子30の他方の脚部34との間の誘導結合が増加し、したがって結合器素子30とセンサプリント回路板との間の小さな空隙変動を自動的に補償する。同様に、U字型構成30は、結合器素子30のセンサプリント回路板に対するいかなる傾きも自動的に補償する。
【0023】
次に図4を参照して、閉鎖ループを形成する励起コイル50を有する360°回転センサに対するさらにもう1つの改良が示されている。高周波交流源52は、励振器コイルすなわち送信器コイルに結合されて、既知の方法で磁場を生じる。
【0024】
受信器コイル54は、送信器コイル50内に含まれている。図4に示される受信器コイルは、4つの極を有する鋸歯状パターンの形態である。したがって、受信器コイル54は、送信器コイル50内に2つの係数58および60を形成する。結合器(図示せず)は、送信器コイル50と受信器コイル54との間の結合を前述のように変動させるために、受信器コイルを横切って進む。しかしながら、受信器コイル54からの出力56は、第1の係数58または0°−180°回転と第2の係数60または180°−360°回転との間で繰返すものである。したがって、受信器コイル出力56での出力信号が繰返すため、結合素子の精密な位置がわからないであろう。
【0025】
結合素子の精密な回転位置を得るために、単一の係数を有する第2の受信器コイル62および出力64が、第1の受信器コイル54と同一の広がりを持って設けられている。この結果、第1の受信器コイル54の出力56からの信号は、第2の受信器コイル62の出力64での出力信号と結合されると、受信器コイル54および62に沿って0°から360°までの正確な結合器の位置を提供する。
【0026】
図4に示されるセンサは、リニアセンサとして示されているが、このセンサは、円形に巻かれ、したがって回転結合素子とともに用いられてもよいことも理解されるであろう。
【0027】
上記より、この発明は、以前より知られているリニアアクチュエータの以前より知られている不利点を解消する改良されたリニアアクチュエータを提供することがわかる。
【0028】
我々の発明を説明したが、その多くの変形例は、この発明が属する技術分野の当業者には、添付の特許請求の範囲によって規定されるこの発明の趣旨から逸脱することなく明らかとなるであろう。
【0029】
以下に請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニア誘導位置センサであって、
電気エネルギ源によって励起されるとき電磁放射線を発生させる送信器コイルを備え、前記送信器コイルは、第1の方向に巻かれており、
前記送信器コイル内に含まれた受信器コイルをさらに備え、前記受信器は、第1の方向に巻かれた第1のループと、前記第1の方向と逆の第2の方向に巻かれた第2のループとを有し、
前記送信器コイルに対して第1の方向に線状に移動可能な結合器素子をさらに備え、前記結合器素子は、前記送信器コイルと前記受信器コイルとの間の誘導結合を前記結合器素子の線形位置の関数として変動させることによって、前記送信器コイルによって励起されるときの前記受信器コイルからの電気出力信号を変動させ、
前記受信器コイルの前記第1および第2のループは、互いに前記第1の方向に沿って線状に配列されている、位置センサ。
【請求項2】
前記送信器コイルは、プリント回路板上に形成されている、請求項1に記載の位置センサ。
【請求項3】
前記受信器コイルは、プリント回路板上に形成されている、請求項1に記載の位置センサ。
【請求項4】
前記結合器素子は、金属材料で作られている、請求項1に記載の位置センサ。
【請求項5】
前記送信器コイルおよび前記受信器コイルは両方とも、最上部および底部を有するプリント回路板上に形成されている、請求項1に記載の位置センサ。
【請求項6】
前記結合器素子は、前記プリント回路板の前記最上部および前記底部を覆っている部分を含む、請求項5に記載の位置センサ。
【請求項7】
前記結合器素子は、断面がおおむねU字型である、請求項6に記載の位置センサ。
【請求項8】
前記送信器コイル内に、2つの逆に巻かれたループを有する補償コイルを備える、請求項1に記載の位置センサ。
【請求項9】
前記送信器コイル内に含まれる第2の受信器コイルを備え、前記受信器は、第1の方向に巻かれた1対の第1のループと、前記第1の方向と逆の第2の方向に巻かれた1対の第2のループとを有し、
前記第2の受信器コイルの前記第1および第2のループは、互いに前記第1の方向に沿って線状に配列され、交互になっている、請求項1に記載の位置センサ。
【請求項10】
前記受信器コイルの前記ループは、対称である、請求項1に記載の位置センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−527747(P2011−527747A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504553(P2011−504553)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005233
【国際公開番号】WO2009/127938
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508000593)ケイエスアール テクノロジーズ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】